JP2016079097A - カルシウムイオン錯体化液、それによる脱臭用原液および同抗菌用原液、ならびにそれらを利用した脱臭方法および同抗菌方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 天然または養殖ものであって充分に塩分を除去したホタテ貝殻を最大幅0.1mm以下に粉砕し、500℃ないし1,500℃、望ましくは1,000℃にて焼成し、主成分を酸化カルシウムとしたカルシウム粉末に、有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか1つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとしたカルシウムイオン錯体化液である。
【選択図】 図1
Description
非特許文献1(1)に見る、環境省公表の「平成24年度悪臭防止法施行状況調査」によれば、悪臭苦情件数14,411件の中、「野外焼却」が28.0%と最多で、次いで「サービス業・その他」(15.3%)、「個人住宅・アパート・寮」(11.1%)、「畜産業」(10.1%)、「その他の製造業」(8.2%)、「下水・用水」(4.3%)、「食料品製造業」(4.1%)、「建設作業現場」(2.4%)、「飼料・肥料製造工場」(2.0%)、「化学工場」(1.4%)、「その他」(12.9%)の順と、その悪臭源についての報告がある。
2)メチルメルカプタン(CH3SH):難水溶性、0.002〜0.01ppm
3)硫化水素(H2S):水溶性(弱アルカリ性)、0.02〜0.2ppm
4)硫化メチル((CH3)2S):難水溶性、0.01〜0.2ppm
5)二硫化メチル(CH3S2CH3):難水溶性、0.009〜0.1ppm
6)トリメチルアミン(N(CH3)3):水溶性(アルカリ性)、
0.005〜0.07ppm
7)アセトアルデヒド(CH3CHO):水溶性(酸性)、0.05〜0.5ppm
8)スチレン(C6H5CH=CH2):難水溶性、0.04〜2ppm
9)プロピオン酸(CH3CH2COOH):水溶性(弱酸性)、0.03〜0.2ppm
10)ノルマル酪酸(CH3(CH2)2COOH):水溶性(弱酸性)、
0.001〜0.006ppm
11)ノルマル吉草酸(CH3(CH2)3COOH):水溶性(弱酸性)、
0.0009〜0.004ppm
12)イソ吉草酸((CH3)2CHCH2COOH):水溶性(弱酸性)、
0.001〜0.01ppm
同非特許文献1(2)に記載されているように、わが国畜産業における悪臭防止対策としては、次に示すとおりの方法が知られている。
1)脱臭剤: 酸化剤(例えばオゾン)、中和剤(石灰)、マスク剤(香料)、縮合剤(メタアクリレート)、吸着剤(活性炭)、酵素剤(消化酵素)など。
2)好気・嫌気処理法: 堆肥化、曝気、メタン発酵。
3)乾燥法: 火力、天日、発酵。
4)燃焼脱臭法: 直接燃焼法、触媒酸化法。
5)薬液脱臭法: 次亜塩素酸ソーダ。
6)生物学的脱臭法: バイオフィルター(土壌、堆肥、ピート)、バイオスクラバー(活性汚泥)。
前述のように、畜産業における既往の脱臭対策は、何れも欠点があって画期的な脱臭技術の創出が切望され、喫緊の課題となっており、その要点は、1)低コスト且つ簡易な方法による脱臭ができること、2)畜舎内も脱臭できること、3)脱臭剤や脱臭方法の家畜や人に対する安全性があること、4)多種類の悪臭ガスに対応できること、5)抗菌効果があること、6)人の糞尿汚水の脱臭にも援用できること、7)植物や食品の残渣からでる悪臭にも適用できること、などである。
そこで、この発明は、それら難題を解決すべく、動物または人の糞、尿、洗浄汚水、および植物または食品の残渣から発生する多種類の臭気および細菌を低コストで簡単、安全に抑制する脱臭・抗菌剤を作出することができる新たな脱臭・抗菌技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に、貝殻焼成カルシウムと有機酸との併用による消臭・抗菌効果を達成するようにした新規な構造のカルシウムイオン錯体化液、それによる新規な脱臭用原液、およびそれによる新規な抗菌用原液、ならびにそれらを利用した新規な脱臭方法、および同新規な抗菌方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明のカルシウムイオン錯体化液は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、カルシウムと有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか1つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとした構成を要旨とするカルシウムイオン錯体化液である。
上記したカルシウムイオン錯体化液に関連し、この発明には、それを利用した脱臭用原液を包含している。
即ち、カルシウム、有機酸および水を適宜割合で混合し、水素イオン濃度を酸性とするよう調節してなるものとした構成からなる、この発明の基本をなす前記カルシウムイオン錯体化液を利用した脱臭用原液である。
さらに、上記したカルシウムイオン錯体化液、およびそれによる脱臭用原液に関連し、この発明には、それらを利用した脱臭方法を包含している。
即ち、この発明の基本をなしている前記カルシウムイオン錯体化液を利用した脱臭用原液を、水または蒸留水にて、原液ないし1,000培、望ましくは50ないし500培に希釈し、酸性性ないし中性の何れかに調節してなる脱臭用希釈液を対象物および対象空間に散布・塗布するなどして脱臭するようにした構成からなる脱臭方法である。
一方、上記したカルシウムイオン錯体化液に関連し、この発明には、それを利用した抗菌用原液を包含する。
即ち、カルシウム、有機酸および水を適宜割合で混合し、水素イオン濃度をアルカリ性とするよう調節してなるものとした構成からなる、この発明の基本をなす前記カルシウムイオン錯体化液を利用した抗菌用原液である。
上記したカルシウムイオン錯体化液、およびそれによる抗菌用原液に関連し、この発明には、それらを利用した抗菌方法を包含している。
即ち、この発明の基本をなすところの前記カルシウムイオン錯体化液を利用した抗菌用原液を、水または蒸留水にて、原液ないし20培、望ましくは5ないし10培に希釈して、アルカリ性に調節してなる抗菌用希釈液を対象物および対象空間に散布・塗布するなどして除菌するようにした構成からなる抗菌方法である。
カルシウムは、この発明のカルシウムイオン錯体化液の主要材料となり、混合比率を増加させるとアルカリ性を強化する機能を有し、様々なカルシウム原料からなるものとすることが可能であり、炭酸カルシウム粉末とするのが望ましく、顕微鏡組織(分子結晶構造)が霰石状結晶体である生物由来炭酸カルシウム粉末とするのが望ましく、表現を変えて示すと、珊瑚、鶏卵殻および貝殻の少なくとも1種を最大幅0.1mm以下に粉砕し、500℃ないし1,500℃、望ましくは1,000℃にて焼成し、主成分を酸化カルシウムとしたものとすることができ、後述する実施例にも示しているように、天然または養殖ものであって充分に塩分を除去したホタテ貝殻を最大幅0.1mm以下に粉砕し、500℃ないし1,500℃、望ましくは1,000℃にて焼成し、主成分を酸化カルシウムとしたものとするのが良い。
以下では、図面および表に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
以下では、この発明のカルシウムイオン錯体化液の構成を、その作出方法に従って説示していくこととする。
主要成分であるカルシウム粉末となる貝殻は、天然または養殖のものであって、かつ雨水に長時間晒して塩分を除去し、さらに最大幅0.1mm以下に破砕し、1,000℃において焼成し、その主成分が酸化カルシウム(CaO)であり、図2に示すように、電子顕微鏡組織(分子結晶構造)が霰石状結晶体である生物由来炭酸カルシウム粉末ということができる。
強熱(600±25℃で約30分間)による供試剤の減量は46%となった。詳しい分析の結果、この減量は、二酸化炭素(CO2)によるものは僅少であって、大半が水分(H2O)によるものであることが判った。したがって、カルシムを除くその他の成分が極めて少ないことから、ホタテ貝殻焼成粉末の主成分(99%以上)は、水和した酸化カルシウム(CaO・nH2O)である。なお、この水和物は、ホタテ貝殻粉末の焼成後、自然冷却の過程で周囲空気中の水蒸気が結晶化したものと推定される。
図1に示すように、有機酸は、酢酸、クエン酸、乳酸等のカルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸であり、上記の貝殻焼成粉末から精製したカルシウムイオンを容易にキレート化、すなわち金属錯体化したものであることを必要とする。
カルシムイオンのキレート結合性は、他の陽イオンと容易に交換できる状態を維持する。すなわち、ここでは酸性の悪臭物質と化学結合し、脱臭するために極めて有用であることを意味する。
カルシウムイオン錯体化液のホタテ貝殻焼成カルシウム粉末とクエン酸との混合割合は、次ぎのとおりである。
・脱臭液(原液)=ホタテ貝殻焼成カルシウム粉末20g/L+クエン酸46g/L
・抗菌液(原液)=ホタテ貝殻焼成カルシウム粉末40g/L+クエン酸23g/L
(Lは、蒸留水1L(リットル)当たりを意味する。)
以上のとおりの構成からなるこの発明のカルシウムイオン錯体化液は、カルシムとクエン酸の調合割合を容易に変えることができ、かつ水で希釈することによって水素イオン濃度(pH)を自在に調節でき、これにより、脱臭に適した水溶液や抗菌に適した水溶液を低コストで簡易に作製できることが大きな特徴となる。したがって、この発明の貝殻焼成カルシウム粉末と有機酸とを用いてカルシウムイオンを錯体化し、かつその水素イオン濃度(pH)を調節した脱臭用原液と脱臭用希釈液、および、抗菌用原液と抗菌用希釈液を夫々低コストで簡単に作製することができることになる。
悪臭ガスの脱臭効果を探るために、表2に示した脱臭用原液からなる脱臭液3種(原液、50倍希釈、500倍希釈液)を用いて、アンモニアガス(NH3)、硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH4S、示性式CH3SH)の3種の悪臭ガスの脱臭試験行い、その結果を表4−1ないし表4−3に示した。
抗菌用原液からなる抗菌液3種(原液、5倍希釈液、10倍希釈液)の大腸菌に対する抗菌効果を表5−1および表5−2に示す。また、大腸菌試験の菌の分布を開始時と24時間後とを比較して図3ないし図7に示した。
貝殻焼成カルシウム粉末と有機酸とを併用してカルシウムイオンを錯体化し、かつその水素イオン濃度(pH)を調節して、低コストで容易に抗菌希釈液を作出できることができた。
叙述の如く、この発明のカルシウムイオン錯体化液、ならびにそれによる脱臭用原液および同抗菌用原液、ならびにそれらを利用した脱臭方法および同抗菌方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易であり、従前からの消臭・抗菌技術に比較して格段に素早く脱臭、消臭し、その効果を長く持続することができ、しかも安全性に秀でたものとなる上、大幅に低廉化して遥かに経済的なものとすることができ、製造、保管、利用の各作業性を大幅に改善し得ることから、従前まで広大な畜舎などの消臭および除菌作業の困難さや労働負担およびその経済的負担の大きさに苦慮してきた畜産業界、および悪臭ガスの発生を抑制したい各種製造業界は固よりのこと、賃貸住宅業界や宿泊施設業界、販売業界、外食業界、小売店舗販売業界、各種サービス業業界、および一般家庭などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
Claims (13)
- カルシウムと有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか1つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとしたことを特徴とするカルシウムイオン錯体化液。
- 炭酸カルシウム粉末と有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか1つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとしたことを特徴とするカルシウムイオン錯体化液。
- 顕微鏡組織(分子結晶構造)が霰石状結晶体である生物由来炭酸カルシウム粉末と有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか1つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとしたことを特徴とするカルシウムイオン錯体化液。
- 珊瑚、鶏卵殻および貝殻の少なくとも1種を、最大幅0.1mm以下に粉砕し、500℃ないし1,500℃、望ましくは1,000℃にて焼成し、主成分を酸化カルシウムとしたカルシウム粉末に、有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか1つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとしたことを特徴とするカルシウムイオン錯体化液。
- 天然または養殖ものであって充分に塩分を除去したホタテ貝殻を最大幅0.1mm以下に粉砕し、500℃ないし1,500℃、望ましくは1,000℃にて焼成し、主成分を酸化カルシウムとしたカルシウム粉末に、有機酸とを混合し、カルシウムイオンを錯体化すると共に、適量の水を加え、酸性、中性またはアルカリ性の中の何れか一つとするよう水素イオン濃度(pH)を調節してなるものとしたことを特徴とするカルシウムイオン錯体化液。
- 有機酸が、酢酸、クエン酸、および、乳酸等のカルボキシル基(−COOH) を有するカルボン酸の中の少なくとも一つとした、請求項1ないし5何れか一記載のカルシウムイオン錯体化液。
- 水が、蒸留水である、請求項1ないし6何れか一記載のカルシウムイオン錯体化液。
- カルシウム、有機酸および水を適宜割合で混合し、水素イオン濃度を酸性とするよう調節してなるものとした、請求項1ないし7何れか一記載のカルシウムイオン錯体化液を利用した脱臭用原液。
- カルシウム粉末20g、有機酸46gおよび水1L(リットル)の割合で混合し、水素イオン濃度を酸性とするよう調節してなるものとした、請求項1ないし7何れか一記載のカルシウムイオン錯体化液を利用した脱臭用原液。
- 請求項8または9何れか一記載の脱臭用原液を、水または蒸留水にて、原液1,000培、望ましくは50ないし500培に希釈し、酸性性ないし中性の何れかに調節してなる脱臭用希釈液を対象物および対象空間に散布・塗布するなどして脱臭するようにしたことを特徴とする脱臭方法。
- カルシウム、有機酸および水を適宜割合で混合し、水素イオン濃度をアルカリ性とするよう調節してなるものとした、請求項1ないし7何れか一記載のカルシウムイオン錯体化液を利用した抗菌用原液。
- カルシウム粉末40g、有機酸23gおよび水1L(リットル)の割合で混合し、水素イオン濃度をアルカリ性とするよう調節してなるものとした、請求項1ないし7何れか一記載のカルシウムイオン錯体化液を利用した抗菌用原液。
- 請求項11または12何れか一記載の抗菌用原液を、水または蒸留水にて、原液ないし20培、望ましくは5ないし10培に希釈し、アルカリ性に調節してなる抗菌用希釈液を対象物および対象空間に散布・塗布するなどして除菌するようにしたことを特徴とする抗菌方法。
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