JP2016098529A - 静的圧入締固め工法の施工方法および施工支援システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】削孔工程では、孔壁がロッド径よりも大きくなるように削孔し、その後の注入工程では、ロッド周囲と孔壁との間の隙間4に改良材が押し戻されるように、ロッド12を介して改良材を地盤内に注入する。1日分の注入を終えた後、ロッド内に洗浄器具14を押し込むとともに水圧で押し流してロッド内を洗浄し、続いて、経時的に固化する改良材とロッドとの縁切りが行われるように該ロッドを回転させる。ロッドの回転は、1日分の注入を終えてから数時間内に開始し、初回の始動後は、例えば数時間おきに数分間に亘ってロッドを回転させる。このようにロッドを回転させることで、注入済み改良材との縁が切れるので、ジャミングによるロッドの回収不能を防止できる。
【選択図】図5B
Description
しかしながら、滑走路直下の地盤に形成した空洞部(削孔部)をそのまま放置しておくと、翌日の昼間の現場解放時に地盤の強度不足を招き、航空機の往来による地盤沈下や舗装の破損などの不具合が発生する危険性がある。したがって、上記のようにロッドを一時的に回収する場合には、併せて、空洞部に改良材を充填して埋戻すといった余分な作業や余分や材料費が必要となる。さらに、空洞部に改良材を充填する作業に必要な時間を考慮すると、注入の実作業として使用できる時間がさらに短くなる。
また、アプローチ区間(90m)を超える長尺範囲を曲線ボーリングにより再削孔するには、多大な作業時間と施工コストが必要となり、3〜10日程度の日数が必要となる。
そして、このような空洞充填や翌日の再削孔を毎回行うと、施工費・工期ともに数倍になるため、空洞充填や再削孔を省くことができるような施工方法が強く望まれていた。
しかしながら、このような遅延材を使って改良材の固化を遅延させた場合、翌日の作業再開まで未固結の流動性材料が地盤内に存在することになって、翌日の昼間の現場解放時に地盤の強度不足を招き、航空機の往来による地盤沈下や舗装版の破損などの不具合が発生する危険性がある。したがって、翌日の利用を予定している滑走路直下の地盤では、そのような遅延材は使用することができない。
また、遅延材の添加による遅延時間は正確にコントロールすることができないため、計画どおりに改良材が固結しなかった場合、航空機の安全運航を害する危険性がある。特に、安全をみて遅延材を多めに添加した場合には、計画どおりに改良材が固結しない虞がある。
さらに、作業予定の変更や悪天候などの理由により、作業再開が数日に亘って遅れた場合には、注入済みの改良材がロッドを巻き込んだ状態で固結し、ジャミング現象によりロッドの回収が不能になるといった問題が生ずる。しかも、このようなジャミング現象によって抑留されたロッドを回収するためには、大掛かりな工事が必要となる。さらに、このような状態からロッドを回収できたとしても、ロッド内で固結した改良材を除去するために、手間と時間をかけてロッド内を洗浄する必要があった。
また、翌日以降に注入作業を再開するにあたって再削孔する必要がないため、施工費を大幅に縮減でき、また、工期を大幅に短縮することが可能になる。
また、本発明の施工方法は遅延材が不要であるため、遅延材を添加することによる材料費の増加を防ぐことができる。また、遅延材過多による未固化の心配がないため、翌日以降の注入再開までの間、地盤強度を維持することができる。また、注入した改良材は数時間で固化するため、地盤の強度低下は発生しない。したがって、例えば主要空港の滑走路直下の地盤に対して施工し、翌日の運航時間帯に現場を解放しても、航空機の安全運航に支障を来すことはない。
さらに、注入の過程でロッド周囲に流れ込んだ改良材は、ロッドから縁切りされた状態で固結して、該ロッドを取り囲む防護体を形成する。この自立性のある防護体は、トンネル状の隔壁の如く機能するので、その周囲にある砂の締固めによるジャミングを防止することができる。また、ロッド周囲の改良材が固化してなる防護体は、孔壁を保持することができるので、仮に、作業予定の変更や悪天候などの理由により数日間に亘ってロッドが放置された場合でも、孔壁の崩落によるジャミングを確実に防止できる。
このような効果を達成できる本発明は、昼夜連続の施工ができず、注入長が長くて、数日に亘っての注入が必要となる現場で施工する場合に、特に有効である。
静的圧入締固め工法で用いる改良材は、数時間かけて固化が進行するので、1日分の注入を完了してから、ある程度の時間を空けてロッドの回転を始動させても、固化し始めた改良材との縁を切ることは可能である。
ただし、長時間に亘ってロッドを放置しておくと、改良材の固結が過度に進行し、ロッドの回転が不能になるか、或いは、強引に回転させることでロッドが捩じ切れる虞がある。したがって、前記「所定時間」は、ロッドを回転させることができ、かつ、ロッドを捩じ切らない程度の時間内であることが好ましい。具体的には、1日分の注入を終えてから3時間以内に、回転を始動することが好ましい。
また、時間を空けてロッドの回転を開始することで、無駄な回転を省くことができ、施工の省力化を図ることができる。
なお、このような防護体は、必ずしも、ロッドの貫入部分の全長に亘って形成される必要はないが、好ましくは、ロッドの先端側寄りの周囲に形成されることが好ましい。
次に、図4に基づいて、静的圧入締固め工法で用いるロッドの構成について説明する。
図4は、曲線ボーリング(自在ボーリング)を併用した静的圧入締固め工法で用いるロッド先端側および削孔装置を示す概略断面図である。
なお、図示するロッド12やその先端に取り付ける削孔装置20は一例であって、本発明で利用可能なロッドや削孔装置はこれに限定されない。
次に本発明の具体的実施形態について説明する。
図5A、B、Cは、曲線ボーリング(自在ボーリング)を併用した静的圧入締固め工法の施工方法の概要を示す図である。
図6は、図5Aの工程1に示す曲線ボーリングの原理を示す図である。
なお、以下説明する工程1〜8は、それぞれ、図5に示す工程1〜8に対応している。
曲線ボーリングとは、削孔方向を自在に変化させることができる削孔方法である。
この削孔工程では、削孔装置を先端に備えたロッド12を削孔注入兼用機31にセットして地盤に貫入させ、ロッドを継ぎ足しながら、ロッド先端の削孔装置20を計画線形に沿って推進させる。削孔注入兼用機31は、削孔時にはボーリングマシンとして機能し、改良材注入時にはロッド12をステップアップさせるためのリフト装置として機能する。
直線削孔を行うときには、図6(a)に示すようにロッド12を連続回転させて、削孔装置20の傾斜した先端面を特定の回転角に固定させないようにする。
一方、曲線削孔または方向修正を行うときには、図6(b)に示すように、ロッド12を回転させることなく押し込む。これにより、傾斜した先端面が、同一方向の土圧を継続的に受けて推進方向が変化するので、この押し込み操作をそのまま継続することによって、曲線削孔がなされる。
ロッド先端の削孔装置20が目標位置に達して削孔が完了したら、ロッド12を介してアウターピース23内に流体(例えば水)を圧送して、その流体圧力によって、図4(b)に示すように、インナーピース24を前方へ押し出して撤去する。
通常の静的圧入締固め工法と同様に、ロッド12を介した改良材の注入と、ロッド12のステップアップ(ロッドを手前方向に引抜く動作)を繰り返し、削孔部の奥から手前に向かって固結体2を連続的に造成する。図5に例示する実施形態の場合には、複数の固結体2が水平方向に並んで形成されるように、改良材を注入する。
上述した改良材の注入とロッド12のステップアップを繰り返すと、図5Aの工程4に示すように、連なった状態の複数の固結体2が形成される。また、図5Bの工程4に示すように、ロッド先端から吐出された改良材が、ロッド周囲と孔壁との間の隙間4に押し戻され、その結果、該隙間4内で薄層状に拡がった改良材がロッド周囲の先端寄りを被覆した状態が形成される。
そして、1日分の改良材を注入したら、ロッド12を地盤に貫入させた状態のまま、その日の注入作業を終える。1日分の注入が完了した時点でロッド先端側は、図5Bの工程4に示すように、固まり切る前の固結体2に突き刺さった状態にあり、また、ロッド先端寄りの周囲は、隙間4に押し戻された改良材によって覆われている。
このような状態でロッド12を翌日までそのまま放置すると、固結した改良材によってロッドにジャミングが発生し、また、周囲の砂による締め付け作用も加わって、翌日以降のロッドのステップアップやロッドの回収が不能になる虞がある。
しかし本発明では、後述する工程6でロッド12を回転させて縁切りを行うので、ロッド12にジャミングが発生することはない。
1日分の改良材の注入を終えたら、次の注入予定位置まで、ロッド12をステップアップさせる(1ステップ分ロッドを引き抜く)。続いて、地盤に貫入させた状態のロッド内を洗浄する。ロッド内の洗浄は、例えば図5Bの工程5に示すように、ロッド内に洗浄器具14(押出部材)を押し込んで、流体(例えば水)で押し出すことより行われる。洗浄器具14は、ロッド12内で流体圧力を受けて押し流されるので、ロッド内の前方で滞留している改良材を押し出して、ロッドから排出することができる。このような洗浄器具は、例えば、金属ブロック、ゴム、スポンジなどの何れか1種または2種以上の組み合わせから構成することができる。
地盤内に注入された改良材は、時間の経過とともに固化が進行するため、ロッド12をそのまま放置していると、その周囲で固結した改良材によってジャミングが発生し、翌日以降の注入作業やロッド12の回収が不能となる。そこで、本発明では、1日分の改良材の注入を終えた後、ロッド12を地盤内で回転させて、注入済み改良材とロッドとの縁切りを行う。
なお、本実施形態で使用する改良材には遅延材は添加されていない。したがって、翌日の運航時間帯には改良材が固結しているので、地盤の強度低下を招くことはなく、翌日に現場を解放しても航空機の安全運航を妨げることはない。
翌日の作業時間が到来したら、固結した改良材との縁が切れた状態のロッド12を使って、改良材の注入を再開する。この注入工程では、前日の工程3と同様に、改良材の注入とロッド12のステップアップを繰り返し、その日に割り当てられた分の改良材を注入する。このとき、防護体6は薄層状に形成されているので、改良材の注入により容易に崩すことができ、その後の注入工程に支障を与えることはない。
上記の工程3〜工程7を、日を変えて繰り返し、数日に分けて改良材を地盤に注入することで、1本の地盤改良体1が水平方向に造成される。そして、最後に、アプローチ区間の空洞部に改良材を充填しながらロッド12を回収する。以上をもって、数日に亘る地盤改良体1の造成作業が終了する。
次に、図7に基づいて、上述した静的圧入締固め工法の施工方法を実施するにあたって利用可能な施工支援システムについて説明する。
図7は、静的圧入締固め工法の支援システムの概略構成を示す図である。
改良材注入用のロッド12を回転させる回転駆動装置51と、
ロッド12の回転トルク(回転油圧)を計測する計測装置53と、
回転トルクの基準値等を記録するメモリ55と、
計測装置53での計測結果に基づいて回転駆動装置51を制御する制御装置57と、
ロッド12の回転時間や回転駆動の周期などを入力するための入力装置59と、
を含んで構成されている。
ロッド12の回転開始後は、制御装置57が「回転油圧の計測値が基準値を下回った」と判断するまで、回転駆動装置51によるロッド12の回転が継続する。
そして、制御装置57が「回転油圧の計測値が基準値を下回った」と判断した場合には、制御装置57は、回転駆動装置51によるロッド12の回転を停止させる。
以上、本発明の代表的実施形態について説明したが、上述した実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載の本発明はこれに限定されない。
滑走路幅(=改良長):60m
アプローチ長:90m
総削孔長:150m
実施例1の実験条件は次のとおりであった。
初回始動までの放置時間:15分
初回始動後のロッド回転条件:常時回転
実施例2の実験条件は次のとおりであった。
初回始動までの放置時間:15分
初回始動後のロッド回転条件:15分おきに数分間の回転
実施例3の実験条件は次のとおりであった。
初回始動までの放置時間:1時間
初回始動後のロッド回転条件:1時間おきに数分間の回転
実施例4の実験条件は次のとおりであった。
初回始動までの放置時間:2時間
初回始動後のロッド回転条件:1時間おきに数分間の回転
実施例5の実験条件は次のとおりであった。
初回始動までの放置時間:3時間
初回始動後のロッド回転条件:1時間おきに数分間の回転
以上述べたとおり、ロッドを常時回転させた場合は勿論のこと(実施例1)、ロッドを断続的に回転させた場合でも(実施例2〜5)、固化する改良材とロッドとの縁を切ることができ、また、ジャミングを防止できることが確認できた。したがって、この実験結果から、縁切りのための回転は必ずしも連続的な常時回転で行う必要はなく、断続的に行って作業を省力化できることが分かった。
2 固結体
4 隙間
5 施工支援システム
6 防護体
12 ロッド(注入管)
14 洗浄器具(押出部材)
20 削孔装置
23 アウターピース
24 インナーピース
26 削孔ビット
27 受圧面
28 受圧面
31 削孔注入兼用機
51 回転駆動装置
53 計測装置(計測手段)
55 メモリ
57 制御装置(制御手段)
59 入力装置(データ入力手段)
81 リフト装置
83 流量圧力監視装置
85 圧送ホース
87 特殊注入ポンプ
89 特殊注入プラント
Claims (8)
- 経時的に固化する改良材を注入して地盤改良体を造成する静的圧入締固め工法の施工方法であって、前記地盤改良体を造成するために数日に亘って注入が必要となる場合において、1日分の注入を終えた後、改良材注入用のロッドを回収することなく地盤内で回転させる、ことを特徴とする静的圧入締固め工法の施工方法。
- 1日分の注入を終えてから所定時間内に、前記ロッドの回転を開始することを特徴とする請求項1に記載の静的圧入締固め工法の施工方法。
- 前記ロッドを断続的に回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載の静的圧入締固め工法の施工方法。
- 前記ロッドの回転トルクが所定値以下または所定値未満に低下するまで、前記ロッドの回転を継続することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の静的圧入締固め工法の施工方法。
- 前記ロッド内を洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の静的圧入締固め工法の施工方法。
- 経時的に固化する改良材を注入して地盤改良体を造成する静的圧入締固め工法の施工方法であって、
ロッドの少なくとも一部が改良材によって被覆されるように、前記ロッドを介して改良材を地盤内に注入する工程と、
経時的に固化する前記改良材と前記ロッドとの縁切りが行われるように、前記ロッドを回転させる工程と、を含むことを特徴とする静的圧入締固め工法の施工方法。 - 経時的に固化する改良材を注入して地盤改良体を造成する静的圧入締固め工法の施工方法であって、
孔壁がロッド径よりも大きくなるように削孔する工程と、
ロッド周囲と孔壁との間の隙間に改良材が入り込むように、前記ロッドを介して改良材を地盤内に注入する工程と、
経時的に固化する前記改良材と前記ロッドとの縁切りが行われるように、前記ロッドを回転させる工程と、を含むことを特徴とする静的圧入締固め工法の施工方法。 - 請求項1乃至7の何れかに記載の施工方法に用いる施工支援システムであって、
改良材注入用のロッドを回転させる回転駆動装置と、
前記ロッドの回転トルクを監視するトルク監視手段と、
前記ロッドの回転トルクが所定値以下または所定値未満に低下した場合に、前記ロッドの回転を停止させる制御手段と、を具備することを特徴とする静的圧入締固め工法の施工支援システム。
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