JP2016069760A - 人工皮革基材及び人工皮革基材の製造方法 - Google Patents

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靖典 村手
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道憲 藤澤
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Abstract

【課題】有機溶剤を用いずに、柔軟性に優れた軽量な人工皮革基材を提供することを目的とする。さらに、厚み方向の特性が均質な人工皮革基材であって、表面樹脂層を形成する場合には、平滑な表面樹脂層を形成できる人工皮革基材を提供することを目的とする。【解決手段】見かけ密度0.15〜0.35g/cm3を有する、海成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、島成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である繊度2.0dtex以上の海島型複合繊維の不織布、高分子弾性体を乳化分散させた水系エマルジョンを含浸させ、調湿調温された雰囲気で加熱することにより感熱ゲル化させ、海島型複合繊維から島成分を熱水抽出除去することにより、見掛け密度の低い中空繊維の不織布と、厚み方向に均質に存在する高分子弾性体とを含む人工皮革基材を得る。【選択図】図2

Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の中空繊維の不織布と、該不織布に含浸された高分子弾性体と、を含む、軽量な人工皮革基材及びその製造方法に関する。
従来、不織布に高分子弾性体を複合化させた人工皮革基材が知られている。このような人工皮革基材は、ポリウレタンなどの高分子弾性体を不織布に含浸付与して形成される。
人工皮革基材の表面に、革の銀面に似せた表面樹脂層を形成することにより銀付調人工皮革が得られる。このような銀付調人工皮革は、ランドセルのような鞄、衣類、雑貨等の皮革調の素材として広く用いられている。ランドセルのような用途に用いられる銀付調人工皮革には、軽量化が求められている。
人工皮革基材を軽量化するために、不織布に多孔質の高分子弾性体を含浸付与する技術が知られている。多孔質の高分子弾性体を含浸付与した人工皮革基材は、例えば、ポリウレタンをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶剤に溶解させた樹脂液を不織布に含浸し、DMF水溶液の凝固液に浸漬することによりポリウレタンを湿式凝固させるような方法により得られる。例えば、下記特許文献1の段落[0023]は、繊維絡合体に浸透させたポリウレタン溶液を液温40℃の25%DMF水溶液で凝固させるような方法を開示する。また、例えば、下記特許文献2の段落[0026]は、繊維絡合体をポリウレタンのDMF溶液中に浸漬した後、所定の水溶液中でポリウレタンを凝固させる方法を開示する。
有機溶剤に溶解させた樹脂液を不織布に含浸して湿式凝固させる上述したような製造方法によれば、微細な多孔質の高分子弾性体を含む軽量性に優れた人工皮革基材が得られる。しかしながら、このような方法によれば、有機溶剤に溶解させた樹脂液を用いるために、使用後に有機溶剤を含む廃液が発生し、環境に対する負荷が大きいという問題があった。このような問題を解決するために、有機溶剤を用いずに、軽量な人工皮革基材を製造する方法が求められている。
有機溶剤を用いずに、軽量な人工皮革基材を製造する方法としては、不織布にポリウレタンエマルジョンのような水系エマルジョンを機械的に発泡させた後、不織布に含浸し、樹脂液を乾燥させることによりポリウレタンを凝固させる方法が挙げられる。しかしながら、機械的に発泡された水系の樹脂液を用いた場合、不織布に含浸させるときに多くの気泡が消失するために、均質に微細孔を有する状態でポリウレタンを凝固させることが困難であった。
また、有機溶剤を用いずに軽量な人工皮革基材を製造する別の方法としては、発泡ビーズを含有する水系の樹脂液を含浸させることにより、発泡構造を有する高分子弾性体を含む人工皮革基材を得る方法も挙げられる。しかしながら、高分子弾性体に発泡ビーズを均質に分散させることは困難であるために、このような方法によっても均質な微細孔を有する状態でポリウレタンを凝固させることは困難であった。
ところで、不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させた後、高分子弾性体を凝固させる方法としては、赤外線ヒーター等の加熱装置で水系エマルジョンを加熱乾燥する方法が知られている。赤外線ヒーター等の加熱装置で水系エマルジョンを加熱乾燥する方法によれば、高分子弾性体の液を含浸させた繊維絡合体の表面から高温で加熱するために、水分が表面から急速に蒸発し、内層の水系エマルジョンが表層に移行(マイグレーション)し、その状態で乾燥が進行するために、高分子弾性体が内層よりも表層の方に著しく偏在し、得られる人工皮革基材の厚み方向の特性が不均質になるという問題があった。また、厚み方向の特性が不均質になるとともに、表面に高分子弾性体が不均質に凝集するために、人工皮革基材の表面に革の銀面に似せた表面樹脂層を形成した場合、平滑な表面樹脂層が得られにくかった。
水系エマルジョンを凝固させる際のマイグレーションを抑制する方法としては、スチームに接触させてエマルジョンを破壊して凝固させる方法や、調湿温風雰囲気下で処理した後、加熱乾燥する方法も知られている。
例えば、下記特許文献3は、(A)分子内にカルボキシル基とノニオン性親水基を含有する水系ウレタン樹脂、及び/又は分子内にカルボキシル基を含有するウレタン樹脂をノニオン性乳化剤で強制分散してなる水系ウレタン樹脂、(B)無機塩、(C)曇点を持つノニオン性界面活性剤から成る水系樹脂組成物を、繊維絡合体に含浸又は塗布し、スチームで感熱凝固させる方法を開示する。そして、その段落[0046]は、スチームの湿度は100%に近づくほど、表面からの乾燥が抑えられ、好ましくは通常の飽和蒸気(0〜0.6MPa)処理及び160〜190℃の過熱蒸気処理を含むようなスチームで処理することが好ましいことを開示する。このような方法によれば、スチームの熱が内部まで行き届くとともに、100%近い湿度のスチームにより、表層からの急激な水分の蒸発が抑制されるために、水系エマルジョンのマイグレーションがある程度抑制される。しかし、このような方法によれば、処理されたシートが水分で著しく濡れてしまい、後の乾燥工程に時間が掛かるという問題があった。
また、例えば、下記特許文献4の段落[0065]は、繊維絡合体に高分子弾性体の水分散液を含浸させた後、湿球温度70〜100℃の調湿温風雰囲気下で不織布表面温度60〜90℃の状態で、20〜300秒間処理することにより高分子弾性体を凝固させる方法を開示する。
特開2005−97763号公報 特開平05−078986号公報 特開平11−335975号公報 特開2011−58107号公報
特許文献4に開示されたような、水系エマルジョンを含浸させた繊維絡合体を調湿温風で処理することにより、高分子弾性体を凝固させるような凝固法によれば、水系エマルジョンのマイグレーションがある程度抑制される。しかしながら、不織布の見掛け密度が低い場合には、マイグレーションを充分に抑制することができなかった。
本発明は、有機溶剤を用いずに得られる、柔軟性に優れた軽量な人工皮革基材を提供することを目的とする。さらに、厚み方向の特性が均質な人工皮革基材であって、表面樹脂層を形成する場合には、平滑な表面樹脂層を形成できる人工皮革基材を提供することを目的とする。
本発明の人工皮革基材の製造方法は、(a)0.15〜0.35g/cm3の見かけ密度を有する、海成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、島成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である繊度2.0dtex以上の海島型複合繊維の不織布を準備する工程と、(b)海島型複合繊維の不織布に、高分子弾性体を乳化分散させた水系エマルジョンを含浸させる工程と、(c)海島型複合繊維の不織布に含浸させた水系エマルジョンを調湿調温された雰囲気で加熱することにより感熱ゲル化させる工程と、(d)感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む海島型複合繊維の不織布を加熱乾燥して高分子弾性体を凝固させる工程と、(e)海島型複合繊維の不織布を形成する海島型複合繊維から島成分を熱水抽出除去することにより中空繊維の不織布を形成する工程と、を備え、工程(b)において、海島型複合繊維の不織布に含浸された水系エマルジョンの充填率が、海島型複合繊維の不織布中の空隙の全容積に対して50〜75%であり、工程(c)において、調湿調温された雰囲気は、湿球温度68℃以下であり、且つ相対湿度10〜90RH%に制御された雰囲気である。
このような製造方法によれば、見かけ密度の低い中空繊維の不織布と、不織布中に緻密なネットワーク構造を形成するように厚み方向に均質に存在する高分子弾性体とを含む人工皮革基材が得られる。厚み方向に均質に存在する高分子弾性体は、柔軟性に富むネットワーク状の構造を形成する。
本製造方法においては、水系エマルジョンを海島型複合繊維の不織布中の空隙の全容積の50〜75%を占めるように含浸させることにより、不織布に均質に水系エマルジョンが行き渡る。そして、湿球温度68℃以下であり、且つ相対湿度10〜90RH%に制御された雰囲気でエマルジョンを感熱ゲル化させることにより、水系エマルジョン中の水分の急速な蒸発を抑制してマイグレーションの発生を抑制できる。その結果、見かけ密度の低い中空繊維の不織布の繊維表面に高分子弾性体が均質に付着して、クッション性に富むネットワーク状の高分子弾性体が厚み方向に均質に形成される。また、このような人工皮革基材は厚み方向に充実感が均質であり、また、表層に高分子弾性体がマイグレーションしにくいために、平滑な表面樹脂層が形成される。
また、工程(b)と工程(c)との間に、さらに、(f)海島型複合繊維の不織布の厚み方向の変形率15〜45%でロール・ニップ処理することにより、水系エマルジョンを搾液する工程を備える場合には、不織布に均質に水系エマルジョンを行き渡らせることができる。
また、工程(d)において、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む海島型複合繊維の不織布の厚み方向の中心部の温度を初期温度〜100℃の温度域が0.8℃/分以下の速さで昇温させる場合には、不織布の内部温度を均一に上昇させることができ、水系エマルジョンのマイグレーションを抑制し、均一に高分子弾性体が分散した状態で固定化させることができる点から好ましい。
また、水系エマルジョンは、調湿調温された雰囲気中に1分間放置されたときに、その粘度が該放置前の粘度に比べて50倍以上上昇することが、水系エマルジョンが調湿調温処理されたときに速やかに感熱ゲル化するために、高分子弾性体のマイグレーションを充分に抑制することができる点から好ましい。このような水系エマルジョンは、例えば、感熱ゲル化剤を配合することにより得ることができる。
また、調湿調温された雰囲気の湿球温度は55℃以上であることが水系エマルジョンの感熱ゲル化性を制御しやすい点から好ましい。調湿調温された雰囲気の湿球温度が低すぎる温度で容易にゲル化するような水系エマルジョンを用いた場合には、水系エマルジョンの安定性を維持するための管理が煩雑になる。調湿調温された雰囲気の湿球温度が55℃以上でゲル化するような水系エマルジョンを用いることにより、水系エマルジョンの保存が容易になる。
また、本発明の人工皮革基材は、繊度0.8dtex以上のポリブチレンテレフタレート系樹脂の中空繊維の絡合体である不織布と該不織布に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する見かけ密度0.15〜0.5g/cm3の人工皮革基材であって、厚み方向に平行な垂直断面の電子顕微鏡写真において、高分子弾性体が観察され、垂直断面を均一な厚みで3分割して形成された層を、それぞれ第一表層、中層、及び第二表層としたとき、中層における高分子弾性体の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて0.8〜1.3倍である。このような人工皮革基材は、中空繊維の不織布と、厚み方向に均質に存在する高分子弾性体とを含む、軽量性と柔軟性に富む人工皮革基材である。
本発明によれば、中空繊維の不織布と、厚み方向に均質に存在する高分子弾性体とを含み、軽量且つ柔軟な人工皮革基材が得られる。
高分子弾性体溶液を含浸した海島型複合繊維の不織布をロール・ニップ処理する工程を示す概略図である。 実施例1で得られた銀付調人工皮革の厚み方向の断面のSEM写真を示す。
以下、本発明に係る人工皮革基材の製造方法の一実施形態について、詳しく説明する。本実施形態の人工皮革基材の製造方法は、例えば、以下の(a)〜(e)の工程を順次行うことにより実施できる。
〈工程(a)〉
本工程は、0.15〜0.35g/cm3の見かけ密度を有する、海成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、PBTとも称する)であり、島成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVAとも称する)である繊度2.0dtex以上の海島型複合繊維の不織布を準備する工程である。
本工程においては、はじめに、海成分としてPBTを用い、島成分としてPVAを用い、PBTとPVAとを複合紡糸用口金から押出し、海島型複合繊維を溶融紡糸する。
本実施形態における海島型複合繊維とは、PBTを海成分とし、PVAを島成分とする、少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維であり、繊維断面において繊維外周部を主として構成する海成分であるPBT中に、島成分であるPVAが分布した断面形態の繊維である。このような海島型複合繊維は、島成分であるPVAを選択的に抽出除去することにより、PBTの中空繊維を生成できる繊維である。
このような海島型複合繊維は、従来公知のチップブレンド(混合紡糸)方式や複合紡糸方式で代表される多成分系複合繊維の紡糸方法を用いて形成することができる。
海成分を形成するPBTとしては、ポリブチレンテレフタレートまたはその変性物が挙げられる。PBTは、例えば、ポリエチレンテレフタレート系繊維等よりも製造工程において熱収縮しにくいために、見かけ密度が低い中空繊維の不織布を形成することができる。PBTは、着色剤,難燃剤,紫外線吸収剤,熱安定剤,消臭剤,防かび剤,抗菌剤,その他の各種安定剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
一方、島成分はPVAから形成される。PVAは、熱水により容易に抽出除去できる点から、環境に対する負荷が小さい。
PVAは、ビニルエステル単位を主構成単位として有するポリマーをケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらの中ではPVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
PVAは、主構成単位であるビニルエステル単位のみからなるホモPVAであっても、溶融紡糸性や水溶性を調整するためにビニルエステル単位以外の共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、変性PVAを用いることがとくに好ましい。ビニルエステル単位以外の共重合単量体の具体例としては、例えば、エチレン,プロピレン,1−ブテン,イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル,エチルビニルエーテル,n−プロピルビニルエーテル,イソプロピルビニルエーテル,n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
PVA中のビニルエステル単位以外の共重合単位の含有割合としては、1〜20モル%、さらには4〜15モル%、とくには6〜13モル%であることが好ましい。なお、変性PVAとしては、溶融紡糸性や水溶性に優れる点からエチレン変性PVAが特に好ましい。エチレン変性PVA中に含有されるエチレン単位の含有割合としては、4〜15モル%、さらには6〜13モル%であることが好ましい。
また、PVAのケン化度としては、90〜99.99モル%、さらには93〜99.77モル%、とくには95〜99.55モル%、ことには97〜99.33モル%が好ましい。ケン化度が低すぎる場合には、熱安定性が低下して溶融紡糸性が低下する傾向があり、ケン化度が高すぎる場合にはPVAの生産性が低下する傾向がある。
PVAの粘度平均重合度としては、200〜500、さらには250〜470、とくには300〜450であることが好ましい。重合度が低すぎる場合には、熱水による溶解速度が高くなりすぎる傾向があり、また、重合度が高すぎる場合には、熱水による溶解速度が低くなりすぎる傾向がある。なお、PVAの重合度は、JIS−K6726に準じて次式により求められる。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
(Pは粘度平均重合度、[η]はPVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度である。)
PVAの融点(Tm)は熱水に対する溶解性の点から、170〜230℃、さらには、175〜225℃、とくには180〜220℃であることが好ましい。Tmが低すぎる場合には熱水による溶解速度が高くなりすぎる傾向がある。また、Tmが高すぎる場合には熱水による溶解速度が低くなりすぎる傾向がある。
海島型複合繊維中に占める島成分の割合は、繊維断面における面積比率で5〜60%、さらには10〜50%であることが好ましい。海島型複合繊維中の島成分の割合が低すぎる場合には充分に軽量化された、中空繊維の不織布が得られにくくなる傾向がある。
海島型複合繊維の溶融紡糸は、例えば、PVAとPBTとを、海島型複合繊維を溶融紡糸できる複合紡糸用口金から押出し、細化するような方法で行われる。
複合紡糸用口金は、例えば、海成分中に島成分が分散したような断面を形成することができるようなノズル孔が配置された構造を有する。ノズル孔の数は特に限定されないが、10〜60個、さらには12〜45個であることが好ましい。そして、例えば、海成分及び島成分を溶融させて、口金温度180〜350℃程度の温度で口金から吐出し、吐出された溶融したストランドをエアジェット・ノズル等の吸引装置を用いて目的の繊度になるよう牽引細化する。高速気流は、例えば、通常の紡糸における機械的な引取り速度に相当する平均紡糸速度が1000〜6000m/分となるように作用させることが好ましい。
そして、このように溶融紡糸された海島型複合繊維を、カットすることなくコンベヤベルト状の移動式ネットなどの捕集面にネットの反対面側から吸引しながら堆積させてウェブ化するか、または、カットして短繊維にし、カード、クロスラッパー、ランダムウェッバーなどを用いてウェブ化することにより、例えば10〜1000g/m2の繊維ウェブを形成する。
海島型複合繊維は長繊維でも短繊維でもよいが、繊維抜けが起こりにくく、機械的特性等に優れる点から長繊維であることが好ましい。長繊維は、短繊維(繊維長10〜50mm)のように意図的に切断されていない繊維であり、その繊維長は、100mm以上が好ましく、また、技術的に製造可能であって、かつ、物理的に切れない限りは、数m、数百m、数km、あるいはそれ以上の繊維長であってもよい。
海島型複合繊維の繊度は2.0dtex以上であり、好ましくは、2.5〜4.8dtex、さらには2.8〜4.0dtexであることが好ましい。繊度が2.0dtex未満の場合には充分に軽量化された人工皮革基材が得られにくくなる傾向がある。
このようにして得られた繊維ウェブは、必要に応じて形態安定性を付与するために、加熱プレス等により部分的に加熱圧着させてもよい。
そして、得られた繊維ウェブを絡合処理することにより、海島型複合繊維の不織布が得られる。絡合処理は、例えば、所望の目付け、厚さになるように、繊維ウェブをクロスラッパー等を用いて厚さ方向に複数層重ね合わせた後、ニードルを用いて両面から同時または交互にニードルパンチングして繊維同士を三次元絡合させる。
ニードルパンチングの条件は特に限定されないが、例えば、バーブの数としては1〜9個、パンチ数としては800〜4000パンチ/cm2、さらには1000〜3500パンチ/cm2等の条件が挙げられる。また、ニードルの少なくとも1つ以上のバーブが貫通するような条件で行うことが好ましい。
また、繊維ウェブにはその製造後から絡合処理までのいずれかの段階で、帯電防止効果を付与したり、ニードルとの摩擦抵抗をコントロールしたり、繊維同士の摩擦抵抗をコントロールしたりするために、界面活性剤や、鉱物系の油剤やポリシロキサン系の油剤等を付与してもよい。
絡合処理された繊維ウェブは、通常湿熱収縮処理されて緻密化される。絡合処理された繊維ウェブを湿熱収縮処理する方法の具体例としては、例えば、飽和水蒸気を連続的に供給することにより、温度65〜100℃、相対湿度70〜100%のような条件に制御された雰囲気中に絡合処理された繊維ウェブを導入する方法や、絡合処理された繊維ウェブに水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波により絡合処理された繊維ウェブに付与した水を加熱する方法や、それらを組み合わせた方法などが挙げられる。また、さらに、絡合処理された繊維ウェブを緻密化するとともに、形態を固定化したり、表面を平滑化したりすることを目的として、必要に応じて、熱プレス処理を行ってもよい。
このようにして海島型複合繊維の不織布が得られる。海島型複合繊維の不織布は、上述した工程により、見かけ密度0.15〜0.35g/cm3、好ましくは0.18〜0.25g/cm3になるように調整される。海島型複合繊維の不織布の見かけ密度が0.35g/cm3を超える場合には高比重な人工皮革になり軽量化された人工皮革が得られにくくなり、0.15g/cm3未満の場合にはクッション性に富む高分子弾性体のネットワーク構造が得られにくくなる傾向がある。
また、海島型複合繊維の不織布の目付としては、例えば、400〜700g/m2、さらには500〜600g/m2であることが好ましい。海島型複合繊維の不織布の目付が高すぎる場合には含浸するエマルジョンの液量が多くなりすぎ、ゲル化や乾燥工程に長時間を要する傾向があり、低すぎる場合には不織布が弱くなりすぎて、工程中でのシワや破れが発生しやすくなる傾向がある。
〈工程(b)〉
本工程は、工程(a)で得られた海島型複合繊維の不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させる工程である。
海島型複合繊維の不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させる方法としては、海島型複合繊維の不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸し、ロール・ニップ処理を行うような方法が挙げられる。
高分子弾性体の水系エマルジョンとしては、従来から人工皮革基材を製造する際に使用されているものが特に限定なく用いられうる。高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタンエラストマー,アクリルエラストマーやアクリロニトリルエラストマー等のアクリル系弾性体,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系弾性体,ポリエステルエラストマー等のポリエステル系弾性体,弾性ポリスチレン系樹脂,弾性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタンエラストマーが、柔軟性と充実感に優れる点からとくに好ましい。
ポリウレタンエラストマーの具体例としては、例えば、ポリエステルジオール,ポリエーテルジオール,ポリエーテルエステルジオール,ポリカーボネートジオール等のポリマーポリオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネート等のポリイソシアネートと、エチレングリコール,エチレンジアミン等の2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物とを、所定のモル比で1段階あるいは多段階の溶融重合法、塊状重合法、溶液重合法などにより重合反応させて得られるような各種ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
また、アクリルエラストマーの具体例としては、例えば、その単独重合体のガラス転移温度が−90〜−5℃の範囲である、アクリル酸メチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸n−ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどから選ばれた少なくとも1種類の軟質成分と、その単独重合体のガラス転移温度が50〜250℃の範囲である、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸イソプロピル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸シクロヘキシル,(メタ)アクリル酸などから選ばれた少なくとも1種類の硬質成分と、架橋構造を形成し得る、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の架橋性モノマーを重合反応させて得られる各種のアクリルエラストマーが挙げられる。
水系エマルジョン中の高分子弾性体の濃度は特に限定されないが、エマルジョンの安定性と感熱ゲル化性とのバランスに優れている点から、5〜60質量%、さらには、7〜40質量%、とくには10〜25質量%であることが好ましい。高分子弾性体の濃度が低すぎる場合には、エマルジョンが安定になりすぎてゲル化を起こしにくくなる傾向がある。一方、高分子弾性体の濃度が高すぎる場合には、エマルジョンが不安定になりすぎて、意図せずに、ゲル化したり、高分子弾性体が凝集したりしやすくなる傾向がある。
乳化に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤等が挙げられる。また、反応性を有する、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。また、界面活性剤の曇点を適宜選ぶことにより、感熱ゲル化性を制御することもできる。
高分子弾性体の水系エマルジョンは、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱ゲル化剤、凝固調節剤、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシルメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物等を含有してもよい。特に、本発明においては、ゲル化性を調整するために、所定の感熱温度において、増粘やゲル化を促進する成分である、感熱ゲル化剤を含むことが好ましい。
感熱ゲル化剤の具体例としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、アルキルフェノールホルマリン縮合物のアルキレンオキシド付加物、ポリエーテルホルマール、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレンオキシド変性ポリシロキサン、水溶性ポリアミド、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、タンパク、炭酸塩、重炭酸塩、ポリリン酸塩、等が挙げられる。水系エマルジョンの感熱ゲル化剤の含有割合としては、感熱ゲル化剤の種類にもよるが、例えば、高分子弾性体成分(固形分)100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。
感熱ゲル化性としては、後述する工程(c)における、調湿調温された雰囲気中に水系エマルジョン樹脂を1分間放置した後に、測定した粘度がその放置前の粘度に比べて50倍以上上昇するようなものであることが好ましい。このような水系エマルジョンを用いた場合には、工程(c)の調湿調温処理を施したときに速やかに感熱ゲル化するために、高分子弾性体のマイグレーションを抑制することができる。
海島型複合繊維の不織布中に含浸された水系エマルジョンは、必要に応じて、ロール・ニップ処理等により搾液されて、不織布に対する水系エマルジョンの含液割合(ピックアップ率)が調整される。ロール・ニップ処理は、例えば、プレスロールとバックアップロールからなるニップロールの所定の間隔に調整された間隙に、水系エマルジョンを含浸させた海島型複合繊維の不織布を通過させることにより行うことができる。ロール・ニップ処理により過剰に含浸された水系エマルジョンが搾液される。ロール・ニップ処理は、例えば図1に示したように、水系エマルジョンを含浸させた海島型複合繊維の不織布1をプレスロール2とバックアップロール3からなるニップロールの間隙を通過させることにより行う。プレスロール2とバックアップロール3のロール間隙はエアシリンダ4により調節して不織布1を厚さ方向に変形率好ましくは15〜45%、さらに好ましくは20〜40%で変形させる。このような条件でロール・ニップ処理を施すことにより、含浸する水系エマルジョンの液量を制御することができる。なお、変形率は
[1−(ロール間隙/処理前の不織布構造体の厚さ)]×100
で算出される。間隙を通過する際の不織布の搬送速度は4〜10m/分であることが好ましい。ニップロールの材質は間隙の制御が容易であり、撓むことがなければ特に限定されないが、プレスロール/バックアップロールがゴムロール/金属ロールまたは金属ロール/金属ロールであることが好ましい。このロール・ニップ処理により、含浸・凝固した高分子弾性体が不織布構造体の厚み方向に均一に存在する構造が得られる。
海島型複合繊維の不織布に含浸させる水系エマルジョンの充填率は、海島型複合繊維の不織布中の繊維間の空隙の全容積に対して50〜75%である。水系エマルジョンの充填率が、海島型複合繊維の不織布中の繊維間の空隙の全容積に対して50%未満の場合には、水系エマルジョンを不織布全体に充分に行き渡らせることができなくなり均質性が低下する。また、75%を超える場合には水系エマルジョンを不織布内部に保液することが困難であり、液垂れすることによって製造工程を汚染させたり、高分子弾性体の偏在を引き起こしたりする。
なお、海島型複合繊維の不織布に含浸させた水系エマルジョンの充填率 F(%)は、不織布の見かけ密度 A(g/cm3)、ピックアップ率 B(%)、水系エマルジョンの比重 C(g/cm3)、不織布の空隙率 D(%)を用いて、
式(1):充填率 F(%)=A×B×C/D×100
により算出される。
また、不織布の空隙率 D(%)は、不織布の見かけ密度 A及び海島型複合繊維の真比重 Eを用いて、
式(2):空隙率 D(%)=100−(A/E×100)
により算出される。
また、形成される中空繊維の不織布と高分子弾性体の合計量に対する、高分子弾性体の割合は、20〜40質量%、さらには25〜35質量%であることが好ましい。高分子弾性体の含有割合が低すぎる場合には、緻密なネットワーク構造が形成されにくくなる。一方、高分子弾性体の含有割合が高すぎる場合にはゴム感が強く柔軟性に乏しい人工皮革基材が得られる傾向がある。
〈工程(c)〉
本工程は、工程(b)で得られた、水系エマルジョンを含浸させた海島型複合繊維の不織布を調湿調温された雰囲気で加熱することにより水系エマルジョンを感熱ゲル化させる工程である。
調湿調温された雰囲気による処理は、水系エマルジョンを含浸させた海島型複合繊維の不織布を、公知の調湿調温手段を備えた調温調湿装置内に所定の時間収容することにより、水系エマルジョンを感熱ゲル化させる処理である。この場合において、調湿調温された雰囲気を、湿球温度68℃以下であり、且つ相対湿度10〜90RH%に制御された雰囲気を採用する。
このように調湿調温された雰囲気中で、水系エマルジョンを含浸させた海島型複合繊維の不織布を処理した場合、表面からの水分の急速な蒸発が抑制されてマイグレーションが抑制される。その結果、高分子弾性体は、厚み方向に偏在することなく、均質に存在するように凝固する。
調湿調温された雰囲気の湿球温度は68℃以下であり、好ましくは65℃以下である。68℃よりも高い場合には、不織布の表面からの水分の急速な蒸発によって水系エマルジョンのマイグレーションが起こり、高分子弾性体が偏在化することになる。一方、湿球温度としては、55℃以上、さらには60℃以上、とくには62℃以上であることが水系エマルジョンの安定性を制御しやすい点から好ましい。すなわち、低い湿球温度で水系エマルジョンをゲル化させようとした場合には、安定性が低い水系エマルジョンを用いる必要がある。このような安定性の低い水系エマルジョンは、通常の環境下でもゲル化が進行する恐れがあるために、保存管理上、好ましくない。従って、湿球温度55℃以上でゲル化するような水系エマルジョンを選択することが好ましい。
また、調湿調温された雰囲気の乾球温度は125℃以下、さらには110℃以下、とくには95℃以下であることが、水系エマルジョン中の水分の蒸発が遅くなるためにマイグレーションを生じにくくなる点から好ましい。
また、調湿調温された雰囲気の相対湿度は10〜90RH%であり、20〜80RH%、とくには20〜50RH%であることが好ましい。調湿調温された雰囲気の相対湿度が10RH%未満の場合には、水系エマルジョン中の水分の蒸発が速くなるためにマイグレーションを生じやすくなる。また、90RH%を超える場合には、調湿調温された雰囲気周辺に水滴が発生し、この水滴が不織布表面に落下することによって、不織布表面を汚染するか、水系エマルジョンの均一なゲル化を阻害することになる。
本工程においては、上述したような調湿調温された雰囲気で所定の時間の処理を行う。処理時間としては、海島型複合繊維の不織布の内部の温度が湿球温度とほぼ同じ温度に達する程度の時間で処理することが好ましく、具体的には、例えば、30〜300秒間、さらには60〜240秒間処理することが好ましい。
このような温度及び湿度が制御された調湿調温された雰囲気で加熱することにより、海島型複合繊維の不織布に含浸された水系エマルジョンが感熱ゲル化する。
〈工程(d)〉
本工程は、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む海島型複合繊維の不織布を加熱乾燥することにより高分子弾性体を凝固させる工程である。すなわち、工程(c)における感熱ゲル化処理の後、加熱処理することにより、水系エマルジョン中の分散媒である水を乾燥除去しながら、高分子弾性体の凝固や架橋を進行させる工程である。
加熱処理としては、熱風乾燥機等の乾燥装置中で加熱乾燥する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で加熱乾燥する方法等が挙げられる。これらの中でも特に、次のように制御した加熱乾燥が特に好ましい。
加熱乾燥における加熱条件としては、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む不織布の厚み方向の中心部の温度が、初期温度〜100℃の温度域で0.8℃/分以下、さらには0.7℃/分以下の速さで昇温するように加熱することが好ましい。また、例えば初期温度が20℃程度の場合、100℃まで到達する時間が100秒以上、さらには、110秒以上程度であることが好ましい。生産性を向上させるためには早く水を蒸発させるような条件で加熱することが好ましいが、昇温速度を低くしてゆっくりと蒸発を進行させることにより、不織布内部の温度を均一に上昇させることができ、水系エマルジョンのマイグレーションを抑制し、不織布内部に高分子弾性体を均一な状態で固定化させることができるようになるために、より均質な人工皮革基材が得られる。
また、高分子弾性体が架橋性を有する場合には、上述した乾燥処理の後半に架橋を促進させるためのキュア工程を設けてもよい。キュア工程の条件は特に限定されないが、例えば、架橋性のポリウレタンを用いた場合には、130〜160℃程度で3〜10分間処理するような条件が好ましい。
〈工程(e)〉
本工程は、工程(d)で得られた、高分子弾性体を付与された海島型複合繊維の不織布中の島成分を熱水抽出除去する工程である。このように海島型複合繊維から島成分を熱水抽出することにより、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の中空繊維が形成される。そして、島成分の熱水抽出後、乾燥することにより、中空繊維の不織布とその不織布に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する人工皮革基材が得られる。
人工皮革基材中の中空繊維の繊度は0.8〜3dtex、さらには1.2〜2.4dtexであることが好ましい。繊度が0.8dtex未満の場合には充分に軽量化された人工皮革基材が得られにくくなる傾向がある。
また、中空繊維の空隙の平均直径は特に限定されないが、0.1〜6μm、さらには0.3〜4μmであることが好ましい。また、中空繊維の空隙率としては20〜80%、さらには40〜70%であることが好ましい。
このようにして得られる本実施形態の人工皮革基材はポリブチレンテレフタレート系樹脂の中空繊維の不織布と、その不織布の空隙に付与された高分子弾性体とを含む。
このような人工皮革基材の密度としては、見かけ密度が0.15〜0.5g/cm3、とくには0.25〜0.38g/cm3であることが軽量性と機械的特性のバランスに優れる点から好ましい。また、その厚みは特に限定されないが、例えば、0.3〜3mm、さらには0.5〜2.5mm、とくには1.5〜2.5mm程度であることが好ましい。
本実施形態の人工皮革基材は、従来の製造方法では、とくに表層に偏在しやすかった高分子弾性体を均質に分布させ、不織布を形成する中空繊維に付着させてネットワーク状に存在させることができる。このように高分子弾性体を中空繊維の不織布の厚み方向に均質に分布させることにより、柔軟性に優れた軽量な人工皮革基材が得られる。また、このような人工皮革基材は、厚み方向の特性が均質であるとともに、高分子弾性体が表層に偏在していないために、高分子弾性体の偏在化による凹凸が形成されにくくなって平滑な表面樹脂層を形成することができる。
このようにして得られる人工皮革基材としては、繊度0.8dtex以上のポリブチレンテレフタレート系樹脂の中空繊維の絡合体である不織布と該不織布に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する見かけ密度0.15〜0.5g/cm3の人工皮革基材であって、厚み方向に平行な垂直断面の電子顕微鏡写真において、高分子弾性体が観察され、垂直断面を均一な厚みで3分割して形成された層を、それぞれ第一表層、中層、及び第二表層としたとき、中層における高分子弾性体の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて0.8〜1.3倍、さらには0.9〜1.1倍であることが好ましい。このような人工皮革基材は、見かけ密度の低い中空繊維の不織布と、厚み方向に均質に存在する高分子弾性体とを含む、軽量性と柔軟性に富む人工皮革基材である。このような人工皮革基材は、厚み方向において高分子弾性体が偏在していないために、柔軟性に優れる。また、表面も均質になるために、表面樹脂層を形成した場合には、平滑な表面を有する銀付調人工皮革が得られる。
人工皮革基材に所望の外観を付与するための処理を施すことにより人工皮革に仕上げられる。人工皮革としては、例えば、人工皮革基材の表面に銀面調の樹脂層を付与した銀付調人工皮革や、人工皮革基材の表層の繊維を立毛または起毛させた起毛調人工皮革等が挙げられる。
銀付調人工皮革は、人工皮革基材の表面に銀面調の樹脂層を形成することにより仕上げられる。銀面調の樹脂層を形成する高分子弾性体としては、上述した高分子弾性体と同様の、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等が挙げられる。
また、起毛調人工皮革は、人工皮革基材の表層をサンドペーパーなどを用いてバッフィング処理して起毛処理または立毛処理することにより、スエード調、ヌバック調、ベロア調、バックスキン調の外観を有するように仕上げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の製造について説明する。
〈水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の製造〉
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に、酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。そして反応槽圧力が5.9kgf/cm2となるようにエチレンを導入した。そして、開始剤である2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をメタノールに溶解して濃度2.8g/Lの開始剤溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mLを注入し重合を開始した。重合中、エチレンを導入して反応槽圧力を5.9kgf/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を610mL/hrで連続添加した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。
次に、減圧下で未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、エチレン変性ポリ酢酸ビニル(変性PVAc)のメタノール溶液を得た。そして、その溶液にメタノールを加えて調製した変性PVAcの50%メタノール溶液200gに、NaOHの10%メタノール溶液46.5gを添加してケン化を行った(NaOH/酢酸ビニル単位=0.10/1(モル比))。NaOH添加後、約2分間で系がゲル化した。ゲル化物を粉砕し、60℃で1時間放置することによりケン化を更に進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するNaOHを中和した。そして、フェノールフタレイン指示薬を用いて中和したことを確認した後、濾別することにより白色固体を得た。そして、白色固体にメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。このような洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液し、乾燥機中70℃で2日間放置乾燥してエチレン変性ポリビニルアルコール(変性PVA)を得た。得られた変性PVAのケン化度は98.4モル%であり、エチレン単位の含有割合は10モル%であり、平均重合度は330であった。また、融点は206℃であった。
また、得られた変性PVAの5%水溶液から厚み30μmのキャストフィルムを作成した。このキャストフィルムから50×50mmの試験片を作製し、20℃で、湿度45%の雰囲気で24時間状態調整した。そして、調湿したフィルムから、3mm×3mmの正方形のサンプルを切り出した。そして、サンプルを所定の治具に固定し、200mlのビーカーに100mlの90℃の水を入れ、回転数120rpmで3cm長のバーを備えたマグネティックスターラーで攪拌した。そして、水に浸漬してから、サンプル片が完全に消失するまでの溶解時間を測定した。溶解時間は14秒であった。
[実施例1]
ポリブチレンテレフタレートと上記変性PVAとを60:40(質量比)の割合で溶融複合紡糸用口金から吐出することにより、真比重1.286の海島型複合繊維を形成した。なお、溶融複合紡糸用口金は、海成分ポリマー中に等断面積の島成分ポリマーが25個分布するような断面で、口金温度は265℃であった。そして、エジェクター圧力を紡糸速度2500m/minとなるように調整して、繊度2.8dtexの長繊維をネット上に捕集し、ロールプレスすることにより、目付31g/mである長繊維ウェブが得られた。
得られた長繊維ウェブをクロスラッピングすることにより14枚重ねて、総目付が434g/mの絡合された重ね合わせウェブを作製した。そして、重ね合わせウェブに、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、ニードルパンチ処理して絡合させることにより、絡合された繊維ウェブを得た。
次に、絡合された繊維ウェブに水を付与した後、温度110℃(乾球温度110℃、湿球温度73℃)、相対湿度23%の雰囲気中で湿熱収縮処理を行い、さらに、加熱プレス処理及び乾燥することにより、目付540g/m2、見かけ密度0.19g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た。
次に、海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%のポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンの水性エマルジョンを含浸させ、ロール・ニップ処理により付着量を調整した。このとき水性エマルジョンの付着量は、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理することによりピックアップ率220%で含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は、海島型複合繊維の不織布中の空隙の全容積に対して50%であった。なお、この水性エマルジョンは、20℃での粘度が10cpsであり、湿球温度55℃の雰囲気中に1分間放置した後の粘度が500cps以上になるような、感熱ゲル化剤を含有するエマルジョンである。なお、粘度は、芝浦システム(株)製ビスメトロンVG-A1粘度計を使用して測定した。
そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、表1に記載されたようなゲル化条件に制御された調温調湿装置内で1分間処理することにより、水性エマルジョンを感熱ゲル化処理した。そして、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得た。この加熱乾燥処理において、内部温度の初期温度20℃から100℃に達するまでの昇温速度は0.68℃/分であった。なお、海島型複合繊維の不織布の内部温度は、厚み方向における中心付近の温度を熱電対で測定したときの温度である。
次に、ポリウレタンが含浸された海島型複合繊維の不織布を95℃の熱水中に浸漬しながらニップ処理を30分間連続的に行うことによりPVAを溶解除去し、さらに、乾燥することにより、中空繊維の繊度1.5dtex、見かけ密度0.29g/cm、厚さ1.9mmである、中空繊維の不織布と該不織布に含浸一体化されたポリウレタンとを含有する人工皮革基材を得た。なお、中空繊維の不織布とポリウレタンとの合計に対するポリウレタン割合は30質量%であった。
そして、得られた人工皮革基材に銀面調の樹脂層を形成することにより銀付調人工皮革を得た。具体的には、ポリウレタンをジメチルホルムアミドに溶解し、濃度20〜25%、粘度200〜400poiseに調整したポリウレタンエラストマー溶液をコンマコーターを用いて30〜80g/mになるようにコートし、さらにその上に、ジメチルホルムアミドに溶解し18〜23%、粘度80〜200poiseに調整したポリウレタンエラストマー溶液を100〜180g/mになるようにコートした。次に、濃度38〜44%、温度40〜46℃のジメチルホルムアミド水溶液に15分間浸漬してポリウレタンを凝固せしめ、続いて90〜98℃の温水に1時間浸漬後、ニップロールでディップ、ニップを繰り返し、完全にジメチルホルムアミドを洗浄した。次に、120℃で30分間乾燥することにより、銀面調の樹脂層を形成させた。
そして、得られた人工皮革基材及び銀付調人工皮革を下記に示す評価方法により評価した。
[ポリウレタンの分布]
人工皮革基材を厚み方向に切断して垂直断面を形成した。そして、垂直断面を走査型電子顕微鏡(40〜500倍)で観察し、その顕微鏡写真を撮影した。そして、得られた顕微鏡写真を画像処理ソフト(Medhia Cybernetios社(製)のImageproPlus)を用いて二値化して、存在するポリウレタンの輪郭を明瞭にさせた。そして、画像解析ソフトを用いてポリウレタンの総面積を算出した。そして、垂直断面を均一な厚みで3分割し、それらをそれぞれ第一表層、中層、及び第二表層とし、各層の単位面積当たりに存在するポリウレタンの面積を求めた。そして、第一表層及び第二表層の単位面積当たりに存在するポリウレタンの面積の平均(Y)、及び、中層の単位面積当たりに存在するポリウレタンの面積(X)を算出し、(X/Y)を求めた。
[柔軟性]
ISO(EN ISO 17235:2002)に準拠したMSA社製皮革ソフトネス計測装置「ST300」を使用し、直径8cmの円形測定片を、標準状態(温度20℃、湿度65%)にて24時間放置後、35mmのリングを使用して測定した値を、柔軟性(mm)の評価とした。
[銀面層の平滑性評価]
銀付調人工皮革の銀面調の樹脂層表面に、深さ45μmのエンボスパターンを用いて、温度170℃、プレス圧5Kg/cm、プレス時間3秒間にてエンボスパターンを転写した。そして菱化システム社製の光干渉方式非接触表面・層断面形状計測システム「VertScanTM」を用いて、微細な表面の凹凸をカットオフ値 2mm<λ<4mmにおける面の凹凸の振幅「面モロ(μm)」として、大きいうねりをカットオフ値 4mm≦λにおける面の凹凸の振幅「うねり(μm)」として測定した。
結果を下記表1に示す。また、実施例1で得られた銀付調人工皮革の厚み方向の断面のSEM写真を図2に示す。図2のSEM写真から、得られた銀付調人工皮革の人工皮革基材は、見かけ密度の低い中空繊維の不織布と、緻密なネットワーク構造を形成するように厚み方向に均質に存在する高分子弾性体とを含み、疑似的な発泡構造を有することがわかる。
[実施例2]
実施例1において、海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%の水性エマルジョンを含浸させる代わりに、固形分濃度7.8質量%の水性エマルジョンを含浸させ、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理する代わりに、厚み方向変形率15%でロール・ニップ処理することにより、ピックアップ率330%で水性エマルジョンを不織布に含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は74%であった。そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、実施例1と同様にして感熱ゲル化処理し、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得た。そして実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、湿球温度62℃、相対湿度28RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理する代わりに、湿球温度68℃、相対湿度39RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理した以外は実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、湿球温度62℃、相対湿度28RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理する代わりに、湿球温度62℃、相対湿度13RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理した以外は実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、湿球温度62℃、相対湿度28RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理する代わりに、湿球温度68℃、相対湿度87RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理した以外は実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、目付540g/m2、見かけ密度0.19g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た代わりに、目付580g/m2、見かけ密度0.15g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た。そして、得られた海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%の水性エマルジョンを含浸させる代わりに、固形分濃度8.9質量%の水性エマルジョンを含浸させ、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理する代わりに、厚み方向変形率45%でロール・ニップ処理することにより、ピックアップ率290%で水性エマルジョンを不織布に含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は50%であった。そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、実施例1と同様にして感熱ゲル化処理し、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得た。そして実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、目付540g/m2、見かけ密度0.19g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た代わりに、目付540g/m2、見かけ密度0.35g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た。そして、得られた海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%の水性エマルジョンを含浸させる代わりに、固形分濃度24.7質量%の水性エマルジョンを含浸させ、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理する代わりに、厚み方向変形率15%でロール・ニップ処理することにより、ピックアップ率104%で水性エマルジョンを不織布に含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は50%であった。そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、実施例1と同様にして感熱ゲル化処理し、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得た。そして実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%の水性エマルジョンを含浸させる代わりに、固形分濃度7.2質量%の水性エマルジョンを含浸させ、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理する代わりに、厚み方向変形率10%でロール・ニップ処理することにより、ピックアップ率355%で水性エマルジョンを不織布に含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は80%であった。そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、実施例1と同様にして感熱ゲル化処理したがピックアップ率が多く、不織布内部にエマルジョンが保持できず染み出て、エマルジョンが滴ることから、工程通過性に問題があった。さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得たが滴ったエマルジョンが局部的に凝集し、不均質なものになった。
[比較例2]
実施例1において、海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%の水性エマルジョンを含浸させる代わりに、固形分濃度23.4質量%の水性エマルジョンを含浸させ、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理する代わりに、厚み方向変形率55%でロール・ニップ処理することにより、ピックアップ率110%で水性エマルジョンを不織布に含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は25%であった。そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、実施例1と同様にして感熱ゲル化処理し、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得た。そして実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、湿球温度62℃、相対湿度28RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理する代わりに、湿球温度77℃、相対湿度28RH%に制御された調温調湿装置内で感熱ゲル化処理した以外は実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、目付540g/m2、見かけ密度0.19g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た代わりに、目付390g/m2、見かけ密度0.13g/cm3である海島型複合繊維の不織布を得た。そして、得られた海島型複合繊維の不織布に、固形分濃度11.7質量%の水性エマルジョンを含浸させる代わりに、固形分濃度7.5質量%の水性エマルジョンを含浸させ、不織布の厚み方向変形率35%でロール・ニップ処理する代わりに、厚み方向変形率15%でロール・ニップ処理することにより、ピックアップ率345%で水性エマルジョンを不織布に含浸させた。含浸された水系エマルジョンの充填率は50%であった。そして、水性エマルジョンが含浸された海島型複合繊維の不織布を、実施例1と同様にして感熱ゲル化処理し、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された不織布を得た。そして実施例1と同様にして人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜8で得られた人工皮革は、いずれも低密度で軽量であるにもかかわらず、中層における高分子弾性体の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて0.81〜1.19倍のように均質に高分子弾性体が分布していた。そのために、その表面に形成された銀面層も平滑なものであった。一方、湿球温度が77℃の条件で感熱ゲル化処理を行って得た比較例3の人工皮革は、中層における高分子弾性体の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて0.61倍となり、高分子弾性体が不均質に分布していた。そのために、平滑な銀面層が形成されなかった。また、見かけ密度0.13g/cm3の不織布を用いた比較例1の人工皮革も、中層における高分子弾性体の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて0.74倍となり、高分子弾性体が不均質に分布していた。そのために、平滑な銀面層が形成されなかった。また、クッション性に富む高分子弾性体のネットワーク構造が充分形成されなかったために柔軟性にも乏しかった。
本発明の製造方法により得られる人工皮革基材は、軽量且つ柔軟性が求められるようなランドセル等の人工皮革基材として利用できる。
1 不織布
2 プレスロール
3 バックアップロール
4 エアシリンダ

Claims (8)

  1. (a)0.15〜0.35g/cm3の見かけ密度を有する、海成分がポリブチレンテレフタレート系樹脂であり、島成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である繊度2.0dtex以上の海島型複合繊維の不織布を準備する工程と、
    (b)前記海島型複合繊維の不織布に、高分子弾性体を乳化分散させた水系エマルジョンを含浸させる工程と、
    (c)前記海島型複合繊維の不織布に含浸させた前記水系エマルジョンを調湿調温された雰囲気で加熱することにより感熱ゲル化させる工程と、
    (d)前記感熱ゲル化された前記水系エマルジョンを含む前記海島型複合繊維の不織布を加熱乾燥して前記高分子弾性体を凝固させる工程と、
    (e)前記海島型複合繊維の不織布を形成する前記海島型複合繊維から島成分を熱水抽出除去することにより中空繊維の不織布を形成する工程と、を備え、
    前記工程(b)において、前記海島型複合繊維の不織布に含浸された前記水系エマルジョンの充填率が、前記海島型複合繊維の不織布中の空隙の全容積に対して50〜75%であり、
    前記工程(c)において、前記調湿調温された雰囲気は、湿球温度68℃以下であり、且つ相対湿度10〜90RH%に制御された雰囲気であることを特徴とする人工皮革基材の製造方法。
  2. 前記工程(b)と前記工程(c)との間に、さらに、(f)前記海島型複合繊維の不織布の厚み方向変形率15〜45%でロール・ニップ処理することにより、前記水系エマルジョンを搾液する工程を備える請求項1に記載の人工皮革基材の製造方法。
  3. 前記工程(d)において、前記感熱ゲル化された前記水系エマルジョンを含む前記海島型複合繊維の不織布の厚み方向の中心部の温度を初期温度〜100℃の温度域が0.8℃/分以下の速さで昇温させる請求項1または2に記載の人工皮革基材の製造方法。
  4. 前記水系エマルジョンは、前記調湿調温された雰囲気中に1分間放置されたときに、その粘度が該放置前の粘度に比べて50倍以上上昇する1〜4の何れか1項に記載の人工皮革基材の製造方法。
  5. 前記水系エマルジョンは、感熱ゲル化剤を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の人工皮革基材の製造方法。
  6. 前記調湿調温された雰囲気の湿球温度が55℃以上である請求項1〜5の何れか1項に記載の人工皮革基材の製造方法。
  7. 前記調湿調温された雰囲気の乾球温度が125℃以下である請求項1〜6の何れか1項に記載の人工皮革基材の製造方法。
  8. 繊度0.8dtex以上のポリブチレンテレフタレート系樹脂の中空繊維の絡合体である不織布と該不織布に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する見かけ密度0.15〜0.5g/cm3の人工皮革基材であって、
    厚み方向に平行な垂直断面の電子顕微鏡写真において、前記高分子弾性体が観察され、
    前記垂直断面を均一な厚みで3分割して形成された層を、それぞれ第一表層、中層、及び第二表層としたとき、前記中層における高分子弾性体の総面積が、前記第一表層及び前記第二表層の前記総面積の平均に比べて0.8〜1.3倍であることを特徴とする人工皮革基材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111350079A (zh) * 2018-12-21 2020-06-30 日华化学株式会社 皮革用材料的制造方法

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