JP2016084654A - ハイドレート採取装置および採取方法 - Google Patents
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砂層型メタンハイドレートは、水底よりも更に地下深くにあるとともに、砂と交じった状態であるために技術的にもコスト的にも採集が困難であるとされている。
一方、表層型メタンハイドレートは水底に露出しているため、砂層型よりも採取が容易であり、前記表層型メタンハイドレートを効率よく採取する方法が求められている。
移送管内において気泡の体積が大きくなり、前記管内における気泡(ガス)の占める割合が大きくなり過ぎると、気泡による前記上昇流が上手く形成されずに水の流れが不安定になる場合がある。これにより、メタンハイドレートの上昇効率が低下する虞がある。
また「水」とは、淡水、真水の他、海水、汽水等が含まれる。例えば、海洋や湖の水が挙げられる。
メタンハイドレートの塊は、前記ハイドレート上昇管内を通過可能であればできるだけ大きな塊として採取する方が望ましいが、通常ドリル等で掘削すると小さな塊(粒)も形成されるため、大きな塊と小さな塊の両方が前記入口部に入る。
一方、前記メタンハイドレートの塊が水深400m未満にまで前記ハイドレート上昇管内を上昇したときには、水中の圧力、温度がメタンハイドレートの生成条件外となるので分解が始まる。このとき、前述したメタンハイドレートの小さな塊が多くあると、該小さな塊は比表面積が大きいために分解し易く、前記管内の水中に分解ガス(メタン)の気泡が過剰に生成される場合がある。加えて、水深が浅くなると気泡の体積は大きくなるので、前記管内における気泡の占める割合が大きくなり過ぎてメタンハイドレートの上昇が妨げられる虞がある。
前述したように水底のメタンハイドレート層近くに存在する水にはメタンがほぼ飽和状態まで溶けているため、前記ハイドレート上昇管内にはメタンガスが飽和状態の水が前記入口部から入るが、水深400mより深い領域の管内にメタンガスが飽和状態まで溶けていない水を注入すると、当該管内の水中のメタン濃度を下げることができる。
このとき、前述のようにメタンハイドレートの小さい塊(粒)は分解し易いため、管内の水中のメタン濃度が下がったことにより分解してほぼ消失する。その分解により生じたメタンガスは高圧下(水深400mより深い領域の圧力)の水に溶け込む。
一方、メタンハイドレートの大きい塊は、表面が少し分解する程度で止まり、吸熱反応の分解であるので、メタンハイドレートの塊の表面に氷が生成し、メタンハイドレートの分解反応が抑制される。
また、メタンハイドレートの小さい塊(粒)は、上記の通り既に分解してほとんど消失しているので、この水深が浅い領域で小さい塊(粒)が分解してメタンガスを発生する虞が低減される。
以って、水底にあるメタンハイドレートの塊を効率よく採取することが可能となる。
本態様によれば、前記注入部の注入口が設けられる位置から、前記ハイドレート上昇管内の圧力、温度がメタンハイドレートの分解条件となる水深400mに達するまでの距離を長くとることができる。以って、管内を上昇移動するガスハイドレートの塊が水深400mに達するまでの間に、前記ガスハイドレートの小さい塊(粒)を確実に分解させることができる。
掘削されたメタンハイドレートの塊の大きさや塊の大小の割合は、掘削するメタンハイドレート層の状態や水中の環境、掘削手段の種類等によって変わる。例えば、小さい塊が多い場合には水の注入量を増やし、前記小さい塊を確実に分解させることができる。
前記ハイドレート上昇管内において、メタンハイドレートの分解吸熱によって氷が生成するため、上昇移動するメタンハイドレートの塊が詰まる場合がある。このような場合に、例えば前記管内の水よりも温度の高い水(流体)を該管内に供給することにより、詰まったメタンハイドレートおよびメタンハイドレートの塊の表面に生成した氷を分解することによりその詰まりを解消することができる。
また、一時的に空気等の気体(流体)を勢いよく吹き込むことにより、詰まりを解消することができる。
以下の説明では、実施例1と実施例2の2つの実施形態を例に挙げ、最初に実施例1に係るハイドレート採取装置の概略の構成について説明する。
次に、実施例1に係るハイドレート採取装置を用いたハイドレート採取方法とその作用について説明し、その後にハイドレート採取装置の他の例としての実施例2について説明する。
<ハイドレート採取装置の概略構成>
ハイドレート採取装置の概略構成について図に基づいて説明する。図1は、本発明に係るハイドレート採取装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施例では海底12(水底)の表層型のメタンハイドレート層14を掘削してメタンハイドレートの塊GHを採取する場合について説明する。メタンハイドレート層14は、ドリルやバケットを備えた掘削機40によって掘削される。掘削機40は、支援船18によって海底付近に設けられる駆動源42によって駆動されている。
掘削機40の掘削によってメタンハイドレート層14から分離されたメタンハイドレートの塊GHを、本発明に係るハイドレート採取装置10によって回収する。
メタンハイドレート回収船16は、取り出し部24からメタンハイドレートの塊GHを回収する船である。
尚、注入部26の注入口は、少なくともハイドレート上昇管20の下端部の位置に設けられていることが望ましい。本実施例では注入口28aがハイドレート上昇管20の下端部に位置している。
メタンガスが飽和状態まで溶けていない水W1としては、メタンハイドレート層14が存在する同じ海の海水を用いることができる。メタンハイドレート層14の近くに存在する水W0にはメタンがほぼ飽和状態まで溶けているため、例えば、メタンハイドレート層14や他のメタンハイドレート層(不図示)の直上から離れた領域の海水を水W1として用いるとよい。
本実施例では、支援船18によって配設されるポンプ等の第1の水供給手段30が、メタンハイドレート層14の端から海底12に沿って距離R離れた海底12付近の領域に設けられている。また、第1の水供給手段30は、メタンハイドレート層14の上方(海面に近づく方向)に離れた領域に設けることもできる。
以上がハイドレート採取装置10の概略構成であり、本装置10を用いたハイドレート採取方法について以下に説明する。
次に、図1および図2を参照してハイドレート採取装置10を用いたハイドレート採取方法について説明しつつ、その作用について説明する。図2は、水中を上昇移動するハイドレートの塊について説明する図である。
メタンハイドレートの塊GHは、ハイドレート上昇管20内を通過可能なできるだけ大きな塊Lとして採取することが望ましいが、通常ドリル等で掘削すると小さな塊S(粒)も形成されるため、大きな塊Lと小さな塊Sの両方が入口部22に入る。
このとき、前述のようにメタンハイドレートの小さい塊S(粒)は分解し易いため、このときの分解によりほぼ消失する(図2において、消失した小さい塊Sを点線で示している)。この分解により生じたメタンガスは高圧下(水深400mより深い領域の圧力)の水W2に溶け込む。
その状態でメタンハイドレートの塊GH(大きい塊L)は浮力によって管20中を上昇する。即ち、管20内のメタンハイドレートの塊は、小さい塊Sはほとんどなく主に大きい塊Lの集まりになって上昇する。そして、水深400mより浅い領域にまで上昇すると、メタンハイドレートの生成平衡(圧力)が分解条件になるので、塊Lの表面が分解を始める。同時に分解吸熱により氷52が更に生成し[図2における中段の塊(b)の状態]、水深400mより深い領域において予め表面に生成している氷52と一緒になってメタンハイドレートの塊Lの表面が氷52の膜で覆われる[図2における一番上の塊(c)の状態]。これにより、自己保存効果によってメタンハイドレートの分解反応が止まる。
また、メタンハイドレートの小さい塊S(粒)は、上記の通り既に分解してほとんど消失しているので、この水深が浅い領域で小さい塊S(粒)が分解してメタンガスを発生する虞が低減される。
したがって、第1の水供給手段30は水深の深いところ、例えば海底12近くに設けることが好ましい。尚、ある程度の深さになると水温の大きな変化は少なくなるので、周囲の水温に応じて第1の水供給手段30を設ける位置は変えることができる。
このことにより、水W1の注入位置から、ハイドレート上昇管20内の圧力、温度がメタンハイドレートの分解条件となる水深400mに達するまでの距離を長くとることができる。以って、水深400mより浅い領域における分解が始まる前に、ガスハイドレートの小さい塊Sを確実に分解させることができる。
また、メタンガスが飽和状態まで溶けていない水W1のメタン飽和度によって注入量を調整することもできる。例えば、飽和状態ではないが飽和度が高い水W1の場合には注入量を増やし、飽和度が低い水W1の場合には注入量を少なく調整することができる。
実施例2では図3に基き、ハイドレート採取装置の他の実施例について説明する。図3は、本発明に係るハイドレート採取装置の他の例を示す概略構成図である。
尚、本実施例において実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その構成の説明は省略する。
流体供給部34の供給口は、ハイドレート上昇管20の上下方向に複数設けられている。本実施例においては、供給口36a、供給口36b、供給口36cが設けられている。
ハイドレート上昇管20内において、メタンハイドレートの分解吸熱によって氷が生成するため、上昇移動するメタンハイドレートの塊GHが詰まる場合がある。このような場合に、例えば管20内の水よりも温度の高い水W3(流体)を当該管20内に供給することにより、詰まったメタンハイドレートおよびメタンハイドレートの塊の表面に生成した氷を分解させてその詰まりを解消することができる。
本実施例では、海面付近の水(温度が高い)をポンプ等の第2の水供給手段32により供給口36a、供給口36b、供給口36cに送るように構成されている。
また、本実施例においては流体供給部34から流体として水を供給する構成としたが、流体として空気等の気体を一時的に勢いよく吹き込むことにより、詰まりを解消することもできる。
尚、400mより深い領域の管内において詰まりが発生した場合には、第1の水供給手段30の位置(水深)をより海面に近い位置に変えて、注入部26から温度の高い水を入れて詰まったメタンハイドレートを分解し、詰まりを解消することも可能である。
16 ハイドレート回収船、18 支援船、
20 ハイドレート上昇管、22 入口部、24 取り出し部、26 注入部
28a、28b、28c 注入口、30 第1の水供給手段、
32 第2の水供給手段、34 流体供給部、36a、36b、36c 供給口、
40 掘削機、42 駆動源、50 気泡、52 氷、60 ハイドレート採取装置
W0 メタンガス飽和状態の水、
W1 メタンガスが飽和状態まで溶けていない水、
W2 ハイドレート上昇管内の水、
W3 W1より温度が高い水
Claims (7)
- 水底にあるメタンハイドレートを採取するハイドレート採取装置であって、
水中を上昇するメタンハイドレートの塊が入る入口部を下方に有し、上方に前記メタンハイドレートの取り出し部を有するハイドレート上昇管と、
前記ハイドレート上昇管の水深400mより深い領域の管内にメタンガスが飽和状態まで溶けていない水を注入する注入部と、
を備えることを特徴とする、ハイドレート採取装置。 - 請求項1に記載のハイドレート採取装置において、
前記注入部の注入口は、前記ハイドレート上昇管の下端部の位置に設けられていることを特徴とする、ハイドレート採取装置。 - 請求項1又は請求項2に記載のハイドレート採取装置において、
前記注入部の注入口は、上下方向に複数設けられていることを特徴とする、ハイドレート採取装置。 - 請求項3に記載のハイドレート採取装置において、
前記注入部は、各注入口からの水の注入量を調整可能であることを特徴とする、ハイドレート採取装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のハイドレート採取装置において、
前記ハイドレート上昇管の水深400mより浅い領域の管内に流体を供給する流体供給部を備えることを特徴とする、ハイドレート採取装置。 - 請求項5に記載のハイドレート採取装置において、
前記流体供給部の供給口は、上下方向に複数設けられていることを特徴とする、ハイドレート採取装置。 - 水底にあるメタンハイドレートを採取するハイドレート採取方法であって、
ハイドレート上昇管の下方に設けられる入口部から、水中を上昇するメタンハイドレートの塊を入れ、
前記ハイドレート上昇管の水深400mより深い領域の管内にメタンガスが飽和状態まで溶けていない水を注入し、
前記管内の水中を上昇したメタンハイドレートの塊を、前記ハイドレート上昇管の上方に設けられる取り出し部から取り出すことを特徴とする、ハイドレート採取方法。
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