JP2016102449A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】シンリダボアの軸心とクランク軸の軸心とをずらしている内燃機関において、ヘッドボルトとキャップボルトとの軸心がずれても、シリンダブロックのひずみ発生を防止しつつシリンダヘッド及びクランクキャップを強固に締結可能とする。【解決手段】ヘッドボルト3とキャップボルト12とを、シリンダブロック2に鋳込んだ鉄製のアンカー部材26にねじ込む。アンカー部材26はクランク軸線視において円形である。ボルト3,12をねじ込むとアンカー部材26が回転して、ボルト3,12はボルト穴21,22の内面に広い範囲にわたって圧接する。このため、シリンダブロック2の狭い部位に応力が集中することはなくて、シリンダブロック2のひずみを防止できる。このため、シリンダブロック2を厚肉化したり補強リブを設けたりする必要はなく、コスト抑制や軽量化に貢献できる。【選択図】図1
Description
本願発明は内燃機関に関するもので、特に、シリンダヘッドとシリンダブロックとクランクキャップとの固定構造(締結構造)に特徴を有するものである。
レシプロ式の内燃機関では、シリンダブロックの上面にシリンダヘッドがヘッドボルトで固定されている一方、シリンダブロックの下面部(軸受け凹所)には、クランク軸を回転自在に保持するクランクキャップがキャップボルトによって固定されている。この場合、膨張行程でのピストンの力をクランク軸に効率良く伝えたり、シリンダブロックの高さを低くする等のために、シンリダボアの軸心とクランク軸の軸心とを、クランク軸線視で少し左右方向にずらすことが行われている。
他方、シリンダヘッドをヘッドボルトでシリンダブロックに固定する場合、ボルトによる締結力を均等化するために、ヘッドボルトは、クランク軸線から見てシンリダボアの左右対称位置に配置している。
同様に、キャップボルトも、クランクキャップの締結力を全体にわたって均等化してクランク軸の偏磨耗を防止するためには、クランク軸線視で、キャップボルトをシンリダボアの左右対称位置に配置するのが好ましい。特に、アルミ製のシリンダブロックは変形しやすいため、シリンダヘッドやクランクキャップに均等な締結力がかかるように配慮する必要性が高い。
そして、特許文献1には、左右のヘッドボルトの間隔と左右キャップボルトの間隔とが異なる場合において、クランク軸を挟んで一方に位置したヘッドボルトとキャップボルトとを同心に配置し、クランク軸を挟んで他方に位置したヘッドボルトとキャップボルトとは左右にずらすことが記載されている。
特許文献1では、一対ずつのヘッドボルトとキャップボルトとのうち、片方のキャップボルトとヘッドボルトとは左右にずれているため、ヘッドボルトの引っ張り力とキャップボルトの引っ張りとによってシリンダブロックにひずみが発生し、これがシンリダボアの真円度に影響する等の問題があり、これを防止するためには、シリンダブロックの肉厚を厚くしたり補強リブを設けるといった補強手段を講じなければならず、すると、コストアップや重量増大(結果としての燃費悪化)といった新たな問題が生じてくる。
このような、ボルトの非対称配置によるひずみの問題は、シリンダブロックがアルミ製である場合に顕著に現れる。そこで、シリンダブロックの内部に鉄製のアンカー部材を鋳込んで、このアンカー部材にヘッドボルトとキャップボルトとを同心の姿勢でねじ込むことによって、ひずみの発生防止を図ることも行われている。
しかし、シンリダボアの軸心とクランク軸の軸心とをずらしつつ、ヘッドボルトとキャップボルトとを同心に配置すると、クランク軸の軸心から左右のキャップボルトまでの間隔が異なってしまうため、クランクキャップの締結力がクランク軸線方向から見て左右方向で不均一化し、このため、クランク軸に偏磨耗が発生しやすくなる。
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、アンカー部材を効果的に利用することにより、シリンダブロックへのひずみを抑制しつつ、クランクキャップの締結力の均等化を図ろうとするものである。
本願発明の内燃機関は、シリンダブロックの上面に、シリンダヘッドがヘッドボルトによって固定されている一方、シリンダブロックの下面部には、クランク軸を保持するクランクキャップがキャップボルトで固定されており、前記ヘッドボルトとキャップボルトとは、クランク軸線方向から見て左右に配置されており、かつ、クランク軸線方向から見て、ヘッドボルトとキャップボルトとが左右にずれている、という基本構成である。
そして、前記シリンダブロックの内部に、前記ヘッドボルトが上方からねじ込まれてキャップボルトが下方からねじ込まれる高強度のアンカー部材を配置しており、前記アンカー部材を、クランク軸線方向から見て、円形又は丸みを帯びた形状に形成している。
アンカー部材をクランク軸線方向から見て円形に形成する場合、球状でもよいが、クランク軸線と直交した方向から見ると四角形の円板状又はブロック状とするのが好ましい。丸みを帯びた形状とは、四角形のような多角形の角を丸めた形状が挙げられる。
クランク軸線を挟んだ左右側にヘッドボルトとキャップボルトの対が配置されているが、特許文献1のように、一方のヘッドボルトとキャップボルトとの対を同心にすることは可能であり、この場合は、左右にずれているヘッドボルトとキャップボルトとがねじ込まれるアンカー部材のみを、本願発明の構成にしたらよい。もとより、同心に配置されたヘッドボルトとキャップボルトとがねじ込まれるアンカー部材を本願発明の構成にすることを排除するものではない。
ヘッドボルトとキャップボルトとがクランク軸線方向視において左右にずれていると、ヘッドボルトによる上向きの引っ張りキャップボルトによる下向きの引っ張りとにより、アンカー部材には、クランク軸線と平行な軸心回りに回転させようとする偶力が作用する。従って、アンカー部材が角を有する角形であると、アンカー部材によってシリンダブロックに大きな加圧力が作用し、これにより、シリンダブロックにひずみが発生するおそれがある。
これに対して本願発明では、アンカー部材は円形又は丸みを帯びた形状であるため、ヘッドボルトとキャップボルトとの引っ張りにより、僅かながらシリンダブロックの内部で回転し得る。すると、ヘッドボルト及びキャップボルトにはリーマボルトが使用されていて、これらはボルト穴と殆どきっちり嵌まり合っているため、アンカー部材の回転により、ボルトがボルト穴の内面に圧接することになる。
つまり、ヘッドボルト及びキャップボルトの引っ張りが、ボルト穴への圧接に変換されるのであり、このため、ボルトのねじ込みによる引っ張り力は、シリンダブロックの広い範囲に分散して作用する。その結果、シリンダブロックの狭い部位に応力が集中することを防止して、ひずみの発生を防止できる。従って、シリンダブロックを厚肉化したり補強リブを形成したりする手段を講じなくても、シリンダヘッド及びクランクキャップを均等かつ強い力で締結できて、内燃機関の信頼性を向上できると共に、軽量化による燃費の向上にも貢献できる。
(1).第1実施形態
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1,2に示す第1実施形態を説明する。なお、以下の説明で方向を特定するために「左右」の文言を使用するが、これは、クランク軸線方向から見た左右を意味している。
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1,2に示す第1実施形態を説明する。なお、以下の説明で方向を特定するために「左右」の文言を使用するが、これは、クランク軸線方向から見た左右を意味している。
内燃機関の基本構造は従来と同様であり、複数のシンリダボア1を有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上面にヘッドボルト3の群で固定されたシリンダヘッド4とを備えている。シリンダブロック2及びシリンダヘッド4はアルミの鋳造品である。図1はボア間部の断面図であり、従って、シンリダボア1は点線で表示している。シンリダボア1にはピストン5が摺動自在に嵌まっており、ピストン5の往復動は、仮想線で示すコンロッド6により、クランク軸7の回転に変換される。
クランク軸7は、ボア間部2a及びボア群の外側に位置した複数のクランクジャーナル8を備えており、各クランクジャーナル8は、上半分はシリンダブロック2の下部凹所9に形成した軸受け部10に嵌まって、下半分はクランクキャップ11に嵌まっており、クランクキャップ11は、左右一対のキャップボルト12により、シリンダブロック2の下部凹所9に固定(締結)されている。軸受け部10とクランクキャップ11とにはメタル軸受け13が嵌まっており、メタル軸受け13とクランクジャーナル8との間の摺動面には、オイル供給路14から潤滑油が供給される。
クランク軸7は図示しないクランクアームを備えており、クランクアームの先端に設けたクランクピン15とピストンピン16とがコンロッド6で連結されている。クランクピン15の回転軌跡を符号17で示している。
ヘッドボルト3は、ボア間部2a及びボア群の外側に左右一対ずつ配置されており、左右のヘッドボルト3は、シンリダボアの軸心20を挟んだ対称位置に設けている。すなわち、左右のヘッドボルト3は、シンリダボア1の軸心20から等しい寸法L1だけ離れた箇所に対称に配置されている。ヘッドボルト3とキャップボルト12とはリーマボルトであり、ヘッドボルト3及びキャップボルト12とボルト穴21,22とのクリアランスはごく僅かである。
クランク軸7の軸心23はシンリダボア1の軸心20から若干の寸法eだけ左側にずれている(右側にずらしてもよい。)。また、左右のクランクキャップ11は、クランク軸7の軸心22から等しい距離L2だけ離れた対称位置に配置されている。本実施形態では、シンリダボア1の軸心20からヘッドボルト3の軸心24までの寸法L1と、クランク軸7の軸心23からキャップボルト12の軸心25までの寸法L2とを同じ寸法に設定しているが、L1とL2とを異ならせてもよい。
そして、ヘッドボルト3とキャップボルト12とは、シリンダブロック2の肉厚部内に配置した鉄製のアンカー部材26にねじ込まれている。従って、アンカー部材26には、ヘッドボルト3がねじ込まれる上向き開口の第1ねじ穴27と、キャップボルト12が下方からねじ込まれる第2ねじ穴28が形成されている。アンカー部材26は、クランク軸線視においては円形で、クランク軸線及びシンリダボア1の軸心20と直交した側面視では、四角形(長方形又は正方形)に形成されている。すなわち、アンカー部材26は円板状の形態である。
アンカー部材26は、シリンダブロック2に鋳込むこともできるし、シリンダブロック2に空けた穴に嵌め込むこともできる。鋳込みの場合は、ヘッドボルト3及びクランクキャップ11と同様のダミーのボルトによってアンカー部材24を鋳型に保持し、鋳造後にダミーのボルトを取り外したらよい。
アンカー部材24にねじ込まれたヘッドボルト3とキャップボルト12とは、その軸心24,25が寸法eだけ左右にずれている。また、ヘッドボルト3及びキャップボルト12の軸心24,25は、アンカー部材26の軸心29を挟んだ左右対称の位置に位置している。従って、両ボルト3,12の軸心24,25は、アンカー部材26の軸心29からe/2の寸法ずつ左右方向(紙面で右方向)にずれている(偏心している)。クランク軸線と直交した見た側面視では、ヘッドボルト3とキャップボルト12とは同心になっている。
このため、図2(A)に矢印Rで示すように、両ボルト3,12のねじ込み(引っ張り)によって、アンカー部材26にはこれを軸心回りに回転させようとする偶力が作用する。そして、アンカー部材26がシリンダブロック2の内部でごく僅かながら回転すると、ボルト3,12は、矢印Sに示すように、ボルト穴21,22の内面に圧接し、これにより、アンカー部材26の回転は阻止される。
すなわち、図2(B)に示すように、ボルト3,12のねじ込みによってアンカー部材26を下向きに引っ張る力(シリンダヘッド4及びクランクキャップ11をシリンダブロック2に押し付ける力)F1は、アンカー部材26を上下に分離させるような上下方向の力F2と、ボルト3,12をボルト穴21,22に圧接させる力F3とに分けられる。
そして、アンカー部材26が回転してもシリンダブロック2には応力は発生しない一方、ボルト穴21,22は上下に長くてシリンダブロック2の狭い部位に応力が集中することはないため、シリンダブロック2にリブの形成や厚肉化等の特段の補強手段を講じなくても、シリンダブロック2にひずみが発生することを防止又は著しく抑制した状態で、シリンダヘッド4及びクランクキャップ11をシリンダブロック2に強固に締結できるのである。
(2).他の実施形態・その他
第1実施形態はアンカー部材26を円形に形成した場合であったが、図3に別例として示すように、アンカー部材26は丸みを帯びた角形とすることもできる。このうち(A)では、アンカー部材26は、クランク軸視で4つの面が縦横に並ぶように配置しており、上下の平行な2つの面にねじ穴27,28を開口させている。4つの角は円弧状(曲面状)にカットされて、全体として丸みを帯びている。
第1実施形態はアンカー部材26を円形に形成した場合であったが、図3に別例として示すように、アンカー部材26は丸みを帯びた角形とすることもできる。このうち(A)では、アンカー部材26は、クランク軸視で4つの面が縦横に並ぶように配置しており、上下の平行な2つの面にねじ穴27,28を開口させている。4つの角は円弧状(曲面状)にカットされて、全体として丸みを帯びている。
他方、(B)に示す例では、コーナー部が上下左右を向く姿勢(対角方向が上下と左右を向く姿勢)で配置しており、ねじ穴27,28は上下のコーナー部に開口している。従って、左右の角部が現れるが、左右角部をカットして丸みを付けている。従って、この場合も、全体として丸みを帯びている。
これら図3の場合は、ボルト3,12のねじ込みにより、アンカー部材26は、シリンダブロック2を弾性変形させて僅かながら回転するが、角部をカットして丸みを帯びていることにより、シリンダブロック2に発生する応力は僅かであり、かつ、シリンダブロック2が大きく弾性変形する前にボルト3,12がボルト穴21,22に圧接するため、シリンダブロック2の弾性変形量はごく僅かであり、問題になるほどのひずみは生じないといえる。
アンカー部材26をシリンダブロック2よりも熱膨張率が小さい素材で製造すると、機関の運転による昇温によってシリンダブロック2とアンカー部材26との間にごく僅かながら隙間が発生するため、アンカー部材26はより回転しやすくなる。従って、シリンダブロック2にひずみが発生することを、より的確に防止できるといえる。
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、アンカー部材は、正六角形や正八角形等の多角形を基本にしつつ、角を丸めた形態とすることもできる。また、楕円形でも構わない。左右2本のキャップボルト12を、ヘッドボルト3よりもクランク軸の側にずらして配置してもよい。
本願発明は、実際に内燃機関に適用できる。従って、産業上利用できる。
1 シンリダボア
2 シリンダブロック
3 ヘッドボルト
4 シリンダヘッド
7 クランク軸
8 クランクジャーナル
9 シリンダブロックの軸受け凹所
10 シリンダブロックの軸受け部
11 クランクキャップ
12 キャップボルト
20 シンリダボアの軸心
21,22 ボルト穴
23 クランク軸の軸心
24,25 ボルトの軸心
26 アンカー部材
27 アンカー部材の軸心
2 シリンダブロック
3 ヘッドボルト
4 シリンダヘッド
7 クランク軸
8 クランクジャーナル
9 シリンダブロックの軸受け凹所
10 シリンダブロックの軸受け部
11 クランクキャップ
12 キャップボルト
20 シンリダボアの軸心
21,22 ボルト穴
23 クランク軸の軸心
24,25 ボルトの軸心
26 アンカー部材
27 アンカー部材の軸心
Claims (1)
- シリンダブロックの上面に、シリンダヘッドがヘッドボルトによって固定されている一方、シリンダブロックの下面部には、クランク軸を保持するクランクキャップがキャップボルトで固定されており、前記ヘッドボルトとキャップボルトとは、クランク軸線方向から見て左右に配置されており、かつ、クランク軸線方向から見て、ヘッドボルトとキャップボルトとが左右にずれている構成であって、
前記シリンダブロックの内部に、前記ヘッドボルトが上方からねじ込まれてキャップボルトが下方からねじ込まれる高強度のアンカー部材を配置しており、前記アンカー部材を、クランク軸線方向から見て、円形又は丸みを帯びた形状に形成している、
内燃機関。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014241204A JP2016102449A (ja) | 2014-11-28 | 2014-11-28 | 内燃機関 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014241204A JP2016102449A (ja) | 2014-11-28 | 2014-11-28 | 内燃機関 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016102449A true JP2016102449A (ja) | 2016-06-02 |
Family
ID=56088525
Family Applications (1)
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JP2014241204A Pending JP2016102449A (ja) | 2014-11-28 | 2014-11-28 | 内燃機関 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111465759A (zh) * | 2017-12-19 | 2020-07-28 | 马自达汽车株式会社 | 多缸发动机 |
CN111492134A (zh) * | 2017-12-19 | 2020-08-04 | 马自达汽车株式会社 | 发动机 |
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2014
- 2014-11-28 JP JP2014241204A patent/JP2016102449A/ja active Pending
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