JP2016111954A - 耐熱性β―キシロシダーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を示す新規な耐熱性β−キシロシダーゼ、該耐熱性β−キシロシダーゼをコードするポリヌクレオチド、該耐熱性β−キシロシダーゼを発現するための発現ベクター、該発現ベクターが組込まれた形質転換体及び該耐熱性β−キシロシダーゼを用いたリグノセルロース分解物の製造方法の提供。【解決手段】特定のアミノ酸配列又は他の特定のアミノ酸配列で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、上記の特定又は他の特定のアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は上記の特定又は他の特定のアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである耐熱性β−キシロシダーゼ。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性β−キシロシダーゼ、当該耐熱性β−キシロシダーゼをコードするポリヌクレオチド、当該耐熱性β−キシロシダーゼを発現するための発現ベクター、当該発現ベクターが組込まれた形質転換体及び当該耐熱性β−キシロシダーゼを用いたリグノセルロース分解物の製造方法に関する。
輸送用エネルギー供給に関わる懸念に加え、地球温暖化や大気汚染などの環境上の問題から、近年、石油代替エネルギー開発は非常に重要な課題である。植物バイオマスは、地球上に最も豊富にある再生可能エネルギー源であり、石油代替資源として期待されている。植物バイオマスの主要構成要素であるリグノセルロースは、セルロースやヘミセルロース(キシラン、アラビナン及びマンナンを含む)等の多糖類とリグニンである。これら多糖類は多様なグリコシド加水分解酵素によってグルコースやキシロース等の単糖に加水分解され、バイオ燃料や化成品原料として利用される。
リグノセルロースは複雑な構造を持ち、難分解性であり、単一の酵素では分解、糖化が難しい。このため、多糖類の中、セルロースの加水分解には、一般的に、グリコシド加水分解酵素のエンドグルカナーゼ(エンド−1,4−β−D−グルカナーゼ、EC 3.2.1.4)、エキソ型のセロビオハイドロラーゼ(1,4−β−セロビオシダーゼ又はセロビオハイドロラーゼ、EC 3.2.1.91、EC3.2.1.176)、β−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)の3種の酵素が必要とされる。一方、ヘミセルロースの構造は植物の種類によって異なるが、例えば、広葉樹や草本等はキシランが主要な構成成分となっている。キシランの加水分解には、キシラナーゼ(エンド−1,4−β−キシラナーゼ、EC 3.2.1.8)、β−キシロシダーゼ(EC 3.2.1.37)が必要とされる。β−キシロシダーゼは、キシラナーゼによるヘミセルロースの加水分解により生じたオリゴ糖を加水分解し、単糖を生成するプロセスに関わる加水分解酵素の一つである。
従来のリグノセルロースを資源とするバイオエタノール製造では、エタノールの高エネルギー効率変換を目的として、高固体負荷(30〜60% solid loading)による糖化処理が試みられている。このような高固体負荷によるリグノセルロースの酵素糖化は、バイオマス糖化液の粘性が高く、リグノセルロースの加水分解反応が進み難い。そこで、耐熱性酵素を用いて、例えば80℃以上の高温で酵素糖化処理を行うことにより、加水分解反応速度が上昇することに加えて、バイオマス糖化液の粘性が低下することから、糖化反応時間の短縮及び酵素量の削減が達成できると期待される。このため、各種グリコシド加水分解酵素について、より耐熱性に優れた酵素の開発が望まれている。
多くの耐熱性グリコシド加水分解酵素は、高温環境に生息する好熱性微生物を分離、同定し、これら培養分離された微生物から遺伝子をクローニングし、DNA配列を決定した後、大腸菌や糸状菌などにより発現させることにより得られてきた。例えば、特許文献1には、糸状菌由来のβ−キシロシダーゼが、特許文献2には、糸状菌アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のβ−キシロシダーゼであって、30℃で酵素活性を示すものが、特許文献3には、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)由来のβ−キシロシダーゼであり、pH5.5以下、50℃以上で酵素活性を示すものが、特許文献4には、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)由来のβ−キシロシダーゼであり、45℃で酵素活性を示すものが、それぞれ開示されている。また、非特許文献1〜6には、特定の細菌や糸状菌から単離されたβ−キシロシダーゼであって、至適温度が60℃付近のものが開示されている。その他、非特許文献7には、高耐熱性β−キシロシダーゼとして至適温度が95℃のものが報告されている。ただし、当該酵素のp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド(PNPX)を基質とした時の触媒効率Kcat/Kmは1173.4mM−1−1と極めて高いが、PNPX分解活性の半減期は90℃で約30分であり、熱安定性は不充分である。
特表平11−507837号公報 特開平11−313683号公報 特表2011−523346号公報 特開2013−59272号公報
Kormelink et al.,Journal of Biotechnology,1993,vol.27,p.249-265. Herrmann et al.,Biochemical Journal,1997,vol.321,p.375-381. kitamoto et al.,Applied and Environmental Microbiology,1999,vol.65,p.20-24. La Grange et al.,Applied and Environmental Microbiology,2001,vol.67,p.5512-5519. Shao et al.,Applied and Environmental Microbiology,2011,vol.77,p.719-726. Morais et al.,Journal of Biological Chemistry,2012,vol.287,p.9213-9221. Shi et al.,Biotechnology for Biofuels,2013,vol.6, No.27.
本発明は、少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を示す新規な耐熱性β−キシロシダーゼ、当該耐熱性β−キシロシダーゼをコードするポリヌクレオチド、当該耐熱性β−キシロシダーゼを発現するための発現ベクター、当該発現ベクターが組込まれた形質転換体、及び当該耐熱性β−キシロシダーゼを用いたリグノセルロース分解物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、温泉高温土壌から直接DNAを抽出し、難培養性微生物叢の大規模メタゲノムシーケンスを行うことにより、新規アミノ酸配列を持つ耐熱性β−キシロシダーゼの取得に成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼ、ポリヌクレオチド、発現ベクター、形質転換体、耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法、グリコシド加水分解酵素混合物及びリグノセルロース分解物の製造方法は、下記[1]〜[10]である。
[1] (A)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域を有することを特徴とする、耐熱性β−キシロシダーゼ。
[2] α−L−アラビノフラノシダーゼ活性及びα−L−アラビノピラノシダーゼ活性からなる群より選択される1種以上を有する、前記[1]の耐熱性β−キシロシダーゼ。
[3] (a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号3又は4で表される塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。
[4] 前記ポリペプチドが、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性及びα−L−アラビノピラノシダーゼ活性からなる群より選択される1種以上も有する、前記[3]のポリヌクレオチド。
[5] 前記[3]又は[4]のポリヌクレオチドが組込まれており、宿主細胞において、β−キシロシダーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。
[6] 前記[5]の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
[7] 真核微生物である、前記[6]の形質転換体。
[8] 前記[6]又は[7]の形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産することを含む、耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法。
[9] 前記[1]若しくは[2]の耐熱性β−キシロシダーゼ、前記[3]若しくは[4]のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼ、又は前記[8]の耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
[10] セルロースを含む材料を、前記[1]若しくは[2]の耐熱性β−キシロシダーゼ、前記[3]若しくは[4]のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼ、前記[6]若しくは前記[7]に記載の形質転換体、前記[8]の耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼ、又は前記[9]のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、リグノセルロース分解物を生産することを含む、リグノセルロース分解物の製造方法。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有する。このため、当該耐熱性β−キシロシダーゼは、高温条件下におけるセルロースの糖化処理に好適である。
また、本発明に係るポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクター、当該発現ベクターが導入されている形質転換体は、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造に好適に用いられる。
オープンリーディングフレームOJ1M−273の塩基配列(配列番号3)とβ−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1の塩基配列(配列番号4)のアライメント図(前半)である。 オープンリーディングフレームOJ1M−273の塩基配列(配列番号3)とβ−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1の塩基配列(配列番号4)のアライメント図(後半、図1Aの続き)である。 オープンリーディングフレームOJ1M−273のアミノ酸配列(配列番号1)とβ−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1のアミノ酸配列(配列番号2)のアライメント図である。 β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1のアミノ酸配列(配列番号2)とカンディダトゥス・カルダトリバクテリウム・カリフォルニエンスのβ−キシロシダーゼ(配列番号9)のアライメント図である。 実施例1において、OJ1M−273−1遺伝子を大腸菌に発現させて得られたOJ1M−273−1タンパク質のSDS−PAGE解析結果を示した図である。 実施例1において、大腸菌発現させたOJ1M−273−1タンパク質の各基質に対する加水分解活性(PNPXに対する分解活性を100%とした相対値)の測定結果を示した図である。 実施例1において、大腸菌発現させたOJ1M−273−1タンパク質の各温度におけるPNPX加水分解活性(pH5.0)(105℃における加水分解活性を100%とした相対値)を計測した結果を示した図である。 実施例1において、大腸菌発現させたOJ1M−273−1タンパク質の各pHにおけるPNPX加水分解活性(105℃)(pH5.0における加水分解活性を100%とした相対値)を計測した結果を示した図である。 実施例1において、大腸菌発現させたOJ1M−273−1タンパク質のPNPX加水分解活性の熱安定性(pH5.0)(無処理区(保温時間0分)の活性を100%とした相対値)を計測した結果を示した図である。
[耐熱性β−キシロシダーゼ]
糸状菌、細菌、アーキアを含む多くの微生物は難培養性であり、土壌など微生物環境に生息する菌の99%が未知の菌であるといわれている。特に、高温環境に生息する微生物の培養は極めて困難であり、現在の微生物培養技術では土壌中に生息する微生物の0.1%以下を単離・培養しているにすぎないと考えられている。この高温土壌微生物の難培養性が、耐熱性酵素の開発が進まない一因である。
近年、ギガ塩基対の大量配列解読を可能にした次世代ギガシーケンサーが開発されたことにより、土壌等に含まれる微生物叢のゲノムを丸ごと解読することが可能となった。この解析技術を利用して、土壌などの環境サンプルから微生物集団のゲノムDNAを調製し、ゲノム構成が不均一、雑多な集団について直接ゲノムを網羅的に解読し、並列コンピュータにより解読データをアセンブルすることで微生物叢ゲノム配列を再構成するメタゲノム解析法が提案され、難培養性微生物のゲノム解読が急速に進展した。
本発明者らは、後記実施例1に示すように、採取した高温温泉土壌から微生物集団のゲノムDNA(メタゲノムDNA)を調製し、メタゲノムDNAのショットガンシーケンス及びアノテーションを行い、既知のβ−グルコシダーゼ酵素又はβ−キシロシダーゼ酵素と類似したアミノ酸配列を持つオープンリーディングフレーム(ORF)を得た。得られたORFのうち、β−グルコシダーゼ触媒領域(触媒ドメイン)又はβ−キシロシダーゼ触媒領域が確認できた完全長ORFについて、ORFの塩基配列情報に基づいてプライマーを設計し、PCR法により、高温温泉土壌メタゲノムDNAから遺伝子候補をクローニングした。PCRクローニングされたDNAを大腸菌に組込み、当該塩基配列がコードするタンパク質を発現させ、PNPX分解活性アッセイによる機能スクリーニングを行った。最終的に、これらのORFの中からPNPX分解活性を持つ耐熱性β−キシロシダーゼ(以下、「OJ1M−273−1」)を得た。OJ1M−273−1のアミノ酸配列を配列番号2に、塩基配列を配列番号4に、それぞれ表す。
後記実施例1に示すように、OJ1M−273−1は、PNPX、p−ニトロフェニル− α −L−アラビノフラノシド(PNPAF)、及びp−ニトロフェニル− α −L−アラビノピラノシド(PNPAP)に対し高い加水分解活性を示し、さらにアラビナン(Arabinan)とアラビノガラクタン(Arabinogalactan)にも高い分解活性を示す。また、OJ1M−273−1は、p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド(PNPG)及びキシラン(Xylan)に対しても若干の分解活性を示す。この基質特異性から、OJ1M−273−1は少なくともβ−キシロシダーゼ活性を有するグリコシド加水分解酵素であって、α−L−アラビノフラノシダーゼ及びα−L−アラビノピラノシダーゼとしての利用も可能であり、多機能酵素として極めて有用であることが示唆される。
さらに、OJ1M−273−1のPNPX分解活性の半減期Thalfは、90℃と95℃で約180分であり、100℃で約130分である。このように、OJ1M−273−1をはじめとする本発明に係るβ−キシロシダーゼは熱安定性に優れるため、高温条件下におけるヘミセルロースの糖化処理に好適である。
なお、本発明及び本願明細書において、β−キシロシダーゼ活性とは、PNPXを基質とする加水分解活性を意味する。
また、本発明及び本願明細書において、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性とは、PNPAFを基質とする加水分解活性を意味する。
また、本発明及び本願明細書において、α−L−アラビノピラノシダーゼ活性とは、PNPAPを基質とする加水分解活性を意味する。
OJ1M−273−1のアミノ酸配列を公知のアミノ酸配列データベースに対して検索したところ、最も配列同一性が高かったアミノ酸配列は、カンディダトゥス・カルダトリバクテリウム・カリフォルニエンス(Candidatus Caldatribacteirum californiense)のGH3ファミリーに属するβ−キシロシダーゼ(Genbank 登録ID:WP_026140775.1)(配列番号9)であり、その配列同一性(相同性)は、全長において62%、GH3触媒領域において65%であった。基質特異性及び既知のタンパク質とのアミノ酸配列の配列同一性から、OJ1M−273−1は、GH3ファミリーに属する新規なβ−キシロシダーゼであることが明らかとなった。
OJ1M−273−1は、少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性(β−キシロシダーゼ活性)を有する。実際に、後記実施例1に示すように、OJ1M−273−1は、70〜110℃の広い温度範囲内、かつpH4.5〜7の広いpH範囲内でβ−キシロシダーゼ活性を示す。より詳細には、OJ1M−273−1のβ−キシロシダーゼ活性は、70〜105℃の範囲内では温度が高くなるにつれて高くなり、105℃超では急激に低下する傾向にあった。
一般的に何らかの生理活性を有するタンパク質は、その生理活性を損なうことなく、1個又は2個以上のアミノ酸を欠失、置換又は付加させることができる。つまり、OJ1M−273−1に対しても、β−キシロシダーゼ活性をはじめとするグリコシド加水分解活性を失わせることなく、1個又は2個以上のアミノ酸を欠失、置換又は付加させることができる。
すなわち、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、下記(A)〜(C)のいずれかからなるβ−キシロシダーゼ触媒領域を有する、耐熱性グリコシド加水分解酵素である。
(A)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(すなわち、オープンリーディングフレームOJ1M−273、又は遺伝子クローンOJ1M−273−1)、
(B)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が欠失する」とは、ポリペプチドを構成しているアミノ酸の一部が失われる(除去される)ことを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が置換する」とは、ポリペプチドを構成しているアミノ酸が別のアミノ酸に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリペプチドにおいてアミノ酸が付加される」とは、ポリペプチド中に新たなアミノ酸が挿入されることを意味する。
前記(B)のポリペプチドにおいて、配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列に対して欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸の数は、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(C)のポリペプチドにおいて、配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列との配列同一性は、75%以上100%未満であれば特に限定されないが、80%以上100%未満であることが好ましく、85%以上100%未満であることがより好ましく、90%以上100%未満であることがさらに好ましく、95%以上100%未満であることがよりさらに好ましく、98%以上100%未満であることが特に好ましい。
なお、アミノ酸配列同士の配列同一性(相同性)は、2つのアミノ酸配列を、対応するアミノ酸が最も多く一致するように、挿入及び欠失に当たる部分にギャップを入れながら並置し、得られたアラインメント中のギャップを除くアミノ酸配列全体に対する一致したアミノ酸の割合として求められる。アミノ酸配列同士の配列同一性は、当該技術分野で公知の各種相同性検索ソフトウェアを用いて求めることができる。本発明におけるアミノ酸配列の配列同一性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られたアライメントを元にした計算によって得られる。
前記(B)及び(C)のポリペプチドとしては、人工的に設計されたものであってもよく、OJ1M−273−1等のホモログ又はその部分タンパク質であってもよい。
前記(A)〜(C)のポリペプチドは、それぞれ、アミノ酸配列に基づいて化学的に合成してもよく、後記の本発明に係るポリヌクレオチドを用いて、タンパク質発現系によって生産してもよい。また、前記(B)及び(C)のポリペプチドは、それぞれ、配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに基づいて、アミノ酸変異を導入する遺伝子組換え技術を用いて人工的に合成することもできる。
前記(A)〜(C)のポリペプチドは、少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性(β−キシロシダーゼ活性)を有する。このため、前記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドをβ−キシロシダーゼ触媒領域として有することにより、耐熱性β−キシロシダーゼが得られる。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、PNPXを基質とする。当該耐熱性β−キシロシダーゼは、PNPX以外のその他のβグルカン等を基質としてもよい。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼが基質とし得るものとしては、例えば、PNPAF、PNPAP、PNPG、p−ニトロフェニル−β−D−フコピラノシド(PNPbdFP)、p−ニトロフェニル−β−L−アラビノピラノシド、p−ニトロフェニル−β−D−マンノピラノシド(PNPMP)、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(PNPGA)、p−ニトロフェニル− α−L−フコピラノシド(PNPFP)、p−ニトロフェニル− α−L−ラムノピラノシド(PNPRP)、p−ニトロフェニル−α−D−キシロピラノシド(PNPadX);アラビナン、アラビノガラクタン等のアラビノースを構成糖とするグルカン;キシラン;リケナン等のβ−1,3結合とβ−1,4結合からなるグルカン;アビセル(Avicel)、結晶性バクテリアセルロース(Bacterial microcrystalline cellulose、BMCC)、濾紙などの結晶性セルロース、非結晶性セルロースのリン酸膨潤アビセル(phosphoric acid swollen Avicel、PSA)、CMC、セロビオース等のβ−1,4結合からなるグルカン;ラミナリン等のβ−1,3結合とβ−1,6結合からなるグルカン;β−1,3結合からなるグルカン;ゲンチオビオース等のβ−1,6結合からなるグルカン等が挙げられる。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼとしては、PNPXに加えて、PNPAF、PNPAP、PNPG、PNPbdFP、アラビナン、アラビノガラクタン、及びキシランからなる群より選択される1種以上を基質とするものが好ましく、PNPX、PNPAF、PNPAP、アラビナン、アラビノガラクタン、PNPG、及びキシランを基質とするものがより好ましく、PNPX、PNPAF、PNPAP、アラビナン、及びアラビノガラクタンを基質とするものがさらに好ましい。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、少なくともpH5.0の条件下で、PNPXを基質とする加水分解活性(β−キシロシダーゼ活性)を、90〜110℃の温度範囲内で示すことが好ましく、80〜110℃の温度範囲内で示すことがより好ましく、70〜110℃の温度範囲内で示すことがさらに好ましい。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの至適温度は、90〜110℃の範囲内にあることが好ましく、100〜110℃の範囲内にあることがより好ましい。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの至適pHは、pH4.5〜6.0の範囲内にある。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼとしては、少なくともpH4.5〜7.0の範囲内においてβ−キシロシダーゼ活性を示すものが好ましい。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、β−キシロシダーゼ活性以外のグリコシド加水分解活性を有していてもよい。その他のグリコシド加水分解活性としては、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性、α−L−アラビノピラノシダーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、キシラナーゼ活性、β−グルコシダーゼ活性、又はセロビオハイドロラーゼ活性等が挙げられる。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼとしては、β−キシロシダーゼ活性に加えて、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性及びα−L−アラビノピラノシダーゼ活性からなる群より選択される1種以上を有するものが好ましく、β−キシロシダーゼ活性、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性、及びα−L−アラビノピラノシダーゼ活性を全て備えるものがより好ましい。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、前記(A)〜(C)のポリペプチドのいずれかからなるβ−キシロシダーゼ触媒領域のみからなる酵素であってもよく、その他の領域を含んでいてもよい。その他の領域としては、公知のβ−キシロシダーゼが有する、酵素触媒領域以外の領域が挙げられる。例えば、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼには、公知のβ−キシロシダーゼに対し、酵素触媒領域を前記(A)〜(C)のポリペプチドに置換することによって得られる酵素も含まれる。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼがβ−キシロシダーゼ触媒領域以外の領域を含む場合、Fibronectin type III様ドメインを含むことも好ましい。Fibronectin type III様ドメインは、β−キシロシダーゼ触媒領域の上流(N末端側)にあってもよく、下流(C末端側)にあってもよい。また、Fibronectin type III様ドメインとβ−キシロシダーゼ触媒領域は、直接結合していてもよく、適当な長さのリンカー領域を介して結合していてもよい。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼとしては、β−キシロシダーゼ触媒領域の上流又は下流に、リンカー領域を介してFibronectin type III様ドメインが存在しているものが好ましく、β−キシロシダーゼ触媒領域の下流にリンカー領域を介してFibronectin type III様ドメインが存在しているものがより好ましい。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、その他にも、そのN末端又はC末端に、細胞内の特定の領域に移行させて局在させ得るシグナルペプチドや、細胞外へ分泌するシグナルペプチドを有していてもよい。このようなシグナルペプチドとして、例えば、アポプラスト移行シグナルペプチド、小胞体保留シグナルペプチド、核移行シグナルペプチド、又は分泌型シグナルペプチド等がある。小胞体保留シグナルペプチドとして、例えば、HDELのアミノ酸配列からなるシグナルペプチド等がある。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼが、そのN末端又はC末端にシグナルペプチドを有している場合には、形質転換体中で発現させた耐熱性β−キシロシダーゼを、細胞外へ分泌させたり、細胞中の小胞体等に局在させることができる。
また、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、その他にも、発現系を用いて生産した場合に簡便に精製可能とするため、例えば当該耐熱性β−キシロシダーゼのN末端やC末端に、各種タグが付加されていてもよい。当該タグとしては、例えば、Hisタグ、HA(hemagglutinin)タグ、Mycタグ、及びFlagタグ等の組換えタンパク質の発現又は精製において汎用されているタグを用いることができる。
[耐熱性β−キシロシダーゼをコードするポリヌクレオチド]
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼをコードする。当該耐熱性β−キシロシダーゼは、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクターを宿主に導入することにより、当該宿主の発現系を利用して生産することができる。
具体的には、本発明に係るポリヌクレオチドは、下記(a)〜(e)のいずれかの塩基配列からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(c)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(d)配列番号3又は4で表される塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
(e)配列番号3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
なお、本願及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が欠失する」とは、ポリヌクレオチドを構成しているヌクレオチドの一部が失われる(除去される)ことを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が置換する」とは、ポリヌクレオチドを構成している塩基が別の塩基に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ポリヌクレオチドにおいて塩基が付加される」とは、ポリヌクレオチド中に新たな塩基が挿入されることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(20×SSCの組成:3M塩化ナトリウム、0.3Mクエン酸溶液、pH7.0)、5×デンハルト溶液(100×デンハルト溶液の組成:2質量%ウシ血清アルブミン、2質量%フィコール、2質量%ポリビニルピロリドン)、0.5質量%のSDS、0.1mg/mLサケ精子DNA、及び50%フォルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファー中で、42〜70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1質量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1質量%SDS含有0.1×SSC溶液である。
前記(a)〜(e)の塩基配列においては、縮重コドンは、宿主のコドン使用頻度の高いものを選択することが好ましい。例えば、前記(a)の塩基配列としては、配列番号3で表される塩基配列であってもよく、配列番号4で表される塩基配列であってもよく、配列番号3又は4で表される塩基配列を、コードするアミノ酸配列は変更せずに、宿主において使用頻度の高いコドンへ改変した塩基配列であってもよい。コドンの改変は、公知の遺伝子配列変異技術又は人工遺伝子合成によって行うことができる。
配列番号3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、塩基配列情報に基づいて化学的に合成してもよく、OJ1M−273−1をコードする遺伝子(「OJ1M−273−1遺伝子」ということがある。)の全長若しくはβ−キシロシダーゼ触媒領域を含む部分領域を遺伝子組換え技術によって自然界から取得したものであってもよい。OJ1M−273−1遺伝子の全長又はその部分領域は、例えば、自然界から微生物を含むサンプルを取得し、当該サンプルから回収されたゲノムDNAを鋳型として、配列番号3又は4で表される塩基配列に基づいて常法により設計したフォワードプライマーとリバースプライマーを用いてPCRを行うことによって得ることができる。当該サンプルから回収したmRNAを鋳型として逆転写反応により合成されたcDNAを鋳型としてもよい。なお、鋳型となる核酸を回収するサンプルは、温泉土壌等の高温環境下から採取されたサンプルであることが好ましい。
前記(d)の塩基配列において、配列番号3又は4で表される塩基配列との配列同一性は、80%以上100%未満であれば特に限定されないが、85%以上100%未満であることが好ましく、90%以上100%未満であることがより好ましく、95%以上100%未満であることがさらに好ましい。
なお、塩基配列同士の配列同一性(相同性)は、2つの塩基配列を、対応する塩基が最も多く一致するように、挿入及び欠失に当たる部分にギャップを入れながら並置し、得られたアラインメント中のギャップを除く塩基配列全体に対する一致した塩基の割合として求められる。塩基配列同士の配列同一性は、当該技術分野で公知の各種相同性検索ソフトウェアを用いて求めることができる。本発明における塩基配列の配列同一性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTNにより得られたアライメントを元にした計算によって得られる。
例えば、前記(b)、(c)、又は(d)の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、1又は2以上の塩基を欠失、置換若しくは付加することによって人工的に合成することができる。また、前記(b)、(c)、又は(d)の塩基配列としては、OJ1M−273−1遺伝子のホモログ遺伝子の全長配列又はその部分配列であってもよい。OJ1M−273−1遺伝子のホモログ遺伝子は、塩基配列が既知の遺伝子のホモログ遺伝子を取得する際に用いられる遺伝子組換え技術によって取得することができる。
本発明に係るポリヌクレオチドは、β−キシロシダーゼ触媒領域をコードする領域のみを有するものであってもよく、当該領域に加えて、セルロース結合モジュール、リンカー配列、各種シグナルペプチド、各種タグ等をコードする領域を有していてもよい。
[発現ベクター]
本発明に係る発現ベクターは、前記本発明に係るポリヌクレオチドが組込まれており、宿主細胞において、少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドを発現し得る。すなわち、前記本発明に係るポリヌクレオチドが、前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを発現し得る状態で組込まれた発現ベクターである。具体的には、上流から、プロモーター配列を有するDNA、前記本発明に係るポリヌクレオチド、及びターミネーター配列を有するDNAからなる発現カセットが、発現ベクターに組込まれていることが必要である。なお、周知の遺伝子組み換え技術を用いることにより、ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むことができる。ポリヌクレオチドの発現ベクターへの組み込みでは、市販の発現ベクター作製キットを用いてもよい。
本発明及び本願明細書において、発現ベクターとは、上流から、プロモーター配列を有するDNA、外来DNAを組込むための配列を有するDNA、及びターミネーター配列を有するDNAを含むベクターである。
当該発現ベクターとしては、大腸菌等の原核細胞へ導入されるものであってもよく、酵母、糸状菌、昆虫培養細胞、哺乳培養細胞、又は植物細胞等の真核細胞へ導入されるものであってもよい。これらの発現ベクターとしては、それぞれの宿主に応じて通常用いられる任意の発現ベクターを用いることができる。
本発明に係る発現ベクターは、前記本発明に係るポリヌクレオチドのみならず、薬剤耐性遺伝子等も組込まれた発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターにより形質転換された細胞と形質転換されていない細胞の選抜を容易に行うことができるためである。当該薬剤耐性遺伝子として、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、及びビアラホス耐性遺伝子等がある。
[形質転換体]
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る発現ベクターが導入されている。当該形質転換体中では、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを発現させ得る。発現ベクターを導入する宿主としては、大腸菌等の原核細胞であってもよく、酵母、糸状菌、昆虫培養細胞、哺乳培養細胞、又は植物細胞等の真核細胞であってもよい。大腸菌の形質転換体を培養することにより、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを、より簡便かつ大量に生産することができる。一方で、真核細胞内ではタンパク質に糖鎖修飾が施されるため、真核細胞の形質転換体を用いることにより、原核細胞の形質転換体を用いた場合よりも、より耐熱性に優れた耐熱性β−キシロシダーゼを生産し得る。
発現ベクターを用いて形質転換体を作製する方法は、特に限定されるものではなく、形質転換体を作製する場合に通常用いられている方法により行うことができる。当該方法として、例えば、ヒートショック法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、及びPEG(ポリエチレングリコール)法等がある。このうち、宿主が植物細胞である場合には、パーティクルガン法又はアグロバクテリウム法で行うことが好ましい。
宿主として、原核細胞、酵母、糸状菌、昆虫培養細胞、又は哺乳培養細胞等を用いた場合には、得られた形質転換体は、一般的には、形質転換前の宿主と同様にして、常法により培養することができる。
[耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法]
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法は、前記本発明に係る形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産する方法である。前記本発明に係るポリヌクレオチドが、発現の時期等の制御能を有していないプロモーターの下流に組込まれている発現ベクターを用いて製造された形質転換体内では、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼが恒常的に発現している。一方で、特定の化合物や温度条件等によって発現を誘導するいわゆる発現誘導型プロモーターを用いて製造された形質転換体に対しては、それぞれの発現誘導条件に適した誘導処理を行うことにより、当該形質転換体内に耐熱性β−キシロシダーゼを発現させる。
形質転換体によって生産された耐熱性β−キシロシダーゼは、当該形質転換体内に留めた状態で使用してもよく、当該形質転換体から抽出・精製してもよい。
形質転換体から耐熱性β−キシロシダーゼを抽出又は精製する方法は、耐熱性β−キシロシダーゼの活性を損なわない方法であれば、特に限定されるものではなく、細胞や生体組織からポリペプチドを抽出する場合に通常用いられている方法によって抽出することができる。当該方法として、例えば、形質転換体を適当な抽出バッファーに浸し、耐熱性β−キシロシダーゼを抽出した後、抽出液と固形残渣に分離する方法が挙げられる。当該抽出バッファーとしては、界面活性剤等の可溶化剤を含有するものが好ましい。形質転換体が植物である場合には、抽出バッファーに浸す前に、予め当該形質転換体を細断又は粉砕しておいてもよい。また、抽出液と固形残渣を分離する方法としては、例えば、濾過方法、圧縮濾過方法、又は遠心分離処理方法等の公知の固液分離処理を用いることができ、抽出バッファーに浸した状態の形質転換体を搾ってもよい。抽出液中の耐熱性β−キシロシダーゼは、塩析法、限外濾過法、又はクロマトグラフィー法等の公知の精製方法を用いて精製することができる。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを、形質転換体内で分泌型シグナルペプチドを有する状態で発現させた場合には、当該形質転換体を培養した後、得られた培養物から形質転換体を除いた培養液上清を回収することにより、簡便に耐熱性β−キシロシダーゼを含む溶液を得ることができる。また、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼが、Hisタグ等のタグを有している場合、当該タグを利用したアフィニティクロマトグラフィ法により、抽出液や培養上清中の耐熱性β−キシロシダーゼを簡便に精製することができる。
すなわち、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法は、前記本発明に係る形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産すること、及び所望により前記形質転換体から前記耐熱性β−キシロシダーゼを抽出し精製することを含む。
[グリコシド加水分解酵素混合物]
前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼ、又は前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素を含むグリコシド加水分解酵素混合物として使用することもできる。前記本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼは、形質転換体内に含まれた状態のものであってもよく、形質転換体から抽出又は精製されたものであってもよい。本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼを、その他のグリコシド加水分解酵素との混合物として多糖類の加水分解反応に用いることにより、難分解性であるリグノセルロースをより効率よく分解させることができる。
当該グリコシド加水分解酵素混合物に含まれる前記耐熱性β−キシロシダーゼ以外のその他のグリコシド加水分解酵素としては、リグノセルロースの加水分解活性を有するものであれば特に限定されるものではない。当該グリコシド加水分解酵素混合物に含まれる前記β−キシロシダーゼ以外のその他のグリコシド加水分解酵素としては、例えば、キシラナーゼ等のヘミセルラーゼ、セロビオハイドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、又はエンドグルカナーゼ等が挙げられる。本発明に係るグリコシド加水分解酵素混合物としては、ヘミセルラーゼとエンドグルカナーゼの少なくとも一方を含むものが好ましく、ヘミセルラーゼとエンドグルカナーゼを両方含むものがより好ましい。中でも、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ、及びエンドグルカナーゼからなる群より選択される1種以上のグリコシド加水分解酵素を含むものが好ましく、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ、及びエンドグルカナーゼを全て含むものがより好ましい。
当該グリコシド加水分解酵素混合物に含まれるその他のグリコシド加水分解酵素は、少なくとも85℃でグリコシド加水分解酵素活性を有する耐熱性グリコシド加水分解酵素であることが好ましく、70〜90℃でグリコシド加水分解酵素活性を有する耐熱性グリコシド加水分解酵素であることがより好ましい。当該グリコシド加水分解酵素混合物に含まれる全ての酵素が耐熱性であることにより、当該グリコシド加水分解酵素混合物によるリグノセルロースの分解反応を高温条件下で効率よく行うことができる。すなわち、当該グリコシド加水分解酵素混合物が耐熱性グリコシド加水分解酵素のみを含む場合、当該グリコシド加水分解酵素混合物をリグノセルロース糖化処理に用いることにより、糖化温度70〜90℃の高温環境下でリグノセルロース加水分解反応を行うことが可能になる。この高温糖化により、酵素量と糖化時間を著しく減らすことができ、糖化コストが大幅に削減される。
[リグノセルロース分解物の製造方法]
本発明に係るリグノセルロース分解物の製造方法は、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼにより、キシラナーゼによりへミセルロースが加水分解して生じたオリゴ糖、若しくはセロビオハイドロラーゼによりセルロースが加水分解して生じたオリゴ糖を単糖に加水分解する、リグノセルロース分解物を得る方法である。具体的には、ヘミセルロース若しくはセルロースを含む材料を、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼ、本発明に係る形質転換体、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼ、又は本発明に係るグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、ヘミセルロース若しくはセルロース分解物を生産する。
ヘミセルロース、若しくはセルロースを含む材料としては、ヘミセルロース、若しくはセルロースが含まれていれば特に限定されるものではない。当該材料としては、例えば、雑草や農業系廃棄物等のセルロース系バイオマス、又は古紙等が挙げられる。当該セルロースを含む材料は、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼと接触させる前に、破砕若しくは細断等の物理的処理、酸若しくはアルカリ等による化学処理、又は適当なバッファーへの浸漬又は溶解処理等を行っておくことが好ましい。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼによるヘミセルロースの加水分解反応の反応条件は、当該耐熱性β−キシロシダーゼがセロオリゴ糖加水分解活性を示す条件であればよい。例えば、70〜110℃、pH4.5〜7.0で反応を行うことが好ましく、90〜110℃、pH4.5〜6.5で反応を行うことがより好ましく、95〜110℃、pH4.5〜6.0で反応を行うことがさらに好ましい。前記加水分解反応の反応時間は、加水分解に供されるセルロースを含む材料の種類、前処理の方法、又は量等を考慮して適宜調整される。例えば、10分間〜100時間、セルロース系バイオマスを分解する場合には、1〜100時間の反応時間で前記加水分解反応を行うことができる。
リグノセルロースの加水分解反応には、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼに加えて、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素を用いることも好ましい。当該その他のグリコシド加水分解酵素としては、前記グリコシド加水分解酵素混合物に含められるグリコシド加水分解酵素と同様のものを用いることができ、少なくとも85℃で、好ましくは少なくとも70〜90℃で、より好ましくは70〜105℃で、さらに好ましくは70〜110℃でグリコシド加水分解酵素活性を有する耐熱性グリコシド加水分解酵素であることが好ましい。また、当該リグノセルロース分解物の製造方法には、本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼ、本発明に係る形質転換体、又は本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼに代えて、前記グリコシド加水分解酵素混合物を用いてもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]温泉土壌からの新規耐熱性β−キシロシダーゼのクローニング
<1> 温泉土壌からのDNA抽出と全ゲノムシーケンス(Whole Genome Sequence、WGS)
70〜110℃で活性を示す新規耐熱性β−キシロシダーゼの遺伝子探索を目的として、中性〜弱アルカリ性温泉から土壌DNAを採取し、これらの土壌を構成する微生物叢メタゲノムDNAの塩基配列解読を行った。
中性〜弱アルカリ性温泉土壌サンプルとして、野外にて高温の温泉が噴き出している日本国内の3ヶ所、5地点(メタゲノムDNAサンプルN2、AR19、AR15、OJ1、及びH1)から、土壌、泥、バイオマットを含む温泉水を採取した。これらの温泉土壌サンプルは、採取時の温度58〜78℃、pH7.2〜8のレンジにあった。
採取した温泉土壌サンプル10gから、DNA抽出キット(ISOIL Large for Beads ver.2、NIPPON GENE社製)を使い、DNAを抽出した。抽出されたDNAに対して、ロシュダイアグノスティックス社製のシーケンサーGS FLX Titanium 454及びイルミナ社製のシーケンサーGA2xを用いて、メタゲノムDNAのショットガンシーケンスを行った。454シーケンサーには抽出されたDNA5μgを用い、GA2xシーケンサーには、ゲノムDNA増幅キット(GenomiPhi V2 DNA Amplification Kit、GE Healthcare社製)を用いて増幅した産物を用いて、メタゲノムDNAの配列解読を行った。GA2xによるシーケンスでは、イルミナ社製のcBotを用いてDNAライブラリー及び試薬をフローセルに流し込み、DNA1分子から、自動的に同一配列をもつクラスターをフローセル内に形成させた。GA2xを用いて101bpのペアエンドシーケンスを行い、メタゲノムシーケンスデータを得た。
温泉土壌サンプルOJ1について、メタゲノムDNAの配列解読を行い、454シーケンサーにおいては平均リード長390bp、総リード数6,301,450個、総ゲノム解読量2,456,206,434bpを得、GA2xシーケンサーにおいては平均リード長114bpのペアエンドで、総リード数545,185,016個、総ゲノム解読量62,151,091,824bpを得、合計して64.6Gbpの全ゲノムシーケンス(WGS)データセットを得た。
<2> 温泉メタゲノムデータのアセンブルと統計量
454シーケンサー及びGA2xシーケンサーで読みとられた塩基配列に対して、CLCbio社製のCLC Genomics Workbench(ver5.4.8)を用いてクオリティーフィルタリング及びde novoアセンブリングを行った。クオリティーフィルタリング後には、454シーケンサーで得られたリードの総リード長は2,446,280,452bpとなり、GA2xシーケンサーで得られた塩基配列データの総リード長は54,066,191,005bpとなった。アセンブリング後には、500bp以上の長さを持つコンティグの数は2,080,555個、総全長は1,083,520,858bpとなり、このうち最大コンティグ長は1,063,869bpであった。
<3> β−キシロシダーゼのオープンリーディングフレーム(ORF)予測
UniProtデータベース(http://www.uniprot.org/)からEC番号が3.2.1.4(セルラーゼ)、3.2.1.21(β−グルコシダーゼ)、3.2.1.37(β−キシロシダーゼ) 、3.2.1.91(セルロース 1,4−β−セロビオシダーゼ)、3.2.1.8(エンド1,4−β−キシラナーゼ)の配列をダウンロードし(アクセス日:2011/12/9)、これらグリコシド加水分解酵素遺伝子のプロテオームローカルデータベースを構築した。アノテーションソフトウェアMetagene(Noguchi et al., DNA Research,2008,15(6))を使用して、前記<2>で得たコンティグ配列から、遺伝子領域(=オープンリーディングフレーム)を推定した(Metagene option:−m)。推定されたORFからグリコシド加水分解酵素遺伝子を抽出するために、BLASTP(blastall ver. 2.2.18)を使い、前記ローカルデータベースに参照した。BLASTPのoption条件は、「Filter query sequence=false」、「Expectation value(E)<1e−20」[以下、デフォルト値:Cost to open a gap=−1、Cost to extended gap=−1、X dropoff value for gapped alignment=0、Threshold for extending hits=0、Word size=default]とし、ヒットしたORF配列をグリコシド加水分解酵素遺伝子として収集した。収集された塩基配列は、セルラーゼ、エンドヘミセルラーゼ、脱分岐酵素等のグリコシド加水分解酵素を含んでいた。
<4> 遺伝子のグリコシド加水分解酵素(GH)ファミリー分類
前記<3>で収集された塩基配列について、タンパク質の機能領域配列データベースpfam HMMs(Pfam version 23.0 and HMMER v2.3;Finn et al.,Nucleic Acids Research Database,2010,Issue 38,p.D211-222)を基準に、機能分類を行った。具体的には、タンパク質モチーフ検索プログラムHMMER(Durbin et al.,‘The theory behind profile HMMs. Biological sequence analysis: probabilistic models of proteins and nucleic acids’, 1998,Cambridge University Press.;hmmpfam(Ver.2.3.2)、E−value cutoff<1e−5; Database=Pfam_fs(models that can be used to find fragments of the represented domains in a sequence.))を用いて、Pfam領域データベースとの相同性から、前記<3>で収集された各塩基配列についてグリコシド加水分解酵素(GH)ファミリーを決定した。なお、GH触媒ドメインの配列を70%以上カバーしているものを、各ファミリーに属する酵素遺伝子としてカウントした。
メタゲノムOJ1シーケンスデータを用いたBLASTPによる相同性検索及びHMMERによるドメイン検索により、478個のORF(完全長ORFが331個、不完全長ORFが147個)がβ−グルコシダーゼ又はβ−キシロシダーゼ遺伝子と予測された。これらのORFのGHファミリー分類を表1に示す。GH触媒ドメインのカバー率が70%以上のものを各GHファミリーに分類した。表1に示すように、OJ1メタゲノムからは、GHファミリー1に属する完全長ORFが46個、GHファミリー3に属する完全長ORFが197個、GHファミリー16に属する完全長ORFが1個、GHファミリー26に属する完全長ORFが1個、GHファミリー31に属する完全長ORFが37個、GHファミリー39に属する完全長ORFが1個、GHファミリー43に属する完全長ORFが47個、GHファミリー52に属する完全長ORFが1個、それぞれ得られた。
<5> オープンリーディングフレームOJ1M−273からの遺伝子クローニング
β−グルコシダーゼ遺伝子又はβ−キシロシダーゼ遺伝子と推定された全てのORFについて、プライマーを設計し、温泉土壌メタゲノムDNAからPCRにより遺伝子を増幅した。増幅したPCR産物はChampion pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits(ライフテクノロジーズ社製)のpET101/D−TOPOベクターに挿入し、One Shot TOP10株に形質転換した。コロニーPCRによりポジティブクローンを選抜し、100mg/Lアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃、200rpmで17〜20時間培養した後、ミニプレップキット(Wizard(登録商標) plus SV Minipreps DNA Purification System、Promega社製)を用いてプラスミドの調製を行った。調製したプラスミドは、ライフテクノロジーズ社の3730 DNA Analyzerシーケンサーを用いて配列確認を行った。
PCRクローニングにより、オープンリーディングフレームOJ1M−273から4個の遺伝子クローンOJ1M−273−1、OJ1M−273−3、OJ1M−273−12、及びOJ1M−273−18を得た。オープンリーディングフレームOJ1M−273の塩基配列(配列番号3)は2,178bpであったが、GA2xシーケンサーのペアエンド配列を使用したため、間に不明配列(配列番号3中の「n」、配列番号1中の「Xaa」)が含まれており、実際に得られた β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1の塩基配列(配列番号4)は、2,247bpであった。
図1A及び図1Bに、オープンリーディングフレームOJ1M−273とβ−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1の塩基配列のアライメントを、図2に、オープンリーディングフレームOJ1M−273とβ−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1のアミノ酸配列のアライメントを示す。 それぞれの図中、黒白反転文字は、塩基若しくはアミノ酸が異なっている配列部分、又はオープンリーディングフレームで不明であった配列部分を示す。
β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1は、748アミノ酸残基からなるポリペプチド(配列番号2)をコードし、1位のアミノ酸残基がメチオニンから開始し、3’末端が終始コドンで終わる完全長配列(配列番号4)であった。モチーフの配列相同性から、β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1は、12位のメチオニン(M)から417位のロイシン(L)までの406アミノ酸がGlycoside hydrolase family 3の触媒ドメインをコードしていると推測された。シグナル配列予測ソフトウェアSignalP 4.1を使った解析によれば、β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1は、シグナルペプチドは予想されなかった。当該遺伝子クローンは、カンディダトゥス・カルダトリバクテリウム・カリフォルニエンスのβ−キシロシダーゼ(Genbank 登録ID:WP_026140775.1)(配列番号9)とGH3触媒領域について65%、全長について62%のアミノ酸配列同一性を示す、新規な配列であった。配列相同性は、ClustalWアルゴリズムにより算出した。
図3に、β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1のアミノ酸配列(配列番号2)とカンディダトゥス・カルダトリバクテリウム・カリフォルニエンスのβ−キシロシダーゼ(配列番号9)のアライメントを示す。図3中、黒白反転のアミノ酸は、これらの全アミノ酸配列において同一アミノ酸残基(identical)を示し、網掛けのアミノ酸は、これらのアミノ酸配列において類似アミノ酸残基(similar)を示し、「−」は欠失(ギャップ)を示す。
<6> β−キシロシダーゼ酵素タンパク質の発現及び精製
シーケンス確認後、目的遺伝子をもつプラスミドを、ヒートショック法によりタンパク質発現用大腸菌へ導入した。形質転換用コンピテントセルは、Champion(登録商標) pET Directional TOPO(登録商標) Expression Kits(ライフテクノロジーズ社製)に付属するBL21 Star(DE3)株を用いた。目的の遺伝子をもつ大腸菌を100mg/Lアンピシリンを含むLB培地に植菌し、OD600=0.2〜0.8程度まで培養した後、IPTG(Isopropyl−β−D(−)−thiogalactopyranoside)を添加し、さらに5〜20時間培養することによって、目的タンパク質の発現誘導を行った。当該操作により、 β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1がコードする酵素タンパク質の弱い発現が得られた。
酵素タンパク質の発現量改善のため、 β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1をExpression Vector pLEAD(ニッポン・ジーン社製)に組み込み、JM109株で形質転換を行った。発現ベクターpLEADは、従来の大腸菌発現ベクターでは発現し難いGC含有量の高い遺伝子の発現に有効なことが示されている(Suzuki et al.,J. Biochem.,1997,vol.121,p.1031−1034.; Ishida and Oshima, J. Biochem.,2002,vol.132.,p.63−70)。この結果、 β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1がコードする酵素タンパク質の強い発現が確認された。
具体的には、β−キシロシダーゼ候補遺伝子OJ1M−273−1をもつpET101/D−TOPOベクターを鋳型にして、配列番号7で表される塩基配列からなるフォワードプライマー(5’−GTGATGTCGGTTCGGGTGAAGGAA−3’:配列番号5で表される塩基配列の5’末端側に3塩基(GTG)付加し、5’末端をリン酸化したもの。)と配列番号8で表される塩基配列からなるリバースプライマー(5’−TAGAGCTCTCATGCGGGCTCAACTTCAAC−3’ :配列番号6で表される塩基配列の5’末端側に制限酵素Sac I認識配列を付加したもの。Sac Iはベクターへの挿入に利用する配列である。)を用い、KOD−Plus−Neo(TOYOBO社製)で増幅したPCR産物をpLEAD5ベクターへ挿入し、大腸菌JM109株に形質転換した。コロニーPCRによりポジティブクローンを選抜し、50mg/Lアンピシリンを含むLB液体培地を用いて37℃、200rpmで17〜20時間培養した後、ミニプレップキット(Wizard(登録商標) plus SV Minipreps DNA Purification System、Promega社製)を用いてプラスミドの調製を行った。調製したプラスミドは、ライフテクノロジーズ社の3730 DNA Analyzerシーケンサーを用いて配列確認を行った。
シーケンス確認されたOJ1M−273−1/pLEAD5プラスミドを持つ形質転換大腸菌クローンを、50mg/Lアンピシリンを含むTurbo Broth培地(アテナ エンバイロメンタル サイエンス社製)に植菌し、 約20時間培養することによって目的タンパク質を発現させた。培養後、遠心分離処理を行って大腸菌を回収し、培養液の1/10容量の50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)を加えて懸濁した。その後、超音波破砕装置astrason3000(MISONIX社製)を用いて、5分間破砕−5分間休止工程を7〜8サイクル繰返し、目的タンパク質を含む遺伝子組換え大腸菌の粗抽出物を得た。当該遺伝子組換え大腸菌粗抽出物をフィルター(孔径φ=0.45μm、ミリポア社製)で濾過し、得られた濾液を遺伝子組換え大腸菌破砕上清とした。
当該遺伝子組換え大腸菌破砕上清を、50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)で平衡化したイオン交換カラムHiTrap Q HP(GEヘルスケア社製)に充填し、中高圧液体クロマトグラフィーシステムAKTA design(GEヘルスケア社製)を用いて、1MのNaClを含む50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)にて0〜50%の濃度勾配でタンパク質を分画した。β−キシロシダーゼ活性のあった分画は、まとめて混合した後、遠心式の限外濾過膜VIVASPIN 20(Sartorius stedim社製)によって750mMの硫酸アンモニウムを含む50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)へ溶液交換した。溶液交換後のβ−キシロシダーゼ活性分画を、同液で平衡化した疎水性相互作用分離カラムHiTrap Phnenyl HP(GEヘルスケア社製)に充填し、50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)にて0〜100%の濃度勾配でタンパク質を分画した。β−キシロシダーゼ活性のあった分画は、まとめて混合した後に、液量が8mL程度になるまでVIVASPIN 20を用いて濃縮した。濃縮したサンプルは、150mMのNaClを含む50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)で平衡化したゲル濾過カラムHiload26/60 superdex200 pg(GEヘルスケア社製)に添加し、カラム体積の1〜1.5倍容の同バッファーを流速2〜3mL/minで流すことによって分画した。β−キシロシダーゼ活性のあった分画は、まとめて混合した後、VIVASPIN 20によって1mMリン酸バッファー(pH6.8)への溶液交換と濃縮を行い、同バッファーにより平衡化したヒドロキシアパタイトカラムCHT5−1(Bio−Rad社製)に充填し、400mM リン酸バッファー(pH6.8)にて0〜100%の濃度勾配でタンパク質を分画した。β−キシロシダーゼ活性のあった分画は、まとめて混合した後、50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)への溶液交換と濃縮を行い、終濃度約1mg/mLの精製酵素を得た。
遺伝子組換え大腸菌破砕上清と精製酵素(精製したβ−キシロシダーゼ酵素タンパク質)を、SDS−PAGE解析により確認した。遺伝子組換え大腸菌破砕上清と精製酵素のSDS電気泳動は、ミニプロティアンTGXステインフリーゲル(Bio−Rad社製)を用いて行った。前記上清又は精製酵素を、それぞれTris−SDS βME処理液(コスモバイオ社製)と1:1で混合した泳動用サンプルを、100℃で10分間処理した後、1サンプルあたり、遺伝子組換え大腸菌破砕上清は10μL、精製酵素は2μgをそれぞれ泳動させた。泳動終了後、CBB染色によって、タンパク質のバンドを検出した。
図4に、OJ1M−273−1遺伝子を導入した形質転換大腸菌から調製された遺伝子組換え大腸菌破砕上清及び当該遺伝子組換え大腸菌破砕上清から精製された精製酵素のSDS−PAGE解析の結果を示す。レーン1はタンパク質質量指標、レーン2は遺伝子組換え大腸菌破砕上清、レーン3は精製酵素の電気泳動パターンである。この結果、前記遺伝子組換え大腸菌破砕上清(レーン2)において、アミノ酸配列(配列番号2)から予想される分子量78.9kDa近傍に強いバンドが認められ、精製酵素(レーン3)では、当該バンドに対応する単一バンドが認められた(図中、矢印)。
<7> PNPXを基質としたβ−キシロシダーゼ活性測定(PNPX加水分解活性)
β−キシロシダーゼ活性測定には、PNPXを基質として用いた。PNPX(Sigma社製)を水で溶かし、所定の終濃度となるように調整したものを、基質溶液として用いた。なお、以降の実験に用いたPNPX基質溶液は、全て当該方法により調製したPNPX水溶液を用いた。計測には、前記<6>で得られた精製酵素を0.05MのTris−HClバッファー(pH8.0)で0.1〜0.01mg/mLに希釈して用いた。
反応液の組成は、6μLの希釈した精製酵素、294μLの精製水、 150μLの200mM 酢酸バッファー(pH5)、150μLの20mM PNPX水溶液とした。反応には、リアクティサーモ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、60℃〜115℃で10分間反応させた。なお、反応容器には、1.5mL容のガラスバイアルを使用し、酵素タンパク質吸着抑制のため、あらかじめ1.5質量%BSA溶液で内部をコーティングした。全ての計測において、遺伝子組換え大腸菌破砕上清又は精製酵素の代わりに50mM Tris−HClバッファー(pH8.0)を入れて同条件で反応させた混合液をコントロール区とした。また、基質溶液と酵素(遺伝子組換え大腸菌破砕上清又は精製酵素)は、反応温度で5分間それぞれ別々に保温(プリインキュベーション)した後に混合し、反応開始とした。10分間の反応終了後は、各反応液に対して等量の0.2M NaCO溶液を加えて撹拌することにより反応を停止させた後、それを5分間遠心分離処理し、上清を得た。上清中のp−ニトロフェノール量は、分光光度計を用いて420nmの吸光度を計測し、予め作成していたp−ニトロフェノール量と420nmの吸光度の検量線を用いて算出し、コントロール区との差分から酵素による加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求めた。1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成する酵素活性を1Uとし、タンパク質量で除した値を比活性(U/mg)とした。また各計測は、3回の独立した試行により行い、平均値と標準誤差を求めた。
この結果、遺伝子組換え大腸菌破砕上清を用いた場合と精製酵素を用いた場合の両方とも、β−キシロシダーゼ活性(PNPX加水分解活性)があることが確認された。
<8> OJ1M−273−1の基質特異性
OJ1M−273−1遺伝子がコードする酵素タンパク質(OJ1M−273−1)に対して、様々なセルロース基質とヘミセルロース基質に対する加水分解活性を調べた。基質として、CMC(Sigma社製)、キシラン(ブナ材由来、Sigma社製)、アラビナン(シュガービート由来、Sigma社製)、アラビノガラクタン(カラマツ材由来、Sigma社製)、PNPX(Sigma社製)、PNPG(Sigma社製) 、PNPAF(Sigma社製)、PNPAP(Sigma社製)、PNPGA(Sigma社製)、PNPFP(Sigma社製)、PNPRP(Sigma社製)、PNPMP(Sigma社製)、PNPadX(Sigma社製)、及びPNPbdFP(Sigma社製)を用いた。
具体的には、CMC、キシラン、アラビナン、アラビノガラクタン以外(PNP基質)を基質とする場合には、0.02mg/mLに希釈した精製酵素と20mMの各基質水溶液を用いて105℃で反応させた以外は前記<7>と同様にして、酵素の加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求め、比活性(U/mg)を算出した。
CMC、キシラン、アラビナン、又はアラビノガラクタンを基質とする場合には、0.02mg/mLに希釈した精製酵素と1質量%の各基質水溶液を用いて105℃で反応させた以外は前記<7>と同様にして反応させ、反応終了後に等量の3,5−dinitrosalicylic acid reagent(DNS溶液)を加えて100℃で5分間加熱処理し、5分間の冷却後に遠心分離処理し、上清を得た。上清中の還元糖量を、分光光度計を用いて540nmの吸光度を計測し、グルコースで作成した検量線(キシランを基質とした場合は、キシロースで作成した検量線、アラビナン、又はアラビノガラクタンを基質とした場合はアラビノースで作成した検量線)を用いて算出し、コントロール区との差分から酵素の加水分解によって生成した還元糖量を求めた。1分間に1μmolの還元糖を生成する酵素活性を1Uとし、タンパク質量で除した値を比活性(U/mg)とした。
測定結果を図5に示す。酵素活性は、PNPXに対する分解活性を100%とした相対値(Relative activity、%)として示した。この結果、OJ1M−273−1はPNPX、PNPAF、PNPAP、アラビナン、及びアラビノガラクタンに対し高い加水分解活性を示し、PNPGとキシランに対しても弱い加水分解活性を示したが、その他の基質に対しては、ほとんど分解活性を示さなかった。
<9> OJ1M−273−1のβ−キシロシダーゼのカイネティクス
OJ1M−273−1によるPNP基質加水分解の最大初速度(Vmax)、ミカエリス定数(Km)及び触媒効率(Kcat/Km)を調べた。カイネティクスの測定は、PNPX水溶液の濃度を、0.2mM、0.5mM、1mM、3mM、5mM、10mM、又は20mMとし、PNPAF水溶液及びPNPAP水溶液の濃度を、1mM、3mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、又は60mMとし、0.01mg/mLに希釈した酵素を用い、105℃で反応させた以外は前記<7>と同様に行い、PNP基質加水分解活性(U/mg)を算出した。最大初速度(Vmax)とミカエリス定数(Km)は、データ分析ソフトOrigin(ライトストーン社製)を用いたミカエリス−メンテンモデルのフィッティングによって求め、得られた数値から触媒効率(Kcat/Km)を算出した。
結果を表2に示す。最大初速度はPNPAFの時が最も大きかったが、触媒効率はPNPXの時が最も大きかった。これは、PNPXがOJ1M−273−1に最も適した基質であることを示している。
<10> PNPXを基質としたβ−キシロシダーゼ活性のpH及び温度依存性
OJ1M−273−1遺伝子がコードする酵素タンパク質(OJ1M−273−1)のPNPX加水分解活性の温度依存性及びpH依存性を調べた。計測には、前記<6>で得られた精製酵素を0.1mg/mLに希釈した精製酵素溶液を用いた。
精製したOJ1M−273−1のPNPX加水分解活性の温度依存性の測定は、反応温度を60、70、80、90、95、100、105、110又は115℃で行った以外は、前記<7>と同様に行い、酵素による加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求め、PNPX加水分解活性(U/mg)を算出した。
結果を図6に示す。酵素活性は、最も高い分解活性を示した105℃の値を100%とした相対値(Relative activity、%)として示した。OJ1M−273−1は、温度範囲60〜110℃においてPNPX加水分解活性を示した(図6)。60〜105℃の範囲では、酵素反応温度の上昇と共にPNPX加水分解活性も上昇し、最も高い活性を示した至適温度(Topt)は、105℃であった。酵素反応温度を105℃以上にした場合には、PNPX加水分解活性は急激に減少した。
精製したOJ1M−273−1のPNPX加水分解活性のpH依存性の測定は、0.1mg/mLに希釈した精製酵素溶液と150μLのマッキルベインバッファー(pH3〜8)を用い、105℃で反応させた以外は、前記<7>と同様に行い、酵素による加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求め、PNPX加水分解活性(U/mg)を算出した。
結果を図7に示す。最も高い分解活性を示したpH5.0の値を100%とした相対値(Relative activity、%)として示した。pHは、基質とバッファーと酵素の混合液の実測値をプロットした。OJ1M−273−1は、pH4.5〜7の範囲において、PNPX加水分解活性を示した。至適pHは5.14(基質、バッファーと酵素の混合液の実測値)であった。
<11> β−キシロシダーゼの熱安定性測定
OJ1M−273−1によるPNPX加水分解活性の熱安定性を調べた。計測には、前記<6>で得られた精製酵素を0.1mg/mLに希釈した精製酵素溶液を用いた。
具体的には、6μLの精製酵素溶液(0.1mg/mL)、294μLの精製水、150μLの200mM 酢酸バッファー(pH5.0)からなる混合液を、85℃、90℃、95℃、100℃、又は105℃の各温度で、0、30、60、120、又は240分間保温(プリインキュベーション)した後、前記<7>と同様にして、PNPX加水分解活性を95℃で測定し、酵素の加水分解によって生成したp−ニトロフェノール量を求め、比活性(U/mg)を算出した。
計測結果を図8に示す。酵素活性は、無処理区(保温時間0分)の活性を100%とした相対値(Relative activity、%)として示した。酵素活性が無処理区の50%に低下する保温時間を半減期Thalfとした。OJ1M−273−1のThalfは、保温温度85℃の場合は約240分、 90℃及び95℃の場合は約180分、100℃の場合は約130分であった。一方、保温温度を105℃にした場合、PNPX加水分解活性は急速に減少し、30分で約30%になった。
本発明に係る耐熱性β−キシロシダーゼは、少なくとも105℃、pH5.0の条件下でPNPXを基質とした加水分解活性を有しており、高温条件下におけるセルロース含有バイオマスの糖化処理に好適である。このため、当該耐熱性β−キシロシダーゼ及びその生産に用いられるポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドが組込まれた発現ベクター、当該発現ベクターが導入されている形質転換体は、例えば、セルロース含有バイオマスからのエネルギー産生の分野において利用が可能である。

Claims (10)

  1. (A)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (B)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
    (C)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチド、
    からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域を有することを特徴とする、耐熱性β−キシロシダーゼ。
  2. α−L−アラビノフラノシダーゼ活性及びα−L−アラビノピラノシダーゼ活性からなる群より選択される1種以上を有する、請求項1に記載の耐熱性β−キシロシダーゼ。
  3. (a)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
    (b)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
    (c)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列と75%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
    (d)配列番号3又は4で表される塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
    (e)配列番号3又は4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列であり、かつ少なくとも105℃、pH5.0の条件下でp−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシドを基質とした加水分解活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
    からなるβ−キシロシダーゼ触媒領域をコードする領域を有する、ポリヌクレオチド。
  4. 前記ポリペプチドが、α−L−アラビノフラノシダーゼ活性及びα−L−アラビノピラノシダーゼ活性からなる群より選択される1種以上も有する、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
  5. 請求項3又は4に記載のポリヌクレオチドが組込まれており、
    宿主細胞において、β−キシロシダーゼ活性を有するポリペプチドを発現し得る、発現ベクター。
  6. 請求項5に記載の発現ベクターが導入されている、形質転換体。
  7. 真核微生物である、請求項6に記載の形質転換体。
  8. 請求項6又は7に記載の形質転換体内で、耐熱性β−キシロシダーゼを生産することを含む、耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法。
  9. 請求項1若しくは2に記載の耐熱性β−キシロシダーゼ、請求項3若しくは4に記載のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼ、又は請求項8に記載の耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼと、少なくとも1種のその他のグリコシド加水分解酵素とを含む、グリコシド加水分解酵素混合物。
  10. セルロースを含む材料を、請求項1若しくは2に記載の耐熱性β−キシロシダーゼ、請求項3若しくは4に記載のポリヌクレオチドがコードする耐熱性β−キシロシダーゼ、請求項6若しくは7に記載の形質転換体、請求項8に記載の耐熱性β−キシロシダーゼの製造方法によって製造された耐熱性β−キシロシダーゼ、又は請求項9に記載のグリコシド加水分解酵素混合物に接触させることにより、リグノセルロース分解物を生産することを含む、リグノセルロース分解物の製造方法。
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