以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る温度測定装置10は、はんだごてのこて先や、はんだ吸引装置に用いられる吸引チップなど、高温に加熱される部材(発熱部材)の温度を測定する装置である。図示の例では、温度測定装置10は、コンピュータ11に接続されて使用される。
温度測定装置10は、筐体101を備える。筐体101は、測定者に臨む方向に長辺を沿わせて設置される。以下の説明では、筐体101が利用者に向く方向を仮に前方とする。また、向かって右側を右側面とし、左側を左側面とする。
筐体101の前部には、平らな検査作業エリア102が形成されている。検査作業エリア102のある筐体101内部には、測定部103の演算部等が内蔵されている。測定部103は、種類の異なる2条の金属線103a、103bを含む。また、各金属線103a、103bを保持するために、検査作業エリア102に立設される2本の固定ターミナル104a、104bを含む。固定ターミナル104a、104bは、検査作業エリア102の前方部分において、左右に離れて対向している。さらに、固定ターミナル104a、104b間の後部側には、前後にスライドする可動ターミナル104cが設けられている。金属線103a、103bは、それぞれの一端側が、左右に離れた固定ターミナル104a、104bに別々に取り付けられ、他端側が、可動ターミナル104cに固定されている。さらに、両金属線103a、103bの中間部分は、スリーブ103cによって束ねられている。スリーブ103cは、熱伝導性の高い金属で具体化されている。スリーブ103cは、発熱部材が直接当接して、受熱する部位である。各金属線103a、103bは、発熱部材からスリーブ103cを介して受熱することにより、熱起電力を生じる。各金属線103a、103b、103cは、測定部103の測温部130を構成する。
検査作業エリア102の下部には、スライド部材105が設けられている。スライド部材105は、可動ターミナル104cを担持している。スライド部材105と検査作業エリア102とは、図略の機構を介して連結されている。スライド部材105は、図1に示すロック位置とロック解除位置との間で前後に移動できるように連結される。スライド部材105(したがって可動ターミナル104c)は、ロック位置では、図1の位置に固定される。また、このロックが解除されると、可動ターミナル104cは、ロック位置から前方のロック解除位置に移動可能になる。ロック解除位置では、金属線103a、103bを着脱することができる。スライド部材105の後部には、つまみ106が突設されている。このつまみ106を前方にスライドすると、上記機構のロックが解除されて、可動ターミナル104cが前方のロック解除位置に移動する。さらに、ロック解除位置に移動したつまみ106を後方に移動すると、可動ターミナル104cが後方のロック位置に移動するとともに、上記機構のロック作用により、スライド部材105を介して可動ターミナル104cが図1に示すロック位置に固定される。これにより、各ターミナル104a〜104cによって保持されている金属線103a、103bが、張力を付与された状態で保持される。金属線の材質等については、例えば、本件出願人が先に提案している特許第2668389号等に詳細に開示されているので、残余の説明は、省略する。スリーブ103cに発熱部材が接触すると、その熱が各金属線103a、103bに伝達される。各金属線103a、103b、上記熱に応じて起電力を生じる。この起電力により、各ターミナル104a〜104cを介して、内部の演算部に電流が流れる。演算部は、伝達された電流に応じた検出信号Sdを出力する。
筐体101の後部側は、後方に行くに従い、高くなるように傾斜している。この傾斜部分には、ディスプレイ110と、複数のボタン111〜115が配置されている。
ディスプレイ110は、液晶パネルで具体化されている。
ディスプレイ110の前方には、向かって右側から順に電源ボタン111、設定ボタン112、下スクロールボタン113、上スクロールボタン114、及び登録ボタン115が設けられている。電源ボタン111は、図略の給電回路に接続されたスイッチである。また、電源ボタン111を除く各ボタン112〜115は、筐体101に内蔵された制御ユニット120に対し、バス121(図2参照)を介して接続されている。
筐体101の右側部には、コンピュータ接続用のPC接続部116が設けられている。PC接続部116は、例えば、USBで具体化されている。PC接続部116は、上記バス121を介して制御ユニット120に接続されている。このPC接続部116を介して、温度測定装置10は、コンピュータ11と接続されている。
筐体101の後部には、バーコードリーダ接続部117が設けられている。バーコードリーダ接続部117は、シリアル端子で具体化されている。バーコードリーダ接続部117は、上記バス121を介して制御ユニット120に接続されている。このバーコードリーダ接続部117を介して、温度測定装置10には、バーコードリーダ12が接続されている。図示の例において、筐体101の左側部には、バーコードリーダ12を支えるホルダ118が併設されている。
図2に示すように、温度測定装置10の制御ユニット120には、上述した要素の他、バス121を介して、メモリ122、ブザー123が接続されている。
制御ユニット120は、マイクロプロセッサで具体化されている。制御ユニット120は、温度計測機能、金属線103aの寿命評価機能、コンピュータ11とのデータ通信機能等、種々の機能を奏する。
メモリ122は、ROM、RAM、さらに補助記憶装置を含む包括的な要素である。また、RAMは、不揮発性メモリを含んでおり、電源をOFFにした後も、所定のデータを保存し得るようになっている。メモリ122には、制御ユニット120が各機能を奏するために必要なプログラムやデータを保存している。
ブザー123は、エラーの発生等に基づき、制御ユニット120によって駆動される報知手段の一例である。
制御ユニット120によって実行されるプログラムは、ディスプレイ110に表示される選択画面から、ボタン112〜115を適宜操作して択一的に選択できるように構成されている。
次に、制御ユニット120が実行する機能のうち、本実施形態の骨子となる温度計測機能と寿命評価機能とについて説明する。
まず、温度測定機能は、発熱部材の温度を計測する機能である。本実施形態では、温度測定機能を奏するモードとして、二つのモードが用意されている。一つは、測定モードであり、もう一つは、記録モードである。測定モードでは、単純に発熱部材の温度を測定し、ディスプレイ110に表示するモードである。また、記録モードは、バーコードリーダ12によって、発熱部材の品番と測定者IDとを含む情報をバーコードから読み取り、測定時において、測定者ID、測定日時、測定温度T、設定温度Tn、適否判定結果を含む処理データを生成し、生成された処理データをコンピュータ11に送信して記録するモードである。
何れのモードにおいても、測定時に発熱部材が測温部130に接触した場合に、温度測定回数に応じたカウント値を積算する処理が実行される。かかる処理を実行するため、上記メモリ122には、種々のデータが記憶されている。
各モードでの諸機能を実行するため、制御ユニット120は、図3に示すような要素を機能的に構成する。
図3を参照して、制御ユニット120は、各モードの何れにおいても利用されるモジュールとして、測定温度特定部200、温度判定部223、積算部201、寿命判定部202、表示処理部203を構成する。
測定温度特定部200は、測定部103が出力した検出信号Sdに基づいて、測定値となる測定温度Tを演算するモジュールである。測定モードおよび記録モードの双方において、測定温度特定部200は、積算部201および表示処理部203へ測定温度Tを出力する。ただし、後述するように、測定温度特定部200は、測定モードと記録モードとで異なる値を測定温度Tとして出力する。
積算部201は、発熱部材が測温部130に接触した場合に、所定の条件が満たされると、温度測定回数に応じたカウント値を積算し、その累積回数nを出力するモジュールである。すなわち、発熱部材が測温部130に接触した場合に、接触した回数を温度測定回数に応じたカウント値を積算する。積算部201は、累積回数nを寿命判定部202と、表示処理部203の双方に出力する。ここで、累積回数nを更新するために、メモリ122には、積算温度Tsが保存されている(図4〜図10参照)。積算温度Tsは、カウント値を積算するときのしきい値として用いられる温度の値である。測定部103の検出に基づく測定温度Tが積算温度Ts以上の場合、積算部201は、後述する制御手順に基づいて、発熱部材が測温部130に接触した回数をメモリ122に記憶されている累積回数nに加算する。積算温度Tsは、発熱部材の種類や実験値等に基づいて、適宜決定される。例えば、発熱部材がはんだごての場合、はんだの融点近傍に設定することが好ましい。はんだがいわゆる鉛フリーはんだの場合、汎用的な例として、積算温度Tsは、200℃に設定される。もっとも、鉛フリーはんだは、JIS3282:2006の表2に示されているように、固相線温度および液相線温度に応じて中高温、中温、中低温、低温系に溶融温度区分が区分されており、各区分内において、合金の組成ごとに細分類されており、多種多様である。よって、使用されるはんだに応じて適切な値を適宜選択できるようにしておくことが好ましい。そのような観点から、積算温度Tsは、工場から出荷するときに定数とするばかりでなく、ユーザが変更可能な変数として設定可能な仕様にしておいてもよい。
寿命判定部202は、カウント値が積算された累積回数nに基づいて、金属線103a、103bの寿命を予測するモジュールである。なお、金属線103a、103bの寿命は、実際は、個体差に基づくばらつきや、材質によって、大きく変化することが多いため、必ずしも必須のものではない。寿命判定部202は、寿命の判定結果を表示処理部203に出力する。判定結果は、交換の要否を示すBoolean型のデータであってもよく、予測される残使用回数を数値で表示するデータであってもよい。
表示処理部203は、入力された各種データに基づき、表示内容をGUIによってディスプレイ110に表示させるモジュールである。
次に、測定モードを実行するためのモジュールとして、制御ユニット120は、温度変化演算部210、継続時間計測部211、高温継続時間計測部212を構成する。測定モードにおいて、測定温度特定部200は、積算部201および表示処理部203への出力の他、検出信号Sdに基づいて演算した測定温度Tをそのまま温度変化演算部210、継続時間計測部211、および高温継続時間計測部212に出力する。
温度変化演算部210は、測定温度特定部200が出力した測定温度Tの値に基づき、単位時間(例えば、0.1秒)当たりの温度変化を演算し、所定の信号を出力するモジュールである。温度変化演算部210は、過冷却による昇温の影響を防止するために用いられる。ここで、図4に例示する過冷却について説明する。
過冷却とは、溶融した金属が凝固する過程で、ある相が凝固開始温度に達しても、その相はすぐには凝固を開始せず、一度凝固温度より少し低い温度まで低下してから凝固を開始し、ふたたび昇温して凝固温度に戻り、その相が晶出を続ける間、一定温度を維持する現象のことをいう。また、一旦、凝固温度よりも低い温度になった後、昇温する点を捉えて、復熱と称することもある。図4の例では、タイミングtrで昇温しているのが過冷却による温度上昇である。
本実施形態においては、発熱部材としてのはんだごてに付着しているはんだによって生じる過冷却が問題となる。特に、はんだが鉛フリーはんだの場合、過冷却が生じやすくなっている。例えば、宮内喜子らが発表した「Sn−Ag−Cu系三元合金の凝固過程および晶出相の体積率」(エレクトロニクス実装学会誌Vol.13、No.7、2010年)によれば、融点から降温したSn−Ag−Cu系三元合金が、211.2℃のところから20℃弱程度、昇温することを示している。
このような過冷却または復熱は、測温部130、特に、金属線103a、103bの寿命評価に悪影響を及ぼす。すなわち、金属線103a、103bの寿命は、発熱部材が図4の積算温度(例えば、200℃)Ts以上の温度に昇温している場合であって、発熱部材から金属線103a、103bが荷重を受けているときに、その接触期間(図4のタイミングt0からtoffの間)に基づいて評価される必要がある。しかしながら、測温部130にはんだが付着していると、一旦、タイミングtoffのところで積算温度Ts以下に測定温度Tが低下した後も、スリーブ103c等に付着したはんだに過冷却が生じることにより、測定部103が検出する温度は、再びタイミングtrのところで積算温度Ts以上に上昇することがある。そのため、単に測定部103が検出する温度だけに基づいて累積回数nを更新すると、発熱部材が既に測温部130から離れているにも拘わらず、再び累積回数nを更新することになってしまうのである。よって、金属線103a、103bの寿命を評価する際には、過冷却の影響を排除する必要がある。
過冷却を識別するため、本実施形態では、温度変化演算部210が積算部201に対し、温度上昇値ΔTu(図5〜図8参照)を出力する。温度上昇値ΔTuは、測定温度Tが上昇した場合に上記単位時間当たりに上昇した温度の値である。これとともに、メモリ122には、昇温判定値Tuが記憶されている。昇温判定値Tuは、発熱部材としてのこて先が溶融するはんだの種類や実験値等に基づいて、適宜決定される。例えば、一般的な例として、昇温判定値Tuは、20℃に設定される。昇温判定値Tuは、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。
そして、測定モードにおいて、積算部201は、上記昇温判定値Tuをメモリ122から読み取る。次いで、温度変化演算部210が出力した温度上昇値ΔTuが、上記昇温判定値Tu以上であるか否かを判定し、カウント値を積算し、累積回数nを更新すべきかどうか判定する。これにより、測定温度Tが上昇した場合に、積算部201は、その温度上昇が発熱部材の接触によるものであるか、それとも過冷却に起因するものであるかを判定することが可能となる。
継続時間計測部211は、予め設定された時間間隔を一区切りの継続時間Tr1(図5〜図10参照)として、測定温度Tが積算温度Ts以上に達してから経過した時間を継続時間Tr1ごとに計測するタイマとして機能するモジュールである。高温の発熱部材が測温部130を押さえつけている状態では、金属線103a、103bにも相当な負荷がかかるので、この状態が長く続いていると判断される場合には、継続時間Tr1ごとに累積回数nを更新することとしているのである。継続時間Tr1は、測温部130の金属線103a、103bの種類や実験値等によって、適宜決定される。例えば、一般的な例として、継続時間Tr1は、15秒に設定される。継続時間Tr1は、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。
図5および図6に示すように、測定温度Tがをタイミングt0のところで積算温度Tsに達した場合、後述する制御手順により、継続時間Tr1がタイミングt0から計測される。仮に、図5に示すように、継続時間Tr1が経過する前に、測定温度Tが積算温度Tsを下回った場合、タイミングt0のところだけ(すなわち、1回だけ)、累積回数nが更新される。一方、図6に示すように、継続時間Tr1が経過しても、測定温度Tが積算温度以上であるときは、継続時間Tr1が経過する度(タイミングt1、t2)に、累積回数nが更新される。
次に、継続時間Tr1を計測するときの例外について説明する。
図7を参照して、継続時間Tr1の計測中(例えば、タイミングt1のところ)に測定者が発熱部材を測温部130から離してしまった場合、測定温度Tは、その時点から下がっていくことになるのであるが、発熱部材が測温部130から離れたときのタイミングによっては、測定温度Tが積算温度Tsを下回るタイミングtoffよりも継続時間Tr1が経過するタイミングt2の方が遅くなる場合がある。このような場合、実際は、発熱部材が測温部130から離れているため、寿命評価の観点から、累積回数nを更新すべきではない。そこで、図7に示したように、継続時間Tr1の計測中に測定者が発熱部材を測温部130から離した場合に、継続時間Tr1の計測をリセットして、カウント値の余分な積算を回避する措置が取られている。具体的には、温度変化演算部210から温度降下値ΔTdが出力され、積算部201に入力される。これとともに、メモリ122には、降温判定値Tdが記憶されている。降温判定値Tdは、発熱部材としてのこて先が溶融するはんだの種類や実験値等に基づいて、適宜決定される。例えば、一般的な例として、降温判定値Tdは、10℃に設定される。降温判定値Tdは、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。
そして、測定モードにおいて、積算部201は、上記降温判定値Tdをメモリ122から読み取る。次いで温度変化演算部210が出力した温度降下値ΔTdが、上記降温判定値Td以上であるか否かを判定する。
積算部201は、温度降下値ΔTdが継続時間Tr1の計測中に測定温度Tが下降した場合において、予め設定された単位時間(例えば、0.1秒)当たりの温度降下値ΔTdが予め設定された降温判定値Td以上のときには、その時点で継続時間Tr1の計測をリセットして再計測する。これにより、図7に示すように、継続時間Tr1の計測中に測定者が発熱部材を測温部130から離してしまった場合、継続時間Tr1の計測は、その後、温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上、下がったところ(図7のタイミングtdのところ)でリセットされ、リセット後に再計測が開始される。この結果、再計測前に計測していた継続時間Tr1が経過するタイミングt2のところでは、累積回数nの更新は行われず、余分な積算が回避されることになる。
次に、高温継続時間計測部212は、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu未満の場合に、測定温度Tが積算温度Ts以上のときは、測定温度Tが積算温度Tsに達した時点から、予め設定された高温継続時間Tr2を計測する。高温継続時間Tr2は、過冷却によって上昇した温度が再び下がるのを待機するために好適な時間間隔として設定される。
図8を参照して、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu未満の場合、すなわち、温度上昇があっても、その上昇特性が緩慢な場合、過冷却による昇温を排除するため、積算部201は、累積回数nを更新しなくなる。しかしながら、緩慢な昇温であっても、発熱部材が測温部130に当接し、相当な時間が経過している場合には、金属線103a、103bが負荷を受けているものとして、累積回数nを更新した方がよい場合がある。他方、測定温度Tが積算温度Ts以上になった場合であっても、過冷却による昇温は、排除される必要がある。そこで、本実施形態では、高温継続時間Tr2を計測し、この高温継続時間Tr2が経過した場合には、そのタイミングt3で累積回数nを更新することとしているのである。
高温継続時間Tr2は、発熱部材としてのはんだごてに用いられるはんだの種類等によって、適宜決定される。すなわち、過冷却が生じた場合、図8のTeで示すように、測定温度Tが積算温度Ts以上に維持されている時間は、実験等によって特定することが可能である。従って、この時間Teよりも充分に高い時間を高温継続時間Tr2として設定することにより、過冷却による昇温を回避することができるのである。例えば、一般的な例として、高温継続時間Tr2は、6秒に設定される。高温継続時間Tr2は、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。
図8に示すように、測定温度Tがタイミングt0のところで積算温度Tsに達した場合において、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu未満のときは、このタイミングt0のところでは、累積回数nは、積算されない。しかしながら、高温継続時間計測部212は、測定温度Tが積算温度Tsに達した時点、すなわち、タイミングt0のところで、高温継続時間Tr2の計測を開始する。仮に、図8に示すように、高温継続時間Tr2がタイミングt3のところで経過した場合には、このタイミングt3で累積回数nが更新される。そして、後述するように、このタイミングt3から継続時間Tr1の計測が開始され、その後は、高温継続時間Tr2が経過する度(タイミングt1、t2)に、累積回数nが更新される。
次に、図3を再び参照して、記録モードに用いられるモジュールとして、制御ユニット120は、検査時間計測部220、温度差演算部221、エラー判定部222、および温度判定部223を有する。記録モードにおいて、測定温度特定部200は、積算部201および表示処理部203への出力の他、検査時間計測部220、温度差演算部221、および温度判定部223に測定温度Tを出力する。
ここで、測定温度特定部200は、記録モードにおいて、測定温度Tを所定の値に固定する処理(この処理を「マックスホールド」と呼称する)を実行する。マックスホールドでは、測定部103が単位時間ごとに出力した検出信号Sdに基づく複数の検出信号Sdのうち、予め設定された時間内における最大値に係る温度を測定温度Tとして固定することを内容としている。マックスホールドを実行した場合には、手ぶれ等の原因により測定温度Tにばらつきが生じても、実質的な発熱部材の温度を一定値に特定することができるので、誤認定を防止することができる。このように、記録モードにおいては、積算部201、表示処理部203、検査時間計測部220、温度差演算部221、および温度判定部223に出力される測定温度Tは、マックスホールドによって最大値に固定された値である。
検査時間計測部220は、マックスホールドが実行された後、予め設定された時間間隔を検査時間Tr3として計測するモジュールである。検査時間Tr3は、制御ユニット120が測定温度Tを判定するために好適な時間間隔を実験等に基づいて決定される。例えば、一般的な例として、検査時間Tr3は、4.5秒に設定される。高温継続時間Tr2は、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。検査時間Tr3を設定する理由は以下の通りである。
図9を参照して、同図では、測定温度Tの特定が図のC1の通りであるとする。この場合、記録モードにおいて、測定者が発熱部材を測温部130に接触させると、通常は、マックスホールドによって、タイミングtmのところで図9のtmaxで示す値が測定温度Tとして固定される。そのため、マックスホールドによって固定された測定温度Tに基づいて、適切な検査を実行することができる。
これに対し、図10に示すように、測定温度Tの本来の特定が図のC1の通りの場合において、発熱部材を測温部130に接触させた後、所定時間内に測定者が誤って発熱部材を測温部130から離してしまったときは、検出された測定温度Tの特定がC2のように途中で降下してしまう。そのため、特性C2についてマックスホールドされた値tmaxは、実際の測定温度Tの最大値よりも低くなってしまうおそれがある。そのような場合に、判定処理を実行すると、判定誤差が大きくなり、好ましくない。そこで、検査時間Tr3を設けて、この間に温度変化が生じた場合には、エラー判定を実行し、所定の場合には、エラー処理を実行することとしているのである。
また、本実施形態において、検査時間計測部220は、検査時間Tr3を一定条件下でリセットする機能を有している。まず、メモリ122には、第1の判定値Dfが記憶されている。第1の判定値Dfは、測定中の実温度変化(検出信号Sdに基づく温度の変化)が大きい場合に、計測中の検査時間Tr3をリセットし、再カウント処理を実行することにより、安定した測定温度Tをマックスホールドする機能を奏する。第1の判定値Dfは、測定部103の分解能などの値に基づいて設定される。第1の判定値Dfは、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。なお、検査時間Tr3を一定条件下でリセットするため、検査時間測定部220は、次に説明する温度差演算部221が演算した検出温度差Tdfの値も参照するように構成されている。
次に、温度差演算部221は、検査時間Tr3の経過中に、検出信号Sdの変化に基づいて、測定部103が検出している温度と、マックスホールドされた測定温度Tとの検出温度差Tdfを演算するモジュールである。上述したように、手ぶれ等によって測定部103の検出した温度が変化したことを検出する場合において、マックスホールドが実行されている場合には、測定温度Tから温度変化を検出することはできなくなる。そこで、本実施形態では、検出信号Sdに基づいて、個々のタイミングでの温度を演算し、この値を測定温度Tと比較して、検出温度差Tdfを演算することとしているのである。演算された検出温度差Tdfは、エラー判定部222に出力される。
エラー判定部222は、検出温度差Tdfに基づいて、測定不良を判定するモジュールである。メモリ122には、第2の判定値Dsが保存されている。第2の判定値Dsは、測定部103のスペックや実験値等に基づいて、適宜決定される。例えば、一般的な例として、第2の判定値Dsは、−50℃に設定される。第2の判定値Dsは、工場から出荷するときに定数としてもよく、ユーザが変更可能な変数としてもよい。
そして、記録モードにおいて、エラー判定部222は、上記第2の判定値Dsをメモリ122から読み取る。次いで温度差演算部221が出力した検出温度差Tdfが、上記第2の判定値Ds未満であるか否かを判定する。エラー判定部222は、検出温度差Tdfが検査時間Tr3の計測中に検出信号Sdに基づく温度が低下した場合において、検出温度差Tdfが第2の判定値Ds以上のときには、エラー判定を実行する。これにより、図10に示すように、検査時間Tr3の計測中に測定者が発熱部材を測温部130から離してしまった場合、エラー判定部222は、エラー判定を実行する。この結果、不適切な検出値に基づく温度検査を回避することができる。
エラー判定の結果は、温度判定部223に出力される。エラー判定の結果は、例えば、測定温度Tの良否を示すBoolean型のデータである。
温度判定部223は、測定温度Tに基づいて、発熱部材の温度の適否を判定するモジュールである。エラー判定部222の判定結果が、測定エラーの存在を示すものであった場合、温度判定部223は、測定温度Tの良否を示すデータに代えて、測定エラーが生じた旨の信号を表示処理部203に出力する。表示処理部203は、この出力に基づいて、測定エラーをディスプレイ110に表示する。この際、ブザー123を制御する図略のドライバ(ブザー制御部)に測定エラーを伝達し、ブザー123を駆動して測定者に測定エラーを報知するようにしてもよい。この場合、ディスプレイ110やブザー123は、測定エラーを測定者に報知する報知手段として機能する。一方、エラー判定の結果が、測定エラーがなかったことを示す場合、公知の処理に基づいて、測定温度Tの良否を判定する。測定温度Tの判定結果は、例えば、測定温度Tの良否を示すBoolean型のデータである。温度判定部223は、判定結果を表示処理部203に出力する。
次に、図11以下を参照して、上記構成による処理手順について説明する。
図11を参照して、測定者が電源ボタン111を操作し、電源を投入すると、制御ユニット120は、初期化を実行する。具体的には、装置が起動を開始したことを示す初期画面を表示するとともに、モードコードMdを1に設定する(ステップS1)。ここで、モードコードMdは、処理モードを特定するための変数である。モードコードMdが1の場合、測定モードが選択される。モードコードMdが2の場合、記録モードが選択される。
この最初の画面から、測定者は、登録ボタン115を操作することにより、モードコードMdが変更され、各種モードを変更することができる。次いで、測定者は、変更したモードを実行することができる。制御ユニット120は、初期化を実行した後、モード切換操作の有無を判定する(ステップS2)。仮にモード変更操作が行われた場合、制御ユニット120は、変更されたモードに係るプログラムを起動し、更新処理を実行する(ステップS3)。この時点で、実行されるべき、モードコードMdが特定され、ディスプレイ110には、モードコードMdに基づく画面が表示される(ステップS4)。ステップS2でモード変更操作が行われなかった場合、制御ユニット120は、そのまま現時点で設定されているモードコードMdに基づいて、ステップS4を実行する。
次いで、制御ユニット120は、モードコードMd別にプログラムを実行する(ステップS5、S51、S52、S53)。このステップでは、モードコードMdに応じて、温度測定装置10に設定される種々のモードが選択され、実行される。
その後、電源が遮断されるまで、制御ユニット120は、ステップS2以下の処理を繰り返す(ステップS6)。
上述したステップS5において、モードコードMdが1の場合、測定モード計測処理が実行される(ステップS51)。モードコードMdが2の場合、記録モード計測処理が実行される(ステップS52)。次に、これらについて説明する。
図12を参照して、測定モード計測処理(ステップS51)において、制御ユニット120は、メモリ122から累積回数nを読み取る(ステップS501)。次いで、制御ユニット120は、各種の変数、フラグの初期化を実行する(ステップS502)。この処理で初期化される変数は、更新カウント値mと、継続時間Tr1と、高温継続時間Tr2とを含む。なお、以下の説明において、tfは、配列変数であり、計測される時間ごとに設定される時間間隔を示す計測値である。煩雑を避けるため、以下の説明では、単に「tf」と表記するが、実際には、例えば、継続時間Tr1の時間間隔としてtf(1)=14秒が設定され、高温継続時間Tr2の時間間隔としてtf(2)=6秒が設定されている。また、以下の説明において、更新カウント値mを計測する機能を更新カウンタと称し、継続時間Tr1、高温継続時間Tr2を計測する機能をそれぞれ継続時間タイマ、高温継続時間タイマと称する。
更新カウント値mは、制御ユニット120が測定温度Tを読み込んだ回数を示す値である。更新カウント値mを用いる理由は、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu以上の場合において、測定温度Tが積算温度Tsに達していないときに、累積回数nの更新を回避するためである。
また、初期化されるフラグとしては、初回フラグFg1、急上昇フラグFg2、下降フラグFg3を含む。
初回フラグFg1は、測定モード計測処理の実行を開始してから最初に累積回数nを更新する(これを「初回更新」ともいう)までの間の局面(ステータス)を示すフラグである。初回フラグFg1の初期値はFalseとされ、初回更新が実行された時点で、Trueに変更される。
急上昇フラグFg2は、温度上昇値ΔTuが、昇温判定値Tu以上であるか否かの判定結果を示すものであり、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu以上のとき、Trueに設定される。初期値は、Falseである。
下降フラグFg3は、温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上であるか否かの判定結果を示すものであり、温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上のとき、Trueに設定される。初期値は、Falseである。
次いで、制御ユニット120は、測定温度Tを読み取る(ステップS503)。このステップS503において、制御ユニット120は、測定温度特定部200、積算部201として機能し、検出信号Sdから測定温度Tを演算する。
次いで、制御ユニット120は、更新カウント値mをインクリメントする(ステップS504)。
次いで、制御ユニット120は、測定温度Tに基づいて、温度上昇値ΔTuを演算するとともに、この温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu以上であるか否かを判定する(ステップS505)。このステップS505では、制御ユニット120は、温度変化演算部210および積算部201として機能し、発熱部材が測温部130に当接した場合と、過冷却による昇温とを識別する。
ステップS505において、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu以上である場合、制御ユニット120は、急上昇フラグFg2をTrueに設定し(ステップS506)、その後、更新カウント値mの値が予め設定された上限値ms以上になっているか否かを判定する(ステップS507)。上限値msは、例えば、3回に設定され、予めメモリ122に記憶されている。また、ステップS505において、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu未満である場合、制御ユニット120は、ステップS506をバイパスして、次のステップS507に移行する。
次に、ステップS507において、更新カウント値mが上限値ms未満の場合、制御ユニット120は、測定温度Tが積算温度Tsに達しているか否かを判定する(ステップS508)。
ステップS508において、測定温度Tが積算温度Tsに達している場合、制御ユニット120は、急上昇フラグFg2がTrueに設定されているか否かを判定する(ステップS509)。
ステップS509において、急上昇フラグFg2がTrueに設定されている場合、発熱部材が測温部130に接触し、測定温度Tが積算温度Ts以上に達していることを示している。その場合には、累積回数nを更新する必要がある。そこで、制御ユニット120は、ステップS509において、急上昇フラグFg2がTrueに設定されている場合に、累積回数nを更新し(ステップS510)する。ステップS510が実行されることにより、図5から図8のタイミングt0で示すように、積算温度Tsに測定温度Tが上昇した時点で、累積回数nが更新される。
ステップS510を実行された後、制御ユニット120は、更新カウント値mのカウントを停止する(ステップS511)。更新カウント値mは、測定温度Tが積算温度Ts未満の場合に累積回数nの更新を回避するために用いるものであるため、測定温度Tが積算温度Ts以上の局面では、更新カウント値mを計数する必要がないからである。また、更新の重複を避けるため、制御ユニット120は、急上昇フラグFg2の値をFalseに設定する(ステップS512)。また、高温継続タイマをOFFに設定する(ステップS513)。
一方、ステップS507において、更新カウント値mが上限値ms以上の場合、制御ユニット120は、急上昇フラグFg2をFalseに設定する(ステップS514)。この局面では、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu以上ではあるものの、測定温度Tが積算温度Ts未満のまま、制御ユニット120が測定温度Tを上限値msに相当する回数以上読み込んだことを意味している。そこで、そのような局面では、カウント値の積算処理を中止し、メインルーチンに戻ることとしているのである。そのため、制御ユニット120は、ステップS514を実行した後、継続時間Tr1のカウントを停止し(ステップS515)、初回フラグFg1を初期化して(ステップS516)、メインルーチンに復帰する。
なお、上述したステップS510からステップS513の順番は、任意に変更されていてもよい。
図13を参照して、上述したステップS510からステップS513を実行した後、制御ユニット120は、温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上であるか否かを判定する(ステップS520)。つまり、温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上、下がったか否かを判定する。この局面では、制御ユニット120は、積算部201として機能する。
ステップS520において、温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上の場合、すなわち、図7に示したように、測定温度Tが積算温度Ts以上に上昇した場合において測定温度Tが所定の割合で降下したときは、下降フラグFg3がTrueに設定される(ステップS521)。
ステップS521が実行された場合、または、ステップS520において、温度降下値ΔTdが降温判定値Td未満の場合、制御ユニット120は、初回フラグFg1をTrueに設定する(ステップS522)。この局面では、累積回数nがステップS510において更新されているからである。次いで、制御ユニット120は、急上昇フラグFg2をFalseに設定する(ステップS523)。この局面では、測定温度Tが積算温度Ts以上に上昇しているので、過冷却についての処理が不要となるからである。
次に、制御ユニット120は、継続時間Tr1の計測が実行されているか否かを判定し(ステップS524)、継続時間Tr1の計測が実行されていない場合には、継続時間Tr1の計測を開始する(ステップS525)。この局面では、制御ユニット120は、継続時間計測部211として機能し、継続時間Tr1を計測する。
ステップS525を実行した場合、またはステップS524において、継続時間Tr1の計測が既に実行されている場合、制御ユニット120は、継続時間Tr1が計測値tfに達しているか否かを判定する(ステップS526)。
ステップS526において、継続時間Tr1が計測値tf以上である場合、制御ユニット120は、カウント値を積算し、累積回数nを更新する(ステップS528)。これにより、図5〜図8に示すように、継続時間Tr1ごとにカウント値を積算し、累積回数nの更新が可能になる。
ステップS528を実行した場合、制御ユニット120は、継続時間Tr1の計測を再スタートする(ステップS529)。これにより、図6、図8に示すように、複数の継続時間Tr1を計測し、その経過タイミングt1、t2・・・ごとにカウント値を積算し、累積回数nを更新することが可能になる。
ステップS529を実行した後、またはステップS526において、継続時間Tr1が計測値t未満の場合、制御ユニット120は、下降フラグFg3の値を判別する(ステップS530)。継続時間Tr1の計測中に、温度降下が生じているか否かを判別するためである。
ステップS530において、下降フラグFg3の値がTrueであった場合、すなわち、図7のタイミングtdに示すように、継続時間Tr1の計測中における温度降下値ΔTdが降温判定値Td以上の場合、制御ユニット120は、継続時間Tr1の計測を中断し、再計測を実行する(ステップS531)。これにより、再計測前に計測していた継続時間Tr1が経過するタイミングt2のところでは、累積回数nの更新は行われず、余分な積算が回避されることになる。
再び図13を参照して、ステップS532を実行した後、または、ステップS530において、下降フラグFg3の値がFalseであった場合、制御ユニット120は、測定温度Tが積算温度Ts以上であるか否かを判定する(ステップS533)。
ステップS533において、測定温度Tが積算温度Ts以上である場合、制御ユニット120は、図12のステップS503に戻って、上述した処理を繰り返す。この局面では、測定温度Tが依然、積算温度Ts以上であるため、継続時間Tr1ごとにカウント値を積算し、累積回数nを更新する必要があるからである。
一方、ステップS533において、例えば、図5〜図8のタイミングtoffのところを経過した場合、測定温度Tは、積算温度Ts未満になっている。このような場合、制御ユニット120は、図12のステップS515に戻って、ステップS515、S516を実行した後、メインルーチンに復帰する。この局面では、測定温度Tが下がっているため、寿命評価のための累積回数nを更新する必要がないからである。
次に、図12のステップS508において、測定温度Tが積算温度Tsに達していない場合について、図14を参照しながら説明する。
図14に示すように、測定温度Tが積算温度Tsに達していない場合においても、急上昇フラグFg2がTrueに設定されている場合がある。そこで、本実施形態では、まず、急上昇フラグFg2の値を判別することとしている(ステップS540)。
ステップS540において、急上昇フラグFg2の値がFalseである場合、測定温度Tが積算温度よりも低く、且つ発熱部材が測温部130に当接したときのような温度上昇も生じていない、と判定することができる。そこで、急上昇フラグFg2の値がFalseである場合には、制御ユニット120は、更新カウンタをOFFにした後(ステップS541)、図12のステップS515に移行し、ステップS515、S516を実行した後、メインルーチンに復帰する。
一方、ステップS540において、急上昇フラグFg2がTrueの場合、誤検出等の可能性を排除するため、更新カウント値mの値に基づいて、急上昇フラグFg2の変更を決定することとしている。具体的には、制御ユニット120は、更新カウント値mの状態を判別する(ステップS542)。
ステップS542において、更新カウント値mがカウントされている場合、制御ユニット120は、ステップS503に移行して、上述した処理を繰り返す。更新カウント値mがカウントされている場合、ステップS507で上限値ms以上の場合には、急上昇フラグFg2の値に拘わらず、ステップS514以下に移行して、低温時での累積回数nの更新を回避するためである。これにより、カウント値の不要な積算が回避される。
ステップS542において、更新カウント値mがカウントされていない場合、制御ユニット120は、更新カウント値mの値を初期化し(ステップS543)、更新カウント値mのカウントを開始(ステップS544)した後、ステップS503に移行する。ステップS503に移行した後は、上述したように、図12のステップS507において、更新カウント値mの値が予め設定された上限値ms以上になっているか否かが判定される。更新カウント値mが上限値ms以上の場合には、測定温度Tが積算温度Ts未満のまま、制御ユニット120が測定温度Tを上限値ms以上読み込んだことを意味しているので、所定の処理の後、メインルーチンに復帰する。従って、誤検出を回避しつつ確実にカウント値の不要な積算が回避される。
次に、図12のステップS509において、急上昇フラグFg2がFalseの場合について、図8、図15を参照しながら説明する。
図8に示すように、図12のステップS509において、急上昇フラグFg2がFalseの局面では、温度上昇値ΔTuが緩慢に上昇しているものの、測定温度Tは、積算温度Ts以上の高温状態になっている。このような局面では、この測定温度Tの昇温が、発熱部材によるものであるのか、過冷却によるものであるのかを識別する必要がある。そこで、本実施形態では、制御ユニット120が高温継続時間計測部212として機能し、以下の手順に基づいて、高温継続時間Tr2を計測する。
まず、制御ユニット120は、初回フラグFg1の値を判別する(ステップS550)。ステップS550において、初回フラグFg1の値がTrueの場合、制御ユニット120は、直ちに図13のステップS524に移行し、上述した処理を繰り返す。この局面では、既に初回の累積回数nの更新が終了しているので、その後の経過については、専ら、継続時間Tr1の経過毎に累積回数nの更新を繰り返せばよいからである。一方、ステップS550において、初回フラグFg1の値がFalseの場合、制御ユニット120は、高温継続時間Tr2の計測が実行されているか否かを判定する(ステップS551)。ステップS551において、高温継続時間Tr2の計測が実行されていない場合、制御ユニット120は、高温継続時間Tr2の値を初期化し(ステップS552)、計測を開始する(ステップS553)。ステップS553が実行された場合、または、ステップS551において、高温継続時間Tr2の計測が実行されている場合、制御ユニット120は、さらに、高温継続時間Tr2が計測値tfに達しているか否かを判定する(ステップS554)。図8のタイミングt3で示すように、ステップS554において、高温継続時間Tr2が計測値tfに達している場合、制御ユニット120は、ステップS510に移行し、累積回数nを更新する。これにより、図8に示したように、高温継続時間Tr2が計測値tfに達した時点で、累積回数nが更新され、その後は、継続時間Tr1が経過するごとに、累積回数nの更新を実行することができる。一方、ステップS554において、高温継続時間Tr2が計測値tfに達していない場合、制御ユニット120は、引き続き、ステップS503に移行し、上述した処理を繰り返す。
次に、図11のステップS5において、記録モード計測処理(ステップS52)が実行される場合について、図9、図10、図16、図17を参照しながら説明する。
記録モード計測処理(ステップS52)において、制御ユニット120は、記録モードの実行に必要な変数やフラグを初期化する(ステップS571)。この処理で初期化される変数は、検査時間Tr3、検出温度差Tdfを含む。また、ステップS571において初期化されるフラグには、マックスホールドフラグFg4が含まれる。マックスホールドフラグFg4は、測定温度特定部200として機能する制御ユニット120が、マックスホールドを実行したときにTrueとされる。マックスホールドフラグFg4の初期値は、Falseである。なお、図16において、tfは、検査時間Tr3を計測するために、配列変数で設定される計測値である。図16において、計測値tfは、例えば、4.5秒に設定されている。また、検査時間Tr3を計測する機能を温度変化タイマと称する。
次に、制御ユニット120は、バーコード読取処理を実行する(ステップS570)。この処理において、制御ユニット120は、バーコードリーダ12が図略のバーコードから読み取ったデータが伝送されるのを待機する。データに含まれる測定者の識別情報と、発熱部材の識別情報と、設定温度Tnとを読み取ると、バーコードリーダ12との通信を終了する。
次に、制御ユニット120は、測定温度Tを読み取る(ステップS572)。次いで制御ユニット120は、記録モード時における測定温度特定部200として機能し、マックスホールドを実行する(ステップS573)。マックスホールドを実行した後、制御ユニット120は、マックスホールドフラグFg4をTrueに設定する(ステップS574)。
次に、制御ユニット120は、検査時間Tr3の計測を開始する(ステップS575)。この局面では、制御ユニット120は、検査時間計測部220として機能する。検査時間Tr3は、図9および図10に示すように、測定温度Tがマックスホールドされたタイミングtmを基点として、計測される。
次に、制御ユニット120は、マックスホールドされた測定温度Tと測定部103の検出信号Sdとに基づき、検出温度差Tdfを演算する(ステップS577)。この局面では、制御ユニット120は、温度差演算部221として機能する。
次に、制御ユニット120は、検出温度差Tdfと第1の判定値Dfとを比較し、検出温度差Tdfが第1の判定値Dfを越えているか否かを判定する(ステップS578)。仮に、検出温度差Tdfが第1の判定値Dfを越えている場合、検出されている温度が大きく変化しており、依然、不安定な状態であると判断される。従って、検出温度差Tdfが第1の判定値Dfを越えている場合には、検査時間Tr3を0にリセットする(ステップS579)。これにより検査時間Tr3が延長される。一方、検出温度差Tdfが第1の判定値Df以下の場合、検出されている温度の変化が小さく、安定している状態であると判断される。従って、検出温度差Tdfが第1の判定値Df以下の場合、ステップS579をバイパスし、次のステップに移行する。この局面では、制御ユニット120は、温度時間計測部220として機能する。
次に、ステップS579を実行した後、または、ステップS579をバイパスした場合、制御ユニット120は、演算された検出温度差Tdfと第2の判定値Dsとを比較し、検出温度差Tdfが第2の判定値Ds未満であるか否かを判定する(ステップS580)。この局面では、制御ユニット120は、エラー判定部222として機能する。
ステップS580において、検出温度差Tdfが第2の判定値Ds以上の場合、測定温度Tは、図10の特定C2で示したように、マックスホールドが実行された後、温度変化が生じて正確な最大値を特定できなかった可能性がある。例えば、こて先が離れて50℃以上の温度変化があった場合、エラー表示等を実行する必要がある。そこで、検出温度差Tdfが第2の判定値Ds以上の場合、制御ユニット120は、エラー処理を実行し(ステップS581)、計測処理を中止する。エラー処理では、上述のようにディスプレイ110やブザー123を適宜用いて、測定者に測定エラーを報知し、測定処理をキャンセルしてメインルーチンに復帰する。
一方、ステップS580において、検出温度差Tdfが第2の判定値Ds未満の場合、測定温度Tは、図9の特性C1で示したように適切に検出され、マックスホールドされていると考えられる。したがって、検出温度差Tdfが第2の判定値Ds未満の場合、制御ユニット120は、検査時間Tr3が計測値tfを経過しているか否かを判定する(ステップS582)。ステップS582において、検査時間Tr3が計測値tfを経過していない間、制御ユニット120は、ステップS576に移行し、上述した処理を繰り返す。一方、ステップS582において、検査時間Tr3が計測値tfを経過した場合、図17に示すように、制御ユニット120は、累積回数nの更新処理(ステップS590)、判定処理(ステップS591)、記録処理(ステップS592)、温度変化タイマをOFFにする等の終了処理(ステップS593)を実行する。これらの処理により、測定温度Tの適否が判定され、判定結果がコンピュータ11に送信されて記録される。
なお、測定モード計測処理51、記録モード計測処理52の各実行過程において、制御ユニット120は、表示処理部203として機能し、測定温度T、累積回数n、測定温度Tの検査結果等を適宜ディスプレイ110に表示する。
以上説明したように本実施形態では、測温部130に発熱部材を当て、発熱部材の温度を測定し、測定結果を表示することができる。同時に、予め設定された単位時間当たりに上昇した測定温度Tの温度上昇値ΔTuが予め設定された昇温判定値Tu以上の場合であって、測定温度Tが予め設定された積算温度Ts以上に達しているときに、カウント値が積算され、累積回数nが更新される。ここで、カウント値を積算する際に、測定部103が測定した温度が積算温度Ts以上であっても、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tuに満たないときは、カウント値が余分に積算されなくなる。これにより、過冷却の熱影響を回避しつつ、正確に実際の測定回数を把握することが可能となる。
また、本実施形態では、予め設定された時間間隔を一区切りの継続時間Tr1として規定しているとともに、測定温度Tが積算温度Ts以上に達してから継続時間Tr1が経過するごとにカウント値を積算する。このため本実施形態では、発熱している発熱部材が測温部130に接触し続けている場合には、測温部130が負荷を受けているものと判定し、継続時間Tr1が経過するごとにカウント値を積算し、累積回数nを更新し続けることができる。よって、この積算により、測温部130の寿命をより精緻に評価することが可能になる。
また、本実施形態では、継続時間を計測し、この継続時間Tr1を計測している場合において、予め設定された単位時間当たりに降下した測定温度Tの温度降下値ΔTdが予め設定された降温判定値Td以上のときには、その時点で継続時間Tr1の計測をリセットして再計測する。このため本実施形態では、測定部103が測定した温度が積算温度Ts以上の場合であっても、既に発熱部材が測温部130から離れたときには、継続時間Tr1の計測をリセットし、カウント値を積算し、累積回数nを更新するタイミングを遅らせ、より精緻に累積回数nを更新することができる。
また、本実施形態では、温度上昇値ΔTuが昇温判定値Tu未満の場合において、測定温度Tが積算温度Ts以上のときは、測定温度Tが積算温度Tsに達した時点から、過冷却によって上昇した温度が再び前記積算温度に下がるまでの高温継続時間Tr2を計測する高温継続時間計測部212をさらに備え、積算部201は、高温継続時間Tr2が経過した場合において、測定温度Tが積算温度Ts以上のときは、カウント値を積算し、累積回数nを更新する。このため本実施形態では、何らかの理由で測定温度Tの温度上昇値ΔTuが所定の昇温判定値Tuに達しなかった場合であっても、より精緻に累積回数nを更新することができる。一方、過冷却に起因する昇温に基づいて、累積回数nを余分に更新するおそれも生じなくなる。
また、本実施形態では、マックスホールドを実行し、測定部103が予め設定された時間内に検出した検出値の最大値に基づいて、当該最大値に係る温度を測定温度Tとして特定し、測定温度Tを特定した後、予め設定された時間間隔を検査時間Tr3として計測し、検査時間Tr3の計測中に、測定部103が検出している検出信号Sdの値(検出値)と測定温度特定部200が特定した測定温度Tとを比較する。ここで、温度差演算部221が演算した検出温度差Tdfが予め設定された第1の判定値Df以上の場合には、検査時間Tをリセットし、再度リセットされた検査時間Tで測定温度特定部200が当該検査時間T内に検出した検出信号Sdの値(検出値)の最大値を特定するように構成されている。このため本実施形態では、測定中の実温度変化が大きい場合に、再カウント処理を実行することにより、安定した値(検出値)を測定温度として特定する機能を奏する。
また、本実施形態では、検出温度差Tdfを演算し、温度差演算部221が演算した検出温度差Tdfが、予め設定された第2の判定値Ds以上の場合には、エラー判定を実行する。このため本実施形態では、マックスホールドを実行して測定温度Tが決定された後に、所定のレベルで温度変化が生じた場合には、手ぶれ等が生じたものとして、エラー判定を実行することができる。これにより、何らかの理由で、適切な温度を測定温度特定部200が特定できなかった場合に、高い精度で検査不良と判定することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
例えば、測定モードにおいて、マックスホールドを実行する仕様にしてもよい。その場合には、記録モードと同様に、マックスホールドを実行した時点で、累積回数nを更新した後は、さらなる累積回数nの更新を禁止する処理を実行すればよい。一方、測定モードにおいて、マックスホールドを実行する場合には、記録モードと同様に、エラー判定部222等を用いてエラー判定を実行するようにしてもよい。
また、マックスホールドを実行する場合において、測定温度Tが積算温度以上のときは、マックホールドの実行後、直ちに累積回数nを更新するように構成してもよい。仮に測定エラーが生じた場合であっても、一回の接触があったものと考えられるからである。
また、記録モードにおいて、マックスホールドを省略してもよい。
さらに、測定モードと記録モードの何れかが省略されていてもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは、いうまでもない。