以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の一例として、モータジェネレータ10を備える車両1に対して本発明を適用した場合の実施形態について説明する。但し、本発明は、複数の蓄電装置と電力変換器(特に、複数の蓄電装置に夫々対応する複数の電力変換器)とを備える任意の電源システム又は当該任意の電源システムを備える任意の装置に対して適用可能である。
(1)車両1の構成
はじめに、図1から図4を参照しながら、本実施形態の車両1の構成について説明する。
(1−1)車両1の全体構成
はじめに、図1を参照して、本実施形態の車両1の全体構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態の車両1の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、「負荷」の一具体例であるモータジェネレータ10と、車軸21と、車輪22と、「電源システム」の一具体例である電源システム30と、「電源制御装置」の一具体例であるECU40とを備える。
モータジェネレータ10は、力行時には、主として、電源システム30から出力される電力を用いて駆動することで、車軸21に動力(つまり、車両1の走行に必要な動力)を供給する電動機として機能する。更に、モータジェネレータ10は、回生時には、主として、電源システム30が備えるバッテリ31及び32を充電するための発電機として機能する。
車軸21は、モータジェネレータ10から出力された動力を車輪22に伝達するための伝達軸である。
車輪22は、車軸21を介して伝達される動力を路面に伝達する手段である。図1は、車両1が左右に一輪ずつの車輪22を備える例を示しているが、実際には、前後左右に一輪ずつ車輪22を備えている(つまり、合計4つの車輪12を備えている)。
尚、図1は、単一のモータジェネレータ10を備える車両1を例示している。しかしながら、車両1は、2つ以上のモータジェネレータ10を備えていてもよい。更には、車両1は、モータジェネレータ10に加えて、エンジンを更に備えていてもよい。つまり、本実施形態の車両1は、電気自動車やハイブリッド車両であってもよい。
電源システム30は、力行時には、モータジェネレータ10が電動機として機能するために必要な電力をモータジェネレータ10に対して出力する。更に、電源システム30には、回生時には、発電機として機能するモータジェネレータ10が発電する電力が、モータジェネレータ10から入力される。
このような電源システム30は、「第1蓄電装置」の一具体例であるバッテリ31と、「第2蓄電装置」の一具体例であるバッテリ32と、「第1電力変換器」の一具体例である電力変換器33と、「第2電力変換器」の一具体例である電力変換器34と、平滑コンデンサ35と、インバータ36とを備えている。
バッテリ31及び32の夫々は、電力の入力及び出力(つまり、充電及び放電)を行うことができる蓄電池である。このようなバッテリ31及び32の夫々の一例として、例えば、鉛蓄電池や、リチウムイオン電池や、ニッケル水素電池や、燃料電池等があげられる。但し、バッテリ31及び32の少なくとも一方に代えて、電荷(つまり、電気エネルギー)を蓄積する物理的作用又は化学的作用を利用して電力の入力及び出力を行うことができるキャパシタ(例えば、リチウムイオンキャパシタや電気二重層コンデンサ等)が用いられてもよい。
電力変換器33は、ECU40の制御下で、バッテリ31が出力する電力を、電源システム30に要求されている要求電力(典型的には、電源システム30がモータジェネレータ10に対して出力するべき電力)に応じて変換する。電力変換器33は、変換した電力を、インバータ36に出力する。更に、電力変換器33は、ECU40の制御下で、インバータ36から入力される電力(つまり、モータジェネレータ10の回生によって発生した電力の少なくとも一部)を、電源システム30に要求されている要求電力(典型的には、電源システム30に対して入力するべき電力であり、実質的には、バッテリ31に対して入力するべき電力)に応じて変換する。電力変換器33は、変換した電力を、バッテリ31に出力する。つまり、電力変換器33は、バッテリ31とモータジェネレータ10(或いは、インバータ36)との間で電力変換を行う
同様に、電力変換器34は、ECU40の制御下で、バッテリ32が出力する電力を、電源システム30に要求されている要求電力(典型的には、電源システム30がモータジェネレータ10に対して出力するべき電力)に応じて変換する。電力変換器34は、変換した電力を、インバータ36に出力する。更に、電力変換器34は、ECU40の制御下で、インバータ36から入力される電力(つまり、モータジェネレータ10の回生によって発生した電力の少なくとも一部)を、電源システム30に要求されている要求電力(典型的には、電源システム30に対して入力するべき電力であり、実質的には、バッテリ32に対して入力するべき電力)に応じて変換する。電力変換器34は、変換した電力を、バッテリ32に出力する。
このような電力変換により、電力変換器33及び34は、実質的には、バッテリ31とバッテリ32とモータジェネレータ10(或いは、インバータ36)との間における電力の分配を制御することができる。
尚、電力変換器33及び34の詳細な構成については、図2及び図3を参照しながら、後に詳述する。
平滑コンデンサ35は、力行時には、電力変換器33及び34からインバータ36に対して供給される電力の変動(実質的には、電力変換器33及び34とインバータ36との間の電源ラインPLにおける電圧の変動)を平滑化する。同様に、平滑コンデンサ35は、回生時には、インバータ36から電力変換器33及び34に対して供給される電力の変動(実質的には、電力変換器33及び34とインバータ36との間の電源ラインPLにおける電圧の変動)を平滑化する。
インバータ36は、力行時には、電力変換器33及び34から出力される電力(直流電力)を交流電力に変換する。その後、インバータ36は、交流電力に変換した電力を、モータジェネレータ10に供給する。更に、インバータ36は、回生時には、モータジェネレータ10が発電した電力(交流電力)を直流電力に変換する。その後、インバータ36は、直流電力に変換した電力を、電力変換器33及び34に供給する。
ECU40は、車両1の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。ECU40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えている。
本実施形態では特に、ECU40は、電力変換器33及び34における電力変換を制御する。より具体的には、ECU40は、バッテリ31から出力される若しくはバッテリ31に入力される電力の目標値である電力指令値P1*及びバッテリ32から出力される若しくはバッテリ32に入力される電力の目標値である電力指令値P2*を算出する。特に、ECU40は、バッテリ31に入力可能な電力の上限を示す電力制限値Win1、バッテリ31から出力可能な電力の上限を示す電力制限値Wout1、バッテリ32に入力可能な電力の上限を示す電力制限値Win2、バッテリ31から出力可能な電力の上限を示す電力制限値Wout2、電力変換器33を流れることが可能な電流の上限を示す電流制限値Ilim1及び電力変換器33を流れることが可能な電流の上限を示す電流制限値Ilim2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を算出する。その後、ECU40は、電力指令値P1*に基づいて、バッテリ31を流れる電流(つまり、電力変換器33を流れるべき電流であり、以降、“バッテリ電流I1”と称する)の目標値である電流指令値I1*を算出する。更に、ECU40は、電力指令値P2*に基づいて、バッテリ32を流れる電流(つまり、電力変換器34を流れるべき電流であり、以降、“バッテリ電流I2”と称する)の目標値である電流指令値I2*を算出する。その後、ECU40は、電流指令値I1*に基づいて、電力指令値P1*に応じた電力がバッテリ31から出力される又はバッテリ31に入力される(言い換えれば、電流指令値I1*に応じたバッテリ電流I1がバッテリ31を流れる)ように、電力変換器33を制御する。更に、ECU40は、電流指令値I2*に基づいて、電力指令値P2*に応じた電力がバッテリ32から出力される又はバッテリ32に入力される(言い換えれば、電流指令値I2*に応じたバッテリ電流I2がバッテリ32を流れる)ように、電力変換器34を制御する。
尚、ECU40の詳細な構成については、図4を参照しながら、後に詳述する。更に、ECU40が行う電力変換器33及び34における電力変換の制御動作についても、図5を参照しながら、後に詳述する。
また、電力指令値P1*は、「第1電力目標値」の一具体例である。電力指令値P2*は、「第2電力目標値」の一具体例である。電流指令値I1*は、「第1電流目標値」の一具体例である。電流指令値I2*は、「第2電流目標値」の一具体例である。電力制限値Win1及びWout1の夫々は、「第1電力制限値」の一具体例である。電力制限値Win2及びWout2の夫々は、「第2電力制限値」の一具体例である。電流制限値Ilim1は、上述の課題を解決する手段で説明した「第1電流制限値」の一具体例である。電流制限値Ilim2は、「第2電流制限値」の一具体例である。
(1−2)電力変換器33及び34の構成
続いて、図2から図3を参照しながら、電力変換器33及び34の構成について更に説明する。以下では、第1構成例及び第2構成例という2つの構成例を用いて、電力変換器33及び34の構成を説明する。
(1−2−1)第1構成例
まず、図2を参照しながら、第1構成例における電力変換器33a及び34aについて説明する。図2は、第1構成例における電力変換器33a及び34aを示すブロック図である。
図2に示すように、第1構成例における電力変換器33aは、スイッチング素子S1aと、スイッチング素子S2aと、ダイオードD1aと、ダイオードD2aと、リアクトルL1aとを備える。
スイッチング素子S1a及びS2aの夫々は、ECU40から出力されるPWM信号に応じてスイッチングすることができる。つまり、スイッチング素子S1a及びS2aの夫々は、スイッチング状態をオン状態からオフ状態へ又はオフ状態からオン状態へと切り替えることができる。このようなスイッチング素子S1a及びS2aの夫々として、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)や、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタや、電力用バイポーラトランジスタが用いられる。
スイッチング素子S1a及びスイッチング素子S2aは、インバータ36を介してモータジェネレータ10に電気的に接続される電源ラインPLと接地ラインGLとの間において、電気的に直列に接続される。具体的には、スイッチング素子S1aは、電源ラインPLとノードN1aとの間に電気的に接続される。スイッチング素子S2aは、ノードN1aと接地ラインGLとの間に電気的に接続される。
ダイオードD1aは、スイッチング素子S1aに対して電気的に並列に接続される。ダイオードD2aは、スイッチング素子S2aに対して電気的に並列に接続される。尚、ダイオードD1aは、スイッチング素子S1aに対して逆並列の関係を有する向きで接続される。ダイオードD2aは、スイッチング素子S2aに対して逆並列の関係を有する向きで接続される。
リアクトルL1aは、バッテリ31の正極端子とノードN1aとの間に電気的に接続される。バッテリ31の負極端子は、接地ラインGLに電気的に接続される。
電力変換器33は、スイッチング素子S1aが上アームとなる一方で、スイッチング素子S2bが下アームとなるチョッパ回路である。尚、チョッパ回路の動作自体は公知の動作と同一であってもよいため、その詳細な説明は省略する。
続いて、第1構成例における電力変換器34aは、スイッチング素子S3aと、スイッチング素子S4aと、ダイオードD3aと、ダイオードD4aと、リアクトルL2aとを備える。尚、電力変換器34aの構成及び動作は、電力変換器33aの構成及び動作と同様であるため、その詳細な説明を省略する。つまり、上述の電力変換器33に対する説明は、当該電力変換器33に対する説明中の「スイッチング素子S1a」、「スイッチング素子S2a」、「ダイオードD1a」、「ダイオードD2a」、「リアクトルL1a」、「ノードN1a」及び「バッテリ31」を夫々「スイッチング素子S3a」、「スイッチング素子S4a」、「ダイオードD3a」、「ダイオードD4a」、「リアクトルL2a」、「ノードN3a」及び「バッテリ32」に置き換えることで、電力変換器34に対する説明となる。
(1−2−2)第2構成例
続いて、図3を参照しながら、第2構成例における電力変換器33b及び34bについて説明する。図3は、第2構成例における電力変換器33b及び34bを示すブロック図である。
第1構成例では、電力変換器33a及び34aが物理的に分離されている。つまり、第1構成例では、電力変換器33及び34は、回路素子を共用していない。一方で、第2構成例では、電力変換器33及び34が物理的に分離されていない。つまり、第2構成例では、電力変換器33及び34は、回路素子を共用している。
具体的には、図3に示すように、第2構成例における電力変換器33bは、スイッチング素子S1bと、スイッチング素子S2bと、スイッチング素子S3bと、スイッチング素子S4bと、ダイオードD1bと、ダイオードD2bと、ダイオードD3bと、ダイオードD4bと、リアクトルL1bとを備える。一方で、第2構成例における電力変換器34bは、スイッチング素子S1bと、スイッチング素子S2bと、スイッチング素子S3bと、スイッチング素子S4bと、ダイオードD1bと、ダイオードD2bと、ダイオードD3bと、ダイオードD4bと、リアクトルL2bとを備える。つまり、電力変換器33b及び34bは、スイッチング素子S1bからスイッチング素子S4bと、ダイオードD1bからダイオードD4b(つまり、リアクトルL1b及びL2bを除く回路素子)を共用している。
スイッチング素子S1bからスイッチング素子S4bの夫々は、ECU40から出力されるPWM信号に応じてスイッチングすることができる。スイッチング素子S1bからスイッチング素子S4bの夫々として、例えば、IGBTや、電力用MOSトランジスタや、電力用バイポーラトランジスタが用いられる。
スイッチング素子S1b、スイッチング素子S2b、スイッチング素子S3b及びスイッチング素子S4bは、電源ラインPLと接地ラインGLとの間において、電気的に直列に接続される。具体的には、スイッチング素子S1bは、電源ラインPLとノードN1bとの間に電気的に接続される。スイッチング素子S2bは、ノードN1bとノードN2bとの間に電気的に接続される。スイッチング素子S3bは、ノードN2bとノードN3bとの間に電気的に接続される。スイッチング素子S4bは、ノードN3bと接地ラインGLとの間に電気的に接続される。
ダイオードD1bは、スイッチング素子S1bに対して電気的に並列に接続される。ダイオードD2bは、スイッチング素子S2bに対して電気的に並列に接続される。ダイオードD3bは、スイッチング素子S3bに対して電気的に並列に接続される。ダイオードD4bは、スイッチング素子S4bに対して電気的に並列に接続される。尚、ダイオードD1bは、スイッチング素子S1bに対して逆並列の関係を有する向きで接続される。ダイオードD2bからダイオードD4bについても同様である。
リアクトルL1bは、バッテリ31の正極端子とノードN2bとの間に電気的に接続される。リアクトルL2bは、バッテリ32の正極端子とノードN1bとの間に電気的に接続される。バッテリ31の負極端子は、接地ラインGLに電気的に接続される。バッテリ32の負極端子は、ノードN3bに電気的に接続される。
電力変換器33bは、スイッチング素子S1b及びS2bが上アームとなる一方で、スイッチング素子S3b及びS4bが下アームとなるチョッパ回路である。一方で、電力変換器34bは、スイッチング素子S4b及びS1bが上アームとなる一方で、スイッチング素子S2b及びS3bが下アームとなるチョッパ回路である。尚、チョッパ回路の動作自体は公知の動作と同一であってもよいため、その詳細な説明は省略する。
(1−3)ECU40の構成
続いて、図4を参照しながら、ECU40の構成について説明する。図4は、本実施形態のECU40の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、EUC40は、その内部に物理的に実現される回路素子として又はその内部に論理的に実現される処理ブロックとして、電圧指令算出部411と、減算器412と、電力指令算出部413と、分配率指令算出部414と、制限値設定部415と、指令分配部420と、減算器431と、デューティ演算部432と、PWM演算部433と、減算器434と、デューティ演算部435と、PWM演算部436とを備える。
電圧指令算出部411は、モータジェネレータ10に要求されているトルク(以降、“要求トルク”と称する)及びモータジェネレータ10の回転数(以降、“モータ回転数”と称する)に基づいて、電源ラインPLと接地ラインGLとの間の端子間電圧VHの目標値である電圧指令値VH*を算出する。尚、要求トルクは、典型的にはECU40が算出する。加えて、モータ回転数は、例えば、モータジェネレータ10に取り付けられた回転数センサによって検出される。尚、電圧指令値VH*の算出方法として、公知の算出方法が採用される。公知の算出方法の一例は、特許文献1(特開2010−284019号公報)の段落0070等に記載されている。
減算器412は、実際に検出された端子間電圧VHから電圧指令算出部411が算出した電圧指令値VH*を減算する。端子間電圧VHは、例えば、電源ラインPLと接地ラインGLとの間に取り付けられた電圧センサによって検出される。
電力指令算出部413は、減算器412における減算結果(つまり、VH−VH*)に基づいて、電源システム30からインバータ36(或いは、モータジェネレータ10)に出力される又はインバータ36(或いは、モータジェネレータ10)から電源システム30に入力される電力の目標値である電力指令値P*を算出する。例えば、電力指令算出部413は、減算器412における減算結果に対してPI演算を行うことで、減算器412における減算結果をゼロにする(つまり、端子間電圧VHを電圧指令値VH*に一致させる)ことが可能な電力指令値P*を算出する。
分配率算出部414は、要求トルク及びモータ回転数、バッテリ電圧V1(つまり、バッテリ31の端子間電圧V1)、バッテリ電流I1及びバッテリ温度T1(つまり、バッテリ31の温度T1)、並びにバッテリ電圧V2(つまり、バッテリ32の端子間電圧V2)、バッテリ電流I2及びバッテリ温度T2(つまり、バッテリ32の温度T2)、に基づいて、分配率K*を算出する。分配率K*は、電力指令値P*に対応する電力に対するバッテリ31から出力される又はバッテリ31に入力される電力の割合を示す。但し、分配率K*は、電力指令値P*に対応する電力に対するバッテリ32から出力される又はバッテリ31に入力される電力の割合を示していてもよい。尚、分配率K*の算出方法として、公知の算出方法が採用される。公知の算出方法の一例は、特許文献1(特開2010−284019号公報)の段落0058から段落0060等に記載されている。
バッテリ電圧V1は、例えば、バッテリ31に並列に接続された電圧センサによって検出される。バッテリ電流I1は、例えば、バッテリ31に直列に接続された電流センサによって検出される。バッテリ温度T1は、例えば、バッテリ31に取り付けられたセンサによって検出される。バッテリ電圧V2は、例えば、バッテリ32に並列に接続された電圧センサによって検出される。バッテリ電流I2は、例えば、バッテリ32に直列に接続された電流センサによって検出される。バッテリ温度T2は、例えば、バッテリ32に取り付けられたセンサによって検出される。
制限値設定部415は、バッテリ電圧V1及びV2、バッテリ電流I1及びI2並びにバッテリ温度T1及びT2に基づいて、電力制限値Win1及びWout1並びに電力制限値Win2及びWout2を設定する。尚、電力制限値Win1及びWout1並びに電力制限値Win2及びWout2の設定方法として、公知の設定方法が採用される。公知の設定方法の一例は、特許文献1(特開2010−284019号公報)の段落0028等に記載されている。
指令分配部420は、電力指令値P*、分配率K*、電力制限値Win1、電力制限値Wout1、電力制限値Win2、電力制限値Wout2、電流制限値Ilim1及び電流制限値Ilim2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P1*及びP2*に基づいて、電流指令値I1*及びI2*を算出する。
減算器431は、実際に検出されたバッテリ電流I1から指令分配部420が算出した電流指令値I1*を減算する。
デューティ演算部432は、減算器431における減算結果(つまり、I1−I1*)に基づいて、PWM制御方式で電力変換器33を制御するために用いられるデューティ比duty1を算出する。具体的には、デューティ演算部432は、減算器431における減算結果に対してPI演算を行うことで、減算器431における減算結果をゼロにする(つまり、バッテリ電流I1を電流指令値I1*に一致させる)ことが可能なデューティ比duty1を算出する。
PWM演算部433は、所定のキャリア信号及びデューティ演算部432が算出したデューティ比duty1に基づいて、電力変換器33の動作を制御するためのPWM信号を生成する。
減算器434は、実際に検出されたバッテリ電流I2から指令分配部420が算出した電流指令値I2*を減算する。
デューティ演算部435は、減算器434における減算結果(つまり、I2−I2*)に基づいて、PWM制御方式で電力変換器34を制御するために用いられるデューティ比duty2を算出する。具体的には、デューティ演算部435は、減算器434における減算結果に対してPI演算を行うことで、減算器434における減算結果をゼロにする(つまり、バッテリ電流I2を電流指令値I2*に一致させる)ことが可能なデューティ比duty2を算出する。
PWM演算部436は、所定のキャリア信号及びデューティ演算部435が算出したデューティ比duty2に基づいて、電力変換器34の動作を制御するためのPWM信号を生成する。
(2)電力変換器33及び34の制御動作
続いて、図5から図8を参照しながら、本実施形態の車両1の制御動作(実質的には、電力変換器33及び34における電力変換の制御動作)について説明する。
(2−1)制御動作の全体の流れ
初めに、図5を参照しながら、本実施形態の車両1の制御動作(実質的には、電力変換器33及び34における電力変換の制御動作)の全体の流れについて説明する。図5は、本実施形態の車両1の制御動作(実質的には、電力変換器33及び34における電力変換の制御動作)の全体の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、ECU40が備える電力指令算出部413は、電力指令値P*を算出する(ステップS0)。更に、ECU40が備える分配率算出部414は、分配率K*を算出する(ステップS0)。更に、ECU40が備える制限値設定部415は、電力制限値Win1、電力制限値Wout1、電力制限値Win2及び電力制限値Wout2を設定する(ステップS0)。
その後、指令分配部420は、電力指令値P*、分配率K*、電力制限値Win1、電力制限値Wout1、電力制限値Win2、電力制限値Wout2、電流制限値Ilim1及び電流制限値Ilim2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を算出する(ステップS1)。尚、電力指令値P1*及びP2*の算出動作は、図6を参照しながら後に詳述される。
その後、指令分配部420は、ステップS1で算出した電力指令値P1*及びP2*に基づいて、電流指令値I1*及びI2*を算出する(ステップS2)。尚、電流指令値I1*及びI2*の算出動作は、図7を参照しながら後に詳述される。
その後、PMW演算部433は、ステップS2で算出された電流指令値I1*に基づいて、電力変換器33の動作を制御するためのPWM信号を生成する(ステップS3)。ステップS3でPWM演算部433が生成したPWM信号は、電力変換器33に対して出力される。このため、電力変換器33が備えるスイッチング素子は、ステップS3でPWM演算部433が生成したPWM信号に従ってスイッチングする。その結果、電力指令値P1*に応じた電力がバッテリ31から出力される又はバッテリ31に入力され、且つ、電流指令値I1*に応じたバッテリ電流I1がバッテリ31を流れるように、電力変換器33が動作する。
加えて、PMW演算部436は、ステップS2で算出された電流指令値I2*に基づいて、電力変換器34の動作を制御するためのPWM信号を生成する(ステップS3)。ステップS3でPWM演算部436が生成したPWM信号は、電力変換器34に対して出力される。このため、電力変換器34が備えるスイッチング素子は、ステップS3でPWM演算部436が生成したPWM信号に従ってスイッチングする。その結果、電力指令値P2*に応じた電力がバッテリ32から出力される又はバッテリ32に入力され、且つ、電流指令値I2*に応じたバッテリ電流I2がバッテリ32を流れるように、電力変換器34が動作する。
(2−2)電力指令値P1*及びP2*の算出動作
続いて、図6を参照しながら、図5のステップS1における電力指令値P1*及びP2*の算出動作について説明する。図6は、図5のステップS1における電力指令値P1*及びP2*の算出動作の流れを示すフローチャートである。尚、説明の便宜上、以下では、車両1が力行状態にある場合(つまり、バッテリ31及び32の夫々から電力が出力される場合)の電力指令値P1*及びP2*の算出動作について説明する。
図6に示すように、「算出手段」の一具体例である指令分配部420は、電力指令値P*及び分配率K*に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を算出する(ステップS11)。具体的には、指令分配部420は、電力指令値P1*=電力指令値P*×分配率K*という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P2*=電力指令値P*×(1−分配率K*)という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。
続いて、指令分配部420は、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きく且つ電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。
ステップS12の判定の結果、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きく且つ電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きいと判定される場合には(ステップS12:Yes)、「補正手段」の一具体例である指令分配部420は、電力指令値P*及び分配率K*並びに電力制限値Wout1及びWout2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を再度算出する(ステップS13)。尚、電力指令値P1*及びP2*の再度の算出は、電力指令値P1*及びP2*の補正であるとも言える。
具体的には、指令分配部420は、電力指令値P1*=電力制限値Wout1+(電力指令値P*−電力制限値Wout1−電力制限値Wout2)×分配率K*という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P2*=電力指令値P*−電力指令値P1*という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。つまり、電力指令値P1*は、電力制限値Wout1と電力制限値Wout2との総和に対する電力指令値P1*と電力指令値P2*との総和の超過量(以降、“電力制限超過量”と称する)の一部を電力制限値Wout1に加算することで得られる値となる。更に、電力指令値P2*は、電力制限超過量の他の一部を電力制限値Wout2に加算することで得られる値となる。
電力指令値P1*及びP2*が再度算出されると、電力指令値P1*及びP2*の算出動作が終了する。但し、電力指令値P1*及びP2*が再度算出された後には、再度ステップS12の動作が行われてもよい。以下のステップS15及びS17においても同様である。
他方で、ステップS12の判定の結果、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きくないか又は電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きくないと判定される場合には(ステップS12:No)、指令分配部420は、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14の判定の結果、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きいと判定される場合には(ステップS14:Yes)、「補正手段」の一具体例である指令分配部420は、電力指令値P*及び電力制限値Wout1に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を再度算出する(ステップS15)。具体的には、指令分配部420は、電力指令値P1*=電力制限値Wout1という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P2*=電力指令値P*−電力指令値P1*という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。つまり、再算出前は電力制限値Wout1よりも大きかった電力指令値P1*は、電力制限値Wout1と一致する値となるまで小さくなる。更に、電力指令値P2*は、電力指令値P1*が小さくなるがゆえに、再算出前の電力指令値P2*よりも大きくなる。その結果、電力指令値P1*及びP2*が再度算出される場合であっても、電力指令値P1*及びP2*の総和が維持される(言い換えれば、変動しない)。
他方で、ステップS14の判定の結果、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きくないと判定される場合には(ステップS14:No)、指令分配部420は、電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きいか否かを判定する(ステップS16)。
ステップS16の判定の結果、電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きいと判定される場合には(ステップS16:Yes)、「補正手段」の一具体例である指令分配部420は、電力指令値P*及び電力制限値Wout2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を再度算出する(ステップS17)。具体的には、指令分配部420は、電力指令値P2*=電力制限値Wout2という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P1*=電力指令値P*−電力指令値P2*という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。つまり、再算出前は電力制限値Wout2よりも大きかった電力指令値P2*は、電力制限値Wout2と一致する値となるまで小さくなる。更に、電力指令値P1*は、電力指令値P2*が小さくなるがゆえに、再算出前の電力指令値P1*よりも大きくなる。その結果、電力指令値P1*及びP2*が再度算出される場合であっても、電力指令値P1*及びP2*の総和が維持される。
他方で、ステップS16の判定の結果、電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きくないと判定される場合には(ステップS16:No)、指令分配部420は、電力指令値P1*及びP2*を再度算出しない。
尚、車両1が回生状態にある場合(つまり、バッテリ31及び32の夫々に電力が入力される場合)の電力指令値P1*及びP2*についても、図6に示す算出動作によって算出可能である。但し、図6に示す算出動作は、バッテリ31及び32の夫々から出力される電力を正の電力と定義し且つバッテリ31及び32の夫々に入力される電力を負の電力と定義していることを前提としている。従って、車両1が回生状態にある場合には、ステップS12及びステップS14では、負の値をとる電力指令値P1*が負の値をとる電力制限値Win1よりも小さいか否かが判定される。同様に、ステップS12及びステップS16では、負の値をとる電力指令値P2*が負の値をとる電力制限値Win2よりも小さいか否かが判定される。
(2−3)電流指令値I1*及びI2*の算出動作
続いて、図7を参照しながら、図5のステップS2における電流指令値I1*及びI2*の算出動作について説明する。図7は、図5のステップS2における電流指令値I1*及びI2*の算出動作の流れを示すフローチャートである。尚、説明の便宜上、以下では、車両1が力行状態にある場合(つまり、バッテリ31及び32の夫々から電力が出力される場合)の電流指令値I1*及びI2*の算出動作について説明する。
図7に示すように、指令分配部420は、図5のステップS1で算出された電力指令値P1*及びP2*並びにバッテリ電圧V1及びV2に基づいて、電流指令値I1*及びI2*を算出する(ステップS21)。具体的には、指令分配部420は、電流指令値I1*=電力指令値P1*/バッテリ電圧V1という数式を用いて、電流指令値I1*を算出する。更に、指令分配部420は、電流指令値I2*=電力指令値P2*/バッテリ電圧V2という数式を用いて、電流指令値I2*を算出する。
続いて、指令分配部420は、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きく且つ電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。尚、電流制限値Ilim1及びIlim2は、夫々、電力変換器33及び34の仕様に応じて定まる制限値である。従って、ECU40は、電流制限値Ilim1及びIlim2を予め記憶していてもよい。
ステップS22の判定の結果、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きく且つ電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きいと判定される場合には(ステップS22:Yes)、「補正手段」の一具体例である指令分配部420は、電力指令値P*及び分配率K*、電流制限値Ilim1及びIlim2並びにバッテリ電圧V1及びV2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を再度算出する(ステップS23)。
具体的には、指令分配部420は、電力指令値P1*=バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1+(電力指令値P*−バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1−バッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2)×分配率K*という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P2*=電力指令値P*−電力指令値P1*という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。つまり、電力指令値P1*は、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1とバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2との総和に対する電力指令値P1*と電力指令値P2*との総和の超過量(以降、“電流制限超過量”と称する)の一部を電力制限値Wout1に加算することで得られる値となる。更に、電力指令値P2*は、電流制限超過量の他の一部を電力制限値Wout2に加算することで得られる値となる。その結果、後述するステップS28で再度算出される電流指令値I1*は、電流制限値Ilim1と電流制限値Ilim2との総和に対する電流指令値I1*と電流指令値I2*との総和の超過量の一部を電流制限値Ilim1に加算することで得られる値となる。更に、後述するステップS28で再度算出される電流指令値I2*は、電流制限値Ilim1と電流制限値Ilim2との総和に対する電流指令値I1*と電流指令値I2*との総和の超過量の他の一部を電流制限値Ilim2に加算することで得られる値となる。
電力指令値P1*及びP2*が再度算出されると、後述のステップS28の動作が行われる。但し、電力指令値P1*及びP2*が再度算出された後には、再度ステップS22の動作が行われてもよい。以下のステップS25及びS27においても同様である。
他方で、ステップS22の判定の結果、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きくないか又は電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きくないと判定される場合には(ステップS22:No)、指令分配部420は、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。
ステップS24の判定の結果、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きいと判定される場合には(ステップS24:Yes)、「補正手段」の一具体例である指令分配部420は、電流指令値P*、バッテリ電圧V1及び電流制限値Ilim1に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を再度算出する(ステップS25)。具体的には、指令分配部420は、電力指令値P1*=バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P2*=電力指令値P*−電力指令値P1*という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。その結果、電力指令値P1*及びP2*の再算出前は電流制限値Ilim1よりも大きかった電流指令値I1*は、後述するステップS28での再算出によって電流制限値Ilim1と一致する値となるまで小さくなる。更に、電力指令値P1*の再算出に起因して電流指令値I1*が小さくなっていることを考慮すれば、電力指令値P1*もまた、最算出前の電力指令値P1*よりも小さくなっている。従って、電力指令値P2*は、再算出前の電力指令値P2*よりも大きくなる。その結果、電力指令値P1*及びP2*が再度算出される場合であっても、電力指令値P1*及びP2*の総和が維持される(言い換えれば、変動しない)。
他方で、ステップS24の判定の結果、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きくないと判定される場合には(ステップS24:No)、指令分配部420は、電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きいか否かを判定する(ステップS26)。
ステップS26の判定の結果、電流指令値P2*が電流制限値Ilim2よりも大きいと判定される場合には(ステップS26:Yes)、「補正手段」の一具体例である指令分配部420は、電流指令値P*、バッテリ電圧V2及び電流制限値Ilim2に基づいて、電力指令値P1*及びP2*を再度算出する(ステップS27)。具体的には、指令分配部420は、電力指令値P2*=バッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2という数式を用いて、電力指令値P2*を算出する。更に、指令分配部420は、電力指令値P1*=電力指令値P*−電力指令値P2*という数式を用いて、電力指令値P1*を算出する。その結果、電力指令値P1*及びP2*の再算出前は電流制限値Ilim2よりも大きかった電流指令値I2*は、後述するステップS28での再算出によって電流制限値Ilim2と一致する値となるまで小さくなる。更に、電力指令値P2*の再算出に起因して電流指令値I2*が小さくなっていることを考慮すれば、電力指令値P2*もまた、最算出前の電力指令値P2*よりも小さくなっている。従って、電力指令値P1*は、再算出前の電力指令値P1*よりも大きくなる。その結果、電力指令値P1*及びP2*が再度算出される場合であっても、電力指令値P1*及びP2*の総和が維持される(言い換えれば、変動しない)。
ステップS23、ステップS25又はステップS27で電力指令値P1*及びP2*が再度算出される場合には、指令分配部420は、ステップS23、ステップS25又はステップS27で再度算出された電力指令値P1*及びP2*に基づいて、電流指令値I1*及びI2*を再度算出する(ステップS28)。尚、電流指令値I1*及びI2*の算出方法自体は、ステップS21における算出方法と同一である。
他方で、ステップS26の判定の結果、電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きくないと判定される場合には(ステップS26:No)、指令分配部420は、電圧指令値P1*及びP2*並びに電流指令値I1*及びI2*を再度算出しない。
尚、車両1が回生状態にある場合(つまり、バッテリ31及び32の夫々に電力が入力される場合)の電流指令値I1*及びI2*についても、図7に示す算出動作によって算出可能である。但し、図7に示す算出動作は、バッテリ31及び32から電力変換器33及び34に向かって夫々流れる電流を正の電流と定義し且つ電力変換器33及び34からバッテリ31及び32に向かって夫々流れる電流を負の電流と定義していることを前提としている。従って、車両1が回生状態にある場合には、ステップS22及びステップS24では、負の値をとる電流指令値I1*が負の値をとる電流制限値Ilim1よりも小さいか否かが判定される。同様に、ステップS22及びステップS26では、負の値をとる電流指令値I2*が負の値をとる電流制限値Ilim2よりも小さいか否かが判定される。
(2−4)電力指令値P1*及びP2*に応じた実際の電力P1及びP2の具体例
続いて、図8を参照しながら、図5から図7に示す動作に従って算出される電力指令値P1*及びP2*に応じてバッテリ31及び32から夫々出力される電力P1及びP2の具体例について説明する。図8は、図5から図7に示す動作に従って算出される電力指令値P1*及びP2*に応じてバッテリ31及び32から夫々出力される電力P1及びP2の具体例を示すグラフである。尚、説明の便宜上、以下では、車両1が力行状態にある場合(つまり、バッテリ31及び32の夫々から電力が出力される場合)の電力P1及びP2の具体例について説明する。
図8に示すグラフは、横軸が電力指令値P1*に応じてバッテリ31から出力される電力P1を示しており且つ縦軸が電力指令値P2*に応じてバッテリ32から出力される電力P2を示す。
まず、電力指令値P1*が電力制限値Wout1以下であり且つ電力指令値P2*が電力制限値Wout2以下である場合には、電力指令値P1*及びP2*は、夫々、図6のステップS11で算出される電力指令値P1*及びP2*となる。この場合、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P1*及びP2*は、電力制限値Wout1以下であり且つ電力制限値Wout2以下である範囲内で増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、電力P1及びP2は、図8のグラフにおいて矢印Z1で示すように、電力制限値Wout1以下であり且つ電力制限値Wout2以下である範囲内で増加する。
続いて、矢印Z1に沿った電力P1及びP2の増加は、電力指令値P1*及びP2*の増加によって実現されている。このまま電力指令値P1*及びP2*が増加すると、あるタイミングで電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きい一方で電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きくないと判定される。この場合には、電力指令値P1*及びP2*は、図6のステップS15で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。その結果、電力指令値P1*が電力制限値Wout1に固定される。更に、この状況下で電力指令値P*が増加する場合には、電力指令値P*の増加によって不足する電力は、未だ電力制限値Wout2よりも大きくなっていない電力指令値P2*の増加によって補填される。従って、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P1*が電力制限値Wout1と一致したまま電力指令値P2*が増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、図8のグラフにおいて矢印Z2で示すように、電力P1が電力制限値Wout1と一致したまま電力P2が増加する。このため、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きいと判定される場合であっても、電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きくないと判定される限りは、電力P1が電力制限値Wout1よりも大きくなることはない。
尚、説明の簡略化のために図示しないものの、電力指令値P1*及びP2*が増加すると、あるタイミングで電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きい一方で電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きくないと判定される場合がある。この場合には、電力指令値P1*及びP2*は、図6のステップS17で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。その結果、電力指令値P2*が電力制限値Wout2に固定される。更に、この状況下で電力指令値P*が増加する場合には、電力指令値P*の増加によって不足する電力は、未だ電力制限値Wout1よりも大きくなっていない電力指令値P1*の増加によって補填される。従って、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P2*が電力制限値Wout2と一致したまま電力指令値P1*が増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、電力P2が電力制限値Wout2と一致したまま電力P1が増加する。このため、電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きいと判定される場合であっても、電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きくないと判定される限りは、電力P2が電力制限値Wout2よりも大きくなることはない。
続いて、矢印Z2に沿った電力P2の増加は、電力指令値P2*の増加によって実現されている。このまま電力指令値P2*が増加すると、あるタイミングで電力指令値P1*が電力制限値Wout1よりも大きく且つ電力指令値P2*が電力制限値Wout2よりも大きいと判定される。この場合には、電力指令値P1*及びP2*は、図6のステップS13で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。その結果、電力制限値Wout1と電力制限値Wout2との総和に対する電力指令値P1*と電力指令値P2*との総和の超過量(電力制限超過量)が電力指令値P1*及びP2*の双方によって補填される。従って、電力指令値P1*が電力制限値Wout1より大きくなる状態が一時的に許容されると共に、電力指令値P2*が電力制限値Wout2より大きくなる状態が一時的に許容される。更に、この状況下で電力指令値P*が増加する場合には、電力指令値P*の増加によって不足する電力は、電力指令値P1*及びP2*の双方の増加によって補填される。従って、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P1*及びP2*は、電力制限値Wout1及びWout2より大きく且つバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1及びバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2以下である範囲内で増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、図8のグラフ上において矢印Z3で示すように、電力P1及びP2は、電力制限値Wout1及びWout2より大きい範囲内で増加する。加えて、電源システム30の仕様上、電力制限値Wout1は、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも小さい。同様に、電力制限値Wout2は、バッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも小さい。従って、電力P1及びP2は、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1及びバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2以下である範囲内で増加するとも言える。
続いて、矢印Z3に沿った電力P1及びP2の増加は、電力指令値P1*及びP2*の増加によって実現されている。このまま電力指令値P1*及びP2*が増加すると、あるタイミングで電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きい一方で電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きくないと判定される。つまり、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きい一方で電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きくないと判定される。この場合には、電力指令値P1*及びP2*は、図7のステップS25で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。その結果、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1に固定される。つまり、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1に固定される。更に、この状況下で電力指令値P*が増加する場合には、電力指令値P*の増加によって不足する電力は、未だバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きくなっていない電力指令値P2*の増加によって補填される。従って、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1と一致したまま電力指令値P2*が増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、図8のグラフ上において矢印Z4で示すように、電力P1がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1と一致したまま電力P2が増加する。
ここで、電流制限値Ilim1に基づく電流指令値I1*及びI2*の算出動作が行われない比較例では、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きい場合であっても、電力指令値P1*及びP2*は、図6のステップS13で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。従って、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きい場合であっても、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P1*及びP2*の双方が大きくなっていく。つまり、電力指令値P*の増加に伴い、電力P1及びP2は、電力P2を増加させる余地が残っているにも関わらず、図8のグラフ上において矢印Z4’で示すように、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きい範囲内で増加する。その結果、電流制限値Ilim1よりも大きいバッテリ電流I1が電力変換器33に流れる。従って、電力変換器33の動作が不安定になる可能性がある。
しかるに、本実施形態では、電流制限値Ilim1に基づく電流指令値I1*及びI2*の算出動作が行われる。このため、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きいと判定される場合であっても、電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きくないと判定される限りは、電力P1がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きくなることはない。つまり、電流制限値Ilim1よりも大きいバッテリ電流I1が電力変換器33に流れることはない。従って、電力変換器33は好適に動作することができる。
尚、説明の簡略化のために図示しないものの、電力指令値P1*及びP2*が増加すると、あるタイミングで電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きい一方で電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きくないと判定される場合がある。つまり、電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きい一方で電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きくないと判定される場合がある。この場合には、電力指令値P1*及びP2*は、図7のステップS27で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。その結果、電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2に固定される。つまり、電流指令値I2*が電流制限値Ilim2に固定される。更に、この状況下で電力指令値P*が増加する場合には、電力指令値P*の増加によって不足する電力は、未だバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きくなっていない電力指令値P1*の増加によって補填される。従って、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2と一致したまま電力指令値P1*が増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、電力P2がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2と一致したまま電力P1が増加する。このため、電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きいと判定される場合であっても、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きくないと判定される限りは、電力P2がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きくなることはない。つまり、電流制限値Ilim2よりも大きいバッテリ電流I2が電力変換器34に流れることはない。従って、電力変換器34は好適に動作することができる。
続いて、矢印Z4に沿った電力P2の増加は、電力指令値P2*の増加によって実現されている。このまま電力指令値P2*が増加すると、あるタイミングで電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きく且つ電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きいと判定される。つまり、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1よりも大きく且つ電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きいと判定される。この場合には、電力指令値P1*及びP2*は、図7のステップS23で再度算出される電力指令値P1*及びP2*となる。その結果、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1とバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2との総和に対する電力指令値P1*と電力指令値P2*との総和の超過量(電流制限超過量)が電力指令値P1*及びP2*の双方によって補填される。従って、電力指令値P1*がバッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1より大きくなる状態が一時的に許容されると共に、電力指令値P2*がバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2より大きくなる状態が一時的に許容される。つまり、電流指令値I1*が電流制限値Ilim1よりも大きくなる状態が一時的に許容される共に、電流指令値I2*が電流制限値Ilim2よりも大きくなる状態が一時的に許容される。更に、この状況下で電力指令値P*が増加する場合には、電力指令値P*の増加によって不足する電力は、電力指令値P1*及びP2*の双方の増加によって補填される。従って、電力指令値P*の増加に伴い、電力指令値P1*及びP2*は、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1及びバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きい範囲内で増加する。その結果、電力指令値P*の増加に伴い、図8のグラフ上において矢印Z5で示すように、電力P1及びP2は、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1及びバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2よりも大きい範囲内で増加する。
以上説明したように、本実施形態のECU40は、電流制限値Ilim1及びIlim2を考慮しながら、電力指令値P1*及びP2*を算出することができる。従って、電流指令値I1*及びI2*の総和が電流制限値Ilim1及びIlim2の総和を超過していない限りは、バッテリ電流I1が電流制限値Ilim1を超過することはなく、且つ、バッテリ電流I2が電流制限値Ilim2を超過することはない。言い換えれば、電流指令値I1*及びI2*の総和が電流制限値Ilim1及びIlim2の総和を超過していない限りは、バッテリ電流I2を増加させる余裕があるにも関わらずバッテリ電流I1が電流制限値Ilim1を過度に超過していることに起因して電力変換器33の動作が過度に不安定になることは殆ど又は全くない。或いは、電流指令値I1*及びI2*の総和が電流制限値Ilim1及びIlim2の総和を超過していない限りは、バッテリ電流I1を増加させる余裕があるにも関わらずバッテリ電流I2が電流制限値Ilim2を過度に超過していることに起因して電力変換器34の動作が過度に不安定になることは殆ど又は全くない。このため、ECU40は、電力変換器33及び34の動作を安定させることができる。つまり、ECU40は、バッテリ31及び32と電力変換器33及び34とを含む電源システム30において、バッテリ電流I1及びI2を好適に調整することができる。
尚、電流制限値Ilim1に基づく電流指令値I1*及びI2*の算出動作が行われない比較例では、図8を参照しながら既に説明したように、電流指令値I1*及びI2*の総和が電流制限値Ilim1及びIlim2の総和を超過していない場合であっても、バッテリ電流I1が電流制限値Ilim1を超過してしまうか又はバッテリ電流I2が電流制限値Ilim2を超過してしまう可能性がある。その結果、電力変換器33又は34の動作が不安定になる可能性があるという技術的問題点が生ずる。しかるに、本実施形態のECU40は、このような技術的問題点を生じさせないという点において、比較例と比較して有利な効果を有している。
更に、本実施形態では、ECU40は、電流指令値I1が電流制限値Ilim1を超過し且つ電流指令値I2が電流制限値Ilim2を超過してしまった場合に限って、電流指令値I1*及びI2*が電流制限値Ilim1及びIlim2を夫々一時的に超過することを許容している。更に、電流指令値I1が電流制限値Ilim1を超過し且つ電流指令値I2が電流制限値Ilim2を超過してしまった場合には、電流制限値Ilim1及びIlim2の総和に対する電流指令値I1*及びI2*の総和の超過量が電流指令値I1*及びI2*の双方によって補填される。言い換えれば、バッテリ電圧V1×電流制限値Ilim1とバッテリ電圧V2×電流制限値Ilim2との総和に対する電力指令値P1*と電力指令値P2*との総和の超過量(電流制限超過量)が電力指令値P1*及びP2*の双方によって補填される。その結果、電流指令値I1*及びI2*の総和が電流制限値Ilim1及びIlim2の総和を超過している場合であっても、バッテリ電流I2を増加させる余裕があるにも関わらずバッテリ電流I1が電流制限値Ilim1を過度に超過していることに起因して電力変換器33の動作が過度に不安定になることは殆ど又は全くない。或いは、電流指令値I1*及びI2*の総和が電流制限値Ilim1及びIlim2の総和を超過している場合であっても、バッテリ電流I1を増加させる余裕があるにも関わらずバッテリ電流I2が電流制限値Ilim2を過度に超過していることに起因して電力変換器34の動作が過度に不安定になることは殆ど又は全くない。このため、電流制限値Ilim1及びIlim2を夫々超過するバッテリ電流I1及びI2が一時的に流れることに起因した負担が、電力変換器33及び34の間で相応に分担される。このように、ECU40は、電流制限値Ilim1を超過するバッテリ電流I1が電力変換器33に流れることに起因した負担及び電流制限値Ilim2を超過するバッテリ電流I2が電力変換器34に流れることに起因した負担を相応に軽減することができる。
更に、本実施形態では、ECU40は、電流制限値Ilim1及びIlim2を考慮しながら電力指令値P1*及びP2*を算出する場合であっても、電力指令値P1*及びP2*の総和(つまり、電力指令値P*)を維持することができる。つまり、電源制御装置は、電力指令値P1*及びP2*の再算出によって電源システム30とモータジェネレータ10との間でやり取りされる電力が大きく変動しないように、電力指令値P1*及びP2*を算出することができる。その結果、モータジェネレータ10に入力される又はモータジェネレータ10から出力される電力が意図せずして変動してしまうことに起因した車両1の走行性能への悪影響が発生することは殆ど又は全くない。
一方で、電流制限値Ilim1を超過するバッテリ電流I1が電力変換器33に流れることに起因した負担及び電流制限値Ilim2を超過するバッテリ電流I2が電力変換器34に流れることに起因した負担をできる限り負担するという点から言えば、ECU40は、電力指令値P*が小さくなる(典型的には、モータジェネレータ10の出力が小さくなる)ように電力指令値P*を再度算出してもよい。その結果、電力指令値P*の減少に伴って電流指令値I1*及びI2*の少なくとも一方もまた小さくなるがゆえに、バッテリ電流I1及びI2が電流制限値Ilim1及びIlim2を超過しない状況が比較的容易に作り出される。
尚、上述の説明では、電源システム30は、2つのバッテリ31及び32を備えている。しかしながら、電源システム30は、電気的に並列に接続される3つ以上のバッテリを備えていてもよい。この場合、電源システム30は、3つ以上のバッテリに夫々対応する3つ以上の電力変換器を備えていてもよい。この場合であっても、上述した態様で3つ以上の電力変換器が制御されることで、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電源制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。