以下、本発明の実施の形態による建設機械のフロント装置について、油圧ショベルのフロント装置(より具体的には、ロングブームを備えたロングフロント装置)に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図9は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械の代表例となる油圧ショベル1は、土砂の掘削作業等に用いられるものである。油圧ショベル1は、例えばクローラ式の自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた後述のフロント装置11とを含んで構成されている。
ここで、上部旋回体3は、支持構造体となる旋回フレーム4と、該旋回フレーム4の左前側に搭載され内部に運転席、各種の操作レバー・ペダル等(いずれも図示せず)が配設されたキャブ5と、フロント装置11との重量バランスをとるため旋回フレーム4の後部に取付けられたカウンタウエイト6と、該カウンタウエイト6の前側に設けられたエンジン(図示せず)と、該エンジンによって駆動される油圧ポンプ(図示せず)と、該油圧ポンプから吐出した圧油(作動油)を各種の油圧アクチュエータ(例えば、左,右の走行油圧モータ、旋回油圧モータ、後述のブームシリンダ27、アームシリンダ28、バケットシリンダ29等)に選択的に給排(供給または排出)する制御弁装置(図示せず)と、キャブ5とカウンタウエイト6との間に設けられエンジン、油圧ポンプ等を覆う外装カバー7とを含んで構成されている。
次に、土砂の掘削作業等を行うために油圧ショベル1に設けられた第1の実施の形態によるフロント装置11の構成について説明する。
上部旋回体3の前側には、作業装置とも呼ばれるフロント装置11が俯仰動可能に取付けられている。フロント装置11は、後述のブーム12、アーム20、バケット25、ブームシリンダ27、アームシリンダ28、バケットシリンダ29、固定油圧管路31,33,36,42等を含んで構成されている。ブーム12、アーム20およびバケット25は、シリンダ27,28,29が伸長または縮小することによって動作する。なお、フロント装置11のブーム12とアーム20は、図1ないし図4に示す状態、即ち、アーム20をブーム12の下側に折畳みブーム12を前方に伸ばした姿勢(輸送姿勢)を基にして、上,下位置に関する名称を付して説明するものとする。
ブーム12は、旋回フレーム4の前側に俯仰動可能に取付けられている。このために、ブーム12は、基端側に旋回フレーム4に俯仰動可能に取付けられるフート部取付部材13を有すると共に、先端側にアーム20が取付けられるアーム取付部材14を有している。ここで、ブーム12は、長さ方向の一端寄り(基端側寄り)が屈曲した形状、即ち、全体として略「へ」字状(略「L」字状)に形成されている。
具体的には、ブーム12は、上部旋回体3の近傍側で山形状に折曲げられた折曲部15と、フート部取付部材13から折曲部15までの間で直線状に延びる基端側直線部16と、折曲部15からアーム取付部材14までの間で直線状に延び基端側直線部16よりも長い直線部としての先端側直線部17とを含んで構成されている。
図9に示すように、ブーム12は、左,右方向で間隔をもって対面しつつ前,後方向に延びる左側板12A、右側板12Bと、該左,右の側板12A,12Bの上端側に溶接手段を用いて接合される上板12Cと、左,右の側板12A,12Bの下端側に溶接手段を用いて接合される下板12Dとを含んで構成されている。これにより、ブーム12は、内部が中空で横断面が四角形の閉断面構造をなす箱型構造体として形成されている。なお、第1の実施の形態では、ブーム12として、横断面が四角形とした構成を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。
即ち、ブーム12は、少なくとも、左,右の側面を構成する側板12A,12Bと、該側板12A,12Bと別体の部材または一体の部材として形成され、側板12A,12Bの間で上面を構成する上板12Cとを有するものであればよい。この場合、側板12A,12Bや上板12Cとして、図9に示すような断面が直線状の平板に限らず、例えば、断面が湾曲した平板を用いることもできる。さらに、ブーム12の横断面の四角形としては、長方形以外にも、正方向、台形等、各種形状の四角形を採用することができることに加えて、角部を面取り(例えば四隅を面取り)した略四角形状としてもよい。また、ブーム12の横断面形状として、四角形以外の五角形、六角形等の多角形、さらには、楕円形、円形を採用してもよい。この場合、ブーム12を輸送姿勢とした状態で側面を構成する部材が側板となり、上面を構成する部材が上板となる。また、例えば、側板と上板との角部が面取りされている場合は、面取りした部位も側板に含むものとすることができる。
ブーム12の側板12A,12Bには、折曲部15の位置に、ブームシリンダ27のロッド先端を取付けるためのシリンダ取付ボス18が設けられている。ブーム12の上板12Cには、折曲部15よりも先端側の位置に、アームシリンダ28のチューブ基端を取付けるためのシリンダ取付ブラケット19が設けられている。
アーム20は、ブーム12の先端部に俯仰動可能(揺動可能)に取付けられている。このために、アーム20は、基端側にブーム12のアーム取付部材14に回動可能に取付けられるブーム取付ブラケット21を有すると共に、先端側にバケット25が取付けられる作業具取付ブラケット22を有している。アーム20は、ブーム12と同様に作業腕を構成するもので、内部が中空で横断面が四角形の閉断面構造をなす箱型構造体として形成されている。
アーム20の基端側には、アームシリンダ28のロッド先端が取付けられるシリンダ取付ブラケット23が設けられている。アーム20の先端側の下面には、バケットシリンダ29のチューブ基端が取付けられるシリンダ取付ブラケット24が設けられている。
作業具としてのバケット25は、アーム20の先端部、即ち、アーム20の作業具取付ブラケット22に回動可能に取付けられている。バケット25は、例えば土砂等などを掬いあげ、所定の位置にその土砂を排出するものである。このために、バケット25には、リンク機構26を介してバケットシリンダ29のロッド先端が連結されている。
ブームシリンダ27は、上部旋回体3の旋回フレーム4とブーム12との間に設けられている。ブームシリンダ27は、ブーム12の左,右両側にそれぞれ設けられている。各ブームシリンダ27は、旋回フレーム4に対してブーム12を俯仰動(揺動)させる。ブームシリンダ27の基端部は、旋回フレーム4の前部に回動可能に取付けられている。ブームシリンダ27の先端部は、ブーム12のシリンダ取付ボス18に回動可能に取付けられている。
アームシリンダ28は、ブーム12とアーム20との間に設けられている。アームシリンダ28は、ブーム12に対してアーム20を俯仰動(揺動)させる。アームシリンダ28の基端部は、ブーム12のシリンダ取付ブラケット19に回動可能に取付けられている。アームシリンダ28の先端部は、アーム20のシリンダ取付ブラケット23に回動可能に取付けられている。
作業具シリンダとしてのバケットシリンダ29は、アーム20とバケット25との間に設けられている。バケットシリンダ29は、バケット25をアーム20の先端で回動(揺動)させる。バケットシリンダ29の基端部は、アーム20のシリンダ取付ブラケット24に回動可能に取付けられている。バケットシリンダ29の先端部は、バケット25とアーム20とに連結されたリンク機構26に回動可能に取付けられている。
ここで、実施の形態では、ブーム12は、標準ブームよりも長いロングブーム(スーパーロングブーム)としている。即ち、実施の形態のフロント装置11は、特別に長く設計されたブーム12およびアーム20と、軽掘削用の小容量バケット25とを備えたロングフロント(スーパーロングフロント)として構成されている。これにより、フロント装置11は、標準のブームおよびアームを備えた構成(標準のフロント)と比較して、長大な作業半径と掘削長さ(掘削深さ)を実現できるようにしている。
より具体的には、図5に示すように、ブーム12のフート部取付部材13とシリンダ取付ボス18との間の長さ寸法をL1とし、ブーム12のアーム取付部材14とシリンダ取付ボス18との間の長さ寸法をL2とした場合に、これら長さ寸法L1と長さ寸法L2とは、下記の数1式の関係に設定されている。
より好ましくは、長さ寸法L1と長さ寸法L2とは、下記の数2式の関係に設定されている。
さらに、実施の形態では、図5に示すように、アーム20とブーム12との取付部位(ブーム取付ブラケット21)からアーム20とバケット25との取付部位(作業具取付ブラケット22)までの寸法をAとし、アーム20とブーム12との取付部位(アーム取付部材14)からブーム12のシリンダ取付ボス18までの寸法をB(=L2)とすると、これら寸法Aと寸法Bとは、下記の数3式の関係に設定されている。
より具体的には、ブーム12を最も立ち上げ、アーム20を垂下させ、かつ、バケット25を掬い上げた状態で、バケット25の最下部の高さ(地上高)がダンプトラックの荷台(ベッセル)の高さよりも高くなるように、A寸法とB寸法を設定している。これにより、ダンプトラック等の運搬車両を油圧ショベル1に近付けた状態で、バケット25により掬い上げた土砂等を運搬車両に積み込み易くすることができる。
次に、フロント装置11のアームシリンダ28、バケットシリンダ29に制御弁装置(図示せず)からの圧油を給排する固定油圧管路31,33,36,42の構成について説明する。なお、アームシリンダ28、バケットシリンダ29は、フロント装置11を最も伸ばした状態で、ブーム12の折曲部15よりも車体(上部旋回体3、下部走行体2)から離れた位置に配置される油圧アクチュエータに対応する。
ブーム12には、アームシリンダ28およびバケットシリンダ29を含む油圧アクチュエータ(ブーム12の折曲部15よりも車体から離れた位置の油圧アクチュエータ)に作動用の圧油(作動油)を供給するために、ブーム12の長さ方向に沿って固定油圧管路31,33,36,42が設けられている。具体的には、ブーム12には、一対のアームシリンダ用固定油圧管路31,33と、それぞれが作業具シリンダ用固定油圧管路としての一対のバケットシリンダ用固定油圧管路36,42とが、ブーム12の長さ方向に沿って設けられている。
一対のアームシリンダ用固定油圧管路31,33は、アームシリンダ28に圧油を給排するものである。具体的には、一方のアームシリンダ用固定油圧管路31は、アームシリンダ28のボトム側油室に圧油を給排するものである。他方のアームシリンダ用固定油圧管路33は、アームシリンダ28のロッド側油室に圧油を給排するものである。
アームシリンダ用固定油圧管路31,33は、例えば非可撓性の金属管からなり、ブーム12の基端部側で左寄りに配置され、中央寄りに折れ曲がった後に先端側に向けて延びている。ここで、一方のアームシリンダ用固定油圧管路31の先端は、アームシリンダ側可撓ホース32を介してアームシリンダ28のチューブのボトム側接続口に接続されている。他方のアームシリンダ用固定油圧管路33の先端は、アームシリンダ側可撓ホース34、チューブ管路35を介してアームシリンダ28のチューブのロッド側接続口に接続されている。
一対のバケットシリンダ用固定油圧管路36,42は、バケットシリンダ29に圧油を給排するものである。具体的には、一方のバケットシリンダ用固定油圧管路36は、バケットシリンダ29のボトム側油室に圧油を給排するものである。他方のバケットシリンダ用固定油圧管路42は、バケットシリンダ29のロッド側油室に圧油を給排するものである。バケットシリンダ用固定油圧管路36,42は、例えば非可撓性の金属管からなり、ブーム12の基端部側で右寄りに配置され、左,右方向に離間した後に先端側に向けて延びている。
ここで、一方のバケットシリンダ用固定油圧管路36の先端側は、バケットシリンダ側可撓ホース37、別のバケットシリンダ用固定油圧管路38、別のバケットシリンダ側可撓ホース39、アーム20に設けられたバケットシリンダ用固定油圧管路40、アーム20に設けられたバケットシリンダ側可撓ホース41を介して、バケットシリンダ29のチューブのボトム側接続口に接続されている。他方のバケットシリンダ用固定油圧管路42の先端側は、バケットシリンダ側可撓ホース43、別のバケットシリンダ用固定油圧管路44、別のバケットシリンダ側可撓ホース45、アーム20に設けられたバケットシリンダ用固定油圧管路46、アーム20に設けられたバケットシリンダ側可撓ホース47、チューブ管路48を介して、バケットシリンダ29のチューブのロッド側接続口に接続されている。
ところで、油圧ショベル1をトレーラ等に載置して道路上を移送する場合、油圧ショベル1は、その移送を行う国の法規で定められた高さ制限内に収める必要がある。即ち、油圧ショベル1は、移送するときに、トレーラ上でフロント装置11を輸送姿勢にする。具体的には、図1および図2に示すように、アーム20をブーム12の下側(下板12D側)に折畳みブーム12を前方に伸ばした輸送姿勢にする。このとき、フロント装置11の最も高くなる部位の高さ寸法H(トレーラに載せた状態での最も高くなる部位の地上高)は、法規で定められた高さ制限(輸送制限)内に収める必要がある。
一方、油圧ショベル1は、作業性の向上の観点から、掘削深さ、掘削範囲等の作業範囲が広い(長い)ことが望ましい。特に、フロント装置11が、ロングブーム(スーパーロングブーム)を備えたロングフロント(スーパーロングフロント)の場合、輸送高さを抑えることと作業範囲を確保することとを両立することが重要となる。
そこで、実施の形態では、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12のフート部取付部材13から折曲部15までの範囲ではブーム12の上板12Cの上方に配置し、ブーム12の折曲部15に対応する範囲ではブーム12の左,右の側板12A,12Bの側方に配置し、ブーム12の折曲部15からアーム取付部材14までの範囲ではブーム12の上板12Cの上方に配置する構成としている。より具体的には、図1および図2に示す輸送姿勢において、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲では、ブーム12の上板12Cの最大高さ位置よりも低い位置に収める構成としている。
このために、図7等に示すように、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15の基端側(車体側)でブーム12の上板12C側から左,右の側板12A,12Bの側方側まで延びる逃げ部31A,33A,36A,42Aと、ブーム12の折曲部15で逃げ部31A,33A,36A,42Aの先端からブーム12の左,右の側板12A,12Bに沿って前方に延びる横延び部31B,33B,36B,42Bと、ブーム12の折曲部15の先端側(車体から離れた側)で横延び部31B,33B,36B,42Bの先端からブーム12の上板12C側に戻る戻り部31C,33C,36C,42Cとを有している。
この場合、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲において、左,右の側板12A,12Bの側方に左,右方向に並列に配置されている。即ち、固定油圧管路31,33,36,42の横延び部31B,33B,36B,42Bは、左,右の側板12A,12Bの側方に左,右方向に並列に配置されている。そして、図1、図2,図4および図8に示すように、輸送姿勢において、横延び部31B,33B,36B,42Bの高さ寸法hを、ブーム12の上板12Cの最大高さ寸法Hよりも低くしている(H>h)。この場合、横延び部31B,33B,36B,42Bの高さ寸法hは、輸送のときの振動によってもブーム12の上板12Cの最大高さ寸法Hを超えないように設定することができる。
ここで、固定油圧管路31,33,36,42は、クランプ部材51,52を用いて固定されている。この場合、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15から外れた範囲では、第1のクランプ部材51を用いてブーム12の上板12Cにまとめて固定されている。一方、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲では、第2のクランプ部材52を用いてブーム12の左,右の側板12A,12Bにまとめて固定されている。即ち、固定油圧管路31,33,36,42の横延び部31B,33B,36B,42Bは、第2のクランプ部材52を用いて左,右の側板12A,12Bにまとめて固定されている。
図9に示すように、第2のクランプ部材52は、配管ねじ座52A、固定ボルト52B、支持部材52C、挟持部材52D、ボルト・ナット52Eにより構成されている。配管ねじ座52Aは、略角柱状に形成され、ブーム12の側板12A,12Bに、例えば溶接手段等を用いて固定されている。これにより、配管ねじ座52Aは、ブーム12の側板12A,12Bから横方向(左,右方向)に突出して設けられている。配管ねじ座52Aには、固定ボルト52Bが螺合する2個の雌ねじ穴(図示せず)が設けられている。
支持部材52Cは、L字状のブラケットとして形成され、固定ボルト52Bを用いて配管ねじ座52Aに固定されている。支持部材52Cは、配管ねじ座52Aに固定される固定部52C1と、該固定部52C1に対して約90°折り曲げられ挟持部材52Dと共に固定油圧管路31,36(33,42)の横延び部31B,36B(33B,42B)を挟持する管路受部52C2とを備えている。管路受部52C2には、ボルト・ナット52Eのボルトを挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。
挟持部材52Dは、支持部材52Cの管路受部52C2の上側で該管路受部52C2と対面して設けられている。挟持部材52Dは、管路受部52C2との間でボルト・ナット52Eを用いて固定油圧管路31,36(33,42)の横延び部31B,36B(33B,42B)を挟持するものである。挟持部材52Dには、固定油圧管路31,36(33,42)の外周面に沿って湾曲する管路受面52D1,52D2が左,右方向に並んで設けられている。また、挟持部材52Dには、ボルト・ナット52Eのボルトを挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。
ボルト・ナット52Eは、管路受部52C2と挟持部材52Dの挿通孔にボルトを挿通し、支持部材52Cの管路受部52C2と挟持部材52Dの管路受面52D1,52D2とで固定油圧管路31,36(33,42)を上,下方向に挟んだ状態でナットを螺合する。これにより、固定油圧管路31,36(33,42)の横延び部31B,36B(33B,42B)を、左,右の側板12A,12Bの側方で、第2のクランプ部材52により拘束することができる。
第1の実施の形態に適用される油圧ショベル1のフロント装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、オペレータは、キャブ5に搭乗し、各種の操作レバー・ペダル等のうち走行用の操作レバー・ペダルを操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、オペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、フロント装置11のブーム12、アーム20、バケット25を動作させ、例えば土砂の掘削作業を行うことができる。
一方、油圧ショベル1をトレーラ等に載置して道路上を移送(輸送)するときは、油圧ショベル1をトレーラ上に載置し、フロント装置11を輸送姿勢にする。即ち、図1および図2に示すように、アーム20をブーム12の下側(下板12D側)に折畳みブーム12を前方に伸ばすことにより、フロント装置11を輸送姿勢にする。このとき、ブーム12の折曲部15における上板12Cの最大高さ寸法Hが、輸送姿勢での油圧ショベル1の最大高さとなる。
かくして、第1の実施の形態では、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲(横延び部31B,33B,36B,42B)を、ブーム12の左,右の側板12A,12Bの側方に配置している。このため、固定油圧管路31,33,36,42のうち横延び部31B,33B,36B,42Bを、輸送姿勢での下側に低くすることができる。これにより、油圧ショベル1(フロント装置11)の輸送高さを抑えることができる。
一方、ブーム12の折曲部15は、輸送姿勢での上側に高くすることができ、その分、輸送姿勢でのブーム12とアーム20とのなす角度を大きくすることができる。ここで、この輸送姿勢の状態を、ブームシリンダ27の最伸長状態とすると、ブームシリンダ27を最縮小状態とした場合のブーム12とアーム20とのなす角度も大きくすることができ、その分、最大作業半径、掘削深さを大きくすることができる。
即ち、ブームシリンダ27の最伸長状態でのなす角度を大きくできることで、ブームシリンダ27のサイズを同じとしたまま(ブームシリンダ27のサイズに限界があっても)、作業範囲を大きくすることができる。さらに、ブーム12の折曲部15を高くできる分、ブーム12全体としての長さやアーム20全体としての長さも長くすることができ、この面からも、作業範囲を大きくすることができる。この結果、輸送高さを抑えることと作業範囲を確保することとを両立できる。
しかも、横延び部31B,33B,36B,42Bを左,右の側板12A,12Bの側方に配置することに伴って、横延び部31B,33B,36B,42Bをブーム12に固定するための配管ねじ座52Aは、左,右の側板12A,12Bに設けることができる。この場合は、配管ねじ座をブーム12の折曲部15で上板12Cに設ける構成と比較して、ブーム12の撓みに基づく配管ねじ座52Aの疲労や損傷、配管ねじ座52Aに螺合する固定ボルト52Bの緩みや脱落の可能性を低減することができる。
一方、固定油圧管路31,33,36,42は、ブーム12の折曲部15からアーム取付部材14までの範囲では、ブーム12の上板12Cの上方に配置している。このため、例えば、折曲部15からアーム取付部材14までの範囲についても左,右の側板12A,12Bの配置する構成と比較して、前照灯等の障害物を避ける必要がなくなり、固定油圧管路31,33,36,42の経路を簡素(単純)にできる。しかも、上板12Cの上方に配置することで、掘削等の作業中に固定油圧管路31,33,36,42が周囲の土砂等と干渉(接触)しにくくすることもできる。
第1の実施の形態では、輸送姿勢において、固定油圧管路31,33,36,42の横延び部31B,33B,36B,42Bを、ブーム12の上板12Cの最大高さ位置よりも低い位置に収める構成としている。即ち、高さ寸法hと高さ寸法Hとの関係を、H>hとしている。このため、ブーム12の上板12Cの最大高さ位置が、輸送姿勢での最大高さ位置となる。これにより、ブーム12の折曲部15の高さ寸法Hを法規で定められた輸送高さの上限まで高くすることができ、その分、フロント装置11の最大作業半径、掘削深さを大きくすることができる。この結果、輸送高さを抑えることと作業範囲を確保することとをより高い次元で両立できる。
第1の実施の形態では、フロント装置11をロングフロント(スーパーロングフロント)、即ち、ブーム12をロングブーム(スーパーロングブーム)とすることにより、標準のフロント(ブーム)よりも深い掘削性能を得られるようにしている。より具体的には、図5に示すように、ブーム12の長さ寸法L1と長さ寸法L2とを、上述の数1式(より好ましくは、上述の数2式)の関係に設定している。このため、スーパーロングフロントが装備された油圧ショベル1の輸送高さを法規で定められた高さ制限内に収めつつ、スーパーロングフロントとして要求される作業範囲のさらなる拡大を図ることができる。
第1の実施の形態では、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42とを、ブーム12の折曲部15に対応する範囲において、ブーム12の左,右の側板12A,12Bの側方に左,右方向に並列に配置する構成としている。この場合は、ブーム12の折曲部15に沿って屈曲する両固定油圧管路31,33,36,42(横延び部31B,33B,36B,42B)の曲率半径を両者で同じにできる。このため、ブーム12の撓みに基づいて配管ねじ座52Aの固定ボルト52Bに加わる負荷を軸力のみにすることができる。
即ち、両固定油圧管路(横延び部)を上,下方向に並列に配置することも考えられるが、この場合は、それぞれの固定油圧管路(横延び部)の曲率半径が異なることになる。また、ブーム12の折曲部15を曲げる方向の力が加わると、下側に配置された固定油圧管路(横延び部)に上側よりも大きな曲げ応力が加わり、固定ボルトに剪断力が加わるおそれがある。
これに対し、第1の実施の形態では、両固定油圧管路31,33,36,42(横延び部31B,33B,36B,42B)を横方向に並列に配置しているため、両者に同じ曲げ応力が加わるようにでき、強度的に有利に構成することができる。しかも、両固定油圧管路31,33,36,42(横延び部31B,33B,36B,42B)の曲げを最小限にすることもでき、配管コストの抑制を図ることができる。
さらに、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42とが横並びになるため、見映えを向上できることに加えて、両固定油圧管路31,33,36,42をまとめてブーム12に組み付けることもでき、組付作業の容易化、工数低減、組付作業性の向上を図ることができる。また、横並びとなったアームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42との下側(または上側)に空きスペースを確保することができ、該スペースに追加の油圧管路を配置し易くできる。
なお、図4に示すように、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42とを横並びに配置する場合は、これら両固定油圧管路31,33,36,42の左,右方向の最も外側となる部位Cが、ブームシリンダ27のロッドとシリンダ取付ボス18との結合部の左,右方向の最も外側となる部位Dよりも内側に位置するように構成する。これにより、掘削等の作業中に固定油圧管路31,33,36,42が周囲の土砂等と干渉(接触)することを抑制することができる。
第1の実施の形態では、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42は、第1,第2のクランプ部材51,52を用いてブーム12にまとめて固定する構成としている。より具体的には、両固定油圧管路31,33,36,42のうちブーム12の折曲部15に対応する範囲となる横延び部31B,33B,36B,42B)は、第2のクランプ部材52を用いてブーム12の左,右の側板12A,12Bにまとめて固定する構成としている。このため、部品点数の低減を図ることができ、安価に構成することができる。
第1の実施の形態では、アーム20の寸法Aとブーム12の寸法Bとの関係を、上述の数3式の関係(A≦B)に設定している。この場合は、アーム20を短くできる分、輸送姿勢での最大高さHを低くすることができる。これに加えて、油圧ショベル1の手前側でのバケット25の位置を高くすることができ、ダンプトラック等の運搬車両に対する積み込み性を向上することができる。
次に、図10および図11は、本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、固定油圧管路として、アームシリンダ用固定油圧管路と作業具シリンダ用固定油圧管路とに加え、追加固定油圧管路を備える構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態では、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42とに加え、アームシリンダ28およびバケットシリンダ29とは異なる他の油圧アクチュエータに圧油を供給する追加固定油圧管路61を備えている。この追加固定油圧管路61を通じて圧油が供給される油圧アクチュエータとしては、作業具(例えば、バケット25)の着脱を行うためのクイックヒッチ用の油圧アクチュエータ、作業具として草刈り機を取付けた場合に草刈り機をチルト(旋回)するための油圧アクチュエータ等が挙げられる。
ここで、追加固定油圧管路61は、ブーム12の長さ方向全体にわたって、ブーム12の左,右の側板12A,12Bの側方に配置されている。この場合、追加固定油圧管路61は、少なくともブーム12の折曲部15に対応する範囲において、アームシリンダ用固定油圧管路31,33およびバケットシリンダ用固定油圧管路36,42と上,下方向に並列に配置されている。具体的には、追加固定油圧管路61は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲において、アームシリンダ用固定油圧管路31,33およびバケットシリンダ用固定油圧管路36,42の下側に配置されている。
なお、第2の実施の形態では、図11に示すように、追加固定油圧管路61を左,右の片側でそれぞれ1本ずつ設ける構成としているが、例えば、左,右の片側で2本以上(複数本)設ける構成としてもよい。この場合は、複数の追加固定油圧管路をアームシリンダ用固定油圧管路31,33およびバケットシリンダ用固定油圧管路36,42の下側で左,右方向に並列に配置する。
アームシリンダ用固定油圧管路31,33、バケットシリンダ用固定油圧管路36,42および追加固定油圧管路61は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲において、第2のクランプ部材62を用いてブーム12の左,右の側板12A,12Bにまとめて固定されている。第2のクランプ部材62は、配管ねじ座62A、固定ボルト62B、支持部材62C(固定部62C1、管路受部62C2)、挟持部材62D(管路受面62D1,62D2)、追加挟持部材62E、ボルト・ナット62Fにより構成されている。第2のクランプ部材62の配管ねじ座62A、固定ボルト62B、支持部材62C、挟持部材62Dは、第1の実施の形態による第2のクランプ部材52の配管ねじ座52A、固定ボルト52B、支持部材52C、挟持部材52Dと同じものである。
追加挟持部材62Eは、支持部材62Cの管路受部62C2の下側で該管路受部62C2と対面して設けられている。追加挟持部材62Eは、管路受部62C2との間でボルト・ナット62Fを用いて追加固定油圧管路61を挟持するものである。追加挟持部材62Eには、追加固定油圧管路61の外周面に沿って湾曲する管路受面62E1と、ボルト・ナット62Fのボルトを挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。
ボルト・ナット62Fは、管路受部62C2と挟持部材62Dと追加挟持部材62Eの挿通孔にボルトを挿通し、支持部材62Cと挟持部材62Dとで固定油圧管路31,36(33,42)を上,下方向に挟み、かつ、支持部材62Cと追加挟持部材62Eとの間で追加固定油圧管路61を上,下方向に挟んだ状態でナットを螺合する。これにより、アームシリンダ用固定油圧管路31,33、バケットシリンダ用固定油圧管路36,42および追加固定油圧管路61を、左,右の側板12A,12Bの側方で、第2のクランプ部材62によりまとめて拘束することができる。
第2の実施の形態は、上述のように第2のクランプ部材62を用いて各固定油圧管路31,33,36,42,61を左,右の側板12A,12Bの側方で支持するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第2の実施の形態によれば、追加固定油圧管路61は、ブーム12の折曲部15に対応する範囲において、アームシリンダ用固定油圧管路31,33およびバケットシリンダ用固定油圧管路36,42と上,下方向に並列に配置されている。このため、追加固定油圧管路61の固定を容易に行うことができる。
即ち、追加固定油圧管路61を、アームシリンダ用固定油圧管路31,33およびバケットシリンダ用固定油圧管路36,42と共に、左,右の側板12A,12Bの側方でまとめて固定することができる。これにより、各固定油圧管路31,33,36,42,61をまとめてブーム12に組み付けることができ、組付作業の容易化、工数低減、組付作業性の向上を図ることができる。
なお、第1の実施の形態では、フロント装置11の作業具をバケット25とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、フロント装置の作業具として、グラップル等のバケット25以外の作業具を用いる構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、固定油圧管路を、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42との2種の固定油圧管路により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定油圧管路を、1種の固定油圧管路、または、3種以上の複数種の固定油圧管路により構成してもよい。この場合、1種または複数種の固定油圧管路は、ブームの折曲部に対応する範囲で左,右の側板の側方に配置する。さらに、複数種の固定油圧管路の場合は、これら各固定油圧管路を左,右の側板の側方で左,右方向に並列に配置することができる。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、固定油圧管路により圧油が供給される油圧アクチュエータとして、アームシリンダ28とバケットシリンダ29の場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧アクチュエータは、アームシリンダ、作業具シリンダ以外の油圧アクチュエータ、即ち、フロント装置を最も伸ばした状態でブームの折曲部よりも車体から離れた位置に配置される油圧アクチュエータであれば、各種の油圧アクチュエータを採用することができる。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、アームシリンダ用固定油圧管路31,33とバケットシリンダ用固定油圧管路36,42とを、ブーム12の折曲部15に対応する範囲では、ブーム12の左,右の側板12A,12Bで支持(固定)する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定油圧管路は、ブームの折曲部に対応する範囲で、左,右の側板以外、例えば上板や下板に支持(固定)する構成としてもよい。即ち、固定油圧管路は、ブームの折曲部に対応する範囲で左,右の側板の側方に配置できるのであれば、ブームの外面のどの部位に支持(固定)されてもよいものである。
第1の実施の形態では、ブーム12の折曲部15の範囲では、ブーム12の上板12Cの上方になにも配置しない構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、法規で定められた高さ制限内に収めることができるのであれば、摺動部に給脂を行うための給脂用管路等の固定管路を、ブーム12の折曲部15を含むブーム12の長さ方向全体にわたって上板12Cの上方に配置する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、ブーム12の左,右の側板12A,12Bの上,下方向の両端を、上板12Cの下面と下板12Dの上面とに溶接接合した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、上板と下板の左,右方向の両端を、左,右の側板に溶接接合する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、フロント装置11として、ブーム12およびアーム20が標準仕様に比べて長いロングフロント(スーパーロングフロント)とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、フロント装置として、標準仕様のブームとアームとを備えた標準仕様のフロントとしてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、ホイール式の油圧ショベルに適用してもよく、フロント装置を備えた各種の建設機械に広く適用することができる。さらに、各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。