JP2016095421A - 位相差フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】、均一性の高い位相差層を有し、光学性能に優れた位相差フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材の一面側に、配向層2と、位相差層3とがこの順に配置された位相差フィルムであって、配向層がポリビニルシンナメートを含有する配向層形成用組成物又はその硬化物からなり、位相差層が、液晶化合物と、界面活性剤と、溶剤とを含有する、位相差層形成用組成物の硬化物からなり、界面活性剤が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンである、位相差フィルム10。

【選択図】図1

Description

本発明は、位相差フィルムに関するものである。
従来より液晶表示装置においては、視角依存性の問題を改善するために、様々な技術が開発されており、その1つとして、複屈折性を示す位相差層を有する位相差フィルムが液晶セルと偏光板との間に配置された液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献1〜2)。
上記位相差層を有する位相差フィルムとしては、樹脂基材上に、液晶化合物を一定方向に配列させる配向規制力を有する配向層と、当該配向層上に形成され、一定方向に配列された液晶化合物を含有する位相差層とを有するものが用いられている。
また、フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めている。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図3はパッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の一例を示す概略図である。図3に示すように、この方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の画素に分類し、ディスプレイ表示領域に右目用の画素と左目用の画素が隣接し合うようなパターン状に配列する。一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の配列パターンに対応した、パターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルム(以下、単にパターン位相差フィルムということがある。)とを用い、右目用の映像と、左目用の映像とをそれぞれ円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用レンズと左目用レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示が可能となる。
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
上記パターン位相差フィルムとして、例えば、特許文献3には、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向層と、当該光配向層上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向層のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層(液晶層)とを有するパターン位相差板が開示されている。
位相差フィルムやパターン位相差フィルムは、いずれも液晶化合物が配向層によって一定方向に配列され、フィルム全体で、或いはフィルム中の各パターン内で、光軸が一定であることが求められる。そのため、膜厚が一定で均一な位相差層(液晶層)を形成することが検討されている。
例えば、特許文献4には、大型の液晶表示装置においてもムラを生じることなく、表示品位の高い画像を表示する光学フィルムを提供する手法として、液晶化合物から形成され、特定のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する、光学異方性層を有する光学フィルムが開示されている。
また、特許文献5には、基板に塗布した場合に膜厚むらがなく、空気界面のチルト角を十分に減じることができ、かつ、積層膜の形成が容易な重合性液晶組成物として、パーフルオロアルケニルオリゴマーから誘導した化合物からなる界面活性剤を含有する重合性液晶組成物が開示されている。
特開平3−67219号公報 特開平4−322223号公報 特開2005−49865号公報 特開2004−198511号公報 特開2009−242564号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、均一性の高い位相差層を有し、光学性能に優れた位相差フィルムを提供することを目的とする。
本発明に係る位相差フィルムは、透明基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に配置された位相差フィルムであって、前記配向層がポリビニルシンナメートを含有する配向層形成用組成物又はその硬化物からなり、前記位相差層が、液晶化合物と、界面活性剤と、溶剤とを含有する位相差層形成用組成物の硬化物からなり、
前記界面活性剤が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする。
(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、下記一般式(II)で表されるポリエーテルであり、nは20以上の数を表す。複数あるR及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。但し、一般式(I)中、複数あるR及びRのうち少なくとも一つは、一般式(II)で表されるポリエーテルである。)
(一般式(II)中、Rはアルキレン基であり、mは2以上の数を表す。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
本発明によれば、均一性の高い位相差層を有し、光学性能に優れた位相差フィルムを提供することができる。
図1は、本発明に係る位相差フィルムの一例を示す模式断面図である。 図2は、本発明に係る位相差フィルムの別の一例を示す模式断面図である。 図3は、パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明に係る位相差フィルムの評価方法について順に説明する。
なお、本発明において、光軸とは、遅相軸を意味する。
本発明において、配向規制力とは、位相差層中の液晶化合物を特定方向に配列させる相互作用を意味する。
本発明において、位相差フィルムとは、特に断りがない限りパターン位相差フィルムをも含むものである。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本発明において硬化物とは、化学反応を経て又は経ないで固化したもののことをいう。
[位相差フィルム]
本発明に係る位相差フィルムは、透明基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に配置された位相差フィルムであって、前記配向層がポリビニルシンナメートを含有する配向層形成用組成物又はその硬化物からなり、前記位相差層が、液晶化合物と、界面活性剤と、溶剤とを含有する位相差層形成用組成物の硬化物からなり、
前記界面活性剤が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンである、ことを特徴とする。
(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、下記一般式(II)で表されるポリエーテルであり、nは20以上の数を表す。複数あるR及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。但し、一般式(I)中、複数あるR及びRのうち少なくとも一つは、一般式(II)で表されるポリエーテルである。)
(一般式(II)中、Rはアルキレン基であり、mは2以上の数を表す。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
本発明に係る位相差フィルムを、図を参照して説明する。図1及び図2は、本発明に係る位相差フィルムの一例を示す模式断面図である。
本発明の位相差フィルム10は、図1に例示されるように、透明基材1の少なくとも一面側に、配向層2と、位相差層3とがこの順に配置されている。本発明の位相差フィルム10は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の層を積層してもよく、図示はしないが、例えば、位相差層3上に、接着層を介し、或いは、接着層を介さずに偏光子が配置された偏光子付き位相差フィルムであってもよい。
また、本発明の位相差フィルムは、図2に例示されるように、透明基材1の一面側に配向層2として、第一配向領域4Aと、第一配向領域4Aとは異なる配向性を有する第二配向領域4Bを有するパターン配向層4を有し、位相差層3として、第一位相差領域5Aと第一位相差領域とは異なる方向に液晶化合物が配列された第二位相差領域5Bを有するパターン位相差層5を有するパターン位相差フィルム20であってもよい。
本発明の位相差フィルムは、上記特定の配向層上に配置される位相差層が、液晶化合物と、界面活性剤として一般式(I)で表されるポリエーテル変性シリコーンとを含有する位相差層形成用組成物の硬化物からなることにより、均一性の高い位相差層を有し、光学性能に優れた位相差フィルムとなる。
位相差層形成用組成物に界面活性剤を添加することにより、均一な位相差層を形成しようとする試みがなされてきた。しかしながら、ポリビニルシンナメートを含有する配向層上に位相差層形成用組成物を塗工した場合、界面活性剤を含有する位相差層形成用組成物であっても当該位相差層形成用組成物のハジキが生じる場合があった。
本発明者らは鋭意検討の結果、位相差層形成用組成物に用いられる界面活性剤として、上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンを選択して用いることにより、ポリビニルシンナメートを含有する配向層上に塗工した場合であっても、位相差層形成用組成物のハジキが抑制されて均一な位相差層が形成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンは、一般式(I)で表される繰り返し単位を少なくとも20個有する比較的長いシロキサン構造を主骨格として有すると共に、側鎖に一般式(II)で表されるポリエーテルを有している。作用については未解明な部分もあるが、このような特定のポリエーテル変性シリコーンを用いることにより、位相差層形成用組成物の表面張力を低減し、ポリビニルシンナメートとの親和性も高めながら、表面平滑性が向上するものと推定される。
このようなことから、本発明の位相差フィルムは、製造時における位相差層のハジキが抑制され、当該位相差層の表面平滑性が向上して、ムラが無く均一性の高い位相差層を得ることができ、光学性能に優れた位相差フィルムとなる。
本発明の位相差フィルムは、少なくとも透明基材と、配向層と、位相差層とを有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の層を有していてもよいものである。以下、このような本発明の位相差フィルムの構成について説明する。
<透明基材>
透明基材は、配向層や位相差層を支える機能を有するものである。透明基材としては、位相差フィルムに用いられる公知の透明基材を適宜選択して用いればよい。前記透明基材としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を用いて形成されたものを挙げることができる。
前記透明基材としては、中でもロール状に巻き取ることができる程度の長さを有する長尺状透明基材であることが、ロールトゥロール方式の装置に設置可能で、量産性に優れる点から好ましい。前記長尺状透明基材の長さは、具体的には、10m以上とすることが好ましく、中でも、50〜6000mの範囲内とすることがより好ましく、更に500〜6000mとすることがより好ましい。
上記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
前記透明基材としては、中でも、レターデーションが低いものであることが、好ましい。より具体的には、透明基材の面内レターデーション値(Re値)が、0nm〜10nmの範囲内であることが好ましく、0nm〜5nmの範囲内であることがより好ましく、0nm〜3nmの範囲内であることがさらに好ましい。面内レターデーションをゼロに近付けやすいことから、透明基材としては、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、アクリル系樹脂を用いて形成されたものが好ましい。
透明基材の厚みは、位相差フィルムの用途等に応じて、当該位相差フィルムに必要な自己支持性を付与できる範囲内で適宜設定すればよいが、25μm〜125μmの範囲内が好ましく、中でも、30μm〜100μmの範囲内がより好ましく、40μm〜80μmの範囲内であることが更により好ましい。上記下限値以上であれば、位相差フィルムの自己支持性に優れている。また上記上限値以下であれば、裁断等の加工が容易である。
<配向層>
配向層は、後述する位相差層に含まれる液晶化合物を一定方向に配列させるための層である。
本発明においては、ポリビニルシンナメートを含有する配向層形成用組成物、又はその硬化物からなる配向層を用いることにより、後述する位相差層中の液晶化合物に対する配向規制力に優れると共に、後述する位相差層に用いられる特定の界面活性剤との組み合わせにより、均一性に優れた位相差層とすることができ、優れた光学性能を有する位相差フィルムを得ることができる。
本発明において配向層は、偏光を照射することにより配向規制力を発現するポリビニルシンナメートを含有するため、光配向法により配向規制力を付与することが好ましい。
本発明において配向層形成用組成物は、ポリビニルシンナメートを含有すればよく、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を有していてもよい。
ポリビニルシンナメートは、光照射により光二量化反応を起こす化合物であり、偏光を照射することにより配向規制力を発現する。
ポリビニルシンナメートは、液晶化合物の配向性の点から、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
(一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミド基、アシル基、−SONR(Rは炭素数1〜3のアルキル基)である。pは0〜5の数である。複数あるR及びRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。)
におけるアルキル基は、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基等が挙げられる。
におけるアリール基は、炭素原子数が6〜12のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
におけるアルコキシ基は、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基であることが好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
におけるアシル基は、炭素原子数が1〜6のアシル基であることが好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
一般式(III)においてpは0〜5の数を表し、0〜2であることが好ましく、0〜1であることがより好ましい。
本発明においてポリビニルシンナメートは、一般式(III)で表される繰り返し単位を1種単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。また、前記ポリビニルシンナメートは、上記一般式(III)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、ラジカル重合可能なモノマーから誘導される公知の繰り返し単位が挙げられる。具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等の他、重合可能なクマリン誘導体などが好適なものとして挙げられる。
本発明においてポリビニルシンナメート中の一般式(III)で表される繰り返し単位の量は、特に限定されないが、配向規制力の点から、ポリビニルシンナメートを構成するモノマーの総量100質量部中、一般式(III)で表される繰り返し単位を誘導するモノマーが50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更により好ましい。
本発明においてポリビニルシンナメートの質量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、1000〜500000であることがより好ましく、1000〜100000であることが更に好ましい。なお、本発明において質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定されたものである。
配向層形成用組成物は更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、偏光を照射することにより配向規制力を発現する他の光配向性材料を含有してもよい。このような光配向性材料としては、光二量化型材料、及び光異性化型材料が挙げられ、具体的には、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、または、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等が挙げられ、中でも、少なくともクマリンを有するポリマー、及びこれらの誘導体が好ましく用いられる。このような光二量化型材料の具体例として、例えば、特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報、および、WO2010/150748号公報に記載された化合物を挙げることができる。これらの光配向性材料は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、光配向性組成物は、必要に応じて光配向性材料以外の化合物を含むものであっても良い。このような化合物としては、配向層の配向規制力を損なわないものであればよく、例えば、重合性基を有するモノマー又はオリゴマー(以下単に、重合性モノマー、重合性オリゴマーという場合がある。)が好適に用いられる。
本発明に用いられる上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマー(例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン)及び(メタ)アクリレート基を2つ以上有する多官能モノマー(例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリエチレン(ポリプロピレン)グリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ポリ(メタ)アクリレート(例えば、イソシアヌル酸EOジアクリレート等))や、ビスフェノールフルオレン誘導体(例えば、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジエポキシ(メタ)アクリレート)等が挙げられ、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、配向層形成用組成物は、塗工性等の点から、通常、溶剤を含有する。配向層形成用組成物に用いられる溶剤としては、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散できる溶剤の中から適宜選択して用いることができる。配向層形成用組成物に用いられる溶剤の具体例としては、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられるが、これらに限られるものではない。なお溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤としてもよい。
配向層形成用組成物は、必要に応じて、重合開始剤、重合禁止剤、酸素に対する変化を抑制するための酸化防止剤、光に対する変化を抑制するための光安定化剤、紫外性を吸収する紫外線吸収剤、粘度を調整するための粘度調節剤、屈折率を調整するための屈折率調整剤、賦型性を向上させるためのフッ素系またはシリコン系潤滑剤等を含むものであっても良い。これらは従来公知の材料を適宜選択して用いればよい。
配向層の厚みは、後述する位相差層における液晶化合物を一定方向に配列できればよく、適宜設定すればよい。配向層の厚みは、通常、1nm〜1000nmの範囲内であり、60nm〜300nmの範囲内が好ましい。
<位相差層>
位相差層は、前記配向層が有する配向規制力により、液晶化合物が規則的に配列し、位相差性が付与された層である。本発明において位相差層は、液晶化合物と、界面活性剤として一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンと、溶剤とを含有する位相差層形成用組成物の硬化物からなる。
本発明においては、位相差層形成用組成物が上記特定の界面活性剤を有するため、ポリビニルシンナメートを有する配向層上に塗工しても位相差層形成用組成物のハジキが抑制され、得られる位相差層の表面平滑性が向上し、位相差フィルムにおけるムラの発生が抑制されて、光学性能に優れた位相差フィルムを得ることができる。
本発明において位相差層形成用組成物は、液晶化合物と界面活性剤と、溶剤とを含有するものであり、液晶化合物の配向を阻害しない範囲で、更に他の成分を含むものであってもよい。
(界面活性剤)
本発明において位相差層は、界面活性剤として下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンを含有する。当該ポリエーテル変性シリコーンを含有する位相差層形成用組成物を用いることにより、ポリビニルシンナメートを含有する配向層上におけるハジキが抑制されて均一な位相差層を形成することができる。
(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、下記一般式(II)で表されるポリエーテルであり、nは20以上の数を表す。複数あるR及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。但し、一般式(I)中、複数あるR及びRのうち少なくとも一つは、一般式(II)で表されるポリエーテルである。)
(一般式(II)中、Rはアルキレン基であり、mは2以上の数を表す。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
及びRにおけるアルキル基は、位相差層形成用組成物のハジキを抑制する点から、炭素原子数が1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
また、R及びRにおけるアリール基は、位相差層形成用組成物のハジキを抑制する点から、炭素原子数が6〜14のアリール基が好ましく、炭素原子数が6〜8のアリール基が好ましい。当該アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
一般式(II)中、Rにおけるアルキレン基は特に限定されない。位相差層形成用組成物のハジキが抑制される点から、炭素原子数が1〜6のアルキレン基が好ましく、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることが更により好ましい。
一般式(II)においてmは、エーテルの繰り返し単位数を表す。本発明においてmは2以上の数であればよく、特に限定されない。位相差層形成用組成物のハジキが抑制される点から、mは2〜8であることが好ましく、mは3〜6であることがより好ましい。
一般式(I)においてnは、主鎖骨格を構成する(−Si−O−)の繰り返し単位数を表し、位相差層形成用組成物のハジキを抑制する点から、nは20以上の数である。中でもnが20〜50であることが好ましく、nが20〜40であることがより好ましい。
主鎖骨格の末端は、特に限定されないが、前記R及びRと同様のものとすることができ、中でも、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
本発明において、上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンの分子量は、特に限定されないが、位相差層形成用組成物のハジキが抑制される点から、中でも、3000〜12000であることが好ましく、4000〜10000であることがより好ましく、4500〜9000であることが更により好ましい。
また、上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンにおいて、(−Si−O−)骨格の含有割合は、位相差層形成用組成物のハジキが抑制される点から、一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーン全量に対して、5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
このようなポリエーテル変性シリコーンの市販品としては、例えば、TEGO(登録商標)Flow425、TEGO(登録商標)Glideシリーズ(以上、Evonik Tego Chemie社製)等が挙げられる。
(液晶化合物)
液晶化合物は、一般に、屈折率異方性が大きいため、位相差フィルムに所望の位相差性を付与しやすい。液晶化合物としては、例えば、ネマチック液晶化合物、コレステリック液晶化合物、カイラルネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物、ディスコチック液晶化合物を挙げることができる。また、液晶分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられる。重合性官能基を有するものであれば、光の照射によって光重合開始剤から発生したラジカル、または電子線等の作用により、液晶化合物を架橋することができるため位相差フィルムの安定性が向上する。
本発明においては、位相差ムラや光軸ずれのない位相差層を形成しやすい点から、相転移温度が40〜115℃の液晶化合物を用いることが好ましく、60〜90℃の液晶化合物を用いることがより好ましい。なお本発明において液晶化合物の相転移温度とは、液晶化合物が光学的異方性有するいわゆる液晶相から光学的異方性を有しない等方相へ変化する温度をいう。
本発明に用いられる液晶化合物の具体例としては、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。液晶化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において位相差層形成用組成物は、塗工性の点から、更に溶剤を含有する。位相差層形成用組成物に用いられる溶剤は、位相差層形成組成物に用いられる各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散できる溶剤の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、前記配向層形成用組成物において用いられる溶剤と同様のものとすることができる。位相差層形成用組成物に用いられる溶剤の具体例としては、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤等が挙げられ、位相差層形成用組成物のハジキが抑制される点から、ケトン系溶剤を用いることが好ましい。なお溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤としてもよい。
また、位相差層形成用組成物は、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、重合開始剤、重合禁止剤、可塑剤、シランカップリング剤等を挙げることができる。
位相差層形成用組成物中の前記液晶性化合物の含有量は、塗布性を損なわない範囲で適宜調整すればよい。中でも、上記位相差層形成用組成物全体に対する液晶性化合物の含有割合が、5質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、10質量%〜30質量%の範囲内であることがより好ましい。
位相差層形成用組成物中の前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンの添加量は、位相差層の表面平滑性を向上する点から、通常、前記位相差層形成用組成物中に5〜50,000ppm、好ましくは10〜20,000ppmとなる量である。
また、前記位相差層形成用組成物の全固形分中の前記般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンの含有量は、接着剤適性が良好な位相差層が得られやすい点から、0.05質量%以上0.3質量%未満であることが好ましく、0.1〜0.2質量%であることがより好ましい。なお、本発明において固形分とは、溶剤を除くすべての成分を表す。
本発明において位相差層形成用組成物は、前記ポリビニルシンナメートを含有する配向層表面における接触角が10度以下であることが好ましい。当該接触角が10度以下であることにより、位相差層形成用組成物の濡れ広がり性が向上してより平坦で均一性に優れた位相差層を形成することができる。
なお、本発明において接触角は、配向層表面に、測定対象となる位相差層形成用組成物を1μL滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測する。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定することができる。
また、本発明において位相差層形成用組成物は前記ポリビニルシンナメートを含有する配向層上に塗工した際の1m当たりのハジキの個数が、0.2個以下であることが好ましく、0.15個以下であることがより好ましい。当該ハジキの個数が0.2個以下であれば、ハジキによる位相差ムラの影響が小さくなり、光学性能に優れた位相差フィルムが得られる。
位相差層の厚さは、所望の面内リタデーション値が得られるように、前記液晶性化合物の種類等に応じて適宜決定すればよい。中でも、0.5μm〜4μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜2μmの範囲内であることがさらに好ましい。
前記位相差フィルムの位相差層表面には、接着性向上のために、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理などの表面処理やアンカー層を形成する方法などの易接着処理を施すことができる。なかでもコロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
また、本発明に用いられる位相差フィルムは、前記透明基材、前記配向層及び前記位相差層の他、更に、例えばハードコート層、防眩層、反射防止層及び帯電防止層等の機能層を備えるものであってもよい。前記機能層は、特に限定はされないが、例えば透明基材の配向層が存在する側とは反対側の面に設けることができる。
<位相差フィルムの製造方法>
本発明において位相差フィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を適宜選択することができる。
以下に、位相差フィルムの量産性に優れる方法として、前記長尺状透明基材を用いた位相差フィルムの製造方法の一例を説明する。
前記長尺状透明基材を用いた位相差フィルムの製造方法は、例えば、長尺状透明基材を準備する長尺状透明基材準備工程、配向層形成工程、及び位相差層形成工程を有し、必要に応じて更に別の工程を有していてもよい。
まず、長尺状透明基材準備工程により、長尺状透明基材を準備する。
次いで、配向層形成工程により、前記長尺状透明基材の一面側に配向層を形成する。配向層形成工程は、長尺透明基材上に配向層形成用組成物を塗工する工程の他、必要に応じて、配向層形成用組成物の塗膜を乾燥する工程や、配向層形成用組成物を硬化する工程、更には配向層形成用組成物を賦型する工程等、その他の工程を有していてもよい。
配向層形成工程における、配向層形成用組成物の塗工方法は、配向層形成用組成物を均一に塗布できる方法であれば良く、所望の膜厚等に応じて、従来公知の塗工機構の中から適宜選択すればよい。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などに用いられる各種塗工機構が挙げられる。
本発明においては、前記塗工機構に前記長尺状透明基材を連続的に搬送することにより、前記配向層形成用組成物を連続的に塗工することができる。
前記長尺状透明基材の搬送方法は、長尺状の基材を連続的に搬送することができる従来公知の方法を適宜選択して用いればよい。具体的には、例えば、ロール状にした長尺状透明基材を連続的に供給する巻き出し機、及び、長尺状透明基材を巻き取る巻き取り機等を用いるロールトゥロール方式において、ベルトコンベア、搬送用ロールや、エアの吐出と吸引とを行うことにより長尺透明基材を浮上させた状態で搬送する浮上式搬送台等の各種搬送機構を組み合わせて用いる方法等が挙げられる。
配向層形成工程は、更に、溶媒を除去するための乾燥工程を有していてもよい。
塗膜の乾燥工程は、加熱乾燥機構、減圧乾燥機構、ギャップ乾燥機構等、公知の乾燥機構を用いて乾燥すればよく、それぞれの乾燥機構に合わせ、乾燥温度、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶媒雰囲気濃度等を適宜調整すればよい。塗膜を連続的に均一に乾燥する点からは、上記搬送機構と組み合わせて行われることが好ましい。
本発明においては、配向層形成用組成物として光配向性を有するポリビニルシンナメートを含有するため、配向規制力を発現するために、偏光を露光する偏光露光工程を有する。当該偏光露光工程は、通常、乾燥工程後に行われる。また、パターン化された配向層を形成する場合には、例えば、光配向性材料を含有する配向層形成用インキの塗膜に、第一の偏光紫外線を所望のパターンを有するマスクを介して照射し、次いで、第一の偏光紫外線の偏光軸と異なる偏光軸を有する第二の偏光紫外線をマスクを介さずに照射して、パターン状に配向規制力を付与した配向層を形成する偏光露光工程としてもよい。このような偏光露光工程として、例えば、特開2012−14064号公報等に記載の方法を用いることができる。偏光露光工程に用いられる偏光露光装置としては、従来公知のものを適宜選択して用いればよく、パターン化された配向層を形成する場合には、例えば、上記特開2012−14064号に記載の装置を用いることができる。
上記偏光露光工程は、上記搬送機構と組み合わせて用いることが好ましい。
位相差層形成工程は、前記配向層形成工程により形成された配向層上に上述した位相差層形成用組成物を塗工して、位相差層を連続的に形成する工程である。
位相差層形成用組成物を塗工する方法は、所望の厚みの位相差層を精度良く塗布できる方法であればよく、前記配向層形成用樹脂組成物を塗工する方法と同様の方法とすることができる。
次いで、位相差層形成用組成物中の液晶性化合物を特定方向に配列させながら溶媒を除去するために、通常、乾燥工程を有する。
乾燥工程は、位相差層形成用塗膜中の液晶性化合物を配向させる点から、加熱乾燥であることが好ましい。加熱温度は、用いる液晶性化合物によっても異なるが、液晶性化合物の相転移温度より0〜10℃高いことが好ましい。
光重合性官能基を有する液晶性化合物を含有する位相差層形成用インキを用いる場合には、当該位相層形成用塗膜に紫外線等を照射する露光工程を有していてもよい。当該露光工程は、通常、乾燥工程後に行われる。当該露光工程により、液晶性化合物を架橋することができるため位相差フィルムの安定性が向上する。上記露光工程に用いられる露光装置としては従来公知の露光装置を適宜選択して用いればよく、例えば、紫外線照射装置等が挙げられる。
また、本発明の位相差フィルムの製造方法においては、必要に応じて更に他の工程を有していてもよい。例えば、前記位相差フィルムの製造方法は、前記配向層形成工程前に、前記透明基材の配向層とは反対側の面に、前記機能層を形成する工程を有していても良い。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
<調製例1:位相差層形成用組成物Aの調製>
重合性官能基を有する液晶化合物をメチルイソブチルケトンによって固形分25質量%に希釈し、そこに界面活性剤として全固形分に対して0.2質量%の割合でポリエーテル変性シリコーン(ポリオキシアルキル(C2−C4)変性−ジメチルポリシロキサン;一般式(I)におけるnが20〜30のシリコーン鎖を有し、Si−Oの含有割合が約15質量%)であるEvonik Tego Chemie社製のFlow425を添加することにより、位相差層形成用組成物Aを調製した。
<調製例2:位相差層形成用組成物Bの調製>
重合性官能基を有する液晶化合物をメチルイソブチルケトンによって固形分25質量%に希釈し、そこに界面活性剤として、全固形分に対して0.2質量%の割合でポリエーテル変性シリコーン(一般式(I)におけるnが30以上のシリコーン鎖を有し、Si−Oの含有割合が約20質量%)であるEvonik Tego Chemie社製のGlide450を添加することにより、位相差層形成用組成物Bを作製した。
<比較調製例1:位相差層形成用組成物Cの調製>
重合性官能基を有する液晶化合物をメチルイソブチルケトンによって固形分25質量%に希釈し、そこに界面活性剤として全固形分に対して0.2質量%の割合でポリエーテル変性シロキサンコポリマー(一般式(I)におけるnが20未満)である共栄社製ポリフローKL−700を添加することにより、位相差層形成用組成物Cを作製した。
(実施例1:パターン位相差フィルム1の製造)
透明基材(材質アクリル、厚さ40μm、サイズ210mm×297mm)の一面側に、光二量化反応型の光配向材料であるポリビニルシンナメートを含有する配向層形成用組成物を塗布し、乾燥させて塗膜とした。
当該塗膜に、第一の偏光紫外線を幅523μmのストライプパターンを有するマスクを介して照射した。次いで、第一の偏光紫外線の偏光軸とのなす角が90°の偏光軸を有する第二の偏光紫外線をマスクを介さずに照射して、ストライプパターンを有する膜厚が150nmの配向層を形成した。
次に、前記配向層上に、前記位相差層形成用組成物Aを塗布し、紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚が1μmの位相差層を形成することにより、パターン位相差フィルム1を得た。
(実施例2:パターン位相差フィルム2の製造)
実施例1において位相差層形成用組成物Aの代わりに位相差層形成用組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、パターン位相差フィルム2を得た。
(比較例1:パターン位相差フィルム3の製造)
実施例1において位相差層形成用組成物Aの代わりに位相差層形成用組成物Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、パターン位相差フィルム3を得た。
[評価]
<位相差層形成用組成物のハジキ性評価(1):接触角の測定>
前記実施例1と同様にして、透明基材上に膜厚が150nmの配向層が形成された積層体を作成した。
当該積層体の配向層表面に、実施例1〜2及び比較例1で用いた位相差層形成用組成物A〜Cをそれぞれ1μL滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて測定した。結果を表1に示す。
<位相差層形成用組成物のハジキ性評価(2):ハジキの個数の測定>
実施例1〜2及び比較例1で得られた位相差フィルム1〜3をそれぞれ目視で観察して、単位面積当たりの位相差層形成用組成物のハジキの個数を測定した。結果を表1に示す。
(位相差の評価)
実施例1〜2及び比較例1で得られた位相差フィルム1〜3をそれぞれ、位相差測定装置(Axostep、AXOMETRICS社製)にて観察したところ、実施例1〜2の位相差フィルムは、面内で位相差の変動が±1nm以下となっており、位相差ムラが観察されなかった。一方、比較例1の位相差フィルムは面内での位相差の変動が±2nm以上となっており位相差ムラが観察された。
[結果のまとめ]
一般式(I)の繰り返し単位が20個以上のポリエーテル変性シリコーンを用いた位相差層形成用樹脂組成物を用いた実施例1及び2では、ポリビニルシンナメートを含有する配向層に対して、接触角が10度未満となり、濡れ広がり易いことが明らかとなった。その結果、単位面積(m)当たりのハジキの個数が0.2個未満となり、位相差層が均一で位相差ムラの無い、光学性能に優れた位相差フィルムを得ることができた。
一方、一般式(I)の繰り返し単位が20個未満のポリエーテル変性シリコーンを用いた比較例1の位相差層形成用樹脂組成物を用いた比較例1では、ポリビニルシンナメートを含有する配向層に対して接触角が11.2度となり、濡れ広がりにくいことが明らかとなった。その結果、単位面積当たりのハジキの個数が0.42個と実施例と比較して多く、また得られた位相差フィルムは、位相差ムラを生じていた。
1 アクリル樹脂基材
2 配向層
3 位相差層
4 パターン配向層
4A 第一配向領域
4B 第二配向領域
5 パターン位相差層
5A 第一位相差領域
5B 第二位相差領域
10 位相差フィルム
20 パターン位相差フィルム

Claims (1)

  1. 透明基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に配置された位相差フィルムであって、前記配向層がポリビニルシンナメートを含有する配向層形成用組成物又はその硬化物からなり、前記位相差層が、液晶化合物と、界面活性剤と、溶剤とを含有する、位相差層形成用組成物の硬化物からなり、
    前記界面活性剤が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル変性シリコーンである、位相差フィルム。
    (一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は、下記一般式(II)で表されるポリエーテルであり、nは20以上の数を表す。複数あるR及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。但し、一般式(I)中、複数あるR及びRのうち少なくとも一つは、一般式(II)で表されるポリエーテルである。)
    (一般式(II)中、Rはアルキレン基であり、mは2以上の数を表す。複数あるRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
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