JP2016070781A - 放射能汚染物質洗浄剤およびこれを用いた洗浄方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射能、特に放射性セシウムで汚染された土壌や飛灰等を浄化し、放射性物質を減容化する方法を提供する。【解決手段】水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物とを含む、放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌または飛灰とを接触させて、土壌又は飛灰に含有された放射性物質を該放射能汚染物質洗浄剤に移動させてこれを回収し、得られた放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質吸着材とを接触させて、放射性物質を該放射性物質吸着材に移動させ、該放射性物質を吸着した放射性物質吸着材を加熱し減容する。【選択図】図1
Description
本発明は放射能汚染物質の洗浄剤に関するものである。さらに本発明は、原子力発電所や放射性同位元素取扱等事業所をはじめとする原子力関連施設から放出され、土壌に吸着された放射性物質の除去や、除染作業により発生した放射能汚染物質を浄化するための試剤およびそれを用いた洗浄方法に関する。特に、原子力関連施設の事故に伴い発生した放射性物質を含む土壌から放射性物質を効率よく分離除去し、周辺住民や作業者の被ばくを最小限に抑えることを可能にする試剤およびその洗浄方法に関するものである。より詳細には、本発明は、特にシルトや浚渫土壌を含む土壌やアスファルト、コンクリート、金属類、無機吸着材に放射性物質が吸着し、これが大量に存在する場合に、放射能汚染物質自体の容積を削減し、保管場所の不足や管理の手間を減じることを目的とする。
環境中に大量に放出された放射性セシウム(Cs134、Cs137)は、人体や動植物に対して強い毒性を示す化合物である。特に放射性セシウム(Cs137)は、生体内での振る舞いがカリウムやルビジウムによく似ているため、体内に吸収され、β、γ線による内部被ばくを引き起こす。また、放射性セシウム(Cs137)は、半減期約30.1年のβ、γ核種であり、有害性が長期間に渡って持続する。このため、放射性セシウム(Cs134、Cs137)が大気中に放出されて、これが土壌等に吸着された場合は、直ちに除去する必要がある。
放射性セシウムを含む放射能汚染物質の浄化技術としては、超音波、プルシアンブルー、シュウ酸を用いる手法が開発されている。しかしながら超音波を用いる物理的な手法は、大量に存在する放射能汚染物質の浄化処理が困難であり、またプルシアンブルーなどの不燃性の無機物質を用いる手法は、放射能汚染物を吸着させた物質の減容処理が困難であるという問題がある。一方、シュウ酸などの有機溶媒を用いる方法は、有機溶媒自体の毒性の問題があり、これを大量に使用する場合には、別の危険性を伴い得るという問題があった。
例えば、特許文献1には、原子力施設から発生する除染対象物を、アルカリ除染工程と酸除染工程とに付し、アルカリ除染槽が振動撹拌機及び/又は超音波振動子を有するものである、放射性物質除去方法が開示されている。超音波振動子を用いる方法は、大量に存在する放射能汚染物質や、大型の放射能汚染物質の除染は極めて困難である。
特許文献2には、プルシアンブルー型金属錯体を導電体上に配設した複合材料に所定の陽イオンを含有する溶液を接触させて陽イオンをプルシアンブルー型金属錯体に吸着させることによる、液体に含まれる陽イオンを除去する方法が開示されている。金属錯体を用いる本方法は、確実に放射性物質である陽イオンを除去することができるが、大量に存在する放射性汚染物質を除染することは難しい。
特許文献3には、放射能汚染物をd−リモネンを用いて除染する方法が開示されている。リモネン自体の毒性が比較的低く、放射能汚染物を除染する方法として有効であると考えられるが、より簡易に入手でき、効率的な除染作業が可能な洗浄剤の開発が望まれる。
特許文献3には、放射能汚染物をd−リモネンを用いて除染する方法が開示されている。リモネン自体の毒性が比較的低く、放射能汚染物を除染する方法として有効であると考えられるが、より簡易に入手でき、効率的な除染作業が可能な洗浄剤の開発が望まれる。
非特許文献1には、低濃度の酸水溶液を使用してセシウムを水溶液中に抽出した後、プルシアンブルーで放射性セシウムを回収する、放射性セシウム抽出−回収する方法が開示されている。非特許文献1に開示される方法は、セシウムを効率的に回収することができるが、セシウムを吸着後のプルシアンブルーをどのように処理するかについては何ら開示されていない。
このような従来技術に鑑みて、本発明者らは土壌やゼオライトに含有される放射性物質を効率的に除去することができる洗浄剤を提案した(特許文献4)。特許文献4にて提案した洗浄剤は、水、酸性溶媒、金属塩化物、および分散剤ならびに場合により界面活性剤を含むものである。そして特許文献4に開示される洗浄剤を用いた汚染土壌の洗浄方法は、該洗浄剤と放射性物質汚染土壌等とを接触させ、汚染土壌等に含有された放射性物質をイオン交換によって水中に溶解させて、放射性物質を含有しない土壌等と放射性物質汚染水とを得て、次いで放射性物質汚染水と特定のシクロデキストリンポリマー(選択固着剤)とを接触させて該放射性物質汚染水に含まれる放射性物質をシクロデキストリンポリマーに選択的に固着させることを任意に含む。
日本経済新聞 2011年8月31日 独立行政法人産業総合研究所プレスリリース
本発明は、シルトや浚渫土壌を含む土壌や飛灰に含有される放射性物質、特に放射性セシウムを除去することにより、土壌や飛灰の浄化を目的とする放射能汚染物質の洗浄剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、放射能汚染物質洗浄剤を使用して、放射性セシウムで汚染された土壌や飛灰に含有される放射性物質を除去し、放射性セシウム濃度を基準値以下(廃棄物を安全に処理するための基準:8000Bq/kg以下)にして、以って放射性セシウムをほぼ含有しない安全な土壌や飛灰を得る方法を提供する。さらに本発明は放射性物質により汚染された大量の土壌や飛灰から放射性物質を適切に移動させることにより、放射能汚染物質の減容化を図る方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物と、を含む洗浄剤を使用して、土壌や飛灰の中に吸着された放射性物質を除去して、放射性物質を含まない土壌や飛灰を回収し、一方、用いた洗浄剤中に含まれる放射性物質を吸着材に吸着させて、放射性物質を含まない洗浄剤を回収し、次いで放射性物質を吸着した吸着材を加熱して容積を削減した放射性物質濃縮物を得ることにより、大量に存在していた放射能汚染物質の減容化ができることを見いだした。
本発明の態様は以下の通りである。
[1] 水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物とを含む、放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌または飛灰とを接触させて、土壌又は飛灰に含有された放射性物質を該放射能汚染物質洗浄剤に移動させてこれを回収し、
得られた放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質吸着材とを接触させて、放射性物質を該放射性物質吸着材に移動させ、
該放射性物質を吸着した放射性物質吸着材を加熱する、放射能汚染土壌又は飛灰の処理方法。
[2] 酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸、スルファミン酸、フッ酸、及びこれらの混合物からなる群より選択され、その金属塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩(非放射性)、マグネシウム塩、カルシウム塩から選択される、上記1に記載の方法。
[3] 分散剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記1または2に記載の方法。
[4] フッ化物がフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される、上記1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 放射性物質が放射性セシウムである、上記1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[6] 放射性物質吸着材が、プルシアンブルー、ゼオライト、イライト、酸化鉄、シリカ、アルミナ、イオン交換樹脂、活性炭およびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記1〜5のいずれか1項に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
[1] 水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物とを含む、放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌または飛灰とを接触させて、土壌又は飛灰に含有された放射性物質を該放射能汚染物質洗浄剤に移動させてこれを回収し、
得られた放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質吸着材とを接触させて、放射性物質を該放射性物質吸着材に移動させ、
該放射性物質を吸着した放射性物質吸着材を加熱する、放射能汚染土壌又は飛灰の処理方法。
[2] 酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸、スルファミン酸、フッ酸、及びこれらの混合物からなる群より選択され、その金属塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩(非放射性)、マグネシウム塩、カルシウム塩から選択される、上記1に記載の方法。
[3] 分散剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記1または2に記載の方法。
[4] フッ化物がフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される、上記1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5] 放射性物質が放射性セシウムである、上記1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[6] 放射性物質吸着材が、プルシアンブルー、ゼオライト、イライト、酸化鉄、シリカ、アルミナ、イオン交換樹脂、活性炭およびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記1〜5のいずれか1項に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、放射能汚染物質とは、放射性物質を含み、汚染された状態の全ての物質を指す。例えば、放射性物質であるヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどを含有する水、土、大気のほか、放射性物質と接触した紙類、衣類など、放射性物質で汚染されうる全てのものを意味する。特に本発明で使用する放射能汚染物質洗浄剤は、放射性物質で汚染された固体物質、特に土壌または飛灰の洗浄に有効である。
本発明の方法で用いる放射能汚染物質洗浄剤は、土壌や飛灰に含有された重金属類を土壌から追い出し、洗浄剤水溶液中に溶出させる機能を有するものが好適である。重金属類の多くは土壌に強く固定されているおり、単に水に接触させるだけでは洗浄することができない場合も多い。洗浄剤は、まず土壌を均一に水中に分散させて洗浄剤との接触面積を増やす作用を有すること、次いで分散した土壌中から重金属類(およびそれらのイオン)を引きはがす作用を有すること、そして引きはがした重金属類(およびそれらのイオン)を土壌から追い出す作用を有することが求められる。そこで本発明で使用する洗浄剤は、酸及び/又はその金属塩、分散剤、及び場合によりフッ化物を含む水溶液の形態であることが望ましい。
ここで酸及び/又はその金属塩は、土壌中に存在する負電荷を弱め、これを中和する働きをする。土壌に存在する負電荷を酸が弱め、負電荷に強く固定された重金属類のイオン(主に陽イオンの形態で存在)を引きはがしやすくすることができる。水溶液の状態で酸性を示すものであれば、どのような酸あるいは金属塩を用いてもよいが、土壌に存在する負電荷を弱める作用を有する好適な酸性物質としては、強酸性を示す塩酸、硫酸、硝酸、またはリン酸が挙げられ、そのほか、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸、およびスルファミン酸等の有機酸、ならびにそれらの、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩(非放射性)、マグネシウム塩、カルシウム塩を挙げることができる。またこれらの酸及び/又はその金属塩の2以上の混合物を用いることもできる。
分散剤は、土壌中の土や砂を均一に分散させ、水中に拡散させやすくする働きがある。すなわち分散剤は土壌と本発明の洗浄剤の洗浄成分とをよく接触させるために使用する。分散剤は、土壌に吸着する親油性部位と、水と親和性を有する親水性部位とをあわせもつ化合物であることが好ましい。本発明に用いる分散剤として、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルが好適であり、これらの分散剤の2以上を混合して用いることもできる。
本発明で使用する放射能汚染物質洗浄剤に場合により含んでいてもよいフッ化物とは、アルカリ金属フッ化物またはアルカリ土類金属フッ化物を意味する。金属フッ化物中のフッ化物イオンが土壌の構造を破壊する作用を有するため、好適に用いることができる。フッ化物イオンは、特に土壌中に含まれているケイ素と反応し、ケイ素−酸素結合を切断するため、この作用により土壌の構造が崩壊し、重金属類陽イオンを内包する空間が広がり、重金属類陽イオンを容易に追い出すことが可能となる。金属フッ化物であれば如何なる金属塩を用いてもよいが、使用する際の安定性等を考慮して、たとえばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムが挙げられ、これらの2以上の混合物を用いることも可能である。
本発明で使用する放射能汚染物質洗浄剤に含まれる水は、上に説明する洗浄成分を溶解するための溶剤のひとつであり、通常洗浄剤に用いられるレベルの純度を有する水であればよい。精製水、純水、脱イオン水などを好適に用いることができる。
本発明の一の形態は、上で説明した、水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物とを含む、放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌または飛灰とを接触させて、土壌又は飛灰に含有された放射性物質を該放射能汚染物質洗浄剤に移動させてこれを回収し、得られた放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質吸着材とを接触させて、放射性物質を該放射性物質吸着材に移動させ、該放射性物質を吸着した放射性物質吸着材を加熱する、放射能汚染土壌または飛灰の処理方法である。
本発明の第一の工程は、放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌又は飛灰とを接触させることにより、土壌又は飛灰に含有された放射性物質を放射能汚染物質洗浄剤に移動させ、これを回収することを含む。放射能汚染物質洗浄剤と放射性物質を含む土壌又は飛灰とを接触させるには、放射性物質を含む土壌又は飛灰に放射能汚染物質洗浄剤を散布あるいは噴霧する方法や、放射性物質を含む土壌や飛灰をカラム等に充填してここに放射能汚染物質洗浄剤を導入して流す等、種々の方法を採りうるが、放射性物質を含む土壌又は飛灰を該放射能汚染物質洗浄剤中に投入して、これを撹拌することが最も簡便である。上で説明したとおり、本発明で使用する放射能汚染物質洗浄剤は、土壌または飛灰を細かく均一に分散させ、土壌や飛灰に含まれている負電荷を弱めて中和し、放射性物質である重金属類を土壌または飛灰から追い出す働きをするため、追い出された放射性物質は放射能汚染物質洗浄剤に移動して溶解する。このように放射性物質が溶解した放射能汚染物質洗浄剤を回収する。放射能汚染物質洗浄剤を回収するには、放射能汚染物質を充填したカラムに放射能汚染物質洗浄剤を流す方法により放射性物質を含む土壌や飛灰と接触させた場合は、溶出した放射能汚染物質洗浄剤を回収すれば良く、放射性物質を含む土壌又は飛灰を該放射能汚染物質洗浄剤中に投入してこれを撹拌する方法により接触させた場合は、濾過操作により放射能汚染物質洗浄剤を回収することができる。
本発明の第二の工程は、第一の工程で回収した放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質吸着材とを接触させて、放射性物質を該放射性物質吸着材に移動させることを含む。第一の工程で回収した放射能汚染物質洗浄剤には放射性物質が溶解しており、また、処理した土壌や飛灰の量によっては、回収された放射能汚染物質洗浄剤の容積が膨大になりうる。放射性物質が溶解した水溶液をそのまま保管しておくための施設やスペースの不足の問題があり、このような水溶液をできるだけ減らす必要がある。ここで放射性物質吸着材として用いることができる物質として、たとえば無機化合物(鉄、カルシウム、プルシアンブルーなど)、各種吸着材(活性炭、ゼオライト、キレート樹脂など)、粘度鉱物(ベントナイト、タルク、クレーなど)、有機高分子化合物(アニオン系樹脂、たとえばポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸ソーダ−アクリルアミド強重合体、またはデンプン−アクリル酸−アクリル酸ソーダ共重合体;非イオン系樹脂、たとえばポリアクリルアミド、アルキルセルロース、またはポリエチレンオキシド)、固化剤(セメント、石灰など)あるいは固化遅延剤(クエン酸など)が挙げられる。これらの物質を放射性物質が溶解した放射能汚染物質洗浄剤中に添加して、適宜撹拌し、放射性物質を放射性物質吸着材に吸着させて、放射性物質を回収する。特に、次工程の加熱により体積が収縮する吸着材、たとえばプルシアンブルー、ゼオライト、イライト、酸化鉄、シリカ、アルミナ、イオン交換樹脂、活性炭を用いること好適であり、これらの2以上の混合物を用いることも可能である。これらのうち、次工程での加熱により特に著しく体積が収縮するイオン交換樹脂を用いることが好ましい。
本発明の第三の工程は、第二の工程で得た、放射性物質を吸着した吸着材を加熱することを含む。放射性物質吸着材を加熱して、放射性物質吸着材自体の体積を減少させるための処理である。ここで加熱とは、放射性物質吸着材の温度を上昇させることを意味し、たとえば火で燃焼させることや、加熱機器を用いて放射性物質吸着材の温度を上昇させるなどの手段を採りうる。この工程では、放射性物質吸着材を加熱して、多孔質の放射性物質吸着材の各々の孔を収縮させて体積を減少させたり、あるいは焼却により体積を減じたりすることができる。このようにして放射性物質を含有していた大量の土壌または飛灰から、放射性物質を放射能汚染物質洗浄剤へ、次いで放射性物質吸着材へと移動させて、放射能汚染物質を含有する物質の体積を削減することができる。本発明の方法により、大量の土壌や飛灰を保管する施設の不足の問題が解決できる。
なお、第一の工程で得られた、放射性物質をほとんどあるいはまったく含有しない土壌または飛灰は、必要に応じて第一の工程の処理を繰り返すか、あるいはそのまま、再利用することができる。また、本明細書で「放射性物質を含有しない」という語句は、含有放射性物質濃度が0であることのみを意味するのではない。放射性物質濃度が検出限界以下になっていること、あるいは放射性物質濃度が各種基準値以下になっていること、さらには本発明の処理を施す前と比べて放射性物質濃度が減少していることも、広く意味するものとする。
図面を用いて本発明の方法を説明する。図1は、本発明の実施の形態の一例のフローチャートである。図1は、放射性物質としてセシウムを含有する土壌を処理するフローを表している。まずセシウムで汚染された土壌を撹拌槽に入れ、ここに水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物とを含む放射能汚染物質洗浄剤を投入する。ここでセシウム汚染土壌の容積に対して、放射能汚染物質洗浄剤を1倍〜1000倍、好ましくは5倍〜500倍、さらに好ましくは10倍〜100倍投入することができる。撹拌時間は、処理すべきセシウム汚染土壌の量にもよるが、通常は1時間〜1日間、好ましくは3時間〜12時間程度である。撹拌操作は室温で行うことができるが放射能汚染物質洗浄剤へのセシウムの溶解速度を促進するために、30℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃、さらに好ましくは50℃〜60℃の範囲の温度下で行うことができる。撹拌操作は、通常の撹拌装置を用いて行えば良く、たとえば磁気撹拌子を用いたスターラーを使用することができる。あるいは、撹拌羽根等を備えた撹拌機を用いる等して、できる限り激しく撹拌することが望ましい。具体的には、撹拌操作に用いる撹拌槽全体を撹拌することができる形状をした撹拌羽根を使用して、好ましくは回転速度100rpm以上、より好ましくは200rpm以上、さらに好ましくは300rpmで撹拌すると良い。この処理により、セシウム汚染土壌からセシウムが追い出されて放射能汚染物質洗浄剤中に溶解する。ここで固液分離操作を行う。通常の固液分離の手段を用いて良く、たとえばフィルタによる濾過を行って土壌と洗浄剤とに分離する。
固液分離操作により得られた土壌には、もはやセシウムはほとんど(あるいはまったく)含まれていないが、必要に応じて適宜上記の処理を繰り返し、再洗浄することができる。一回あるいは複数回洗浄処理を施した土壌は、処理済み土壌として再利用することができる。
一方、固液分離操作から回収された放射能汚染物質洗浄剤を、放射性物質吸着材を備えた吸着槽に投入する。セシウムが溶解した放射能汚染物質洗浄剤の重量に対して 、放射性物質吸着材は0.1〜1%、好ましくは0.3〜0.5%用意することが好ましい。事前に処理すべき洗浄剤の放射線量を測定して、放射性物質吸着材の必要量を計算することができる。撹拌時間は、処理すべき洗浄剤の量にもよるが、通常は1時間〜1日間、好ましくは3時間〜12時間程度である。撹拌操作は、通常の撹拌装置を用いて行えば良く、たとえば磁気撹拌子を用いたスターラーを使用することができる。あるいは、撹拌羽根等を備えた撹拌機を用いる等して、できる限り激しく撹拌することが望ましい。具体的には、撹拌操作に用いる撹拌槽全体を撹拌することができる形状をした撹拌羽根を使用して、好ましくは回転速度100rpm以上、より好ましくは200rpm以上、さらに好ましくは300rpm以上で撹拌すると良い。この処理により、放射能汚染物質洗浄剤に溶解していたセシウムが、吸着材に移動して吸着される。ここで固液分離操作を行う。通常の固液分離の手段を用いて良く、たとえばフィルタによる濾過を行って、洗浄剤と吸着材とに分離する。
固液分離操作により得られた洗浄剤には、もはやセシウムはほとんど(あるいはまったく)含まれていないため、これを放射能汚染物質洗浄剤として再利用することができる。
一方、固液分離操作から回収された放射性物質吸着材を加熱処理する。加熱処理の方法としてたとえば焼却が挙げられる。焼却することにより容積が著しく減少した、セシウム濃度の高い焼却残渣を得ることができる。このようにして処理の当初に存在していたセシウム汚染土壌の容積あるいは重量に比べて、容積が少なく、軽い焼却残渣として保管することが可能となる。
なお、放射能汚染物質洗浄剤による処理により得られた放射能汚染物質洗浄剤は、シクロデキストリンポリマーなどの放射性物物質選択固着剤を使用して、放射性物質を該固着剤に吸着させることもできる。シクロデキストリンポリマーとは、例えば特願2012−500601号、特願2012−105307号、特願2012−152416号などに記載されているシクロデキストリンと有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とが縮合したタイプのポリマーが挙げられる。シクロデキストリンポリマーは、末端基に多価アルコール類、多価アリールアルコール類、または多価カルボン酸類等を反応させて、アルキル基、またはアリール基を有したタイプのものであって良く、水を反応させて得た、末端基を有していない(すなわち水酸基−OH)タイプのものであっても良い。かかるシクロデキストリンポリマーは、放射性物質を選択的に固着することが本発明者らによって確かめられており、わずかな放射性物質に汚染された大量の水などから放射性物質を選択的に固着させることに有用である。ここでシクロデキストリンとは、数分子のD−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し環状構造をとったオリゴ糖の一種である。一般的にグルコースが6個、7個または8個結合したものが知られており、それぞれ、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンと称される。また有機二塩基酸とは、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪酸を含み、本発明においては、シクロデキストリン分子中の−CH2OH基と反応して逐次縮合し、ポリマーを形成しうる化合物のことであり、有機二塩基酸ハロゲン化物とは、これらの酸のハロゲン化物のことである。有機二塩基酸および有機二塩基酸ハロゲン化物として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸およびこれらの塩化物、臭化物ならびにヨウ化物等が挙げられ、特にテレフタル酸またはテレフタル酸ジクロライド(二塩化テレフタロイル)を用いたものが好適に使用される。放射性物質汚染水中の放射性物質の固着には、上記のシクロデキストリンポリマー吸着剤を利用することが望ましいが、放射性物質を有効に固着することができる物質であれば、どのようなものを利用しても良い。例えば、フェロシアン酸塩等の無機金属塩等の従来から知られている無機吸着剤あるいは有機吸着剤を利用することができる。
[放射能汚染物質洗浄剤の調製(洗浄剤A、B、C、D及びE)]
以下の方法で、放射能汚染物質洗浄剤を5種類調製した:
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いで硫酸カリウム(1mol、純正化学)、硫酸マグネシウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤A)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いで硫酸カリウム(1mol、純正化学)、フッ化カリウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤B)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いでフッ化水素カリウム(1mol、純正化学)、フッ化カリウム(1mol、純正化学)及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤C)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いで硫酸アンモニウム(1mol、純正化学)、フッ化アンモニウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤D)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いでフッ化水素アンモニウム(1mol、純正化学)、フッ化アンモニウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤E)。
以下の方法で、放射能汚染物質洗浄剤を5種類調製した:
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いで硫酸カリウム(1mol、純正化学)、硫酸マグネシウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤A)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いで硫酸カリウム(1mol、純正化学)、フッ化カリウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤B)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いでフッ化水素カリウム(1mol、純正化学)、フッ化カリウム(1mol、純正化学)及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤C)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いで硫酸アンモニウム(1mol、純正化学)、フッ化アンモニウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤D)。
ポリビーカーに硫酸(1mol/L、純正化学)を1L入れ、氷浴につけて冷やした。次いでフッ化水素アンモニウム(1mol、純正化学)、フッ化アンモニウム(1mol、純正化学)、及びヒドロキシエチルセルロース(200〜300Pa・s、10g、東京化成工業)をゆっくり加え、これらが完全に溶解するまで撹拌した(洗浄剤E)。
[洗浄実験]
洗浄実験に用いた放射能汚染物質とそれらの放射線量は、以下のとおりであった:
(1)土壌:19,000Bq/kg(福島県で採取)
(2)シルト:49,000Bq/kg(福島県で採取)
(3)主灰:13,000Bq/kg(福島県で採取)
(4)飛灰:28,000Bq/kg(福島県で採取)
(5)下水汚泥焼却灰:8,000Bq/kg(宮城県で採取)
(6)浚渫土壌:30,000Bq/kg(福島県で採取)
1Lのセパラブルフラスコに上記の放射能汚染物質(100g)を各々入れ、30℃で300rpmの回転速度で5時間撹拌した。その後、吸引濾過及び250mLの水による洗浄を行い、土壌と放射能汚染物質洗浄剤とを分離した。得られた土壌を乾燥し、重量を測定した後、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた土壌は50g、測定時間は20分間であった。同様の洗浄操作を2回あるいは3回繰り返した。対照実験として、水のみならびに硫酸(1M)のみで同様の洗浄操作を行った。各放射能汚染物質の洗浄により得られた物質及び回収洗浄水の放射能濃度をそれぞれ表に示す。
洗浄実験に用いた放射能汚染物質とそれらの放射線量は、以下のとおりであった:
(1)土壌:19,000Bq/kg(福島県で採取)
(2)シルト:49,000Bq/kg(福島県で採取)
(3)主灰:13,000Bq/kg(福島県で採取)
(4)飛灰:28,000Bq/kg(福島県で採取)
(5)下水汚泥焼却灰:8,000Bq/kg(宮城県で採取)
(6)浚渫土壌:30,000Bq/kg(福島県で採取)
1Lのセパラブルフラスコに上記の放射能汚染物質(100g)を各々入れ、30℃で300rpmの回転速度で5時間撹拌した。その後、吸引濾過及び250mLの水による洗浄を行い、土壌と放射能汚染物質洗浄剤とを分離した。得られた土壌を乾燥し、重量を測定した後、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた土壌は50g、測定時間は20分間であった。同様の洗浄操作を2回あるいは3回繰り返した。対照実験として、水のみならびに硫酸(1M)のみで同様の洗浄操作を行った。各放射能汚染物質の洗浄により得られた物質及び回収洗浄水の放射能濃度をそれぞれ表に示す。
[放射性物質の吸着実験(その1)]
洗浄剤Aを用いて(1)の土壌を3回洗浄した後に回収した洗浄水(放射能濃度:730Bq/kg)、ならびに洗浄剤Cを用いて(1)の土壌を3回洗浄した後に回収した洗浄水(放射能濃度:770Bq/kg)に含まれているセシウムを、以下の吸着材に吸着させた:
吸着材A:プルシアンブルー(大日精化)
吸着材B:強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学)
50mLのシリンジの先端に脱脂綿’(1g)を詰め、その上に各吸着材(10gまたは50g)を充填して簡易カラムを作成した。上記の回収洗浄水(2250mL)をこのカラムに流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。得られた水溶液の重量を測定し、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた水溶液は50g、測定時間は20分間であった。結果を以下の表に示す:
洗浄剤Aを用いて(1)の土壌を3回洗浄した後に回収した洗浄水(放射能濃度:730Bq/kg)、ならびに洗浄剤Cを用いて(1)の土壌を3回洗浄した後に回収した洗浄水(放射能濃度:770Bq/kg)に含まれているセシウムを、以下の吸着材に吸着させた:
吸着材A:プルシアンブルー(大日精化)
吸着材B:強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学)
50mLのシリンジの先端に脱脂綿’(1g)を詰め、その上に各吸着材(10gまたは50g)を充填して簡易カラムを作成した。上記の回収洗浄水(2250mL)をこのカラムに流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。得られた水溶液の重量を測定し、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた水溶液は50g、測定時間は20分間であった。結果を以下の表に示す:
[放射性物質の吸着実験(その2)]
放射性物質の吸着実験その1で、吸着材Bを用いてセシウムを吸着させた後に得られた水溶液を、吸着材Bで再処理した。50mLのシリンジの先端に脱脂綿(1g)を詰め、その上に吸着材B(50g)を充填して簡易カラムを作成した。吸着実験その1で得られた回収洗浄水(2250mL)をこのカラムに流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。得られた水溶液の重量を測定し、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた水溶液は50g、測定時間は20分間であった。結果を以下の表に示す:
放射性物質の吸着実験その1で、吸着材Bを用いてセシウムを吸着させた後に得られた水溶液を、吸着材Bで再処理した。50mLのシリンジの先端に脱脂綿(1g)を詰め、その上に吸着材B(50g)を充填して簡易カラムを作成した。吸着実験その1で得られた回収洗浄水(2250mL)をこのカラムに流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。得られた水溶液の重量を測定し、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた水溶液は50g、測定時間は20分間であった。結果を以下の表に示す:
[放射性物質の吸着実験(その3)]
放射性物質の洗浄実験で得られた各水溶液(それぞれ表11に記載)を、吸着材Bで処理した。50mLのシリンジの先端に脱脂綿(1g)を詰め、その上に吸着材B(50g)を充填して簡易カラムを作成した。洗浄実験で得られた各回収洗浄水(2250mL)をこのカラムに流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。得られた水溶液の重量を測定し、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた水溶液は50g、測定時間は20分間であった。結果を以下の表(処理後)に示す:
さらに、処理後の各水溶液を、吸着材Bで再処理した。新しく作成した吸着材B(50g)を充填した簡易カラムに、処理後の各水溶液(約2250mL)を流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。γ線スペクトロメータで測定した。結果を以下の表(再処理後)に示す:
放射性物質の洗浄実験で得られた各水溶液(それぞれ表11に記載)を、吸着材Bで処理した。50mLのシリンジの先端に脱脂綿(1g)を詰め、その上に吸着材B(50g)を充填して簡易カラムを作成した。洗浄実験で得られた各回収洗浄水(2250mL)をこのカラムに流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。得られた水溶液の重量を測定し、γ線スペクトロメータ(EMF211、EMFジャパン製)で放射性セシウム濃度を測定した。この際、測定に用いた水溶液は50g、測定時間は20分間であった。結果を以下の表(処理後)に示す:
さらに、処理後の各水溶液を、吸着材Bで再処理した。新しく作成した吸着材B(50g)を充填した簡易カラムに、処理後の各水溶液(約2250mL)を流し、シリンジ先端から流出した水溶液を回収した。γ線スペクトロメータで測定した。結果を以下の表(再処理後)に示す:
上記の放射性物質の吸着実験を通じて得られた吸着材は、たとえば特開2012−116997号、特開2012−207134号に記載された、イオン交換樹脂焼却実験に則り、加熱焼却することができる。また、機関誌JEFMANo.61(日本環境衛生施設工業会)に記載された、放射能汚染廃棄物処理除染除去物の焼却減容化システム(日立造船株式会社)にしたがい、吸着材を焼却することができる。このようにして、大量に存在していた放射能汚染物質の容積を最終的に縮減させ、移動や保管の便を向上させることができる。
[洗浄水の再利用の試み]
放射性物質の吸着実験(その2)で回収した水溶液である、(1)の土壌を洗浄剤Aで洗浄し、回収された洗浄剤を吸着材Bで処理して得た水溶液((1)土壌_洗浄剤A_吸着材B、放射能濃度10Bq/kg以下、この水溶液を「再利用A」と称する。)、及び(1)の土壌を洗浄剤Cで洗浄し、回収された洗浄剤を吸着材Bで処理して得た水溶液((1)土壌_洗浄剤C_吸着材B、放射能濃度10Bq/kg以下、この水溶液を「再利用C」と称する。)を、放射能汚染物質洗浄剤として再利用できるかどうか試みた。再利用A、再利用C(それぞれ単独)、洗浄剤Aと再利用Aとを同量で混合した「洗浄剤A+再利用A」、および洗浄剤Cと再利用Cとを同量で混合した「洗浄剤C+再利用C」を用いて、(1)土壌を洗浄した。洗浄方法は、上記の洗浄実験と同様に行った。
放射性物質の吸着実験(その2)で回収した水溶液である、(1)の土壌を洗浄剤Aで洗浄し、回収された洗浄剤を吸着材Bで処理して得た水溶液((1)土壌_洗浄剤A_吸着材B、放射能濃度10Bq/kg以下、この水溶液を「再利用A」と称する。)、及び(1)の土壌を洗浄剤Cで洗浄し、回収された洗浄剤を吸着材Bで処理して得た水溶液((1)土壌_洗浄剤C_吸着材B、放射能濃度10Bq/kg以下、この水溶液を「再利用C」と称する。)を、放射能汚染物質洗浄剤として再利用できるかどうか試みた。再利用A、再利用C(それぞれ単独)、洗浄剤Aと再利用Aとを同量で混合した「洗浄剤A+再利用A」、および洗浄剤Cと再利用Cとを同量で混合した「洗浄剤C+再利用C」を用いて、(1)土壌を洗浄した。洗浄方法は、上記の洗浄実験と同様に行った。
放射能汚染物質の洗浄に用い、溶解した放射性物質を吸着材で除去して得た水溶液は、引き続き放射能汚染物質洗浄剤として再利用できることがわかった。特にフレッシュな放射能汚染物質洗浄剤と混合して用いれば、放射性物質洗浄能力を充分に発揮する。
Claims (6)
- 水と、酸及び/又はその金属塩と、分散剤と、場合によりフッ化物とを含む、放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌または飛灰とを接触させて、土壌又は飛灰に含有された放射性物質を該放射能汚染物質洗浄剤に移動させてこれを回収し、
得られた放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質吸着材とを接触させて、放射性物質を該放射性物質吸着材に移動させ、
該放射性物質を吸着した放射性物質吸着材を加熱する、放射能汚染土壌又は飛灰の処理方法。 - 酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸、スルファミン酸、フッ酸、及びこれらの混合物からなる群より選択され、その金属塩が、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩(非放射性)、マグネシウム塩、カルシウム塩から選択される、請求項1に記載の方法。
- 分散剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
- フッ化物がフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 放射性物質が放射性セシウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 放射性物質吸着材が、プルシアンブルー、ゼオライト、イライト、酸化鉄、シリカ、アルミナ、イオン交換樹脂、活性炭およびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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---|---|---|---|---|
DE102017202866A1 (de) | 2016-03-31 | 2017-10-05 | Subaru Corporation | Insassenschutzvorrichtung für ein Fahrzeug |
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- 2014-09-30 JP JP2014200097A patent/JP2016070781A/ja active Pending
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