JP2016077952A - 塗装成形品の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】小さいコストで高品質の塗装成形品が得られる塗装成形品の製造方法を提供する。【解決手段】射出成形機(2)によって成形品を成形する射出成形工程と、成形品を成膜装置(3)によって成膜する成膜工程と、塗装装置(4)によって塗装する塗装工程とから塗装成形品を製造する塗装成形品の製造方法として構成する。本発明の製造方法においては、塗装装置(4)は全体を気密的な筐体で被覆する。そして装置内に成形品を出し入れする開口部(18、19)を1カ所または2カ所設ける。開口部(18、19)は射出成形機(2)から1.5m以上離間させるようにする。そして少なくとも成形品を内部に入れるための開口部(18)は射出成形機(2)から5m以内になるようにする。また成形品は搬送装置(5)によって搬送する。【選択図】図1
Description
本発明は、射出成形により成形後、その表面に塗装を施して塗装された成形品を得る塗装成形品の製造方法、および製造装置に関するものである。
射出成形により得られる樹脂製の成形品に、必要に応じて表面に塗料を塗布することがある。このような塗装成形品は、例えば美観を目的として所望の色の塗料が塗布されている。塗料には、一般的にいわゆるシンナーが溶剤として含まれており、成形品の表面に塗布した後に所定時間乾燥して溶剤を飛ばすと塗装成形品が得られる。ところで塗装成形品に塗布する塗料には、成形品の表面に傷がつきにくくなるようにすることを目的として、硬い樹脂のコーティング層を形成するような塗料もあり、そのような塗料として紫外線によって硬化するUV塗料が周知である。UV塗料は、重合性二重結合を持つアクリル系オリゴマー、重厚性アクリル系モノマー、光重合開始剤を必須の成分としており、必要により顔料や添加剤が添付されている。UV塗料を塗布後、紫外線を照射すると塗料が硬化する。ところでUV塗料には、溶剤が含まれている溶剤系UV塗料と、溶剤を一切含まない非溶剤系UV塗料とがある。後者の非溶剤系UV塗料は、塗料を塗布後、そのまま紫外線を照射するだけで塗料が硬化するようになっているが、前者の溶剤系UV塗料は、塗料を塗布後、乾燥により溶剤を飛ばした後に紫外線を照射する必要がある。しかしながら溶剤系UV塗料は、粘性が低く塗布が容易であるという利点がある。さらには、溶剤を含んでいるので硬い種類の樹脂を含有させることができるので、硬度の高いコーティング層が得られるという利点もある。これに対して非溶剤系UV塗料は溶剤を含んでいないので乾燥させる必要はなく、紫外線を照射するだけで塗料を固化できるので手軽であるが、塗布が容易でないので樹脂性の成形品にコーティング層を形成する用途には適さない。
特許文献1には、塗装成形品ではないが、表面に金属の薄膜を有する成形品を得る製造装置が記載されている。このような薄膜を有する成形品は、例えば自動車に装備されるフロントランプ、デジタルデータを記録するCD/DVD等があり、スパッタリング方法、蒸着方法、イオンプレーティング方法、プラズマ成膜方法等を実施する成膜装置において、ワークである成形品に成膜して得られる。特許文献1に記載の製造装置は、成形品を成形する射出成形機と、成形品に成膜する成膜装置と、成形品を搬送する第1、2の搬送装置と、一時的な成形品の置き場であるテンポラリステージとから構成されている。一般的に射出成形機における成形サイクルは短時間で済み、成膜装置における成膜工程は長時間必要である。そこで、特許文献1に記載の製造装置においては、射出成形機において成形サイクルを実施して成形品が得られる毎に第1の搬送装置が成形品を射出成形機から取り出してテンポラリステージに搬送し、テンポラリステージにプールする。そして、第2の搬送装置は、複数の成形サイクル分の成形品を一括で成膜装置に搬送し、成膜装置ではこれらを一括で成膜する。従って、射出成形機も成膜装置も無駄な待ち時間が生じること無く高い稼働率で運転できる。特許文献1に記載の製造装置によって製造すると、成形品を得て成膜するまでに作業者の手が成形品に触れることがないので、手垢や油がつくことがなく、薄膜を有する成形品の品質が高く維持される。
前記したように塗装成形品を得る場合、射出成形機によって成形品を得た後に、成形品に塗料を塗布する。そして塗料を塗布後に乾燥させて溶剤を飛ばす必要がある。塗装装置は色々なタイプのものがあるが、塗料をスプレーによって塗布する塗布室と、塗布された成形品を乾燥する乾燥室とを備えたものが一般的である。溶剤系UV塗料によりコーティングする場合には、塗布室と乾燥室の他に紫外線を照射して塗料を硬化させる紫外線照射室も備えている。このような塗装装置は、溶剤が気化して発生したガスが周辺環境を汚染しないように全体が筐体によって覆われ、筐体内の空気を外部に排出するためのファンとダクトとが設けられている。筐体には成形品が搬入される入口と、塗装済みの塗装成形品が搬出される出口とが設けられている。塗装装置において入口から成形品を投入すると、内部の所定の搬送装置によって搬送されて、塗布室にて塗料が塗布され、乾燥室にて乾燥され、そしてUV塗料の場合には、さらに紫外線照射室にて紫外線が照射される。このようにして得られた塗装成形品は出口から外部に搬送される。
ところで射出成形機と塗装装置は、一般的に工場内において互いに十分に隔離されて配置されている。従って塗装成形品を得る場合には、射出成形機で成形された成形品を作業者が塗装装置まで搬送する必要がある。しかしながらこのようにすると、成形品に手垢や油、ゴミが付着して成形品の表面が汚染される危険がある。また塗装されるまでに時間が経つと成形品が完全に冷却しまい表面に水分が付着する虞もある。このように成形品の表面が汚染されたり水分が付着すると、塗装が適切にできなかったり、美観を損なうことがあり、品質の高い塗装成形品が得られる保証がない。さらには、射出装置と塗装装置が隔離されていると搬送にコストがかかる。
そこで例えば、特許文献1に記載の製造装置における成膜装置のように、射出成形機と塗装装置を近接して配置し、搬送装置によって成形品を射出成形機から塗装装置に搬送するようにすれば、成形品が塗装前に汚染されることがなく、品質の高い塗装成形品が得られそうである。しかしながらこのように塗装装置を配置する場合、特許文献1における成膜装置には無かった危険が生じる。具体的には溶剤のガスによる爆発の危険である。射出成形機は、加熱シリンダを高温に加熱するヒータが設けられていると共に、可燃性の樹脂が燃焼し易い溶融状態になっている。さらには油圧式で駆動される射出成形機の場合には機械油が大量に存在する。このような射出成形機の周囲に引火性のある溶剤のガスが充満すると爆発および火災の危険が生じる。前記したように塗装装置はファンとダクトとによって装置外に溶剤のガスが拡散しないように留意されてはいる。また工場には工場内の空気が所定の空気齢で新鮮な空気に入れ替えられるように換気装置が設けられている。そうすると爆発の危険は比較的小さいとも考えられるが、塗装装置は入口と出口が開口しているのでこれらから外部に漏れる溶剤のガスは完全には防止できないし、塗装装置のファンが故障したりダクトが詰まったり、あるいは工場の換気装置に異常が発生する可能性もある。そうすると防爆の観点によって、射出成形機と塗装装置とを隣接して配置することは技術常識として危険である。つまり、特許文献1に記載の製造装置における射出成形機と成膜装置のように、射出成形機と塗装装置とを隣接して配置することは危険が高い。
本発明は、塗装される成形品に手垢、塵埃が付着したり、水分が吸着されることがなく、小さいコストで高品質の塗装成形品を得ることができる塗装成形品の製造方法、および塗装成形品の製造装置を提供することを目的としている。
本発明は上記目的を達成するために、射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、成形品を塗装装置によって塗装する塗装工程とから塗装成形品を製造する塗装成形品の製造方法として構成する。本発明の製造方法においては、塗装装置は全体を気密的な筐体で被覆する。そして装置内に成形品を出し入れする開口部を1カ所または2カ所設ける。開口部は射出成形機から1.5m以上離間させるようにする。そして少なくとも成形品を内部に入れるための開口部は前記射出成形機から5m以内になるようにする。また射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって塗装装置に搬送するように構成する。
すなわち請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、成形品を塗装装置によって塗装する塗装工程とから塗装成形品を製造するとき、前記塗装装置は全体を筐体で覆うと共に装置内に成形品を出し入れする開口部を1カ所または2カ所設け、該開口部は前記射出成形機から1.5m以上離間させると共に成形品を内部に入れるための前記開口部は前記射出成形機から5m以内になるようにし、前記射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって前記塗装装置に搬送することを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、前記塗装工程において使用する塗料は溶剤系UV塗料であり、前記塗装工程は成形品に溶剤系UV塗料を塗布する塗布工程と、成形品に紫外線を照射して塗布された溶剤系UV塗料を固化させて成形品にコーティング層を形成する紫外線照射工程とからなることを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の製造方法において、前記塗装工程は前記塗布工程後に成形品を加熱して乾燥させる乾燥工程を実施し、その後前記紫外線照射工程を実施することを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の製造方法において、前記射出成形工程の次に、成膜装置によって成形品の表面に金属の膜を形成する成膜工程を実施し、その後前記塗装工程を実施するようにし、前記射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって前記成膜装置に搬送するようにし、前記成膜装置において金属の膜が形成された成形品は所定の搬送装置によって前記塗装装置に搬送するようにすることを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、前記塗装工程において使用する塗料は溶剤系UV塗料であり、前記塗装工程は成形品に溶剤系UV塗料を塗布する塗布工程と、成形品に紫外線を照射して塗布された溶剤系UV塗料を固化させて成形品にコーティング層を形成する紫外線照射工程とからなることを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の製造方法において、前記塗装工程は前記塗布工程後に成形品を加熱して乾燥させる乾燥工程を実施し、その後前記紫外線照射工程を実施することを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の製造方法において、前記射出成形工程の次に、成膜装置によって成形品の表面に金属の膜を形成する成膜工程を実施し、その後前記塗装工程を実施するようにし、前記射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって前記成膜装置に搬送するようにし、前記成膜装置において金属の膜が形成された成形品は所定の搬送装置によって前記塗装装置に搬送するようにすることを特徴とする塗装成形品の製造方法として構成される。
請求項5に記載の発明は、成形品を成形する射出成形機と、成形品を塗装する塗装装置と、成形品を搬送する1台または複数台の搬送装置とからなる塗装成形品の製造装置であって、前記塗装装置は全体が筐体で被覆されていると共に装置内に成形品が出し入れされる開口部が1カ所または2カ所設けられ、該開口部は前記射出成形機から1.5m以上離間していると共に成形品が内部に入れられるための前記開口部は前記射出成形機から5m以内になるように配置され、前記射出成形機で成形された成形品は前記搬送装置によって前記塗装装置に搬送されて塗装されることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の製造装置において、前記塗装装置はその内部に、成形品に溶剤系UV塗料が塗布される塗布室と、成形品に紫外線が照射されて塗布された溶剤系UV塗料が固化されて成形品にコーティング層が形成される紫外線照射室とを備えていることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の製造装置において、前記塗装装置は溶剤系UV塗料が塗布された成形品が加熱されて乾燥される乾燥室を備えていることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の製造装置は、成形品に金属の薄膜が形成される成膜装置を備え、前記射出成形機で成形された成形品は前記搬送装置で前記成膜装置に搬送されて成膜され、成膜された成形品は前記搬送装置によって前記塗装装置に搬送されて塗装されることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の製造装置において、前記塗装装置はその内部に、成形品に溶剤系UV塗料が塗布される塗布室と、成形品に紫外線が照射されて塗布された溶剤系UV塗料が固化されて成形品にコーティング層が形成される紫外線照射室とを備えていることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の製造装置において、前記塗装装置は溶剤系UV塗料が塗布された成形品が加熱されて乾燥される乾燥室を備えていることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の製造装置は、成形品に金属の薄膜が形成される成膜装置を備え、前記射出成形機で成形された成形品は前記搬送装置で前記成膜装置に搬送されて成膜され、成膜された成形品は前記搬送装置によって前記塗装装置に搬送されて塗装されることを特徴とする塗装成形品の製造装置として構成される。
以上のように本発明は、射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、成形品を塗装装置によって塗装する塗装工程とから塗装成形品を製造するとき、塗装装置は全体を筐体で覆うと共に装置内に成形品を出し入れする開口部を1カ所または2カ所設け、該開口部は射出成形機から1.5m以上離間させると共に成形品を内部に入れるための開口部は射出成形機から5m以内になるようにしている。そして射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって塗装装置に搬送する。つまり射出成形工程によって成形された成形品は、短い距離だけ搬送され、搬送装置によって人手を介さずに搬送される。従って成形品は手垢や塵埃が付着することがなく、クリーンな状態で塗装されることになる。これによって高品質の塗装成形品が得られる。また人手を介さずに済むのでコストが小さくなる。そして塗装装置を射出成形機に近接させる場合に考えられる爆発の危険も、塗装装置を全体的に筐体で覆う点、および装置の開口部を射出成形機から1.5m以上離間させる点、の2点によって確実に防止することができる。つまり安全も確保されることになる。他の発明によると、塗装工程において使用する塗料は溶剤系UV塗料であり、塗装工程は成形品に溶剤系UV塗料を塗布する塗布工程と、成形品に紫外線を照射して塗布された溶剤系UV塗料を固化させて成形品にコーティング層を形成する紫外線照射工程とからなる。そうすると硬いコーティング層を成形品に形成することができるので、表面に傷が付きにくい高品質の塗装成形品が得られる。また他の発明によると、塗装工程は塗布工程後に成形品を加熱して乾燥させる乾燥工程を実施し、その後紫外線照射工程を実施するので、塗装工程のスピードアップが図られ、生産効率が高くなる。さらに他の発明によると、射出成形工程の次に、成膜装置によって成形品の表面に金属の膜を形成する成膜工程を実施し、その後塗装工程を実施するようにし、射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって成膜装置に搬送するようにし、成膜装置において金属の膜が形成された成形品は所定の搬送装置によって塗装装置に搬送するように構成されている。そうすると成形品には金属の膜とコーティング層とが形成されることになり、美観に優れた塗装成形品が得られ、この製造方法においては成形品の搬送は人手を介さずに搬送装置によって行われるので、確実に高品質の塗装成形品が得られる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る塗装成形品の製造装置1は、図1に示されているように、射出成形工程により成形品を成形する射出成形機2と、スパッタリング方法により成形品に金属の薄膜を形成する成膜装置3と、薄膜が形成された成形品に塗装によりコーティング層を形成する塗装装置4と、成形品を搬送する搬送装置5と、成形品を一時的にプールするテーブルであるテンポラリステージ6とから構成されている。
射出成形機2は、型締装置がトグル式のタイプ、直圧式のタイプ等色々採用できるし、射出装置もスクリュ式のもの、プランジャ式のもの等ありいずれを採用してもよい。しかしながら本実施の形態における射出成形機2は、スクリュ式の射出装置を備えたトグル式射出成形機からなり、一対の金型9a、9b、これらの金型9a、9bを型締めする型締装置10、材料の樹脂を溶融して型締めされた金型9a、9bに射出する射出装置11等から構成されている。本実施の形態に係る射出成形機2は、20秒で1回射出成形を実施することができる。つまり1分間に射出成形工程を3回分実施することができ、1分当たり3個の成形品を成形することができる。
成膜装置3は、スパッタリング成膜装置、電子ビーム蒸着装置、イオンプレーティング成膜装置等の周知の装置から構成することができ、またスパッタリング成膜装置から構成する場合でも、成形品に金属膜を成膜後にさらにプラズマ重合により重合膜からなる保護膜を形成するような複合的な処理を行う装置から構成することもできる。本実施の形態において、成膜装置3はスパッタリング成膜装置からなり、図1に装置内部は示されていないが、成形品を入れて成膜する成膜室、成膜室の下部に設けられていて成形品を載せるための成膜台、成膜台と対向してその上方に設けられているターゲット電極、このターゲット電極に設けられているターゲット、ターゲット電極に直流電圧を供給する直流電源、成膜室から空気を吸引する真空源、不活性ガスタンクを成膜室に供給する不活性ガス供給源等から構成されている。ところで成膜装置3には、成膜室の内外にスライド可能な搬送台12が設けられており、成形品を載せて成膜室内に搬送したり、成膜室内で成膜した成形品を外部に搬送することができる。本実施の形態に係る成膜装置3は、成膜工程に約1分を要するが、3個の成形品を一括で成膜することができるるようになっている。
本実施の形態において、塗装装置4は溶剤系UV塗料を塗装して紫外線を照射して固化させることにより成形品に硬い樹脂からなるコーティング層を形成するようになっている。本実施の形態に係る塗装装置4は、内部が3部屋に分かれており、第1の部屋は溶剤系UV塗料を成形品にスプレーする塗布室14に、第2の部屋は内部に設けられているヒータにより所定の高温に維持する乾燥室15に、そして第3の部屋は内部に設けられている紫外線照射ランプによって成形品に紫外線を照射する紫外線照射室16になっている。成形品は各部屋14、15、16に順に搬送されて、所定の工程が実施されるとコーティング層が形成されるようになっている。つまり成形品は、塗布室14において塗布工程が実施されて溶剤系UV塗料が塗布され、乾燥室15において成形品に塗布された溶剤系UV塗料を乾燥させる乾燥工程が実施され、そして紫外線照射室16において紫外線照射工程によって成形品に塗布された溶剤系UV塗料が固化し、コーティング層が形成される。
ところで塗装装置4において塗布される溶剤系UV塗料は、他の種類の塗料と同様に溶剤としていわゆるシンナーを含んでいる。シンナーはキシレン、メタノール、酢酸エチル等を含んでいるが、その主成分はトルエンである。これらの薬剤は人体に有害な劇物であると共に引火性を有するので、気化した溶剤のガスが外部に漏れないように塗装装置4は全体が気密的に筐体で覆われている。また、塗装装置4には、図1には示されていないが、装置内で気化した溶剤のガスを工場外に排出するダクトが設けられている。つまり有害な溶剤のガスは外部に漏れないように十分に留意されている。しかしながら筐体には、塗装装置4内に成形品を搬入したり、塗装後の塗装成形品を搬出するために入口18と出口19とが設けられている。これらは、溶剤のガスが外部に漏れる可能性のある開口部になる。一応ダクトにはファンが設けられているので、塗装装置4内は負圧になっている。従ってファンが駆動している限り、開口部から外部に漏れ出す溶剤のガスは微量である、あるいは実質的にほとんどない。本実施の形態における塗装装置4は、塗布工程、乾燥工程、紫外線照射工程からなる塗装工程を連続的に実施することができるようになっており、1分間に3個の成形品を塗装できるようになっている。
テンポラリステージ6は、射出成形工程で成形された成形品や、成膜装置3で成膜された成形品を一時的にプールするテーブルになっている。射出成形後の成形品は最大で3個、成膜装置3で成膜された成形品も最大で3個プールできるようになっている。図1において符号21、21、…は射出成形後の成形品を、符号22、22、…は成膜された成形品をそれぞれ示している。
搬送装置5は複数台から構成することもできるが、本実施の形態においては搬送装置5は1台から構成されている。搬送装置5は、製造装置1の上方に設けられているメインレール24、メインレール24に沿ってスライドするメインスライド装置25、メインレール24と直交するようにメインスライド装置25に固定されているサブレール26、サブレール26に沿ってスライドするサブスライド装置28、サブスライド装置28に設けられていて成形品を把持するハンドラ装置29等からなる。この搬送装置5によって、射出成形機2で成形された成形品を1個ずつテンポラリステージ6に搬送したり、テンポラリステージ6にプールされている3個の成形品を一括で成膜装置3に搬送したり、成膜装置3において成膜された成形品3個を一括でテンポラリステージ6に搬送したり、テンポラリステージ6の成膜された成形品を1個ずつ塗装装置4に搬送できるようになっている。
本実施の形態に係る製造装置1にはベルトコンベヤ31が、塗装装置4に近接して配置されており、図に示されていない搬送装置によって塗装装置4によって塗装された塗装成形品がベルトコンベヤ31に載せられ、ベルトコンベヤ31によって外部に搬送されるようになっている。
本実施の形態に係る製造装置1は上記のように構成されているので、効率よく塗装成形品を製造することができる。つまり射出成形機2において射出成形サイクルを実施して成形品を得、その都度、搬送装置5によって成形品がテンポラリステージ6に搬送される。テンポラリステージ6上に3個の成形品がプールされたら搬送装置5によって3個の成形品を成膜装置3に搬送する。成膜装置3では3個の成形品を一括で成膜する成膜工程を実施する。成膜された成形品は搬送装置5によって再びテンポラリステージ6に搬送される。搬送装置5によって1個ずつ成膜された成形品が塗装装置4に搬送され、塗布工程、乾燥工程、紫外線照射工程を経てコーティングされた成形品、つまり塗装された塗装成形品が製造される。射出成形機2、成膜装置3、塗装装置4は、それぞれ並行して連続的に稼働するようになっており、効率的に塗装成形品が製造される。
本実施の形態に係る塗装成形品の製造装置1は、効率・クリーン性の確保の観点観点から、そして防爆の観点から射出成形機2と塗装装置4は所定の条件の下で配置されている。まず効率・クリーン性の確保の観点から、少なくとも塗装装置4の成形品の入口18と射出成形機2の距離D1は5m以内になるように配置されている。これによって装置2、3、4を搬送される成形品の移動距離が小さくなり、高い製造効率が確保されると共に成形品が途中で汚染される危険を小さくすることができるようになっている。一方防爆の観点から、塗装装置4の開口部つまり入口18と出口19のそれぞれの射出成形機2からの距離D1、D2は1.5m以上になるように配置されている。以下、1.5m以上とする条件を採用した理由について説明する。
本実施の形態に係る塗装成形品の製造装置1は工場に設置されるが、一般的に工場は換気装置が設けられており、所定の空気齢で工場内の空気が新鮮な空気に換気されるように設計されている。また前記したように、塗装装置4は引火性を有する溶剤を含む溶剤系UV塗料を扱っているが、筐体とダクトとファンとによって気化した溶剤のガスが外部に漏れることを防止している。従って正常な状態においては溶剤のガスは射出成形機2の周辺に充満することは無く爆発の危険はない。しかしながら、停電、故障等により工場の換気が停止したり、塗装装置4のファンが停止する可能性がある。これらの事象のうち1つが発生しても安全は維持される。例えば塗装装置4のファンが停止して塗装装置4の開口部である入口18と出口19とから溶剤のガスが外部に漏れ出しても工場の換気が正常に維持されていれば射出成形機2の周囲において溶剤のガスが爆発する濃度にまで達することはない。また工場の換気のみが停止しても安全は維持される。しかしながら、これらの事象が同時に発生すると塗装装置4の開口部から溶剤のガスが外部に漏れ出して射出成形機2の周囲まで拡散する可能性がある。工場内が実質的に無風状態になってしまうからである。このような場合における溶剤のガスの拡散と危険性について検討する。
無風状態の空気中で溶剤が液体の状態で露出していると、溶剤は気化して拡散する。つまり気化源となる。気化源が図2の(ア)の符号33で示されているように点状になっている場合には、気化した溶剤のガスは球面状に同じ濃度の分布を示しながら周囲に拡散していく。これに対して気化源が図2の(イ)の符号34で示されているように面状になっている場合には、気化した溶剤のガスは平面上に同じ濃度の分布を示しながら前方に拡散していく。図2の(ア)に示されているように球面状に拡散する場合には、球の半径が大きくなるに従ってその球の表面積は2乗に比例して大きくなるので気化源から離れるに従って急激に溶剤のガスの濃度は低下し拡散の速度は低下することが予想されるが、図2の(イ)に示されているように平面状に拡散する場合には、同じ面積を維持したままで拡散していくので、溶剤のガスの拡散の速度は速い。つまり図2の(ア)に示されるモデルよりも図2の(イ)に示されるモデルの方が溶剤のガスの拡散速度は速い。塗装装置4から溶剤のガスが外部に漏れる場合、開口部である入口18と出口19とからしか考えられないが、これらは点状の気化源であると言える。そうすると本来は図2の(ア)のモデルに従って拡散を考えるべきであるが、より条件の厳しい、つまりより拡散の速度が速くなると予測される図2の(イ)のモデルに従って拡散を検討する。
図2の(イ)のモデルにおいて、符号34の気化源から順次並行に遠ざかる仮想的な仮想面i−1、i、i+1、…を考える。このとき隣り合う仮想面i−1、i、i+1の距離dは等しくなるように設定する。このような仮想面i−1、i、i+1、…によって、溶剤のガスの拡散を考える。仮想面iにおける所定の時刻tの溶剤のガスの濃度をN(i、t)とすると、仮想面i−1、i+1のそれぞれの時刻tの濃度はそれぞれN(i−1、t)、N(i+1、t)と表すことができる。ガスの拡散は、周知のようにフィックの法則に従うので、時刻tにおける仮想面i−1から仮想面iに流入するガスの時間あたりの量J(i−1、t)は以下の式で与えられる。
J(i−1、t)=−D×(N(i、t)−N(i−1、t))/d (1式)
ただし、D:気体拡散係数である。
同様に、時刻tにおける仮想面iから仮想面i+1に流出するガスの時間あたりの量J(i、t)は以下の式で与えられる。
J(i、t)=−D×(N(i+1、t)−N(i、t))/d (2式)
次に、時刻t+1における仮想面iの溶剤のガスの濃度N(i、t+1)を考えると、時刻tにおける濃度N(i、t)に仮想面i−1から仮想面iに流入したガスを加算して、仮想面i+1に流出したガスを減じればいいので、以下の式で与えられる。
N(i、t+1)=N(i、t)+(J(i−1、t)−J(i、t))×k (3式)
ただし、k:濃度を計算するための定数(時間幅の因子も含む)
J(i−1、t)=−D×(N(i、t)−N(i−1、t))/d (1式)
ただし、D:気体拡散係数である。
同様に、時刻tにおける仮想面iから仮想面i+1に流出するガスの時間あたりの量J(i、t)は以下の式で与えられる。
J(i、t)=−D×(N(i+1、t)−N(i、t))/d (2式)
次に、時刻t+1における仮想面iの溶剤のガスの濃度N(i、t+1)を考えると、時刻tにおける濃度N(i、t)に仮想面i−1から仮想面iに流入したガスを加算して、仮想面i+1に流出したガスを減じればいいので、以下の式で与えられる。
N(i、t+1)=N(i、t)+(J(i−1、t)−J(i、t))×k (3式)
ただし、k:濃度を計算するための定数(時間幅の因子も含む)
このようにして得られた3式を基にして、溶剤のガスの拡散を計算機においてシミュレーションした。シミュレーションにおいては、溶剤はシンナーの主成分であるトルエンを対象とした。シミュレーションにおける条件は以下である。
気化源のトルエンの濃度N(0、t): 図2の(イ)の符号34で示される気化源では、トルエンは常時飽和濃度になっているものとした。また飽和濃度は、乾燥装置4内の温度が50℃であると仮定し、50℃におけるトルエンの飽和蒸気圧0.0123MPaと大気圧0.101MPaとから、空気比で表したトルエンの飽和濃度は0.12178を得た。つまり気化源のトルエンの濃度は0.12178とした。
トルエンの気体拡散係数D: 25℃の空気中におけるトルエンの気体拡散係数は、0.085cm2/sとした。
隣り合う仮想面i−1、i、i+1の距離d: 10cmとした。
以上の条件により、図2の(イ)に示されているモデルを使って10秒周期で各仮想面i−1、i、i+1…におけるトルエンの濃度の変化を計算し、図3のグラフを得た。
気化源のトルエンの濃度N(0、t): 図2の(イ)の符号34で示される気化源では、トルエンは常時飽和濃度になっているものとした。また飽和濃度は、乾燥装置4内の温度が50℃であると仮定し、50℃におけるトルエンの飽和蒸気圧0.0123MPaと大気圧0.101MPaとから、空気比で表したトルエンの飽和濃度は0.12178を得た。つまり気化源のトルエンの濃度は0.12178とした。
トルエンの気体拡散係数D: 25℃の空気中におけるトルエンの気体拡散係数は、0.085cm2/sとした。
隣り合う仮想面i−1、i、i+1の距離d: 10cmとした。
以上の条件により、図2の(イ)に示されているモデルを使って10秒周期で各仮想面i−1、i、i+1…におけるトルエンの濃度の変化を計算し、図3のグラフを得た。
グラフから時間経過と共にトルエンが塗装装置4の周辺に拡散していく様子が分かる。ところでトルエンは空気中で所定の濃度に達して引火すると爆発する危険がある。トルエンが爆発する可能性のある最低の濃度、つまり爆発限界は空気中で0.014であり、グラフ中で符号40で示されている。トルエンの気化源から100cmの距離(符号41)におけるトルエン濃度を読み取ると、30分後には爆発限界に達してしまう。工場の換気が停止すると共に塗装装置4のファンが停止する可能性は非常に低いと考えられるが、このような事象が発生したときに、もしトルエンの気化源から100cmの距離に射出成形機2が設置されていると30分後に爆発する可能性が高い。工場の換気異常等が発生すれば、工場の安全管理者はしかるべき対応をとるはずであるが対応をとるための余裕時間として30分間は短いと言える。一方、トルエンの気化源から150cmの距離(符号42)におけるトルエン濃度を読み取ると60分後においても爆発限界の濃度に達していない。そうするとトルエンの気化源から150cm以上離間して射出成形機2が設置されている場合には、上記のような事象が発生しても1時間以内に必要な対応をすれば爆発の危険はない。1時間は対応可能な時間として十分であると言える。そこで、トルエンの気化源から射出成形機2までの距離150cm以上を防爆の観点から安全の条件とした。トルエンの気化源となり得るのは塗装装置4の開口部、つまり入口18と出口19である。従って、これらがいずれも射出成形機2から150cm以上離間していることを条件とした。なお、トルエンは前記したように劇薬であり、安全面から空気中の濃度についてはさらに厳しい基準が設けられているが、爆発限界に比して遙かに低い濃度になっているので、考慮から除外した。
本実施の形態に係る製造装置1は色々な変形が可能である。例えば、製造装置1において成膜装置3を設けずに、射出成形機2において成形された成形品をそのまま塗装装置4に搬送してコーティングしてもよい。さらには塗装装置4は溶剤系UV塗料を塗布して紫外線照射によりコーティング層を形成するように説明したが、一般的な塗料を塗布する塗装装置であってもよい。このような場合であってもトルエンを主成分とするシンナーを溶剤とする塗料が使用されるはずであるので、本発明において設定した条件、つまり塗装装置の開口部から射出成形機2までの距離は1.5m以上とする必要がある。
1 製造装置 2 射出成形機
3 成膜装置 4 塗装装置
5 搬送装置 6 テンポラリステージ
14 塗布室 15 乾燥室
16 紫外線照射室 18 入口
19 出口
3 成膜装置 4 塗装装置
5 搬送装置 6 テンポラリステージ
14 塗布室 15 乾燥室
16 紫外線照射室 18 入口
19 出口
Claims (8)
- 射出成形機によって成形品を成形する射出成形工程と、成形品を塗装装置によって塗装する塗装工程とから塗装成形品を製造するとき、前記塗装装置は全体を筐体で覆うと共に装置内に成形品を出し入れする開口部を1カ所または2カ所設け、該開口部は前記射出成形機から1.5m以上離間させると共に成形品を内部に入れるための前記開口部は前記射出成形機から5m以内になるようにし、前記射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって前記塗装装置に搬送することを特徴とする塗装成形品の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法において、前記塗装工程において使用する塗料は溶剤系UV塗料であり、前記塗装工程は成形品に溶剤系UV塗料を塗布する塗布工程と、成形品に紫外線を照射して塗布された溶剤系UV塗料を固化させて成形品にコーティング層を形成する紫外線照射工程とからなることを特徴とする塗装成形品の製造方法。
- 請求項2に記載の製造方法において、前記塗装工程は前記塗布工程後に成形品を加熱して乾燥させる乾燥工程を実施し、その後前記紫外線照射工程を実施することを特徴とする塗装成形品の製造方法。
- 請求項2または3に記載の製造方法において、前記射出成形工程の次に、成膜装置によって成形品の表面に金属の膜を形成する成膜工程を実施し、その後前記塗装工程を実施するようにし、前記射出成形工程によって成形された成形品は所定の搬送装置によって前記成膜装置に搬送するようにし、前記成膜装置において金属の膜が形成された成形品は所定の搬送装置によって前記塗装装置に搬送するようにすることを特徴とする塗装成形品の製造方法。
- 成形品を成形する射出成形機と、成形品を塗装する塗装装置と、成形品を搬送する1台または複数台の搬送装置とからなる塗装成形品の製造装置であって、
前記塗装装置は全体が筐体で被覆されていると共に装置内に成形品が出し入れされる開口部が1カ所または2カ所設けられ、該開口部は前記射出成形機から1.5m以上離間していると共に成形品が内部に入れられるための前記開口部は前記射出成形機から5m以内になるように配置され、前記射出成形機で成形された成形品は前記搬送装置によって前記塗装装置に搬送されて塗装されることを特徴とする塗装成形品の製造装置。 - 請求項5に記載の製造装置において、前記塗装装置はその内部に、成形品に溶剤系UV塗料が塗布される塗布室と、成形品に紫外線が照射されて塗布された溶剤系UV塗料が固化されて成形品にコーティング層が形成される紫外線照射室とを備えていることを特徴とする塗装成形品の製造装置。
- 請求項5に記載の製造装置において、前記塗装装置は溶剤系UV塗料が塗布された成形品が加熱されて乾燥される乾燥室を備えていることを特徴とする塗装成形品の製造装置。
- 請求項6または7に記載の製造装置は、成形品に金属の薄膜が形成される成膜装置を備え、前記射出成形機で成形された成形品は前記搬送装置で前記成膜装置に搬送されて成膜され、成膜された成形品は前記搬送装置によって前記塗装装置に搬送されて塗装されることを特徴とする塗装成形品の製造装置。
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JP2014210211A JP2016077952A (ja) | 2014-10-14 | 2014-10-14 | 塗装成形品の製造方法および製造装置 |
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- 2014-10-14 JP JP2014210211A patent/JP2016077952A/ja active Pending
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