JP2016114907A - 導電性弾性ベルト、導電性弾性ベルトユニット、画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献3には、半導電性ゴムからなる弾性層と表面層とを有する半導電性ベルトであって、表面層はポリ四フッ化エチレン樹脂微粉末を含有する樹脂層からなり、表面層のSPM法で測定した硬度対応ピーク電圧値が−6.35V以下である半導電性ベルトが開示されている。
特許文献5には、シート状基体の表面に、耐熱性弾性層とフッ素樹脂層とが順次積層された電子写真用の定着用ベルトであって、表面の厚み方向の圧力に対する歪み量の関係を示すグラフの傾きをKとしたとき、K≧2.0×10−11m/Paであり、表面の厚み方向の圧力に対する復元率をRとしたとき、R≧60%である定着用ベルトが開示されている。
特許文献6には、基層に積層された弾性層と感光層とを有し、さらに、弾性層と感光層との間に、弾性層のヤング率よりも大きく、感光層のヤング率よりも小さいヤング率を示す緩衝層を有する中間転写ベルトが開示されている。
特許文献7には、弾性層上に表面層を有し、表面層が潤滑性粒子を表面層全体の全固形分に対して、10質量%以上80質量%以下含有し、表面層における潤滑性粒子の分布が、3.0≧表面層表面の潤滑性粒子量/表面層内部の潤滑性粒子量≧0.8の範囲であり、表面粗さが0.1μm以上3μm以下の範囲である中間転写体が開示されている。
特許文献8には、ベース層、弾性層および表層の少なくとも3層が内周面から外周面に向かって順次積層され、表層が、フッ素樹脂1質量部に対してフッ素ゴムを1質量部より多く、5質量部以下の割合で含むゴムラテックスおよび硬化剤を有する多層ベルトが開示されている。
導電性のゴム基材と、
前記導電性のゴム基材上に設けられた保護層であって、離型層と、前記導電性のゴム基材および前記離型層の間に設けられ、前記離型層よりもマルテンス硬度が低い中間層と、を含む保護層と、
を有する導電性弾性ベルトである。
前記離型層のマルテンス硬度が10N/mm2以上25N/mm2以下であり、前記中間層のマルテンス硬度が5N/mm2以上10N/mm2未満である請求項1に記載の導電性弾性ベルトである。
前記離型層が、ウレタン樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、窒化ホウ素、シリカ、及びポリアミド粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤と、を含有する請求項1または請求項2に記載の導電性弾性ベルトである。
前記離型層が、さらに補強剤を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトである。
前記保護層の総厚みが1μm以上15μm以下であり、前記離型層と前記中間層との厚みの比(前記離型層の厚み/前記中間層の厚み)が、1/10以上10/1以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトである。
前記導電性弾性ベルトの体積抵抗率が105Ωcm以上108Ωcm以下であり、前記離型層面から測定した前記導電性弾性ベルトの表面抵抗率が107Ω/□以上1011Ω/□以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトである。
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトと、
前記導電性弾性ベルトを張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、
を備えたベルトユニットである。
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトを備える画像形成装置である。
請求項2に係る発明によれば、離型層のマルテンス硬度が10N/mm2未満25N/mm2を超え、中間層のマルテンス硬度が5N/mm2未満10N/mm2以上である場合に比べて、離型層の摩耗を適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張が抑制される導電性弾性ベルトが提供される。
請求項6に係る発明によれば、導電性弾性ベルトの体積抵抗率が105Ωcm未満であり、導電性弾性ベルトの離型層面から測定した表面抵抗率が105Ω/□未満である場合に比べて、離型層の亀裂の拡張が抑制される導電性弾性ベルトが提供される。
本実施形態に係る導電性弾性ベルトは、導電性のゴム基材と、この導電性のゴム基材上に設けられた保護層とを有する。さらに、この保護層は、離型層と、中間層とを含み、この中間層は、導電性のゴム基材および前記離型層の間に設けられている。そして、この中間層のマルテンス硬度は、離型層のマルテンス硬度よりも低くなるように形成されている。
また、中間層のマルテンス硬度が離型層のマルテンス硬度よりも低い、すなわち、離型層のマルテンス硬度が、中間層のマルテンス硬度よりも高いことにより、離型層は適度な摩耗性を有している。
その結果、本実施形態に係る導電性弾性ベルトは、離型層の摩耗を適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張が抑制されると考えられる。
なお、適度な摩耗性を有している場合には、多量(例えば、10万枚)に画像形成を行っても、ベルトの駆動トルクの変化は小さいが、適度な摩耗性を有していない場合には、多量(例えば、10万枚)に画像形成を行うと、表面性低下とクラックによるベルトの駆動トルクの変化が大きくなるという現象がみられることがある。
しかしながら、本実施形態に係る導電性弾性ベルトは、上記構成を有することにより、使用環境や連続使用によるベルト屈曲運動が、上記のように繰り返される場合であっても、離型層の摩耗を適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張が抑制される。
前述のように、本実施形態に係る導電性弾性ベルトにおいて、保護層は、離型層と、中間層とを有しており、この中間層のマルテンス硬度は、離型層のマルテンス硬度よりも低くなるように形成されている。
測定対象となる導電性弾性ベルトのゴム基材上に、中間層を形成したベルト試料を用意する。つまり、測定対象となる導電性弾性ベルトのゴム基材と同じ組成のベルト基材を準備し、このベルト基材の上に、測定対象となる導電性弾性ベルトの中間層と同じ組成の中間層を形成してベルト試料を用意する。そして、このベルト試料をダイナミック超微小硬度計DUH−211(島津製作所社製)の測定装置にセットし、対面90度のピラミッド形状のダイヤモンドを用いて、中間層に、0.01mmの引っ掻き幅が生じるときの荷重を測定し、中間層のマルテンス硬度を測定する。
別途、測定対象となる導電性弾性ベルトを用意する。そして、中間層のマルテンス硬度の測定と同様の手順により、離型層のマルテンス硬度を測定する。
なお、マルテンス硬度の測定条件は三角推圧子稜間角115°で、試験力: 0.5mN、負荷速度:0.03mN/秒、負荷保持時間:5秒で測定を行う。
本実施形態に係る導電性弾性ベルトは、離型層の摩耗を適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張を抑制する観点から、体積抵抗率が105Ωcm以上108Ωcm以下であり、離型層面側から測定した前記導電性弾性ベルトの表面抵抗率が107/□以上1011□以下であることが好ましい。また、表面抵抗率、及び離型層面側から測定した表面抵抗率が上記範囲であると、感光体や用紙間の剥離放電に伴うオゾン劣化によって生じる離型層の亀裂の発生が抑制される。
表面抵抗率ρs(Ω/□)は下記式により算出する。ここで、下記式において、d(mm)は円柱状電極部の外径、D(mm)はリング状電極部の内径を示す。また、電圧V(V)は印加電圧、電流I(A)は電圧を印加したときに流れる電流を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
式ρv=2.011×(V/I)×t
なお、体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
ここで、上記式に示される2.011は、抵抗率に変換するための電極係数であり、円柱状電極部の外径d(mm)、試料の厚さt(cm)より、πd2/4tとして算出される。また、導電性弾性ベルトの厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
本実施形態に係る導電性弾性ベルトの導電性のゴム基材は、導電性を有するゴム材料から構成される。導電性のゴム基材は、例えば、ゴム材料と導電剤とを含み、必要に応じて、その他の添加剤とを含んでいてもよい。
なお、導電剤とは、例えば、体積抵抗率で107Ωcm未満の材料を示す。
ゴム材料としては、具体的には、例えば、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Si,Q)、フッ素ゴム(FKM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加されたNBR(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エピクロロヒドリン・エチレンオキシドゴム(ECO)、エピクロロヒドリン・エチレンオキシド・アリルグリシジルエーテルゴム(GECO)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)等が挙げられる。これらのゴム材料は、1種単独でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、以下の説明において、ゴム材料を上記のカッコ内に示した略号で記載する場合がある。
導電剤としては、電子導電剤とイオン導電剤とが挙げられ、電子導電剤とイオン導電剤とのいずれか一方、または両方を併用して用いてもよい。導電性弾性ベルトの電気的特性(体積抵抗率)の環境安定性の観点から、電子導電剤とイオン導電剤とを併用することが好ましい。
ここで、カーボンブラックとして具体的には、オリオンエンジニアドカーボンズ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
電子導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。
イオン導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
また、ゴム用薬品として、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、プロセスオイル等が挙げられ、着色剤として、各種顔料が挙げられる。
保護層は、中間層と離型層とを含んで形成される。保護層は、中間層と離型層との2層の構造で形成されてもよいが、必要に応じて、ゴム基材と中間層との間、中間層と離型層との間に接着層を設けてもよい。中間層は、1層でもよいが、離型層のマルテンス硬度よりも低く形成されている限り、2層以上の構造に形成されてもよい。
また、本実施形態に係る導電性弾性ベルトの保護層において、接着層を含む場合、接着層のマルテンス硬度は、離型層のマルテンス硬度よりも低いことが好ましい。ただし、導電性弾性ベルトの製造工程が煩雑となるため、接着層は含まないことが好ましい。なお、接着層は中間層の概念には含まれないものである。
離型層は、離型層の摩耗をより適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張をより抑制する観点から、樹脂を含むことが好ましい。また、必要に応じて、樹脂に加えて、潤滑剤、及び補強剤のいずれか一方、または両方を含んでいてもよい。
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、シリコーン樹脂、又はフッ素含有樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂の中でも、使用環境の変化に伴うベルト基材の伸長に追従しやすくなる点で、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
また、イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族イソシアネート;トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート3量体;イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート3量体;HDIとトリレンジイソシアネート(TDI)との混合イソシアヌレート3量体;その他イソシアヌレート3量体、アダクト体、ビュレット体等が挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
離型層には、さらに、離型層の離型性がより向上する点で、潤滑剤を含むことが好ましい。この潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン、黒鉛、窒化ホウ素、シリカ、ポリアミド粉等が挙げられる。これらの中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン、及び黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの潤滑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、離型層の離型性がより向上する点から、PTFEを用いることがより好ましい。
離型層には、離型層の摩耗をより適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張をより抑制する点で、さらに、補強剤を含有することが好ましい。補強剤は、上記に挙げた潤滑剤以外の粒子であり、離型層を補強する効果を有する樹脂粒子、又は無機粒子である。
補強剤としては、具体的には、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)等のフッ素含有化合物の樹脂粒子;ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等のフッ素樹脂以外の樹脂粒子;カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ケイ素アンチモン、酸化アルミニウム等の無機粒子が挙げられる。これらの補強剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。
中間層に用いる材料は、離型層のマルテンス硬度よりも低くなるように形成し、離型層、及びゴム基材と剥離しない限り、特に限定されない。中間層の緩衝作用による、離型層の亀裂の拡張をより抑制する観点から、中間層には、樹脂を含むことが好ましい。また、必要に応じて、樹脂に加えて、潤滑剤、及び補強剤のいずれか一方、または両方を含んでいてもよい。しかしながらその配合割合を制御することにより、硬度や界面接着性、柔軟性などが調整されることから同材料系でも添加剤の配合内容とその比率調整による積層化で対応してもよい。
中間層には、離型層に用いる樹脂で例示した樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル樹脂、シリコーン樹脂、又はフッ素含有樹脂等が挙げられる。中でも、離型層との密着性が向上する点で、離型層に使用した樹脂と同じ種類の樹脂を用いることが好ましい。一例としては、離型層にポリウレタン樹脂を用いた場合には、中間層にもポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。ただし、中間層のマルテンス硬度やその界面の密着性を調整する点や、中間層の緩衝作用の点から、中間層に用いる樹脂は、架橋させない、または架橋させる程度を離型層よりも小さくするほうが好ましい。
中間層には、離型層に用いる潤滑剤で例示した潤滑剤を用いることができる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン、及び黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤が挙げられる。
中間層には、離型層に用いる補強剤で例示した、無機粒子、及び樹脂粒子の補強剤を用いることができる。具体的には、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)等のフッ素含有化合物の樹脂粒子;ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等のフッ素樹脂以外の樹脂粒子;カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ケイ素アンチモン、酸化アルミニウム等の無機粒子が挙げられる。
保護層は、離型層の摩耗をより適度に抑えつつ、離型層の亀裂の拡張をより抑制する点で、総厚みが、1μm以上15μm以下であり、離型層と中間層との厚みの比(離型層の厚み/中間層の厚み)が、1/10以上10/1以下であることが好ましい。総厚みが、2μm以上15μm以下であり、離型層と中間層との厚みの比が、1/8以上8/1以下であることがより好ましく、総厚みが、3μm以上10μm以下であり、離型層と中間層との厚みの比が、1/5以上5/1以下であることがさらに好ましい。
保護層の厚み、及び中間層の厚みと離型層との厚みの測定方法は、以下のようにして行う。例えば、塗膜の各比重から塗布量に対してその重量差より換算して平均的な膜厚を算出する方法や、塗布する際に基材の膜厚を予め測定しておき、塗布後の乾燥膜厚からその差を測定する方法を用いる。膜厚は直接マイクロメーターやレーザー粗さ計、うず電流測定計等の測定機器を用いる。上記測定方法により得られた中間層の厚みと、離型層との厚みとから、中間層と離型層との厚みの比(離型層の厚み/中間層の厚み)を算出する。
次に、本実施形態に係る導電性弾性ベルトの製造方法について説明する。
導電性のゴム基材の製造方法については、導電性のゴム基材が得られる限り、特に限定されない。例えば、ゴム材料と導電剤とを混練し、加硫剤、加硫促進剤等の各種添加剤を加えて押出加工を行った後、加硫処理を行い、導電性のゴム基材が得られる。例えば、具体的に、クロロプレンゴム(CR)とアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)とエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とエピクロロヒドリンゴム(CO)アリルグリシジルエーテル共重合体(GECO)とをブレンドした材料を一例として挙げると、以下のように製造される。
導電性のゴム基材を得るための上記の混練されたゴム材料を押出成形する場合には、加硫マンドレルと呼ばれる、ベルト内径と同サイズの外径を持つ金属製のシリンダに、混練したゴム材料を覆い被せた状態で予め定めた条件(例えば、170℃で1時間)にて加硫させる。その後、研磨用マンドレルに加硫したゴム材料を被せて、導電性のゴム基材の内周面と外周面とを研磨し、厚みと、表面の平滑性を調整して導電性のゴム基材が得られる。
保護層の形成方法は、導電性のゴム基材上に、中間層と離型層とを有する保護層を形成し得る限り、特に限定されない。例えば、一例としては、中間層を形成するための樹脂を含む中間層用塗布液と、離型層を形成するための潤滑剤および補強剤を含有した樹脂と樹脂を架橋するための架橋剤とを含む離型層用塗布液と、を準備する。そして、導電性のゴム基材上に、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法により、中間層用塗布液を塗布し、ついで、離型層用塗布液を塗布する。その後、導電性のゴム基材上に付着した中間層用塗布液と離型層用塗布液とを同時に加熱硬化処理を行う方法が挙げられる。中間層用塗布液の塗布後、離型層用塗布液の塗布のいずれか一方、又は、その両方において、硬化処理を行う前に、予備乾燥を行い、塗膜を乾燥固化させてもよい。
他の形成方法の一例としては、導電性のゴム基材上に付着した中間層用塗布液を加熱して硬化処理を行う。次いで、乾燥した中間層上に、離型層用塗布液を塗布した後、加熱して硬化処理を行う方法が挙げられる。
本実施形態の導電性弾性ベルトは、電子写真方式の画像形成装置における用紙搬送ベルトとして好適に用いられる。また、中間転写ベルトにも適用してもよい。その他、定着装置を通過した後の用紙を冷却するための冷却ベルト、駆動ベルト等の他の導電性弾性ベルトに適用してもよい。
次に、本実施形態に係る導電性弾性ベルトを適用した画像形成装置の一例について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。
また、中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体(中間転写ベルト)の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。そして、この中間転写ベルトに、本実施形態に係る導電性弾性ベルトが適用される。
図1に示す画像形成装置100は、矢印A方向に回転する電子写真感光体10の周囲に、電子写真感光体10の表面を帯電する帯電装置11(帯電手段の一例)、帯電した電子写真感光体10の表面に露光ビームBmを照射して静電潜像を形成する露光装置12(静電潜像形成手段の一例)、トナーを収容し、電子写真感光体10上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置13(現像手段の一例)、電子写真感光体10上の残留トナーを除去するクリーニング装置17(クリーニング手段の一例)を備えている。そして、このクリーニング装置17には、クリーニングブレード17a、潤滑材18を電子写真感光体10の表面に供給する繊維状部材16(ロール状)が設けられている。
さらに、図1に示す画像形成装置100は、転写ユニット20、記録媒体Pに転写された未定着トナー像を定着する定着装置60、各装置(各部)の動作を制御する制御部(不図示)を備えている。
また、転写ユニット20は、駆動ロール22と従動ロール23とによって張力を持って架け渡された用紙搬送ベルト21(導電性弾性ベルトを適用した一例)と、用紙搬送ベルト21の内側に配設され、用紙搬送ベルト21を介して電子写真感光体10に押圧される転写ロール24とを備えている。さらに、駆動ロール22を通過した後に用紙搬送ベルト21の表面上の付着物を掻き取るクリーニングブレード25が設けられている。
転写ユニット20は、矢印B方向に回転する用紙搬送ベルト21により、転写部15に搬送されてくる記録媒体Pに電子写真感光体10上のトナー像を転写する機能と、転写部15においてトナー像が転写された記録媒体Pを定着装置60まで搬送する機能とを有している。
次に、本実施形態に係る導電性弾性ベルトを適用した導電性弾性ベルトユニット(以下、「ベルトユニット」と称する)について説明する。
本実施形態に係る導電性弾性ベルトが適用されたベルトユニットは、導電性弾性ベルトと、張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備えている。例えば、導電性弾性ベルトは、互いに対向して配置された駆動ロール及び従動ロールにより張力がかかった状態で掛け渡されている。
本実施形態に係る導電性弾性ベルトを、例えば、用紙搬送ベルトとして適用した場合、ベルトユニットは、上記の各ロール(駆動ロール及び従動ロール)に加えて、感光体(像保持体)表面のトナー像を記録媒体に転写させるための転写ロールを備えたものであってもよい。例えば、図1に示す画像形成装置において、駆動ロール22と従動ロール23とによって張力がかかった状態で架け渡された用紙搬送ベルト21と、用紙搬送ベルト21の内側に配設され、用紙搬送ベルト21を介して電子写真感光体10に押圧される転写ロール24とを備えたユニットは、本実施形態に係る導電性弾性ベルトを用紙搬送ベルトとして適用した場合のベルトユニットの一例である。
また、例えば、中間転写ベルトとして適用した場合、上記の各ロール(駆動ロール及び従動ロール)に加えて、感光体(像保持体)表面のトナー像を中間転写ベルト(導電性弾性ベルトを適用した他の一例)上に1次転写させるためのロールと、中間転写ベルト上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に2次転写させるためのロールが配置されていてもよい。
なお、張力がかかった状態で掛け渡すためのロールの数や位置は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。
ゴム材料として、クロロプレンゴム(CR)(WRT:昭和電工社製)30部、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)(エスプレン505:住友化学社製)70部を加圧式ニーダーで混錬し、電子導電剤として、カーボンブラック(アセチレンブラック:電気化学工業社製)30部、充填剤として、酸化亜鉛(日本化学工業社製)5部、酸化マグネシウム(共和化学社製)5部、硫黄加硫剤(サルファックスPMC:鶴見化学工業社製)1部、加硫促進剤(ノクセラーTS,ノクセラーDT:いずれも大内新興化学工業社製)各1部を投入し、2本加熱ロールでさらに混錬した。
この混練物をベルト状(95mmφ)に肉厚1.2mmで押出加工し、アルミニウム製ドラム面に被覆成形させた。この後、飽和蒸気高圧缶で、170℃、1時間加硫させた。次いで、円筒研磨で0.45mmの厚さになるように研磨して、導電性のゴム基材(ゴム硬度5.5度)を作製した。
次に、導電性のゴム基材上に、中間層と離型層とを含む保護層を形成した。
上記で得た導電性のゴム基材の上に、中間層用塗布液として、黒鉛を含有した1液型の水系ポリウレタン樹脂(ボンデライトL−GP154(鉛筆硬度B、黒鉛5質量部含有):ヘンケル社製)を、スプレーコートによって、2μm(乾燥固化後の膜厚)になるように塗布し、室温で乾燥固化させた。次いで、乾燥固化した中間層用塗布液の塗膜上に、離型層用塗布液として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有した2液硬化型の水系ポリウレタン樹脂(ボンデライトS−FN345(鉛筆硬度H、PTFE15質量部含有):ヘンケル社製)を、スプレーコートによって、3.2μm(乾燥固化後の膜厚)になるように塗布した。その後、ゴム基材上に乾燥固化させた中間層とともに、120℃、30分加熱して、硬化処理を行い、導電性弾性ベルトを得た。
この導電性弾性ベルトに対して引張試験を行い、引張伸長率とクラックの関係について評価を行った。実施例1の導電性弾性ベルトは、引張伸長率として97%まで伸張させても、G3以上のクラックの悪化は見られなかった。なお、クラックは、後述する亀裂の評価基準に準じて評価を行った(以下の実施例、及び比較例も同じ)。
中間層用塗布液として、フッ素ゴムエマルション(GL252EA:ダイキン工業社製)を用い、3μm(乾燥固化後の膜厚)になるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性弾性ベルトを得た。
この導電性弾性ベルトに対して引張試験を行い、引張伸長率とクラックの関係について評価を行った。実施例2の導電性弾性ベルトは、引張伸長率として40%まで伸張させても、G2以下のクラックを保持していた。
中間層用塗布液として、紫外線硬化型ポリウレタン樹脂(アロニックスM−1310/アロニックスM−110=80部/20部:いずれも東亜合成社製、ポリエステル系ポリウレタン)100部と光重合開始剤(イルガキュア184:BASF社製)1部とを用いて調製し、ロールコートによって、2μm(乾燥固化後の膜厚)になるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性弾性ベルトを得た。
ゴム材料として、CRを20部、EPDMを45部、エピクロロヒドリンゴム(CO)を30部とし、電子導電剤として、カーボンブラックを30部、及び、イオン導電剤として、過塩素酸リチウム(和光純薬工業社製)を1部としたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性弾性ベルトを得た。
この導電性弾性ベルトに対して引張試験を行い、引張伸長率とクラックの関係について評価を行った。実施例4の導電性弾性ベルトは、引張伸長率を35%まで伸張させても、G2以下のクラックを保持していた。
離型層用塗布液として、二硫化モリブデン配合のL−GPM210(ヘンケル社製)を用いて、2.7μm(乾燥固化後の膜厚)になるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性弾性ベルトを得た。
この導電性弾性ベルトに対して引張試験を行い、引張伸長率とクラックの関係について評価を行った。実施例5の導電性弾性ベルトは、引張伸長率を40%まで伸張させても、G2以下のクラックを保持していた。
中間層を形成せず、離型層用塗布液のみを塗布して離型層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性弾性ベルトを得た。この導電性弾性ベルトは、導電性のゴム基材上に、離型層のみ形成されている導電性弾性ベルトである。
この導電性弾性ベルトに対して引張試験を行い、引張伸長率とクラックの関係について評価を行った。比較例1の導電性弾性ベルトは、引張伸長率を5%まで伸張すると、G3のクラックが発生した。
離型層用塗布液として、実施例1の離型層用塗布液のPTFE含有量を半減した(ドックタイトT820F)を用いて離型層を設けた以外は、比較例1と同様にして、導電性弾性ベルトを得た。
この導電性弾性ベルトに対して引張試験を行い、引張伸長率とクラックの関係について評価を行った。比較例2の導電性弾性ベルトは、引張伸長率を11%まで伸張すると、G3のクラックが発生した。
各実施例、及び各比較例で得られた導電性弾性ベルトについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
各実施例、及び各比較例で得られたゴム基材上に、各例の中間層を形成した導電性弾性ベルト試料を準備して、既述の方法により、中間層のマルテンス硬度を測定した。また、各実施例、及び各比較例で得られた導電性弾性ベルトを用意して、既述の方法により、離型層のマルテンス硬度を測定した。
既述の方法で測定を行い、保護層の総厚み、離型層と中間層との厚みの比(離型層の厚み/中間層の厚み)を算出した。
各導電性弾性ベルトを、富士ゼロックス社製D110(モノクロ複合機)の用紙搬送ベルトとして装着し、A4普通紙を用いて画像の形成を行った。画像形成は、以下の条件で行った。まず、低温低湿度環境下(10℃、相対湿度15%RH)で2万枚の画像形成を行い、高温高湿度環境下(30℃、相対湿度80%RH)で2万枚の画像形成を行う。さらに、低温低湿度環境下(条件同じ)で2万枚、高温高湿度環境下(条件同じ)で2万枚、低温低湿度環境下(条件同じ)で2万枚の画像形成を繰り返し行い、合計で10万枚の画像を形成した。10万枚の画像を形成した後に、導電性弾性ベルトの離型層面を観察して亀裂の状態の評価を行った。
評価基準は以下のとおりである。
G1:離型層部分ではほとんどクラックは見られない
G2:離型層で一部亀裂発生がみられる
G3:離型層で短いクラックが発生
G4:離型層で一部長いクラックが発生
G5:離型層で全面に長いクラックが発生
各導電性弾性ベルトを、富士ゼロックス社製D110(モノクロ複合機)の用紙搬送ベルトとして装着し、上記の離型層の亀裂の評価と同様の条件で、A4普通紙を用いて画像形成を行った。高温高湿度環境下で画像を形成した8万枚の画像を形成した後の用紙搬送ベルトの駆動トルクを測定し、さらに、低温低湿度環境下で画像を形成した10万枚の画像を形成した後の用紙搬送ベルト(導電性弾性ベルト)の駆動トルクを測定して、両者の駆動トルクの差(「10万枚の画像形成したときの駆動トルク」−「8万枚の画像形成したときの駆動トルク」)を算出した。なお、駆動トルクは、トルクゲージ(富士ゼロックスで作製)を用紙搬送ベルトの離型層面側に装着して測定した。駆動トルクの差が大きい場合には、離型層は摩耗が適度に抑制されていないことになる。
評価基準は以下のとおりである。
G1:0.2kgf・cm以上0.7kgf・cm以下
G2:0.8kgf・cm以上1.0kgf・cm以下(スミヤ発生:画像濃度むら)
G3:1.1kgf・cm以上(ブレードメクレ、クリーニング不良発生)
11 帯電装置
12 露光装置
13 現像装置
14 転写前帯電装置
15 転写部
17 クリーニング装置
20 転写ユニット
21 用紙搬送ベルト
22 駆動ロール
23 従動ロール
24 転写ロール
50 記録媒体収容部
51 取り出しロール
52 搬送ロール
54 位置決めロール
55 案内部
56 案内部
60 定着装置
100 画像形成装置
Claims (8)
- 導電性のゴム基材と、
前記導電性のゴム基材上に設けられた保護層であって、離型層と、前記導電性のゴム基材および前記離型層の間に設けられ、前記離型層よりもマルテンス硬度が低い中間層と、を含む保護層と、
を有する導電性弾性ベルト。 - 前記離型層のマルテンス硬度が10N/mm2以上25N/mm2以下であり、前記中間層のマルテンス硬度が5N/mm2以上10N/mm2未満である請求項1に記載の導電性弾性ベルト。
- 前記離型層が、ウレタン樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、黒鉛、窒化ホウ素、シリカ、及びポリアミド粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の潤滑剤と、を含有する請求項1または請求項2に記載の導電性弾性ベルト。
- 前記離型層が、さらに補強剤を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルト。
- 前記保護層の総厚みが1μm以上15μm以下であり、前記離型層と前記中間層との厚みの比(前記離型層の厚み/前記中間層の厚み)が、1/10以上10/1以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルト。
- 前記導電性弾性ベルトの体積抵抗率が105Ωcm以上108Ωcm以下であり、前記離型層面から測定した前記導電性弾性ベルトの表面抵抗率が107Ω/□以上1011Ω/□以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルト。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトと、
前記導電性弾性ベルトを張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、
を備えた導電性弾性ベルトユニット。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性弾性ベルトを備える画像形成装置。
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