以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態の断層撮影システム1の全体構成図である。断層撮影システム1は、測定部10、凹面鏡20、光学系30、撮像部40および処理部50を備え、測定空間S内に配置された被検体90の体動を補正して被検体90の断層画像を再構成することができる。なお、同図では、測定部10,凹面鏡20および光学系30については断面図が示され、撮像部40および処理部50についてはブロック図が示されている。
断層撮影システム1は、測定部10がガントリ11を含むものであれば何れのシステムであってもよい。断層撮影システム1は、PET,SPECT,X線CTおよびMRIの何れのシステムであってもよく、また、PETまたはSPECTとX線CTとを組み合わせたシステムや、PETとMRIとを組み合わせたシステムなど、2種以上のものを組み合わせたシステムであってもよい。以下では断層撮影システム1がPETシステムであるとして説明をする。
測定部10は、所定軸Axの周りの測定空間Sを囲むガントリ11を含み、測定空間S内に配置された被検体90から測定データを取得する。測定空間Sは、ガントリ11の内壁面(円柱面)で囲まれた円柱領域に含まれる。ガントリ11内には、多数の検出器12、シールドコリメータ13およびスライスコリメータ14が設けられている。
各検出器12は、例えばシンチレータおよび光電子増倍管を組み合わせた放射線検出器である。各検出器12は、陽電子放出アイソトープ(RI)が投入された被検体90内における電子・陽電子の対消滅に伴って発生したエネルギ511keVの光子(γ線)を検出し、その検出した光子のエネルギに応じた値の信号を処理部50へ出力する。複数の検出器12が所定軸Axの周りに配列されてリングが構成され、複数のリングが所定軸Axの方向に積層されている。
シールドコリメータ13は、外部へのγ線の漏洩を防止する。スライスコリメータ14は、所定軸Axに略垂直な方向に飛行する光子を選択的に検出器12が検出てきるようにする。スライスコリメータ14は設けられていなくてもよい。
凹面鏡20は、測定空間S内に配置され、所定軸Axに対向する反射面を有し、その反射面が所定軸Axに垂直な断面において曲率を有する。凹面鏡20は、ガントリ11の内壁面に取り付けられているのが好適である。また、凹面鏡20は、所定軸Axに平行な中心軸を有する円柱面の一部である反射面形状を有するのが好適である。
凹面鏡20は、測定部10による測定データの取得に支障がない材料からなる。凹面鏡20として、光(可視光または不可視光)を反射するフィルムを用いてもよく、赤外光を反射する熱線反射フィルムを用いてもよい。熱線反射フィルムは、例えば室内への赤外光入射を低減する為に窓ガラスに貼り付けられて用いられるものであり、波長870nmの赤外光に対し約85%の反射率を有するものが知られている。
凹面鏡20として反射フィルムを用いる場合、その反射フィルムを歪みや皺が生じないようにガントリ11の内壁面に貼り付けてもよい。ガントリ11の内壁面に直接に反射フィルムを貼り付けるのが困難である場合には、軟性ポリ塩化ビニルシート等の軟性シートに反射フィルムを張り付けたものを、ガントリ11の内壁面に貼り付けてもよい。
凹面鏡20は、反射フィルム以外に、通常のミラー、反射コーティングしたミラー、銀等の反射加工したミラーであってもよい。凹面鏡20の反射面の曲率半径は、ガントリ11の内半径と同じでなくてもよい。凹面鏡20の反射面の形状は、放物面等の非球面であってもよい。凹面鏡20は、ガントリ11の内壁面に直接に取り付けられていてもよいし、他の保持治具により測定空間S内に設置されていてもよい。
光学系30は、測定空間S内に配置された被検体90から発した光が凹面鏡20で反射されて形成される像の歪みを補償する。光学系30は、所定軸Axに平行な中心軸を有する円柱面の一部である反射面形状を有する曲面鏡(凹面鏡または凸面鏡)を含むのが好適である。また、この曲面鏡の焦点が凹面鏡20の焦点と一致するのが好適である。
光学系30は、曲面鏡に加えて平面鏡を含んでいてもよいし、曲面鏡に加えて又は替えてシリンドリカルレンズを含んでいてもよい。光学系30は、全体が測定空間S内に配置されてもよいし、全体が測定空間S外に配置されてもよいし、一部が測定空間S内に配置され残部が測定空間S外に配置されてもよい。光学系30は、凹面鏡20と同様に反射フィルムを用いてもよい。
撮像部40は、測定空間S外に配置され、光学系30により歪みを補償された像を撮像する。撮像部40は、1つのカメラを含んでいてもよいし、複数のカメラを含んでいてもよく、後者の場合には、測定空間S外の複数の位置それぞれにおいて、歪みを補償された像を撮像する。各カメラは、観察したい角度および大きさに応じて設置位置やカメラレンズが調節される。被検体90,凹面鏡20および光学系30の位置関係等により、光学系30により歪みを補償された像の結像位置が異なるので、想定される被検体90の移動範囲を考慮して各カメラが設置される。
撮像部40のカメラレンズは、魚眼レンズであってもよい。撮像部40は、湾曲した画像の歪みを補正するための補正レンズ(高次非球面レンズ等)が取り付けられていてもよい。撮像部40は、被検体90から発した光が凹面鏡20および光学系30を複数回反射等して到達したものの像を撮像してもよい。
処理部50は、撮像部40により撮像された像に基づいて被検体90の体動を検出し、この体動検出結果に基づいて測定部10により取得された測定データを補正し、この補正後の測定データに基づいて被検体90の断層画像を再構成する。より具体的には以下のとおりである。
処理部50は、撮像部40により撮像された像を入力して、この画像における特徴点の位置を検出する。特徴点は、被検体90の位置の特定に用いることができる情報であって、例えば、被検体90が有している部位(例えば、目、鼻、口など)であってもよいし、被検体90の3次元形状(複数点で構成された点群)であってもよいし、また、計算によって算出された被検体90の重心点であってもよい。また、特徴点は、被検体90の顔や頭などに貼り付けられたマーカであってもよい。
撮像部40が複数のカメラを含む場合、各カメラにより撮像された複数の画像に共通の特徴点が存在すれは、処理部50は、エピポーラ幾何により、複数の画像における特徴点の対応関係に基づいて被検体90の体動を検出することができる。また、処理部50は、画像から推定された特徴点の3次元位置と実際の特徴点の3次元位置との間の関係を表す変換テーブル等を算出しておけば、得られた画像から実際の3次元位置情報を求めることができる。
処理部50は、測定部10の何れか2つの検出器12がエネルギ511keVの光子を同時検出した事象(イベント)を表す同時計数情報を、測定データとして測定部10から入力する。この同時計数情報は、エネルギ511keVの光子を同時検出した2つの検出器12の識別情報を含む。RIが投入された被検体90において電子・陽電子の対消滅が発生した位置は、これら2つの検出器12の受光面を互いに結ぶ線分(同時計数ライン)上にある。
処理部50は、同一タイミングで得られた測定データおよび体動検出結果に基づいて、測定データ(同時計数情報)から得られる同時計数ラインを体動検出結果に応じて補正することで、被検体90内における電子・陽電子対消滅位置を通る同時計数ラインに変換する。そして、処理部50は、このようにして補正した測定データを蓄積し、その蓄積した補正後の測定データに基づいて被検体90の断層画像を再構成する。
本実施形態の断層撮影システム1は、被検体90に照明光を照射する為の照明光源を備えていてもよいし、照明光源を備えていなくてもよい。被検体90が自己発光体である場合や、被検体90にマーカとして発光体が取り付けられる場合には、照明光源は不要である。発光体から出る光は、可視光および不可視光(赤外領域・紫外領域)など何れの波長域であってもよいが、被検体90から凹面鏡20および光学系30を経て撮像部40により撮像され得る波長域であることが必要である。
照明光源を設ける場合には、照明光は可視光および不可視光(赤外領域・紫外領域)など何れの波長域であってもよいが、照明光の照射に伴い被検体90で生じる反射光は、被検体90から凹面鏡20および光学系30を経て撮像部40により撮像され得る波長域であることが必要である。照明光源の設置位置は任意である。被検体90に直接に照明光を照射し得る位置に照明光源を設置してもよい。また、測定空間S外に照明光源を設置して、光学系30および凹面鏡20を介して照明光を被検体90に照射してもよい。
照明光源は、発光ダイオード、蛍光灯、白熱灯、レーザ光源など任意のものであってよい。被検体90に照射される照明光は、被検体90の或る範囲に亘って照射されてもよいし、スリット光や格子状などのパターン光であってもよい。照明光は、広帯域であってもよいし、単一波長であってもよいし、複数波長であってもよい。照明光が広帯域光または複数波長である場合には、特定の波長の光を選択的に透過させる光フィルタを撮像部40の前に設けてもよい。
次に、本実施形態の断層撮影システム1における凹面鏡20,光学系30および撮像部40の具体的な構成例について説明する。
図2は、本実施形態の断層撮影システム1の第1構成例を示す図である。測定空間Sの中心である所定軸Axをz軸とするxyz直交座標系を想定する。ガントリ11が囲む測定空間Sの直径をdとする。凹面鏡20は、所定軸Axに平行な中心軸を有する直径dの円柱面の一部を反射面とするものであり、ガントリ11の内壁面に貼り付けられている。光学系30としての凹面鏡31は、所定軸Axに平行な中心軸を有する直径dの円柱面の一部を反射面とするものであり、当該円柱面が所定軸Axに接するように配置されている。凹面鏡20および凹面鏡31それぞれの焦点距離fはd/4である。凹面鏡20および凹面鏡31は、各々の焦点がyz平面上で互いに一致するように配置されている。撮像部40のカメラはyz平面上に位置している。
図3は、本実施形態の断層撮影システム1の第1構成例と等価なレンズ系を示す図である。凹面鏡20は焦点距離fのシリンドリカルレンズ20Aと等価であり、凹面鏡31は焦点距離fのシリンドリカルレンズ31Aと等価である。第1構成例は、シリンドリカルレンズ20Aとシリンドリカルレンズ31Aとが互いに距離2fだけ離間している構成と等価である。
被検体90とシリンドリカルレンズ20Aとの間の距離が焦点距離fより短いと、シリンドリカルレンズ20Aによって虚像91が形成され、この虚像91からシリンドリカルレンズ31Aによって実像92が形成される。逆に被検体90とシリンドリカルレンズ20Aとの間の距離が焦点距離fより長いと、シリンドリカルレンズ20Aによって実像が形成され、この実像からシリンドリカルレンズ31Aによって別の実像が形成される。このように、何れの場合にも、X軸方向についてはリレーレンズと同じ原理で等倍の逆像となり、Z軸方向については通常の鏡面反射と同じである。すなわち、凹面鏡31によって形成される実像は被検体90のX軸方向に等倍の逆像となる。
仮に、光学系30としての凹面鏡31が設けられることなく、凹面鏡20により反射された後の像を撮像部40が撮像する場合、その像は大きく歪んでいるだけでなく、被検体90と凹面鏡20との間の距離と焦点距離fとの大小関係によって、像が異なり、撮像部40が撮像をすることができない場合がある。これに対して、本実施形態では、凹面鏡20に加えて光学系30を設けることにより、撮像部40が適切な撮像をすることができる。
図4は、本実施形態の断層撮影システム1の第1構成例のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、被検体90として、チェス盤のようなチェッカー模様が描かれた平板を用いた。同図に示されるように、撮像部40は、被検体90のチェッカー模様と略一致しており曲面歪みが小さく平面反射画像に近い画像を取得できる。
図5は、本実施形態の断層撮影システム1の第2構成例を示す図である。第2構成例では、光学系30として凹面鏡31に替えて凸面鏡32が設けられている。凸面鏡32は、所定軸Axに平行な中心軸を有する直径d未満の円柱面の一部を反射面とするものである。凹面鏡20の焦点距離fはd/4であり、凸面鏡32の焦点距離f2はd/4より短い。凹面鏡20および凹面鏡31は、各々の焦点がyz平面上で互いに一致するように配置されている。撮像部40のカメラはyz平面上に位置している。
図6は、本実施形態の断層撮影システム1の第2構成例のシミュレーション結果を示す図である。ここでも、被検体90として、チェス盤のようなチェッカー模様が描かれた平板を用いた。凸面鏡32の焦点距離を、凹面鏡20の焦点距離の2分の1とした。同図に示されるように、撮像部40は、被検体90のチェッカー模様と略一致しており曲面歪みが小さく平面反射画像に近い画像を取得できる。第1構成例と比べて、第2構成例では、撮像部40が取得する画像のサイズがX軸方向について2分の1となる。
図7は、本実施形態の断層撮影システム1の第3構成例を示す図である。第3構成例では、光学系30として、平面鏡33が設けられ、また、凹面鏡20の延長として凹面鏡34が設けられている。凹面鏡34は、凹面鏡20と同様に、所定軸Axに平行な中心軸を有する直径dの円柱面の一部を反射面とするものであり、ガントリ11の内壁面に貼り付けられていて、焦点がyz平面上にある。平面鏡33は、凹面鏡20および凹面鏡34それぞれの焦点位置にあって、xz平面に平行に設けられている。この第3構成例では、被検体90から発した光は、凹面鏡20、平面鏡33および凹面鏡34により順次に反射されて、撮像部40により受光される。この第3構成例は、平面鏡33が設けられているものの、実質的には第1構成例と等価である。
図8は、本実施形態の断層撮影システム1の第4構成例を示す図である。第4構成例では、光学系30としてシリンドリカルレンズ35が設けられている。シリンドリカルレンズ35の焦点は、凹面鏡20の焦点と一致している。この第4構成例では、被検体90から発した光は、凹面鏡20により反射され、シリンドリカルレンズ35を経て撮像部40により受光される。前述したように第4構成例におけるシリンドリカルレンズ35は第1構成例における凹面鏡31と等価な機能を有するので、この第4構成例は実質的には第1構成例と等価である。なお、撮像部40のカメラレンズとシリンドリカルレンズ35とは、一体化されたレンズ系となっていてもよい。
図9は、本実施形態の断層撮影システム1の第5構成例を示す図である。第5構成例では、第1構成例において、撮像部40として2つのカメラ41,42が設けられたものである。これら2つのカメラ41,42は、測定空間S外の2つの位置それぞれにおいて、凹面鏡31により歪みを補償された像を撮像する。同図(a),(b)は、異なる方向から見た図である。
図10は、本実施形態の断層撮影システム1の第5構成例において撮像部40としてのカメラ41,42により撮像された画像を示す図である。ここでも、被検体90として、チェス盤のようなチェッカー模様が描かれた平板を用いた。同図(a)はカメラ41により得られた画像であり、同図(b)はカメラ42により得られた画像である。このように複数のカメラを用いることで、3次元計測に必要なステレオ画像を取得することができ、被検体90の体動を容易に検出することができる。
本実施形態では、被検体90にマーカ等を装着する必要はなく、非接触・非拘束で被検体90の体動を検出し、この体動検出結果に基づいて測定データを補正して断層画像を再構成することができる。撮像部40が測定空間S外に配置されているので、被検体90は、撮像部40の存在を意識することはなく、撮られているという精神的拘束を感じることがないので、この点でも精神的な拘束が小さい。本実施形態では、ガントリ11の測定空間S内に配置された被検体90の身体的・精神的な拘束を更に低減することができる。
本実施形態では、凹面鏡20に加えて、凹面鏡20で反射されて形成される像の歪みを補償する光学系30(凸面鏡32、平面鏡33、凹面鏡34、シリンドリカルレンズ35)が設けられているので、歪みの小さい画像を撮像部40が取得することができる。また、凹面鏡20に加えて光学系30が設けられていることにより、被検体90と焦点位置との関係に影響されない画像を撮像部40が取得することができる。
また、本実施形態では、ガントリ11が頭部用である場合のように測定空間Sが狭くても、被検体90の体動検出および測定データの補正が可能である。