JP2016107321A - レーザー加工方法及びレーザー加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超短パルスビームアレイにおける空間強度分布の歪を解消し、パルスの不要な伸びを補償する手段を備え、超短パルスビームアレイを用いた並列加工が可能なレーザー加工装置。【解決手段】超短パルスレーザー発振器400と、超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスに対して所要の伸びを与えることにより共役パルスを生成するパルス伸張器305と、パルス伸張器により生成された共役パルスを分岐して複数本の共役パルスビームを発生させる回折ビームスプリッタ301と、回折ビームスプリッタで発生させた複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズ302とを備え、パルス伸張器で生成した共役パルスを用いて回折レンズで生じる超短パルスの伸びを補償する。【選択図】図2
Description
本発明は、レーザーを用いた微細加工ならびに微細プロセスを行うことができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置に関する。
近年、回折ビームスプリッタを応用したレーザー微細加工技術が注目されている。回折ビームスプリッタを用いて1本の光ビームを分岐すると、多数本の光ビームからなる光ビームアレイを容易に発生させることができる。光ビームアレイで材料の複数部位を同時に加工すれば、スループット(単位時間当たりの処理能力)が大きく向上し、生産性の高い加工技術を実現できる。このビーム分岐技術は、ナノ秒パルスビームアレイを用いた孔開けや切断へ広く応用されている。
しかしながら、ナノ秒パルスで材料を加工すると、発熱のために加工部位の周縁にデブリと呼ばれる除去物が体積し、加工品質が大きく損なわれる。この問題を回避するために、例えば、レーザー加工後にウエットエッチング等のプロセスが併用されている(非特許文献1)。
加工部位への熱影響を回避する手段として、超短パルスビームを材料加工へ用いることが検討されている。超短パルスビームを製造ラインへ実用化するには、同パルスを用いた並列加工を可能にするビーム制御技術が必要となる。
Jun Amako 26th ICALEO (2007, Orland, USA),"MULTI-BEAM PARALLEL PROCESSING AND CHEMICAL FINISHING OF SILICON FOR MICROCAVITIES IN INKJET PRINTER HEADS"
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Vega et al. September 1,2006/Vol.31,No.17/ OPTICS LETTERS,"High spatiotemporal resolution in multifocal processing with femtosecond laser pulses
しかしながら、回折ビームスプリッタを用いて超短パルスビームアレイを発生させると、深刻な問題に直面する。すなわち、超短パルスビームは波長帯域が広いために、ビーム形状が時空間で歪んでしまう。これは光の回折角がその波長に依存するためである。
図11に超短パルスビームを分岐集光するために用いられる従来のレーザー加工装置(ビーム分岐集光系部分のみ)の一例を示す。図11において、回折ビームスプリッタ101は、超短パルスビーム100を分岐する。屈折レンズ102は、回折ビームスプリッタ101からのビームを集光し、集光ビームアレイ103を集光面104に出力する。
図12(a)に、図11に示す光学系で発生させた49本の超短パルスビームアレイを示す。図12(b)に光軸外2.2mmの超短パルス集光ビームを示す。図12(c)に光軸上の超短パルス集光ビームを示す。分岐されたパルスビームの空間強度分布は、回折方向に扁平に歪み、そのパルス幅は入力ビームのパルス幅に対して大きく広がっている。どちらも回折に起因する角度分散が原因である。時空間歪のある超短パルスビームを加工に用いると、発熱量が大きく増えるために、加工の形状や均一性は著しく損なわれる。
超短パルスの時空間歪を補償する方法として、屈折光学素子あるいは回折ビームスプリッタを組み合わせたビーム分岐集光系がいくつか提案されているが、パルスの時空間歪を十分に補償しきれていない(非特許文献2〜5)。
非特許文献2に開示されているレーザー加工装置(ビーム分岐集光系部分のみ)を図13に示す。図13において、回折ビームスプリッタ201は、超短パルスビーム200を分岐する。回折レンズ202は、回折ビームスプリッタ201からのビームを集光して集光ビームアレイ203を集光面204に出力する。回折ビームスプリッタ201と回折レンズ202を図13のように組み合わせると、集光点におけるパルスビームの空間強度分布の歪は解消される。
しかしながら、回折ビームスプリッタ201と回折レンズ202を用いるだけではパルス幅の広がりは補償されていない。
本発明は、超短パルスビームアレイにおける空間強度分布の歪を解消し、パルス幅の広がりを補償することができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は、超短パルスレーザー発振器と、前記超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスビームに対して所要の伸びを与えることにより共役パルスビームを生成するパルス伸張器と、前記パルス伸張器により生成された共役パルスビームを複数本に分岐する回折ビームスプリッタと、前記回折ビームスプリッタで分岐した複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズとを備え、前記パルス伸張器は、前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とする。
また、本発明は、超短パルスレーザー発振器と、前記超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスビームに対して所要の伸びを与えることにより共役パルスビームを生成するパルス伸張器と、前記パルス伸張器により生成された共役パルスビームに対して位相変調を与えることにより複数本の共役パルスビームを発生させる空間光変調器と、前記空間光変調器で発生させた複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズとを備え、前記パルス伸張器は、前記回折レンズで生じる超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とする。
また、本発明は、超短パルスレーザー発振器と、前記超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスを分光する回折格子と、前記回折格子からの超短パルスビームを平行光にする放物面ミラーと、前記放物面ミラーからの分光された波長成分毎に、所要の位相変調を与えることにより共役パルスを生成する空間光変調器と、前記空間光変調器により生成された共役パルスビームを分岐して複数本の共役パルスビームを発生させる回折ビームスプリッタと、前記回折ビームスプリッタで発生させた複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズとを備え、前記空間光変調器は、前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とする。
本発明によれば、超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスに対して所要の伸びを与えることにより共役パルスを生成するパルス伸張器を設け、パルス伸張器は、回折レンズで生じる超短パルスの伸びを共役パルスにより打ち消すので、超短パルスビームの空間強度分布の歪を解消し、パルスに生じる不要な伸びを補償することができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態のレーザー加工方法及びレーザー加工装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るレーザー加工装置の基本構成図である。実施例1のレーザー加工装置は、回折レンズによるパルスの伸びを補償するために、回折ビームスプリッタのパルス入力側にパルス伸張器を配置したことを特徴とする。
実施例1のレーザー加工装置は、図1に示すように、パルス伸張器305、回折ビームスプリッタ301、回折レンズ302を備えている。回折ビームスプリッタ301及び回折レンズ302は、ビーム分岐集光系を構成する。入力パルス300は、超短パルスである。
パルス伸張器305は、入力パルス300に対して所要の伸びを与えて共役パルス306を発生させ、ビーム分岐集光系である回折ビームスプリッタ301及び回折レンズ302で生じるパルスの不要な伸びを共役パルス306により補償する。
回折ビームスプリッタ301は、パルス伸張器305からの共役パルスを分岐する。回折レンズ302は、回折ビームスプリッタ301で分岐された共役パルスを集光して集光ビームアレイ303を集光面304に出力する。
このように、パルス伸張器305は、入力パルス300に対して所要の伸びを与えて共役パルス306を発生させ、ビーム分岐集光系を構成する回折ビームスプリッタ301及び回折レンズ302で生じるパルスの不要な伸びを共役パルス306により補償する。
従って、超短パルスビームの空間強度分布の歪を解消し、パルスの伸びを補償することができるので、時空間におけるパルス歪は解消する。また、パルス伸張器305におけるパルスエネルギーの損失はほとんどない。
また、大規模なビームアレイの全領域において超短パルスの性質を残せるため、多光子吸収を利用した非熱加工をビームアレイの規模に比例した高いスループットで実現できる。従って、超短パルス加工・プロセスの実用化が加速され、その応用範囲が大きく広がる。
次に、図2を参照しながら、実施例1に係るレーザー加工装置のより具体的な構成及び動作を説明する。
図2に示すレーザー加工装置は、超短パルスレーザー400、λ/2波長板401、平面ミラー402、回折格子403,404、平面ミラー405,406、軸外し放物面ミラー407,408、平面ミラー409、λ/4波長板410、回折ビームスプリッタ301、回折レンズ302を備えている。
超短パルスレーザー400は、波長帯域が780±30nm、パルス幅が20fs(フェムト秒)、パルスエネルギーが5mJ、パルス発振周波数が5KHz、平均出力が5Wと高出力であり、超短パルスビームをλ/2波長板401に出力する。
λ/2波長板401は、反射型の回折格子403,404の回折効率が最大となるように、超短パルスレーザー400から出射される超短パルスビームの直線偏光方位を格子の溝に対して調整する。
回折格子403,404、平面ミラー405は、パルス伸張器305を構成している。回折格子403は、λ/2波長板401からの超短パルスビームを回折して回折格子404に出力する。
回折格子404は、回折格子403からの超短パルスビームを回折して平面ミラー405に出力する。平面ミラー405は、回折格子404からの超短パルスビームを反射して回折格子404に戻す。
回折格子404は、平面ミラー405からの超短パルスビームを回折して回折格子403に出力する。回折格子403は、回折格子404からの超短パルスビームを回折して平面ミラー402に出力する。平面ミラー402は、回折格子403からの超短パルスビームを反射して平面ミラー406に出力する。
一対の軸外し放物面ミラー407,408は、ビーム拡大器を構成し、平面ミラー406からの超短パルスビームを拡大して、平面ミラー409に出力する。平面ミラー409は、放物面ミラー408からの超短パルスビームを反射してλ/4波長板410に出力する。
λ/4波長板410は、平面ミラー409からの超短パルスビームの偏光を円偏光に近い状態に調整して回折ビームスプリッタ301に出力する。回折ビームスプリッタ301と回折レンズ302でビーム分岐集光系を構成している。
ビーム分岐集光系の構成要素である回折ビームスプリッタ301と回折レンズ302の例を図4(a)(b)にそれぞれ示す。回折ビームスプリッタ301と回折レンズ302の各々は石英ガラスからなり、石英ガラスは超短パルスの波長帯域780±30nmで透明である。
次に、パルス伸張器305の構成の詳細図を図3に示す。パルス伸張器305は、超短パルスが入射される反射型の回折格子403と、回折格子403と所定距離離れ且つ回折格子403に対して所定角度だけ傾けて配置され、回折格子403からの超短パルスが入射される反射型の第2回折格子404とを備える。
一対の回折格子403,404は、適当な条件、例えば、ビーム入射角度θ、回折格子間の距離Lにより配置される。図3に示すように、回折格子403は、反時計方向に0〜90度の範囲で傾けて配置され、回折格子404は反時計方向に90〜180度の範囲で傾けて配置されている。
ビーム分岐集光系の構成要素である回折ビームスプリッタ301と回折レンズ302の例を図4(a)(b)にそれぞれ示す。回折ビームスプリッタ301と回折レンズ302の各々は、石英ガラスからなる。この石英ガラスは、超短パルスの波長帯域で透明である。
次に、このように構成された実施例1に係るレーザー加工装置の動作を説明する。
まず、超短パルスレーザー400から出射された直径〜1mmの超短パルスビームはλ/2波長板401を通り、パルス伸張器305へ入力される。パルス伸張器305では、図3に示すように、回折格子403に入射した超短パルスの短波長成分及び長波長成分は、回折格子403で回折される。
このとき、長波長成分は回折角度が大きく、短波長成分は回折角度が小さくなって回折格子404に入射される。すると、回折格子404が反時計方向に90〜180度の範囲で傾けて配置されているので、入射した超短パルスにおける長波長成分は、時間的に進み、短波長成分は、時間的に遅れることになる。
即ち、パルス伸張器305により、所要のパルスの伸びが与えられて共役パルスとなる。その後、共役パルスは、平面ミラー402,406により放物面ミラー408,409へ導かれ、放物面ミラー408,409によりビーム径が〜10mmまで拡大される。
さらに、ビーム径が拡大された共役パルスは、平面ミラー409とλ/4波長板410を経て、回折ビームスプリッタ301、回折レンズ302へ入り、回折ビームスプリッタ301、回折レンズ302により分岐集光されて、所要の超短パルスビームアレイが集光面413に形成される。そして、集光パルスビームアレイを被加工部材へ照射して部材の表面あるいは内部を加工する。
本発明の光学系において、パルスの不要な伸びは主に回折レンズ302で生じる。回折レンズ302の作用を図5に示す。回折レンズ302の角度分散によりパルスの長波長成分は、同パルスの短波長成分よりも時間的に遅れるため(群遅延)、パルスが不要に伸びる。このパルスの伸びΔt1は、以下の式で見積もることができる。
Δt1=φ1‘’・Δω …(1)
ここで、φ1‘’は、回折レンズ302で生じる群遅延分散(パルスの位相φを周波数ωで二回微分した量)、ωは、超短パルスの周波数帯域幅である。回折レンズ302に関し、φ1‘’の符号は、常に負となる。
ここで、φ1‘’は、回折レンズ302で生じる群遅延分散(パルスの位相φを周波数ωで二回微分した量)、ωは、超短パルスの周波数帯域幅である。回折レンズ302に関し、φ1‘’の符号は、常に負となる。
φ1‘’の大きさを決める回折レンズ固有のパラメータは、焦点距離と入射ビームの太さである。式(1)で求めたパルスの伸びΔt1を図6に示す。横軸は超短パルスビームの半径rであり、回折レンズ302の焦点距離をf=100mmとした。
一方、共役パルスを発生させるために、パルス伸張器305が入力パルスへ加える伸びΔt2は以下の式で与えられる。
Δt2=φ2‘’・Δω…(2)
ここで、φ2‘’は、パルス伸張器305が与える群遅延分散であり、その符号は正または負となりうる。φ2‘’の符号と大きさを決めるパルス伸張器固有のパラメータは、回折格子403,404の周期P、回折格子間の距離L、ビーム入射角度θである。ビーム入射角度θは、回折格子403に入射されたレーザーパルスと回折格子403に対する法線とでなす角度である。
ここで、φ2‘’は、パルス伸張器305が与える群遅延分散であり、その符号は正または負となりうる。φ2‘’の符号と大きさを決めるパルス伸張器固有のパラメータは、回折格子403,404の周期P、回折格子間の距離L、ビーム入射角度θである。ビーム入射角度θは、回折格子403に入射されたレーザーパルスと回折格子403に対する法線とでなす角度である。
これらのパラメータを選択することにより、φ2‘’を所望の値に調整できる。従って、以下の条件を満足するようにパラメータを選べば、共役パルスが有するパルスの伸びと回折レンズ302で生じるパルスの伸びが打ち消し合い、パルス伸張器305へ入る前に超短パルスが有していたパルス幅20fsないしそれに近いパルス幅が得られる。
φ1‘’+φ2‘’=0 …(3)
例えば、パルスビーム半径rが5mmのとき、20fsのパルス幅は64fsまで広がる。この場合、短波長成分が長波長成分よりも64fsだけ遅れるような共役パルスをパルス伸張器305で発生させて、ビーム分岐集光系へ入力すれば、回折レンズ302で生じるパルスの伸びを補償できることになる。
例えば、パルスビーム半径rが5mmのとき、20fsのパルス幅は64fsまで広がる。この場合、短波長成分が長波長成分よりも64fsだけ遅れるような共役パルスをパルス伸張器305で発生させて、ビーム分岐集光系へ入力すれば、回折レンズ302で生じるパルスの伸びを補償できることになる。
次に、図7に、パルス伸張器305の他の2つの具体例を例示する。図7(a)に示すパルス伸張器305は、一対の透過型回折格子501,502から構成される。透過型回折格子501,502の基材は石英ガラスからなる。透過型回折格子501と透過型回折格子502とは、透過型回折格子501と透過型回折格子502とのなす角度が、90度以内になるように配置されている。
透過型回折格子501に入射された入力パルスは、透過型回折格子501により回折されて透過する。このとき、長波長は回折角度が小さいので、透過型回折格子502の内の、透過型回折格子501に近い位置に入射される。短波長は回折角度が大きいので、透過型回折格子502の内の、透過型回折格子501からより遠い位置に入射される。その結果、入射した超短パルスにおける長波長成分は、時間的に進み、短波長成分は、時間的に遅れることになる。即ち、所要のパルスの伸びが与えられて共役パルスとなる。図7(a)に示す透過型回折格子501,502を用いることにより、パルスの伸びをパルスや光学系の条件に応じて可変することができる。なお、パルスの伸びは、角度θによって調整することができる。
図7(b)に示す具体例では、パルス伸張器は、基材603に高屈折率層601と低屈折率層602が交互に積層された多層膜ミラーから構成されている。高屈折率層601の厚さ及び低屈折率層602の厚さは、基材603から離れるに従って大きくなっている。基材603は、石英ガラスからなる。高屈折率層601と低屈折率層602は、誘電体からなる。
図7(b)に示すように、高屈折率層601に入射した長波長は、高屈折率層601の厚さが大きく且つ高屈折率層601から低屈折率層602へ移行する境界で反射する。高屈折率層601に入射した短波長は、高屈折率層601の厚さが小さく且つ低屈折率層602から高屈折率層601へ移行する境界で反射する。即ち、入射した超短パルスにおける長波長成分は、時間的に進み、短波長成分は、時間的に遅れるので、所要のパルスの伸びが与えられて共役パルスとなる。
図8に、集光面413(加工面)において得られる集光スポットアレイの空間強度分布と時間波形を示す。図8(a)は、図11に示した従来のレーザー加工装置で得た集光スポットアレイである。回折ビームスプリッタの角度分散のためにパルスの空間強度分布は歪み、回折レンズの角度分散のためにパルスの時間波形も歪み、パルスが伸びている。
図8(b)は、図13に示した従来のレーザー加工装置で得た集光スポットアレイである。回折ビームスプリッタで生じる回折分散は補償されており、空間強度分布に歪はない。しかし、回折レンズの角度分散は補償されずに残っている。このため、パルスの時間波形は歪んだままであり、パルスは伸びたままである。
図8(c)は、本発明のレーザー加工装置で得た集光スポットアレイである。回折ビームスプリッタの角度分散は補償されており、空間強度分布に歪はない。また、回折レンズの角度分散も十分に補償されており、パルスの時間波形歪みも取り除かれ、パルスの不要な伸びはない。
本発明のレーザー加工装置で発生させた時空間歪のない集光スポットアレイをレーザー加工へ用いる際には、被加工物を集光面413へ置く。そのとき、超短パルスビームの偏光は、加工に応じて調整することが望ましい。例えば、金属板へ微細な孔を開ける場合には、λ/4波長板410を用いて超短パルスビームの偏光を円偏光に近い状態に調整する。
また、微細な周期構造を材料表面へ形成する場合には、λ/2波長板401を用いて超短パルスビームの偏光を所要の方位の直線偏光に調整する。ビーム分岐集光系を構成する回折ビームスプリッタ301と回折レンズ302の光学特性は入射ビームの偏光状態には依存しないように設計できるため、加工内容に応じて超短パルスビームの偏光を調整しても支障はない。
なお、図2に示した実施例1の構成において、パルス伸張器305と放物面ミラー407,408の前後の配置を置き換えても、本発明は同様の効果が得られる。また、回折レンズ302で生じるパルスの伸びが比較的小さい場合には、回折格子403,404や多層膜ミラーの他に、一対のプリズムあるいは平行平板ガラスをパルス伸張器として用いることもできる。
図9に本発明の実施例2に係るレーザー加工装置の構成図を示す。図9に示す実施例2に係るレーザー加工装置は、図2に示す実施例1に係るレーザー加工装置に対して、λ/4波長板410に代えてλ/2波長板701、回折ビームスプリッタ301に代えて空間光変調器702を配置したことを特徴とする。
なお、その他の構成は、図2に示す実施例1に係るレーザー加工装置の構成と同一であるので、それらの説明は、省略する。
空間光変調器702は、光波の位相に対して所望の位相変調を加える手段であり、位相変調媒体として平行配向された複屈折性液晶を有し、複屈折性液晶を2枚の電極間に挟んで構成される。2枚の電極の一方は画素電極であり、この画素電極は、縦横に周期的に並んでいる。空間光変調器702へ駆動回路702を介して電極アドレス信号を入力し、液晶中に周期的な屈折率分布を形成する。前記電極アドレス信号は信号発生回路704にて生成される。
λ/2波長板701は、共役パルスビームの偏光方位を液晶の配向方位に合わる。偏光方位が調整された共役パルスビームを空間光変調器702に入射すると、共役パルスビームは空間光変調器702により分岐され、回折レンズ302を経て集光ビームアレイが集光面413に形成される。
パルスビームを分岐する手段として空間光変調器702を用いると、空間光変調器702へ入力する電気信号の制御のみで、ビームアレイの規模や形状を自在に変更できる。実施例2の超短パルスビームアレイ発生装置を搭載したレーザー加工装置は、きわめて汎用性が高く、1台の装置で様々なレーザー加工へ対応でき、多機種の実装工程へ応用が可能である。
また、ビームアレイを用いる多点同時加工にはエネルギーの大きな超短パルスが必要であるが、超短パルス光源の高出力化が近年活発に進んでおり、100Wを超える光源も実用化されつつある。
なお、実施例2では、透過型空間光変調を用いているが、反射型空間光変調器を用いても同様の効果が得られる。
図10は、本発明の実施例3に係るレーザー加工装置の構成図である。図10に示す実施例3に係るレーザー加工装置は、図2に示す実施例1に係るレーザー加工装置に対して、パルス伸長器305に代えてパルス整形器800を配置したことを特徴とする。
パルス整形器800は、超短パルスレーザー400からの超短パルスを整形するものであり、回折格子801、軸外し放物面ミラー802、空間光変調器803を備えている。
なお、その他の構成は、図2に示す実施例1に係るレーザー加工装置の構成と同一であるので、それらの説明は、省略する。
回折格子801は、超短パルスビームを分光し、放物面ミラー802は、回折格子801からの超短パルスビームを平行光にして空間光変調器803へ入射させる。空間光変調器803は、分光された波長成分毎に(すなわち、周波数成分毎に)、所要の位相変調を与える。空間光変調器803へ駆動回路804を介して電極アドレス信号を入力し、液晶中に周期的な屈折率分布を形成する。前記電極アドレス信号は信号発生回路805にて生成される。
即ち、式(2)に示した群遅延分φ2‘’の調整が行われる。位相変調されたビームは、空間光変調器803の内部で反射され、軸外し放物面ミラー802で集光された後に回折格子801により再び合成されて共役パルスビームとなる。
パルス整形器8を用いることにより、パルス伸張器305を用いた場合よりも、さらに高い精度で不要なパルスの伸びを補償できる。
なお、実施例3では、反射型空間光変調803を用いているが、透過型空間光変調器を用いても同様の効果が得られる。
本発明は、レーザーを用いた微細加工ならびに微細プロセスを行うことができるレーザー加工装置等に利用することができる。
300 入力パルス
301 回折ビームスプリッタ
302 回折レンズ
303 集光ビームアレイ
304,413 集光面
305 パルス伸長器
400 超短パルスレーザー
401,701 λ/2波長板
402,403,406,409 平面ミラー
403,404,414,415,801 回折格子
407,408,802 放物面ミラー
410 λ/4波長板
501,502 透過型回折格子
601 高屈折率層
602 低屈折率層
603 基材
702,803 空間光変調器
703,804 駆動回路
704,805 信号発生回路
800 パルス整形器
301 回折ビームスプリッタ
302 回折レンズ
303 集光ビームアレイ
304,413 集光面
305 パルス伸長器
400 超短パルスレーザー
401,701 λ/2波長板
402,403,406,409 平面ミラー
403,404,414,415,801 回折格子
407,408,802 放物面ミラー
410 λ/4波長板
501,502 透過型回折格子
601 高屈折率層
602 低屈折率層
603 基材
702,803 空間光変調器
703,804 駆動回路
704,805 信号発生回路
800 パルス整形器
Claims (6)
- 超短パルスレーザー発振器と、
前記超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスビームに対して所要の伸びを与えることにより共役パルスビームを生成するパルス伸張器と、
前記パルス伸張器により生成された共役パルスビームを分岐して複数本の共役パルスビームを発生させる回折ビームスプリッタと、
前記回折ビームスプリッタで発生させた複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズとを備え、
前記パルス伸張器は、前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とするレーザー加工装置。 - 前記パルス伸張器は、前記超短パルスが入射される第1回折格子と、前記第1回折格子と所定距離離れ且つ前記第1回折格子に対して所定角度だけ傾けて配置され、前記第1回折格子からの前記超短パルスが入射される第2回折格子とを備え、
各々の回折格子の周期、回折格子間の距離、回折格子へのビーム入射角度の少なくとも1つを調整することにより前記共役パルスの伸びを調整して、調整された共役パルスにより前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを打ち消すことを特徴とする請求項1記載のレーザー加工装置。 - 前記パルス伸長器は、基材に高屈折率層と低屈折率層が交互に積層された多層膜ミラーから構成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザー加工装置。
- 超短パルスレーザー発振器と、
前記超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスに対して所要の伸びを与えることにより共役パルスを生成するパルス伸張器と、
前記パルス伸張器により生成された共役パルスに対して位相変調を与えて複数本の共役パルスビームを発生させる空間光変調器と、
前記空間光変調器で発生させた複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズとを備え、
前記パルス伸張器は、前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とするレーザー加工装置。 - 超短パルスレーザー発振器と、
前記超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスを分光する回折格子と、
前記回折格子からの超短パルスムビームを平行光にする放物面ミラーと、
前記放物面ミラーからの分光された波長成分毎に、所要の位相変調を与えることにより共役パルスを生成する空間光変調器と、
前記空間光変調器により生成された共役パルスを分岐して複数本の共役パルスビームを発生させる回折ビームスプリッタと、
前記回折ビームスプリッタで発生させた複数本の共役パルスビームを集光して集光パルスビームアレイを出力する回折レンズとを備え、
前記空間光変調器は、前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とするレーザー加工装置。 - 超短パルスレーザー発振器から出射された超短パルスに対してパルス伸張器により所要の伸びを与えることにより共役パルスを生成するステップと、
前記パルス伸張器により生成された共役パルスを回折ビームスプリッタにより分岐して複数本の共役パルスビームを発生させるステップと、
前記回折ビームスプリッタで発生させた複数本の共役パルスビームを回折レンズにより集光して集光パルスビームアレイを出力するステップとを備え、
前記パルス伸張器は、前記回折レンズで生じる前記超短パルスの伸びを前記共役パルスにより打ち消すことを特徴とするレーザー加工方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014248683A JP2016107321A (ja) | 2014-12-09 | 2014-12-09 | レーザー加工方法及びレーザー加工装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014248683A JP2016107321A (ja) | 2014-12-09 | 2014-12-09 | レーザー加工方法及びレーザー加工装置 |
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Family
ID=56122736
Family Applications (1)
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JP2014248683A Pending JP2016107321A (ja) | 2014-12-09 | 2014-12-09 | レーザー加工方法及びレーザー加工装置 |
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JP (1) | JP2016107321A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106644852A (zh) * | 2016-10-17 | 2017-05-10 | 哈尔滨工业大学 | 基于超短脉冲激光辐照同时获取球形颗粒光学常数与粒径分布的测量方法 |
CN111032121A (zh) * | 2017-09-29 | 2020-04-17 | 泰尔茂株式会社 | 医疗设备 |
-
2014
- 2014-12-09 JP JP2014248683A patent/JP2016107321A/ja active Pending
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US11554212B2 (en) | 2017-09-29 | 2023-01-17 | Terumo Kabushiki Kaisha | Medical device |
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