JP2016102186A - 化合物、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

化合物、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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昌弘 末永
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薫 ▲高▼橋
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賀雄 木下
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賀雄 木下
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Abstract

【課題】高いマゼンタの発色性を有し、かつ、耐光性、及び耐湿性にも優れる、色材として有用な化合物を提供すること。【解決手段】 下記一般式(1)で表される化合物。【化1】(一般式(1)中、R2、R4、R7及びR9の少なくとも1つがカルボン酸基を含む特定のアシルアミノ基を表す。)【選択図】 なし

Description

本発明は、色材として有用な新規の化合物、前記化合物を含有するインクなどに関する。
マゼンタの色相を有し、発色性が良好である色材として、キサンテン骨格を有する化合物が知られている。キサンテン骨格を有する化合物は、可視領域に2つの高い吸収帯(x−band及びy−band)を有し、長波長側のx−bandとより短波長側のy−bandの補色が重なって、視認される色調を発現するため、発色性が良好となっている。キサンテン骨格を有する化合物の中でも、C.I.アシッドレッド289はマゼンタの色相を有し、かつ、非常に良好な発色性や透明性を有する色材として、広く知られている。
しかし、C.I.アシッドレッド289に代表される、従来のキサンテン骨格を有する化合物は、耐光性や耐湿性が劣るという課題がある。キサンテン骨格を有する化合物の耐光性を向上するために、その構造を改良することが行われている(特許文献1〜7参照)。
特開平09−241553号公報 特開昭51−087534号公報 国際公開第2013/031428号 国際公開第2013/031838号 特開2011−148973号公報 特開2008−094897号公報 特開2013−249339号公報
色材の発色性と、耐光性、及び耐湿性に対して要求されるレベルは年々高まってきているが、キサンテン骨格を有するマゼンタ色材では、依然として、上記の要求を満たすことはできていない。例えば、特許文献1、3及び6に記載された化合物は、C.I.アシッドレッド289と比較して青味であるなど、マゼンタとして良好な色相であるとは言えない。また、特許文献2に記載された化合物は、C.I.アシッドレッド289と比較してかなり青味であることから、マゼンタ色材としての使用には適さない。また、特許文献4及び7に記載された化合物は、C.I.アシッドレッド289の発色性に近くなっているが、耐光性は不十分である。また、特許文献5に記載された化合物は、耐湿性が不十分である。
したがって、本発明の目的は、高いマゼンタの発色性を有し、かつ、耐光性、及び耐湿性にも優れる、色材として有用な化合物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記化合物を用いたインク、このインクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかる化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
(一般式(1)中、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はイオン性基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性基、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基を表す。nは0乃至6の整数を表す。Zはそれぞれ独立に、スルホン酸基、又はスルファモイル基を表し、Zが存在する場合は一般式(1)における芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。)
(一般式(2)中、R11は、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
(一般式(3)中、R12は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
本発明によれば、C.I.アシッドレッド289と同様の高いマゼンタの発色性を有しながらも、その弱点とも言える耐光性、及び耐湿性を改善した、色材として有用な化合物を提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、前記色材を用いたインク、このインクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
例示化合物1のH NMR分析の結果を示すチャート。 例示化合物2のH NMR分析の結果を示すチャート。 例示化合物3のH NMR分析の結果を示すチャート。 例示化合物4のH NMR分析の結果を示すチャート。 例示化合物5のH NMR分析の結果を示すチャート。 例示化合物6のH NMR分析の結果を示すチャート。 各種の化合物のUV/Vis分光分析(水中、温度25℃)の結果を示すチャート。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、水やインクなどの水性の液体中では塩の少なくとも一部はイオンに解離して存在し得るが、便宜上、「塩」と表現する。また、アルキル基に付した「n」は直鎖を示す。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明者らは、検討の結果、C.I.アシッドレッド289と同様の高いマゼンタの発色性を有するとともに、耐光性、及び耐湿性にも優れる化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を見出した。一般式(1)で表される化合物は、キサンテン骨格にアミノ基を介して結合しているベンゼン環において、アミノ基の結合位置を基準として、オルト位(R、R、R、R10)にアルキル基、メタ位(R、R、R、R)の少なくともいずれかの位置に特定の置換基、がそれぞれ置換しているものである。この化合物は、カルボン酸基を含む基である一般式(2)で表される基がメタ位に置換しているため、耐湿性に優れるという特徴を有する。
(一般式(1)中、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はイオン性基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性基、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基を表す。nは0乃至6の整数を表す。Zはそれぞれ独立に、スルホン酸基、又はスルファモイル基を表し、Zが存在する場合は一般式(1)における芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。)
(一般式(2)中、R11は、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
(一般式(3)中、R12は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
一般式(1)中、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。R、R、R及びR10のアルキル基としては、炭素数1乃至6、好ましくは炭素数1乃至3の、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。R、R、R及びR10は、一般式(1)で表される化合物の発色性、耐光性、及び耐湿性が損なわれない範囲で置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1乃至3のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;などが挙げられる。R、R、R及びR10のアルキル基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの無置換アルキル基;2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、トリフルオロメチル基などの置換アルキル基;が挙げられる。より優れた耐光性、及び耐湿性が得られるため、アルキル基の炭素数は1乃至6であることが好ましい。さらに、合成の容易さの観点から、アルキル基の炭素数は1乃至3であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることが特に好ましい。
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はイオン性基を表す。R及びRのアルキル基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基は、一般式(1)で表される化合物の発色性、耐光性、及び耐湿性が損なわれない範囲で置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1乃至3のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6乃至12のアリール基;ベンジル基、p−トリル基、m−キシリル基、2−フェネチル基、ナフチルエチル基などの炭素数7乃至14のアラルキル基;ヒドロキシ基;カルバモイル基;スルファモイル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1乃至3のアルコキシ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのイオン性基;などが挙げられる。
及びRのアルキル基としては、炭素数1乃至6、好ましくは炭素数1乃至3の、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。R及びRのアルキル基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの無置換アルキル基;2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、4−カルボキシブチル基などの置換アルキル基;が挙げられる。より優れた耐湿性が得られるため、アルキル基の炭素数は1乃至6であることが好ましい。さらに、より優れた発色性、及び耐湿性が得られるため、アルキル基の炭素数は1乃至3であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることが特に好ましい。
及びRのアルコキシ基としては、炭素数1乃至6、好ましくは炭素数1乃至3の、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が挙げられる。R及びRのアルコキシ基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などの無置換アルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、3−カルボキシプロポキシ基などの置換アルコキシ基;などが挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、より優れた発色性が得られるため、1乃至6であることが好ましい。さらに、より優れた発色性が得られるとともに、水への溶解性も良好になるため、アルコキシ基の炭素数は1乃至3であることが特に好ましい。
及びRのアリールオキシ基としては、炭素数6乃至18、好ましくは炭素数6乃至12、特に好ましくは炭素数6乃至10のアリールオキシ基が挙げられる。R及びRのアリールオキシ基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、
フェノキシ基、2−ナフトキシ基、1−アントリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−アズレニルオキシ基などの無置換アリールオキシ基;p−メトキシフェノキシ基、o−メトキシフェノキシ基、o−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、2,3−キシリルオキシ基、3,5−キシリルオキシ基、4−カルボキシ−2−メチルフェノキシ基、4−スルホ−2−メチルフェノキシ基などの置換アリールオキシ基;などが挙げられる。アリールオキシ基の炭素数は、より優れた耐湿性が得られるため、6乃至18、特には6乃至12であることが好ましい。なかでも、より優れた発色性、耐湿性が得られることと、合成の容易さの観点から、フェノキシ基であることが好ましい。
及びRのイオン性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が挙げられる。R及びRのイオン性基は、これ以外に存在しうるイオン性基やスルファモイル基とともに、一般式(1)で表される化合物に水への溶解性を付与する。イオン性基は酸型、塩型のいずれであってもよい。
塩型のイオン性基の場合、塩を形成するカウンターイオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;無置換のアンモニウム;メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムなどの有機アンモニウム;が挙げられる。なお、R及びRのイオン性基だけでなく、一般式(1)で表される化合物が有し得る他のイオン性基についても、酸型、塩型のいずれであってもよい。例えば、塩型のイオン性基である場合のカウンターイオンとしては、上記のカウンターイオンと同様のものが挙げられる。
及びRとしては、より優れた発色性、及び耐湿性が得られるため、炭素数1乃至3のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることがさらに好ましい。また、合成の容易さの観点から、R及びRが置換基を有する場合は、各基がすべて同じ置換基を有することが好ましい。
一般式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性基、前記一般式(2)で表される基、又は前記一般式(3)で表される基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは前記一般式(2)で表される基を表す。一般式(1)で表される化合物中の一般式(2)で表される基の数は2以上4以下であることが好ましい。
本発明の一般式(1)で表される化合物は、C.I.アシッドレッド289と同様に、高いマゼンタの発色性を有しながらも、さらに高い耐光性、及び耐湿性を有する。このためには、R、R、R及びRの少なくとも1つが前記一般式(2)で表される基であることが重要である。
、R、R及びRのイオン性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が挙げられる。R、R、R及びRのイオン性基は、これ以外に存在しうるイオン性基やスルファモイル基とともに、一般式(1)で表される化合物に水への溶解性を付与する。イオン性基は酸型、塩型のいずれであってもよい。塩型のイオン性基の場合の塩を形成するカウンターイオンとしては、上記R及びRのイオン性基におけるものと同様のものを挙げることができる。
、R、R及びRの一般式(2)で表される基は、アミド基及びカルボン酸基がリンカーであるR11を介して連結された構造を有する基である。R11は、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。また、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。
11は、一般式(1)で表される化合物の発色性、耐光性、及び耐湿性が損なわれない範囲で置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1乃至3のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3乃至8のシクロアルキル基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、ジメチルシクロヘキシレン基、メチルシクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などの炭素数3乃至8のシクロアルキレン基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1乃至3のアルコキシ基;などが挙げられる。このような置換基のうち水素原子と結合しうる炭素原子は、当該置換基の炭素数と同等以下の炭素数を有する置換基(直鎖又は分岐のアルキル基など)をさらに有していてもよい。
11のアルキレン基としては、炭素数1乃至18、好ましくは炭素数1乃至10の、直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基などの直鎖アルキレン基;2−メチル−n−ペンチレン基、3−メチル−n−ペンチレン基、4−メチル−n−ペンチレン基、1,1−ジメチル−n−ブチレン基、1,2−ジメチル−n−ブチレン基、1,3−ジメチル−n−ブチレン基、2,2−ジメチル−n−ブチレン基、2,3−ジメチル−n−ブチレン基、3,3−ジメチル−n−ブチレン基、1−エチル−n−ブチレン基、2−エチル−n−ブチレン基、1,1,2−トリメチル−n−プロピレン基、1,2,2−トリメチル−n−プロピレン基、1−エチル−1−メチル−n−プロピレン基、1−エチル−2−メチル−n−プロピレン基、sec−デシレン基などの分岐アルキレン基;などが挙げられる。より優れた耐湿性が得られるとともに、水への溶解性も良好になるため、アルキレン基の炭素数は1乃至10であることが好ましい。これに加えて、より優れた発色性が得られるため、アルキレン基の炭素数は3乃至8であることがさらに好ましい。
11のアリーレン基としては、炭素数6乃至12、好ましくは炭素数6乃至10の、単環又は複環のアリーレン基が挙げられる。R11のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、アズレニレン基などが挙げられる。
11のアラルキレン基としては、上記で挙げたR11のアリーレン基及びアルキレン基を組み合わせた基が挙げられる。なかでも、フェニレン基及び炭素数1乃至6のアルキレン基が結合したアラルキレン基が好ましく、フェニレン基及びプロピレン基が結合したアラルキレン基が特に好ましい。
Mのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。また、Mの有機アンモニウムとしては、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムなどを挙げることができる。
11としては、より優れた耐湿性が得られるため、アルキレン基を構成する炭素原子にシクロアルカンが2価で結合した構造のアルキレン基であることが好ましい。すなわち、下記一般式(a)のように、シクロアルカンを円で表したときに、シクロアルカンを構成する炭素原子のひとつが、アルキレン基の炭素原子と共有されている構造のアルキレン基であることが好ましい。この場合、シクロアルカンは2価であるため、「シクロアルキレン基」となる。アルキレン基の炭素数(一般式(a)におけるx+y+1)は2乃至10、さらには3乃至8であることが好ましく、特には3、すなわちプロピレン基であることが好ましい。また、シクロアルキレン基の炭素数は3乃至8であることが好ましい。なかでも、より優れた耐湿性が得られるとともに、水への溶解性も良好になるため、シクロアルキレン基の炭素数は4乃至8であることが好ましい。これに加えて、より優れた発色性が得られるとともに、合成の容易さの観点から、シクロアルキレン基の炭素数は5乃至8であることが好ましい。具体的には、プロピレン基を構成する2位の炭素原子に、シクロヘキシレン基が2価で結合した構造のプロピレン基であることが特に好ましい。
(一般式(a)中、円はシクロアルキレン基を表す。x及びyはそれぞれ独立に、0以上の整数を表すとともに、x+yは1以上の整数を表す。)
また、R11としては、より優れた発色性、及び耐湿性が得られるため、置換基を有するアラルキレン基であることも好ましい。この場合、置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基;カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのイオン性基;などが挙げられる。なかでも、特に優れた発色性、及び耐湿性が得られるため、アラルキレン基が有する置換基が、イソプロピル基、エトキシ基、t−ブトキシ基、カルボン酸基(塩型であってもよい)などであることが好ましい。
本発明においては、より優れた耐光性が得られるため、R及びR、並びに、一般式(2)のR11が下記の組み合わせであることが好ましい。すなわち、R及びRは、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアルコキシ基、又は無置換のアリールオキシ基であることが好ましい。また、一般式(2)のR11が、炭素数3乃至8のアルキレン基、プロピレン基を構成する炭素原子に炭素数5乃至8のシクロアルカンが2価で結合した構造のプロピレン基、又は、フェニレン基及びプロピレン基が結合した無置換のアラルキレン基であることが好ましい。
、R、R及びRの一般式(3)で表される基は、R12(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基)が結合しているアシルアミノ基である。R12は、一般式(1)で表される化合物の発色性、耐光性、及び耐湿性が損なわれない範囲で置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1乃至3のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6乃至12のアリール基;ベンジル基、p−トリル基、キシリル基、2−フェネチル基、ナフチルエチル基などの炭素数7乃至14のアラルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などの炭素数2乃至4のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1乃至3のアルコキシ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基などの炭素数1乃至3のアルキルアミノ基;スルホメチル基、スルホエチル基、スルホn−プロピル基、スルホイソプロピル基などの炭素数1乃至3のスルホアルキル基;カルバモイル基;スルファモイル基;スルホニルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などのイオン性基;などが挙げられる。
12のアルキル基としては、炭素数1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。R12のアルキル基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、n−ヘプチル基、sec−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、sec−オクチル基、n−ノニル基、sec−ノニル基、n−デシル基、sec−デシル基、n−ウンデシル基、sec−ウンデシル基、n−ドデシル基、sec−ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、テトラデシル基、sec−テトラデシル基、ヘキサデシル基、sec−ヘキサデシル基、n−ステアリル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−オクチルドデシル基、2−ヘキサデシル基、オクタデシル基などの無置換アルキル基;2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、4−カルボキシブチル基などの置換アルキル基;が挙げられる。
12のシクロアルキル基としては、炭素数3乃至18、好ましくは炭素数5乃至12の、単環又は複環のシクロアルキル基が挙げられる。R12のシクロアルキル基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ボルニル基、イソボルニル基、1−ノルボルニル基、1−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、1−アダマンチル基、3−ノルアダマンチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基などの無置換シクロアルキル基;1−イソプロピルシクロヘキシル基、1−アダマンチルメチル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,6−ジイソプロピルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、3−tert−ブチルシクロヘキシル基などの置換シクロアルキル基;が挙げられる。
12のアリール基としては、炭素数6乃至12、好ましくは炭素数6乃至10の、単環又は複環のアリール基が挙げられる。R12のアリール基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、アズレニル基などの無置換アリール基;p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル基、m−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル基、o−カルボキシフェニル基などの置換アリール基;が挙げられる。
12のアラルキル基としては、炭素数7乃至14、好ましくは炭素数7乃至10のアラルキル基が挙げられる。R12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、p−トリル基、キシリル基、2−フェネチル基、ナフチルエチル基などが挙げられる。
12のアルケニル基としては、炭素数2乃至6、好ましくは炭素数2乃至4の、直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。R12のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などが挙げられる。
12のヘテロ環基としては、5員又は6員のヘテロ環基が好ましく、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。また、ヘテロ環には、脂肪族環、芳香族環、他のヘテロ環が縮合していてもよい。R12のヘテロ環基としては、例えば、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾピラゾリル基、トリアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、ベンゾピロリル基、インドリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、トリアジニル基などが挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の合成の容易さの観点から、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10の各組み合わせが、それぞれ同一の基であることが好ましい。
一般式(1)中、nは一般式(1)におけるZの置換数を表し、0乃至6の整数である。つまり、n=0のとき、一般式(1)で表される化合物はZとしてのスルホン酸基やスルファモイル基を有さないことになる。一般式(1)で表される化合物は、前記一般式(2)で表される基に含まれるカルボン酸基を有することで水への溶解性が付与されているため、n=0であってもよい。本発明においては、高いレベルの耐オゾン性を得るためにはnは1以上であることが好ましく、高いレベルの耐湿性を得るためにはnは3以下であることが好ましい。nは、一般式(1)のその他の置換基の置換位置や、スルホン化又はクロロスルホン化の反応条件によって決定される。なお、一般式(1)で表される化合物は、nの数が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。
一般式(1)中、Zはそれぞれ独立に、スルホン酸基、又はスルファモイル基を表し、Zが存在する場合は一般式(1)における芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。Zのスルホン酸基は、これ以外に存在しうるイオン性基やスルファモイル基とともに、一般式(1)で表される化合物に水への溶解性を付与する。スルホン酸基は酸型、塩型のいずれであってもよい。塩型のスルホン酸基の場合の塩を形成するカウンターイオンとしては、上記の各イオン性基におけるものと同様のものを挙げることができる。
Zのスルファモイル基は、一般式(1)で表される化合物の発色性、耐光性、及び耐湿性が損なわれない範囲で置換基を有してもよい。このような置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの炭素数1乃至4のアルキル基が挙げられる。Zのスルファモイル基としては、置換基を有するものも含めると、例えば、無置換のスルファモイル基(アミノスルホニル基);N−メチルアミノスルホニル基、N,N−ジメチルアミノスルホニル基、N−n−ブチルアミノスルホニル基などの炭素数1乃至4のアルキル基が置換したスルファモイル基;などが挙げられる。
水への溶解性をより高めることができるため、一般式(1)で表される化合物はイオン性基を有することが好ましい。この場合、一般式(1)におけるnが1乃至6の整数であり、かつ、Zがスルホン酸基であることが好ましい。このとき、スルホン酸基が塩型であり、スルホン酸基のカウンターイオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び、アンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
一般式(1)で表される化合物の主骨格(すなわち、一般式(1)の[ ]内の構造)におけるZの置換位置は、一般式(1)のその他の置換基の置換位置や、スルホン化又はクロロスルホン化の反応条件によって決定される。R、R、R、R、R及びRの全てが水素原子以外の置換基であり、R11又はR12の置換基が芳香族性の水素原子を有さない場合、キサンテン骨格の水素原子の位置にZが置換する。また、R、R、R、R、R及びRの少なくとも1つが芳香族性の水素原子を有する場合、その水素原子の位置にZが置換していてもよい。また、R11又はR12が芳香環を有し、かつ、芳香族性の水素原子を有する場合、Zは芳香環に置換していてもよい。本発明においては、合成の容易さの観点で、キサンテン骨格の水素原子の位置にZが置換していることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物には互変異性体が存在する。互変異性体としては、一般式(1)で表される化合物の他に、下記一般式(1a)及び(1b)などで表される化合物が考えられる。本発明においては、これらの化合物(互変異性体)や塩も一般式(1)で表される化合物に含まれるものとする。なお、一般式(1a)及び(1b)中のR〜R10は、上記一般式(1)中のR〜R10と同義である。
一般式(1)で表される化合物は、公知の方法に基づいて合成することができる。合成スキームの一例を以下に示す。合成スキーム中の化合物(B)、(C)、(D)及び(E)におけるR〜R10、Z、nは、一般式(1)におけるR〜R10、Z、nと同義である。なお、一般式(1)で表される化合物は、置換基の種類やその数、位置が異なる複数の異性体の混合物として合成され得るが、便宜上、本発明においては混合物である場合も含め、「化合物」と記載する。
上記に例示した合成スキームでは、1段目に示した第1の縮合工程、2段目に示した第2の縮合工程を経て、n=0である一般式(1)で表される化合物を合成する。これに加えて、化合物の水への溶解性をさらに高める場合には、3段目として、スルホン化又はスルファモイル化工程を追加してもよく、この場合は、n=1〜6である一般式(1)で表される化合物が得られる。
先ず、第1の縮合工程では、化合物(A)と化合物(B)とを、有機溶媒や縮合剤の存在下で加熱し、縮合させることにより、化合物(C)を得る。次に、第2の縮合工程では、化合物(D)と第1の縮合工程で得られた化合物(C)とを、加熱し、縮合させることにより、化合物(E)(n=0である一般式(1)で表される化合物)を得る。化合物の水への溶解度をさらに高める場合には、第2の縮合工程で得られた化合物(E)を、濃硫酸や発煙硫酸などのスルホン化剤を用いてスルホン化することができる。これにより、Zがスルホン酸基である化合物(F)(n=1〜6である一般式(1)で表される化合物)が得られる。また、第2の縮合工程で得られた化合物(E)を、クロロスルホン酸などを用いてクロロスルホン化した後、濃アンモニア水、アルキルアミン、アリールアミンなどのアミン化合物と反応させてスルファモイル化することにより、Zがスルファモイル基である化合物(F)(n=1〜6である一般式(1)で表される化合物)が得られる。
上記に例示した合成スキームの縮合反応において用いる有機溶媒について説明する。第1の縮合工程では、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどを単独又は混合して用いることが好ましい。第2の縮合工程では、例えば、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどを単独又は混合して用いることが好ましい。
第1の縮合工程における反応温度は60℃〜100℃であることが好ましく、70℃以上、また、90℃以下であることがさらに好ましい。第2の縮合工程における反応温度は120℃〜220℃であることが好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
一般式(1)中におけるR〜RとR〜R10が同一の基である化合物を合成する場合には、上記合成スキーム中の化合物(B)及び化合物(D)として同じ種類のものを用いることができる。したがって、この場合は、化合物(A)から一段階の縮合工程を行うことにより一般式(1)で表される化合物を得ることができる。その際における反応温度は120℃〜220℃であることが好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。縮合剤としては、例えば、酸化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどを用いることができる。
上記合成スキームによって得られる最終生成物である化合物は、通常の有機合成反応の後処理方法にしたがって処理した後、精製を行うことで、例えば、インクの色材(染料)などの所望の用途で利用することができる。なお、一般式(1)で表される化合物の同定には、H NMR分析、LC/MS分析、UV/Vis分光分析などを利用することができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物は、高いマゼンタの発色性を有し、耐光性、耐湿性に優れる。一般式(1)で表される化合物は、印刷、塗装、筆記具、インクジェットなどの各種のインクの色材として好適に用いることができる。また、各種のインクだけでなく、光記録やカラーフィルタなどに適用する色材としても、一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
<インク>
本発明のインクは、色材(染料)として上記で説明した本発明の一般式(1)で表される化合物を含有する、インクジェット用にも好適なインクである。インク中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下、さらには0.20質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。
以下、本発明のインクを構成するその他の成分について説明する。
(その他の色材)
本発明者らは、色材として、一般式(1)で表される化合物の他に、さらに、一般式(1)とは別の構造を有する化合物を含有するインクにより、一般式(1)で表される化合物の有する優れた発色性、耐湿性を損なうことなく、耐光性がさらに向上することを見出した。
一般式(1)で表される化合物に加えて用いることができる、一般式(1)とは別の構造を有する化合物(その他の色材)としては、顔料や染料などが挙げられ、染料を用いることがさらに好ましい。その他の色材としては、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーン、及びブラックなどに分類されるいずれの色相のものを用いてもよい。特に、マゼンタからレッドの領域の色相を有する染料を用いることが好ましく、アゾ骨格やアントラピリドン骨格を有する化合物などの染料を用いることがさらに好ましい。より具体的には、発色性のさらなる向上効果を得るという観点から、水中での最大吸収波長(λmax)が380〜590nm、中でも480〜570nm、特には500〜560nmの範囲に存在する化合物を用いることが好ましい。
アゾ骨格を有する化合物としては、例えば、C.I.アシッドレッド249(アゾ化合物1)や、特開平08−073791号公報、特開2002−371214号公報、特開2006−143989号公報などに記載されたものなどが挙げられる。具体的には、下記一般式(I)で表される化合物、下記一般式(II)で表される化合物などが挙げられる。また、アントラピリドン骨格を有する化合物としては、以下のものが挙げられる。例えば、国際公開第1998/011167号、国際公開第1998/011167号、国際公開第2004/104108号、国際公開第2009/060654号、国際公開第2009/093433号などに記載された単量体構造のものなどが挙げられる。また、国際公開第2003027185号、国際公開第2006/075706号、国際公開第2008/066062号、特開2010−006969号公報などに記載された2量体構造のものなどが挙げられる。具体的には、下記一般式(III)で表される化合物、下記一般式(IV)で表される化合物などが挙げられる。勿論、本発明は、下記の化合物に限られるものではない。
下記の各構造において、アルキルの炭素数は1乃至6、アリールの炭素数は6乃至10が好ましい。また、置換基を有し得る炭素原子を持つ基は、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、アルキルスルホニル基、アニリノ基などの置換基により置換されていてもよい。
(一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、又はアルキル基を表す。)
(一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、又はアルキル基を表す。)
(一般式(III)中、Rは、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。Rは、アニリノ基を表す。)
(一般式(IV)中、Rは、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表す。Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。Rは、アニリノ基を表す。Rは、連結基を表す。)
アゾ骨格を有する化合物としては、具体的には、遊離酸の形で下記の構造を有する、アゾ化合物1〜4などが挙げられる。また、アントラピリドン骨格を有する化合物としては、具体的には、遊離酸の形で下記の構造を有する、アントラピリドン化合物1〜9などが挙げられる。勿論、本発明は、下記の化合物に限られるものではない。
インクの色材として、一般式(1)とは別の構造を有する化合物を用いる場合、インク中の前記化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。さらには、0.30質量%以上5.00質量%以下であることがより好ましい。さらに、インクの色材として、一般式(1)で表される化合物に加えて、一般式(1)とは別の構造を有する化合物を用いる場合には、各化合物の含有量を以下のようにすることが好ましい。すなわち、より高いレベルのマゼンタの発色性を得るため、インク中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.35質量%以上であることが好ましい。なお、この場合のインク中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)の上限は、先に述べた場合と同様に、10.00質量%以下、さらには5.00質量%以下であることが好ましい。また、インク中の各化合物(色材)の合計含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。
本発明者らの検討の結果、一般式(1)で表される化合物及び一般式(1)とは別の構造を有する化合物を特定の質量比率でインクに含有させることで、高いレベルの発色性、及び耐湿性を維持しながら、耐光性をさらに向上できるという知見を得た。具体的には、インク全質量を基準とした、一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)が、一般式(1)とは別の構造を有する化合物の含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.10倍以上9.00倍以下であることが好ましい。また、前記質量比率は、0.10倍以上1.00倍以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。本発明のインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクであることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、1価又は多価のアルコール類、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。インクジェット用のインクとして用いる場合、水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲内であれば、記録ヘッドからの吐出安定性を十分に満足することができる。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例により限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<一般式(1)で表される化合物の同定>
下記で合成した一般式(1)で表される化合物は、下記の各分析手法により同定を行った。
〔1〕H NMR分析:H核磁気共鳴分光分析(ECA−400;日本電子製)。
〔2〕LC/MS分析:LC/TOF MS(LC/MSD TOF;Agilent Technologies製)。なお、イオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を利用した。
〔3〕UV/Vis分光分析:UV/Vis分光光度計(UV−3600形分光光度計;島津製作所製)。
<一般式(1)で表される化合物の合成>
(例示化合物1)
3−(4−カルボキシ−ブチリルアミノ)−2,4,6−トリメチルアニリン(7.3g)と、上記合成スキームにおける化合物(A)(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、温度130℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却した後、2mol/Lの塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄した後、乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物を水50mL中に懸濁させ、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、下記の構造式で表される例示化合物1を得た。
得られた例示化合物1が上記構造を有することを、〔1〕H NMR分析、〔2〕LC/TOF MS分析、及び、〔3〕UV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
〔1〕H NMR(400MHz、DMSO−d、温度80℃)の結果(図1参照):
δ[ppm]=9.20(s、2H)、7.99(d、1H)、7.51(t、1H)、7.45(t、1H)、7.09(d、1H)、6.96(s、2H)、6.74(s、1H)、6.71(s、1H)、6.61(bs、2H)、5.80(s、2H)、2.40−1.50(m、30H)
〔2〕LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間17.4分:純度=98.6面積%、m/z=859.30[(M−2Na+H)
〔3〕UV/Vis分光分析の結果(図7参照):
λmax=529nm、ε=80594M−1cm−1(水中、温度25℃)。
(例示化合物2)
上記例示化合物1の合成において得た乾燥物6gを、氷冷下で発煙硫酸30g中に添加した後、温度20〜25℃で4時間撹拌し、反応液を得た。得られた反応液を氷100g上に排出し、析出したスルホン化物をろ過により分取した後、冷水で洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を水50mL中に懸濁させ、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、下記の構造式で表される例示化合物2を得た。
得られた例示化合物2が上記構造を有することを、〔1〕H NMR分析、〔2〕LC/TOF MS分析、及び、〔3〕UV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
〔1〕H NMR(400MHz、DMSO−d、温度80℃)の結果(図2参照):
δ[ppm]=10.00−8.00(br、2H)、8.02(d、1H)、7.67(t、1H)、7.59(t、1H)、7.46(s、2H)、7.34−7.22(m、1H)、7.08(s、1H)、7.07(s、1H)、5.85(s、2H)、2.45−1.65(m、30H)
〔2〕LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間4.4分:純度=0.3面積%、m/z=509.10[n=2、(M−4Na+H)2−
保持時間8.0分:純度=99.4面積%、m/z=1019.21[n=2、(M−4Na+H)]、509.10[n=2、(M−4Na+H)2−
〔3〕UV/Vis分光分析の結果(図7参照):
λmax=532.5nm、ε=86966M−1cm−1(水中、温度25℃)。
(例示化合物3)
3−(3−ジメチル−4−カルボキシブチリルアミノ)−2,4,6−トリメチルアニリン(7.3g)と、上記合成スキームにおける化合物(A)(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、温度130℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却した後、2mol/Lの塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄した後、乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物を水50mL中に懸濁させ、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、下記の構造式で表される例示化合物3を得た。
得られた例示化合物3が上記構造を有することを、〔1〕H NMR分析、〔2〕LC/TOF MS分析、及び、〔3〕UV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
〔1〕H NMR(400MHz、DMSO−d、温度80℃)の結果(図3参照):
δ[ppm]=10.93(s、2H)、8.00(d、1H)、7.54(t、1H)、7.47(t、1H)、7.12(d、1H)、6.98(s、2H)、6.82(s、1H)、6.80(s、1H)、6.68(brs、2H)、5.87(brs、2H)、2.40(s、4H)、2.26(s、4H)、2.16(s、6H)、2.05(s、6H)、1.94(s、6H)、1.05(s、12H)
〔2〕LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間19.94分:純度=99.9面積%、m/z=915.36[(M−2Na+H)
〔3〕UV/Vis分光分析の結果(図7参照):
λmax=529.5nm、ε=88991M−1cm−1(水中、温度25℃)。
(例示化合物4)
上記例示化合物1の合成において得た乾燥物6gを、氷冷下で発煙硫酸30g中に添加した後、温度20〜25℃で4時間撹拌し、反応液を得た。得られた反応液を氷100g上に排出し、析出したスルホン化物をろ過により分取した後、冷水で洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を水50mL中に懸濁させ、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、下記の構造式で表される例示化合物4を得た。
得られた例示化合物4が上記構造を有することを、〔1〕H NMR分析、〔2〕LC/TOF MS分析、及び、〔3〕UV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
〔1〕H NMR(400MHz、DMSO−d、温度80℃)の結果(図4参照):
δ[ppm]=11.55−11.00(m、2H)、8.05(d、1H)、7.65(t、1H)、7.62−7.44(m、3H)、7.23(t、1H)、7.14−7.00(m、2H)、6.15−5.75(m、2H)、2.48−1.75(m、26H)、1.05(s、12H)
〔2〕LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間11.1分:純度=99.8面積%、m/z=1075.27[n=2、(M−4Na+H)−]、537.13[n=2、(M−4Na+H)2−
〔3〕UV/Vis分光分析の結果(図7参照):
λmax=533nm、ε=87480M−1cm−1(水中、温度25℃)。
(例示化合物5)
3−(3−シクロペンタメチレン−4−カルボキシ−ブチリルアミノ)−2,4,6−トリメチルアニリン(7.3g)と、上記合成スキームにおける化合物(A)(7.4g)とを、スルホラン(20mL)中、塩化亜鉛(4.1g)の存在下、温度130℃で3時間加熱して反応させた。この溶液を冷却した後、2mol/Lの塩酸50mL中に添加して、析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄した後、乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物を水50mL中に懸濁させ、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、下記の構造式で表される例示化合物5を得た。
得られた例示化合物5が上記構造を有することを、〔1〕H NMR分析、〔2〕LC/TOF MS分析、及び、〔3〕UV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
〔1〕H NMR(400MHz、DMSO−d、温度80℃)の結果(図5参照):
δ[ppm]=11.18(brs、2H)、8.02(d、2H)、7.56(t、1H)、7.49(t、1H)、7.13(d、1H)、7.00(s、1H)、6.87(s、1H)、6.85(s、1H)、6.74(brs、2H)、5.89(brs、2H)、2.49(s、4H)、2.36(s、4H)、2.20−1.80(m、18H)、1.45(s、16H)、1.39(s、4H)
〔2〕LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間23.1分:純度=99.9面積%、m/z=995.42[(M−2Na+H)−]
〔3〕UV/Vis分光分析の結果(図7参照):
λmax=530nm、ε=81812M−1cm−1(水中、温度25℃)。
(例示化合物6)
上記例示化合物5の合成において得た乾燥物6gを、氷冷下で発煙硫酸30g中に添加した後、温度20〜25℃で4時間撹拌し、反応液を得た。得られた反応液を氷100g上に排出し、析出したスルホン化物をろ過により分取した後、冷水で洗浄し、析出物を得た。得られた析出物を水50mL中に懸濁させ、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0として溶解させた後、アセトンで晶析して、下記の構造式で表される例示化合物6を得た。
得られた例示化合物6が上記構造を有することを、〔1〕H NMR分析、〔2〕LC/TOF MS分析、及び、〔3〕UV/Vis分光分析で確認した。分析結果を下記に示す。
〔1〕H NMR(400MHz、DMSO−d、温度80℃)の結果(図6参照):
δ[ppm]=12.00−10.00(m、2H)、9.52(br、1H)、8.05(d、2H)、7.70−7.40(m、4H)、7.30−7.15(m、1H)、7.05(s、2H)、5.91(brs、2H)、2.60−1.80(m、26H)、1.65−1.20(m、20H)
〔2〕LC/TOF MS分析(溶離液:0.1%酢酸水溶液−メタノール、ESI)の結果:
保持時間14.1分:純度=99.7面積%、m/z=1155.34[n=2、(M−4Na+H)]、577.16[n=2、(M−4Na+H)2−
〔3〕UV/Vis分光分析の結果(図7参照):
λmax=533nm、ε=90496M−1cm−1(水中、温度25℃)。
(その他の化合物)
上記の各化合物の合成方法に準じて、表1〜3に示す各化合物を合成した。これらの化合物の構造は、前記した例示化合物1〜6と同様にして確認した。なお、表1〜3には、先に合成した例示化合物1〜6の構造も合わせて示す。
表1〜3中、「Me」はメチル、「Et」はエチル、「n−Pr」はノルマルプロピル、「i−Pr」はイソプロピル、「t−Bu」はターシャリーブチル、を表す。「*」は置換基の結合部位を表す。
<インクの調製>
下記に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌して溶解させた後、ポアサイズが0.2μmであるフィルターを用いて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。なお、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。表4〜6には、一般式(1)で表される化合物の含有量C(%)、一般式(1)とは別の構造を有する化合物の含有量C(%)を示した。また、「一般式(1)で表される化合物の含有量C/一般式(1)とは別の構造を有する化合物の含有量C」の質量比率(倍)の値も示した。
・色材(表4〜6に示す種類):表4〜6に示す使用量(%)
・エチレングリコール:9.00%
・ジエチレングリコール:9.00%
・アセチノールE100:1.00%
・イオン交換水:合計が100.00%となる残量
なお、上述の構造を有する、アゾ化合物1〜4、及びアントラピリドン化合物1〜9はそれぞれナトリウム塩として用いた。また、比較化合物としては、遊離酸の形で下記の構造を有する化合物をナトリウム塩として用いた。
比較化合物1:C.I.アシッドレッド289
比較化合物2:C.I.アシッドレッド52
比較化合物3:特許文献1の色素I−12
比較化合物4:特許文献2の例3の染料
比較化合物5:特許文献3の例示化合物1
比較化合物6:特許文献4の例示化合物I−8
比較化合物7:特許文献5の色素化合物(8)
比較化合物8:特許文献6の色素化合物(7)
比較化合物9:特許文献7に記載の化合物(2A)
<評価>
上記で得られた例示化合物1〜6、及び、各インクを用いて、以下の評価を行った。画像の測色は、分光光度計(商品名「Spectorolino」、Gretag Macbeth製)を用い、光源:D50、視野:2°の条件で行った。なお、L、a及びbは、CIE(国際照明委員会)により規定されたL表示系におけるL、a及びbである。
(一般式(1)で表される化合物の特性)
一般式(1)で表される化合物の特性と、キサンテン骨格を有する従来の色材の特性とを比較するため、以下の評価を行った。具体的には、上記した同定方法のうち、〔3〕のUV/Vis分光分析と同様の条件(水中、温度25℃)で、C.I.アシッドレッド289及びC.I.アシッドレッド52について分析を行った。図7より明らかな通り、本発明の一般式(1)で表される化合物の代表例である、例示化合物1〜6はλmaxが530nm付近にあり、いずれも好ましいマゼンタの色相を有していた。さらに、λmaxにおける吸光度(Absorbance)も高く、発色性にも優れていた。一方、C.I.アシッドレッド289は、色相としては好ましいマゼンタに近いものの、λmaxにおける吸光度が低く、発色性は相対的に劣っていた。また、C.I.アシッドレッド52は、λmaxにおける吸光度はある程度高く、発色性は良いものの、色相は青味のマゼンタであり、あまり好ましい色相ではなかった。
(発色性)
上記で得られたインクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴あたり2.5pLのインク滴を8滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。このインクジェット記録装置を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境で、光沢紙(キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード] PT−201;キヤノン製)に、記録デューティを10%から100%まで10%刻みで変化させた10種類のベタ画像をそれぞれ記録して記録物を得た。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。
記録物における各記録デューティのベタ画像の部分について、a及びbを測定した。そして、記録デューティが50%であるベタ画像のa及びbの値から、彩度C={(a+(b1/2を算出した。また、10種類のベタ画像のうちaが75に最も近いベタ画像を特定し、そのベタ画像のa及びbの値から、下記式に基づいて色相角H゜を算出した。
≧0、b≧0(第一象現)においては、色相角H°=tan−1(b/a
≦0、b≧0(第二象現)においては、色相角H°=180+tan−1(b/a
≦0、b≦0(第三象現)においては、色相角H°=180+tan−1(b/a
≧0、b≦0(第四象現)においては、色相角H°=360+tan−1(b/a)。
得られたC及びH°の値から、以下に示す評価基準にしたがって発色性を評価した
A:H°が335以上345未満であり、かつ、Cが83以上であった
B:H°が335以上345未満であり、かつ、Cが80以上83未満であった
C:H°が0以上335未満又は345以上360未満であった、或いは、Cが80未満であった
本発明においては、評価結果がA及びBである場合を許容できるレベル、Cである場合を許容できないレベルとした。評価結果を表7に示す。
(耐光性:条件1及び2)
発色性の評価に用いた記録装置及び記録媒体と同様の条件で、記録デューティが100%であるベタ画像を記録して記録物を作製した。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。そして、記録物におけるベタ画像の部分について光学濃度を測定した(「試験前の光学濃度」とする)。その後、この記録物をキセノン試験装置(キセノンウェザーメーターSX−75;スガ試験機製)中に入れ、槽内温度23℃、相対湿度50%、照度50klxの条件で、240時間(条件1)、及び、360時間(条件2)、キセノン光をベタ画像に照射した。次いで、記録物のベタ画像の部分について光学濃度を測定した(「試験後の光学濃度」とする)。そして、光学濃度の残存率(%)=(試験後の光学濃度/試験前の光学濃度)×100を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐光性(条件1及び2)をそれぞれ評価した。
〔条件1の評価基準〕
A:光学濃度の残存率が85%以上であった
B:光学濃度の残存率が80%以上85%未満であった
C:光学濃度の残存率が80%未満であった
本発明においては、条件1における評価結果がA及びBである場合を許容できるレベル、Cである場合を許容できないレベルとした。評価結果を表7に示す。
〔条件2の評価基準〕
AA:光学濃度の残存率が90%以上であった
A:光学濃度の残存率が85%以上90%未満であった
B:光学濃度の残存率が75%以上85%未満であった
C:光学濃度の残存率が75%未満であった
条件2は、条件1と比較してより厳しい条件での画像の耐光性を評価するものであり、C、B、A、AAの順により優れた耐光性を有していることを意味する。評価結果を表7に示す。
(耐湿性)
記録媒体の種類を光沢紙(キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド GL−101;キヤノン製)に変更した以外は、上記と同様の記録装置及び条件で、以下のパターンの画像を記録して記録物を作製した。このパターンは、記録デューティが100%であるベタ画像と、それと同サイズの非記録部とが格子状に配置されたものである。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。そして、記録物におけるベタ画像の部分について、L、a及びbを測定した(L 、a 及びb とする)。その後、この記録物を温度30℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽中に168時間入れた。次いで、記録物のベタ画像の部分について、L、a及びbを測定した(L 、a 及びb とする)。そして、色変化(ΔE)={(L −L )(a −a +(b −b 1/2を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐湿性を評価した。
AA:ΔEが5未満であった
A:ΔEが5以上8未満であった
B:ΔEが8以上10未満であった
C:ΔEが10以上15未満であった
D:ΔEが15以上であった
本発明においては、評価結果がAA、A及びBである場合を許容できるレベル、C及びDである場合を許容できないレベルとした。評価結果を表7に示す。
(耐オゾン性)
発色性の評価に用いた記録装置及び記録媒体と同様の条件で、記録デューティが50%であるベタ画像を記録して記録物を作製した。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。そして、記録物におけるベタ画像の部分について光学濃度を測定した(「試験前の光学濃度」とする)。その後、この記録物をオゾン試験装置(OMS−H、スガ試験機製)中に入れ、槽内温度23℃、相対湿度50%、オゾンガス濃度10ppmの条件で24時間、ベタ画像をオゾンガスに曝露させた。次いで、記録物のベタ画像の部分について光学濃度を測定した(「試験後の光学濃度」とする)。そして、光学濃度の残存率(%)=(試験後の光学濃度/試験前の光学濃度)×100を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐オゾン性を評価した。
A:光学濃度の残存率が90%以上であった
B:光学濃度の残存率が80%以上90%未満であった
C:光学濃度の残存率が80%未満であった
本発明においては、評価結果がA及びBである場合を許容できるレベル、Cである場合を許容できないレベルとした。評価結果を表7に示す。
なお、実施例70及び71の発色性はいずれもAランクであったが、実施例70のほうが相対的に優れていた。
以上の通り、本発明の一般式(1)で表される化合物は、C.I.アシッドレッド289と同様の好ましいマゼンタの色相を有し、発色性にも優れる。さらに、一般式(1)で表される化合物は、C.I.アシッドレッド289の弱点が改善され、優れたレベルの耐湿性を有する。また、一般式(1)で表される化合物と、それとは異なる構造を有する色材を併用することで、耐光性のさらなる向上が図られる。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。

    (一般式(1)中、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はイオン性基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性基、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基を表す。nは0乃至6の整数を表す。Zはそれぞれ独立に、スルホン酸基、又はスルファモイル基を表し、Zが存在する場合は一般式(1)における芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。)

    (一般式(2)中、R11は、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)

    (一般式(3)中、R12は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
  2. 前記一般式(1)中のR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアルコキシ基、又は無置換のアリールオキシ基であり、かつ、前記一般式(2)のR11が、炭素数3乃至8のアルキレン基、プロピレン基を構成する炭素原子に炭素数5乃至8のシクロアルカンが2価で結合した構造のプロピレン基、又は、フェニレン基及びプロピレン基が結合した無置換のアラルキレン基である請求項1に記載の化合物。
  3. 前記一般式(1)中の前記一般式(2)で表される基の数が、2以上4以下である請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記一般式(1)中のnが1乃至6の整数であり、かつ、Zがスルホン酸基である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 前記一般式(1)中のR、R、R及びR10がそれぞれ独立に、炭素数1乃至3のアルキル基である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化合物。
  6. 前記一般式(1)中のR及びRがそれぞれ独立に、炭素数1乃至3のアルキル基である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物。
  7. 前記一般式(1)中のRとR、RとR、RとR、RとR、RとR10が、それぞれ同一の基である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 色材を含有するインクであって、
    前記色材が、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とするインク。

    (一般式(1)中、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はイオン性基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性基、下記一般式(2)で表される基、又は下記一般式(3)で表される基を表し、R、R、R及びRの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基を表す。nは0乃至6の整数を表す。Zはそれぞれ独立に、スルホン酸基、又はスルファモイル基を表し、Zが存在する場合は一般式(1)における芳香環の少なくとも1つの水素原子の位置に置換している。)

    (一般式(2)中、R11は、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)

    (一般式(3)中、R12は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又はヘテロ環基を表す。*は前記一般式(1)における芳香環との結合部位を表す。)
  9. 前記色材がさらに、前記一般式(1)とは別の構造を有する化合物を含む請求項8に記載のインク。
  10. インクジェット用である請求項8又は9に記載のインク。
  11. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  12. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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