以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式のLBP(レーザビームプリンタ)である。
画像形成装置100は、静電潜像を担持する像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動源(図示せず)によって図中矢印a方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の回転方向に沿って次の各機器が配置されている。まず、帯電手段としてのローラ状の帯電部材(接触帯電部材)である帯電ローラ5が配置されている。次に、像露光手段としての露光装置(レーザスキャナ)6が配置されている。次に、現像手段としての現像装置3が配置されている。次に、転写手段としてのローラ状の転写部材(接触転写部材)である転写ローラ4が配置されている。
画像形成時には、回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ5によって所定の極性(本実施例では負極性)に一様に帯電処理される。このとき、帯電ローラ5には帯電電圧印加手段としての帯電電源(高圧電源)E1(図2)から所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光装置6によって画像情報に応じたレーザ光で走査露光される。これにより感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置3によってトナーを用いてトナー像として現像(可視像化)される。このとき、現像装置3が有する現像ローラ2には、現像電圧印加手段としての現像電源(高圧電源)E2(図2)から所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、感光ドラム1と転写ローラ4とが当接する転写部(転写ニップ)Nにおいて、転写ローラ4の作用により、感光ドラム1と転写ローラ4とで挟持搬送される記録材P上に転写される。このとき、転写ローラ4には、転写電圧印加手段としての転写電源(高圧電源)E3(図2)から所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。転写後に感光ドラム1上に残留する転写残トナーは、現像装置3によって現像同時回収される。トナー像が転写された記録材Pは、その後定着手段としての定着装置30に搬送され、定着装置30において加熱及び加圧されることでその上のトナー像が定着(固着)される。その後、記録材Pは、搬送トレー31上に搬送される。これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。
本実施例では、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ5及び現像装置3は、画像形成装置100の装置本体50に対して着脱自在なプロセスカートリッジ7を構成する。ただし、感光ドラム1やプロセス手段は装置本体50に固定設置されたものであってもよい。
露光装置6は、画像形成装置100に入力されるか、又はテストパターンのような装置本体50の内部で作成される画像信号に応じてON/OFF制御されたレーザ光を感光ドラム1に照射する。これにより、感光ドラム1上に静電潜像(デジタル潜像)が形成される。なお、露光装置6は、レーザスキャナに限定されるものではなく、LEDプリントヘッド方式や液晶シャッターアレイ方式などの露光装置も適用可能である。露光装置6に入力する画像信号を変調して濃度階調性を得る方法としては、レーザ光強度変調、誤差拡散法やディザ法などの面積階調法、それらの組み合わせを用いることができる。また、PWM(パルス幅変調)方式を用いて、1画素の面積階調による多値記録を行うこともできる。画像信号は、00h(白)〜FF(黒)までの256階調レベルで変化させることができる。本実施例では、PWM方式を用いた。
現像装置3は、現像剤を担持して感光ドラム1に搬送するための現像剤担持体を有し、現像剤担持体を感光ドラム1に当接させて現像部(現像領域)Gを形成し、この現像部Gにおいて現像剤を感光ドラム1上の静電潜像に電気的に付着させる。これにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。本実施例では、現像装置3は、反転現像方式を採用しており、感光体上の静電像の画像部に現像部Gで感光体の帯電極性と同極性に帯電したトナーを供給してトナー像を形成する。現像装置3は、現像剤としての非磁性一成分現像剤(非磁性トナー、トナー)10を収容した現像容器11を有する。現像容器11には、現像剤担持体としての現像ローラ2、現像剤規制部材としての現像ブレード9、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ8、及び攪拌部材としての攪拌羽根12などが設けられている。
現像ローラ2は、アルミニウムやその合金、ステンレスなどの金属の円筒体の周囲に、基層とその上の表層とを有する弾性層を設けた多層構成とされる。弾性層の基層は、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどのゴムを用いて形成され、表層はエーテルウレタンやナイロンなどを用いて形成される。ただし、弾性層の材料はこれらに限定されるものではなく、基層にスポンジなどの発泡体を用い、表層にゴム弾性層を形成してもよい。また、弾性層は、NBR、EPDM、ウレタンゴムなどのゴム弾性層のみから構成される単層構成としてもよい。現像ローラ2は、感光ドラム1に当接して配置される。現像ローラ2は、駆動源(図示せず)により、当接部において感光ドラム1と現像ローラ2との移動方向が同方向となるように図中矢印b方向に回転駆動される。
現像ブレード9は、現像ローラ2の上方において、押さえ板13に支持され、かつ、自由端側の先端近傍が現像ローラ2の外周面に面接触状態で当接するようにして設けられている。現像ブレード9の当接方向は、当接部に対して先端側が現像ローラ2の回転方向上流側に位置する、いわゆるカウンター方向である。本実施例では、現像ブレード9は、金属薄板9aとしてのバネ弾性を有するリン青銅板に、弾性部材9bであるポリアミドエラストマーを接着するか又は射出成形により設けて形成されている。そして、弾性部材9bが現像ローラ2の表面に対して所定の線圧で当接されている。金属薄板9aにより現像ローラ2に対する現像ブレード9の圧接力を維持し、トナーが負帯電性トナーである場合には、弾性部材9bのポリアミドエラストマーによりトナーに電荷が付与される。なお、金属薄板9aは、現像ブレード9の圧接力を維持するものであれば特に限定されず、また弾性部材9bもトナーの帯電性を考慮して選択可能である。また、弾性部材9bのようなトナーへの帯電付与部材を特に設ける必要は無く、ステンレス薄板、リン青銅薄板などのバネ弾性を有する金属薄板9a自体を現像ローラ2に当接させてもよい。
トナー供給ローラ8は、スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロンなどの繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ2に対するトナーの供給及び現像ローラ2からのトナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施例では、トナー供給ローラ8としては、芯金上にウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いる。トナー供給ローラ8は、現像ローラ2に当接して配置され、当接部において現像ローラ2とトナー供給ローラ2との移動方向が逆方向(カウンター方向)となるように図中矢印c方向に回転駆動される。
ここで、本実施例では、現像ブレード9により規制され現像ローラ2上に担持されたトナーは、非磁性一成分現像剤である。そのため、現像ローラ2上でトナーを拘束する力としては、トナーが有する電荷による鏡映力と僅かなファンデルワールス力しか働かない。その結果、現像ローラ2上のトナー層が厚くなると、トナー層の上層部にあるトナーに対する鏡映力が弱くなるため、現像ローラ2上に担持できなくなりトナーが飛散してしまう。したがって、現像ローラ2上のトナー層を薄く規制する必要があるが、その結果十分な画像濃度が得にくくなる場合がある。このような場合、現像ローラ2の周速度を感光ドラム1の周速度よりも速く設定することで、十分な画像濃度を得ることが可能である。その周速度比としては、感光ドラム1の周速度に対して、現像ローラ2の周速度が1.1〜3倍となる範囲が好適である。本実施例では、この周速度比は1.3倍とする。
本実施例の画像形成装置100では、転写後に感光ドラム1上に残留する転写残トナーは、帯電ローラ5による感光ドラム1の帯電部を通過するときに帯電され、その後現像部Gにおいて感光ドラム1に当接している現像ローラ2にて現像容器11に回収される。これにより、クリーナレスシステムが達成されている。
接触転写部材である転写ローラ4は、感光ドラム1の表面に所定の押圧力(本実施例では1kgf)で接触する。転写ローラ4は、感光ドラム1の回転に従動して回転する。そして、この転写ローラ4に転写電源E3から直流電圧である転写電圧Vtrが印加されることにより、感光ドラム1と転写ローラ4との間に転写ニップNで、感光ドラム1上のトナー像が被転写体としての記録材P上に静電的に転写される。転写ローラ4は、感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)と転写ローラ4の長手方向(回転軸線方向)とが略平行になるように配置されている。
本実施例では、転写ローラ4は、芯金の周囲に導電性のゴムで形成された弾性層を設けて構成されている。転写ローラ4の電気抵抗値は、106〜1010Ωに調整されることが好ましい。本実施例の転写ローラ4は、その長手方向の全域にわたって、弾性層の直径がφ14mm、芯金の直径がφ6mm、弾性層の厚みが4mmである。また、本実施例では、転写ローラ4の弾性層のゴムとしては、発泡タイプのNBRゴムを用いる。また、本実施例の転写ローラ4の電気抵抗値は、23℃/50%R.H.環境で1.0×108Ωである。
ここで、クリーナレスシステムを採用した画像形成装置100では、転写後に多量の転写残トナーが存在した場合には、現像部Gで十分に回収できず、感光ドラム1の一周後に記録材Pに転写される「転写残ゴースト」が発生する場合がある。つまり、クリーナレスシステムを採用した画像形成装置100では、クリーニング装置を有する画像形成装置よりも高い転写効率が要求される。
本実施例の画像形成装置100では、感光ドラム1に形成する静電潜像の条件としては、次の条件が好適である。負帯電性トナーを用いる場合は、非画像部電位(Vd)は−500〜−1000Vの範囲が好適であり、最大トナー像濃度が得られる画像部電位(Vl)は−50〜−200Vの範囲が好適である。また、正帯電性トナーを用いる場合は、非画像部電位(Vd)は+500〜+1000Vの範囲が好適であり、最大トナー像濃度が得られる画像部電位(Vl)は+50〜+200Vの範囲が好適である。本実施例では、負帯電性トナーを用いる。
感光ドラム1に形成された静電潜像をトナーにて現像する際、現像ローラ2には、現像電源E2から直流電圧である現像電圧が印加される。本実施例では、静電潜像が上記条件で形成される場合、現像電圧の条件としては、次の条件が好適である。現像電圧(Vdc)と最大トナー像濃度が得られる画像部電位(Vl)との電位差分である現像コントラスト電位|Vl−Vdc|(Vcont)が、50〜400Vとなる範囲で好適である。一方、本実施例では、現像電圧(Vdc)と非画像部電位(Vd)との電位差分であるバックコントラスト電位|Vd−Vdc|(Vback)を大きくする必要がある。画像部にトナーを載せるために十分にVcontをとりつつ、転写残トナーの回収性をより良好にするためである。Vbackを大きくすることで、感光ドラム1上の非画像部電位と現像ローラ2の電位との電位差が大きくなり、帯電部を通過した後の転写残トナーを現像ローラ2へ引き戻す電気的な力が大きくなり、転写残トナーの現像ローラ2への回収がより良好になる。そこで、本実施例では、Vd=−900V、Vl=−100V、Vdc=−300Vとし、|Vcont|=200V、|Vback|=600Vとする。
図2は、本実施例の画像形成装置100の要部の概略制御態様を示すブロック図である。画像形成装置100は、画像形成装置100の各部の動作を統括制御するエンジンコントローラ18を有する。エンジンコントローラ18は、演算処理を行う中心的素子であるCPU、記憶素子(記憶部)であるROM、RAMなどのメモリなどを有して構成される。RAMには、センサの検知結果、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。特に、本実施例との関係で言えば、エンジンコントローラ18には、帯電電源E1、現像電源E2、転写電源E3、後述する転写前露光装置14を駆動する転写前露光駆動回路(以下「ドライバ」ともいう。)16などが接続されている。そして、本実施例では、エンジンコントローラ18は、各電源E1、E2、E3の出力のON/OFFや出力値、ドライバ16から転写前露光装置14への電流の供給のON/OFFや供給する電流値(以下「ドライバ電流値」ともいう。)を制御する。
2.転写前露光装置
次に、本実施例の転写前露光手段としての転写前露光装置14について説明する。転写前露光装置14は、感光ドラム1の回転方向において、現像部Gの下流かつ転写ニップNの上流に配置される。そして、転写前露光装置14は、感光ドラム1の回転方向において現像部Gと転写ニップNとの間で、現像部Gを通過した後、転写ニップNを通過する前の感光ドラム1の表面を露光して、感光ドラム1上の非画像部電位を除電する。これにより、転写ニップNを通過する時(以下「転写通過時」ともいう。)の感光ドラム1上の非画像部電位の設定を、現像部Gを通過する時(以下「現像通過時」ともいう。)の感光ドラム1上の非画像部電位の設定から変更する。
転写前露光装置14としては、レーザスキャナ装置、LEDプリントヘッド方式や液晶シャッターアレイ方式などの露光装置などを用いることができる。あるいは、画像形成装置100の装置本体50の側面にLEDランプを設け、ライトガイドなどを通して感光ドラム1の表面を照射する方式などでも良い。本実施例では、転写前露光装置14として、レーザスキャナを用いた。本実施例では、転写露光装置14は、感光ドラム1の長手方向における画像形成領域(トナー像の形成が可能な領域)の全域を一様に露光する。別法として、転写前露光装置14は、感光ドラム1上の非画像部を選択的に露光するようにしてもよい。この場合、帯電処理された感光ドラム1に露光装置6が形成する静電潜像と、転写前露光装置14が形成する静電潜像は異なることになる。
転写前露光装置14が設けられていない場合、現像部Gを通過した後の感光ドラム1の表面電位は、非画像部電位Vdと画像部電位Vlとの差が大きいまま転写ニップN内に突入する。そして、転写ニップN内に感光ドラム1上のVdとVlとが同時に存在した場合、VdとVtrとの差(|Vd−Vtr|)が、VlとVtrとの差(|Vl−Vtr|)に比べて大きいため、転写電流が非画像部に多量に流れ込んでしまう。その場合、画像部への転写電流量が適正な値よりも少なくなってしまうために、画像部のトナーの記録材P上への転写が不十分になり、転写不良を起こしてしまう。特に、細線などの画像パターンの場合、転写ニップN内に感光ドラム1上のVdとVlとが同時に存在しやすくなるために、転写不良が顕著になる傾向がある。
転写前露光装置14が設けられている場合、転写前露光により除電されることで、転写通過時の感光ドラム1上の非画像部電位Vdが小さくなるため、VdとVlとの差が小さくなる。この状態で転写ニップN内に突入すれば、転写ニップN内に感光ドラム1上のVdとVlとが同時に存在した場合でも、VdとVtrとの差(|Vd−Vtr|)が、VlとVtrとの差(|Vl−Vtr|)に比べて大きくない。そのため、転写電流が非画像部に多量に流れ込むことが抑制され、画像部に十分に転写電流が流れ込み、細線などの画像でも良好に転写することが可能となる。
3.評価実験
3−1.評価実験の内容
本実施例の画像形成装置100における、画像上の転写残ゴーストのレベルと、突き抜けのレベルと、転写残トナーのレベルとを確認した。転写残ゴーストとは、転写残トナーが帯電部を通過した後に現像部Gで回収されずに、次に転写ニップNに到達した際に記録材Pに転写され、画像に現れてしまう現象である。突き抜けとは、転写電圧を印加した時に転写ニップNの直前(記録材Pの搬送方向上流側)の記録材Pと感光ドラム1との間で発生する放電現象により生じる画像不良である。つまり、転写ニップNの直前の微少なエアーギャップで放電が起こり、局所的に感光ドラム1上のトナーの帯電極性が反転してしまいその部分で転写不良が起きる。
また、比較例1として、転写前露光を行わない場合について本実施例と同様の評価実験を行った。比較例1の評価実験で用いた画像形成装置は、上記の点を除いて、本実施例の評価実験で用いた画像形成装置と実質的に同じである。
3−2.実験条件
・環境:
評価実験は、温度15℃、湿度10%(以下「L/L」という。)の環境下で行った。
・画像形成装置本体:
画像形成装置100の装置本体50として、HP Laserjet1020を、プリントスピードをLTR25ppmとすると共に、転写前露光装置14を設置して用いた。
・記録材:
記録材Pとしては、Xx4200 75g/m2紙の2面目を用いた。
・画像パターン:
画像パターンとしては、10ドット20スペース縦線とべた黒をページ半分ずつとして、現像ローラ2の1周の長さ分を用いて現像した。
・転写前露光条件:
図3は、本評価実験における、露光量と相関関係にあるドライバ電流値と、感光ドラム1の表面電位との関係を示す。同図には、現像通過時の非画像部電位がVd=−900Vの場合の関係が示されている。
本実施例では、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。
比較例1では、転写前露光装置14は点灯させず、転写通過時の非画像部電位をVd=−900Vのままとした。
・電位設定:
比較例1、本実施例における、現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図4(a)、(b)に示すとおりである。
・転写電圧:
転写電圧Vtrを0.5kV、1.5kV、3kVに変更して同様の評価実験を行った。
・転写残濃度測定:
転写ニップNを通過した後の感光ドラム1上の転写残トナーの濃度(転写残濃度)を、次のようにして測定した。転写残トナーをマイラーテープに接着させた後、そのテープを紙上に貼り付けて、TOKYO DENSHOKU製カブリ反射濃度計を用いて測定した。そして、転写残濃度の値は、感光ドラム1に貼り付けていないマイラーテープを基準濃度として、転写残トナーを採取したマイラーテープの濃度の値を引いた値として計算した。
3−3.評価結果
表1に、本実施例及び比較例1の転写残ゴースト及び突き抜けの評価結果を示す。評価結果は、転写残ゴースト、突き抜けに関して、発生しないか又は発生しても問題無いレベルの場合を○(OKレベル)、問題となるレベルで発生した場合を×(NGレベル)として示す(以下同様)。表2に、各条件における、転写通過時のVtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比を示す。また、図5に、本実施例及び比較例1の転写残濃度の評価結果を示す。
比較例1では、転写残ゴーストに関しては、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合はNGレベルである(表1)。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、転写前露光を行わないため、転写通過時の非画像部電位はVd=−900Vのままである。そのため、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比が大きくなるため(表2)、感光ドラム1上のトナーが載っている画像部よりも、非画像部に転写電流が多量に流れ込む。その結果、画像部には転写電流がほとんど流れ込まないために、トナーを記録材P上に引き付けることができずに、感光ドラム1上に転写残トナーが多く残ってしまう。また、比較例1では、転写残濃度に関しても、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合は10%以上と高く、感光ドラム1上の転写残トナーが多いことがわかる(図5)。一方、比較例1では、転写残ゴーストに関しては、転写電圧Vtrが3.0kVの場合はOKレベルである(表1)。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、転写前露光を行わないため、転写通過時の非画像部電位はVd=−900Vのままである。しかし、転写電圧が3.0kVと大きくなるため、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比としては、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合と比べてかなり小さくなる(表2)。そのため、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合と比べて、画像部にも転写電流が多く流れ込むので、トナーを記録材P上に十分に引き付けることができ、感光ドラム1上にトナーが残らない。また、比較例1では、転写残濃度に関しても、転写電圧Vtrが3.0kVの場合は5%付近となり、感光ドラム1上の転写残トナーが少ないことがわかる(図5)。
また、比較例1では、突き抜けに関しては、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合はOKレベルである(表1)。これは、転写電圧Vtrがそれほど高くないため、転写ニップNの直前での放電が発生することがなく、突き抜けが発生しないためと考えられる。一方、比較例1では、突き抜けに関しては、転写電圧Vtrが3.0kVの場合はNGレベルである(表1)。これは、転写電圧Vtrが高いため、転写ニップNの直前での放電が発生することにより、突き抜けが発生してしまうためと考えられる。
次に、本実施例では、転写残ゴーストに関しては、転写電圧Vtrが0.5kVの場合はNGレベルである(表1)。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、転写前露光を行うが、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比としては大きいため、非画像部に多量の転写電流が流れ込み、画像部に流れる転写電流が少なくなる。そのため、トナーを記録材P上に引き付けることができずに、感光ドラム1上にトナーが残ってしまう。また、本実施例では、転写残濃度に関しても、転写電圧Vtrが0.5kVの場合は10%となり、感光ドラム1上の転写残トナーが多いことがわかる(図5)。一方、本実施例では、転写残ゴーストに関しては、転写電圧Vtrが1.5kV、3.0kVの場合はOKレベルである(表1)。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、転写前露光により転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vまで低下させたことにより、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比が小さくなる。その結果、非画像部のみに転写電流が多量に流れ込むことがなく、画像部にも転写電流が流れ込むため、トナーを記録材P上に十分に引き付けることができ、感光ドラム1上にトナーが残らない。また、本実施例では、転写残濃度に関しても、転写電圧Vtrが1.5kV、3.0kVの場合は5%付近となり、感光ドラム1上の転写残トナーが少ないことがわかる(図5)。
また、本実施例では、突き抜けに関しては、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合はOKレベルである(表1)。これは、転写電圧Vtrがそれほど高くないため、転写ニップNの直前での放電が発生することがなく、突き抜けが発生しないためと考えられる。一方、本実施例では、突き抜けに関しては、転写電圧Vtrが3.0kVの場合はNGレベルである(表1)。これは、転写電圧Vtrが高いため、転写ニップNの直前での放電が発生することにより、突き抜けが発生してしまうためと考えられる。
以上をまとめると、比較例1では、転写残ゴーストと突き抜けの両方を抑制することは困難である。これに対して、本実施例では、転写電圧Vtrが1.5kVの場合に、転写残ゴーストと突き抜けの両方を抑制することが可能である。
このように、本実施例では、転写前露光を行うことで、感光ドラム1上の画像部と非画像部の電位差を小さくする。これにより、クリーナレスシステムを採用し、細線など転写ニップN内に画像部と非画像部とが同時に存在する画像を形成する場合でも、非画像部に転写電流が多量に流れ込むことで画像部に流れる転写電流が不足することを抑制できる。その結果、感光ドラム1上のトナーを良好に転写することが可能となるため、転写残ゴーストなどの画像不良を抑制できる。
以上、本実施例によれば、画像形成装置100は、転写通過時の感光ドラム1上の静電像の非画像部の電位の絶対値を現像通過時の感光ドラム1上の静電像の非画像部の電位の絶対値よりも小さくする転写前露光装置14を有する。そして、感光ドラム1上の非画像部電位を、現像部Gを通過した後、転写ニップNに突入する前に低下させる。これにより、転写ニップNでの非画像部への転写電流の多量の流れ込みを抑制して、画像部に十分に転写電流を流すことができる。つまり、現像通過時には非画像部電位を十分に高いまま維持してVbackを十分大きくすると共に、転写通過時には非画像部電位を十分に低くして非画像部への転写電流の多量の流れ込みを抑制する。これにより、クリーナレスシステムを採用した画像形成装置100においても、現像部Gにおける転写残トナーの回収をより良好に行うことができると共に、転写ニップNにおける記録材Pへトナー像の転写をより良好に行って良好な画像を形成することができる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
1.本実施例の概要
本実施例は、画像形成装置100(プロセスカートリッジ7)の使用環境に応じて、現像通過時の非画像部電位Vdの設定を変更し、またその現像通過時の非画像部電位Vdの変更に応じて転写前露光装置14の露光量を変更する点が実施例1とは異なる。
画像形成装置100を高温高湿環境で使用すると、トナーの帯電量が少なくなったり、逆極性に帯電したいわゆる反転トナーの量が増えてきたりする。その場合、現像ローラ2から感光ドラム1上の非画像部にトナーが移動してしまう、いわゆる「反転カブリ」が多くなることがある。その対策として、画像形成装置100の使用環境に応じてバックコントラスト電位Vbackを小さくすることが有効である。Vbackを小さくするためには、非画像部電位Vdを小さくする。しかし、転写前露光装置14の露光量がVbackを変更する前の状態のままであると、転写前露光後の非画像部電位Vdが小さくなりすぎて、画像部電位Vlに近づいてしまう。そのため、感光ドラム1上の画像部にあるトナーが非画像部に飛び散ってしまう「飛び散り」が発生することがある。
そこで、本実施例では、画像形成装置100の装置本体50に環境検知手段としての環境センサ(温湿度センサ)20を設ける(図6)。そして、エンジンコントローラ18が、画像形成を行う際に、環境センサ20の検知結果に基づいて高温高湿環境であると判断した場合に、反転カブリ対策で現像通過時のVdを変更すると共に、転写前露光装置14の露光量を変更する。そして、転写前露光後の非画像部電位Vdを、その現像通過時のVdの変更前のレベルに維持する。
2.評価実験
2−1.評価実験の内容
本実施例の画像形成装置100において、高温高湿環境を検知した場合に非画像部電位Vd及び転写前露光装置14の露光量を変更した場合の飛び散りのレベルを確認した。
また、比較例2として、非画像部電位Vdの変更後も転写前露光装置14の露光量を変更しない場合について本実施例と同様の評価実験を行った。比較例2の評価実験で用いた画像形成装置は、上記の点を除いて、本実施例の評価実験で用いた画像形成装置と実質的に同じである。
2−2.実験条件
・環境:
評価実験は、L/L、及び温度35℃、湿度80%(以下「H/H」という。)の環境下で行った。画像形成装置100の装置本体50の環境をL/Lにして画像出力を行い、次にH/Hで画像出力を行うという順番で評価実験を行った。
・画像パターン:
画像パターンは、文字パターンとした。
・転写前露光条件:
図7は、本評価実験における、露光量と相関関係にあるドライバ電流値と、感光ドラム1の表面電位との関係を示す。同図には、現像通過時の非画像部電位がVd=−900V、又はVd=−800Vの場合の関係が示されている。
比較例2では、L/Lでの現像通過時の非画像部電位がVd=−900Vであるため、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。また、比較例2では、H/Hでも転写前露光装置14の露光量を変えず、ドライバ流値I=5.0×10−3Aで点灯させたため、現像通過時の非画像部電位がVd=−800Vであるのに対して、転写通過時の非画像部電位はVd=−200Vとなった。
本実施例では、L/Lでの現像通過時の非画像部電位がVd=−900Vであるため、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。また、本実施例では、H/Hでは、現像通過時の非画像部電位がVd=−800Vであるため、転写前露光装置14をドライバ電流値I=3.5×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vに維持した。
・電位設定:
本実施例及び比較例2のいずれにおいても、反転カブリ対策のためH/H環境では現像通過時の電位Vdを低下させる設定とした。
比較例2のL/L、H/Hにおける、現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図8(a)、(b)に示すとおりである。また、本実施例のL/L、H/Hにおける現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図9(a)、(b)に示すとおりである。
なお、画像形成装置本体、記録材の各実験条件は、実施例1の評価実験と同じである。また、転写電圧Vtrは、実施例1において転写残ゴースト、突き抜けの観点から良好な結果が得られた1.5kVとした。
2−3.評価結果
表3に、本実施例及び比較例2の飛び散りの評価結果を示す。飛び散りに関して、発生しないか又は発生しても問題無いレベルの場合を○(OKレベル)、問題となるレベルで発生した場合を×(NGレベル)として示す(以下同様)。
比較例2では、飛び散りに関しては、L/LにおいてはOKレベルである。これは、転写前露光後のVdとVlとの差が大きいため、画像部のトナーが非画像部に飛び散らないためと考えられる。一方、比較例2では、飛び散りに関しては、H/HにおいてはNGレベルである。これは、反転カブリ対策でVdを低下させたにも拘わらず転写前露光装置14の露光量を変更しなかったため、Vdが低下しすぎてVlに近づき、画像部にあるトナーが非画像部に飛び散ってしまうためと考えられる。
次に、本実施例では、飛び散りに関しては、L/LにおいてはOKレベルである。これは、転写前露光後のVdとVlとの差が大きいため、画像部のトナーが非画像部に飛び散らないためと考えられる。また、本実施例では、飛び散りに関しては、H/HにおいてもOKレベルである。これは、反転カブリ対策でVdを低下させると共に転写前露光装置14の露光量も低下させ、転写前露光後のVdをL/Lと同じ設定にすることで、画像部から非画像部へのトナーの飛び散りを抑えられるためであると考えられる。
なお、本実施例及び比較例2のいずれにおいても、転写残ゴースト、突き抜けに関してはOKレベルであった。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、高温高湿環境において現像通過時の非画像部電位を変更した場合にも、飛び散りを抑制することができる。
なお、本実施例では、L/L環境とH/H環境とで転写前露光装置14の露光量を変更した。しかし、これに限定されるものではなく、より多くの環境区分ごとに現像通過時の非画像部電位が変更される場合には、それに応じて転写前露光装置14の露光量を変更するようにしてもよい。また、現像通過時の非画像部電位は、環境の温湿度に応じて変更されることに限定されるものではなく、環境の温度又は湿度の少なくとも一方に応じて変更されるようになっていてよい。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
1.本実施例の概要
本実施例は、画像形成装置100(プロセスカートリッジ7)の使用環境に応じて、現像通過時の画像部電位Vlの設定を変更し、またその現像通過時の画像部電位Vlの変更に応じて転写前露光装置14の露光量を変更する点が実施例1とは異なる。
画像形成装置100を高温高湿環境で使用すると、現像部Gなどでトナーの劣化が進み、トナーの帯電量が少なくなる。その場合、現像ローラ2から感光ドラム1上の画像部にトナーが多量に付着するようになり、特にライン画像などが太くなる、いわゆる「ライン画像太り」が発生することがある。その対策として、画像形成装置100の使用環境に応じて現像コントラスト電位Vcontを小さくすることで、画像部に付着するトナーの量を少なくすることが有効である。Vcontを小さくするためには、画像部電位Vlを大きくする。しかし、転写前露光装置14の露光量がVcontを変更する前の状態のままであると、転写前露光後の非画像部電位Vdが画像部電位Vlに近づくため、画像部にあるトナーが非画像部に飛び散ってしまう「飛び散り」が発生することがある。
そこで、本実施例では、画像形成装置100の装置本体50に環境検知手段としての環境センサ(温湿度センサ)20を設ける(図6)。そして、エンジンコントローラ18が、画像形成を行う際に、環境センサ20の検知結果に基づいて高温高湿度環境であると判断した場合に、ライン画像太り対策でVlを変更すると共に、転写前露光装置14の露光量を変更する。そして、転写前露光後のVdとVlとの差を、そのVlの変更前の差に維持する。
2.評価実験
2−1.評価実験の内容
本実施例の画像形成装置100において、高温高湿環境を検知した場合に画像部電位Vl及び転写前露光装置14の露光量を変更した場合の飛び散りのレベルを確認した。
比較例3として、画像部電位Vlの変更後も転写前露光装置14の露光量を変更しない場合について本実施例と同様の評価実験を行った。比較例3の評価実験で用いた画像形成装置は、上記の点を除いて、本実施例の評価実験で用いた画像形成装置と実質的に同じである。
2−2.実験条件
・環境:
評価実験は、H/Hの環境下で行った。
・転写前露光条件:
図10は、本評価実験における、露光量と相関関係にあるドライバ電流値と、感光ドラム1の表面電位との関係を示す。同図には、現像通過時の非画像部電位がVd=−900Vの場合の関係が示されている。
比較例3では、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。
本実施例では、転写前露光装置14をドライバ流値I=4.2×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−500Vとした。
・電位設定:
本実施例及び比較例3のいずれにおいても、ライン画像太り対策のためにVlを大きくする設定とした。
比較例3、本実施例における、現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図11(a)、(b)に示すとおりである。
なお、画像形成装置本体、記録材、画像パターン、転写電圧の各実験条件は、実施例2の評価実験と同じである。
2−3.評価結果
表4に、本実施例及び比較例3の飛び散りの評価結果を示す。
比較例3では、飛び散りに関しては、NGレベルである。これは、ライン画像太り対策でVlを大きくしたにも拘わらず転写前露光装置14の露光量を変更しなかったため、Vdが低下しすぎてVlに近づき(電位差200V)、画像部にあるトナーが非画像部に飛び散ってしまうためと考えられる。
次に、本実施例では、飛び散りに関しては、OKレベルである。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、ライン画像太り対策でVlを大きくすると共に転写前露光装置14の露光量も低下させ、VdとVlとの差を、Vlを変更する前と同じ設定(電位差300V)にした。これにより、画像部から非画像部へのトナーの飛び散りを抑えられるためであると考えられる。
なお、本実施例及び比較例3のいずれにおいても、転写残ゴースト、突き抜けに関してはOKレベルであった。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、高温高湿環境において現像通過時の画像部電位を変更した場合にも、飛び散りを抑制することができる。
なお、実施例3の場合と同様、より多くの環境区分ごとに変更される現像通過時の画像部電位に応じて転写前露光装置14の露光量を変更してもよく、また現像通過時の画像部電位は環境の温度又は湿度の少なくとも一方に応じて変更されてもよい。
[実施例4]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
1.本実施例の概要
本実施例は、画像形成装置100、特にプロセスカートリッジ7の繰り返し使用量(画像形成枚数)に応じて、転写前露光装置14の露光量を変更する点が実施例1とは異なる。
プロセスカートリッジ7の繰り返し使用量が増加すると、感光ドラム1の表層が帯電部、現像部、転写部などで接触、摺擦することにより削られ、表層の膜厚が薄くなる。その場合、感光ドラム1の表層の静電容量が変わるため、感光ドラム1上の電位が同じ場合には、電荷量が異なる。そのため、繰り返し使用後に初期と同じVdとVlとを感光ドラム1上に形成し、繰り返し使用の前後で同じ量のトナーを画像部から記録材Pに転写させようとする場合、必要となる転写電流が異なってくる。また、細線などの転写ニップN内に感光ドラム1上のVlとVdとが同時に存在するような画像パターンでは、繰り返し使用後では非画像部の帯電電荷量が変わるため、非画像部に流れ込む転写電流も異なってくる。その場合、繰り返し使用後のVdとVlに流れ込む転写電流の比は、初期にVdとVlに流れ込む転写電流の比と変わってくる。
そこで、本実施例では、画像形成装置100に、使用量検知手段としてプロセスカートリッジ7を用いて行った画像形成枚数を計数するカウンター21を設ける(図12)。そして、エンジンコントローラ18が、プロセスカートリッジ7の使用量が所定の閾値(本実施例では5000枚)に達したことをと判断した場合に、転写前露光装置14の露光量を変更する。これにより、繰り返し使用の前後で、転写前露光装置14の露光量を変更して、転写通過時のVdとVlとの差を変更して、トナーの転写性を繰り返し使用後でも維持する。
2.評価実験
2−1.概要
本実施例の画像形成装置100における、プロセスカートリッジ7の初期と5000枚画像形成した時(繰り返し使用後)での画像上の転写残ゴーストのレベルと、突き抜けのレベルと、転写残トナーのレベルとを確認した。本実施例としては、繰り返し使用後のVdとVlとの差が異なる実施例4−1及び実施例4−2について評価実験を行った。
また、比較例4として、繰り返し使用後でも転写前露光装置14の露光量を変更しない場合について本実施例と同様の評価実験を行った。比較例4の評価実験で用いた画像形成装置は、上記の点を除いて、本実施例の評価実験で用いた画像形成装置と実質的に同じである。
2−2.実験条件
・転写前露光条件:
図13は、本評価実験における、露光量と相関関係にあるドライバ電流値と、感光ドラム1の表面電位との関係を示す。同図には、現像通過時の非画像部電位がVd=−900Vの場合における初期と5000枚時(繰り返し使用後)の関係が示されている。
比較例4では、初期は、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。また、繰り返し使用後も、転写前露光装置14の露光量を変えずにドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の表面電位はVd=−650Vとした。
実施例4−1では、初期は、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。また、繰り返し使用後は、転写前露光装置14の露光量を変えてドライバ電流値I=6.2×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。
実施例4−2では、初期は、転写前露光装置14をドライバ電流値I=5.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−400Vとした。また、繰り返し使用後は、転写前露光装置14の露光量を変えてドライバ電流値I=8.0×10−3Aで点灯させ、転写通過時の非画像部電位をVd=−300Vとした。
・電位設定:
比較例4の初期、繰り返し使用後における、現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図14(a)、(b)に示すとおりである。また、実施例4−1の初期、繰り返し使用後における、現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図15(a)、(b)に示すとおりである。また、実施例4−2の初期、繰り返し使用後における、現像通過時及び転写通過時の各電位設定は、それぞれ図16(a)、(b)に示すとおりである。
・転写電圧:
転写電圧Vtrを0.5kV、1.5kV、2.3kV、3kVに変更して同様の評価実験を行った。
なお、環境、画像形成装置本体、記録材、画像パターン、転写残濃度測定の各実験条件は、実施例1の評価実験と同じである。
2−3.評価結果
表5に、実施例4−1、実施例4−2及び比較例4の転写残ゴーストの評価結果を示す。表6に、各条件における、転写通過時のVtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比を示す。表7に、実施例4−1、実施例4−2及び比較例4の突き抜けの評価結果を示す。また、図17に、繰り返し使用後の、実施例4−1、実施例4−2及び比較例4の転写残濃度の評価結果を示す。
表5に示す転写残ゴーストの評価結果において、OKレベルであった理由、NGレベルであった理由は、実施例1について上述したのと同様に考えられる。
特に、比較例4では、転写残ゴーストに関しては、繰り返し使用後に、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kV、2.3kVの場合にNGレベルとなる。これは、繰り返し使用後にも転写前露光装置14の露光量を変えなかったため、非画像部電位がVd=−650Vまでしか下がらず、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差の比が大きいためであると考えられる。
また、実施例4−1では、転写残ゴーストに関しては、繰り返し使用後に、転写電圧Vtrが0.5kV、1.5kVの場合にNGレベルとなる。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、繰り返し使用後に転写前露光装置14の露光量を変え、転写通過時の非画像部電位を初期と同じVd=−400Vまで下げた。しかし、感光ドラム1の削れにより静電容量が初期と変わっているため、初期と同じVtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比にしても、初期と比べて転写性が若干悪化してしまっている。これに対し、転写電圧Vtrが2.3kV、3.0kVの場合はOKレベルとなる。これは、転写電圧を上げたことで、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比が小さくなるためであると考えられる。このように、実施例4−1では、転写前露光装置14の露光量を変えて転写通過時の非画像部電位を初期と同じまで低下させたので、転写残ゴーストがOKレベルの範囲は比較例4−1よりは広がっている。
また、実施例4−2では、転写残ゴーストに関しては、繰り返し使用後に、転写電圧Vtrが1.5kV、2.3kV、3.0kVの場合にOKレベルとなる。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、転写前露光装置14の露光量を実施例4−1の繰り返し使用後よりも増やした。これにより、転写通過時の非画像部電位がVd=−300Vまで低下し、VdとVlとの差も初期より小さくなる。その結果、実施例4−1の繰り返し使用後よりも更にOKレベルの領域が広くなる。このように、感光ドラム1の表層の削れにより静電容量が変わっても、VtrとVdとの差と、VtrとVlとの差との比を初期よりも小さくすることで、非画像部への多量の転写電流の流れ込みが抑制され、画像部に転写電流が十分に流れ込む。そのため、トナーを記録材P上に十分に引き付けることが可能となる。
また、図17に示す転写残濃度の評価結果からも、上記転写残ゴーストがOKレベルであった理由、NGレベルであった理由が裏付けられる。
ところで、実施例4−2では、繰り返し使用後の転写通過時のVdとVlとの差が200Vであったが、飛び散りは問題ないレベルであった。これは、次の理由によるものと考えられる。つまり、感光ドラム1の静電容量が変化しているため、画像部のトナーを含めた電位も変化している。そのため、初期のトナーを含めた画像部の電位よりも、繰り返し使用後のトナーを含めた画像部の電位が小さくなり、Vdとの電位差としては大きくなり、非画像部にトナーが飛び散ることがなくなる。
また、表7に示す突き抜けの評価結果において、OKレベルであった理由、NGレベルであった理由は、実施例1について上述したのと同様に考えられる。
以上をまとめると、比較例4では、繰り返し使用後に転写残ゴーストと突き抜けの両方を抑制することは困難である。これに対して、実施例4−1では、繰り返し使用後に転写前露光装置14の露光量を変更してVdとVlとの差を初期に近づけるようにした(本実施例では実質的に同じなるようにした。)。これにより、繰り返し使用後でも転写電圧Vtrが2.3kVの場合に、転写残ゴーストと突き抜けの両方を抑制することが可能となる。また、実施例4−2では、繰り返し使用後に転写前露光装置14の露光量を変更してVdとVlとの差を初期よりも小さくした。これにより、繰り返し使用後でも転写電圧Vtrが1.5kVと2.3kVの場合に、転写残ゴーストと突き抜けの両方を抑制することが可能となる。つまり、実施例4−2では、実施例4−1よりも更に、転写残ゴーストと突き抜けの両方を抑制できる範囲が広がる。このように、繰り返し使用後に初期よりも画像部電位と非画像部電位との差を小さくすることで、画像部に十分に転写電流を流して感光ドラム1上のトナーをより良好に転写することが可能となり、転写残ゴーストなどの画像不良を抑制する効果が高くなる。
なお、本実施例では、使用初期と画像形成枚数が5000枚になった場合とで転写前露光装置14の露光量を変更した。しかし、これに限定されるものではなく、画像形成枚数の増加に伴ってより少ない画像形成枚数ごと(あるいはより多い画像形成枚数ごと)に転写前露光装置14の露光量を変更するようにしてもよい。この場合、画像形成枚数が増加するにつれてVdとVlとの差を小さくすることができる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、各電位設定などは、上述した各実施例のものに限定されるものではなく、本発明を実施する装置において適宜設定し得るものである。
また、実施例2、3では、環境検知手段として環境の温度及び湿度の検知が可能な環境センサ20を用いたが、環境の温度又は湿度の少なくとも一方の情報が得られるものであればよい。例えば、画像形成前の準備動作である前回転時の転写電流(又は転写電圧)から環境の温度又は湿度の少なくとも一方の情報を取得し、Vd、Vlへのフィードバックする方法などを用いてもよい。つまり、画像形成前の前回転時に、一定の転写電流を転写部に流し、その際の発生電圧値に基づいて画像形成時の転写電圧の電圧値を決定する方法がある。この際の発生電圧値は、転写部の電気抵抗と相関関係があり、その電気抵抗は環境の温度又は湿度の少なくとも一方と相関関係がある。したがって、例えばこの転写電圧の制御において取得された発生電圧値の情報から、環境の温度又は湿度の少なくとも一方の情報を取得して、Vd、Vlの制御に用いることができる。なお、転写部の電気抵抗に係る情報が得られればよいので、一定の電圧を転写部に印加し、その際に流れる電流を検知するようにしてもよい。
また、実施例4では、画像形成装置の使用量と相関する値として、画像形成装置、特にプロセスカートリッジを使用して行った画像形成枚数の値を用いた。しかし、これに限定されるものではなく、画像形成装置、より詳細には感光体の使用量と相関する値であればよく、画像形成装置、特にプロセスカートリッジの稼働時間(感光体の回転時間や回転数、帯電時間などで代表できる。)などであってもよい。
また、実施例2、3で説明した現像通過時のVd、Vlの変更に応じて転写前露光装置の露光量を変更することと、実施例4で説明した画像形成装置の使用量と相関する値に応じて転写前露光装置の露光量を変更することとを組み合わせて実施してもよい。