JP2014029043A - 皮革様シートおよび皮革様シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】天然皮革に似た、柔軟性、表面外観、充実感に優れた皮革様シートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の皮革様シートは、平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される繊維絡合体と、その内部に含有される高分子弾性体からなる皮革様シートであって、前記繊維絡合体が極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方を有し、前記高分子弾性体が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものであって、前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであとともに、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有しているものである。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の皮革様シートは、平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される繊維絡合体と、その内部に含有される高分子弾性体からなる皮革様シートであって、前記繊維絡合体が極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方を有し、前記高分子弾性体が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものであって、前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであとともに、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有しているものである。
【選択図】なし
Description
本発明は、繊維絡合体とその内部に含有される高分子弾性体からなる皮革様シート、及びその製造方法に関し、特に柔軟性、表面外観、力学特性に優れた皮革様シート、及びその製造方法に関する。
人工皮革に代表される皮革様シートは、軽さ、取り扱い易さなどが天然皮革より優れていることから、衣料、一般資材、スポーツ製品などに幅広く利用されている。従来から広く用いられてきた人工皮革は、例えば、次のようにして製造される。
はじめに、溶剤溶解性を異にする2種の重合体からなる海島型複合繊維をステープル化(短繊維化)した後、カード、クロスラッパー、ランダムウェバー等を用いてウェブ化し、さらに、ニードルパンチ等により繊維を互いに絡ませて不織布を得る。次に、得られた不織布にポリウレタンなどの高分子弾性体を含浸させる。そして、海島型複合繊維から一方の重合体を溶解除去することにより、他方の重合体からなる繊維のみを残すことにより極細化させる。このようにして、短繊維の極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とを含む人工皮革が得られる。この方法により得られた人工皮革素材を用いた製品は、極細繊維特有の風合いと外観によって、優れた素材感を有することから種々の製品市場で広く認知されている。
はじめに、溶剤溶解性を異にする2種の重合体からなる海島型複合繊維をステープル化(短繊維化)した後、カード、クロスラッパー、ランダムウェバー等を用いてウェブ化し、さらに、ニードルパンチ等により繊維を互いに絡ませて不織布を得る。次に、得られた不織布にポリウレタンなどの高分子弾性体を含浸させる。そして、海島型複合繊維から一方の重合体を溶解除去することにより、他方の重合体からなる繊維のみを残すことにより極細化させる。このようにして、短繊維の極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とを含む人工皮革が得られる。この方法により得られた人工皮革素材を用いた製品は、極細繊維特有の風合いと外観によって、優れた素材感を有することから種々の製品市場で広く認知されている。
一方、近年では有機溶剤の使用に対して、人体や環境への悪影響の懸念から無溶剤系で
の製造プロセスが要望されている。例えば、極細繊維発生型繊維或いは中空繊維発生型繊維等の多成分系繊維を極細繊維化し、或いは中空化する時の抽出成分として水溶性高分子成分を用いた繊維が検討されている。また、人工皮革製造方法においては三次元絡合体不織布の内部に含浸する樹脂として水性高分子弾性体が検討されている。
の製造プロセスが要望されている。例えば、極細繊維発生型繊維或いは中空繊維発生型繊維等の多成分系繊維を極細繊維化し、或いは中空化する時の抽出成分として水溶性高分子成分を用いた繊維が検討されている。また、人工皮革製造方法においては三次元絡合体不織布の内部に含浸する樹脂として水性高分子弾性体が検討されている。
しかしながら、従来の無溶剤系のプロセスによって製造された人工皮革用基材は、硬い風合いで外観も満足するものが得られていない。特に、多成分系繊維を極細繊維化する、或いは中空化する時の張力や圧縮等の外力によって、絡合不織布が厚み方向に潰され、更には処理工程のテンションで縦方向に伸ばされて、極細繊維同士あるいは極細繊維と高分子弾性体が接着してしまい風合いが硬くなる問題がある。
更に、例えば柔軟な風合いを持たせるために、水性ポリウレタンを用いて、溶剤系ポリウレタンのような多孔構造を持たせようとしても、多成分系繊維を極細繊維化する、或いは中空化する時の張力や圧縮等の外力によって、多孔構造が潰されて無孔化してしまうという問題もある。
更に、例えば柔軟な風合いを持たせるために、水性ポリウレタンを用いて、溶剤系ポリウレタンのような多孔構造を持たせようとしても、多成分系繊維を極細繊維化する、或いは中空化する時の張力や圧縮等の外力によって、多孔構造が潰されて無孔化してしまうという問題もある。
従来、柔軟な風合いや高級感の有る外観を得るために、これまで様々な手法が提案されている。例えば、不織布へ水系エマルジョンを含浸するにあたりエマルジョンと繊維を離型させて、人工皮革の柔軟性を高めるために、ポリウレタン等の水系エマルジョンへPVAを添加する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、従来、基材が含浸される含浸液や、その前処理に撥水性を有する化合物を活用する方法がある。具体的には、含浸前の不織布基材に撥水剤を付与した後に水系ポリウレタンで含浸する方法、撥水性化合物を加えた水系ポリウレタン液に基材を含浸させる方法が知られている。また、水系ポリウレタン骨格へ撥水性基を導入する方法も知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。
さらには、感熱ゲル化性を有する水系ポリウレタン液に無機粒子を含有し摩擦力を低減する方法(例えば、特許文献6)、感熱ゲル化性を有する水系ポリウレタン液に発泡剤を含有させて10〜100μmの多孔構造を得る方法(例えば、特許文献7)、感熱ゲル化性を有する水系ポリウレタン液に可塑剤を含有させる方法(例えば、特許文献8)等もある。
また、従来、基材が含浸される含浸液や、その前処理に撥水性を有する化合物を活用する方法がある。具体的には、含浸前の不織布基材に撥水剤を付与した後に水系ポリウレタンで含浸する方法、撥水性化合物を加えた水系ポリウレタン液に基材を含浸させる方法が知られている。また、水系ポリウレタン骨格へ撥水性基を導入する方法も知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。
さらには、感熱ゲル化性を有する水系ポリウレタン液に無機粒子を含有し摩擦力を低減する方法(例えば、特許文献6)、感熱ゲル化性を有する水系ポリウレタン液に発泡剤を含有させて10〜100μmの多孔構造を得る方法(例えば、特許文献7)、感熱ゲル化性を有する水系ポリウレタン液に可塑剤を含有させる方法(例えば、特許文献8)等もある。
しかし、特許文献1に開示された方法は、水系ポリウレタンとPVA等からなる混合物を、極細繊維に含浸する方法であり、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着を防ぐためには多量のPVAを混合する必要があり、含浸液の粘度が高くなって、含浸工程の作業性が低下するという問題がある。また、特許文献1の方法では、高分子弾性体に多孔構造を形成することは難しい。
また、特許文献2〜5に開示された方法は、撥水剤の特性により、高分子弾性体を基材に均一に付与するのが難しくなり、水系ポリウレタンの造膜性が低下し、それにより、絡合不織布は、厚み方向に潰され、更には処理工程のテンションで縦方向に伸ばされることになる。さらには、高分子弾性体に多孔構造は形成されず、したがって、皮革様シートの物性や外観は充分なものとならない。
また、特許文献6に開示された方法は、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着は防ぐことは出来ず、さらには多孔構造も得られないため、風合いや外観の改良効果は充分ではない。
同様に、特許文献7に開示された方法は、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着は防ぐことが出来ず、風合いや外観の改良効果は充分ではない。更に発泡剤を用いて発泡させることに起因して、発泡径が10μm以上と大きくなり、ポリウレタンの造膜性の悪化が避けきれず、絡合不織布が厚み方向に潰されたり、処理工程のテンションで縦方向に伸ばされたりして、皮革様シートの物性や外観が劣ったものとなりやすい。更には、発泡剤による発泡は独立孔なため、風合いの柔軟効果が充分でない。
また、特許文献8に開示された方法は、多成分系繊維を極細繊維化或いは中空化する時の張力や圧縮等の外力によって、水系ポリウレタンが厚み方向に一層潰されやすくなって、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着は防ぐことが出来ない。そして、多孔構造も得難く、風合いや外観の改良効果は充分ではないという問題がある。
また、特許文献2〜5に開示された方法は、撥水剤の特性により、高分子弾性体を基材に均一に付与するのが難しくなり、水系ポリウレタンの造膜性が低下し、それにより、絡合不織布は、厚み方向に潰され、更には処理工程のテンションで縦方向に伸ばされることになる。さらには、高分子弾性体に多孔構造は形成されず、したがって、皮革様シートの物性や外観は充分なものとならない。
また、特許文献6に開示された方法は、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着は防ぐことは出来ず、さらには多孔構造も得られないため、風合いや外観の改良効果は充分ではない。
同様に、特許文献7に開示された方法は、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着は防ぐことが出来ず、風合いや外観の改良効果は充分ではない。更に発泡剤を用いて発泡させることに起因して、発泡径が10μm以上と大きくなり、ポリウレタンの造膜性の悪化が避けきれず、絡合不織布が厚み方向に潰されたり、処理工程のテンションで縦方向に伸ばされたりして、皮革様シートの物性や外観が劣ったものとなりやすい。更には、発泡剤による発泡は独立孔なため、風合いの柔軟効果が充分でない。
また、特許文献8に開示された方法は、多成分系繊維を極細繊維化或いは中空化する時の張力や圧縮等の外力によって、水系ポリウレタンが厚み方向に一層潰されやすくなって、繊維同士や繊維と水系ポリウレタンの接着は防ぐことが出来ない。そして、多孔構造も得難く、風合いや外観の改良効果は充分ではないという問題がある。
すなわち、人工皮革の各分野で一般的に用いられている0.3〜3.0mmの厚さ範囲の中で、より軽く、機械的物性に優れた、柔軟な製品が求められているが、上記の無溶剤系の製造方法では、これらを満足した人工皮革を製造することはできない。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、工程中に有機溶剤を必要としない方法によって製造可能であり、かつ柔軟性、表面外観、機械的諸物性に優れた皮革様シートを得ることを目的とする。
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、水系の弾性材料であっても、特定の物性を有するアニオン性自己乳化型水性ポリウレタンを用いることによって、柔軟性、表面外観、機械的諸物性に優れた皮革様シートを得ることができることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
(1)平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される繊維絡合体と、その内部に含有される高分子弾性体からなる皮革様シートであって、前記繊維絡合体が極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方を有し、前記高分子弾性体が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものであって、前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シート。
(2)前記した皮革様シートの断面において、高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体が10:90〜80:20である(1)に記載の皮革様シート。
(3)前記高分子弾性体内部の多孔構造の孔が連通孔である(1)又は(2)に記載の皮革様シート。
(4)前記高分子弾性体が、前記高分子弾性材料の水性液を前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものであり、前記水性液における自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の平均粒径が0.03〜0.3μmであるとともに、前記固化された高分子弾性体は、前記自己乳化型水性ポリウレタン樹脂に相当する粒子が残存せずに造膜固化されている(1)〜(3)のいずれかに記載の皮革様シート。
(5)前記高分子弾性材料が、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩により、感熱ゲル化性を有するものである(1)〜(4)のいずれかに記載の皮革様シート。
(6)前記高分子弾性体が、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物がさらに混合された前記高分子弾性材料を、前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものである(1)〜(5)のいずれかに記載の皮革様シート。
(7)前記高分子弾性体が、増粘多糖類が混合された前記高分子弾性材料を前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものである(1)〜(6)のいずれかに記載の皮革様シート。
(8)皮革様シートの表面に、1〜300μmの厚みを有する銀面調樹脂層をさらに有する(1)〜(7)のいずれかに記載の皮革様シート。
(9)皮革様シートの表面に存在する前記繊維が立毛処理されている(1)〜(7)のいずれかに記載の皮革様シート。
(10)前記極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方が、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維のうち水溶性熱可塑性樹脂が溶解されて形成されたものである(1)〜(9)のいずれかに記載の皮革様シート。
(11)水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維を含む絡合シートに対して、前記水溶性熱可塑性樹脂を溶解する処理を行い、平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される極細繊維束及び中空繊維のうち少なくとも一方を有する繊維絡合体を形成する工程と、前記繊維絡合体又は絡合シートに高分子弾性材料の水性液を含浸及び乾燥固化させる工程とを含み、前記高分子弾性材料が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、かつ90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、前記高分子弾性材料を固化させて得たものであり、かつ前記繊維絡合体に含有される高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シートの製造方法。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
(1)平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される繊維絡合体と、その内部に含有される高分子弾性体からなる皮革様シートであって、前記繊維絡合体が極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方を有し、前記高分子弾性体が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものであって、前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シート。
(2)前記した皮革様シートの断面において、高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体が10:90〜80:20である(1)に記載の皮革様シート。
(3)前記高分子弾性体内部の多孔構造の孔が連通孔である(1)又は(2)に記載の皮革様シート。
(4)前記高分子弾性体が、前記高分子弾性材料の水性液を前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものであり、前記水性液における自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の平均粒径が0.03〜0.3μmであるとともに、前記固化された高分子弾性体は、前記自己乳化型水性ポリウレタン樹脂に相当する粒子が残存せずに造膜固化されている(1)〜(3)のいずれかに記載の皮革様シート。
(5)前記高分子弾性材料が、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩により、感熱ゲル化性を有するものである(1)〜(4)のいずれかに記載の皮革様シート。
(6)前記高分子弾性体が、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物がさらに混合された前記高分子弾性材料を、前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものである(1)〜(5)のいずれかに記載の皮革様シート。
(7)前記高分子弾性体が、増粘多糖類が混合された前記高分子弾性材料を前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものである(1)〜(6)のいずれかに記載の皮革様シート。
(8)皮革様シートの表面に、1〜300μmの厚みを有する銀面調樹脂層をさらに有する(1)〜(7)のいずれかに記載の皮革様シート。
(9)皮革様シートの表面に存在する前記繊維が立毛処理されている(1)〜(7)のいずれかに記載の皮革様シート。
(10)前記極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方が、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維のうち水溶性熱可塑性樹脂が溶解されて形成されたものである(1)〜(9)のいずれかに記載の皮革様シート。
(11)水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維を含む絡合シートに対して、前記水溶性熱可塑性樹脂を溶解する処理を行い、平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される極細繊維束及び中空繊維のうち少なくとも一方を有する繊維絡合体を形成する工程と、前記繊維絡合体又は絡合シートに高分子弾性材料の水性液を含浸及び乾燥固化させる工程とを含み、前記高分子弾性材料が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、かつ90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、前記高分子弾性材料を固化させて得たものであり、かつ前記繊維絡合体に含有される高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シートの製造方法。
工程中に有機溶剤を必要としない方法によって製造可能であり、かつ、柔軟性、表面外観、機械的諸物性に優れた皮革様シートを得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る皮革様シートは、繊維絡合体とその内部に含有される高分子弾性体とからなる皮革様シートであって、該繊維絡合体が極細繊維束又は中空繊維を有するものである。
本発明に係る皮革様シートは、繊維絡合体とその内部に含有される高分子弾性体とからなる皮革様シートであって、該繊維絡合体が極細繊維束又は中空繊維を有するものである。
繊維絡合体は、平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成され、その平均単繊維繊度は、0.01〜5dtexであることが好ましく、特に0.02〜0.3dtexの範囲であることが好ましい。繊維絡合体において、平均繊度が0.001dtex未満である場合には、繊維同士が解けないで集束してしまい、その結果、得られる繊維束絡合体の柔軟性や表面外観が低下する傾向がある。また、10dtexより大きい場合、柔軟性や表面外観が劣る傾向が有る。
また、繊維絡合体は、極細繊維束或いは中空繊維を有し、それにより、得られる皮革様シートの柔軟性、表面外観、軽量性などを優れたものとすることができる。また、極細繊維束或いは中空繊維は、長繊維からなるものであることが好ましい。なお、長繊維とは、短繊維を製造するときのような切断工程を経ずに製造された繊維である。
また、繊維絡合体は、極細繊維束或いは中空繊維を有し、それにより、得られる皮革様シートの柔軟性、表面外観、軽量性などを優れたものとすることができる。また、極細繊維束或いは中空繊維は、長繊維からなるものであることが好ましい。なお、長繊維とは、短繊維を製造するときのような切断工程を経ずに製造された繊維である。
繊維絡合体の繊維を構成する樹脂としては、繊維形成可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート,ジメチルイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート,スルホイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート,ポリトリメチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体などの脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6−12などのポリアミド;ポリエチレン,ポリプロピレン(PP),ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール;ポリウレタン系エラストマー,ポリアミド系エラストマー,ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
上記樹脂の中では、PET、イソフタル酸変性PETなどの変性PET、ポリ乳酸、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド6−12、ポリプロピレンなどが好ましい。
上記樹脂の中では、PET、イソフタル酸変性PETなどの変性PET、ポリ乳酸、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド6−12、ポリプロピレンなどが好ましい。
なお、繊維絡合体は、連続して紡糸された実質的に単一の繊度を有する繊維絡合体からなり、繊度のバラツキが少ないことが好ましい。このような場合には、繊維絡合体の強力が高く、また、染色した時の表面外観も均質な点から好ましい。なお、連続して製造された実質的に単一の繊度を有する繊維絡合体は、別々に紡糸された異なる種類の不織布を貼り合わせたようなものではないことを意味する。繊維の樹脂組成、極細繊維繊度、繊維束繊度、繊維断面構造等が異なるような異種の繊維成分からなるウェブを絡合させて得られるような繊維絡合体から形成された場合には、剥離強力が不充分になる傾向がある。
極細繊維束又は中空繊維は、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維のうち水溶性熱可塑性樹脂が溶解されて形成されたものである。
具体的には、極細繊維束としては、例えば海成分に水溶性熱可塑性樹脂を用いる海島型複合繊維から得られるものが挙げられる。中空繊維としては、島成分に水溶性熱可塑性樹脂を用いる中空型複合繊維から得られるものが挙げられる。これら海島型複合繊維或いは中空型複合繊維は、水溶性熱可塑性樹脂が熱水中で溶解されて、極細繊維束或いは中空繊維とされる。
海島型複合繊維或いは中空型複合繊維は、水溶性熱可塑性樹脂と、水溶性熱可塑性樹脂より相溶性が低い非水溶性熱可塑性樹脂とをそれぞれ溶融紡糸した後、複合化させることにより得られる。海島型複合繊維或いは中空型複合繊維の繊度は、0.5〜15dtexであることが好ましく、工業性の観点から、0.5〜3dtexの範囲であることがより好ましい。
具体的には、極細繊維束としては、例えば海成分に水溶性熱可塑性樹脂を用いる海島型複合繊維から得られるものが挙げられる。中空繊維としては、島成分に水溶性熱可塑性樹脂を用いる中空型複合繊維から得られるものが挙げられる。これら海島型複合繊維或いは中空型複合繊維は、水溶性熱可塑性樹脂が熱水中で溶解されて、極細繊維束或いは中空繊維とされる。
海島型複合繊維或いは中空型複合繊維は、水溶性熱可塑性樹脂と、水溶性熱可塑性樹脂より相溶性が低い非水溶性熱可塑性樹脂とをそれぞれ溶融紡糸した後、複合化させることにより得られる。海島型複合繊維或いは中空型複合繊維の繊度は、0.5〜15dtexであることが好ましく、工業性の観点から、0.5〜3dtexの範囲であることがより好ましい。
上記水溶性熱可塑性樹脂としては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等により、溶解除去できる熱可塑性樹脂であって、溶融紡糸が可能な樹脂が好ましく用いられる。このような、水溶性熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂);ポリエチレングリコール及び/又はスルホン酸アルカリ金属塩を共重合成分として含有する変性ポリエステル;ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらの中では、特に、PVA系樹脂が以下の理由により、好ましく用いられる。
複合繊維の水溶性熱可塑性樹脂成分としてPVA系樹脂を用いた場合、形成される極細長繊維が大きく捲縮する。このことにより繊維密度が高い繊維束絡合体が得られる。
非水溶性熱可塑性樹脂や水溶性熱可塑性樹脂は各種添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子等が挙げられる。
複合繊維の水溶性熱可塑性樹脂成分としてPVA系樹脂を用いた場合、形成される極細長繊維が大きく捲縮する。このことにより繊維密度が高い繊維束絡合体が得られる。
非水溶性熱可塑性樹脂や水溶性熱可塑性樹脂は各種添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子等が挙げられる。
<高分子弾性体>
本発明において繊維絡合体の内部に含有される高分子弾性体は、アニオン性基で自己乳化された自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものである。前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、高分子弾性体は、0.2〜10μmの孔を10μm四方に1個以上有するものである。
本発明において繊維絡合体の内部に含有される高分子弾性体は、アニオン性基で自己乳化された自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものである。前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、高分子弾性体は、0.2〜10μmの孔を10μm四方に1個以上有するものである。
上記面積変化率が10%を超える場合には、高分子弾性体を含浸させた後の処理工程において、高分子弾性体が厚み方向に潰れたり、縦方向ないし横方向に変形したりする。そのため、高分子弾性体は、厚み方向の潰れや縦方向ないし横方向の変形が発生し、多孔構造が潰れやすくなり、皮革様シートが柔軟な風合いとなり難い。
より具体的に説明すると、例えば、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等が、高分子弾性材料の含浸処理の後に行われる場合、その処理過程において高分子弾性体が水、熱水、アルカリ溶液等の処理液で膨潤するとともに、大きく変形することによって、高分子弾性体の多孔構造が潰れやすくなる。また、高分子弾性体は、含浸後の乾燥工程において、膨潤し、歪んだり変形したりすることがある。高分子弾性体は、このような歪みや変形により、多孔構造が潰れるとともに、高分子弾性体や繊維絡合体は厚み方向に潰れ、また、処理工程テンションで縦方向に大きく伸ばされて、皮革様シートが柔軟な風合いとなり難い。
上記面積変化率は、好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは0.1%〜8%である。
高分子弾性材料の90℃熱水処理における面積変化率は、高分子弾性体材料の水性液を50℃で乾燥して得られたフィルムを120℃で5分間熱処理し、90℃の熱水で60分間処理した直後の面積変化率を測定して求められる。
より具体的に説明すると、例えば、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等が、高分子弾性材料の含浸処理の後に行われる場合、その処理過程において高分子弾性体が水、熱水、アルカリ溶液等の処理液で膨潤するとともに、大きく変形することによって、高分子弾性体の多孔構造が潰れやすくなる。また、高分子弾性体は、含浸後の乾燥工程において、膨潤し、歪んだり変形したりすることがある。高分子弾性体は、このような歪みや変形により、多孔構造が潰れるとともに、高分子弾性体や繊維絡合体は厚み方向に潰れ、また、処理工程テンションで縦方向に大きく伸ばされて、皮革様シートが柔軟な風合いとなり難い。
上記面積変化率は、好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは0.1%〜8%である。
高分子弾性材料の90℃熱水処理における面積変化率は、高分子弾性体材料の水性液を50℃で乾燥して得られたフィルムを120℃で5分間熱処理し、90℃の熱水で60分間処理した直後の面積変化率を測定して求められる。
上記したように、本発明の皮革様シートに含有される高分子弾性体は、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaとなるものである。
貯蔵弾性率が10MPa未満の場合には、高分子弾性材料含浸後の工程、例えば高分子弾性材料含浸後の乾燥工程や、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理工程における高分子弾性体の膨潤率が大きくなり、更には高分子弾性体の接着性が高くなる。また、高分子弾性体は、変形したり、歪んだりしやすく多孔構造も潰れ易くなる。加えて、高分子弾性体や繊維絡合体が、熱水処理等の処理工程や乾燥工程において厚み方向に潰れ、また、処理工程テンションで縦方向に大きく伸びて、柔軟な風合いとなり難い。
逆に、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が500MPaを超える場合には、自己乳化型水性ポリウレタンの粒子或いは二次粒子の状態を保ったまま固化され、高分子弾性体が造膜し難くなる。これにより、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程や乾燥工程で高分子弾性体が脱落したり、得られる皮革様シートの柔軟性が低下したりする場合がある。また、本発明では、20℃、100℃共に、10〜500MPaの貯蔵弾性率とすることが、発明の効果を得るのに必要である。また、20℃及び100℃における貯蔵弾性率は、好ましくは、20〜300MPaである。
さらに、高分子弾性体の損失弾性率のピーク温度から分かるガラス転移温度は、0℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以下となると、高分子弾性体が造膜しやすくなる。
高分子弾性材料の20℃および100℃における貯蔵弾性率は、高分子弾性材料の水性液を乾燥させてフィルムサンプルを作成し、動的粘弾性測定装置を用いて測定し、貯蔵弾性率を算出したものである。なお、2種の高分子弾性材料を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作製し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性材料の弾性率の値とする。
貯蔵弾性率が10MPa未満の場合には、高分子弾性材料含浸後の工程、例えば高分子弾性材料含浸後の乾燥工程や、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理工程における高分子弾性体の膨潤率が大きくなり、更には高分子弾性体の接着性が高くなる。また、高分子弾性体は、変形したり、歪んだりしやすく多孔構造も潰れ易くなる。加えて、高分子弾性体や繊維絡合体が、熱水処理等の処理工程や乾燥工程において厚み方向に潰れ、また、処理工程テンションで縦方向に大きく伸びて、柔軟な風合いとなり難い。
逆に、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が500MPaを超える場合には、自己乳化型水性ポリウレタンの粒子或いは二次粒子の状態を保ったまま固化され、高分子弾性体が造膜し難くなる。これにより、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程や乾燥工程で高分子弾性体が脱落したり、得られる皮革様シートの柔軟性が低下したりする場合がある。また、本発明では、20℃、100℃共に、10〜500MPaの貯蔵弾性率とすることが、発明の効果を得るのに必要である。また、20℃及び100℃における貯蔵弾性率は、好ましくは、20〜300MPaである。
さらに、高分子弾性体の損失弾性率のピーク温度から分かるガラス転移温度は、0℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以下となると、高分子弾性体が造膜しやすくなる。
高分子弾性材料の20℃および100℃における貯蔵弾性率は、高分子弾性材料の水性液を乾燥させてフィルムサンプルを作成し、動的粘弾性測定装置を用いて測定し、貯蔵弾性率を算出したものである。なお、2種の高分子弾性材料を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作製し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性材料の弾性率の値とする。
本発明の皮革様シートに含有される高分子弾性体は、0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している。高分子弾性体中の孔が0.2μm未満の場合には、皮革様シートを柔軟にする効果は低い。また、高分子弾性体が10μmを越える孔を有する場合には、水性ポリウレタンの造膜性が低下して、高分子弾性体は、熱水処理等の処理工程において厚み方向に潰れ、また処理工程テンションで縦方向に大きく伸びることになる。さらには、多孔構造が潰れ易くなって、皮革様シートが柔軟な風合いとなり難くなる。したがって、高分子弾性体は、孔径が10μmより大きい孔を有しないほうがよく、有していたとしても、0.2〜10μmの孔に対して、5%以下の数である。
孔数としては、平均孔径が0.5〜2μmの場合には10μm四方あたり10個以上有していることが好ましく、平均孔径が2〜5μmの場合には10μm四方あたり2個以上有していることが好ましく、5〜10μmの平均孔径であれば10μm四方あたり1個以上有していることが好ましい。
また、0.2〜10μmの孔の数は、特に限定されないが、10μm四方あたり25個以下有していることが好ましい。また、10μm四方にある孔の平均孔径(相加平均)は、0.2〜10μmであることが好ましいが、2〜5μmであることがより好ましい。
平均孔径及びその孔の個数は、得られた皮革様シートを厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて切断面に存在する高分子弾性体において、10μm四方にある全ての孔の平均孔径を算出し、また、0.2〜10μmの孔の個数を数えることで求められる。
孔数としては、平均孔径が0.5〜2μmの場合には10μm四方あたり10個以上有していることが好ましく、平均孔径が2〜5μmの場合には10μm四方あたり2個以上有していることが好ましく、5〜10μmの平均孔径であれば10μm四方あたり1個以上有していることが好ましい。
また、0.2〜10μmの孔の数は、特に限定されないが、10μm四方あたり25個以下有していることが好ましい。また、10μm四方にある孔の平均孔径(相加平均)は、0.2〜10μmであることが好ましいが、2〜5μmであることがより好ましい。
平均孔径及びその孔の個数は、得られた皮革様シートを厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて切断面に存在する高分子弾性体において、10μm四方にある全ての孔の平均孔径を算出し、また、0.2〜10μmの孔の個数を数えることで求められる。
また、本発明は、皮革様シートの断面において、高分子弾性体内部の空隙と高分子弾性体の面積比率(高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体)が10:90〜80:20である皮革様シートが好ましい。このように、高分子弾性体内部の空隙率を10%以上とすると、皮革様シートを柔軟にしやすくなる。また、高分子弾性体内部の空隙率が80%以下となることで、高分子弾性体の造膜性が良好となりやすく、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で、高分子弾性体が脱落したり、その厚み方向の潰れや処理工程テンションでの縦方向伸びが大きくなったりすることが防止される。これにより、皮革様シートは充実感があり、表面外観も向上しやすい。
高分子弾性体の空隙率は、得られた皮革様シートを厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて切断面に存在する高分子弾性体について、孔と高分子弾性体の面積を観察することで求められる。
高分子弾性体の空隙率は、得られた皮革様シートを厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて切断面に存在する高分子弾性体について、孔と高分子弾性体の面積を観察することで求められる。
また、本発明の皮革様シートに含有される高分子弾性体内部の多孔構造の孔が、連通孔であることが好ましい。複数の孔を連通孔とすることで、皮革様シートは柔軟性が高く、充実感があり、かつ表面外観も良好にしやすい。
一方で、孔が独立孔である場合は、皮革様シートを柔軟にする効果が低く、また、高分子弾性体内部の空隙率を上げようとするとポリウレタンの造膜性への悪影響が大きくなる。そのため、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で、高分子弾性体は、潰れたり工程テンションで伸びたりして、皮革様シートは、その充実感が良好になりにくく、表面外観も向上しにくい。
高分子弾性体内部の孔の連続性は、得られた皮革様シートを厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察できる。
なお、本発明では、連通孔とは、観察した画像において、孔が高分子弾性体に埋包されて独立に存在する独立孔ではなく、孔同士が連通することをいう。また、複数の孔のうち、40%以上が連通孔であることが好ましい。
一方で、孔が独立孔である場合は、皮革様シートを柔軟にする効果が低く、また、高分子弾性体内部の空隙率を上げようとするとポリウレタンの造膜性への悪影響が大きくなる。そのため、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で、高分子弾性体は、潰れたり工程テンションで伸びたりして、皮革様シートは、その充実感が良好になりにくく、表面外観も向上しにくい。
高分子弾性体内部の孔の連続性は、得られた皮革様シートを厚み方向に切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察できる。
なお、本発明では、連通孔とは、観察した画像において、孔が高分子弾性体に埋包されて独立に存在する独立孔ではなく、孔同士が連通することをいう。また、複数の孔のうち、40%以上が連通孔であることが好ましい。
高分子弾性体は、例えば自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子材料を希釈した希釈液を、繊維絡合体に含浸し、その後乾燥固化させることにより、繊維絡合体に含有させられるものである。希釈液としては、水系ポリウレタン系樹脂を含む高分子弾性材料を分散させた分散水性液を用いることが好ましい。
[自己乳化型水性ポリウレタン樹脂]
本発明において使用されるアニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、他のポリウレタン樹脂に比べて、相対的に硬く、熱水膨潤率が低いものである。したがって、高分子弾性材料の乾燥工程や、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、高分子弾性体の多孔構造の潰れが抑えられ、柔軟な風合いの皮革様シートを得ることができる。
本発明において使用されるアニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、他のポリウレタン樹脂に比べて、相対的に硬く、熱水膨潤率が低いものである。したがって、高分子弾性材料の乾燥工程や、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、高分子弾性体の多孔構造の潰れが抑えられ、柔軟な風合いの皮革様シートを得ることができる。
従来、水系ポリウレタンとしては、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤で乳化された強制乳化ポリウレタンや、ポリオキシエチレン基等のノニオン性基を有する化合物をポリウレタンに共重合し、ノニオン性基により自己乳化する自己乳化型ポリウレタンも知られている。
しかし、強制乳化ポリウレタンは、乳化剤の残存によって、その造膜性を低下したり、水に膨潤したりする。また、ノニオン性基により自己乳化する自己乳化型ポリウレタンも、水に膨潤されやすい。そのため、これらポリウレタンを用いた高分子弾性体は、後工程、例えば、高分子弾性材料の乾燥工程や、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理工程において、脱落しやすくなる。更には、これらポリウレタンを用いた場合、高分子弾性体は、厚み方向に潰れ、または処理工程テンションでの縦方向に大きく伸びて、高分子弾性体の多孔構造が潰され易くなる。そのため、上記した強制乳化ポリウレタンやノニオン性基で自己乳化する水性ポリウレタンは、本発明には適していない。
そして、本発明で使用されるアニオン性基で自己乳化された自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、アルキレンの炭素数が2以下のポリアルキレングリコール基の含有率が好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。本発明のポリウレタンは、乳化剤やノニオン基ではなく、アニオン性基で自己乳化することで、水系ポリウレタンの造膜性を向上させることが出来る。
また、高分子骨格にシロキサン結合を含有するポリウレタンも知られているが、そのポリウレタンは水性ポリウレタン粒子或いはその二次凝集粒子の状態を保ったまま固化しやすく、ポリウレタンの造膜性が低下しやすい。そして、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、高分子弾性体は脱落したり、更には、厚み方向の潰れや処理工程テンションでの縦方向の伸びが大きくなったりして、多孔構造が得られにくい。そのため、本発明の自己乳化型ポリウレタン樹脂は、高分子骨格に含有されるシロキサン結合の割合が3質量%以下、更には1質量%以下が好ましい。
しかし、強制乳化ポリウレタンは、乳化剤の残存によって、その造膜性を低下したり、水に膨潤したりする。また、ノニオン性基により自己乳化する自己乳化型ポリウレタンも、水に膨潤されやすい。そのため、これらポリウレタンを用いた高分子弾性体は、後工程、例えば、高分子弾性材料の乾燥工程や、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理工程において、脱落しやすくなる。更には、これらポリウレタンを用いた場合、高分子弾性体は、厚み方向に潰れ、または処理工程テンションでの縦方向に大きく伸びて、高分子弾性体の多孔構造が潰され易くなる。そのため、上記した強制乳化ポリウレタンやノニオン性基で自己乳化する水性ポリウレタンは、本発明には適していない。
そして、本発明で使用されるアニオン性基で自己乳化された自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、アルキレンの炭素数が2以下のポリアルキレングリコール基の含有率が好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。本発明のポリウレタンは、乳化剤やノニオン基ではなく、アニオン性基で自己乳化することで、水系ポリウレタンの造膜性を向上させることが出来る。
また、高分子骨格にシロキサン結合を含有するポリウレタンも知られているが、そのポリウレタンは水性ポリウレタン粒子或いはその二次凝集粒子の状態を保ったまま固化しやすく、ポリウレタンの造膜性が低下しやすい。そして、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、高分子弾性体は脱落したり、更には、厚み方向の潰れや処理工程テンションでの縦方向の伸びが大きくなったりして、多孔構造が得られにくい。そのため、本発明の自己乳化型ポリウレタン樹脂は、高分子骨格に含有されるシロキサン結合の割合が3質量%以下、更には1質量%以下が好ましい。
自己乳化型水性ポリウレタンの水性分散液における平均粒径は、高分子弾性体の造膜性が良好で、極細繊維化処理や中空化処理での厚み低下や伸びが小さいことから、0.01〜0.5μmであることが好ましく、0.03〜0.3μmであることがより好ましく、0.05〜0.2μmであることが特に好ましい。
水系ポリウレタンの平均粒径が0.03μm以上となることで、ポリウレタンの吸水性が抑えられ、90℃熱水処理における面積変化率を10%以下にしやすくなるとともに、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で潰れたり工程テンションで伸びたりすることが防止され、多孔構造を形成しやすくなる。また、0.3μm以下とすることで、ポリウレタンの造膜性が良好となり、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で、高分子弾性体が潰れたり工程テンションで伸びたりすることが防止され、さらに多孔構造が潰れにくくなる。
なお、平均粒径とは、水性分散液を屈折率計等によって測定したものである。
一方で、繊維絡合体に付与され、固化された高分子弾性体では、水系ポリウレタン粒子に相当する粒子が残存しないほうが好ましく、すなわち、ポリウレタンの粒子状態(或いは2次凝集状態)を維持した状態で造膜固化されないほうがよい。また、粒子状態を維持した状態で固化したことに伴って発生する粒子間隙の孔は、形成されないほうが良い。なお、粒子が残存しないとは、皮革様シートを切断して電子顕微鏡で観察した際、0.2μm以上の粒子がないことをいうが、粒子は観察されないことがより好ましい。
水系ポリウレタンの平均粒径が0.03μm以上となることで、ポリウレタンの吸水性が抑えられ、90℃熱水処理における面積変化率を10%以下にしやすくなるとともに、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で潰れたり工程テンションで伸びたりすることが防止され、多孔構造を形成しやすくなる。また、0.3μm以下とすることで、ポリウレタンの造膜性が良好となり、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で、高分子弾性体が潰れたり工程テンションで伸びたりすることが防止され、さらに多孔構造が潰れにくくなる。
なお、平均粒径とは、水性分散液を屈折率計等によって測定したものである。
一方で、繊維絡合体に付与され、固化された高分子弾性体では、水系ポリウレタン粒子に相当する粒子が残存しないほうが好ましく、すなわち、ポリウレタンの粒子状態(或いは2次凝集状態)を維持した状態で造膜固化されないほうがよい。また、粒子状態を維持した状態で固化したことに伴って発生する粒子間隙の孔は、形成されないほうが良い。なお、粒子が残存しないとは、皮革様シートを切断して電子顕微鏡で観察した際、0.2μm以上の粒子がないことをいうが、粒子は観察されないことがより好ましい。
本発明で使用するアニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂としては、平均分子量200〜6000の高分子ポリオールと有機ポリイソシアネ−トと、鎖伸長剤とを、所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタン樹脂が挙げられる。
高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオールおよびその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオールおよびその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオールおよびその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオール等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能アルコールや4官能アルコールなどの多官能アルコール、又は、エチレングリコール、等の短鎖アルコールを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、非晶性のポリカーボネート系ポリオール、脂環式ポリカーボネート系ポリオール、直鎖状ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及び、ポリエーテル系ポリオール等が、柔軟性と充実感のバランスにより優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
有機ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族ジイソシアネート、等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能イソシアネートや4官能イソシアネートなどの多官能イソシアネートを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが、機械的特性に優れ、90℃熱水膨潤性を低くしやすいことから好ましい。
鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン、ピペラジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、ジエチレントリアミンなどのトリアミンの中から2種以上組み合わせて用いることが、機械的特性、90℃熱水膨潤性の点から好ましい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
本発明で使用する自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルファミン酸基、もしくはこれらから選択される2以上、またはその塩等を含有し、これらのアニオン性基で自己乳化されることが好ましい。自己乳化型水性ポリウレタン樹脂へのアニオン性基の導入は、例えば、カルボキシル基を有し2個以上の活性水素を有する化合物、スルホン酸基を有し2個以上の活性水素を有する化合物、スルファミン酸基を有し2個以上の活性水素を有する化合物、もしくはこれらから選択される化合物の塩等が用いられて行われる。
より具体的には、カルボキシル基を有し2個以上の活性水素を有する化合物として、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸などのカルボキシル基含有ジオール等を使用して、ポリウレタンの骨格にカルボキシル基などのアニオン性基を導入する方法が挙げられる。また、3−(2,3−ヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸等のスルホン酸ジオール、もしくはN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸およびそのアルキルエーテル付加物等のスルファミン酸ジオールを、スルホン酸基又はスルファミン酸基を有し2個以上の活性水素を有する化合物として用いてアニオン性基を導入してもよいし、これら2種以上を併用してもよい。中でも、機械的特性や90℃熱水膨潤性の点で、カルボキシル基を有し2個以上の活性水素を有する化合物を用いることが好適である。
より具体的には、カルボキシル基を有し2個以上の活性水素を有する化合物として、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸などのカルボキシル基含有ジオール等を使用して、ポリウレタンの骨格にカルボキシル基などのアニオン性基を導入する方法が挙げられる。また、3−(2,3−ヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸等のスルホン酸ジオール、もしくはN,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸およびそのアルキルエーテル付加物等のスルファミン酸ジオールを、スルホン酸基又はスルファミン酸基を有し2個以上の活性水素を有する化合物として用いてアニオン性基を導入してもよいし、これら2種以上を併用してもよい。中でも、機械的特性や90℃熱水膨潤性の点で、カルボキシル基を有し2個以上の活性水素を有する化合物を用いることが好適である。
また、カルボキシル基を有し2個以上の活性水素を有する化合物の塩、スルホン酸基を有し2個以上の活性水素を有する化合物を中和させる塩、又はスルファミン酸基を有し2個以上の活性水素を有する化合物を中和させる塩としては、例えば、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩、並びにこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
アミン塩としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよびオクチルアミン等の1級モノアミンの塩、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等の2級モノアミンの塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N.N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミンおよびN−ジメチルアニリン等の3級モノアミンの塩、アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウム等の塩などが挙げられる。
アミン塩としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよびオクチルアミン等の1級モノアミンの塩、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等の2級モノアミンの塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N.N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミンおよびN−ジメチルアニリン等の3級モノアミンの塩、アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウム等の塩などが挙げられる。
本発明では、高分子弾性材料として、ポリウレタン樹脂を使用することにより、繊維絡合体に形態安定性や厚み保持性を付与し、風合い、表面外観を改良しやすくなる。高分子弾性体を構成する高分子弾性材料は、自己乳化型水性ポリウレタン樹脂以外にも、本発明の効果を損なわない範疇で、ゴム、熱可塑性エラストマーなどを含有してもよい。ゴム、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなど)、ニトリル系ゴム(ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムなど)、アクリル系ゴム(アクリルゴムなど)、ウレタンゴム(ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタンゴムなど)、シリコーンゴム、オレフィン系ゴム(エチレン−プロピレンゴムなど)、フッ素ゴム、ポリスチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、もしくはこれらの水添物又はエポキシ化物など)、ポリオレフィン系エラストマー(プロピレン−エチレン・プロピレンゴム共重合体などのオレフィンとゴム成分との共重合体、又はその水添物など)、ポリウレタン系エラストマー(ポリエーテルウレタンエラストマー、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルエステルウレタンエラストマー、ポリカーボネートウレタンエラストマー、ポリエーテルカーボネートウレタンエラストマー、ポリエステルカーボネートウレタンエラストマーなど)、ポリエステル系エラストマー(ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエステルエラストマーなど)、ポリアミド系エラストマー(ポリエステルアミドエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマーなど)、ハロゲン系エラストマー(塩化ビニル系エラストマーなど)などを含有しても良い。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、高分子弾性材料の60質量%以上、更には、80質量%以上がアニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
[架橋剤]
また、高分子弾性体は、その吸水率や繊維との接着性や硬さを制御するために、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤により、架橋構造を形成しても良い。架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、或いは、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物が挙げられる。
また、高分子弾性体は、その吸水率や繊維との接着性や硬さを制御するために、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤により、架橋構造を形成しても良い。架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、或いは、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物が挙げられる。
[感熱ゲル化]
また、高分子弾性材料は、例えばその希釈液である水性液にアンモニウム塩が混合されており、そのアンモニウム塩により、感熱ゲル化性を持たせられることが好ましく、この場合、高分子弾性体は、感熱ゲル化した前記高分子弾性材料を固化したものとなる。アンモニア塩は、有機酸アンモニウム塩、又は無機酸アンモニウム塩であり、上記水性液が常温(23℃)から40〜100℃程度の温度に上昇させられることにより、該水性液のpHが下降するものである。
アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩で感熱ゲル化させると、強固な多孔構造を有したゲルとなり易い。そして、高分子弾性材料の乾燥過程、更には、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で多孔構造が潰れにくくなる。つまり、高分子弾性体は、感熱ゲル化した際の多孔構造が後の処理工程を経ても保持しやすくなる。また、上記面積変化率が10%を越える場合、又は上記貯蔵弾性率が10〜500MPaから外れた場合には、このような効果は得られがたい。さらに、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩を用いることなく、他の金属塩やノニオン性界面活性剤を添加した場合も、このような効果を得られがたい。
従来、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤で乳化した水性ポリウレタンを、或いはノニオン性基で自己乳化した自己乳化型水性ポリウレタンを、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩によって、界面活性剤の曇点を低下させて感熱ゲル化させる方法が知られている。しかし該方法は、ポリウレタンの造膜性を低下させ、水性ポリウレタンの粒子状態(或いは2次凝集状態)を維持した状態でゲル化して強固なゲルとなりにくい。また、該方法における水性ポリウレタンを含む高分子弾性材料は、膨潤しやすくなって、乾燥過程で多孔構造が潰れやすかったり、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、脱落したり、更には、厚み方向の潰れや処理工程テンションにおける縦方向の伸びが大きくなって、多孔構造が潰れやすい。
本発明の高分子弾性材料は、アンモニウム塩により感熱ゲル化することにより、自己乳化型水性ポリウレタンの粒子状態(或いは2次凝集状態)を維持した状態で固化されにくくなる。
アンモニウム塩は、高分子弾性材料100質量部(固形分)に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部であることが更に好ましい。
また、高分子弾性材料は、例えばその希釈液である水性液にアンモニウム塩が混合されており、そのアンモニウム塩により、感熱ゲル化性を持たせられることが好ましく、この場合、高分子弾性体は、感熱ゲル化した前記高分子弾性材料を固化したものとなる。アンモニア塩は、有機酸アンモニウム塩、又は無機酸アンモニウム塩であり、上記水性液が常温(23℃)から40〜100℃程度の温度に上昇させられることにより、該水性液のpHが下降するものである。
アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂は、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩で感熱ゲル化させると、強固な多孔構造を有したゲルとなり易い。そして、高分子弾性材料の乾燥過程、更には、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程で多孔構造が潰れにくくなる。つまり、高分子弾性体は、感熱ゲル化した際の多孔構造が後の処理工程を経ても保持しやすくなる。また、上記面積変化率が10%を越える場合、又は上記貯蔵弾性率が10〜500MPaから外れた場合には、このような効果は得られがたい。さらに、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩を用いることなく、他の金属塩やノニオン性界面活性剤を添加した場合も、このような効果を得られがたい。
従来、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤で乳化した水性ポリウレタンを、或いはノニオン性基で自己乳化した自己乳化型水性ポリウレタンを、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩によって、界面活性剤の曇点を低下させて感熱ゲル化させる方法が知られている。しかし該方法は、ポリウレタンの造膜性を低下させ、水性ポリウレタンの粒子状態(或いは2次凝集状態)を維持した状態でゲル化して強固なゲルとなりにくい。また、該方法における水性ポリウレタンを含む高分子弾性材料は、膨潤しやすくなって、乾燥過程で多孔構造が潰れやすかったり、多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、脱落したり、更には、厚み方向の潰れや処理工程テンションにおける縦方向の伸びが大きくなって、多孔構造が潰れやすい。
本発明の高分子弾性材料は、アンモニウム塩により感熱ゲル化することにより、自己乳化型水性ポリウレタンの粒子状態(或いは2次凝集状態)を維持した状態で固化されにくくなる。
アンモニウム塩は、高分子弾性材料100質量部(固形分)に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部であることが更に好ましい。
無機酸のアンモニウム塩における無機酸としては、過塩素酸、炭酸、硫酸、過硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等が挙げられる。具体的な無機酸のアンモニウム塩としては、過硫酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。中でも、取り扱いの安全性、乾燥での揮発の問題、乾燥後の除去の容易性およびマイグレーション抑制効果に優れること、更には、強固なゲルとなりやすいことから、硫酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムから選ばれる少なくとも1種が好適である。
有機酸のアンモニウム塩における有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;リンゴ酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、アジピン酸等の飽和ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;乳酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等が挙げられる。中でも、取り扱いの安全性、乾燥での揮発の問題、乾燥後の除去の容易性およびマイグレーション抑制効果に優れること、更には強固なゲルとなりやすいことから、炭素数1〜4のカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好適である。
有機酸のアンモニウム塩における有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;リンゴ酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、アジピン酸等の飽和ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;乳酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等が挙げられる。中でも、取り扱いの安全性、乾燥での揮発の問題、乾燥後の除去の容易性およびマイグレーション抑制効果に優れること、更には強固なゲルとなりやすいことから、炭素数1〜4のカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好適である。
<凝固・離型状態等の調整>
また、高分子弾性材料には、ノニオン系水溶性化合物、増粘多糖類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性、又はこれらの中の2以上などが混合されてもよい。これらのうちの1以上が混合されることにより、高分子弾性材料の凝固状態、繊維絡合体との離型状態を調整することができる。
また、高分子弾性材料には、ノニオン系水溶性化合物、増粘多糖類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性、又はこれらの中の2以上などが混合されてもよい。これらのうちの1以上が混合されることにより、高分子弾性材料の凝固状態、繊維絡合体との離型状態を調整することができる。
[ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物]
上記の中ではノニオン系水溶性化合物を使用することが好ましく、中でもノニオン系ポリオキシアルキレン化合物を使用することがより好ましい。
ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物を高分子弾性材料に混合すると、感熱ゲル化した際に多孔構造となりやすく、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シートとなり易い。また、皮革様シートの断面において、上記した高分子弾性体内部の空隙と高分子弾性体の面積比率が10:90〜80:20となり易く、さらには、高分子弾性体内部の多孔構造の孔が連通孔となり易い。加えて、高分子弾性体において、水系ポリウレタン粒子に相当する粒子が残存せずに造膜固化した形態となり易い。
詳細な理由は不明だが、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物は、水性ポリウレタンの固化過程で凝集しながら高分子弾性材料と相分離して海島構造を形成し、それが、極細繊維発生型繊維(或いは中空型繊維)の海成分を水などで抽出除去する際等に溶出し、高分子弾性体内部に連続した孔を形成しやすいものと推定している。そして、乾燥工程や多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、多孔構造が潰れたりしにくくなる。この効果は、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaである高分子弾性材料を使用する場合に顕著となる。つまり、上記面積変化率が10%を超える場合、また、上記貯蔵弾性率が10〜500MPaを外れる場合、該化合物が混合されていても多孔構造が潰れ易くなる。
上記の中ではノニオン系水溶性化合物を使用することが好ましく、中でもノニオン系ポリオキシアルキレン化合物を使用することがより好ましい。
ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物を高分子弾性材料に混合すると、感熱ゲル化した際に多孔構造となりやすく、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シートとなり易い。また、皮革様シートの断面において、上記した高分子弾性体内部の空隙と高分子弾性体の面積比率が10:90〜80:20となり易く、さらには、高分子弾性体内部の多孔構造の孔が連通孔となり易い。加えて、高分子弾性体において、水系ポリウレタン粒子に相当する粒子が残存せずに造膜固化した形態となり易い。
詳細な理由は不明だが、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物は、水性ポリウレタンの固化過程で凝集しながら高分子弾性材料と相分離して海島構造を形成し、それが、極細繊維発生型繊維(或いは中空型繊維)の海成分を水などで抽出除去する際等に溶出し、高分子弾性体内部に連続した孔を形成しやすいものと推定している。そして、乾燥工程や多成分系繊維を極細繊維化する或いは中空化する熱水処理等の処理過程において、多孔構造が潰れたりしにくくなる。この効果は、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaである高分子弾性材料を使用する場合に顕著となる。つまり、上記面積変化率が10%を超える場合、また、上記貯蔵弾性率が10〜500MPaを外れる場合、該化合物が混合されていても多孔構造が潰れ易くなる。
本発明の効果をより得られやすいことから、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物の分子量としては、数平均分子量で5000〜500000であることが好ましく、7000〜100000であることがさらに好ましい。また、ポリアルキレングリコール化合物としては、25℃で固体状態である、或いは5000mPa・sec以上、更には10000mPa・sec以上であることが好ましい。
該ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物は、皮革様シートに0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。また、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物は、高分子弾性材料100質量部(固形分)に対して0.5〜45質量部が好ましく、1〜20質量部であることが更に好ましい。
これら上限値以下とすることで、該化合物は、経時的にブリードして風合いや表面外観が経時的に変化することが防止され、また、残存に起因したタック感、べたつきや風合い硬化などの弊害も発生しにくくなる。さらには、含浸液の粘度を適切な値とすることができる。また、下限値以上とすることで、該化合物の効果を発揮させやすくなる。
該ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物は、皮革様シートに0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。また、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物は、高分子弾性材料100質量部(固形分)に対して0.5〜45質量部が好ましく、1〜20質量部であることが更に好ましい。
これら上限値以下とすることで、該化合物は、経時的にブリードして風合いや表面外観が経時的に変化することが防止され、また、残存に起因したタック感、べたつきや風合い硬化などの弊害も発生しにくくなる。さらには、含浸液の粘度を適切な値とすることができる。また、下限値以上とすることで、該化合物の効果を発揮させやすくなる。
ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物とは、ポリアルキレングリコール単位を少なくとも1種以上有するノニオン系化合物を指す。
ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物としては、多孔構造をより得られやすいことから、ポリオキシアルキレン単位を60質量%以上、中でも、ポリオキシエチレン単位を40質量%以上有することが好ましく、また、アルキル基単位が40質量%未満であることが好ましい。また、本発明の効果をより得られやすいことから、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物の曇点は60℃以上、更には70℃以上であることが好ましい。
ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物としては、多孔構造をより得られやすいことから、ポリオキシアルキレン単位を60質量%以上、中でも、ポリオキシエチレン単位を40質量%以上有することが好ましく、また、アルキル基単位が40質量%未満であることが好ましい。また、本発明の効果をより得られやすいことから、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物の曇点は60℃以上、更には70℃以上であることが好ましい。
ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等の直鎖ポリオキシアルキレングリコールおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレングリセリルエーテル等のポリオキシアルキレングリセリンおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンジグリセリルエーテル等のポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレントリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシブチレントリメチロールプロパン等のポリオキシアルキレントリメチロールプロパンおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシブチレンペンタエリスリトールエーテル等のポリオキシアルキレンペンタエリスリトールエーテルおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシブチレンソルビット等のポリオキシアルキレンソルビットおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシブチレンメチルグルコシド等のポリオキシグルコシドおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンラノリンアルコールエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタンエーテル、ポリオキシプロピレンソルビタンエーテル、ポリオキシブチレンソルビタンエーテル等のポリオキシソルビタンエーテルおよびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油、ポリオキシブチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油およびそのランダム共重合体或いはブロック共重合体、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンヤシ油ジジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド等のポリオキシアルキレンアルキルアミンやポリオキシアルキレンアルキルアミドなどが挙げられる。また、アルキレングリコールを1種以上含有していれば、水酸基、或いは、水酸基のエステル化物などの他の基を含有していても良い。また、上記に例示したようなノニオン性基のみで構成されていることが好ましいが、一部に、アニオン基、カチオン基を含有していても良い。
[増粘多糖類]
また、上記した中では、増粘多糖類が高分子弾性材料に混合されることも好ましい。増粘多糖類を混合することで、感熱ゲル化処理により昇温しても、繊維質基材に含浸された水系分散液の粘度が下がりにくく、また乾燥過程での収縮が抑えられる等のためか、多孔構造が潰れにくくなる傾向になる。それによって、得られる皮革様シートの柔軟性、表面外観が優れる場合がある。本発明のように、該高分子弾性材料が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaである場合に、その効果が顕著となる。
また、上記した中では、増粘多糖類が高分子弾性材料に混合されることも好ましい。増粘多糖類を混合することで、感熱ゲル化処理により昇温しても、繊維質基材に含浸された水系分散液の粘度が下がりにくく、また乾燥過程での収縮が抑えられる等のためか、多孔構造が潰れにくくなる傾向になる。それによって、得られる皮革様シートの柔軟性、表面外観が優れる場合がある。本発明のように、該高分子弾性材料が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaである場合に、その効果が顕著となる。
該増粘多糖類は、皮革様シートに0.01〜0.2質量%含有することが好ましい。また、高分子弾性材料100質量部(固形分)に対して0.1〜10質量部、更には0.2〜5質量部配合することが好ましい。
これら上限値以下とすることで、該化合物は経時的にブリードして風合いや表面外観が経時的に変化することが防止され、また、増粘多糖類の残存に起因したタック感、べたつきや風合い硬化などの弊害も発生しにくくなる。さらには、含浸液の粘度を適切な値とすることができる。また、下限値以上とすることで、該化合物の効果を発揮させやすくなる。
また、増粘多糖類の分子量としては、数平均分子量で1000〜500000、更には5000〜200000が好ましい。
これら上限値以下とすることで、該化合物は経時的にブリードして風合いや表面外観が経時的に変化することが防止され、また、増粘多糖類の残存に起因したタック感、べたつきや風合い硬化などの弊害も発生しにくくなる。さらには、含浸液の粘度を適切な値とすることができる。また、下限値以上とすることで、該化合物の効果を発揮させやすくなる。
また、増粘多糖類の分子量としては、数平均分子量で1000〜500000、更には5000〜200000が好ましい。
増粘多糖類としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系誘導体;可溶性澱粉、カルボキシメチル澱粉、メチル澱粉等の澱粉系誘導体;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系;グアガム、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ローカストビンガム、クインスシード、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、澱粉、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸及びその塩等の天然多糖類系;カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の天然たん白類系;
ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ラウレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ミリステート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)パルミテート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)イソステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)オレート等のポリオキシアルキレン系非イオン型ポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。市販品としてはHEC AX−15(住友精化株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)、ケルザン(三晶株式会社製、高分子多糖類(キサンタンガム))等が挙げられる。
なお、増粘多糖類を付与した場合は、増粘多糖類の経時的なブリードや、吸湿によるベタツキの発生を抑制するため、高分子弾性材料を含浸させた後に洗浄工程を経ることが好ましい。これらの増粘多糖類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、増粘多糖類は、上記したノニオン系ポリオキシアルキレン化合物及びアンモニウム塩の一方又は両方とともに、高分子弾性材料に混合されてもよい。もちろん、増粘多糖類が混合されない場合に、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物及びアンモニウム塩の両方又は一方が高分子弾性材料に混合されてもよい。
ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ラウレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ミリステート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)パルミテート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)ステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)イソステアレート、ポリオキシエチレンメチルグルコース(モノ、ジ又はトリ)オレート等のポリオキシアルキレン系非イオン型ポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。市販品としてはHEC AX−15(住友精化株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)、ケルザン(三晶株式会社製、高分子多糖類(キサンタンガム))等が挙げられる。
なお、増粘多糖類を付与した場合は、増粘多糖類の経時的なブリードや、吸湿によるベタツキの発生を抑制するため、高分子弾性材料を含浸させた後に洗浄工程を経ることが好ましい。これらの増粘多糖類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、増粘多糖類は、上記したノニオン系ポリオキシアルキレン化合物及びアンモニウム塩の一方又は両方とともに、高分子弾性材料に混合されてもよい。もちろん、増粘多糖類が混合されない場合に、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物及びアンモニウム塩の両方又は一方が高分子弾性材料に混合されてもよい。
皮革様シートに含有する高分子弾性体の割合は、繊維絡合体100質量部に対し、1〜60質量部の範囲であることが好ましく、5〜40質量部がより好ましく、10〜30質量部であることが特に好ましい。なお、高分子弾性体の含有割合を上記上限値以下とすることで、ゴム感が強くなりにくく、風合いが良好になりやすい傾向にある。また、上記下限値以上とすることで、製造工程での伸びや厚みを良好にして、柔軟性や表面外観を良好にしやすくなる。
高分子弾性体は、各種添加剤をさらに含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、柔軟剤、撥水剤、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子等が挙げられる。
<皮革様シートの表面処理>
皮革様シートの表面は、各種処理が施されていても良い。例えば、皮革様シート表層の表面に、銀面調樹脂層がさらに設けられることが好ましい。銀面調樹脂層の厚みは、例えば1〜300μmである。また、皮革様シート表層の表面に存在する前記繊維が立毛処理されていることも好ましい。
皮革様シートの表面は、各種処理が施されていても良い。例えば、皮革様シート表層の表面に、銀面調樹脂層がさらに設けられることが好ましい。銀面調樹脂層の厚みは、例えば1〜300μmである。また、皮革様シート表層の表面に存在する前記繊維が立毛処理されていることも好ましい。
皮革様シートの見かけ密度は、特に限定されないが、0.2〜0.8g/cm3の範囲であることが、充実感と柔軟性とのバランスに優れ、また、機械的特性や形態保持性に優れる点から好ましい。また、皮革様シートの厚みは、特に限定されないが、0.3〜4mm程度の範囲であることが充実感と柔軟性とのバランスに優れた風合いが得られる点から好ましい。
<製造方法>
次に本発明の皮革様シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の皮革様シートの製造方法は、例えば、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される、海島型複合繊維或いは中空型複合繊維等の複合繊維からなる繊維シートを製造する繊維シート製造工程(1)と、繊維シートを複数枚重ねて絡合させることにより絡合シートを形成する絡合工程(2)と、絡合シートを必要に応じて湿熱収縮や熱水収縮させることにより、収縮ウェブを作成する収縮処理工程(3)と、海島型複合繊維或いは中空型複合繊維等の複合繊維の水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細繊維束或いは中空繊維の繊維絡合体を形成する繊維束絡合体形成工程或いは中空繊維絡合体形成工程(4)を備える。また、繊維絡合体に高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させる高分子弾性体含浸工程(5)や表面処理を行う後加工工程(6)、とを備える。以下に態様と各工程について、詳しく説明する。
次に本発明の皮革様シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の皮革様シートの製造方法は、例えば、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される、海島型複合繊維或いは中空型複合繊維等の複合繊維からなる繊維シートを製造する繊維シート製造工程(1)と、繊維シートを複数枚重ねて絡合させることにより絡合シートを形成する絡合工程(2)と、絡合シートを必要に応じて湿熱収縮や熱水収縮させることにより、収縮ウェブを作成する収縮処理工程(3)と、海島型複合繊維或いは中空型複合繊維等の複合繊維の水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細繊維束或いは中空繊維の繊維絡合体を形成する繊維束絡合体形成工程或いは中空繊維絡合体形成工程(4)を備える。また、繊維絡合体に高分子弾性体の水性液を含浸及び乾燥凝固させる高分子弾性体含浸工程(5)や表面処理を行う後加工工程(6)、とを備える。以下に態様と各工程について、詳しく説明する。
(1)繊維シート製造工程
本工程としては、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して得られる海島型複合繊維或いは中空型複合繊維からなるスパンボンドシートを繊維シートとして製造することが1例として挙げられる。以下、該スパンボンドシートを形成する方法について、詳しく説明する。
本工程としては、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して得られる海島型複合繊維或いは中空型複合繊維からなるスパンボンドシートを繊維シートとして製造することが1例として挙げられる。以下、該スパンボンドシートを形成する方法について、詳しく説明する。
水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸することにより複合化した後、スパンボンド法により、延伸後、堆積させることにより長繊維の複合繊維からなるスパンボンドシートが得られる。
はじめに、水溶性熱可塑性樹脂及び非水溶性熱可塑性樹脂をそれぞれ別々の押出機により溶融混練し、それぞれ異なる紡糸口金から溶融樹脂のストランドを同時に吐出させる溶融複合紡糸により、海島型複合繊維或いは中空型複合繊維を形成する。水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂との質量比としては、5/95〜50/50、さらには、10/90〜40/60の範囲であることが、物性の良好な繊維絡合体が得られ、また、繊維の形成性にも優れる点から好ましい。
溶融複合紡糸においては、複合繊維における島数は4〜4000島/繊維、さらには10〜1000島/繊維にすることが、単繊維繊度が小さく、物性の良好な繊維絡合体が得られる点から好ましい。
溶融複合紡糸においては、複合繊維における島数は4〜4000島/繊維、さらには10〜1000島/繊維にすることが、単繊維繊度が小さく、物性の良好な繊維絡合体が得られる点から好ましい。
複合繊維は冷却装置で冷却された後、エアジェットノズルなどの吸引装置を用いて目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引き取り速度に相当する速度の高速気流により延伸される。そして、延伸された複合繊維を移動式の捕集面の上に堆積することによりスパンボンドシートが形成される。なお、このとき、必要に応じてスパンボンドシートを、部分的に圧着してもよい。スパンボンドシートの目付量は、20〜500g/m2の範囲であることが均質な繊維束絡合体が得られ、また、生産性に優れる点からも好ましい。
(2)絡合工程
次に、(1)繊維シート製造工程で得た繊維シートを複数枚重ねて絡合させることにより絡合シートを形成する。以下、得られたスパンボンドシートを複数枚重ねて絡合させることにより絡合シートを形成する絡合工程の例について説明する。
絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて絡合処理を行うことにより形成される。
次に、(1)繊維シート製造工程で得た繊維シートを複数枚重ねて絡合させることにより絡合シートを形成する。以下、得られたスパンボンドシートを複数枚重ねて絡合させることにより絡合シートを形成する絡合工程の例について説明する。
絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて絡合処理を行うことにより形成される。
はじめに、スパンボンドシートに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。なお、目付ムラを低減させるために、2枚以上のスパンボンドシートをクロスラッパーにより重ね合わせた後、油剤を付与してもよい。
油剤の付与後、例えば、ニードルパンチ処理により三次元的にスパンボンドシートを絡合させる絡合処理を行う。ニードル条件としては、ニードル針のバーブ数、キックアップ深さ、からそれぞれ選ばれる。また、ニードルパンチ数、ニードルパンチ深度、油剤の種類と使用量等により調整される。
油剤の付与後、例えば、ニードルパンチ処理により三次元的にスパンボンドシートを絡合させる絡合処理を行う。ニードル条件としては、ニードル針のバーブ数、キックアップ深さ、からそれぞれ選ばれる。また、ニードルパンチ数、ニードルパンチ深度、油剤の種類と使用量等により調整される。
絡合シートは、絡合工程前のスパンボンドシートの目付量に対して、質量比1.2倍以上、さらには、1.5倍以上となるように絡合処理されたものであることが好ましい。上限は特に限定されないが、処理速度の低下による製造コストの増大を避ける点で4倍以下であることが好ましい。また、絡合シートの目付量は、目的とする繊維絡合体の厚さ等に応じて適宜選択されるが、具体的には、例えば、100〜1500g/m2の範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
絡合シートの層間剥離力は、7kg/2.5cm以上、さらには、9kg/2.5cm以上であることが、形態保持性が良好であり、繊維の抜けが少なく、得られる皮革様シートの充実感や表面外観が優れる点で好ましい。なお、層間剥離力は、三次元絡合の度合いの目安になる。また、層間剥離力を上記下限値以上とすることで、繊維絡合体の繊維密度を充分に高くすることができる。絡合シートの層間剥離強力の上限は特に限定されないが、絡合処理効率の点から30kg/2.5cm以下であることが好ましい。
絡合シートの層間剥離力は、7kg/2.5cm以上、さらには、9kg/2.5cm以上であることが、形態保持性が良好であり、繊維の抜けが少なく、得られる皮革様シートの充実感や表面外観が優れる点で好ましい。なお、層間剥離力は、三次元絡合の度合いの目安になる。また、層間剥離力を上記下限値以上とすることで、繊維絡合体の繊維密度を充分に高くすることができる。絡合シートの層間剥離強力の上限は特に限定されないが、絡合処理効率の点から30kg/2.5cm以下であることが好ましい。
(3)湿熱収縮処理工程
次に、得られた絡合シートを湿熱収縮や熱水収縮させることにより、収縮絡合シート(収縮ウェブ)を作製する収縮処理工程について説明する。収縮処理工程は、必要に応じて行われる工程であり、省略されてもよい。収縮処理工程は、長繊維を含有する絡合シートを収縮させて得られる繊維絡合体の繊維密度を緻密にするために、絡合度合いを更に高めた、収縮絡合シートを製造する工程である。
湿熱収縮処理は、スチーム加熱、熱水処理などの吸水条件下で行うことが好ましい。
スチーム加熱条件としては、好ましくは雰囲気温度が60〜130℃の範囲で、相対湿度50%以上、さらに好ましくは相対湿度90%以上で、60〜600秒間加熱処理することが好ましい。このような加熱条件の場合には、絡合シートを高収縮率で収縮させることができる点から好ましい。なお、相対湿度を上記下限値以上とすることで、繊維に接触した水分が比較的長い時間かけて乾燥されることになり、充分に収縮することが可能になる。
熱水処理条件としては、50〜130℃の範囲、さらには60〜95℃の範囲であることが高収縮率で収縮させることができる点から好ましい。なお、温度がこれら下限値以上となることで、収縮が充分に行われる傾向があり、また、温度が上限値以下とすることで、収縮が均一となりやすい傾向がある。
次に、得られた絡合シートを湿熱収縮や熱水収縮させることにより、収縮絡合シート(収縮ウェブ)を作製する収縮処理工程について説明する。収縮処理工程は、必要に応じて行われる工程であり、省略されてもよい。収縮処理工程は、長繊維を含有する絡合シートを収縮させて得られる繊維絡合体の繊維密度を緻密にするために、絡合度合いを更に高めた、収縮絡合シートを製造する工程である。
湿熱収縮処理は、スチーム加熱、熱水処理などの吸水条件下で行うことが好ましい。
スチーム加熱条件としては、好ましくは雰囲気温度が60〜130℃の範囲で、相対湿度50%以上、さらに好ましくは相対湿度90%以上で、60〜600秒間加熱処理することが好ましい。このような加熱条件の場合には、絡合シートを高収縮率で収縮させることができる点から好ましい。なお、相対湿度を上記下限値以上とすることで、繊維に接触した水分が比較的長い時間かけて乾燥されることになり、充分に収縮することが可能になる。
熱水処理条件としては、50〜130℃の範囲、さらには60〜95℃の範囲であることが高収縮率で収縮させることができる点から好ましい。なお、温度がこれら下限値以上となることで、収縮が充分に行われる傾向があり、また、温度が上限値以下とすることで、収縮が均一となりやすい傾向がある。
収縮処理においては、絡合シートを面積収縮率が20%以上、さらには、30%以上になるように収縮させても良い。高い収縮率で収縮させることにより、繊維密度が高く、繊維の絡まり度合いがさらに高くなった収縮ウェブが得られる。
なお、面積収縮率(%)は、下記式(1):
(収縮処理前のシート面の面積−収縮処理後のシート面の面積)/収縮処理前のシート面の面積×100・・・(1)、により計算される。前記面積は、シートの表面の面積と裏面の面積の平均面積を意味する。
また、湿熱収縮処理により得られた収縮ウェブを、さらに複合繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、繊維密度を高めてもよい。なお、表面側と裏面側とをそれぞれの側から異なる条件で加熱ロールや加熱プレスすることにより、表面側と裏面側との繊維の緻密度を調整することもできる。
なお、面積収縮率(%)は、下記式(1):
(収縮処理前のシート面の面積−収縮処理後のシート面の面積)/収縮処理前のシート面の面積×100・・・(1)、により計算される。前記面積は、シートの表面の面積と裏面の面積の平均面積を意味する。
また、湿熱収縮処理により得られた収縮ウェブを、さらに複合繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、繊維密度を高めてもよい。なお、表面側と裏面側とをそれぞれの側から異なる条件で加熱ロールや加熱プレスすることにより、表面側と裏面側との繊維の緻密度を調整することもできる。
(4)繊維束或いは中空繊維絡合体形成工程
次に、複合繊維の水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細繊維束或いは中空繊維の絡合体を形成する繊維束或いは中空繊維絡合体形成工程について説明する。
極細繊維化或いは中空繊維化処理は、絡合シート(又は収縮絡合シート)を、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより、水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去、または、分解除去する処理である。
熱水加熱処理条件の具体例としては、例えば、第1段階として、65〜90℃の熱水中に5〜300秒間浸漬した後、さらに、第2段階として、85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することが好ましい。ただし、熱水加熱処理は、2段階の処理条件で行う必要はなく、いずれか1段階の条件のみで行ってもよい。また、溶解効率を高めるために、必要に応じて、ロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理等を行ってもよい。
次に、複合繊維の水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細繊維束或いは中空繊維の絡合体を形成する繊維束或いは中空繊維絡合体形成工程について説明する。
極細繊維化或いは中空繊維化処理は、絡合シート(又は収縮絡合シート)を、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより、水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去、または、分解除去する処理である。
熱水加熱処理条件の具体例としては、例えば、第1段階として、65〜90℃の熱水中に5〜300秒間浸漬した後、さらに、第2段階として、85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することが好ましい。ただし、熱水加熱処理は、2段階の処理条件で行う必要はなく、いずれか1段階の条件のみで行ってもよい。また、溶解効率を高めるために、必要に応じて、ロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理等を行ってもよい。
(5)高分子弾性体の含浸工程
本実施形態の皮革様シートは、繊維絡合体の形態安定性や厚み保持性を付与し、風合い、表面外観を改良するため、極細繊維化或いは中空繊維化処理を行う前に、または極細繊維化或いは中空繊維化処理を行った後に、繊維束絡合体の形態安定性を高める目的や、繊維束絡合体の機械的特性や風合い等を調整することを目的として、絡合シートに高分子弾性材料を含浸及び乾燥凝固させて、高分子弾性体を繊維絡合体に含有させる。
高分子弾性体の含浸は、水性ポリウレタン樹脂を含む高分子材料の水性液を含浸液として用いることが好ましいが、水性液以外のものを使用してもよい。
本実施形態の皮革様シートは、繊維絡合体の形態安定性や厚み保持性を付与し、風合い、表面外観を改良するため、極細繊維化或いは中空繊維化処理を行う前に、または極細繊維化或いは中空繊維化処理を行った後に、繊維束絡合体の形態安定性を高める目的や、繊維束絡合体の機械的特性や風合い等を調整することを目的として、絡合シートに高分子弾性材料を含浸及び乾燥凝固させて、高分子弾性体を繊維絡合体に含有させる。
高分子弾性体の含浸は、水性ポリウレタン樹脂を含む高分子材料の水性液を含浸液として用いることが好ましいが、水性液以外のものを使用してもよい。
以下に、高分子弾性体の含浸方法として、自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料の水性液を含浸液として用いる場合について、詳しく説明する。なお、高分子弾性材料の水性液としては、高分子弾性体を形成する高分子弾性材料を、水等の水系媒体に溶解した水性溶液や、高分子弾性体を形成する高分子弾性材料を、水等の水系媒体に分散させた水性分散液が挙げられる。なお、水性分散液には、懸濁分散液及び乳化分散液が含まれる。特に、耐水性に優れている点から、上記したように、水性分散液を用いることがより好ましい。
繊維絡合シートに高分子弾性材料を含浸させる方法としては、例えば、ナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターを用いて高分子弾性材料の水性液を繊維絡合シートに塗布する方法、または、高分子弾性材料の水性液に繊維絡合シートを浸漬する方法等が挙げられる。
そして、高分子弾性体の水性液が含浸された繊維絡合シートを乾燥することにより、高分子弾性体を凝固させることができる。乾燥方法としては、50〜200℃の乾燥装置中で熱処理する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で熱処理する方法、スチーム処理した後に乾燥機で熱処理する方法、或いは、超音波加熱の後に乾燥機で熱処理する方法、並びに、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
また、上記したように、高分子弾性材料の水性液がアンモニウム塩等が配合される場合等には、繊維絡合体に含浸された高分子弾性材料の水性液は、乾燥前に40〜100℃程度に加熱されてゲル化されてもよい。
そして、高分子弾性体の水性液が含浸された繊維絡合シートを乾燥することにより、高分子弾性体を凝固させることができる。乾燥方法としては、50〜200℃の乾燥装置中で熱処理する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で熱処理する方法、スチーム処理した後に乾燥機で熱処理する方法、或いは、超音波加熱の後に乾燥機で熱処理する方法、並びに、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
また、上記したように、高分子弾性材料の水性液がアンモニウム塩等が配合される場合等には、繊維絡合体に含浸された高分子弾性材料の水性液は、乾燥前に40〜100℃程度に加熱されてゲル化されてもよい。
含浸液の粘度としては、含浸の均一性に優れ、得られる皮革様シートの風合いや表面外観が均質なことから、10Pa・s未満が好ましく、1Pa・s未満、更には0.1Pa・s未満が好ましい。調製直後の高分子弾性材料の含浸液の粘度は、単一円筒型回転粘度計を用いて20℃、6回転/分で測定できる。
なお、前記繊維絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸させた後の乾燥工程で、水系ポリウレタン樹脂が繊維絡合シートの表層に移行(マイグレーション)することにより、均一な充填状態が得られないことがある。このような場合、高分子弾性材料の水性液に、上記したように、温度上昇によりpHが下降する有機酸アンモニウム塩、又は無機酸アンモニウム塩等のアンモニウム塩を加え、水分散安定性を低下させることにより、マイグレーションを抑制することができる。
さらには、水系ポリウレタンの粒径を調整すること;高分子弾性体のアニオン性基の種類や量を調整することにより水分散安定性を低下させること;1価または2価のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ノニオン系乳化剤、会合型水溶性増粘剤、水溶性シリコーン系化合物などの会合型感熱ゲル化剤、または、水溶性ポリウレタン系化合物を併用すること等により、40〜100℃程度における水分散安定性を低下させること;等によりマイグレーションを抑制することもできる。なお、必要に応じて、高分子弾性体が表面に偏在するようにマイグレーションさせてもよい。また、乾燥法や付与方法を、表面側と裏面側では異なった条件として、表面側へ優先的に高分子弾性体を固着させても構わない。
ただし、上記したアンモニウム塩を利用し水分散安定性を低下させることが好ましい。
さらには、水系ポリウレタンの粒径を調整すること;高分子弾性体のアニオン性基の種類や量を調整することにより水分散安定性を低下させること;1価または2価のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ノニオン系乳化剤、会合型水溶性増粘剤、水溶性シリコーン系化合物などの会合型感熱ゲル化剤、または、水溶性ポリウレタン系化合物を併用すること等により、40〜100℃程度における水分散安定性を低下させること;等によりマイグレーションを抑制することもできる。なお、必要に応じて、高分子弾性体が表面に偏在するようにマイグレーションさせてもよい。また、乾燥法や付与方法を、表面側と裏面側では異なった条件として、表面側へ優先的に高分子弾性体を固着させても構わない。
ただし、上記したアンモニウム塩を利用し水分散安定性を低下させることが好ましい。
高分子弾性体は、海島型複合繊維を極細繊維化処理する前、或いは中空型複合繊維を中空化処理する前に、高分子弾性体を付与すると、水溶性熱可塑性樹脂が除去される際に繊維束或いは中空繊維内部に形成される空隙は、皮革様シートでも空隙のまま維持されて、繊維絡合体と高分子弾性体が離型しやすくなる。そのため、高分子弾性体は、海島型複合繊維に極細繊維化処理前、或いは中空型複合繊維に中空化処理前に、繊維絡合体に付与することが好ましい。
ただし、従来の水系ポリウレタンでは、海島型複合繊維を極細繊維化処理する前、或いは中空型複合繊維を中空化処理する前に高分子弾性体を付与して、空隙(繊維と高分子弾性体との間の隙間、高分子弾性体中の孔、繊維内部の隙間等)を皮革様シートに形成させようとしても、極細化処理工程や中空化工程において、高分子弾性体が膨潤や変形し、弾性材料が繊維と接着してしまたったり、孔が潰れたりして空隙がなくなる問題が有った。本発明に用いる高分子弾性体は、膨潤や変形が少ないため、水溶性熱可塑性樹脂が抽出除去されて生じた空隙を有効に保つことが出来る。
ただし、従来の水系ポリウレタンでは、海島型複合繊維を極細繊維化処理する前、或いは中空型複合繊維を中空化処理する前に高分子弾性体を付与して、空隙(繊維と高分子弾性体との間の隙間、高分子弾性体中の孔、繊維内部の隙間等)を皮革様シートに形成させようとしても、極細化処理工程や中空化工程において、高分子弾性体が膨潤や変形し、弾性材料が繊維と接着してしまたったり、孔が潰れたりして空隙がなくなる問題が有った。本発明に用いる高分子弾性体は、膨潤や変形が少ないため、水溶性熱可塑性樹脂が抽出除去されて生じた空隙を有効に保つことが出来る。
皮革様シートに含有する高分子弾性体は、繊維束の内部に含浸していてもよく、繊維束の外部に付着していてもよい。なお、高分子弾性体が繊維束内部に含浸している場合には、繊維束を構成する極細繊維を拘束することにより剛性を調整することができる。繊維束の内部に含浸される高分子弾性体の割合は、繊維束絡合体と繊維束の内部に含浸している高分子弾性体の合計量に対して、0〜5質量%であることが好ましい。極細繊維束内部に存在する高分子弾性体の割合を5質量%以下とすると、極細繊維が集束し過ぎることなく、柔軟性や表面外観が良好になりやすい。
[皮革様シートの後加工]
上述したように得られた繊維束絡合体は、通常、各種用途に応じて、起毛処理、銀面処理、柔軟化処理、2分割処理、成形処理、染色処理等の所望の後加工が施して用いられる。
本実施形態の皮革様シートは剥離強力が3.0kg/1.0cm以上であることが好ましい。
例えば、銀面調人工皮革を製造する場合には、繊維束絡合体の表面に高分子弾性体からなる被覆層を形成する。
高分子弾性体からなる被覆層の形成方法としては、高分子弾性体の分散液または溶液を繊維束絡合体の表面に直接塗布して形成する方法や、離型紙上に形成された被覆層を繊維束絡合体の表面に貼り合わせる方法等が用いられる。被覆層の形成に用いられる高分子弾性体としては、従来から銀面調人工皮革の製造に用いられている高分子弾性体が特に限定なく用いられ得る。被覆層の厚さは特に限定されず、具体的には、例えば、2〜300μm、さらには3〜100μm以下、特には3〜80μm、殊には3〜50μmの範囲であることが好ましい。
上述したように得られた繊維束絡合体は、通常、各種用途に応じて、起毛処理、銀面処理、柔軟化処理、2分割処理、成形処理、染色処理等の所望の後加工が施して用いられる。
本実施形態の皮革様シートは剥離強力が3.0kg/1.0cm以上であることが好ましい。
例えば、銀面調人工皮革を製造する場合には、繊維束絡合体の表面に高分子弾性体からなる被覆層を形成する。
高分子弾性体からなる被覆層の形成方法としては、高分子弾性体の分散液または溶液を繊維束絡合体の表面に直接塗布して形成する方法や、離型紙上に形成された被覆層を繊維束絡合体の表面に貼り合わせる方法等が用いられる。被覆層の形成に用いられる高分子弾性体としては、従来から銀面調人工皮革の製造に用いられている高分子弾性体が特に限定なく用いられ得る。被覆層の厚さは特に限定されず、具体的には、例えば、2〜300μm、さらには3〜100μm以下、特には3〜80μm、殊には3〜50μmの範囲であることが好ましい。
また、例えば、立毛調人工皮革を製造する場合には、繊維束絡合体の表面をサンドペーパーや針布等を用いたバフィング処理により毛羽立てるような、従来から立毛調人工皮革
の製造に用いられている方法が用いられる。
また、銀面調人工皮革や立毛調人工皮革は極細繊維形成工程の何れかの段階で染色してもよい。また、必要に応じて、ドライ状態での機械的もみ処理や収縮処理、染色機や洗濯機などを使用したウェット状態でのリラックス処理、柔軟剤処理、防燃剤や抗菌剤、消臭剤、撥水撥油剤などの機能性付与処理、シリコーン系樹脂やシルクプロテイン含有処理剤、グリップ性付与樹脂などの触感改質剤付与処理、着色剤やエナメル調用コーティング樹脂などの仕上げ処理を行なってもよい。
の製造に用いられている方法が用いられる。
また、銀面調人工皮革や立毛調人工皮革は極細繊維形成工程の何れかの段階で染色してもよい。また、必要に応じて、ドライ状態での機械的もみ処理や収縮処理、染色機や洗濯機などを使用したウェット状態でのリラックス処理、柔軟剤処理、防燃剤や抗菌剤、消臭剤、撥水撥油剤などの機能性付与処理、シリコーン系樹脂やシルクプロテイン含有処理剤、グリップ性付与樹脂などの触感改質剤付与処理、着色剤やエナメル調用コーティング樹脂などの仕上げ処理を行なってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、部および%は、特に断りのない限り質量基準である。
はじめに、本実施例で用いた評価方法についてまとめて説明する。
<平均単繊維繊度>
光学顕微鏡にてランダムに選んだ100個の繊維の断面積を測定し、その数平均を求めた。繊維断面積の平均値と繊維の比重から、繊度を計算により求めた。なお、繊維の比重はJIS L 1015 8.14.2(1999)に基づいて測定した。
<面積変化率>
高分子弾性材料の水性液を50℃で乾燥して固化して得られた厚さ250μm±50μmのフィルムを、熱風乾燥機で120℃、5分間熱処理した後、20℃、65%RHの条件下に1日間放置したものを乾燥サンプルとした。また、その乾燥サンプルをさらに90℃の熱水に60分間浸漬した後、直ちに最表面の余分な水滴をJKワイパー150−S(株式会社クレシア製)にて拭き取ったものを熱水膨潤サンプルとした。乾燥サンプルと熱水膨潤サンプルの面積を測定し、下記式に従って熱水面積膨張率を求めた。そして、熱水面積膨張率の絶対値を面積変化率とする。
熱水面積膨張率(%)=[(熱水膨潤サンプルの寸法−乾燥サンプルの寸法)/乾燥サンプルの寸法]×100
面積変化率(%)=|熱水面積膨張率|
<平均単繊維繊度>
光学顕微鏡にてランダムに選んだ100個の繊維の断面積を測定し、その数平均を求めた。繊維断面積の平均値と繊維の比重から、繊度を計算により求めた。なお、繊維の比重はJIS L 1015 8.14.2(1999)に基づいて測定した。
<面積変化率>
高分子弾性材料の水性液を50℃で乾燥して固化して得られた厚さ250μm±50μmのフィルムを、熱風乾燥機で120℃、5分間熱処理した後、20℃、65%RHの条件下に1日間放置したものを乾燥サンプルとした。また、その乾燥サンプルをさらに90℃の熱水に60分間浸漬した後、直ちに最表面の余分な水滴をJKワイパー150−S(株式会社クレシア製)にて拭き取ったものを熱水膨潤サンプルとした。乾燥サンプルと熱水膨潤サンプルの面積を測定し、下記式に従って熱水面積膨張率を求めた。そして、熱水面積膨張率の絶対値を面積変化率とする。
熱水面積膨張率(%)=[(熱水膨潤サンプルの寸法−乾燥サンプルの寸法)/乾燥サンプルの寸法]×100
面積変化率(%)=|熱水面積膨張率|
<20℃および100℃における貯蔵弾性率>
高分子弾性材料の水性液を50℃で乾燥して得られた厚さ250μm±50μmのフィルムを、熱風乾燥機で120℃、5分間熱処理した後、縦4cm×横0.5cmのフィルムサンプルを作成した。そして、サンプル厚みをマイクロメーターで測定後、動的粘弾性測定装置(DVEレオスペクトラー、(株)レオロジー社製)を用いて、周波数11Hz、昇温速度3℃/分での条件で20℃および100℃におけるサンプルの動的粘弾性率を測定し、貯蔵弾性率を算出した。なお、2種の高分子弾性体を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作成し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性体の弾性率の値とした。
高分子弾性材料の水性液を50℃で乾燥して得られた厚さ250μm±50μmのフィルムを、熱風乾燥機で120℃、5分間熱処理した後、縦4cm×横0.5cmのフィルムサンプルを作成した。そして、サンプル厚みをマイクロメーターで測定後、動的粘弾性測定装置(DVEレオスペクトラー、(株)レオロジー社製)を用いて、周波数11Hz、昇温速度3℃/分での条件で20℃および100℃におけるサンプルの動的粘弾性率を測定し、貯蔵弾性率を算出した。なお、2種の高分子弾性体を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作成し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性体の弾性率の値とした。
<平均孔径、及び10μm四方に存在する孔の個数>
得られた皮革様シートをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色し、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに選択した10箇所それぞれについて1500倍で観察し、画像を撮影した。そして、各画像の高分子弾性体に該当する部分の10μm四方において、全ての孔の径を測定し、その平均値を求めた。また、10μm四方における0.2〜10μmの孔の個数も求めた。なお、10箇所それぞれの画像において同様に求め、それら測定値の平均を平均孔数、平均孔径とした。
得られた皮革様シートをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色し、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに選択した10箇所それぞれについて1500倍で観察し、画像を撮影した。そして、各画像の高分子弾性体に該当する部分の10μm四方において、全ての孔の径を測定し、その平均値を求めた。また、10μm四方における0.2〜10μmの孔の個数も求めた。なお、10箇所それぞれの画像において同様に求め、それら測定値の平均を平均孔数、平均孔径とした。
<高分子弾性体内部の空隙と高分子弾性体の面積比率>
まず、皮革様シートをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色し、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに選択した10箇所それぞれについて1500倍で観察し、画像を撮影した。そして、その画像において、高分子弾性体の10μm四方に該当する部分における孔(空隙)の面積と孔以外の部分の面積を求め、空隙の面積と高分子弾性体の面積の比率を求めた。各箇所について、同様に比率を求め、その平均値を面積比率とした。
まず、皮革様シートをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色し、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに選択した10箇所それぞれについて1500倍で観察し、画像を撮影した。そして、その画像において、高分子弾性体の10μm四方に該当する部分における孔(空隙)の面積と孔以外の部分の面積を求め、空隙の面積と高分子弾性体の面積の比率を求めた。各箇所について、同様に比率を求め、その平均値を面積比率とした。
<高分子弾性体の連通孔、固化形態の観察>
高分子弾性体の平均孔径及びその孔の個数は、得られた皮革様シートをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色し、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに選択した10箇所について1500倍で観察し、その画像を撮影した。そして、孔の連続性、高分子弾性体の固体状態を観察した。
高分子弾性体の平均孔径及びその孔の個数は、得られた皮革様シートをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色し、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)でランダムに選択した10箇所について1500倍で観察し、その画像を撮影した。そして、孔の連続性、高分子弾性体の固体状態を観察した。
<風合い判定>
皮革様シートを約20cm角程度に切り出した試験片を評価用試料とした。人工皮革の取り扱いに従事する5人のパネリストが、試験片の風合いを触って以下の基準で評価し、最も多くのパネリストが付けた評価を風合いの評価結果とした。
A:一般的な風合いであるBに比べて、相対的に非常に良好な充実感がありながら柔らかさも兼ね備えている理想的な風合い
B:スポーツ靴のアッパー用素材として広く用いられている人工皮革の一般的な風合いC:スポーツ靴用途には硬すぎる、あるいは紙っぽく使用困難な風合い
皮革様シートを約20cm角程度に切り出した試験片を評価用試料とした。人工皮革の取り扱いに従事する5人のパネリストが、試験片の風合いを触って以下の基準で評価し、最も多くのパネリストが付けた評価を風合いの評価結果とした。
A:一般的な風合いであるBに比べて、相対的に非常に良好な充実感がありながら柔らかさも兼ね備えている理想的な風合い
B:スポーツ靴のアッパー用素材として広く用いられている人工皮革の一般的な風合いC:スポーツ靴用途には硬すぎる、あるいは紙っぽく使用困難な風合い
<スエード調人工皮革の表面の外観評価>
人工皮革の取り扱いに従事する5人のパネリストが、スエード調人工皮革の外観を目視することにより以下の基準で評価し、最も多くのパネリストが付けた評価を外観の評価結果とした。
A:立毛表面の緻密性が全体的に極めて高く、手で触ったときにざらつきが全く無くて滑らかである。
B:立毛表面の緻密性が全体的に僅かに粗いか、又は、全体的に比較的高いものの部分的に緻密性が明らかに低くて粗い部分が散在し、手で触ったときにややざらつきがある。
C:全体的に粗い立毛表面であり、手で触ったときにかなりのざらつきがある。
人工皮革の取り扱いに従事する5人のパネリストが、スエード調人工皮革の外観を目視することにより以下の基準で評価し、最も多くのパネリストが付けた評価を外観の評価結果とした。
A:立毛表面の緻密性が全体的に極めて高く、手で触ったときにざらつきが全く無くて滑らかである。
B:立毛表面の緻密性が全体的に僅かに粗いか、又は、全体的に比較的高いものの部分的に緻密性が明らかに低くて粗い部分が散在し、手で触ったときにややざらつきがある。
C:全体的に粗い立毛表面であり、手で触ったときにかなりのざらつきがある。
<銀面調人工皮革の折れ皺>
約20cm角程度に切り出した試験片を評価用試料とした。評価用試料を縦方向に上端と下端を合わせるように表面を谷折りしたときに発生する折れ皺の形状を目視により観察した。そして、以下の基準により判定した。
A:牛皮革と同様の折りこんだ表面に緻密で、均質な折れシワが発生した。
B:折りこんだ表面にスポーツ靴のアッパー用素材にしばしば観察される一般的な折れシワ、或いは部分的に緻密な折れシワが発生した。
C:折りこんだ表面にダンボールを折り込んだような荒い折れシワが発生した。
約20cm角程度に切り出した試験片を評価用試料とした。評価用試料を縦方向に上端と下端を合わせるように表面を谷折りしたときに発生する折れ皺の形状を目視により観察した。そして、以下の基準により判定した。
A:牛皮革と同様の折りこんだ表面に緻密で、均質な折れシワが発生した。
B:折りこんだ表面にスポーツ靴のアッパー用素材にしばしば観察される一般的な折れシワ、或いは部分的に緻密な折れシワが発生した。
C:折りこんだ表面にダンボールを折り込んだような荒い折れシワが発生した。
[実施例1]
変性PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(島成分)とを、海成分/島成分の質量比が25/75となるように、260℃に設定した溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。そして、紡糸速度が3800m/minとなるようにエジェクター圧力を調整することにより平均繊度2.5dtexの海島型複合繊維をネット上に堆積させ、目付27g/m2のスパンボンドシートを得た。
変性PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(島成分)とを、海成分/島成分の質量比が25/75となるように、260℃に設定した溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。そして、紡糸速度が3800m/minとなるようにエジェクター圧力を調整することにより平均繊度2.5dtexの海島型複合繊維をネット上に堆積させ、目付27g/m2のスパンボンドシートを得た。
次に、得られたスパンボンドシートを12枚重ね、クロスラッピングにより総目付が325g/m2のウェブを作製した。そして、ウェブに針折れ防止油剤として鉱物油系油剤をスプレーした。
そして、ベッドプレートパンチング装置を用いてニードル番手40番のニードル針(バーブ数9個、キックアップ深さ80μm)を用いて、1500パンチ/cm2でニードルパンチ処理した。その後、さらに、ニードル番手42番(バーブ数6個、キックアップ深さ40μm)のニードル針を用いて1000パンチ/cm2でニードルパンチ処理して海島型複合繊維の長繊維からなる不織布を得た。なお、ニードルパンチ処理によるウェブの面積収縮率は30%であった。ニードルパンチ後の絡合シートの目付は450g/m2、絡合シートの層間剥離強力は10kg/2.5cmであった。
次に、得られた絡合シートを90℃、60%RH雰囲気で30秒間処理することにより湿熱収縮処理した後、120℃で熱プレス処理を行って厚みを15%低下させて収縮ウェブを作成した。収縮ウェブの面積収縮率は44%であり、プレス後の収縮ウェブは、目付850g/m2、厚み1.5mm、見掛け密度0.61g/cm3であった。
そして、ベッドプレートパンチング装置を用いてニードル番手40番のニードル針(バーブ数9個、キックアップ深さ80μm)を用いて、1500パンチ/cm2でニードルパンチ処理した。その後、さらに、ニードル番手42番(バーブ数6個、キックアップ深さ40μm)のニードル針を用いて1000パンチ/cm2でニードルパンチ処理して海島型複合繊維の長繊維からなる不織布を得た。なお、ニードルパンチ処理によるウェブの面積収縮率は30%であった。ニードルパンチ後の絡合シートの目付は450g/m2、絡合シートの層間剥離強力は10kg/2.5cmであった。
次に、得られた絡合シートを90℃、60%RH雰囲気で30秒間処理することにより湿熱収縮処理した後、120℃で熱プレス処理を行って厚みを15%低下させて収縮ウェブを作成した。収縮ウェブの面積収縮率は44%であり、プレス後の収縮ウェブは、目付850g/m2、厚み1.5mm、見掛け密度0.61g/cm3であった。
次に、高分子弾性材料としてのアニオン基で自己乳化された自己乳化型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(90℃熱水での面積膨張率−4.0%、20℃貯蔵弾性率200MPa、100℃貯蔵弾性率50MPa、損失弾性率のピーク温度−24℃)のの固形分15%水性分散体100部に対して、硫酸アンモニウム1部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール5部、ヒドロキシアルキルセルロース系増粘剤0.2部を混合した含浸液を作成した。その含浸液に収縮ウェブを浸漬し、次いで90℃、50%RH雰囲気で30秒間熱処理して、感熱ゲル化した後、140℃で乾燥した。そして、その処理後の収縮ウェブをさらに95℃の熱水中に10分間浸漬して変性PVAを溶解除去し、その後、120℃で乾燥することにより皮革様シートを得た。
皮革様シートは、極細長繊維の平均単繊維繊度が0.1dtexであり、目付600g/m2、厚み1.15mm、見掛け密度0.52g/cm3であった。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体に形成された孔の平均孔径は3.0μmであって、その数は高分子弾性体10μm四方あたり15個、高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体は、40:60であった。また、孔径が10μmより大きい孔は観察されなかった。
また、繊維絡合体と高分子弾性体との質量比は90:10であった。そして、得られた皮革様シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
また、繊維絡合体と高分子弾性体との質量比は90:10であった。そして、得られた皮革様シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
上記で得られた皮革様シートの表面を#320でバフィング処理し、さらに、2%owfの分散染料によりグレー色に染色した。そして、さらに、表面を仕上げバフィング処理することにより起毛することによりスエード調皮革様シートを得た。なお、染色時における繊維の素抜けやほつれ、及び、バフィング時における繊維の抜け等は殆どなかった。
スエード調皮革様シートは、目付530g/m2、厚み1.05mm、見掛け密度0.50g/cm3であり、柔軟性、充実感、表面毛羽感や緻密な折れ皺状態は良好であった。得られたスエード調皮革様シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
スエード調皮革様シートは、目付530g/m2、厚み1.05mm、見掛け密度0.50g/cm3であり、柔軟性、充実感、表面毛羽感や緻密な折れ皺状態は良好であった。得られたスエード調皮革様シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
離型紙上に表皮層用水性ポリウレタンをコートして乾燥することにより厚み30μmの銀面層を形成し、さらに、銀面層表面に接着層用水性ポリウレタンをコートして乾燥することにより厚み70μmの接着層を形成した。そして、上記で得られた皮革様シートの表面に、接着層とバフィング処理した表面をドライラミネートすることにより乾式造面処理を行った。そして離形紙を剥離することにより銀面調人工皮革の皮革様シートを得た。銀面調人工皮革は、目付630g/m2、厚み1.13mm、見掛け密度0.56g/cm3であった。また、柔軟性、折れ皺感が良好で、丸みのあるボリュウム感を有していた。得られた銀面調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1の変性PVA(島成分)と変性度6モル%のナイロン6(海成分)とを、海成分/島成分の質量比が50/50となるように、260℃に設定した溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。そして、紡糸速度が3800m/minとなるようにエジェクター圧力を調整することにより平均繊度2.5dtexの中空型複合繊維を得た。
そして、湿熱収縮処理を行わず、高分子弾性材料としてのアニオン基で自己乳化された自己乳化型ポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率−8%、20℃貯蔵弾性率450MPa、100℃貯蔵弾性率100MPa、損失弾性率のピーク温度−23℃)の固形分12%水性分散体100部に対して、硫酸アンモニウム1.5部、ポリオキシエチレングリセリン5部、ヒドロキシアルキルセルロース系増粘剤0.2部を混合した含浸液を、収縮ウェブへ浸漬処理したことを除き、実施例1と同様の処理を行った。
得られた皮革様シートは、極細長繊維の平均単繊維繊度が1.0dtexであり、目付330g/m2、厚み1.10mm、見掛け密度0.30g/cm3であった。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の平均孔径は5.0μmであって、その数は高分子弾性体10μm四方に2個、高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体は、65:35であった。また、孔径が10μmより大きい孔は観察されなかった。
また、繊維絡合体と高分子弾性体との質量比は78:22であった。そして、得られた皮革様シートを上記評価方法に従って評価した。また、実施例1と同様の方法で銀付調人工皮革を得て、同様に評価した。その結果を表1に示す。
実施例1の変性PVA(島成分)と変性度6モル%のナイロン6(海成分)とを、海成分/島成分の質量比が50/50となるように、260℃に設定した溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。そして、紡糸速度が3800m/minとなるようにエジェクター圧力を調整することにより平均繊度2.5dtexの中空型複合繊維を得た。
そして、湿熱収縮処理を行わず、高分子弾性材料としてのアニオン基で自己乳化された自己乳化型ポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率−8%、20℃貯蔵弾性率450MPa、100℃貯蔵弾性率100MPa、損失弾性率のピーク温度−23℃)の固形分12%水性分散体100部に対して、硫酸アンモニウム1.5部、ポリオキシエチレングリセリン5部、ヒドロキシアルキルセルロース系増粘剤0.2部を混合した含浸液を、収縮ウェブへ浸漬処理したことを除き、実施例1と同様の処理を行った。
得られた皮革様シートは、極細長繊維の平均単繊維繊度が1.0dtexであり、目付330g/m2、厚み1.10mm、見掛け密度0.30g/cm3であった。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の平均孔径は5.0μmであって、その数は高分子弾性体10μm四方に2個、高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体は、65:35であった。また、孔径が10μmより大きい孔は観察されなかった。
また、繊維絡合体と高分子弾性体との質量比は78:22であった。そして、得られた皮革様シートを上記評価方法に従って評価した。また、実施例1と同様の方法で銀付調人工皮革を得て、同様に評価した。その結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の水性ポリウレタンに代えて、ポリエチレングリコールで自己乳化した水性ポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率−12%、20℃貯蔵弾性率200MPa、100℃貯蔵弾性率20MPa、損失弾性率のピーク温度−28℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により皮革様シート、スエード調人工皮革を得た。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の孔は観察できなかった。得られたスエード調人工皮革は、目付450g/m2、厚み0.90mm、見掛け密度0.50g/cm3であり、海成分抽出工程の縦伸びが大きく、また、厚み低下も大きかった。そして、得られた皮革様シート、スエード調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、結果を表2に示す。なお、スエード調人工皮革は硬く紙っぽい風合いであった。
実施例1の水性ポリウレタンに代えて、ポリエチレングリコールで自己乳化した水性ポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率−12%、20℃貯蔵弾性率200MPa、100℃貯蔵弾性率20MPa、損失弾性率のピーク温度−28℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により皮革様シート、スエード調人工皮革を得た。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の孔は観察できなかった。得られたスエード調人工皮革は、目付450g/m2、厚み0.90mm、見掛け密度0.50g/cm3であり、海成分抽出工程の縦伸びが大きく、また、厚み低下も大きかった。そして、得られた皮革様シート、スエード調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、結果を表2に示す。なお、スエード調人工皮革は硬く紙っぽい風合いであった。
[比較例2]
実施例1の水性ポリウレタンに代えて、アニオン性基で自己乳化したポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率−9%、20℃貯蔵弾性率80MPa、100℃貯蔵弾性率8MPa、損失弾性率のピーク温度−26℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により皮革様シート、スエード調人工皮革を得た。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の孔は観察できなかった。得られたスエード調人工皮革は、目付470g/m2、厚み0.92mm、見掛け密度0.51g/cm3であり、海成分抽出工程の縦伸びが大きく、また、厚み低下も大きかった。そして、得られた皮革様シート、スエード調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、結果を表2に示す。なお、スエード調人工皮革は硬く紙っぽい風合いであった。
実施例1の水性ポリウレタンに代えて、アニオン性基で自己乳化したポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率−9%、20℃貯蔵弾性率80MPa、100℃貯蔵弾性率8MPa、損失弾性率のピーク温度−26℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により皮革様シート、スエード調人工皮革を得た。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の孔は観察できなかった。得られたスエード調人工皮革は、目付470g/m2、厚み0.92mm、見掛け密度0.51g/cm3であり、海成分抽出工程の縦伸びが大きく、また、厚み低下も大きかった。そして、得られた皮革様シート、スエード調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、結果を表2に示す。なお、スエード調人工皮革は硬く紙っぽい風合いであった。
[比較例3]
実施例1の水性ポリウレタンに代えて、アニオン性基で自己乳化したポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率+2%、20℃貯蔵弾性率900MPa、100℃貯蔵弾性率550MPa、損失弾性率のピーク温度−10℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により皮革様シート、スエード調人工皮革を得た。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の孔の平均孔径は3.5μmであって、その数は高分子弾性体10μm四方に4個、高分子弾性体の空隙率は20%であったが、水性ポリウレタン粒子に起因する粒子が認められた。また、孔径が10μmより大きい孔は観察されなかった。
得られたスエード調人工皮革は、目付540g/m2、厚み1.00mm、見掛け密度0.54g/cm3であった。そして、得られた皮革様シート、スエード調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、その結果を表2に示す。なお、スエード調人工皮革は硬い風合いであった。
実施例1の水性ポリウレタンに代えて、アニオン性基で自己乳化したポリカーボネート系ポリウレタン(90℃熱水での面積膨張率+2%、20℃貯蔵弾性率900MPa、100℃貯蔵弾性率550MPa、損失弾性率のピーク温度−10℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により皮革様シート、スエード調人工皮革を得た。また、皮革様シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1500倍)で観察したところ、高分子弾性体の孔の平均孔径は3.5μmであって、その数は高分子弾性体10μm四方に4個、高分子弾性体の空隙率は20%であったが、水性ポリウレタン粒子に起因する粒子が認められた。また、孔径が10μmより大きい孔は観察されなかった。
得られたスエード調人工皮革は、目付540g/m2、厚み1.00mm、見掛け密度0.54g/cm3であった。そして、得られた皮革様シート、スエード調人工皮革を上記評価方法に従って評価し、その結果を表2に示す。なお、スエード調人工皮革は硬い風合いであった。
本発明によれば、天然皮革のような柔軟性、表面外観、充実感を有する皮革様シートが得られる。本皮革様シートを用いた人工皮革は、靴、ボール類、家具、乗物用座席、衣料、手袋、野球用グローブ、鞄、ベルト、バッグなどの皮革様製品の素材として好ましく用いられる。
Claims (11)
- 平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される繊維絡合体と、その内部に含有される高分子弾性体からなる皮革様シートであって、前記繊維絡合体が極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方を有し、前記高分子弾性体が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含む高分子弾性材料を固化したものであって、前記高分子弾性材料は、90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シート。
- 前記皮革様シートの断面において、高分子弾性体内部の空隙:高分子弾性体が10:90〜80:20である請求項1に記載の皮革様シート。
- 前記高分子弾性体内部の多孔構造の孔が連通孔である請求項1又は2に記載の皮革様シート。
- 前記高分子弾性体が、前記高分子弾性材料の水性液を前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものであり、
前記水性液における自己乳化型水性ポリウレタン樹脂の平均粒径が0.03〜0.3μmであるとともに、前記固化された高分子弾性体は、前記自己乳化型水性ポリウレタン樹脂に相当する粒子が残存せずに造膜固化されている請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート。 - 前記高分子弾性材料が、有機酸アンモニウム塩、或いは無機酸アンモニウム塩により、感熱ゲル化性を有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の皮革様シート。
- 前記高分子弾性体が、ノニオン系ポリオキシアルキレン化合物がさらに混合された前記高分子弾性材料を、前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の皮革様シート。
- 前記高分子弾性体が、増粘多糖類が混合された前記高分子弾性材料を前記繊維絡合体に含浸させ固化されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の皮革様シート。
- 皮革様シートの表面に、1〜300μmの厚みを有する銀面調樹脂層をさらに有する請求項1〜7のいずれかに記載の皮革様シート。
- 皮革様シートの表面に存在する前記繊維が立毛処理されている請求項1〜7のいずれかに記載の皮革様シート。
- 前記極細繊維束及び中空繊維の少なくとも一方が、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維のうち水溶性熱可塑性樹脂が溶解されて形成されたものである請求項1〜9のいずれかに記載の皮革様シート。
- 水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とから構成される複合繊維を含む絡合シートに対して、前記水溶性熱可塑性樹脂を溶解する処理を行い、平均単繊維繊度が0.001〜10dtexである繊維から構成される極細繊維束及び中空繊維のうち少なくとも一方を有する繊維絡合体を形成する工程と、
前記繊維絡合体又は絡合シートに高分子弾性材料の水性液を含浸及び乾燥固化させる工程とを含み、
前記高分子弾性材料が、アニオン性基で自己乳化される自己乳化型水性ポリウレタン樹脂を含み、かつ90℃熱水処理における面積変化率が10%以下、20℃及び100℃における貯蔵弾性率が10〜500MPaであるとともに、
前記高分子弾性材料を固化させて得たものであり、かつ前記繊維絡合体に含有される高分子弾性体が0.2〜10μmの孔を10μm四方あたり1個以上有している皮革様シートの製造方法。
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