JP2016107473A - 透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 シート最表面にグロス感を持たせつつ、充分な照り効果が得られる透明反射フィルムにより、木目シートなどを得る透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法を提供することである。【解決手段】 平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝6の模様が透明樹脂中の空隙により形成された透明反射フィルム3の本体3aを設け、透明反射フィルム本体3aの表面に平滑面5cが形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂製の化粧シートなどに使用される透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法に関する。
天然木目の板の表面には、木目模様とは異なる光沢模様、いわゆる「照り」を有したものがある。この照りは、木材表面の正反射光以外の方向に反射する光線のうち、木材表面の一部に反射エリアを有しており、視点あるいは照明位置の変化に伴い、この反射エリアの形状や位置が変化する、部分的な光線反射現象である。樹脂製の化粧シートで、精巧な天然木目を再現するには、この照りの再現が必要である。
特許文献1には、木目柄を印刷した着色基材シートの上に、表面に凹凸を設けた透明層を積層した構成の樹脂製の化粧シートが開示されている。特許文献2には、立体模様化粧材の製造方法が開示されている。ここでは、シート生地に塗膜塗装を積層させたのち、この積層塗膜シート生地を基材に貼着させる。続いて、シート生地の塗膜部にエンボス加工を施し、エンボス加工によって塗料積層部に形成された凹凸の輪郭模様の凸状部分から所望の塗層色を研ぎ出し、研ぎ出された塗層の色彩、あるいは研ぎ出された地肌により基材表面に立体模様を現出させる製造方法が記載されている。
木目柄を印刷したシートの表面に凹凸を設けた化粧シートでは、表面の凹凸面で強い反射光が生じないため、照り感の向上には繋がらない。また、シート表面の凹凸模様の絵柄との同調や、艶状態のコントロールなどを行なったとしても、シート表面に凹凸形状を有することから、シート表面での正反射光により生起するグロス感とはトレードオフとなり、結果として見劣りするものであった。
また、透明層の裏面側に凹凸をつけ、最表面は平滑面とする構成も考案されている。しかしながら、この場合は、凹凸面での光線反射が弱くなり、照り光の表現力としては不足してしまう。
従来の方法では、木目柄を印刷したシートの上に、表面に凹凸を設けた透明層を積層した構成を基本として、最表面層に保護層としてハードコート層を設けたり、更にはそのハードコート層に光散乱用のフィラーなどを含ませて、マット層とした構成の化粧シートなど、数々の加工バリエーションを有している。この場合、最表面層での光反射を用いることから、表面のマット形状は、凹凸形状を埋めてはならないなどの制約があり、その自由度が少ない。
本発明の課題は、シート最表面にグロス感を持たせつつ、充分な照り効果が得られる透明反射フィルムにより、木目シートなどを得る透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法を提供することにある。
グロス感はシート表面で生じる正反射光により醸し出されており、この正反射光は平滑面によりのみ、得られる。そのため、充分なグロス感を得るためには、最表面に平滑層を設定することが必要である。一方で、天然木目の板の表面のような照り光を得るための構造として、透明樹脂層の内部に空気層を設けている。この空気層では、透明樹脂層を構成する樹脂の屈折率と、空気の屈折率との差が反射率を決定する重要な要素となる。本発明では、いわゆる発泡層としてではなく、エンボスパターンとして構成された微細な空気層の模様の溝形状を配設した構造としている。これにより、空気との境界面における強い反射光を規則性を持って反射させ、照り光として知覚させることができる。
この透明樹脂層の内部に空気層の模様の溝形状を作るためには、エンボス法を用いて透明樹脂層の表面に反射用の凹凸部を形成した後に、これと同じ樹脂で最外面が平滑面となるようにもう一層“蓋”となる層を設ける。
各層間の接着方法について、接着剤を用いる場合、部材と接着剤の屈折率が一致しないために境界面での反射光が生じてしまい、狙った効果が得られないばかりか、構成部材が増えるためにコストの増加にも繋がり、好ましくない。また、押出法を用いたエンボスプロセスにおいても、高温の樹脂をシートに押出して加工するため、エンボス済みのシート上に樹脂を押出した場合にはエンボスの凹凸も溶融し、消失してしまうといった問題がある。
そこで、本発明では、空気層の溝形状の模様を作るための凹凸面を形成したエンボスシートと、蓋となる平坦層を形成する際の樹脂を1種2層の共押出しとしている。そして、空気層の溝形状の模様を作るための凹凸面が形成された第一層を溶融吐出ギリギリの低温で押出し、この第一層に接触する第二層を溝形状深さよりも薄く、かつ、高温で押出し、シートの形成を行なう方法で、内部に空気層を有した透明反射フィルムを一括成形で得られることを見出した。
請求項1に記載の発明では、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様が透明樹脂中の空隙により形成された透明反射フィルムの本体を設け、前記透明反射フィルム本体の表面に平滑面が形成されていることを特徴とする透明反射フィルムを提供する。
請求項2に記載の発明では、前記透明反射フィルム本体は、前記万線状溝の模様が形成された透明樹脂の第一層と、前記第一層の上に積層され、表面に平滑面が形成された透明樹脂の第二層とが一体的に積層された積層体によって形成され、前記万線状溝の模様は、前記積層体の前記第一層と前記第二層との間の空隙により構成され、前記第二層の表面に平滑面が形成されていていることを特徴とする請求項1に記載の透明反射フィルムを提供する。
請求項3に記載の発明では、前記積層体は、前記第一層と前記第二層とが同一材料で形成され、前記第一層の前記万線状溝の溝深さよりも前記第二層の厚さの方が小さく設定され、かつ前記第一層の上面と前記第二層の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化され、前記第一層と前記第二層との接合時の成形温度は、前記第一層よりも前記第二層の温度が高い温度で成形されていることを特徴とする請求項2に記載の透明反射フィルムを提供する。
請求項4に記載の発明では、前記第二層は、前記第一層との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層がさらに接合され、前記表面層の表面に前記平滑面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の透明反射フィルムを提供する。
請求項5に記載の発明では、前記透明樹脂は、オレフィン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、MS樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明反射フィルムを提供する。
請求項6に記載の発明では、任意の絵柄のデザイン模様が印刷された基材シート上に、請求項5に記載の透明反射フィルムが積層されて形成されていることを特徴とするデザインシートを提供する。
請求項7に記載の発明では、デザイン模様は、木目であることを特徴とする請求項1に記載の透明反射フィルムを提供する。
請求項8に記載の発明では、同種の透明樹脂を高温状態と低温状態とした一種二層で溶融押出成形する際に、低温状態の第1の透明樹脂を用いて平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様の賦形を行い透明樹脂の第一層を成形し、高温状態側の第2の透明樹脂の第二層を前記第一層の前記万線状溝の成形面側に積層することで、表面に平滑面が形成された透明樹脂の第二層と前記第一層とが一体的に積層された積層体を成形することを特徴とする透明反射フィルムの製造方法を提供する。
請求項9に記載の発明では、任意の絵柄のデザイン模様が印刷された基材シート上に、請求項1の透明反射フィルムが熱圧着によって積層状態で接合されるデザインシートを成形することを特徴とするデザインシートの製造方法を提供する。
請求項10に記載の発明では、任意の絵柄のデザイン模様が印刷された基材シート上に、請求項2の透明反射フィルムの前記透明反射フィルム本体の前記第一層を積層した第1積層体を成形する第1の積層工程と、前記第1積層体の前記第一層の前記万線状溝の上側に前記第二層を一体的に積層した第2積層体を成形する第2の積層工程とを有し、前記第2の積層工程時に前記第一層の前記万線状溝の溝深さよりも前記第二層の厚さの方が小さく設定され、かつ前記第一層と前記第二層との接合時の成形温度は、前記第一層よりも前記第二層の温度が高い温度で成形されて前記第一層の上面と前記第二層の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化されることを特徴とする請求項9に記載のデザインシートの製造方法を提供する。
本発明によれば、シート最表面にグロス感を持たせつつ、充分な照り効果が得られる透明反射フィルムにより、木目シートなどを得る透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳しく説明する。図1は、本実施の形態のデザインシートの一例である木目シート1の概略構成を示す縦断面図である。本実施の形態の木目シート1は、任意の絵柄、例えば予め木目の絵柄(デザイン模様)が印刷された木目印刷シートである基材シート2の上に、透明反射フィルム3が接着層Sを介して積層されて形成されている。なお、接着層Sは必須構造ではないが、現実的には基材シート2と透明反射フィルム3との接着力が不十分な場合が多いので、接着力確保のために接着層Sを適宜設けてもよい。
透明反射フィルム3の本体3aは、少なくとも第一層4と第二層5とが一体的に積層された積層体によって形成されている。本実施の形態では、第一層4は、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝6の模様(図3参照)が形成された透明樹脂の第1エンボス層によって形成されている。第二層5は、透明樹脂の第2エンボス層5aと、表面層5bとを積層した構成を有する。第2エンボス層5aは、第一層4の上に積層され、第一層4との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層5bがさらに接合され、表面層5bの表面に平滑面5cが形成されている。図2に示すように万線状溝6の模様は、積層体の第一層4と第二層5との間の空隙により構成されていている。
ここで、透明反射フィルム3の積層体は、第一層4と第二層5とが同一材料の透明樹脂で形成されている。透明樹脂の材料としては、オレフィン系樹脂を用いることが可能で、具体的には、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、塩化ビニールが挙げられる。これらは、易加工性と柔軟性を有しており、仕上がり品も風合いが良い。また、一般的な透明樹脂を用いた構成も可能である。その中でも、加工が比較的容易なプラスチック材料として、例えば、ポリカーボネイト樹脂、MS(メタクリルスチレン)樹脂などを用いれば耐衝撃性に優れた割れにくい特徴を持たせる事が出来、アクリル系樹脂やポリスチレン系樹脂を用いれば耐擦性に優れた特徴を得る事ができる。
また、透明反射フィルム3の積層体は、第一層4の万線状溝6の溝深さよりも第二層5の第2エンボス層5aの厚さの方が小さく設定され、かつ第一層4の上面と第二層5の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化されている。さらに、第一層4と第二層5との接合時の成形温度は、第一層4よりも第二層5の温度が高い温度で成形されている。
本実施の形態の透明反射フィルム3の製造に際しては、第一層4の樹脂温度を低く、第二層5の第2エンボス層5aの樹脂温度を高くする事で、コシなどのシートの成形性と、パターン転写性や融着性を得ることが出来る。樹脂種類にも拠るが、フローマークの生じない範囲で温度差を設ければよく、PE(例えば日本ポリエチレン製LC600A)やPMMA(例えば三菱レイヨン製VH000)などでは概ね10℃〜20℃程度の温度差を付ける事が出来る。
本実施の形態の透明反射フィルム3の製造方法として、生産性に優れたTダイによる多層押出法を用いた場合について説明する。Tダイによる多層押出法とは、異種の樹脂をそれぞれ溶融して吐出させる複数の押出機をフィードブロックに接続し、フィードブロック内で合流多層化してTダイから多層樹脂膜として吐出し、冷却ロールで樹脂を冷却しながらシーティングを行う方式である。
この多層押出しを行う際には、フローマークの発生を防ぐ事が重要であるが、一般には、各層の樹脂の、Tダイ吐出後の流速を揃えることで行う。本実施の形態においては、各層で同一樹脂を使用するが、温度を変えて粘度を変えるため、Tダイ内で多層化される樹脂の温度差を、フローマークが発生しない吐出条件温度とし、フローマークの無い良好な樹脂膜を得ればよい。
本実施の形態の木目シート1の製造装置11は、2つのシート成形装置(第1のシート成形装置12a(図4参照)と第2のシート成形装置12b(図6参照))を有する。第1のシート成形装置12aは、木目シート1の製造工程の前半部分として、木目の絵柄(デザイン模様)が印刷された基材シート2の上に、透明反射フィルム3の第一層4の第1エンボス層を形成する工程を行う成形装置である。第2のシート成形装置12bは、木目シート1の製造工程の後半部分として、第2エンボス層5aと、表面層5bとを形成する工程を行う成形装置である。
第1のシート成形装置12aは、図4に示すように2つの押出機(第1押出機13と、第2押出機14)と、Tダイ15と、引取り機の3つの冷却ロール(第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17と、第3冷却ロール18)と、基材シート2の供給ロール19とを有する。
第1押出機13には、第一層4の第1エンボス層を構成する透明樹脂材料である第1の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第1押出機13内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第1の溶融樹脂材料が供給路20を介してTダイ15に供給される。また、第2押出機14は、木目印刷シートである基材シート2と接着を行なう第2の樹脂材料(接着層S)のペレットが供給される。そして、この第2押出機14内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第2の溶融樹脂材料が供給路21を介してTダイ15に供給される。
Tダイ15は、2つの溶融樹脂供給口(第1供給口22と第2供給口23)と、1つの吐出口24とを有する。そして、第1供給口22には、第1の溶融樹脂材料の供給路20が連結され、第1押出機13から第1の溶融樹脂材料が供給される。また、第2供給口23には、第2の溶融樹脂材料の供給路21が連結され、第2押出機14から第2の溶融樹脂材料が供給される。
Tダイ15の内部には、第1の溶融樹脂材料のシート(第1のシート25)と第2の溶融樹脂材料のシート(第2のシート26)とを合流して積層させる合流部が設けられている。このTダイ15の内部の合流部で積層された第1のシート25と第2のシート26との積層体のシート(第1の積層体シート27)は、Tダイ15の吐出口24からシート状に吐出される。ここで、Tダイ15から吐出される樹脂(第1の積層体シート27)は、2つの押出機(第1押出機13と、第2押出機14)の回転数、温度条件などを調整し、適切な層比、厚みをコントロールできる。なお、Tダイ15の上流部分に設けられるフィードブロック(図示せず)などで第1のシート25と第2のシート26とを合流、多層化を行っても良い。
引取り機の3つの冷却ロール(第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17と、第3冷却ロール18)は、並設されている。第1冷却ロール16と第3冷却ロール18とは、円筒状の加圧ローラである。第2冷却ロール17は、第1冷却ロール16と第3冷却ロール18との間に配置され、外周面に透明樹脂の第1のシート25の万線状溝6の凹凸模様と逆凹凸のエンボスパターン17aが刻設されている。エンボスパターン17aは、照り光を感じるように万線状溝6の凹凸模様の形状を適宜調整し、エンボス版として加工できる範囲で模様柄を構成すれば良い。
第2冷却ロール17は、例えば鉄芯上に銅メッキを施して、その銅の層を彫刻、たとえばダイヤモンドバイトによる切削加工、砥石による研削加工、選択的に腐食を施すエッチング加工や、その他多くの既存のパターンニング技術を用いてエンボスパターン17aを製作することができる。さらに、銅メッキ上に、クロムメッキを施すことで、表面硬度の向上による銅層の保護を図ることが可能となる。このほかにも金属や、セラミックをシリンダー表面に溶射、研磨を施して耐久性の高いロールを使用したり、ニッケル表面に形状を刻んだロール等を用いても良い。
第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17との間には、供給ロール19から繰り出される基材シート2と、Tダイ15の吐出口24からシート状に吐出される第1の積層体シート27とが同時に導入される。このとき、引取り機に到達した第1の積層体シート27の溶融樹脂は、第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17との間で基材シート2と一緒に挟み込むが、その際に、第1の積層体シート27の第1のシート25が第2冷却ロール17に密着するようにロール温度、トルク、挟圧を調整する。これにより、第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17との間を通過する際に、図5に示すように第2冷却ロール17のエンボスパターン17aの形状が第1の積層体シート27の第1のシート25に転写される。このとき、同時に、基材シート2の上に、第1の積層体シート27の第1のシート25が第2のシート26を介して積層される状態で接着され、中間シート部材28が成形される。
続いて、中間シート部材28は、第2冷却ロール17と第3冷却ロール18との間を通過する。このとき、第2冷却ロール17と第3冷却ロール18とで除熱を行い、冷却ロール17、18の温度差や、張力等を用いて中間シート部材28の反りを矯正しながらシーティングを行い、更に下流部分で巻き取ることで、透明反射フィルム3の第一層4と、基材シート2とが一体に接着された木目シート1の中間シート部材28を得ることができる。
第2のシート成形装置12bは、図6に示すように2つの押出機(第3押出機29と、第4押出機30)と、Tダイ31と、引取り機の3つの冷却ロール(第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33と、第6冷却ロール34)と、中間シート部材28の供給ロール35とを有する。
第3押出機29には、透明反射フィルム3の第二層5の表面層5bを構成する透明樹脂材料である第3の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第3押出機29内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第3の溶融樹脂材料が供給路36を介してTダイ31に供給される。また、第4押出機30は、透明反射フィルム3の第二層5の第2エンボス層5aを構成する透明樹脂材料である第4の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第4押出機30内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第4の溶融樹脂材料が供給路37を介してTダイ31に供給される。
Tダイ31は、2つの溶融樹脂供給口(第3供給口38と第4供給口39)と、1つの吐出口40とを有する。そして、第3供給口38には、第3の溶融樹脂材料の供給路36が連結され、第3押出機29から第3の溶融樹脂材料が供給される。また、第4供給口39には、第4の溶融樹脂材料の供給路37が連結され、第4押出機30から第4の溶融樹脂材料が供給される。
Tダイ31の内部には、第3の溶融樹脂材料のシート(第3のシート41)と第4の溶融樹脂材料のシート(第4のシート42)とを合流して積層させる合流部が設けられている。このTダイ31の内部の合流部で積層された第3のシート41と第4のシート42との積層体のシート(第2の積層体シート43)は、Tダイ31の吐出口40からシート状に吐出される。ここで、Tダイ31から吐出される樹脂(第2の積層体シート43)は、2つの押出機(第3押出機29と、第4押出機30)の回転数、温度条件などを調整し、適切な層比、厚みをコントロールできる。例えば、第2エンボス層5aの樹脂温度を高く、表面層5bの樹脂温度を低く設定する。なお、Tダイ31の上流部分に設けられるフィードブロック(図示せず)などで第3のシート41と第4のシート42とを合流、多層化を行っても良い。
引取り機の3つの冷却ロール(第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33と、第6冷却ロール34)は、並設されている。第4冷却ロール32と第6冷却ロール34とは、円筒状の加圧ローラである。第5冷却ロール33は、第4冷却ロール32と第6冷却ロール34との間に配置されている。この第5冷却ロール33は、外周面が鏡面状に成形され、ミラーロールが形成されている。
第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33との間には、供給ロール35から繰り出される中間シート部材28と、Tダイ31の吐出口40からシート状に吐出される第2の積層体シート43とが同時に導入される。このとき、引取り機に到達した第2の積層体シート43の溶融樹脂は、第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33との間で中間シート部材28と一緒に挟み込む。その際に、設定の限度は、樹脂種類や樹脂の吐出量、層厚みなどにより異なるが、成形品にフローマークが発生せず、かつ、中間シート部材28の第1エンボス層の第一層4と、第2の積層体シート43の第4のシート42(第2エンボス層5a)との間に万線状溝6の模様の空隙が維持できる条件とすれば良い。これにより、第2の積層体シート43と中間シート部材28とが積層される。このとき、中間シート部材28の第一層4の上面と、第2の積層体シート43の第4のシート42(第二層5)の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化される。これにより、基材シート2の上に、透明反射フィルム3が接着層Sを介して積層された積層体の第一層4と第二層5との間の空隙により万線状溝6の模様が構成されていている透明反射フィルム3の本体3aが形成される。
さらに、第2の積層体シート43の第3のシート41が第5冷却ロール33に密着するようにロール温度、トルク、挟圧を調整する。このとき、第3のシート41が第5冷却ロール33のミラーロールに密着する事で、第2の積層体シート43の第3のシート41に平滑面を転写させることが出来る。
続いて、第5冷却ロール33と第6冷却ロール34とで除熱を行う。このとき、冷却ロールの温度差や、張力等を用いてシートの反りを矯正しながらシーティングを行い、更に下流部分で巻き取ることで、木目シート1の成形品44を得ることができる。
なお、木目シート1の成形品44の各層への樹脂吐出量の比率は、フローマークや、形状転写に影響の無い樹脂温度が維持でき、フローマークが生じないように設定する。例えば、主層(第一層4の第1エンボス層)に粘度の高い樹脂を選定し、表層(表面層5b)あるいは裏層(第2エンボス層5a)側を主層よりも樹脂粘度の低い樹脂として、フローマークが消える温度条件にて吐出することで木目シート1の成形品44を作ることが好ましい。
上記構成の本実施の形態の木目シート1にあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態では、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝6の模様が透明樹脂中の空隙により形成された透明反射フィルム3の本体3aを設け、この透明反射フィルム本体3aの表面に平滑面5cが形成されている。そして、予め木目の絵柄(デザイン模様)が印刷された木目印刷シートである基材シート2の上に、この透明反射フィルム本体3aを積層させた木目シート1を設けている。そのため、この木目シート1を平滑面5cの外側から目視した場合には、図8に示すように最表面の平滑面5cで反射する反射光L1や、第二層5の下面と万線状溝6の空隙との間の界面で反射する反射光L2や、第二層5および万線状溝6の空隙間の壁部と第一層4とを通り、第一層4と接着層Sとの界面や、万線状溝6の空隙間の壁部などで複雑に反射する反射光L3、L4などが目視されることになる。この場合、最表面の平滑面5cで反射する反射光L1によって木目シート1のグロス感を持たせることができる。さらに、第二層5の下面と万線状溝6の空隙との間の界面で反射する反射光L2や、第二層5および万線状溝6の空隙間の壁部と第一層4とを通り、第一層4と接着層Sとの界面や、万線状溝6の空隙間の壁部などで複雑に反射する反射光L3、L4などによって充分な照り効果が得られる。したがって、木目シート1のシート最表面にグロス感を持たせつつ、充分な照り効果が得られる効果がある。
また、第一層4の第1エンボス層と、第二層5の第2エンボス層5aと、表面層5bとは全て同一の透明樹脂で構成され、各層間の接合部が溶融状態で接合されている。そのため、各層間の接合面では屈折率差を生じないので、各層間の境界面での光線の屈折は生じない。そして、第一層4の第1エンボス層と、第二層5の第2エンボス層5aとの間に万線状溝6の模様の空隙が封じ込められた構造を有している。そのため、本実施の形態の木目シート1の万線状溝6の模様の溝構造の光反射による照り光の効果は、万線状溝6の模様の空隙層と透明樹脂層の屈折率差により生起されるので、この部分で強い反射光を発生させ、照り感の向上を図ることができる。
また、本実施の形態では、透明反射フィルム3の本体3aの第一層4は、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝6の模様(図3参照)が形成された透明樹脂の第1エンボス層によって形成されている。第二層5は、透明樹脂の第2エンボス層5aと、表面層5bとを積層した構成を有する。第2エンボス層5aは、第一層4の上に積層され、第一層4との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層5bがさらに接合され、表面層5bの表面に平滑面5cが形成されている。図2に示すように万線状溝6の模様は、積層体の第一層4と第二層5との間の空隙により構成されていている。
これにより、表面層5bの最外面は平滑面5cとすることで、グロス感を得ることができる。また、表面層5bの最外面が平坦な平滑面5cとなっていることで、表面処理を容易に施すことが可能となる。これにより、表面層5bの平滑面5cにハードコートや、帯電防止などの最表面処理も行いやすい。
また、第一層4の第1エンボス層と、第二層5の第2エンボス層5aとの間に万線状溝6の模様の空隙の空気層を内包させているので、万線状溝6の模様が表面層5bの最外面に露出することはない。これにより、表面層5bを平滑面5cとすることが出来るので、グロス感を損なうことがない。
また、万線状溝6の模様の空隙の溝構造のパターンニングについては、従来のエンボス版での製造プロセスを使用できるので、容易に実現可能であり、低原価を得るには望ましい。さらに、万線状溝6の模様の空隙の溝構造を閉空間とする木目シート1の製造装置11も、1種2層の押出機が使用できれば良く、使用する樹脂もこれまでと同等である。また、木目印刷シート上に直接押出成形を行なうことで、木目シート1を得ることが出来る。この木目シート1も、グロス感を損なわず、ハードコートや帯電防止などの最表面処理も行いやすい。
更に、樹脂を環状オレフィン樹脂とする事で、賦形成形を容易にしつつ、優れた風合いの木目シート1を得ることができる。
したがって、本実施の形態によれば、木目シート1の最表面にグロス感を持たせつつ、充分な照り効果が得られる透明反射フィルム3により、木目シート1などを得る透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法を提供することができる。
(実施例1)
第2冷却ロール17の版形状(エンボスパターン17a)を構成する万線の単位を、線幅140μm、隣接するパターンとのピッチを260μm、溝の深さを30μmとして、半径2.6mm〜12mm、円弧長1.0mm〜4.5mmの範囲の円弧を繋げた形状として、製版を行なった。製版には上記形状を得ることが出来る、曲面状の断面を持つダイヤモンドバイトを用いて、第2冷却ロール17上に設けた銅メッキに対して切削加工を行い、切削後Crメッキを施してエンボス版とした。
第2冷却ロール17の版形状(エンボスパターン17a)を構成する万線の単位を、線幅140μm、隣接するパターンとのピッチを260μm、溝の深さを30μmとして、半径2.6mm〜12mm、円弧長1.0mm〜4.5mmの範囲の円弧を繋げた形状として、製版を行なった。製版には上記形状を得ることが出来る、曲面状の断面を持つダイヤモンドバイトを用いて、第2冷却ロール17上に設けた銅メッキに対して切削加工を行い、切削後Crメッキを施してエンボス版とした。
基材シート2としては木目の印刷を施した厚さ70μmのポリプロピレン樹脂シートを用い、この上に透明なポリプロピレン樹脂を平均厚さ80μmにてエンボス加工を行い、同様に透明なポリプロピレン樹脂を平均80μmの厚さで表面層5bを形成する。
最後にその表面に、乾燥後の厚みが1g/m2となる程度にウレタンアクリレート樹脂をコートして表面保護層を形成し、木目シート1を得る。
出来上がった化粧シートは表面のグロス感を有したまま照り感を有しており、木目の表面よりリアルに木目を表現することができたものとなった。
(実施例2)
実施例1と同様の版を用いて、ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)により同様の試作を行なった。樹脂温度は240℃で実施したところ、やや断面形状の崩れが生じるものの、万線状溝6の模様の空隙層は確保されていた。
実施例1と同様の版を用いて、ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)により同様の試作を行なった。樹脂温度は240℃で実施したところ、やや断面形状の崩れが生じるものの、万線状溝6の模様の空隙層は確保されていた。
第2エンボス層5aと表面層5bとの樹脂温度の温度差を20℃としたところ、良好な結果が得られた。
作成した木目シート1を照明にかざし、様々な角度から木目シート1を観察することでグロス感と照り感の有無の確認を行った。その結果、本発明の木目シート1は、透明樹脂層の内部に万線状の空隙を設けているため、角度を変えて観察することで、木目シート1における照りが発生する場所が様々に変化することを確認できた。また、照明光の反射によるグロス感も確認することができた。以上より、本発明の有効性を確認することができた。
作成した木目シート1を照明にかざし、様々な角度から木目シート1を観察することでグロス感と照り感の有無の確認を行った。その結果、本発明の木目シート1は、透明樹脂層の内部に万線状の空隙を設けているため、角度を変えて観察することで、木目シート1における照りが発生する場所が様々に変化することを確認できた。また、照明光の反射によるグロス感も確認することができた。以上より、本発明の有効性を確認することができた。
エンボスパターン17aの空隙層では強い反射光を生じることから、樹脂層の厚みについては殆んど制約がない。このことは、木目シート1への他の要求項目に応じて適宜決定してよいことを示しており、使いやすい特性である。
また、エンボス版としては、切削版のみならず、エッチングなどを用いた、グラビア用の製版技術も用いることが出来るので、応用範囲が広い。
このように得られたシートを、所望の形状に断裁し、木目シート1を得ることが出来る。断裁には、薄手の場合にはスリッターが使用できるが、厚手の場合は丸鋸や、ランニングソー、レーザー断裁など、適宜選定し使用すればよい。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、図1の木目シート1から基材シート2と接着層Sを外した透明反射フィルム3の本体3aを成形品として成形してもよい。また、上記実施の形態では、デザインシートとして、木目シート1の一例を示したが、これに限定されるものではなく、石や、図形などの任意の絵柄(デザイン模様)が印刷された印刷シートで基材シート2を構成してもよい。さらに、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
本発明は、透明反射フィルムに最表面にグロス感を持たせつつ、充分な照り効果を得ることの両立を図ることで、例えば、包装用材料などの意匠向上に役立てることが出来る。また、木目シートとしてリアルな木目シートを提供し、建築部材や家具を含めたインテリアなどの分野に適用できる。
1…木目シート、2…基材シート、3…透明反射フィルム、3a…透明反射フィルム本体、4…第一層、5…第二層、5a…第2エンボス層、5b…表面層、5c…平滑面、6…万線状溝、11…木目シートの製造装置、12a…第1のシート成形装置、12b…第2のシート成形装置、13…第1押出機、14…第2押出機、15…Tダイ、16…第1冷却ロール、17…第2冷却ロール、17a…エンボスパターン、18…第3冷却ロール、19…供給ロール、20…第1の溶融樹脂材料供給路、21…第2の溶融樹脂材料供給路、22…第1供給口、23…第2供給口、24…吐出口、25…第1のシート、26…第2のシート、27…第1の積層体シート、28…中間シート部材、29…第3押出機、30…第4押出機、31…Tダイ、32…第4冷却ロール、33…第5冷却ロール、34…第6冷却ロール、35…供給ロール、36…第3の溶融樹脂材料供給路、37…第4の溶融樹脂材料供給路、38…第3供給口、39…第4供給口、40…吐出口、41…第3のシート、42…第4のシート、43…第2の積層体シート、44…成形品。
Claims (10)
- 平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様が透明樹脂中の空隙により形成された透明反射フィルムの本体を設け、
前記透明反射フィルム本体の表面に平滑面が形成されていることを特徴とする透明反射フィルム。 - 前記透明反射フィルム本体は、少なくとも表面に前記万線状溝の模様が形成された透明樹脂の第一層と、前記第一層の上に積層された透明樹脂の第二層とが一体的に積層された積層体によって形成され、
前記万線状溝の模様は、前記積層体の前記第一層と前記第二層との間の空隙により構成され、
前記第二層の表面に平滑面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明反射フィルム。 - 前記積層体は、前記第一層と前記第二層とが同一材料で形成され、
前記第一層の前記万線状溝の溝深さよりも前記第二層の厚さの方が小さく設定され、かつ前記第一層の上面と前記第二層の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化され、
前記第一層と前記第二層との接合時の成形温度は、前記第一層よりも前記第二層の温度が高い温度で成形されていることを特徴とする請求項2に記載の透明反射フィルム。 - 前記第二層は、前記第一層との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層がさらに接合され、前記表面層の表面に前記平滑面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の透明反射フィルム。
- 前記透明樹脂は、オレフィン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、MS樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂のうちのいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の透明反射フィルム。
- 任意の絵柄のデザイン模様が印刷された基材シート上に、請求項5に記載の透明反射フィルムが積層されて形成されていることを特徴とするデザインシート。
- デザイン模様は、木目であることを特徴とする請求項6に記載のデザインシート。
- 同種の透明樹脂を高温状態と低温状態とした一種二層で溶融押出成形する際に、低温状態の第1の透明樹脂を用いて平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様の賦形を行い透明樹脂の第一層を成形し、
高温状態側の第2の透明樹脂の第二層を前記第一層の前記万線状溝の成形面側に積層することで、表面に平滑面が形成された透明樹脂の第二層と前記第一層とが一体的に積層された積層体を成形することを特徴とする透明反射フィルムの製造方法。 - 任意の絵柄のデザイン模様が印刷された基材シート上に、請求項1の透明反射フィルムが熱圧着によって積層状態で接合されるデザインシートを成形することを特徴とするデザインシートの製造方法。
- 任意の絵柄のデザイン模様が印刷された基材シート上に、請求項2の透明反射フィルムの前記透明反射フィルム本体の前記第一層を積層した第1積層体を成形する第1の積層工程と、
前記第1積層体の前記第一層の前記万線状溝の上側に前記第二層を一体的に積層した第2積層体を成形する第2の積層工程とを有し、
前記第2の積層工程時に前記第一層の前記万線状溝の溝深さよりも前記第二層の厚さの方が小さく設定され、かつ
前記第一層と前記第二層との接合時の成形温度は、前記第一層よりも前記第二層の温度が高い温度で成形されて前記第一層の上面と前記第二層の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化されることを特徴とする請求項9に記載のデザインシートの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014245859A JP2016107473A (ja) | 2014-12-04 | 2014-12-04 | 透明反射フィルムとデザインシートとこれらの製造方法 |
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Family Applications (1)
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Country | Link |
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-
2014
- 2014-12-04 JP JP2014245859A patent/JP2016107473A/ja active Pending
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