スキャナは様々な監視及び測定の仕事に用いられる。そのために、走査光線(スキャン光線)が領域を走査し、そこで拡散反射又は直反射された光が評価される。物体の距離、輪郭又は側面像に関する情報を得るために、通例、物体の有無の確定だけでなくその距離の測定も同時に行われる。このような距離測定レーザスキャナは光伝播時間の原理に従って作動する。この方法では、スキャナから監視対象空間へ発射された光が戻ってくるまでの所要時間が測定され、光速を用いて距離データが算出される。
光伝播時間法としては2種類の方法が広く用いられている。まず、位相ベースの方法では、発光器により走査光線が変調され、受光された走査光線の位相と基準位相との間の差が算出される。一方、パルスベースの方法では、特徴的なパターン(例えば、数ナノ秒という狭い幅のパルス)が走査光線に刻印され、そのパターンの受信時点が特定される。パルス平均法と呼ばれる一般化法では、複数のパルス又は一連のパルス列が送出され、受信されたパルスが統計的に評価される。
公知のレーザスキャナは、1つの監視平面又は2次元的な監視平面の一部を周期的に走査するために、回転鏡又はポリゴンホイールを備えている。しかし、多くの用途では、単なる1つの平面の走査ではなく3次元的な空間領域の走査が必要である。従来の解決策の1つは、例えば特許文献1にあるように、レーザスキャナと物体との間に相対運動を生じさせるというものである。しかし、この方法は多大なコストを要するし、このように制御された相対運動を行うのに全く適していない用途も多い。
測定対象に対してレーザスキャナを動かさずに済むように、レーザスキャナを更に改良して3次元スキャナとしたものがある。この方向に進んだ装置の一例として、傾斜の異なる複数のカット面を有する格子状ミラーを偏向ユニットとして用いることにより複数の平面を走査するものがある。この構成では、それぞれ1つのカット面に付随した複数の走査平面の間に角度の違いが生じる。その一方で、各走査平面の走査角度範囲はカット面の角度部分(典型的には100度未満)に制限される。更に、各走査平面が歪んで非対称になる。特許文献2に記載の装置は、全く同様の原理により、前方においてはほぼ180度の角度範囲の主走査平面を監視する一方、後方においては、数度だけ傾いた2つの鏡を通じて、40度の角度範囲に制限された2つの別の走査平面を監視する。
別の解決の手掛かりとして、追加の偏向ユニットを用いることが知られている。このユニットは、多くの場合、走査光線を第2の方向へ偏向させる揺動鏡の形で構成される。これにより走査平面の方向を変えることができる。しかし、2つの偏向ユニットを使用すると、コストが増大する上、より大きな組み立て空間が必要となる。それゆえ光学的及び機械的なコストが増大し、加えて発光信号及び受光信号の更なる損失が生じる。特許文献3に記載の追加的な揺動鏡を用いた特殊な解決策では、回転鏡の360度の走査範囲が分割される。前方の角度範囲では従来の方法で1つの平面が走査される。後方の角度範囲では、走査光線が何度か方向転換された後、揺動鏡に入射する。揺動鏡は回転鏡の偏向方向に交差する方向に揺動する。こうして、後方の角度範囲においては平面ではなく3次元空間の一部が走査される。
簡単な回転鏡で間に合わせながらも3次元空間領域の検出を行うために、回転鏡をその回転に加えて更に別の軸を中心として傾けるという方法がある。そのために、例えば特許文献4に記載の装置では、発光器、受光器及び回転鏡を含む走査ユニット全体が偏向用円盤上に設置されている。この偏向用円盤の向きを変えることで走査平面を変化させ、その結果全体として3次元空間領域の監視が行われる。しかし、向きを変えられる偏向用円盤や該円盤とのデータ交換及び通信のための接続部を備える機械的な構造は非常にコストがかかる。
特許文献5には、レーザ光線で周囲を3次元的に走査するために、回転可能且つ追加的に傾動可能な偏向ユニットを備えたレーザスキャナが開示されている。様々な実施形態で偏向ユニットの傾動機構が数多く提案されている。しかし、これらの走査平面揺動機構もやはり相当にコストがかかる。
特許文献6に記載の装置では、回転鏡と発光/受光ユニットとの間の光路に回転プリズムが配置されている。これにより走査光線が周期的に揺動され、その運動が回転鏡による走査に重畳されることにより3次元的な走査曲線が生じる。しかしこの解決策は多くの用途にとって柔軟性に欠ける。
上記背景に鑑みて成された本発明の課題は、光電センサの監視領域を簡単な手段で拡大できるようにすることである。
前記課題は請求項1に記載の光電センサ乃至請求項10に記載の監視領域内の物体検出方法により解決される。本発明の前提となる基本的な考え方は、第1の偏向ユニットの通常の周期的な運動の他に、光線を追加的に偏向させる別の運動を行うことにある。そして、前記別の運動を生じさせる補助駆動部が、主駆動部により駆動される第1の偏向ユニットと共に駆動される。2つの運動は、一定の角度を成す異なる軸、つまり互いに平行ではない軸を基準として生じる。
本発明には、複数の偏向ユニットの運動の重畳により3次元的な走査パターンが生じるという利点がある。加えて、共に駆動される補助駆動部の使用により、一層広い監視領域を有する実施形態が可能になる。
前記センサは距離測定機能を有することが好ましい。そのために評価ユニットが冒頭で言及したいずれかの光伝播時間法に対応するように構成される。各偏向ユニットの角度位置と測定された距離から3次元的な位置データが得られる。
好ましくは、第1の偏向ユニットが角柱状ミラーとして構成される、又は、追加偏向ユニットがプリズムを備える。つまり、追加の偏向は透過又は反射の形で選択的に生じる。いずれの場合も走査光線が錐面上で運動することになる。角柱状ミラーの場合は、走査光線のよろめくような運動が錐面上で生じるように、有効な鏡面が傾いていることが重要である。角柱状ミラーの本体の残りの部分は光学的に有効ではなく、従って必ずしも角柱状でなくてもよい。原理的には傾いた状態の平面鏡で足りる。ただし角柱には、簡単な形状でありながら、補助駆動部による駆動に必要な機械的な操作点があるという利点がある。
好ましくは、第1の偏向ユニットの周期的な運動及び/又は追加偏向ユニットの運動が回転運動である。つまり、これらの偏向ユニットは、互いに傾いて平行配置から逸れた一定の角度を成す回転軸を中心として回転する。回転速度の比に応じて、周期的な3次元の走査路が生じる。あるいは、第1の偏向ユニットを前後に揺らすことも考えられる。あるいは、第2の偏向ユニットを回転させる代わりに、それを特定の角度に調節したり、特定の走査平面をその都度選択するために一時的に動かしたりすることもできる。
好ましくは、前記センサが補助駆動部への給電用の無線給電ユニットを備える。補助駆動部は第1の偏向ユニットと共に駆動されるため、相対運動を克服した給電が必要である。原理的には集電環又はそれに類するものの使用も可能だが、トランスの原理等による無線給電ユニットを用いれば機械的な負荷が生じないため整備の手間が減る。
好ましくは、前記センサが、第1の駆動部を有するベースユニットと、第1の偏向ユニット、補助駆動部及び追加偏向ユニットを備える走査ユニットとを備え、発光器及び/又は受光器も走査ユニットに格納される。この構成では、主駆動部が走査ユニットを測定ヘッド又は光学ヘッドとして駆動又は回転させ、その駆動される走査ユニットの一部である補助駆動部が追加偏向ユニットを走査ユニットに対して相対的に運動させる。更に無線の給電部及びデータ伝送部を設けることが好ましい。あるいは、発光器及び/又は受光器を備える走査ユニットの代わりに回転鏡だけを第1の偏向ユニットとして設けてもよいが、この回転鏡もやはり、共に駆動される補助駆動部により2軸を中心として駆動される。
好ましくは、走査ユニットが複数の受光器及び/又は発光器を備えている。より好ましくは複数対の発光器/受光器が形成されている。これら受光器と発光器は、個数及び所望の走査曲線に応じて、相互に角度をずらして、例えば互いに180度ずれて前方と後方を同時に走査するようにしたり、上下に並べたりしてもよい。
好ましくは、補助駆動部と追加偏向ユニットが複数設けられ、それぞれが受光器及び/又は発光器に割り当てられる。特に複数対の発光器/受光器がそれぞれ専用の回転プリズムに割り当てられる。これらのプリズムの運動を同期させてもよいが、必須ではない。それぞれの運動に応じた3次元の走査曲線が生じる。追加偏向ユニットを割り当てない発光器/受光器の対を混在させることも考えられる。このような対は従来のように平面走査を行う。原理的には同じ追加偏向ユニットを複数の発光器及び受光器に割り当てることも可能だが、そうすると走査曲線がやや分かりにくくなる。
好ましくは、発射される光線の送出光路を囲む鏡胴が設けられる。これにより光学的な混信が低減される。加えて、発光レンズが受光レンズ内に配置されることにより、発光路と受光路が同一直線上に配置されることが好ましい。
好ましくは、第2の偏向ユニットが鏡胴部を備える。これにより、第2の偏向ユニット内での光学的な混信が防止される。発射光線を囲む鏡胴と共に用いることで、発光路と受光路の完全なチャンネル分離が達成される。
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限定されるものではない。
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
図1はレーザスキャナとして構成されたセンサ10の断面図である。発光器12(例えばLEDやレーザダイオード)が発光光学系14を通じて発射光線(走査光線)16を送出する。この光線は、本実施形態ではプリズム状ミラーとして構成された偏向ユニット18に当たって方向転換した後、レーザスキャナ10から監視領域20へ出る。発射光線16が物体に当たると、直反射又は拡散反射された光22がレーザスキャナ10へ戻り、再度偏向ユニット18に当たって方向転換した後、受光光学系24により受光器26に収束される。使用する光は可視光以外に紫外領域や赤外領域の光でもよい。
主駆動部28が、偏向ユニット18を備える走査ユニット30に、周期的な運動、特にシャフト32により定まる回転軸34を基準とした回転運動を行わせる。走査ユニット30内には該走査ユニット30と共に駆動される補助駆動部36があり、これが偏向ユニット18を第2の軸38を中心として動かす(特に回転させる)。2つの軸34、38は互いに傾いて延在している。
仮に偏向ユニット18を45度の位置に固定すれば、主駆動部28による回転運動の間、従来のレーザスキャナと同様に平面が走査される。補助駆動部36による運動は、双方向矢印40で示したように、その平面に垂直な高さ方向への追加的な偏向を生じさせる。これらの運動の重畳により3次元的な走査曲線が生じる。その形状は、偏向ユニット18のプリズム角、軸34及び38の成す角度、並びに主駆動部28及び補助駆動部36の運動パターンにより決まる。
好ましい構成として、共に駆動される補助駆動部36はセンサ10の静止部分にある給電部44から無線給電部42a〜bを通じて給電を受ける。この静止部分、つまりセンサのうち走査ユニット30以外の部分は本明細書でベースユニットとも呼ばれる。あるいは、主駆動部28において、共に駆動される給電接続部をシャフト32に統合し、それを好ましくは無線伝送方式にして、別体の無線給電部42a〜bの代わりとしてもよい。
発射光線16を発生するため、そして受光器26内で反射光22から生成される受光信号を評価するために、制御・評価ユニット46が発光器12及び受光器26と接続されている。受光信号の評価では、物体の有無が判定され、そして特にその物体の距離が光伝播時間法により測定される。加えて制御・評価ユニット46は主駆動部28を制御し、エンコーダの角度信号を受け取る。走査ユニット18へのデータ伝送が行われていれば、補助駆動部36の制御とその回転位置の監視も可能である。以上により、制御・評価ユニット46内では、検出された各対象点の3次元的な位置データが利用できる。センサ10は図示せぬケーシングに囲まれており、該ケーシングのうち光線の通過する領域は全周を囲む前面パネルにより閉鎖されている。
図1の構成は実施例と理解すべきであり、数多くの変形が可能である。まず、光学系の共線的な配置はビームスプリッタで実現することも可能であり、また受光レンズ24の中央に発光レンズ14を配置したものの代わりに、横に並んだ2重レンズを用いてもよい。
平面から3次元的な走査曲線への走査領域の拡大が、図1の実施形態では偏向ユニット18としての回転式のプリズム状ミラーにより達成されている。その光学的な効果は詰まるところ、入射角が変化すること、つまり鏡面が回転に応じて異なる角度で光を受けるということである。偏向ユニット18の残り部分の形状は重要ではないため、必ずしもそれがプリズム状(又は角柱状)である必要はない。代わりに、発光器12乃至は受光器26の回転、それも光学軸に対して傾いた軸を中心とする回転により、入射角を変化させてもよい。この場合も、補助駆動部を用いた回転による場合と同様に、光線が錐面を描き、走査の高さ方向の位置が変化する。
図2はレーザスキャナとして構成されたセンサ10の別の実施形態を示している。なお、全体として同一の符号は同一又は相互に対応する特徴部分を示している。図1と異なり、ここでは発光器12a〜b及び受光器26a〜bが、それらに割り当てられた発光光学系14a〜b及び受光光学系24a〜bと共に走査ユニット30に格納されており、それゆえ主駆動部28により作り出される回転運動を共に行う。つまり走査ユニット30は回転式の光学ヘッド又は測定ヘッドとなっている。無線伝送ユニット42a〜bが走査ユニット30の各要素に給電し、無線データ交換によって制御・評価ユニット46を走査ユニット30と接続する。
このような走査ユニット30には、内部に比較的簡単に複数の測定系を格納できるという利点があり、例えば図2では前方及び後方の測定を行うための2組の発光/受光ユニット12a〜b、26a〜bが格納されている。この配置の変形として、図示した180度とは異なる角度のずれで発光/受光ユニットを配置すること、例えば120度の角度間隔で3つの発光/受光ユニットを設けることや、高さ方向に2つ以上の発光/受光ユニットを上下に配置することができる。また、発光/受光ユニット12a〜b、26a〜bを1組だけ設けることも可能である。
各発光/受光ユニット12a〜b、26a〜bの前には追加偏向ユニット(この例ではプリズム48a〜b)が配置されており、これがそれぞれ補助駆動部36a〜bを通じて駆動(特に回転駆動)される。プリズム48a〜bは光線に高さ方向のずれを生じさせ、これと走査ユニット30自体の回転運動との協働により3次元的な走査パターンが生じる。その際、発光/受光ユニット12a〜b、26a〜bの数に応じてより多くの走査曲線を同時に検出したり、プリズム48a〜bの運動パターンに応じて異なる3次元的な走査曲線を同時に検出したりできる。また、発光/受光ユニット12a〜b、26a〜bの一部のみの前にプリズム48a〜bを設けることも考えられる。この場合、残りの発光/受光ユニット12a〜b、26a〜bは従来と同様に平面を走査する。
図3はレーザスキャナとして構成されたセンサ10の別の実施形態を示している。この例では、発光器12と受光器26が、駆動される走査ユニット30の外に再び配置されている。図3では以下に説明するチャンネル分離が成されているが、これは共に駆動される発光器12a〜b及び受光器26a〜bを有する図2の実施形態でも実施可能である。
光学的な混信の防止、つまりチャンネル分離のために、発射された走査光線16の光路領域が光を通さない鏡胴で囲まれている。この鏡胴は3つの構成部分から成るが、それぞれ単独でも部分的な効果を奏するため、これらを必ず同時に設けなければならないわけではない。第1の鏡胴領域50は発光レンズ14までの発光器12の放射領域から受光レンズ24を防護する。第2の鏡胴領域52は第1の偏向ユニット18までの光路と、その先のプリズム48までの光路とを筒状に囲む。第3の鏡胴領域54はプリズム48の内部において拡散反射光22の入射領域から走査光線16の出射領域を防護する。鏡胴50、52、54を3領域に分割したのは、走査ユニット30が主駆動部18により発光レンズ14及び受光レンズ24に対して、またプリズム48が補助駆動部36により走査ユニット30に対して、それぞれ相対的に駆動されるからである。