JP2016088851A - タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】タウ蛋白質の過剰リン酸化による凝集や線維化を阻害することにより、アルツハイマー病等のタウオパチーの予防または改善に有用な、タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物を提供すること。
【解決手段】ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有するタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有するタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物に関するものであり、詳細には、生薬を含有するタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物に関するものである。
認知症は、老化に伴う記憶力や精神機能の低下といった現象ではなく、脳の器質的障害により、病的に知能が低下した状態を指す。日本国内では、65歳以上の高齢者の1割程度が認知症とされ、85歳以上の高齢者では発症率が上昇することから、急速な高齢化社会を迎える我が国の重要な課題となっている。認知症を引き起こす原因としては、脳血管性認知症およびアルツハイマー型認知症が挙げられる。
アルツハイマー病は、初老期から老年期にかけて発症する進行性の認知症状を主とする神経変性疾患である。その病理的特長は、アミロイドβから蛋白質からなる老人斑と異常リン酸化タウ(tau)蛋白質を主要構成成分とするpaired helical filaments(PHF)の蓄積状態である神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT)の出現である。神経原線維変化は認知症の程度とよく相関し、その本体である異常リン酸化タウ蛋白質の蓄積は神経細胞の変性および神経細胞死と密接な関係があることが知られている。
タウ蛋白質は正常脳内では細胞内の微小管に結合した状態で存在する可溶性のリン酸化蛋白質で、微小管の重合促進と安定化に寄与し、微小管との結合および乖離を繰り返しながら平衡状態を保っている。この平衡状態がリン酸化・脱リン酸化酵素異常などにより崩れると、細胞質中の遊離タウ蛋白質が増加し、凝集や線維化がみられるようになる。アルツハイマー病や前頭側頭型認知症をはじめとする高齢者の認知症の大多数において、アミロイドの蓄積を必ずしも伴わず、タウ蛋白質凝集体の蓄積が特徴的病変として認められる神経変性疾患については、タウオパチーと総称されている。わが国では、2012年より脳脊髄液中のリン酸化タウ蛋白質の測定が認知症診断に応用され、保険適用となっている。
現在、抗認知症薬としては、脳内のアセチルコリンの活性を改善するコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプト)、NMDA阻害薬であるメマンチン塩酸塩(商品名:メマリー)などが開発されているが、効果としては一定期間進行を遅らせることができる程度である。原因となるタウ蛋白質の凝集や線維化を阻害すれば認知症の発症を予防できることは容易に予想されるが、現在のところタウ蛋白質の凝集や線維化を阻害する薬剤は開発されていない。
本発明は、タウ蛋白質の過剰リン酸化による凝集や線維化を阻害することにより、アルツハイマー病等のタウオパチーの予防または改善に有用な、タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することを特徴とするタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物。
[2]牛車腎気丸、八味丸または六味丸を含有することを特徴とする前記[1]に記載の組成物。
[3]前記[1]または[2]に記載の組成物を含有することを特徴とするタウオパチーの予防および/または治療用医薬。
[4]糖質制限食の摂取期間中に投与されるように用いられることを特徴とする前記[3]に記載の医薬。
[5]タウオパチーがアルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症またはダウン症候群である前記[3]または[4]に記載の医薬。
[6]前記[1]または[2]に記載の組成物を含有し、認知症の予防および/または改善作用を有することを特徴とする飲食品。
[7]前記[1]または[2]に記載の組成物を含有し、認知症の予防および/または改善作用を有することを特徴とするサプリメント。
[1]ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することを特徴とするタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物。
[2]牛車腎気丸、八味丸または六味丸を含有することを特徴とする前記[1]に記載の組成物。
[3]前記[1]または[2]に記載の組成物を含有することを特徴とするタウオパチーの予防および/または治療用医薬。
[4]糖質制限食の摂取期間中に投与されるように用いられることを特徴とする前記[3]に記載の医薬。
[5]タウオパチーがアルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症またはダウン症候群である前記[3]または[4]に記載の医薬。
[6]前記[1]または[2]に記載の組成物を含有し、認知症の予防および/または改善作用を有することを特徴とする飲食品。
[7]前記[1]または[2]に記載の組成物を含有し、認知症の予防および/または改善作用を有することを特徴とするサプリメント。
本発明により、タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物を提供することができる。本発明の組成物は、タウ蛋白質の過剰リン酸化による凝集や線維化を阻害することができるので、アルツハイマー病等のタウオパチーの予防および/または治療用の医薬として非常に有用である。また、認知症の予防および/または改善用の飲食品、サプリメント等として非常に有用である。
漢方では、生長・発育・生殖をつかさどる生命エネルギーを腎気と呼び、腎気が加齢によって減少した状態を腎虚と呼ぶ。腎虚になると、関節痛、下肢のしびれ、耳鳴り、夜間の頻尿などのいわゆる老化の症状を示す。腎虚の諸症状を改善する漢方薬は補腎剤と呼ばれ、牛車腎気丸、八味丸(八味地黄丸、八味腎気丸とも称される)、六味丸(六味地黄丸とも称される)などが知られている。
牛車腎気丸は、疲れやすい、四肢が冷えやすい、尿量減少または多尿、口渇等の症状を伴う下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ等に効果がある。八味丸は、疲労・倦怠感、尿量減少または多尿、口渇、手足に交互に冷感と熱感がある等の症状を伴う腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧等に効果がある。六味丸は、疲れやすい、尿量減少または多尿、口渇等の症状を伴う排尿困難、頻尿、むくみ、かゆみ等に効果がある。しかし、これらの補腎剤が老化による認知機能の低下に対してどのような効果を奏するかについては知られていない。本発明者は、補腎剤と呼ばれる漢方薬が海馬におけるリン酸化タウ蛋白質の蓄積を減弱することを見出し、本発明を完成した。
本発明は、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有するタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物を提供する。本発明の組成物は、牛車腎気丸、八味丸または六味丸を含有するものであってもよい。また、本発明の組成物は、ジオウの含有成分、サンシュユの含有成分、サンヤクの含有成分、タクシャの含有成分、ブクリョウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分を含有するものであってもよい。
ジオウ(地黄)はゴマノハグサ科ジオウ属植物の根茎である。ジオウの含有成分としては、カタルポール等のイリドイド配糖体、マンニノトリオース、ラフィノース、スタキオース等の糖類、マンニトール等の糖アルコール、アルギニン等のアミノ酸、リン酸類などが挙げられる。
サンシュユ(山茱萸)は、ミズキ科サンシュユの種子を除いた果実を乾燥したものである。サンシュユの含有成分としては、モロニサイド、ロガニン、スウェロサイド等のイリドイド配糖体、没食子酸、リンゴ酸などが挙げられる。
サンヤク(山薬)は、ヤマノイモ科ヤマノイモの皮を薄く剥いて乾燥したものである。サンヤクの含有成分としては、デンプン、糖蛋白質、アミノ酸、コリン、アラントイン、ジアスターゼ、カタラーゼ、ムチンなどが挙げられる。
タクシャ(沢瀉)はオモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したものである。タクシャの含有成分としては、四環性トリテルペノイドのアリソールA、B、C、それらのアセチル化合物などが挙げられる。
サンシュユ(山茱萸)は、ミズキ科サンシュユの種子を除いた果実を乾燥したものである。サンシュユの含有成分としては、モロニサイド、ロガニン、スウェロサイド等のイリドイド配糖体、没食子酸、リンゴ酸などが挙げられる。
サンヤク(山薬)は、ヤマノイモ科ヤマノイモの皮を薄く剥いて乾燥したものである。サンヤクの含有成分としては、デンプン、糖蛋白質、アミノ酸、コリン、アラントイン、ジアスターゼ、カタラーゼ、ムチンなどが挙げられる。
タクシャ(沢瀉)はオモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したものである。タクシャの含有成分としては、四環性トリテルペノイドのアリソールA、B、C、それらのアセチル化合物などが挙げられる。
ブクリョウ(茯苓)は、サルノコシカケ科のマツホド菌の菌核を乾燥し外皮を除いたものである。ブクリョウの含有成分としては、パキマン等の多糖類、パキマ酸、エブリコ酸、デハイドロエブリコ酸、ツムロース酸等の四環性トリテルペンカルボン酸、エルゴステロールなどが挙げられる。
ボタンピ(牡丹皮)は、ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したものである。ボタンピの含有成分としては、ペオニフロリン、ペオノール、ペオノサイド、ペオノライド、安息香酸、ベンゾイルオキシペオニフロリン、カンペステロールなどが挙げられる。
ケイヒ(桂皮)は、クスノキ科、ニッケイの樹皮、または周皮の一部を除いたものである。ケイヒの含有成分としては、精油、ケイヒアルデヒド、ジテルペノイド、カテキン類、タンニンなどが挙げられる。
ボタンピ(牡丹皮)は、ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したものである。ボタンピの含有成分としては、ペオニフロリン、ペオノール、ペオノサイド、ペオノライド、安息香酸、ベンゾイルオキシペオニフロリン、カンペステロールなどが挙げられる。
ケイヒ(桂皮)は、クスノキ科、ニッケイの樹皮、または周皮の一部を除いたものである。ケイヒの含有成分としては、精油、ケイヒアルデヒド、ジテルペノイド、カテキン類、タンニンなどが挙げられる。
ブシ(附子)は、キンポウゲ科トリカブトの塊根を減毒加工したものである。ブシの含有成分としては、強毒性のブシジエステルアルカロイドとしてアコニチン、ジェサコニチン、ヒバコニチン、メサコニチン、低毒性のアチシン系としてアチシン、コブシン、イグナビン、ソンゴリン、強心成分としてハイゲナミン、コリネインなどが挙げられる。
ゴシツ(牛膝)は、ヒユ科ヒナタイノコズチまたはトウイノコズチの根である。ゴシツの含有成分としては、オレアノン酸、エクジソン、イノコステロンなどが挙げられる。
シャゼンシ(車前子)は、オオバコ科オオバコの種子である。シャゼンシの含有成分としてはイリドイド、粘液性多糖であるプランタサン、プランタゴームシラーゲA、フラバノン配糖体であるプランタゴシドなどが挙げられる。
ゴシツ(牛膝)は、ヒユ科ヒナタイノコズチまたはトウイノコズチの根である。ゴシツの含有成分としては、オレアノン酸、エクジソン、イノコステロンなどが挙げられる。
シャゼンシ(車前子)は、オオバコ科オオバコの種子である。シャゼンシの含有成分としてはイリドイド、粘液性多糖であるプランタサン、プランタゴームシラーゲA、フラバノン配糖体であるプランタゴシドなどが挙げられる。
生薬は生薬の粉砕物または生薬の抽出エキスであることが好ましい。生薬の抽出エキスは、例えば原料生薬を単独または混合し、生薬の合計質量に対して約5〜約25倍量の水を加えて、通常約80〜約100℃で約30分間〜約2時間加熱してエキスを煎出し、濾過等を行って固形成分を除去することにより製造することができる。得られた抽出エキスを、例えばスプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等により乾燥し、乾燥エキス粉末としてもよい。
牛車腎気丸は、例えば質量比でジオウ5.0、サンシュユ3.0、サンヤク3.0、タクシャ3.0、ブクリョウ3.0、ボタンピ3.0、ケイヒ(桂皮)1.0、ブシ(附子)1.0、ゴシツ(牛膝)3.0、シャゼンシ(車前子)3.0からなる混合生薬から得られる濃縮エキスまたは乾燥エキス粉末が挙げられる。牛車腎気丸は、市販の漢方製剤(例えば、株式会社ツムラの「ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒(医療用)」など)を好適に用いることができる。
八味丸は、例えば質量比でジオウ6.0、サンシュユ3.0、サンヤク3.0、タクシャ3.0、ブクリョウ3.0、ボタンピ2.5、ケイヒ1.0、ブシ0.5からなる混合生薬から得られる濃縮エキスまたは乾燥エキス粉末が挙げられる。八味丸は、市販の漢方製剤(例えば、株式会社ツムラの「ツムラ八味地黄丸エキス顆粒(医療用)」など)を好適に用いることができる。
六味丸は、例えば質量比でジオウ5.0、サンシュユ3.0、サンヤク3.0、タクシャ3.0、ブクリョウ3.0、ボタンピ3.0からなる混合生薬から得られる濃縮エキスまたは乾燥エキス粉末が挙げられる。六味丸は、市販の漢方製剤(例えば、株式会社ツムラの「ツムラ六味丸エキス顆粒(医療用)」など)を好適に用いることができる。
本発明の組成物は、経口摂取によりタウ蛋白質のリン酸化を抑制することができるので、タウ蛋白質のリン酸化が関与する疾患の予防、改善および/または治療の用途に非常に有用である。本発明の組成物は、医薬、飲食品、サプリメント、食品添加物、飼料、飼料添加物等の形態で実施することができる。本発明の組成物に含有される生薬またはその含有成分は、漢方薬として広く使用されているので、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して、安全に長期間摂取させることができる。
タウ蛋白質は分子量45〜55kDaの微小管付随タンパク質(microtubule associated proteins;MAPs)の一つであり、チュブリンが重合して微小管を構成する際の促進因子として機能するものである。タウ蛋白質には選択的スプライシングによる6つのアイソフォーム(スプライシングバリアント)が存在する。また、エクソン10のスプライシングの違いにより、微小管結合部位の繰り返し配列が3つある3リピートタウと、4つある4リピートタウとに大別される。タウ蛋白質は主に神経細胞に発現して神経軸索に局在するが、病的な状態においてはグリア細胞においても発現することが知られている。神経原線維変化(NFT)の主要構成成分は、異常にリン酸化されたタウ蛋白質であることが知られている。タウ蛋白質には多くのリン酸化部位が存在しているが、正常脳のタウ蛋白質1分子には平均して約2〜3個のリン酸基が含まれているのに比べて、アルツハイマー病の脳のタウ蛋白質中には約5〜9個のリン酸基が含まれていることが報告されている。
タウ蛋白質のリン酸化が関与する疾患としては、例えばタウオパチーが挙げられる。タウオパチーは、タウ蛋白質が過剰なリン酸化を受けて不溶性となり細胞内に異常蓄積したことが重要な発症機序と考えられる疾患の総称である。タウオパチーとしては、例えば、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症、ダウン症候群、FTDP−17(第17番染色体に関連したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症)、嗜銀顆粒性認知症、神経原線維変化優位型認知症、亜急性硬化性全脳炎などが挙げられる。
本発明は、上記本発明の組成物を含有する医薬を提供する。本発明の医薬は、タウオパチーの予防および/または治療用の医薬として好適である。なかでも、アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)、ピック病(Pick病)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy; PSP)、大脳皮質変性症(corticobasal degeneration; CBD)、ダウン症候群(Down syndrome)等の予防および/または治療用の医薬として実施することが好ましい。本発明の医薬は、上記本発明の組成物に、薬学的に許容される担体、さらに添加剤を適宜配合して製剤化することができる。具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤;注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられる。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は通常の製剤手順(例えば有効成分を注射用水、天然植物油等の溶媒に溶解または懸濁させる等)に従って調製することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。
本発明の医薬は、糖質制限食と組み合わせることにより、より効果的にタウオパチーを予防および/または治療することができる。したがって、本発明は、上記本発明の組成物を含有し、糖質制限食の摂取期間中に投与されるように用いられることを特徴とするタウオパチーの予防および/または治療用医薬を提供する。糖質制限食は、糖質の摂取量を減らした食事を意味し、主として食後高血糖を防止する目的で、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム等の食事療法として用いられている。本発明の医薬と組み合わせる糖質制限食は、摂取カロリーは減らさずに糖質摂取量を減らした糖質制限食であることが好ましい。「糖質制限食の摂取期間中に投与されるように用いられる」とは、本発明の医薬の投与期間の一部または全部が糖質制限食の摂取期間と重なっていることを意味する。それゆえ、本発明の医薬の投与を開始した後に糖質制限食の摂取を開始してもよく、糖質制限食の摂取を開始した後に本発明の医薬の投与を開始してもよく、本発明の医薬の投与と糖質制限食の摂取を同時に開始してもよい。また、本発明の医薬の投与を終了する前に糖質制限食の摂取を終了してもよく、糖質制限食の摂取を終了する前に本発明の医薬の投与を終了してもよく、本発明の医薬の投与と糖質制限食の摂取を同時に終了してもよい。好ましくは、本発明の医薬の投与期間の全部が糖質制限食の摂取期間と重なるように使用することである。
本発明は、上記本発明の組成物を含有する飲食品を提供する。本発明の飲食品は、認知症の予防および/または改善用の飲食品として好適である。飲食品には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等が含まれる。飲食品の形態は特に限定されない。例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子およびパン類、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の冷菓などを挙げることができる。
本発明は、上記本発明の組成物を含有するサプリメントを提供する。本発明のサプリメントは、認知症の予防および/または改善用のサプリメントとして好適である。サプリメントは、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤等の形態で提供することができる。
さらに本発明は、上記本発明の組成物を含有する食品添加物、飼料、飼料添加物等としても好適に実施することができる。
さらに本発明は、上記本発明の組成物を含有する食品添加物、飼料、飼料添加物等としても好適に実施することができる。
本発明には、以下の各発明が含まれる。
哺乳動物に対してジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬の有効量を投与することを特徴とするタウオパチーの予防および/または治療方法。
タウオパチーの予防および/または治療用医薬を製造するための、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬の使用。
タウオパチーの予防および/または治療に使用するための、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬。
哺乳動物に対してジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬の有効量を投与することを特徴とするタウオパチーの予防および/または治療方法。
タウオパチーの予防および/または治療用医薬を製造するための、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬の使用。
タウオパチーの予防および/または治療に使用するための、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:認知機能低下に対する牛車腎気丸の効果〕
(1)使用動物
老化促進モデルマウスであるSAMP8(7週齢、雄)および正常老化マウスであるSAMR(7週齢、雄)を日本エスエルシーから入手し、1週間の馴化後に試験に供した。動物は12時間明暗周期を持つ特定の病原体フリーの条件下で飼育した。
(1)使用動物
老化促進モデルマウスであるSAMP8(7週齢、雄)および正常老化マウスであるSAMR(7週齢、雄)を日本エスエルシーから入手し、1週間の馴化後に試験に供した。動物は12時間明暗周期を持つ特定の病原体フリーの条件下で飼育した。
(2)実験方法
(2-1)群構成およびスケジュール
実験プロトコールと飼育条件は大阪大学動物実験委員会によって承認され、「実験動物の管理と使用のための国立衛生研究所・ガイド」に従って、実験を実施した。
SAMP8およびSAMRを、それぞれ普通食(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)のみを与える群(普通食群、n=5)、普通食に4質量%の牛車腎気丸(ツムラ牛車腎気丸;株式会社ツムラ)を加えた混合食を与える群(普通食+牛車腎気丸群、n=5)、カロリーは同じで糖質を8%に低減した低炭水化物食(CR)のみを与える群(CR群、n=5)および低炭水化物食に4質量%の牛車腎気丸を加えた混合食を与える群(CR+牛車腎気丸群、n=5)の4群に分け、38週齢まで各群に対応する飼料を給餌し、水道水を自由に摂取させた。給餌期間中2週間に1回、全てのマウスについて全身状態を観察した。体重測定は試験開始時(8週齢)から1週間毎に、血糖測定は試験開始時(8週齢)および9週齢から2週間毎に行った。36週齢時に行動学試験のために株式会社行医研行動科学部門に移動させ、順次行動学試験を行った。行動学試験終了後、38週齢時に大阪大学に移送した。
(2-1)群構成およびスケジュール
実験プロトコールと飼育条件は大阪大学動物実験委員会によって承認され、「実験動物の管理と使用のための国立衛生研究所・ガイド」に従って、実験を実施した。
SAMP8およびSAMRを、それぞれ普通食(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)のみを与える群(普通食群、n=5)、普通食に4質量%の牛車腎気丸(ツムラ牛車腎気丸;株式会社ツムラ)を加えた混合食を与える群(普通食+牛車腎気丸群、n=5)、カロリーは同じで糖質を8%に低減した低炭水化物食(CR)のみを与える群(CR群、n=5)および低炭水化物食に4質量%の牛車腎気丸を加えた混合食を与える群(CR+牛車腎気丸群、n=5)の4群に分け、38週齢まで各群に対応する飼料を給餌し、水道水を自由に摂取させた。給餌期間中2週間に1回、全てのマウスについて全身状態を観察した。体重測定は試験開始時(8週齢)から1週間毎に、血糖測定は試験開始時(8週齢)および9週齢から2週間毎に行った。36週齢時に行動学試験のために株式会社行医研行動科学部門に移動させ、順次行動学試験を行った。行動学試験終了後、38週齢時に大阪大学に移送した。
(2-2)マウスの行動学試験
行動学試験は、毎日明期の同じ時間帯に実施した。行動学試験期間中も各群に対応する飼料を給餌し、水道水を自由に摂取させた。
(a)受動的回避学習
タイヨー電機株式会社製のマウス用回避学習実験装置を用いた。実験箱(縦30cm×横15cm×高さ20cm)は、側面部と天井部が厚さ5mmのアクリル板製で、床部は直径3mmの鉄棒が10mm間隔(芯−芯間隔)で並列された通電可能なグリッド状であった。実験箱内をアクリル板製のギロチンドアによって区分けし、暗室(縦10cm×横10cm×高さ20cm)と明室(縦10cm×横10cm×高さ20cm)を構成した。暗室は側面壁と天井部が黒色、明室は側面壁が白色で天井部が透明であった。明室の天井部には白色LEDが取り付けられており、その照度は明室の床面中央で約340ルクスであった。暗室内の側面部床上15mm、ギロチンドアから50mmの位置には、被験マウスの反応検出用の赤外線ビームが設置されていた。
行動学試験は、毎日明期の同じ時間帯に実施した。行動学試験期間中も各群に対応する飼料を給餌し、水道水を自由に摂取させた。
(a)受動的回避学習
タイヨー電機株式会社製のマウス用回避学習実験装置を用いた。実験箱(縦30cm×横15cm×高さ20cm)は、側面部と天井部が厚さ5mmのアクリル板製で、床部は直径3mmの鉄棒が10mm間隔(芯−芯間隔)で並列された通電可能なグリッド状であった。実験箱内をアクリル板製のギロチンドアによって区分けし、暗室(縦10cm×横10cm×高さ20cm)と明室(縦10cm×横10cm×高さ20cm)を構成した。暗室は側面壁と天井部が黒色、明室は側面壁が白色で天井部が透明であった。明室の天井部には白色LEDが取り付けられており、その照度は明室の床面中央で約340ルクスであった。暗室内の側面部床上15mm、ギロチンドアから50mmの位置には、被験マウスの反応検出用の赤外線ビームが設置されていた。
「条件づけ(Day1)」:被験マウスを明室の中へ入れ、10秒間放置した後にギロチンドアを開け、被験マウスが暗室へ移動するまでの潜時を測定した。移動から10秒後にグリッド床から電撃(140V、5秒)を1回提示して条件づけを行った。被験マウスは、電撃提示終了から10秒間暗室内に放置し、実験装置から取り出した。
「保持テスト(Day2)」:条件づけの24時間後に保持テスト(受動的回避テスト)を1試行実施した。条件づけ試行と同様に、被験マウスを明室へ入れて10秒間放置した後にギロチンドアを開き、暗室へ移動するまでの潜時を測定した。被験マウスが暗室へ移動しても電撃は提示しなかった。被験マウスが移動しなかった場合は180秒で試行を打ち切り、反応潜時は180秒として記録した。
(b)水迷路学習
高さ30cmの設置台上に水平に固定された内径95cm、高さ35cmの背の低い円筒型プールを用いた。プラットフォームは、直径10cm、厚さ1cmの円盤に台座を取り付けたもので、高さは21cmであった。プラットフォームの設置位置は、円形の水面を均等に4分割した扇形の仮想の4分象限内いずれかの中央部とし、被験マウス毎に定めた。プラットフォームの縁とプールの内壁との最短距離は15cmとした。水位はプラットフォームの表面上約5mmとした。水は毒性のない水溶性のインクを加えて黒濁させた。水温は24±1℃に維持した。
高さ30cmの設置台上に水平に固定された内径95cm、高さ35cmの背の低い円筒型プールを用いた。プラットフォームは、直径10cm、厚さ1cmの円盤に台座を取り付けたもので、高さは21cmであった。プラットフォームの設置位置は、円形の水面を均等に4分割した扇形の仮想の4分象限内いずれかの中央部とし、被験マウス毎に定めた。プラットフォームの縁とプールの内壁との最短距離は15cmとした。水位はプラットフォームの表面上約5mmとした。水は毒性のない水溶性のインクを加えて黒濁させた。水温は24±1℃に維持した。
全被験マウスに対し、1日5試行の獲得訓練を5日間連続で与えた。各試行では、被験マウスを、プラットフォームが設置されていない仮想の4分象限いずれかの壁際から、ランダムな順序で、頭を壁面に向けてプールへ投入して水泳させ、プラットフォームに両前肢が接触するまでの時間を逃避潜時として計測した。被験マウスがプラットフォームに載ると、10秒間そこに留めた。プールへ投入後60秒以内に被験マウスがプラットフォームに到達しない場合は、実験者が被験マウスをプラットフォームの上へ誘導し、そこに10秒間留めた。この場合、逃避潜時は60秒として記録した。試行間隔は30秒とした。
(2-3)サンプル採取
38週齢時にマウスを安楽死させ、海馬を摘出した。直ちに液体窒素で凍結させ、その後−80℃で保存した。保存した海馬を組織標本作製に供した。
38週齢時にマウスを安楽死させ、海馬を摘出した。直ちに液体窒素で凍結させ、その後−80℃で保存した。保存した海馬を組織標本作製に供した。
(2-4)組織標本
1) 定法に従いパラフィン切片を作製し、脱パラフィン(10分3回)→脱キシレン(5分3回)→流水洗浄5分を行った。
2) クエン酸バッファー(pH7.0、三菱化学RM102-1T)500ml中に切片を入れた状態で、550W20分加熱処理を加え(電子レンジ)抗原賦活処理を行い、室温になるまで放置した。
3) 室温で30分間ブロッキング(ニチレイヒストファインウサギ血清)を行った後、抗ヒトリン酸化タウ抗体(Thermo MN1020, Anti-Human PHF-Tau monoclonal Ab 5μg/ml)を滴下し、4℃で一夜反応させた。
4) 1×TBSで10分間3回洗浄した後、二次抗体(ニチレイヒストファイン抗マウス抗体)を滴下して室温で30分間反応させた。
5) 1×TBSで10分間3回洗浄した後、ペルオキシダーゼストレプトアビジン(ニチレイヒストファイン)処理(室温20分間)を行った。
6) 1×TBSで10分間3回洗浄した後、DAB(ニチレイヒストファイン)を用いて室温で30分間発色させた。
7) ヘマトキシリンでカウンター染色を行い、エタノール脱水→キシレン透徹処理後、封入した。
1) 定法に従いパラフィン切片を作製し、脱パラフィン(10分3回)→脱キシレン(5分3回)→流水洗浄5分を行った。
2) クエン酸バッファー(pH7.0、三菱化学RM102-1T)500ml中に切片を入れた状態で、550W20分加熱処理を加え(電子レンジ)抗原賦活処理を行い、室温になるまで放置した。
3) 室温で30分間ブロッキング(ニチレイヒストファインウサギ血清)を行った後、抗ヒトリン酸化タウ抗体(Thermo MN1020, Anti-Human PHF-Tau monoclonal Ab 5μg/ml)を滴下し、4℃で一夜反応させた。
4) 1×TBSで10分間3回洗浄した後、二次抗体(ニチレイヒストファイン抗マウス抗体)を滴下して室温で30分間反応させた。
5) 1×TBSで10分間3回洗浄した後、ペルオキシダーゼストレプトアビジン(ニチレイヒストファイン)処理(室温20分間)を行った。
6) 1×TBSで10分間3回洗浄した後、DAB(ニチレイヒストファイン)を用いて室温で30分間発色させた。
7) ヘマトキシリンでカウンター染色を行い、エタノール脱水→キシレン透徹処理後、封入した。
(2-5)リン酸化タウ陽性細胞面積測定
海馬のDAB陽性の顆粒細胞の面積を、一視野(×20)あたりに見られる顆粒細胞を対象として、H閾値264−327、L閾値165−174、S閾値9−15以上のdensityを示すもの(DAB positive 領域)を検出し、二次元画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用いてタウ陽性細胞面積を測定した。解析は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)で行った。
海馬のDAB陽性の顆粒細胞の面積を、一視野(×20)あたりに見られる顆粒細胞を対象として、H閾値264−327、L閾値165−174、S閾値9−15以上のdensityを示すもの(DAB positive 領域)を検出し、二次元画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用いてタウ陽性細胞面積を測定した。解析は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)で行った。
(3)結果
(3-1)体重
8週齢から36週齢までの各群の平均体重の変化を図1に示した。(A)はSAMP8の結果、(B)はSAMRの結果である。SAMP8およびSAMRのいずれの群も順調に体重が増加したが、牛車腎気丸投与の有無に関わらず、低炭水化物食(CR)を給餌したマウス(CR群およびCR+牛車腎気丸群)は、普通食を給餌したマウス(普通食群および普通食+牛車腎気丸群)と比較して、有意に体重増加が抑制された(p<0.05、repeated ANOVA)。
(3-1)体重
8週齢から36週齢までの各群の平均体重の変化を図1に示した。(A)はSAMP8の結果、(B)はSAMRの結果である。SAMP8およびSAMRのいずれの群も順調に体重が増加したが、牛車腎気丸投与の有無に関わらず、低炭水化物食(CR)を給餌したマウス(CR群およびCR+牛車腎気丸群)は、普通食を給餌したマウス(普通食群および普通食+牛車腎気丸群)と比較して、有意に体重増加が抑制された(p<0.05、repeated ANOVA)。
(3-2)血糖値
8週齢から35週齢までの各群の平均血糖値の変化を図2に示した。(A)はSAMP8の結果、(B)はSAMRの結果である。SAMP8においては、普通食群が他の3群より血糖値が有意に高いことが示された(p<0.05、repeated ANOVA)。SAMRにおいては、牛車腎気丸投与の有無に関わらず、普通食を給餌したマウス(普通食群および普通食+牛車腎気丸群)は、低炭水化物食(CR)を給餌したマウス(CR群およびCR+牛車腎気丸群)と比較して、血糖値が有意に高いことが示された(p<0.05、repeated ANOVA)。
8週齢から35週齢までの各群の平均血糖値の変化を図2に示した。(A)はSAMP8の結果、(B)はSAMRの結果である。SAMP8においては、普通食群が他の3群より血糖値が有意に高いことが示された(p<0.05、repeated ANOVA)。SAMRにおいては、牛車腎気丸投与の有無に関わらず、普通食を給餌したマウス(普通食群および普通食+牛車腎気丸群)は、低炭水化物食(CR)を給餌したマウス(CR群およびCR+牛車腎気丸群)と比較して、血糖値が有意に高いことが示された(p<0.05、repeated ANOVA)。
(3-3)受動的回避学習
受動的回避学習の結果を図3に示した。SAMP8においては、普通食およびCRのいずれも牛車腎気丸投与により待機時間の改善傾向を示したが、有意差は認められなかった。SAMRにおいては、普通食およびCRのいずれも牛車腎気丸投与により待機時間の有意な改善を示した。
受動的回避学習の結果を図3に示した。SAMP8においては、普通食およびCRのいずれも牛車腎気丸投与により待機時間の改善傾向を示したが、有意差は認められなかった。SAMRにおいては、普通食およびCRのいずれも牛車腎気丸投与により待機時間の有意な改善を示した。
(3-4)水迷路学習
水迷路学習の結果を図4示した。(A)はSAMP8の結果、(B)はSAMRの結果である。SAMP8においては、CR+牛車腎気丸は普通食群と比較して学習時間が短縮する傾向を示したが、有意差は認められなかった(p=0.0591)。SAMRにおいては、CR+牛車腎気丸は普通食群と比較して学習時間が有意に短縮された(p=0.0367)。
水迷路学習の結果を図4示した。(A)はSAMP8の結果、(B)はSAMRの結果である。SAMP8においては、CR+牛車腎気丸は普通食群と比較して学習時間が短縮する傾向を示したが、有意差は認められなかった(p=0.0591)。SAMRにおいては、CR+牛車腎気丸は普通食群と比較して学習時間が有意に短縮された(p=0.0367)。
(3-5)SAMRの海馬のリン酸化タウ免疫組織染色
SAMRの海馬を抗ヒトリン酸化タウ抗体を用いて免疫染色した結果を図5に示した。(A)は普通食群、(B)は普通食+牛車腎気丸群、(C)はCR群、(D)はCR+牛車腎気丸群の結果である。普通食群と比較して、普通食+牛車腎気丸群およびCR群ではリン酸化タウの沈着が減弱しており、CR+牛車腎気丸群では、さらにリン酸化タウの沈着が減弱していることが示された。
SAMRの海馬を抗ヒトリン酸化タウ抗体を用いて免疫染色した結果を図5に示した。(A)は普通食群、(B)は普通食+牛車腎気丸群、(C)はCR群、(D)はCR+牛車腎気丸群の結果である。普通食群と比較して、普通食+牛車腎気丸群およびCR群ではリン酸化タウの沈着が減弱しており、CR+牛車腎気丸群では、さらにリン酸化タウの沈着が減弱していることが示された。
免疫組織染色に用いた抗ヒトリン酸化タウ抗体(Thermo MN1020、Anti-Human PHF-Tau monoclonal Ab、クローンAT8)は、過剰リン酸化タウに特異的な抗体であり、アルツハイマー病患者からの試料において神経原線維変化を示すPHF(paired helical filament)タウに結合するため、ELISA、免疫組織化学、ウェスタンブロットなどで広く使用されており、関連の論文も多数報告されている。このクローンAT8は、アルツハイマー患者由来のリン酸化タウを認識し、非リン酸化タウの6つのアイソフォームに結合しないことが知られ、Ser202とThr205の二重リン酸化PHFタウに特異的である。したがって、図5に示した免疫組織染色における陽性細胞は、海馬の顆粒細胞に神経原線維変化を示すリン酸化PHFタウが蓄積していることを示している。そして、神経毒性を有するリン酸化PHFタウの蓄積が、CR+牛車腎気群において劇的に改善していることは、水迷路の学習効果が改善していることを裏付ける重要な実験結果である。
(3-6)海馬におけるリン酸化タウ陽性細胞面積
SAMRの海馬を抗リン酸化タウ抗体を用いて免疫染色し、リン酸化タウ陽性細胞面積を測定した結果を図6に示した。図6から明らかなように、普通食群と比較して、普通食+牛車腎気丸群(p=0.0014)、CR群(p=0.0014)、CR+牛車腎気丸群(p=0.0001)のいずれも、リン酸化タウ陽性細胞面積が有意に減少していることが示された。
SAMRの海馬を抗リン酸化タウ抗体を用いて免疫染色し、リン酸化タウ陽性細胞面積を測定した結果を図6に示した。図6から明らかなように、普通食群と比較して、普通食+牛車腎気丸群(p=0.0014)、CR群(p=0.0014)、CR+牛車腎気丸群(p=0.0001)のいずれも、リン酸化タウ陽性細胞面積が有意に減少していることが示された。
以上の結果から、牛車腎気丸は海馬におけるタウ蛋白質のリン化を阻害することにより、老化等による認知機能の低下を予防し、認知機能を改善できると考えられた。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
Claims (7)
- ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することを特徴とするタウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物。
- 牛車腎気丸、八味丸または六味丸を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 請求項1または2に記載の組成物を含有することを特徴とするタウオパチーの予防および/または治療用医薬。
- 糖質制限食の摂取期間中に投与されるように用いられることを特徴とする請求項3に記載の医薬。
- タウオパチーがアルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症またはダウン症候群である請求項3または4に記載の医薬。
- 請求項1または2に記載の組成物を含有し、認知症の予防および/または改善作用を有することを特徴とする飲食品。
- 請求項1または2に記載の組成物を含有し、認知症の予防および/または改善作用を有することを特徴とするサプリメント。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014221932A JP2016088851A (ja) | 2014-10-30 | 2014-10-30 | タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物 |
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JP2014221932A JP2016088851A (ja) | 2014-10-30 | 2014-10-30 | タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物 |
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JP2014221932A Pending JP2016088851A (ja) | 2014-10-30 | 2014-10-30 | タウ蛋白質のリン酸化抑制用組成物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021203146A1 (en) * | 2020-03-30 | 2021-10-07 | Sunstar Joint Stock Company | Pain-relieving and anti-inflammatory preparation for preventing and treating thrombosis |
-
2014
- 2014-10-30 JP JP2014221932A patent/JP2016088851A/ja active Pending
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WO2021203146A1 (en) * | 2020-03-30 | 2021-10-07 | Sunstar Joint Stock Company | Pain-relieving and anti-inflammatory preparation for preventing and treating thrombosis |
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