JP2016094628A - 金属間化合物粒子の製造方法、これを利用した鋳造アルミニウム用結晶粒微細化剤およびその製造方法、これらを利用したアルミニウムあるいはアルミニウム合金鋳造材の製造方法 - Google Patents

金属間化合物粒子の製造方法、これを利用した鋳造アルミニウム用結晶粒微細化剤およびその製造方法、これらを利用したアルミニウムあるいはアルミニウム合金鋳造材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金に対して、従来よりも不整合度δが小さいL1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子を含む鋳造用結晶粒微細化剤を提供する。
【解決手段】ガスアトマイズ装置にて製造したL1構造の球状Al22FeTi金属間化合物粒子をアルミニウムを主成分とする母相に分散させてなることを特徴とし、また鋳造用結晶粒微細化剤を鋳造アルミニウムもしくは鋳造アルミニウム合金の溶湯中に添加し、前記溶湯を鋳型に注湯することを特徴とする。
【選択図】図13

Description

本発明は、金属間化合物粒子の製造方法、これを利用した鋳造アルミニウム用結晶粒微細化剤およびその製造方法、これらを利用したアルミニウムあるいはアルミニウム合金鋳造材の製造方法に関するものである。
アルミニウムの代表的な加工法の一つに鋳造がある。鋳造は、複雑で滑らかな形状の製品が作製可能であり、加工困難なあらゆる金属および合金に適用できる、等の利点がある。しかし、結晶粒が粗大化し不均一な組織となるため、強度低下を生じやすい欠点を持つ(非特許文献1参照)。
そのため、凝固組織の均質化および材料強度の改善が必要である。その方法として、結晶粒微細化による機械的性質の向上が最適である。一般に、溶湯の冷却速度を速くして、凝固が開始する時の過冷却を大きく発生させることにより、核生成のための活性化に要するエネルギーが小さくなる。これにより核生成が容易になり、生成する結晶粒の数が増加するため組織が微細化される(非特許文献2参照)。
しかし、凝固組織を微細にするために鋳造時に急冷した場合、鋳型が冷えすぎ、凝固バランスが崩れて溶湯補給が不十分になる。その結果、湯境や引け巣が発生するなど鋳造欠陥を増加させる要因となる可能性がある。
鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金の結晶粒を微細化する方法として、AlTi、TiBあるいはTiCなどの微細な粒子を含むAl−Ti−X系合金微細化剤の添加がある(非特許文献3参照)。ここで、Xはホウ素あるいは炭素であり、多くはチタンの質量分率が5パーセント程度の合金である。特に、微細化剤中のAlTi金属間化合物の異質核作用により微細化剤を添加した鋳造においては凝固核が増加し、これにより得られる鋳造材の結晶粒は微細化され、機械的強度が向上する。
面心立方格子構造を有するアルミニウム母相およびD022構造を有するAlTi金属間化合物の結晶構造とそれらの格子定数を、それぞれ図1(a)および(b)に示す。ここで、D022構造は面心立方格子の単位胞を2つ重ねた単位胞を有し、AlTiの場合、c軸方向に伸張した面心正方格子構造になっており、結晶学的異方性が強い。
異相界面の界面構造を評価する指標として、不整合度が一般的に広く採用されている。異質核物質の低指数面の格子定数をa、鋳造材の低指数面の格子定数をaとすると、不整合度δは式1となる(非特許文献4参照)。
式1

ここで、不整合度δが小さいほど原子配列の整合性がよく、この値が10パーセント以下であると異質核物質は核として有効に働く。
凝固する金属と異質核との結晶構造が違う場合における不整合度を記述する方法として、平面不整合度が提案されており、式(2)で算出できる(非特許文献5参照)。
式2

ここで、(hkl)sは異質核粒子の低次指数面、[uvw]sは(hkl)s面の低次指数方向、(hkl)nは核生成する金属の低次指数面、[uvw]nは(hkl)n面の低次指数方向、d[uvw]sは[uvw]s方向に沿った原子間距離、d[uvw]nは[uvw]n方向に沿った原子間距離、θは[uvw]sと[uvw]nとの間の角度を表している。
AlTiは結晶の対称性の低さゆえ、面によって平面不整合度が異なる。ここで、結晶学的方位関係におけるアルミニウムとの平面不整合度を表1に示す。これらの面の中では、最大では(001)Al3Tiにおける4.89パーセント、最小では{112}Al3Tiにおける2.17パーセントである。
Al−Ti合金微細化剤中のAlTi金属間化合物粒子の形態は板状である(特許文献1および非特許文献6参照)。ここで、最も占有面積の大きい板面は(001)Al3Ti面である。表1に示すように、不整合度の小さい面も存在するが、ほとんどを占める板面が、最も不整合度が大きい面となっている(特許文献2および非特許文献6参照)。
ところで、微細化剤の機能向上の指針としては、異質核の数密度(単位体積あたりの異質核の数)を増加させる、あるいは異質核物質と鋳造材との整合性を高めることで達成可能である。前者の方法として、微細化剤に繰り返し押し出し加工などの巨大ひずみ加工を施すことによって達成した例がある(特許文献3参照)。後者の例として、結晶学的に対称性のよいL1構造のAlCuTi金属間化合物粒子を異質核とした微細化剤が報告されている(特許文献4および特許文献5参照)。
前述の通り、D022構造を有するAlTi金属間化合物は、結晶の対称性が悪いため、結晶面により異質核の働きが異なる。加えて、必ずしも不整合度の値が小さいとは言い難い。そこでAlTi金属間化合物に第三添加元素を加えて、図1(c)に示すような対称性の良いL1構造の金属間化合物を異質核として利用する。これにより、現有の結晶粒微細化剤における異質核と比較して、より不整合度が小さいとともに、アルミニウムあるいはアルミニウム合金に対し、不整合度を限りなく小さくした異質核を有する結晶粒微細化剤の製造が可能となる。例えば、このとき、異質核として利用するL1構造の(Al,Y)Ti金属間化合物の格子定数aおよび純アルミニウムに対する不整合度δは以下である。
Y=Cu:AlCuTi,a=0.3927nm,δ=3.03
Y=Fe:Al22FeTi,a=0.393nm,δ=2.95
Y=Ni:Al67NiTi25,a=0.394nm,δ=2.71
いずれの格子定数も、純アルミニウムの格子定数に近いことから、これらの金属間化合物は、不整合度δの小さな優れた異質核である。(特許文献4参照)。
特願2013−183743 特願2014−094548 特許第4691735号公報 WO2012/102162公表公報 特願2013−231357
田村博:溶融加工,森北出版,(1982),119. 神尾彰彦:軽金属,56,(2006),496−500. 日本金属学会 編:鋳造凝固,丸善,(1999),pp.24―29. D.Turnbull and B.Vonnegut:Ind.Eng.Chem.,44,(1952),1292−1298. L.Bramfitt:Metall.Trans.,1,(1970),1987−1995. 渡辺義見, 佐藤尚: 軽金属,64,(2014),157−163
本発明は上記点に鑑みて、鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金に対して、従来よりも不整合度δが小さいL1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子の製造方法、これを利用した鋳造用結晶粒微細化剤およびその製造方法、これらを利用したアルミニウムあるいはアルミニウム合金鋳造材の製造方法を提供することである。
ガスアトマイズ装置にて製造したL1構造の球状Al22FeTi金属間化合物粒子とアルミニウム粒子とを放電プラズマ焼結法により低温短時間での焼結を行い、本来平衡状態下にては存在しない不整合度の小さい異質核粒子を含む結晶粒微細化剤を製造する。本発明によれば、高い微細化能を有する結晶粒微細化剤が提供される。
[1]ガスアトマイズ法を用いたL1構造の(Al,Y)Ti金属間化合物粒子を製造することを特徴とする。
[2] 前記L1構造の(Al,Y)Ti金属間化合物がAl22FeTiであることを特徴とする。
[3] 前記[1]または[2]に記載の金属間化合物粒子を、アルミニウムを主成分とする母相に分散させてなることを特徴とする。
[4] 前記[3]に記載の金属間化合物粒子と母相粉末とを混合して成形体を形成した後、前記成形体を放電プラズマ焼結法により焼結させることを特徴とする。
[5] 前記[4]に記載の鋳造用結晶粒微細化剤を鋳造アルミニウムもしくは鋳造アルミニウム合金の溶湯中に添加し、前記溶湯を鋳型に注湯することを特徴とする。
(a)アルミニウム母相、(b)D022構造のAlTi金属間化合物、(c)L1構造の金属間化合物、の結晶構造と格子定数を示した図である。 本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子のX線回折のグラフである。 本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤のX線回折のグラフである。 本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤を添加あるいは添加せずに鋳造したアルミニウムの断面組織写真であり、(a)微細化剤無添加、(b)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間0秒の条件で鋳造、(c)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間300秒の条件で鋳造、(d)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間600秒の条件で鋳造、(e)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間900秒の条件で鋳造、(f)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間1200秒の条件で鋳造、した各写真である。 本発明の実施例においてアーク溶解装置にて製造したAl22FeTi金属間化合物の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明でアーク溶解装置にて製造したAl22FeTi金属間化合物に対して、1200℃、72時間の条件で均質化処理を施した後の試料の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例においてアーク溶解装置にて製造したAl22FeTi金属間化合物の均質化処理前後のX線回折のグラフである。 本発明でアーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAl22FeTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例においてアーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAl22FeTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤のX線回折のグラフである。 本発明の実施例においてアーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAl22FeTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤を添加あるいは添加せずに鋳造したアルミニウムの断面組織写真であり、(a)微細化剤無添加、(b)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間0秒の条件で鋳造、(c)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間300秒の条件で鋳造、(d)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間600秒の条件で鋳造、(e)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間900秒の条件で鋳造、(f)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間1200秒の条件で鋳造、した各写真である。 本発明の実施例においてアルミニウム溶湯に微細化剤を添加して、30秒撹拌してからの保持時間とアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径の関係を示すグラフである。
本発明に係る鋳造アルミニウム用結晶粒微細化剤およびその製造方法を以下に説明する。
ガスアトマイズ装置によって、L1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子の製造を行った。ここで、ガスアトマイズ法とは、溶かした金属に高圧ガスを吹き付け、微細な金属粒子を製造する方法である。
まず、真空排気後、不活性ガスをチャンバー内に置換させ、高周波誘導溶解加熱によってAl22FeTi金属間化合物の原料となる、純アルミニウム、純鉄および純チタンを溶解した。
次に、チャンバーと噴霧チャンバー間に差圧を生じさせ、かつ、ストッパーを上昇させることにより溶融金属を下方に落とし、その溶融金属に高圧ガスを噴きつけて球状粒の金属間化合物を製造した。
製造したAl22FeTi金属間化合物粒子の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。この図より、得られた粒子の形状が球状であることが分かる。エネルギー分散型X線分光器を使ったX線分光法によって組成分析を行った結果、球状粒子はAl22FeTiの化学量論的組成を有することが分かった。
なお、図3に示すように、X線回折により相の同定を行ったところ、L1構造であることが見いだされた。
このように、ガスアトマイズ法により、L1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子を製造することができた。
製造したL1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子をそのままアルミニウム溶湯中に直接添加しても、濡れ性の関係から浮いてしまうため、Al22FeTi金属間化合物粒子が分散されない可能性が大きい。そこで、市販の結晶粒微細化剤と同様に、製造したAl22FeTi金属間化合物粒子をアルミニウム母材に分散させることにより、この問題点を解決した。
しかし、Al22FeTi金属間化合物とアルミニウムとは平衡状態下で、同時には存在できない。この難題を解決すべく、発明者らは、低温短時間で焼結が行える放電プラズマ焼結法を採用した。
ここで、放電プラズマ焼結とは、固体圧縮焼結法の一種であり、粉体を充填したグラファイト製焼結型を、加圧しながら加熱する。ただし、通常の焼結法と異なるのは加熱方法であり、直流パルス電圧・電流を焼結用の型と焼結したい材料に直接印加する。
これにより電気エネルギーを導電性の焼結型および導電性の材料に与えて材料自身の自己発熱を、加圧とともに焼結駆動力として利用する。加熱範囲が限定されるため、電気炉などの雰囲気加熱よりも急速昇温および冷却が可能である。このため、粒成長や安定状態への変化を抑制した焼結体の製造が可能である。
製造したAl22FeTi金属間化合物粒子を粒子径75μm〜150μmの範囲に分級し、さらに純アルミニウムと混合し、放電プラズマ焼結装置(住友石炭鉱業株式会社、ドクターシンターシリーズ、SPS−515S)を用い、成形圧力は45MPa、昇温速度は1.67℃毎秒、焼結温度は500℃および保持時間は300秒の条件で焼結を行って結晶粒微細化剤の製造を行った。
本例では、Al22FeTi金属間化合物粒子の体積分率を10パーセントとしたが、これに限定されるものではない。
製造したAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。母相であるアルミニウムとAl22FeTi金属間化合物粒子との間には、明確な境界面が存在し、反応生成物は観察されない。組成分析を行った結果、粒子は化学量論的組成のAl22FeTi金属間化合物、マトリックスはアルミニウムであった。
加えて、X線回折により相の同定を行ったところ、図5に示すように、体積率が90パーセントを占めるアルミニウムのピークパターンが強く出ているが、L1構造のAl22FeTi金属間化合物のピークパターンも明確に出ている。
この結果から、Al22FeTiがアルミニウムとは反応せず、L1構造を保つことが確認できる。
このように、焼結を低温・短時間で行うことにより、アルミニウム鋳造材の異質核となるAl22FeTi金属間化合物粒子が反応せずに試料中に残り、L1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子を10パーセント含有する結晶粒微細化剤を製造することができた。
次に、このようにして製造したAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤を使用して鋳造実験を行った。
はじめに純度99.99パーセントのアルミニウムインゴット148.8gを750℃でるつぼ内にて溶解し、微細化剤を1.2g(添加量0.8質量パーセント)添加した。本実験における微細化剤の添加量は、Al-Ti二元系における包晶組成である0.12質量パーセントに比べ、Ti濃度が十分低い値となるよう設定した。
しかし、この鋳造条件は一例であり、実施例の条件を規定するものではない。
また、結晶粒微細化剤添加直後は30秒間撹拌した(保持時間無し)。
加えて比較例1として、微細化剤を添加しない場合におけるアルミニウム鋳造材を作製した。
その後、アルミニウム鋳造材の底面から5mmの部分で切断し、その上面を観察面とした。エメリー紙#80から#2000までの湿式研磨を行い、1μmのアルミナを使用したバフ研磨を行った後、10%フッ化水素酸水溶液を用いて腐食を施した。
図6(a)に結晶粒微細化剤を添加しない比較例1、図6(b)に結晶粒微細化剤を添加した実施例1のアルミニウム鋳造材の断面写真を示す。結晶粒微細化剤を添加しなかったアルミニウム鋳造材においては、等軸晶や柱状晶を有し、大きな組織を有する通常の凝固組織が観察される。一方、微細化剤を添加した試料の組織は、一部で柱状晶が見られるもののほぼ均一であり、全体的に微細化されていることがわかる。
<実施例2〜5>
実施例2〜5では、実施例1で製造した結晶粒微細化剤を使用しての鋳造実験において、結晶粒微細化剤添加直後に30秒間撹拌した後の保持時間を、それぞれ、300秒、600秒、900秒、1200秒、とした。その他の条件は実施例1と同様である。 図6(c)(d)、(e)、(f)に実施例2〜5におけるアルミニウム鋳造材の断面写真を示す。
実施例1〜5において、Mean Linear Intercept法を用いて平均結晶粒径の測定を行ったところ、保持時間600秒である実施例3(図6(d))のとき、最も組織が微細となり、その平均結晶粒径は348μmまで微細化されていた。
<実施例6>
実施例6では、アーク溶解装置によって、L1構造のAl22FeTi金属間化合物の製造を行った。試料原料には、バルク状の純アルミニウム、粒状の純鉄および純チタンを用いるが、これが原材料を規定するものではない。これらをアルゴン雰囲気中でアーク溶解し、バルク状の試料を製造した。アーク溶解の際、均質性を確保するため、各原料が溶け合った後に最低8回の溶解を行った。
次に、アーク溶解により製造したL1構造のAl22FeTi金属間化合物を石英管に真空封入した後、マッフル炉にて1200℃、72hで均質化処理を行った。しかし、この均質化条件は一例であり、実施例の条件を規定するものではない。
製造した均質化処理前後のAl22FeTi金属間化合物に対し、結晶構造および組織についての評価を行った。均質化処理前および均質化処理後のAl22FeTi金属間化合物の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図7および図8に示す。
組成分析を行った結果、均質化処理前の試料中には多くの第二相が観察された。一方で、均質化処理後には第二相の完全な消滅には至らなかったものの、Al22FeTi母相の占める割合が多くなり、第二相の減少が確認された。また、カーケンドール効果による多くのボイドが観察された。
次に、試料の一部を切り出し、ハンマーで粉砕した後に、X線回折を用いて結晶構造についての評価を行った。
図9に、均質化処理前後の試料のX線回折の測定結果を示す。均質化処理後のAl22FeTi金属間化合物のピークパターンでは、均質化処理前のAl22FeTi金属間化合物のピークパターンと比較すると、未特定のピークが減少し、L1構造のAl22FeTi金属間化合物のピークパターンが明確に示された。
次に、製造した均質化処理後のバルク状のAl22FeTiをハンマーで粉砕し、75〜150μmの粉末に分級した。これを純アルミニウムと混合し、Al22FeTi金属間化合物粒子の体積分率を10パーセントとして、実施例1と同様の条件で放電プラズマ焼結装置を用いてAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤を製造した。
製造したAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤の走査型電子顕微鏡写真を図10に示す。母相であるアルミニウムとAl22FeTi金属間化合物粒子との間には、明確な境界面が存在し、反応生成物は観察されない。
組成分析を行った結果、粒子は化学量論的組成のAl22FeTi金属間化合物、マトリックスはアルミニウムであった。加えて、X線回折により相の同定を行ったところ、図11に示すように、体積率が90パーセントを占めるアルミニウムのピークパターンが強く出ているが、L1構造のAl22FeTi金属間化合物のピークパターンも明確に出ている。この結果から、Al22FeTiが反応せずに残っていることが確認できる。
このように、ガスアトマイズ法により製造したAl22FeTi金属間化合物粒子を用いた場合と同様に、アーク溶解法により製造したAl22FeTi金属間化合物粒子を用いた場合においても、L1構造のAl22FeTi金属間化合物粒子を10パーセント含有する結晶粒微細化剤を製造することができた。
次に、このようにして製造したAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤を使用して鋳造実験を行った。条件は実施例1と同様である。図12(a)に結晶粒微細化剤を添加しない比較例1、図12(b)に結晶粒微細化剤を添加した実施例6のアルミニウム鋳造材の断面写真を示す。微細化剤を添加した試料の組織は、微細化剤を添加していない試料と比較すると、結晶粒が小さくなっているものの柱状晶が多く見られ、均質に微細化しているとはいえない結果となった。
<実施例7〜10>
実施例7〜10では、実施例6で製造したAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤を使用しての鋳造実験において、結晶粒微細化剤添加直後に30秒間撹拌した後の保持時間を、それぞれ、300秒、600秒、900秒、1200秒、とした。その他の条件は実施例1と同様である。
図12(c)、(d)、(e)、(f)に実施例7〜10におけるアルミニウム鋳造材の断面写真を示す。実施例6〜10において、Mean Linear Intercept法を用いて平均粒子径の測定を行ったところ、保持時間600秒である実施例8のとき、最も組織が微細となり、その平均結晶粒径は774μmにまで微細化されていた。しかしながら、最も組織が微細となった実施例8(図12(d))においても一部で柱状晶が見られた。
図13に、実施例1〜10におけるアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径と保持時間の関係を示す。また、図13には過去の研究におけるAl−10vol.%Al5-CuTi微細化剤を用いた鋳造実験の結果も記載している(非特許文献6)。
図13より、ガスアトマイズ装置にて製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤およびアーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAl22FeTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤は、共に保持時間を600秒として作製したアルミニウム鋳造材の組織が最も微細であることがわかる。
また、保持時間600秒以降で平均結晶粒径が大きくなっていることが確認でき、フェーディング現象が生じている。
以上より、本発明で製造したAl-10vol.%Al22FeTi微細化剤を最適な保持時間である600秒で添加することにより、アルミニウム鋳造材の組織を最も均一に微細化できることが確認された。
また、ガスアトマイズ装置により製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤とアーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAl22FeTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤を比較すると、前者の微細化剤の方が、優れた微細化能を有していることが確認できる。
これは、Al22FeTi金属間化合物粒子の第2相に起因していると考えられる。
アーク溶解装置で製造した試料は、バルク状で製造されるため、試料をハンマーで粉砕して粉末にする工程が必要となる。この工程で試料が粉砕される際、試料内の第2相を起点として割れていく。
これにより、割れた粒子の表層に第2相が多く現れるため、微細化能が低下する。本発明のアーク溶解装置により製造したAl22FeTi金属間化合物は、均質化処理を施した場合においても、第2相の完全な消滅には至らなかった。
つまり、アーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAl22FeTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤では、Al22FeTi金属間化合物粒子の表層に第2相が多く現れ、微細化能が低下したものと考えられる。
次に、Al−10vol.%Al22FeTi微細化剤とAl−10vol.%Al5-CuTi微細化剤を比較すると、前者の微細化剤の方がフェーディング現象の開始時間が遅く、平均結晶粒径が大きくなる挙動が小さい。
よって、Al−10vol.%Al22FeTi微細化剤はAl−10vol.%Al5-CuTiよりも熱的に安定であることが予想できる。
また、ガスアトマイズ装置により製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤とガスアトマイズ装置により製造した球状AlCuTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%AlCuTi微細化剤を比較すると、前者の方が優れた微細化能を有することが確認できる。
この結果は、純アルミニウムに対する不整合度δの値が小さい方が優れた異質核として作用するという関係と合致する。また、ガスアトマイズ装置により製造した球状Al22FeTi金属間化合物粒子を用いたAl−10vol.%Al22FeTi微細化剤とアーク溶解装置にて製造した後、均質化処理を施したAlCuTi金属間化合物を用いたAl−10vol.%AlCuTi微細化剤を比較すると、前者の微細化剤には、球状粉末であるAl22FeTi母相中に第2相が存在していたにもかかわらず、後者の微細化剤とほぼ同等の微細化効果が得られた。
以上の結果より、本発明によって、高い微細化能を有する金属間化合物粒子の製造方法、これを利用した鋳造アルミニウム用結晶粒微細化剤およびその製造方法、これらを利用したアルミニウムあるいはアルミニウム合金鋳造材の製造方法を提供することができる。
本発明は、鋳造アルミニウム合金の結晶粒微細化に関するものであり、例えば、オイルパンの製造、フライホイールハウジングの製造、クラッチハウジングの製造、トランスミッションカバーの製造、ギヤケースの製造、ポンプハウジングの製造、カバーサーモスタットの製造、ケースサーモスタットの製造、シリンダーの製造、シリンダーヘッドの製造、ターボチャージャー用コンプレッサーカバーの製造、自動車およびバイクのアルミホイールの製造、カーエアコン部品の製造、高速鉄道用ギヤケースの製造、工作機械および建設機械などの各種耐圧空圧容器やバルブなどの製造、航空機用部品の製造、ロボットアームの製造、医療機器部品の製造、半導体装置部品の製造、門扉などの建築金物の製造などに提供できる。

Claims (5)

  1. ガスアトマイズ法を用い、L1構造の(Al,Y)Ti金属間化合物粒子を製造することを特徴とする金属間化合物粒子の製造方法。
  2. 前記L1構造の(Al,Y)Ti金属間化合物がAl22FeTiである請求項1記載の金属間化合物粒子の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の金属間化合物粒子を、アルミニウムを主成分とする母相に分散させてなることを特徴とする固形状の鋳造用結晶粒微細化剤。
  4. 請求項3記載の金属間化合物粒子と母相粉末とを混合して成形体を形成した後、前記成形体を放電プラズマ焼結法により焼結させることを特徴とする鋳造用結晶粒微細化剤の製造方法。
  5. 請求項4記載の鋳造用結晶粒微細化剤を鋳造アルミニウムもしくは鋳造アルミニウム合金の溶湯中に添加し、前記溶湯を鋳型に注湯するアルミニウムもしくはアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
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