以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る熱処理装置を組み込んだ基板処理装置の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置を組み込んだ基板処理装置1の平面図である。また、図2は基板処理装置1の液処理部の正面図であり、図3は熱処理部の正面図であり、図4は搬送ロボットおよび基板載置部の配置構成を示す図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
本実施形態の基板処理装置1は、半導体ウェハー等の基板Wにフォトレジスト膜を塗布形成するとともに、パターン露光後の基板Wに現像処理を行う装置(いわゆるコータ&デベロッパ)である。なお、本発明に係る基板処理装置1の処理対象となる基板Wは半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置用ガラス基板やフォトマスク用ガラス基板等であっても良い。
本実施形態の基板処理装置1は、インデクサブロック10、バークブロック20、レジスト塗布ブロック30、現像処理ブロック40およびインターフェイスブロック50の5つの処理ブロックを一方向(X方向)に連設して構成されている。インターフェイスブロック50には基板処理装置1とは別体の外部装置である露光ユニット(ステッパ)EXPが接続配置されている。
インデクサブロック10は、装置外から受け取った未処理基板Wを装置内に搬入するとともに、現像処理の終了した処理済み基板Wを装置外に搬出するための処理ブロックである。インデクサブロック10は、複数のキャリアC(本実施形態では4個)を並べて載置する載置台11と、各キャリアCから未処理の基板Wを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの基板Wを収納するインデクサロボットIRと、を備えている。
インデクサロボットIRは、載置台11に沿って(Y軸方向に沿って)水平移動可能であるとともに昇降(Z軸方向)移動および鉛直方向に沿った軸心周りの回転動作が可能である可動台12を備えている。可動台12には、基板Wを水平姿勢で保持する2つの保持アーム13a,13bが搭載されている。保持アーム13a,13bは相互に独立して前後にスライド移動可能とされている。よって、保持アーム13a,13bのそれぞれは、Y軸方向に沿った水平移動、昇降移動、水平面内の旋回動作および旋回半径方向に沿った進退移動を行う。これにより、インデクサロボットIRは、保持アーム13a,13bを個別に各キャリアCにアクセスさせて未処理の基板Wの取り出しおよび処理済みの基板Wの収納を行うことができる。なお、キャリアCの形態としては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納基板Wを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
インデクサブロック10に隣接してバークブロック20が設けられている。インデクサブロック10とバークブロック20との間には、雰囲気遮断用の隔壁15が設けられている。この隔壁15にインデクサブロック10とバークブロック20との間で基板Wの受け渡しを行うために基板Wを載置する2つの基板載置部PASS1,PASS2が上下に積層して設けられている。
上側の基板載置部PASS1は、インデクサブロック10からバークブロック20へ基板Wを搬送するために使用される。基板載置部PASS1は3本の支持ピンを備えており、インデクサブロック10のインデクサロボットIRはキャリアCから取り出した未処理の基板Wを基板載置部PASS1の3本の支持ピン上に載置する。そして、基板載置部PASS1に載置された基板Wを後述するバークブロック20の搬送ロボットTR1が受け取る。一方、下側の基板載置部PASS2は、バークブロック20からインデクサブロック10へ基板Wを搬送するために使用される。基板載置部PASS2も3本の支持ピンを備えており、バークブロック20の搬送ロボットTR1は処理済みの基板Wを基板載置部PASS2の3本の支持ピン上に載置する。そして、基板載置部PASS2に載置された基板WをインデクサロボットIRが受け取ってキャリアCに収納する。なお、後述する基板載置部PASS3〜PASS10の構成も基板載置部PASS1,PASS2と同じである。
基板載置部PASS1,PASS2は、隔壁15の一部に部分的に貫通して設けられている。また、基板載置部PASS1,PASS2には、基板Wの有無を検出する光学式のセンサ(図示省略)が設けられており、各センサの検出信号に基づいて、インデクサロボットIRや搬送ロボットTR1が基板載置部PASS1,PASS2に対して基板Wを受け渡しできる状態にあるか否かが判断される。
次に、バークブロック20について説明する。バークブロック20は、露光時に発生する定在波やハレーションを減少させるために、フォトレジスト膜の下地に反射防止膜を塗布形成するための処理ブロックである。バークブロック20は、基板Wの表面に反射防止膜を塗布形成するための下地塗布処理部21と、反射防止膜の塗布形成に付随する熱処理を行う2つの熱処理タワー22,23と、下地塗布処理部21および熱処理タワー22,23に対して基板Wの受け渡しを行う搬送ロボットTR1とを備える。
バークブロック20においては、搬送ロボットTR1を挟んで下地塗布処理部21と熱処理タワー22,23とが対向して配置されている。具体的には、下地塗布処理部21が装置正面側((−Y)側)に、2つの熱処理タワー22,23が装置背面側((+Y)側)に、それぞれ位置している。また、熱処理タワー22,23の正面側には図示しない熱隔壁を設けている。下地塗布処理部21と熱処理タワー22,23とを隔てて配置するとともに熱隔壁を設けることにより、熱処理タワー22,23から下地塗布処理部21に熱的影響を与えることを回避しているのである。
図2に示すように、下地塗布処理部21は同様の構成を備えた4つの塗布処理ユニットBRCを上下に積層配置して構成されている。それぞれの塗布処理ユニットBRCは、基板Wを略水平姿勢で吸着保持して略水平面内にて回転させるスピンチャック26、このスピンチャック26上に保持された基板W上に反射防止膜用の塗布液を吐出する塗布ノズル27、スピンチャック26を回転駆動させるスピンモータ(図示省略)およびスピンチャック26上に保持された基板Wの周囲を囲繞するカップ(図示省略)等を備えている。
図3に示すように、熱処理タワー22には、基板Wを所定の温度にまで加熱する2個の加熱ユニットHP、加熱された基板Wを冷却して所定の温度にまで降温するとともに基板Wを当該所定の温度に維持する2個の冷却ユニットCP、および、レジスト膜と基板Wとの密着性を向上させるためにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)の蒸気雰囲気中で基板Wを熱処理する3個の密着強化処理ユニットAHLが上下に積層配置されている。一方、熱処理タワー23にも2個の加熱ユニットHPおよび2個の冷却ユニットCPが上下に積層配置されている。加熱ユニットHPおよび密着強化処理ユニットAHLは基板Wを載置して加熱するホットプレートを備え、冷却ユニットCPは基板Wを載置して冷却するクーリングプレートを備えている。なお、図3において「×」印で示した箇所には配管配線部や、予備の空きスペースが割り当てられている(後述する他の熱処理タワーについても同じ)。
図4に示すように、搬送ロボットTR1は、基板Wを略水平姿勢で保持する搬送アーム24a,24bを上下2段に近接させて備えている。搬送アーム24a,24bのそれぞれは、先端部が平面視で「C」字形状になっており、この「C」字形状のアームの内側から内方に突き出た複数本のピンで基板Wの周縁を下方から支持するようになっている。搬送アーム24a,24bは搬送ヘッド28に搭載されている。搬送ヘッド28は、図示省略の駆動機構によって鉛直方向(Z軸方向)に沿った昇降移動および鉛直方向に沿った軸心周りの回転動作が可能である。また、搬送ヘッド28は、図示省略のスライド機構によって搬送アーム24a,24bを互いに独立して水平方向に進退移動させることができる。よって、搬送アーム24a,24bのそれぞれは、昇降移動、水平面内の旋回動作および旋回半径方向に沿った進退移動を行う。これにより、搬送ロボットTR1は、2個の搬送アーム24a,24bをそれぞれ個別に基板載置部PASS1,PASS2、熱処理タワー22,23に設けられた熱処理ユニット(加熱ユニットHP、冷却ユニットCPおよび密着強化処理ユニットAHL)、下地塗布処理部21に設けられた4つの塗布処理ユニットBRCおよび後述する基板載置部PASS3,PASS4に対してアクセスさせて、それらとの間で基板Wの授受を行うことができる。
次に、レジスト塗布ブロック30について説明する。バークブロック20と現像処理ブロック40との間に挟み込まれるようにしてレジスト塗布ブロック30が設けられている。このレジスト塗布ブロック30とバークブロック20との間にも、雰囲気遮断用の隔壁25が設けられている。この隔壁25にバークブロック20とレジスト塗布ブロック30との間で基板Wの受け渡しを行うために基板Wを載置する2つの基板載置部PASS3,PASS4が上下に積層して設けられている。基板載置部PASS3,PASS4は、上述した基板載置部PASS1,PASS2と同様の構成を備えている。
上側の基板載置部PASS3は、バークブロック20からレジスト塗布ブロック30へ基板Wを搬送するために使用される。すなわち、バークブロック20の搬送ロボットTR1が基板載置部PASS3に載置した基板Wをレジスト塗布ブロック30の搬送ロボットTR2が受け取る。一方、下側の基板載置部PASS4は、レジスト塗布ブロック30からバークブロック20へ基板Wを搬送するために使用される。すなわち、レジスト塗布ブロック30の搬送ロボットTR2が基板載置部PASS4に載置した基板Wをバークブロック20の搬送ロボットTR1が受け取る。
基板載置部PASS3,PASS4は、隔壁25の一部に部分的に貫通して設けられている。また、基板載置部PASS3,PASS4には、基板Wの有無を検出する光学式のセンサ(図示省略)が設けられており、各センサの検出信号に基づいて、搬送ロボットTR1,TR2が基板載置部PASS3,PASS4に対して基板Wを受け渡しできる状態にあるか否かが判断される。
レジスト塗布ブロック30は、反射防止膜が塗布形成された基板W上にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成するための処理ブロックである。なお、本実施形態では、フォトレジストとして化学増幅型レジストを用いている。レジスト塗布ブロック30は、下地塗布された反射防止膜の上にレジスト膜を塗布形成するレジスト塗布処理部31と、レジスト塗布処理に付随する熱処理を行う2つの熱処理タワー32,33と、レジスト塗布処理部31および熱処理タワー32,33に対して基板Wの受け渡しを行う搬送ロボットTR2とを備える。
レジスト塗布ブロック30においては、搬送ロボットTR2を挟んでレジスト塗布処理部31と熱処理タワー32,33とが対向して配置されている。具体的には、レジスト塗布処理部31が装置正面側に、2つの熱処理タワー32,33が装置背面側に、それぞれ位置している。また、熱処理タワー32,33の正面側には図示しない熱隔壁を設けている。レジスト塗布処理部31と熱処理タワー32,33とを隔てて配置するとともに熱隔壁を設けることにより、熱処理タワー32,33からレジスト塗布処理部31に熱的影響を与えることを回避しているのである。
図2に示すように、レジスト塗布処理部31は同様の構成を備えた4つの塗布処理ユニットSCを上下に積層配置して構成されている。それぞれの塗布処理ユニットSCは、基板Wを略水平姿勢で吸着保持して略水平面内にて回転させるスピンチャック36、このスピンチャック36上に保持された基板W上にフォトレジストの塗布液を吐出する塗布ノズル37、スピンチャック36を回転駆動させるスピンモータ(図示省略)およびスピンチャック36上に保持された基板Wの周囲を囲繞するカップ(図示省略)等を備えている。
図3に示すように、熱処理タワー32には、基板Wを所定の温度にまで加熱するホットプレートを備えた2個の加熱ユニットHP、および、加熱された基板Wを冷却して所定の温度にまで降温するとともに基板Wを当該所定の温度に維持するクーリングプレートを備えた2個の冷却ユニットCPが上下に積層配置されている。一方、熱処理タワー33にも2個の加熱ユニットHPおよび2個の冷却ユニットCPが上下に積層配置されている。
図4に示すように、搬送ロボットTR2は、搬送ロボットTR1と同様の構成を備えており、基板Wを略水平姿勢で保持する搬送アーム34a,34bを上下2段に近接させて備えている。搬送アーム34a,34bは、「C」字形状のアームの内側から内方に突き出た複数本のピンで基板Wの周縁を下方から支持する。搬送アーム34a,34bは搬送ヘッド38に搭載されている。搬送ヘッド38は、図示省略の駆動機構によって鉛直方向(Z軸方向)に沿った昇降移動および鉛直方向に沿った軸心周りの回転動作が可能である。また、搬送ヘッド38は、図示省略のスライド機構によって搬送アーム34a,34bを互いに独立して水平方向に進退移動させることができる。よって、搬送アーム34a,34bのそれぞれは、昇降移動、水平面内の旋回動作および旋回半径方向に沿った進退移動を行う。これにより、搬送ロボットTR2は、2個の搬送アーム34a,34bをそれぞれ個別に基板載置部PASS3,PASS4、熱処理タワー32,33に設けられた熱処理ユニット、レジスト塗布処理部31に設けられた4つの塗布処理ユニットSCおよび後述する基板載置部PASS5,PASS6に対してアクセスさせて、それらとの間で基板Wの授受を行うことができる。
次に、現像処理ブロック40について説明する。レジスト塗布ブロック30とインターフェイスブロック50との間に挟み込まれるようにして現像処理ブロック40が設けられている。この現像処理ブロック40とレジスト塗布ブロック30との間にも、雰囲気遮断用の隔壁35が設けられている。この隔壁35にレジスト塗布ブロック30と現像処理ブロック40との間で基板Wの受け渡しを行うために基板Wを載置する2つの基板載置部PASS5,PASS6が上下に積層して設けられている。基板載置部PASS5,PASS6は、上述した基板載置部PASS1,PASS2と同様の構成を備えている。
上側の基板載置部PASS5は、レジスト塗布ブロック30から現像処理ブロック40へ基板Wを搬送するために使用される。すなわち、レジスト塗布ブロック30の搬送ロボットTR2が基板載置部PASS5に載置した基板Wを現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3が受け取る。一方、下側の基板載置部PASS6は、現像処理ブロック40からレジスト塗布ブロック30へ基板Wを搬送するために使用される。すなわち、現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3が基板載置部PASS6に載置した基板Wをレジスト塗布ブロック30の搬送ロボットTR2が受け取る。
基板載置部PASS5,PASS6は、隔壁35の一部に部分的に貫通して設けられている。また、基板載置部PASS5,PASS6には、基板Wの有無を検出する光学式のセンサ(図示省略)が設けられており、各センサの検出信号に基づいて、搬送ロボットTR2,TR3が基板載置部PASS5,PASS6に対して基板Wを受け渡しできる状態にあるか否かが判断される。
現像処理ブロック40は、露光処理後の基板Wに対して現像処理を行うための処理ブロックである。現像処理ブロック40は、パターンが露光された基板Wに対して現像液を供給して現像処理を行う現像処理部41と、現像処理後の熱処理を行う熱処理タワー42と、露光直後の基板Wに熱処理を行う熱処理タワー43と、現像処理部41および熱処理タワー42に対して基板Wの受け渡しを行う搬送ロボットTR3とを備える。
図2に示すように、現像処理部41は、同様の構成を備えた5つの現像処理ユニットSDを上下に積層配置して構成されている。各現像処理ユニットSDは、基板Wを略水平姿勢で吸着保持して略水平面内にて回転させるスピンチャック46、このスピンチャック46上に保持された基板W上に現像液を供給するノズル47、スピンチャック46を回転駆動させるスピンモータ(図示省略)およびスピンチャック46上に保持された基板Wの周囲を囲繞するカップ(図示省略)等を備えている。
図3に示すように、熱処理タワー42には、基板Wを所定の温度にまで加熱するホットプレートを備えた2個の加熱ユニットHPおよび加熱された基板Wを冷却して所定の温度にまで降温するとともに基板Wを当該所定の温度に維持するクーリングプレートを備えた2個の冷却ユニットCPが上下に積層配置されている。また、熱処理タワー42には、フラッシュ光を照射して基板Wを瞬間的に加熱する1個のフラッシュベークユニットFLBが配置されている。このフラッシュベークユニットFLBについてはさらに後述する。一方、熱処理タワー43にも2個の加熱ユニットHPおよび2個の冷却ユニットCPが上下に積層配置されている。熱処理タワー43の加熱ユニットHPは露光直後の基板Wに対して露光後ベーク処理を行う。熱処理タワー43の加熱ユニットHPおよび冷却ユニットCPに対してはインターフェイスブロック50の搬送ロボットTR4が基板Wの搬出入を行う。
また、熱処理タワー43には、現像処理ブロック40とインターフェイスブロック50との間で基板Wの受け渡しを行うための2つの基板載置部PASS7,PASS8が上下に近接して組み込まれている。上側の基板載置部PASS7は、現像処理ブロック40からインターフェイスブロック50へ基板Wを搬送するために使用される。すなわち、現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3が基板載置部PASS7に載置した基板Wをインターフェイスブロック50の搬送ロボットTR4が受け取る。一方、下側の基板載置部PASS8は、インターフェイスブロック50から現像処理ブロック40へ基板Wを搬送するために使用される。すなわち、インターフェイスブロック50の搬送ロボットTR4が基板載置部PASS8に載置した基板Wを現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3が受け取る。なお、基板載置部PASS7,PASS8は、現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3およびインターフェイスブロック50の搬送ロボットTR4の両側に対して開口している。
図4に示すように、搬送ロボットTR3は、基板Wを略水平姿勢で保持する搬送アーム44a,44bを上下に近接させて備えている。搬送アーム44a,44bは、「C」字形状のアームの内側から内方に突き出た複数本のピンで基板Wの周縁を下方から支持する。搬送アーム44a,44bは搬送ヘッド48に搭載されている。搬送ヘッド48は、図示省略の駆動機構によって鉛直方向(Z軸方向)に沿った昇降移動および鉛直方向に沿った軸心周りの回転動作が可能である。また、搬送ヘッド48は、図示省略のスライド機構によって搬送アーム44a,44bを互いに独立して水平方向に進退移動させることができる。よって、搬送アーム44a,44bのそれぞれは、昇降移動、水平面内の旋回動作および旋回半径方向に沿った進退移動を行う。これにより、搬送ロボットTR3は、2個の搬送アーム44a,44bをそれぞれ個別に基板載置部PASS5,PASS6、熱処理タワー42に設けられた熱処理ユニット、現像処理部41に設けられた5つの現像処理ユニットSDおよび熱処理タワー43の基板載置部PASS7,PASS8に対してアクセスさせて、それらとの間で基板Wの授受を行うことができる。
次に、インターフェイスブロック50について説明する。インターフェイスブロック50は、現像処理ブロック40に隣接して配置され、レジスト膜が塗布形成された未露光の基板Wを基板処理装置1とは別体の外部装置である露光ユニットEXPに渡すとともに、露光済みの基板Wを露光ユニットEXPから受け取って現像処理ブロック40に渡す処理ブロックである。インターフェイスブロック50は、露光ユニットEXPとの間で基板Wの受け渡しを行うための搬送機構IFRの他に、レジスト膜が形成された基板Wの周縁部を露光する2つのエッジ露光ユニットEEWと、現像処理ブロック40の熱処理タワー43およびエッジ露光ユニットEEWに対して基板Wを受け渡しする搬送ロボットTR4とを備える。
エッジ露光ユニットEEWは、図2に示すように、基板Wを略水平姿勢で吸着保持して略水平面内にて回転させるスピンチャック56およびスピンチャック56に保持された基板Wの周縁に光を照射して露光する光照射器57などを備えている。2つのエッジ露光ユニットEEWは、インターフェイスブロック50の中央部に上下に積層配置されている。また、エッジ露光ユニットEEWの下側には、基板送り用のセンドバッファSBF、基板戻し用のリターンバッファRBF、および、2つの基板載置部PASS9,PASS10、が上下に積層配置されている。上側の基板載置部PASS9は搬送ロボットTR4から搬送機構IFRに基板Wを渡すために使用するものであり、下側の基板載置部PASS10は搬送機構IFRから搬送ロボットTR4に基板Wを渡すために使用するものである。
リターンバッファRBFは、何らかの障害によって現像処理ブロック40が露光済みの基板Wの現像処理を行うことができない場合に、現像処理ブロック40の熱処理タワー43で露光後ベーク処理を行った後に、その基板Wを一時的に収納保管しておくものである。一方、センドバッファSBFは、露光ユニットEXPが未露光の基板Wの受け入れをできないときに、露光処理前の基板Wを一時的に収納保管するものである。リターンバッファRBFおよびセンドバッファSBFはいずれも複数枚の基板Wを多段に収納できる収納棚によって構成されている。なお、リターンバッファRBFに対しては搬送ロボットTR4がアクセスを行い、センドバッファSBFに対しては搬送機構IFRがアクセスを行う。
現像処理ブロック40の熱処理タワー43に隣接して配置されている搬送ロボットTR4は、基板Wを略水平姿勢で保持する搬送アーム54a,54bを上下に近接させて備えており、その構成および動作機構は搬送ロボットTR1〜TR3と全く同じである。また、搬送機構IFRは、Y軸方向の水平移動、昇降移動および鉛直方向に沿った軸心周りの回転動作が可能な可動台52を備え、その可動台52に基板Wを水平姿勢で保持する2つの保持アーム53a,53bを搭載している。保持アーム53a,53bは相互に独立して前後にスライド移動可能とされている。よって、保持アーム53a,53bのそれぞれは、Y軸方向に沿った水平移動、昇降移動、水平面内の旋回動作および旋回半径方向に沿った進退移動を行う。
露光ユニットEXPは、基板処理装置1にてレジスト塗布された露光前の基板Wを搬送機構IFRから受け取ってパターン露光処理を行う。露光ユニットEXPにて露光処理の行われた基板Wは搬送機構IFRによって受け取られる。なお、露光ユニットEXPは、投影光学系と基板Wとの間に屈折率の大きな液体(例えば、屈折率n=1.44の純水)を満たした状態で露光処理を行う、いわゆる「液浸露光処理」に対応したものであっても良い。また、露光ユニットEXPは、電子線露光やEUV(Extreme Ultra Violet)露光など真空中で露光処理を行うものであっても良い。
次に、熱処理タワー42に設けられているフラッシュベークユニットFLBについて説明する。図5は、フラッシュベークユニットFLBの要部構成を示す図である。フラッシュベークユニットFLBは、露光処理および現像処理が終了した基板Wに対してフラッシュ光を照射してレジスト膜の整形を行う熱処理ユニットである。
フラッシュベークユニットFLBは、基板Wを収容するチャンバー70と、チャンバー70内にて基板Wを載置して保持する保持プレート81と、チャンバー70から排気を行う排気部77と、チャンバー70内に不活性ガスを供給するガス供給部74と、基板Wにフラッシュ光を照射するフラッシュ照射部60と、を備えている。また、フラッシュベークユニットFLBは、これらの各部を制御して露光後ベーク処理を実行させるユニットコントローラ90を備える。
チャンバー70は、フラッシュ照射部60の下方に設けられており、基板Wを収容可能な筐体である。チャンバー70の上部開口にはチャンバー窓69が装着されて閉塞されている。チャンバー70の側壁および底壁とチャンバー窓69とによって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。チャンバー70の天井部を構成するチャンバー窓69は、合成石英により形成された板状部材であり、フラッシュ照射部60から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。合成石英は、波長300nm以下の紫外域においても高い透過率を有する。
チャンバー70の側壁には、基板Wの搬入および搬出を行うための搬送開口部68が設けられている。搬送開口部68は、図示を省略するシャッターによって開閉可能とされている。搬送開口部68が開放されると、搬送ロボットTR3によってチャンバー70に対する基板Wの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部68が閉鎖されると、熱処理空間65が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
保持プレート81は、冷却機構82を内蔵した金属製(例えば、アルミニウム)の略円板形状の部材であり、チャンバー70内にて基板Wを載置して水平姿勢(主面の法線方向が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する。冷却機構82としては、水冷管やペルチェ素子などを用いることができる。冷却機構82は、少なくとも保持プレート81のうちの載置する基板Wに対向する領域には均一な配設密度にて設けられている。このため冷却機構82は、当該領域を均一に冷却することができる。冷却機構82による冷却温度はユニットコントローラ90によって制御されており、本実施形態では半導体製造技術分野における常温である23℃を維持するように制御されている。
また、保持プレート81の内部には熱電対を用いて構成された温度センサ83が配設されている。温度センサ83は保持プレート81の上面近傍の温度を測定する。温度センサ83による測定結果はユニットコントローラ90に伝達される。温度センサ83によって測定される保持プレート81の温度が予め設定された所定温度(本実施形態では23℃)となるように、冷却機構82がユニットコントローラ90によって制御される。すなわち、ユニットコントローラ90は、温度センサ83の測定結果に基づいて、保持プレート81の温度をフィードバック制御する。なお、温度センサ83は、保持プレート81が載置する基板Wが対向する領域に複数設けるようにしても良い。
保持プレート81の上面には、図示を省略する複数個(3個以上)のプロキシミティボールが配設されている。プロキシミティボールは、例えばアルミナ(Al2O3)等の部材によって構成され、その上端が保持プレート81の上面から微少量だけ突出する状態で配設される。このため、複数個のプロキシミティボールによって基板Wを支持したときには、基板Wの裏面と保持プレート81の上面との間にいわゆるプロキシミティギャップと称される微小間隔が形成される。なお、保持プレート81の上面にサセプタを設置し、そのサセプタを介して基板Wを支持するようにしても良い。
複数個のプロキシミティボールを介して保持プレート81に載置された基板Wは、保持プレート81によって常温(23℃)に温調される。すなわち、基板Wの温度が常温よりも高温であれば、常温にまで冷却される。また、常温近傍の基板Wについては、そのまま基板Wを安定して常温に維持する。
保持プレート81には、その上面に出没する複数本(本実施の形態では3本)のリフトピン84が設けられている。3本のリフトピン84の上端高さ位置は同一水平面内に含まれる。3本のリフトピン84はエアシリンダ85によって一括して鉛直方向に沿って昇降される。各リフトピン84は、保持プレート81に上下に貫通して設けられた挿通孔の内側に沿って昇降する。エアシリンダ85が3本のリフトピン84を上昇させると、各リフトピン84の先端が保持プレート81の上面から突出する。また、エアシリンダ85が3本のリフトピン84を下降させると、各リフトピン84の先端が保持プレート81の挿通孔の内部に埋入する。
ガス供給部74は、チャンバー70内に不活性ガスとして窒素ガス(N2)を供給する。ガス供給部74は、窒素供給源75とバルブ76とを備えており、バルブ76を開放することによってチャンバー70内の熱処理空間65に窒素ガスを供給する。なお、窒素供給源75としては、基板処理装置1に設けられたタンクと送給ポンプなどによって構成するようにしても良いし、基板処理装置1が設置される工場の用力を用いるようにしても良い。
排気部77は、排気装置78およびバルブ79を備えており、バルブ79を開放することによってチャンバー70内の雰囲気を排気する。排気装置78としては、真空ポンプや基板処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気装置78として真空ポンプを採用し、ガス供給部74から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間65の雰囲気を排気すると、チャンバー70内を真空雰囲気にまで減圧することができる。また、排気装置78として真空ポンプを用いていない場合であっても、ガス供給部74からガス供給を行うことなく排気を行うことにより、チャンバー70内を大気圧よりも低い気圧に減圧することができる。
フラッシュ照射部60は、チャンバー70の上方に設けられている。フラッシュ照射部60は、複数本のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ62と、を備えて構成される。フラッシュ照射部60は、チャンバー70内にて保持プレート81に保持される基板Wに石英のチャンバー窓69を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持プレート81に保持される基板Wの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
図6は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。また、図6に示すように、ユニットコントローラ90は、パルス発生器98および波形設定部99を備えるとともに、入力部67に接続されている。入力部67としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部67からの入力内容に基づいて波形設定部99がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器98がパルス信号を発生する。
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングはユニットコントローラ90によって制御される。
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートにはユニットコントローラ90のパルス発生器98からパルス信号が印加される。IGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Highの電圧)が印加されるとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)が印加されるとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続される。
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
本実施形態のフラッシュランプFLは、紫外域の波長成分を比較的多く含んだフラッシュ光を放射する。図7は、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の分光分布を示す図である。同図に示すように、本実施形態のフラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光は、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有する。また、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光は、分光分布にて波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上である。図7に示すような分光分布は、ガラス管92内に封入するキセノンガスの成分やガス圧の調整によって得ることができる。なお、ガラス管92も波長300nm以下の紫外域において高い透過率を有する合成石英にて形成するのが好ましい。
また、リフレクタ62は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ62の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ62はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
ユニットコントローラ90は、フラッシュベークユニットFLBに設けられた上記の種々の動作機構を制御する。ユニットコントローラ90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、ユニットコントローラ90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えて構成される。ユニットコントローラ90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによってフラッシュベークユニットFLBにおける処理が進行する。なお、ユニットコントローラ90は、基板処理装置1の全体を管理するメインコントローラの下位コントローラとして設けられていても良い。
次に、上記の構成を有する基板処理装置1における基板処理の手順について説明する。ここでは、まず、基板処理装置1における全体の処理手順を簡単に説明した後、フラッシュベークユニットFLBでの処理について説明する。
装置外部から未処理の基板WがキャリアCに収納された状態でAGV等によってインデクサブロック10に搬入される。続いて、インデクサブロック10から未処理の基板Wの払い出しが行われる。具体的には、インデクサロボットIRが所定のキャリアCから未処理の基板Wを取り出し、上側の基板載置部PASS1に載置する。基板載置部PASS1に未処理の基板Wが載置されると、バークブロック20の搬送ロボットTR1がその基板Wを受け取って熱処理タワー22のいずれかの密着強化処理ユニットAHLに搬送する。密着強化処理ユニットAHLでは、HMDSの蒸気雰囲気で基板Wを熱処理して基板Wの密着性を向上させる。密着強化処理の終了した基板Wは搬送ロボットTR1によって取り出され、熱処理タワー22,23のいずれかの冷却ユニットCPに搬送されて冷却される。
冷却された基板Wは搬送ロボットTR1によって冷却ユニットCPから下地塗布処理部21のいずれかの塗布処理ユニットBRCに搬送される。塗布処理ユニットBRCでは、基板Wの表面に反射防止膜の塗布液が供給されて回転塗布される。
塗布処理が終了した後、基板Wは搬送ロボットTR1によって熱処理タワー22,23のいずれかの加熱ユニットHPに搬送される。加熱ユニットHPにて基板Wが加熱されることによって、塗布液が乾燥されて基板W上に下地の反射防止膜が焼成される。その後、搬送ロボットTR1によって加熱ユニットHPから取り出された基板Wは熱処理タワー22,23のいずれかの冷却ユニットCPに搬送されて冷却される。冷却後の基板Wは搬送ロボットTR1によって基板載置部PASS3に載置される。
次に、反射防止膜が形成された基板Wが基板載置部PASS3に載置されると、レジスト塗布ブロック30の搬送ロボットTR2がその基板Wを受け取って熱処理タワー32,33のいずれかの冷却ユニットCPに搬送して所定温度に温調する。続いて、搬送ロボットTR2が温調済みの基板Wをレジスト塗布処理部31のいずれかの塗布処理ユニットSCに搬送する。塗布処理ユニットSCでは、基板Wの表面にフォトレジストの塗布液が回転塗布されてレジスト膜が形成される。本実施形態においては、フォトレジストとして化学増幅型レジストが使用される。
レジスト塗布処理が終了した後、塗布処理ユニットSCから搬出された基板Wは搬送ロボットTR2によって熱処理タワー32,33のいずれかの加熱ユニットHPに搬送される。加熱ユニットHPにて基板Wが加熱(Post Applied Bake)されることによって、塗布液が乾燥されて基板W上にレジスト膜が形成される。その後、搬送ロボットTR2によって加熱ユニットHPから取り出された基板Wは熱処理タワー32,33のいずれかの冷却ユニットCPに搬送されて冷却される。冷却後の基板Wは搬送ロボットTR2によって基板載置部PASS5に載置される。
塗布後ベーク処理が終了した基板Wが基板載置部PASS5に載置されると、現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3がその基板Wを受け取ってそのまま基板載置部PASS7に載置する。そして、基板載置部PASS7に載置された基板Wはインターフェイスブロック50の搬送ロボットTR4によって受け取られ、上下いずれかのエッジ露光ユニットEEWに搬入される。エッジ露光ユニットEEWにおいては、基板Wの端縁部の露光処理(エッジ露光処理)が行われる。エッジ露光処理が終了した基板Wは搬送ロボットTR4によって基板載置部PASS9に載置される。そして、基板載置部PASS9に載置された基板Wは搬送機構IFRによって受け取られ、露光ユニットEXPに搬入され、パターン露光処理に供される。本実施形態では化学増幅型レジストを使用しているため、基板W上に形成されたレジスト膜のうち露光された部分では光化学反応によって酸が生成する。
パターン露光処理が終了した露光済みの基板Wは露光ユニットEXPから再びインターフェイスブロック50に戻され、搬送機構IFRによって基板載置部PASS10に載置される。露光後の基板Wが基板載置部PASS10に載置されると、搬送ロボットTR4がその基板Wを受け取って現像処理ブロック40の熱処理タワー43のいずれかの加熱ユニットHPに搬送する。熱処理タワー43の加熱ユニットHPでは、露光時の光化学反応によって生じた生成物を酸触媒としてレジストの樹脂の化学反応を進行させ、現像液に対する溶解度を露光部分のみ局所的に変化させるための露光後ベーク処理(Post-Exposure-Bake)が行われる。
露光後ベーク処理が終了した基板Wが加熱ユニットHP内部の機構によって冷却されることにより、上記化学反応が停止する。続いて基板Wは、搬送ロボットTR4によって熱処理タワー43の加熱ユニットHPから取り出され、基板載置部PASS8に載置される。
基板載置部PASS8に基板Wが載置されると、現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3がその基板Wを受け取って熱処理タワー42のいずれかの冷却ユニットCPに搬送する。冷却ユニットCPにおいては、露光後ベーク処理が終了した基板Wがさらに冷却され、所定温度に正確に温調される。その後、搬送ロボットTR3は、冷却ユニットCPから基板Wを取り出して現像処理部41のいずれかの現像処理ユニットSDに搬送する。現像処理ユニットSDでは、基板Wに現像液を供給して現像処理を進行させる。やがて現像処理が終了した後、基板Wは搬送ロボットTR3によって熱処理タワー42のいずれかの加熱ユニットHPに搬送され、レジスト膜を完全に乾燥させるためのハードベーク処理(HB:Hard-Bake)が行われる。さらにその後、ハードベーク処理の終了した基板Wは搬送ロボットTR3によって加熱ユニットHPから取り出され、熱処理タワー42のフラッシュベークユニットFLBに搬送される。詳細は後述するが、フラッシュベークユニットFLBでは、露光処理および現像処理によってパターンが形成された基板Wにフラッシュ光を照射してレジスト膜を加熱し、そのレジスト膜の形状を整える。搬送ロボットTR3によってフラッシュベークユニットFLBから取り出された基板Wは熱処理タワー42のいずれかの冷却ユニットCPに搬送されて冷却される。
その後、基板Wは搬送ロボットTR3によって冷却ユニットCPから取り出されて基板載置部PASS6に載置される。基板載置部PASS6に載置された基板Wは、レジスト塗布ブロック30の搬送ロボットTR2によってそのまま基板載置部PASS4に載置される。さらに、基板載置部PASS4に載置された基板Wは、バークブロック20の搬送ロボットTR1によってそのまま基板載置部PASS2に載置されることにより、インデクサブロック10に格納される。基板載置部PASS2に載置された処理済みの基板WはインデクサロボットIRによって所定のキャリアCに収納される。その後、所定枚数の処理済み基板Wが収納されたキャリアCが装置外部に搬出されて一連のフォトリソグラフィー処理が完了する。
フラッシュベークユニットFLBでの処理についてさらに説明を続ける。以下に説明するフラッシュベークユニットFLBの処理手順は、ユニットコントローラ90がフラッシュベークユニットFLBの各動作機構を制御することにより進行する。
まず、図示省略のシャッターが開いて搬送開口部68が開放され、現像処理ブロック40の搬送ロボットTR3によってハードベーク処理後の基板Wがチャンバー70内に搬入される。搬入される基板Wの表面には、露光処理および現像処理によってパターン形成のなされたレジスト膜が形成されている。このレジスト膜の厚さは100nm以下である。基板Wを保持した搬送ロボットTR3の搬送アーム44b(または44a)が搬送開口部68からチャンバー70内に進入し、保持プレート81の直上にて停止する。続いて、3本のリフトピン84が上昇して搬送アーム44bから基板Wを受け取る。その後、搬送ロボットTR3の搬送アーム44bがチャンバー70から退出するとともに、搬送開口部68が閉鎖されることによってチャンバー70内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、搬送ロボットTR3の搬送アーム44bが退出した後、露光後の基板Wを支持する3本のリフトピン84が下降して保持プレート81の挿通孔の内部に埋入する。リフトピン84が下降する過程において、基板Wはリフトピン84から保持プレート81の上面に渡され、その上面に水平姿勢にて載置・保持される。
熱処理空間65が密閉空間とされて基板Wが保持プレート81に保持された後、ユニットコントローラ90の制御によりフラッシュ照射部60のフラッシュランプFLから保持プレート81に保持された基板Wの表面に向けてフラッシュ光が照射される。このときには、ガス供給部74および排気部77によってチャンバー70内の雰囲気が窒素雰囲気に置換されていても良い。また、保持プレート81に保持された基板Wは概ね常温に温調されている。
フラッシュランプFLがフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、ユニットコントローラ90のパルス発生器98からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。
パルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部67から入力することによって規定することができる。このようなレシピをオペレータが入力部67からユニットコントローラ90に入力すると、それに従ってユニットコントローラ90の波形設定部99はオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部99によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器98がパルス信号を出力する。その結果、IGBT96のゲートにはオンオフを繰り返すパルス信号が印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。具体的には、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、パルス信号がオフのときにはIGBT96がオフ状態となる。
また、パルス発生器98から出力するパルス信号がオンになるタイミングと同期してユニットコントローラ90がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧(トリガー電圧)を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96のゲートにパルス信号が入力され、かつ、そのパルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されることにより、パルス信号がオンのときにはガラス管92内の両端電極間で必ず電流が流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
このように、回路中にスイッチング素子たるIGBT96を接続してそのゲートにオンオフを繰り返すパルス信号を出力することにより、コンデンサ93からフラッシュランプFLへの電荷の供給をIGBT96によって断続してフラッシュランプFLに流れる電流を制御している。その結果、いわばフラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷が分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。但し、フラッシュランプFLに流れる電流値が完全に”0”になる前に次のパルスがIGBT96のゲートに印加されて電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光出力が完全に”0”になるものではない。従って、比較的間隔の短いパルス信号がIGBT96に出力されているときには、その間フラッシュランプFLが連続して発光していることとなる。
パルス信号の波形は、パルス幅の時間およびパルス間隔の時間を規定することによって任意に設定することができる。このため、IGBT96のオンオフ駆動も任意に制御することができ、パルス信号の波形を適宜に設定することにより、フラッシュランプFLの発光時間を0.1ミリ秒〜1000ミリ秒の範囲で調整することができる。フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー70内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ62により反射されてからチャンバー70内へと向かう。このようなフラッシュ光の照射によって、基板Wの表面がフラッシュ加熱される。
図8は、フラッシュ光照射によって基板Wの表面が加熱される様子を説明する模式図である。基板Wの表面にはレジスト膜5が形成され、そのレジスト膜5は上述のパターン露光処理および現像処理によってパターンが形成されている。但し、現像処理後のレジスト膜5には、露光時の僅かな光強度のバラツキやレジスト材料の不均一性などに起因してパターンの線幅が凹凸にずれる現象(LWR)が生じていることもある。
ここで、図7に示したように、本実施形態のフラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光は、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するとともに、波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上である。すなわち、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光には、紫外域の波長成分が比較的多く含まれている。
また、フラッシュ光を透過する石英窓として機能するチャンバー窓69は、波長300nm以下の紫外域においても高い透過率を有する合成石英にて形成されている。従って、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光に含まれる紫外域の成分はほとんどチャンバー窓69を透過し、チャンバー70内にて保持プレート81に保持された基板Wの表面には、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するとともに、分光分布にて波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上であるフラッシュ光が照射される。
基板Wの表面に形成されているレジスト膜5は、可視光に対しては透明である一方、紫外線に対しては不透明である。すなわち、レジスト膜5は、可視光を透過するものの、紫外線は吸収する。従来より使用されている典型的なフラッシュランプでは、放射するフラッシュ光に主として可視光域の成分を含んでいる。このような可視光域を主成分とするフラッシュ光が基板Wに照射されると、フラッシュ光はレジスト膜5を透過して基板Wに到達して吸収されることとなる。その結果、フラッシュ光照射時には、まず基板Wとレジスト膜5との界面が昇温し、その熱がレジスト膜5に伝わってレジスト膜5が加熱される。そうすると、基板Wに既に形成されているデバイス構造等に熱的なダメージを与えるおそれがある。
本実施形態においては、紫外域の波長成分が多く含まれているフラッシュ光が基板Wの表面に照射される。このため、フラッシュ光は、レジスト膜5を透過すること無く、レジスト膜5によって吸収されることとなる。その結果、フラッシュ光照射時には、レジスト膜5の表層部が直接加熱されることとなる一方、基板W自体はほとんど昇温しない。すなわち、フラッシュ光照射によってレジスト膜5の表層部のみが選択的に加熱されるのである。
図9は、フラッシュ光照射後の基板Wの表面の様子を説明する模式図である。基板Wの表面に形成されたレジスト膜5が紫外域の波長成分を多く含む照射時間が0.1ミリ秒〜1000ミリ秒のフラッシュ光の照射によって所定温度以上に昇温されることにより、レジスト膜5の表面形状が平坦化されてパターンの線幅が凹凸にずれる現象が解消される。一方、フラッシュ光照射時にも基板W自体はほとんど昇温しないため、基板Wに既に形成されているデバイス構造等に熱的なダメージを与えることも防止される。
フラッシュ光照射が終了した後、3本のリフトピン84が上昇し、保持プレート81に載置されていた基板Wを突き上げて保持プレート81から離間させる。その後、搬送開口部68が再び開放され、搬送ロボットTR3の搬送アーム44a(または44b)が搬送開口部68からチャンバー70内に進入して基板Wの直下で停止する。続いて、リフトピン84が下降することによって、基板Wがリフトピン84から搬送アーム44aに渡される。そして、基板Wを受け取った搬送ロボットTR3の搬送アーム44aがチャンバー70から退出することにより、基板Wがチャンバー70から搬出され、フラッシュベークユニットFLBにおけるフラッシュ加熱処理が完了する。
本実施形態においては、表面にレジスト膜5が形成されてパターン露光処理および現像処理が行われた基板Wに対して、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するとともに、分光分布にて波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上であるフラッシュ光を照射している。このような紫外域の波長成分が多く含まれるフラッシュ光を照射することにより、可視光を透過するレジスト膜5もフラッシュ光を吸収して昇温し、下地の基板Wを加熱することなくレジスト膜5の表層部分のみを選択的に加熱することができる。これにより、基板Wのデバイス構造等に熱的なダメージを与えることなく、レジスト膜5の表層部分を平坦化してパターンの線幅が凹凸にずれる現象を解消することができる。
また、本実施形態のフラッシュランプFLは、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するフラッシュ光を照射するものであるため、フラッシュランプFL自体には多大なコストは要さない。従って、本実施形態のフラッシュランプFLによってフラッシュ光照射を行えば、著しいコストの上昇を抑制しつつ、レジスト膜5のみを選択的に加熱することができる。
また、従来より紫外線を放射する光源として広く用いられている水銀灯などに比べて、本実施形態のフラッシュランプFLでは、照射の安定性に優れるとともに、IGBT96によって発光回数・発光時間などの照射条件を容易に調整することができる。よって、レジスト膜5を加熱して表層部分を平坦化するのに最適な条件が見出しやすくなる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、IGBT96によってフラッシュランプFLの発光を制御するようにしていたが、IGBT96は必ずしも必須の要素ではない。IGBT96を用いなくても、コンデンサ93への印加電圧やコイル94のインダクタンスによってフラッシュランプFLの照射条件を調整することができる。
また、上記実施形態においては、ハードベーク処理後の基板Wに対してフラッシュ光照射を行っていたが、ハードベーク処理は必ずしも必須の処理ではない。或いは、フラッシュベークユニットFLBでのフラッシュ加熱によって、ハードベーク処理も併せて行うようにしても良い。
また、本発明に係る熱処理技術によって加熱の対象となるのはレジスト膜5に限定されるものではなく、他の炭素原子を含む膜、例えば層間絶縁膜であっても良い。
また、本発明に係る熱処理技術によって処理対象となる基板Wは半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。