JP2014139361A - 複合基材シート及び複合基材シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】調湿調温された雰囲気で水系エマルジョンのゲル化処理を経る凝固法を用いて複合基材シートを製造する場合において、空隙の発生を抑制することができる、複合基材シートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)海成分がPVAであり、島成分が熱収縮性ポリマーである海島型繊維の繊維ウェブを形成する工程と、(b)繊維ウェブを絡合処理することにより不織布を得る工程と、(c)不織布を湿熱収縮処理することにより緻密化不織布を得る工程と、(d)緻密化不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させる工程と、(e)緻密化不織布に含浸させた水系エマルジョンを所定の条件に制御された調湿調温された雰囲気で加熱することによりゲル化させた後、凝固させる工程と、(f)工程(e)の後、緻密化不織布中を形成する海島型繊維から海成分を熱水抽出除去する工程と、を備える複合基材シートの製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、極細繊維束の絡合体である不織布と、該不織布に含浸された高分子弾性体とを含む、複合基材シート及びその製造方法に関する。より詳しくは、均質性の高い緻密さを有する複合基材シートおよびその製造方法に関する。
不織布に高分子弾性体を複合化させた複合基材シートは、人工皮革用基材や研磨パッド用基材として好ましく用いられている。このような複合基材シートとして、極細繊維の繊維束の絡合体と該絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートが知られている。このような複合基材シートは、例えば、次のような工程で製造される。はじめに、それぞれ海成分と島成分とを形成するための互いに溶解性を異にする2種の重合体からなる、海島型繊維のウェブを形成し、ウェブの海島型繊維をニードルパンチ等により互いに絡ませてその繊維絡合体を形成する。そして、海島型繊維の絡合体を湿熱収縮させる。そして、湿熱収縮させた繊維絡合体にポリウレタンなどの高分子弾性体を繊維絡合体に含浸付与する。そして、繊維絡合体を形成する海島型繊維の海成分を除去することにより極細繊維の繊維束を形成させて、複合基材シートを得る。
複合基材シートの製造工程において、繊維絡合体に高分子弾性体を含浸付与させる方法としては、以下のような方法が知られていた。
高分子弾性体の液を含浸させた繊維絡合体を高分子弾性体を凝固させる凝固液に浸漬させて、高分子弾性体を凝固させるような湿式凝固法が知られている。具体的には、例えば、下記特許文献1の段落[0023]は、繊維絡合体に浸透させたポリウレタン溶液を液温40℃の25%ジメチルホルムアミド(DMF)水溶液で凝固させるような方法を開示する。また、例えば、下記特許文献2の段落[0026]は、繊維絡合体をポリウレタンのDMF溶液中に浸漬した後、所定の水溶液中でポリウレタンを凝固させる方法を開示する。
また、高分子弾性体の液を含浸させた繊維絡合体をヒーター等の加熱装置で加熱することにより、繊維絡合体中で高分子弾性体を凝固させる乾式凝固法も知られている。
また、繊維絡合体に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させた後、スチームで高分子弾性体を凝固させる、スチームによる凝固法も知られている。例えば、下記特許文献3は、(A)分子内にカルボキシル基とノニオン性親水基を含有する水系ウレタン樹脂、及び/又は分子内にカルボキシル基を含有するウレタン樹脂をノニオン性乳化剤で強制分散してなる水系ウレタン樹脂、(B)無機塩、(C)曇点を持つノニオン性界面活性剤から成る水系樹脂組成物を、繊維絡合体に含浸又は塗布し、スチームで感熱凝固させる方法を開示する。そして、その段落[0046]は、スチームの湿度は100%に近づくほど、表面からの乾燥が抑えられ、好ましくは通常の飽和蒸気(0〜0.6MPa)処理及び160〜190℃の過熱蒸気処理を含むようなスチームで処理することが好ましいことを開示する。
また、繊維絡合体に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させた後、調湿温風雰囲気下で処理した後、必要に応じて加熱すること等により凝固させる調湿温風を用いた凝固法も知られている。例えば、下記特許文献4の段落[0065]は、繊維絡合体に高分子弾性体の水分散液を含浸させた後、湿球温度70〜100℃の調湿温風雰囲気下で不織布表面温度60〜90℃の状態で、20〜300秒間処理することにより高分子弾性体を凝固させる方法を開示する。
特開2005−97763号公報 特開平05−078986号公報 特開平11−335975号公報 特開2011−58107号公報
上述したような複合基材シートの製造において、高分子弾性体を繊維絡合体に含浸付与させる従来の方法には、それぞれ以下のような欠点があった。
特許文献1や特許文献2に開示されたような、繊維絡合体に高分子弾性体の液を含浸させ、凝固液に浸漬させて高分子弾性体を凝固させるような湿式凝固法によれば、例えばポリウレタンのDMF溶液のような有機溶媒に溶解させた高分子弾性体を含有する液を用いる必要があり、また、使用後に凝固液の廃液が発生するために、環境に対する負荷が大きいという問題があった。
また、高分子弾性体の液を含浸させた繊維絡合体を赤外線ヒーター等の加熱装置で加熱することにより、繊維絡合体中で高分子弾性体を凝固させるような乾式凝固法によれば、湿式凝固させる場合のような環境に対する負荷が大きいという問題は解決される。しかしながら、乾式凝固法によれば、高分子弾性体の液を含浸させた繊維絡合体の表面から高温で加熱するために、水分が表面から急速に蒸発し、内層の水系エマルジョンが表層に移行(マイグレーション)し、その状態で乾燥が進行するために、高分子弾性体が内層よりも表層の方に著しく偏在し、得られる複合基材シートの厚み方向の特性が不均質になるという問題があった。
また、特許文献3に開示されたような、繊維絡合体に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させ、スチーム加熱することにより高分子弾性体を感熱凝固させる方法によれば、スチームの熱が内部まで行き届くとともに、100%近い湿度のスチームにより、表層からの急激な水分の蒸発が抑制されるために、水系エマルジョンのマイグレーションがある程度抑制される。しかし、このような方法によれば、処理されたシートが水分で著しく濡れてしまい、後の乾燥工程に時間が掛かるという問題があった。また、海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂であり島成分が熱収縮性ポリマーであるような海島型繊維の絡合体に高分子弾性体を付与する場合には、海島型繊維中の水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が結露した水分に溶解して溶け出すために、乾燥設備等を汚染するという問題もあった。
また、特許文献4に開示されたような、水系エマルジョンを含浸させた繊維絡合体を調湿温風で処理することにより、高分子弾性体を凝固させるような凝固法によれば、水系エマルジョンが感熱ゲル化する場合にはマイグレーションがある程度抑制され、また、処理されるシートが水分で濡れすぎて、乾燥工程に時間が掛かったり、海島型繊維中の水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が結露した水分に溶解して溶け出したりするという問題も抑制される。
しかしながら、調湿温風で処理する凝固法を用いて得られた複合基材シートの厚み方向の断面を観察した場合、中層に比較的大きな空隙が多数観察されることがあった。このような空隙は得られた複合基材シートの緻密性を不均質にするという問題があった。そして、このような複合基材シートをシート表面に平行な面で2分割または3分割するようにスライスして用いる場合、分割面に空隙が表出するために、表面の緻密さを充分に維持することができなかった。また、スライスせずに用いる場合には、厚み方向の緻密性が不均一であるために、特性の安定性に問題があった。
本発明は上述したような問題を解決し、特に、調湿調温された雰囲気で水系エマルジョンの感熱ゲル化処理を経る凝固法を用いて複合基材シートを製造する場合において、大きな空隙の発生を抑制することができる、複合基材シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である海島型繊維の絡合体に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させ、調湿調温された雰囲気で水系エマルジョンの感熱ゲル化処理を経る凝固法を用いて複合基材シートを製造した場合、調湿調温された雰囲気による感熱ゲル化処理の際に、海島型繊維中の海成分が水系エマルジョンの水に溶解し、そのときに島成分の拘束が解かれて、形成される極細繊維の束が分繊することに気付いた。そして、このような分繊により、以下のようなメカニズムで大きな空隙が発生すると考察した。
図2は、上述したような分繊の発生のメカニズムを模式的に説明する工程説明図である。図2中、1は、極細繊維を形成するための島成分1aと水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である海成分1bとを含む海島型繊維であり、2は高分子弾性体2aのエマルジョン粒子が水2bに分散された水系エマルジョンである。また、3は空隙である。海島型繊維1は緻密化された不織布を形成している。
図2(a)は、海島型繊維1から形成された緻密化不織布に、水系エマルジョン2を含浸させたときの様子を示し、緻密化不織布と水系エマルジョン2と、それらが存在しない部分である空隙3を含む。そして、水系エマルジョン2を含浸させた緻密化不織布に、調湿調温された雰囲気で感熱ゲル化処理を行う。調湿調温された雰囲気で感熱ゲル化処理を行うことにより、図2(b)に示すように、水系エマルジョン2が感熱ゲル化する。
このとき、調湿調温された雰囲気での処理により水系エマルジョン2の水2bの温度も上がり、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の溶解性や溶解速度が高まる。それにより、海島型繊維1の一部分(図中のA)の海成分1bが意図せずに水2bに溶解する。その結果、極細繊維を形成するための島成分1aは、海成分1bによる拘束から解放されて、極細繊維状に変化しやすくなって分繊する。そして、高分子弾性体2aは、密度が低く濡れ性の低い極細繊維の表面よりも、密度が高く濡れ性が高い水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が表出している分繊されていない海島型繊維1の表面により凝集し易くなる。その結果、分繊されていない海島型繊維1の周辺に高分子弾性体2aが偏在分布しやすくなる。
そして、調湿調温された雰囲気における処理による感熱ゲル化処理を経て、高分子弾性体2aを凝集させた後、加熱乾燥することにより水分を蒸発させるとともに、必要に応じて高分子弾性体を架橋させる。このような処理により、図2(c)に示すように、高分子弾性体2aが多く偏在する海島型繊維1が多い領域と、高分子弾性体2aがあまり存在していない、分繊、または分繊されつつある極細繊維1aを含む領域とが形成される。
そして、上記加熱乾燥後、海島型繊維1の海成分1bを熱水抽出除去した後、乾燥することにより、図2(d)に示すような構造が形成される。このとき、分繊、または分繊されつつあった極細繊維1aは、高分子弾性体2aで充分に拘束されておらず自由度が高いために、緻密化により内部に蓄積していたストレスを、熱水抽出除去とその後の乾燥の工程において緩和する。その結果、図2(b)中のAの領域に存在する分繊、または分繊されつつあった極細繊維1aは、集まりやすいところに集まるように変形する。そして、その結果、図2(d)に示すように、大きな空隙3が形成される。なお、この空隙の発生は、加熱乾燥によるマイグレーションを伴う水分蒸発過程で顕在化するために、水系エマルジョン2の移動量の多い中層においてより空隙が多く発生しやすくなると思われる。
本発明者らは、このような考察から、水系エマルジョンを調湿調温された雰囲気で感熱ゲル化させる工程において、海成分が意図せずに水系エマルジョンの水に溶解してしまうことを抑制することにより、分繊される繊維束を減らし、その結果、空隙の発生を抑制することができるのではないかと考え、本発明に想到するに至った。
すなわち本発明は、海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂であり、島成分が熱収縮性ポリマーである海島型繊維の繊維ウェブを形成する工程(a)と、繊維ウェブを絡合処理することにより不織布を得る工程(b)と、不織布を湿熱収縮処理することにより緻密化不織布を得る工程(c)と、緻密化不織布に、水に高分子弾性体を乳化分散させた水系エマルジョンを含浸させる工程(d)と、緻密化不織布に含浸させた水系エマルジョンを調湿調温された雰囲気で加熱することにより感熱ゲル化させる工程(e)と、工程(e)の後、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む緻密化不織布を加熱乾燥して高分子弾性体を凝固させる工程(f)と、工程(f)の後、緻密化不織布を形成する海島型繊維から海成分を熱水抽出除去する工程(g)と、を備え、調湿調温された雰囲気は、湿球温度68℃以下で、且つ、相対湿度10〜90RH%に制御された雰囲気である複合基材シートの製造方法である。
このような製造方法によれば、海成分を形成する水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の溶解性を考慮して、湿球温度68℃以下に調湿調温された雰囲気で、緻密化不織布に含浸させた水系エマルジョンを感熱ゲル化させた後、高分子弾性体を加熱乾燥させることにより、海島型繊維の構造を充分に維持させたまま、高分子弾性体を凝固させることができる。湿球温度が68℃を超える場合には、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の溶解速度や溶解性が高くなる。また、相対湿度が10〜90RH%になるような条件に制御することにより、水系エマルジョン中の水分の急速な蒸発を抑制してマイグレーションの発生を抑制できる。
このメカニズムを図1を参照して詳しく説明する。図1中の各符号は図2で示したものと同様である。図1(a)は、海島型繊維1から形成された緻密化不織布に、水系エマルジョン2を含浸させたときの様子を示し、図2(a)で示したものと同様の構造である。そして、水系エマルジョン2を含浸させた緻密化不織布を上述のように調湿調温された雰囲気で処理することにより、図1(b)に示すように、水系エマルジョン2がゲル化した後、高分子弾性体2aが凝集し始める。このとき、海島型繊維1の海成分1bが水系エマルジョン2の水2bに溶解しにくい場合には、海島型繊維1の極細繊維1aは分繊しない。また、水分の急速な蒸発を抑制するように相対湿度を10RH%以上になるように制御することによりマイグレーションの発生も抑制できる。その結果、高分子弾性体2aは偏在しにくくなる。そして、調湿調温された雰囲気で処理することにより水系エマルジョン2を感熱ゲル化させた後、加熱乾燥することにより、図1(c)に示すように海島型繊維1の表面に高分子弾性体2aが均等に付着するように凝集した構造が形成される。そして、海成分1bを熱水抽出除去した後、乾燥することにより、図1(d)に示すような構造が形成される。このとき、繊維束を形成する極細繊維1aの表面に、高分子弾性体2aが均等に分配されて極細繊維1aを拘束しているために、熱水抽出除去とその後の乾燥の工程においても、繊維束が分繊しにくい。そのために、極細繊維の緻密さに差が出にくくなり、極細繊維が疎な部分である大きな空隙の発生が抑制されると考えられる。
また、調湿調温された雰囲気は、乾球温度125℃以下に制御されていることが好ましい。このような条件の場合には、表面からの水分の蒸発が抑制されてマイグレーションがとくに充分に抑制される。
また、水系エマルジョンは、調湿調温された雰囲気中に1分間放置されたときに、その粘度がその放置前の粘度に比べて50倍以上上昇するようなものであることが好ましい。このような水系エマルジョンを用いた場合には、調湿調温処理されたときに、緻密化不織布中で速やかに感熱ゲル化するために、高分子弾性体のマイグレーションを充分に抑制することができる。このような水系エマルジョンは、例えば、感熱ゲル化剤を配合することにより得ることができる。
また、調湿調温された雰囲気の湿球温度は55℃以上であることが水系エマルジョンの感熱ゲル化性を制御しやすい点から好ましい。調湿調温された雰囲気の湿球温度が低すぎる温度で容易にゲル化するような水系エマルジョンを用いた場合には、水系エマルジョンの安定性を維持するための管理が煩雑になる。調湿調温された雰囲気の湿球温度が55℃以上でゲル化するような水系エマルジョンを用いることにより、水系エマルジョンの保存が容易になる。
また、工程(d)において、緻密化不織布に含浸される水の量が該緻密化不織布の重量に対して55質量%以下の割合になるように該水系エマルジョンを含浸することが、内層に偏在する大きな空隙の発生がより抑制される点から好ましい。緻密化不織布に含浸される水の割合が低い場合には、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂を溶解させる水の量が少なくなるために水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の溶解が抑制され、その結果、海島型繊維の構造が充分に維持されて内層に偏在する大きな空隙の発生が抑制されると思われる。
また、工程(f)における加熱乾燥において、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む緻密化不織布の厚み方向の中心部の温度を、初期温度〜100℃の温度域が0.8℃/分以下の速さで昇温させるような加熱条件で加熱することが好ましい。工程(f)における加熱乾燥としては生産性を向上させるためには、水を速く蒸発させることが好ましい。しかしながら、本発明者らの種々の実験による結果、水を蒸発させるための加熱する速度を初期温度〜100℃の温度域が0.8℃/分以下のようにゆっくりと昇温させた場合には、内層に偏在する大きな空隙の発生がとくに抑制され、均質な複合基材シートが得られることが見出された。
また、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂は、厚み30μmのフィルムを90℃の水に溶解させたときの溶解時間が1〜60秒であることが、上記(e)工程における感熱ゲル化の際に、水系エマルジョン中の水分に溶解しにくく、一方で、上記工程(g)における熱水抽出性には優れる点から好ましい。
また、本発明は、平均繊維径6μm以下の極細繊維の繊維束の絡合体である不織布と該不織布に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートであって、厚み方向に平行な垂直断面の電子顕微鏡写真において、複数の空隙が観察され、各空隙と同一の面積を有する仮想円を想定し、その仮想円の直径が100μm以上になるような空隙の単位面積当たりの総面積を算出した場合、垂直断面を均一な厚みで3分割して形成された層を、それぞれ第一表層、中層、及び第二表層としたとき、中層における空隙の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて0.8〜1.3倍である複合基材シートである。このような複合基材シートは、厚み方向において均質度が高い基材であるために、例えば、シート表面に平行な面で2分割または3分割するようにスライスして用いる場合、分割面に空隙が表出せず、表面の緻密さを充分に維持することができる。また、スライスせずに人工皮革用基材等として用いた場合には、厚み方向の特性が均質であるために、優れた風合いの人工皮革が得られる。
本発明によれば、極細繊維の繊維束の絡合体である不織布と高分子弾性体とを含有する基材であって、中層部に大きな空隙が少ない均質性の高い複合基材が得られる。
図1は、本発明における複合基材シートの製造方法により、大きな空隙が生じにくい理由のメカニズムを模式的に説明する模式説明図である。 図2は、従来の複合基材シートの製造方法により、大きな空隙が生じやすくなる理由のメカニズムを模式的に説明する模式説明図である。 図3は、実施例1で得られた複合基材シートの厚み方向に平行な断面のSEM写真を示す。 図4は、比較例1で得られた複合基材シートの厚み方向に平行な断面のSEM写真を示す。 図5は、実施例6〜14の加熱乾燥の昇温カーブを示す。
以下、本発明に係る複合基材シートの製造方法の一実施形態について、詳しく説明する。本実施形態の複合基材シートの製造方法は、例えば、以下の(a)〜(g)の工程を順次行うことにより実施できる。
〈工程(a)〉
本工程は、海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂であり、島成分が熱収縮性ポリマーである海島型繊維の繊維ウェブを形成する工程である。
本工程においては、はじめに、海成分として水溶性ポリビニルアルコール系樹脂を用い、島成分として熱収縮性ポリマーを用い、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂と熱収縮性ポリマーとを複合紡糸用口金から押出し、海島型繊維を溶融紡糸する。
本実施形態における海島型繊維とは、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂を海成分とし、熱収縮性ポリマーを島成分とする、少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維であり、繊維断面において繊維外周部を主として構成する海成分中に、これとは異なる種類の島成分が分布した断面形態の繊維である。このような海島型繊維は、海成分を選択的に抽出除去することにより、島成分から形成される極細繊維の繊維束を生成できる繊維である。
このような海島型繊維は、従来公知のチップブレンド(混合紡糸)方式や複合紡糸方式で代表される多成分系複合繊維の紡糸方法を用いて形成することができる。
島成分を形成する熱収縮ポリマーとは、後述する湿熱収縮処理により収縮して緻密化するポリマーである。その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂またはその変性物;熱収縮性ポリアミド系樹脂またはその変性物;熱収縮性ポリオレフィン系樹脂またはその変性物等が挙げられる。これらの中では、融点(Tm)が160℃以上、さらには180〜330℃の結晶性樹脂が特に好ましく、具体的には、例えば、PET、PTT、PBT、あるいは変性PETのようなこれらの変性物が、熱収縮しやすく、また、物性のバランスにも優れる点から特に好ましい。熱収縮ポリマーは、着色剤,難燃剤,紫外線吸収剤,熱安定剤,消臭剤,防かび剤,抗菌剤,その他の各種安定剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
一方、海成分は、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVAとも称する)から形成される。PVAは、熱水により容易に抽出除去できる点から、環境に対する負荷が小さい。
PVAは、ビニルエステル単位を主構成単位として有するポリマーをケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらの中ではPVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
PVAは、主構成単位であるビニルエステル単位のみからなるホモPVAであっても、溶融紡糸性や水溶性を調整するためにビニルエステル単位以外の共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、変性PVAを用いることがとくに好ましい。ビニルエステル単位以外の共重合単量体の具体例としては、例えば、エチレン,プロピレン,1−ブテン,イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル,エチルビニルエーテル,n−プロピルビニルエーテル,イソプロピルビニルエーテル,n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
PVA中のビニルエステル単位以外の共重合単位の含有割合としては、1〜20モル%、さらには4〜15モル%、とくには6〜13モル%であることが好ましい。なお、変性PVAとしては、溶融紡糸性や水溶性に優れる点からエチレン変性PVAが特に好ましい。エチレン変性PVA中に含有されるエチレン単位の含有割合としては、4〜15モル%、さらには6〜13モル%であることが好ましい。
また、PVAのケン化度としては、90〜99.99モル%、さらには93〜99.77モル%、とくには95〜99.55モル%、ことには97〜99.33モル%が好ましい。ケン化度が低すぎる場合には、熱安定性が低下して溶融紡糸性が低下する傾向があり、ケン化度が高すぎる場合にはPVAの生産性が低下する傾向がある。
PVAの粘度平均重合度としては、200〜500、さらには250〜470、とくには300〜450であることが好ましい。重合度が低すぎる場合には、熱水による溶解速度が高くなりすぎる傾向があり、また、重合度が高すぎる場合には、熱水による溶解速度が低くなりすぎる傾向がある。なお、PVAの重合度は、JIS−K6726に準じて次式により求められる。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
(Pは粘度平均重合度、[η]はPVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度である。)
PVAの融点(Tm)は熱水に対する溶解性の点から、170〜230℃、さらには、175〜225℃、とくには180〜220℃であることが好ましい。Tmが低すぎる場合には熱水による溶解速度が高くなりすぎる傾向がある。また、Tmが高すぎる場合には熱水による溶解速度が低くなりすぎる傾向がある。
本実施形態の製造方法で用いられるPVAは、特には、厚み30μmのフィルムを90℃の水に溶解させたときの溶解時間が1〜60秒であり、さらには5〜30秒、とくには10〜20秒であるようなPVAを用いることが好ましい。このようなPVAは、後述する感熱ゲル化工程においては、水系エマルジョン中の水分に溶解しにくく、一方で、海成分を熱水抽出除去する工程においては熱水中に容易に溶解される。なお、PVAの溶解性は上述したような重合度やケン化度を組み合わせて調整することにより適宜調整できる。
なお、溶解時間は、例えば、次のようにして測定される。海成分として用いるPVAをキャスト法によりフィルム化して厚み30μmのフィルムを得る。そして、切り出されたサンプルを20℃−45%RHに調整した恒温恒湿器に24時間置いて調湿する。そして、調湿したフィルムから、3mm×3mmの正方形のサンプルを切り出す。そして、サンプルを所定の治具に固定し、200mlのビーカーに100mlの90℃の水を入れ、回転数120rpmで3cm長のバーを備えたマグネティックスターラーで攪拌する。そして、水に浸漬してから、サンプル片が完全に消失するまでの時間を溶解時間とする。
海島型繊維中に占める海成分の割合は、繊維断面における面積比率で5〜60%、さらには10〜50%であることが好ましい。海島型繊維中の海成分の割合が低すぎる場合には、製造工程において島成分に対する拘束力が低下して島成分が分繊しやすくなる傾向がある。また、海成分の割合が高すぎる場合には、海島型繊維を湿熱収縮させたときの収縮による繊維の緻密性が不足する傾向がある。
海島型繊維の溶融紡糸は、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂と熱収縮性ポリマーとを、海島型繊維を溶融紡糸できる複合紡糸用口金から押出し、細化するような方法で行われる。
複合紡糸用口金は、例えば、海成分中に島成分が分散したような断面を形成することができるようなノズル孔が配置された構造を有する。ノズル孔の数は特に限定されないが、10〜60個、さらには12〜45個であることが好ましい。そして、例えば、海成分及び島成分を溶融させて、口金温度180〜350℃程度の温度で口金から吐出し、吐出された溶融したストランドをエアジェット・ノズル等の吸引装置を用いて目的の繊度になるよう牽引細化する。高速気流は、例えば、通常の紡糸における機械的な引取り速度に相当する平均紡糸速度が1000〜6000m/分となるように作用させることが好ましい。
そして、このように溶融紡糸された海島型繊維を、カットすることなくコンベヤベルト状の移動式ネットなどの捕集面にネットの反対面側から吸引しながら堆積させてウェブ化するか、または、カットして短繊維にし、カード、クロスラッパー、ランダムウェッバーなどを用いてウェブ化することにより、例えば10〜1000g/m2の繊維ウェブを形成する。
海島型繊維は長繊維でも短繊維でもよいが、繊維抜けが起こりにくく、また収縮性に優れる点から長繊維であることが好ましい。長繊維は、短繊維(繊維長10〜50mm)のように意図的に切断されていない繊維であり、その繊維長は、100mm以上が好ましく、また、技術的に製造可能であって、かつ、物理的に切れない限りは、数m、数百m、数km、あるいはそれ以上の繊維長であってもよい。
海島型繊維の平均繊維径は特に限定されないが、5〜25μm、さらには10〜20μmであることが好ましい。また、極細繊維を形成する島成分の平均径も特に限定されないが、0.1〜6μm、さらには0.3〜4μmであることが好ましい。
このようにして得られた繊維ウェブは、必要に応じて形態安定性を付与するために、加熱プレス等により部分的に加熱圧着させてもよい。
本工程により得られる繊維ウェブには、例えば、厚さ方向に平行な断面において、海島型繊維が、10〜600個/mm2、さらには150〜500個/mm2の密度で存在することが好ましい。
〈工程(b)〉
本工程は、工程(a)で得られた繊維ウェブを絡合処理することにより、不織布を得る工程である。
本工程においては、例えば、所望の目付け、厚さになるように、得られた繊維ウェブをクロスラッパー等を用いて厚さ方向に複数層重ね合わせた後、ニードルを用いて両面から同時または交互にニードルパンチングして繊維同士を三次元絡合させる。
ニードルパンチングの条件は特に限定されないが、例えば、バーブの数としては1〜9個、パンチ数としては800〜4000パンチ/cm2、さらには1000〜3500パンチ/cm2等の条件が挙げられる。また、ニードルの少なくとも1つ以上のバーブが貫通するような条件で行うことが好ましい。
また、繊維ウェブにはその製造後から絡合処理までのいずれかの段階で、帯電防止効果を付与したり、ニードルとの摩擦抵抗をコントロールしたり、繊維同士の摩擦抵抗をコントロールしたりするために、界面活性剤や、鉱物系の油剤やポリシロキサン系の油剤等を付与してもよい。
本工程により得られる海島型繊維が絡合した不織布には、例えば、厚さ方向に平行な断面において、海島型繊維が、300〜2000個/mm2、さらには400〜1000個/mm2の密度で存在することが好ましい。
〈工程(c)〉
本工程は、工程(b)で得られた不織布を湿熱収縮処理させることにより、緻密化された不織布を得る工程である。
不織布を湿熱収縮処理させて、緻密化された不織布を得る方法としては、海成分が可塑化し、かつ島成分が収縮するような条件で湿熱収縮処理させて不織布を緻密化する方法が挙げられる。
湿熱収縮処理方法の具体例としては、例えば、飽和水蒸気を連続的に供給することにより、温度65〜100℃、相対湿度70〜100%のような条件に制御された雰囲気中に不織布を導入する方法や、不織布に水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波により不織布に付与した水を加熱する方法や、それらを組み合わせた方法などが挙げられる。
なお、湿熱収縮処理により緻密化された不織布をさらに緻密化するとともに、不織布の形態を固定化したり、表面を平滑化したりすること等を目的として、必要に応じて、さらに熱プレス処理を行ってもよい。
本工程により得られる緻密化された不織布には、例えば、厚さ方向に平行な断面において、海島型繊維が、900〜3500個/mm2、さらには900〜3000個/mm2、とくには900〜2500個/mm2の密度で存在することが好ましい。このようにして得られた緻密化された不織布の密度としては、例えば島成分がポリエチレンテレフタレートである場合、0.34〜0.85g/cm3、とくには0.45〜0.70g/cm3であることが好ましい。また、緻密化された不織布の目付としては、例えば、100〜2000g/m2であることが好ましい。
〈工程(d)〉
本工程は、工程(c)で得られた緻密化された不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させる工程である。
緻密化された不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸させる方法としては、例えば、緻密化された不織布に高分子弾性体の水系エマルジョンを含浸し、ロール・ニップ処理を行うような方法が挙げられる。
高分子弾性体の水系エマルジョンとしては、従来から人工皮革基材等の複合基材シートを製造する際に使用されているものが特に限定なく用いられうる。高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタンエラストマー,アクリルエラストマーやアクリロニトリルエラストマー等のアクリル系弾性体,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系弾性体,ポリエステルエラストマー等のポリエステル系弾性体,弾性ポリスチレン系樹脂,弾性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタンエラストマーが、柔軟性と充実感に優れる点からとくに好ましい。
ポリウレタンエラストマーの具体例としては、例えば、ポリエステルジオール,ポリエーテルジオール,ポリエーテルエステルジオール,ポリカーボネートジオール等のポリマーポリオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネート等のポリイソシアネートと、エチレングリコール,エチレンジアミン等の2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物とを、所定のモル比で1段階あるいは多段階の溶融重合法、塊状重合法、溶液重合法などにより重合反応させて得られるような各種ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
また、アクリルエラストマーの具体例としては、例えば、その単独重合体のガラス転移温度が−90〜−5℃の範囲である、アクリル酸メチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸n−ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどから選ばれた少なくとも1種類の軟質成分と、その単独重合体のガラス転移温度が50〜250℃の範囲である、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸イソプロピル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸シクロヘキシル,(メタ)アクリル酸などから選ばれた少なくとも1種類の硬質成分と、架橋構造を形成し得る、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の架橋性モノマーを重合反応させて得られる各種のアクリルエラストマーが挙げられる。
水系エマルジョン中の高分子弾性体の含有割合は特に限定されないが、エマルジョンの安定性と感熱ゲル化性とのバランスに優れている点から、5〜60質量%、さらには、10〜40質量%、とくには15〜25質量%であることが好ましい。水系エマルジョン中の高分子弾性体の含有割合が低すぎる場合には、エマルジョンが安定になりすぎてゲル化を起こしにくくなる傾向があり、また、相対的に水の量が多くなるために後述する水系エマルジョンを感熱ゲル化させる工程(e)において海成分であるPVAを溶解させやすくなる。一方、水系エマルジョン中の高分子弾性体の含有割合が高すぎる場合には、エマルジョンが不安定になりすぎて、意図せずに、ゲル化したり、高分子弾性体が凝集したりしやすくなる傾向がある。
乳化に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤等が挙げられる。また、反応性を有する、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。また、界面活性剤の曇点を適宜選ぶことにより、感熱ゲル化性を制御することもできる。
高分子弾性体の水系エマルジョンは、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱ゲル化剤、凝固調節剤、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシルメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物等を含有してもよい。特に、本発明においては、感熱によるゲル化性を調整するために、所定の感熱温度において、その構造が変化し、増粘やゲル化を促進する成分である、感熱ゲル化剤を含むことが好ましい。
感熱ゲル化剤の具体例としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、アルキルフェノールホルマリン縮合物のアルキレンオキシド付加物、ポリエーテルホルマール、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレンオキシド変性ポリシロキサン、水溶性ポリアミド、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、タンパク、炭酸塩、重炭酸塩、ポリリン酸塩、等が挙げられる。水系エマルジョンの感熱ゲル化剤の含有割合としては、感熱ゲル化剤の種類にもよるが、例えば、高分子弾性体成分(固形分)100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。
感熱ゲル化性としては、後述する工程(e)における、調湿調温された雰囲気中に水系エマルジョン樹脂を1分間放置した後に、測定した粘度がその放置前の粘度に比べて50倍以上上昇するようなものであることが好ましい。このような水系エマルジョンを用いた場合には、工程(e)の調湿調温処理を施したときに、緻密化不織布中で速やかに感熱ゲル化するために、高分子弾性体のマイグレーションを抑制することができる。
緻密化された不織布中に含浸された水系エマルジョンは、必要に応じて、ロール・ニップ処理等により搾液されてその含浸量が調整される。ロール・ニップ処理は、例えば、プレスロールとバックアップロールからなるニップロールの所定の間隔に調整された間隙に、水系エマルジョンを含浸させた緻密化された不織布を通過させることにより行うことができる。
緻密化された不織布に含有させる高分子弾性体の量は、特に限定されないが、極細繊維の繊維束を分繊させずにその形態を維持させる点から、緻密化された不織布100質量部に対する高分子弾性体(固形分)の量は、1〜80質量部、さらには2〜60質量部、とくには5〜40質量部であることが好ましい。なお、高分子弾性体の量が少なすぎる場合には、形成される極細繊維の繊維束が分繊しやすくなる傾向がある。一方、高分子弾性体の量が多すぎる場合には、得られる複合基材シートのゴム感が強くなるために、用途によっては好ましくない。
また、緻密化された不織布に含浸させる水系エマルジョンの量は、緻密化された不織布に含浸される水の量が緻密化された不織布の重量に対して55質量%以下、さらには50質量%以下の割合になるような量であることが好ましい。緻密化された不織布に含浸させる水系エマルジョンに由来する水の量が多すぎる場合、PVAの溶解量が多くなって海島型の構造が崩れやすくなる傾向がある。
なお、緻密化された不織布に含浸される水系エマルジョン中の水の割合は、含浸させる水系エマルジョンの固形分濃度やロール・ニップ処理等による搾液量の調整(いわゆるピックアップ率の調整)により調整される。例えば、水系エマルジョンの固形分濃度が15〜25質量%の場合、緻密化された不織布の重量に対して40〜65質量%の範囲のピックアップ率になるように、搾液量を調整することが好ましい。
〈工程(e)〉
本工程は、工程(d)で得られた、水系エマルジョンを含浸させた緻密化された不織布を温度及び湿度が制御された調湿調温された雰囲気で加熱することにより水系エマルジョンを感熱ゲル化させる工程である。
調湿調温された雰囲気における処理は、例えば、水系エマルジョンを含浸させた緻密化された不織布を、公知の調湿調温手段を備えた調温調湿装置内に所定の時間収容することにより、水系エマルジョンを感熱ゲル化させる処理である。この場合において、調湿調温された雰囲気を、湿球温度68℃以下で、且つ、相対湿度10〜90RH%になるように制御された雰囲気を採用する。
このように調湿調温された雰囲気中で、水系エマルジョンを含浸させた緻密化された不織布を処理した場合、海島型繊維の海成分である水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が水系エマルジョンの水に溶解しにくくなるために、海島型繊維の島成分の分繊が抑制される。また、相対湿度10RH%以上の雰囲気でゲル化させるために、表面からの水分の急速な蒸発が抑制されてマイグレーションも抑制される。その結果、高分子弾性体は、偏在することなく、海島型繊維の表面に均等に存在するように凝固する。
調湿調温された雰囲気の湿球温度は68℃以下であり、好ましくは65℃以下であることが、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が水系エマルジョンの水に溶解しにくくなる。一方、湿球温度としては、55℃以上、さらには60℃以上、とくには62℃以上であることが水系エマルジョンの安定性を制御しやすい点から好ましい。すなわち、低い湿球温度で水系エマルジョンをゲル化させようとした場合には、安定性が低い水系エマルジョンを用いる必要がある。このような安定性の低い水系エマルジョンは、通常の環境下でもゲル化が進行する恐れがあるために、保存管理上、好ましくない。従って、湿球温度55℃以上でゲル化するような水系エマルジョンを選択することが好ましい。
上述したように、調湿調温された雰囲気の相対湿度は10〜90RH%であり、30〜80RH%、とくには50〜80RH%以上であることが好ましい。調湿調温された雰囲気の相対湿度が10RH%未満の場合には、水系エマルジョン中の水分の蒸発が速くなるためにマイグレーションを生じやすくなる。また、90RH%を超える場合には、海成分の水溶性ポリビニルアルコール系樹脂が溶解しやすくなる。
調湿調温された雰囲気における温度及び湿度の制御は、乾球温度と湿球温度によっても制御することができる。調湿調温された雰囲気を乾球温度と湿球温度で設定する場合、湿球温度が60〜68℃の範囲であり、乾球温度を湿球温度よりも5〜65℃、さらには10〜20℃高くなるような温度、具体的には、65〜125℃の範囲で設定することがマイグレーションの発生と大きな空隙の発生とのバランスに優れる点から好ましい。
本工程においては、上述したような調湿調温された雰囲気で所定の時間の処理を行う。処理時間としては、緻密化された不織布の内部の温度が湿球温度とほぼ同じ温度に達する程度の時間で処理することが好ましく、具体的には、例えば、30〜300秒間、さらには60〜120秒間処理することが好ましい。
このような温度及び湿度が制御された調湿調温された雰囲気で加熱することにより、緻密化された不織布中の水系エマルジョンが感熱ゲル化する。
〈工程(f)〉
本工程は、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む緻密化された不織布を加熱乾燥することにより高分子弾性体を凝固させる工程である。すなわち、工程(e)における感熱ゲル化処理の後、加熱処理することにより、水系エマルジョン中の分散媒である水を乾燥除去しながら、高分子弾性体の凝固及び架橋を進行させる工程である。
加熱処理としては、熱風乾燥機等の乾燥装置中で加熱乾燥する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で加熱乾燥する方法等が挙げられる。これらの中でも特に、次のように制御した加熱乾燥が特に好ましい。
加熱乾燥における加熱条件としては、感熱ゲル化された水系エマルジョンを含む緻密化不織布の厚み方向の中心部の温度が、初期温度〜100℃の温度域で0.8℃/分以下、さらには0.7℃/分以下の速さで昇温するように加熱することが好ましい。また、例えば初期温度が20℃程度の場合、100℃まで到達する時間が100秒以上、さらには、110秒以上程度であることが好ましい。生産性を向上させるためには早く水を蒸発させるような条件で加熱することが好ましいが、昇温速度を低くしてゆっくりと蒸発を進行させることにより、内層に偏在する大きな空隙の発生が抑制され、より均質な複合基材シートが得られる。
〈工程(g)〉
本工程は、工程(f)で得られた、高分子弾性体を付与された緻密化不織布中の、海島型繊維から海成分を熱水抽出除去する工程である。このように海島型繊維から海成分を熱水抽出することにより、極細繊維の繊維束が形成される。そして、海成分の熱水抽出後、乾燥することにより、極細繊維の繊維束の絡合体とその絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートが得られる。
本工程で形成される極細繊維は繊維束を形成している。極細繊維の平均繊維径は特に限定されないが、0.1〜6μm、さらには0.3〜4μmであることが好ましい。また、繊維束の直径も特に限定されないが、5〜25μm、さらには10〜20μmであることが好ましい。
このようにして得られる本実施形態の複合基材シートは極細繊維の繊維束の緻密で均質な不織布と、その不織布の空隙に付与された高分子弾性体とを含む。
具体的には、例えば、複合基材シートの厚さ方向の断面における極細繊維の繊維束は、1500〜3000個/mm2、さらには1100〜3000個/mm2のような密度で存在することが好ましい。また、複合基材シートの密度としては、見掛け密度が、0.45〜0.80g/cm3、とくには0.50〜0.70g/cm3であることが好ましい。また、その厚みは特に限定されないが、例えば、0.3〜3mm、さらには0.5〜2.5mm、とくには1.5〜2.5mm程度であることが好ましい。
また、本実施形態の複合基材シートは、従来の製造方法では、とくに内層に多く存在していた大きな空隙が少なく極細繊維の密度ムラが小さいことを特徴とする。具体的には、例えば、厚み方向に平行な垂直断面の電子顕微鏡写真を観察し、観察される複数の空隙と同一の面積を有する仮想円を想定し、その仮想円の直径が100μm以上になるような空隙の単位面積当たりの総面積を算出する。この場合、垂直断面を均一な厚みで3分割した層を、それぞれ第一表層、中層、及び第二表層としたとき、中層における空隙の総面積が、第一表層及び第二表層の総面積の平均に比べて、好ましくは、0.8〜1.3倍、さらに好ましくは0.9〜1.1倍であるような複合基材シートである。このような複合基材シートは、厚み方向において均質度が高い基材であるために、例えば、シート表面と平行な面で2分割または3分割するようにスライスして用いる場合、分割面に空隙が表出しないために分割された面は凹凸が少なく、高い平滑性を有することができる。また、スライスせずに人工皮革用基材等として用いた場合には、厚み方向の特性が均質であるために、優れた風合いの人工皮革が得られる。
このようにして得られた複合基材シートを、シート表面と平行な面で複数枚にスライスしたり、研削して厚みを調節したり、バフィング処理して起毛したり、表面に他の層を設けたりする等、必要に応じて後処理してもよい。また、必要に応じて、揉み処理したり、染色処理したりしてもよい。
本実施形態の複合基材シートは、人工皮革用基材や、研磨パッド用の基材として好ましく用いられる。とくに、内部に大きな空隙が少なく、緻密な繊維構造を有するために、例えば、シート表面と平行な面で2分割または3分割するようにスライスして用いる場合には、分割面に空隙が表出しないために、表面凹凸の少ない緻密な表面のシートが得られる。このようなシートを研磨パッド用基材として用いた場合には、高い研磨レートが得られる。また、スライスせずに人工皮革用基材等として用いた場合には、厚み方向の特性が均質であるために、優れた風合いの人工皮革が得られる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の製造について説明する。
〈水溶性ポリビニルアルコール系樹脂の製造〉
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に、酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。そして反応槽圧力が5.9kgf/cm2となるようにエチレンを導入した。そして、開始剤である2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をメタノールに溶解して濃度2.8g/Lの開始剤溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mLを注入し重合を開始した。重合中、エチレンを導入して反応槽圧力を5.9kgf/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を610mL/hrで連続添加した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。
次に、減圧下で未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、エチレン変性ポリ酢酸ビニル(変性PVAc)のメタノール溶液を得た。そして、その溶液にメタノールを加えて調製した変性PVAcの50%メタノール溶液200gに、NaOHの10%メタノール溶液46.5gを添加してケン化を行った(NaOH/酢酸ビニル単位=0.10/1(モル比))。NaOH添加後、約2分間で系がゲル化した。ゲル化物を粉砕し、60℃で1時間放置することによりケン化を更に進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するNaOHを中和した。そして、フェノールフタレイン指示薬を用いて中和したことを確認した後、濾別することにより白色固体を得た。そして、白色固体にメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。このような洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液し、乾燥機中70℃で2日間放置乾燥してエチレン変性ポリビニルアルコール(変性PVA)を得た。得られた変性PVAのケン化度は98.4モル%であり、エチレン単位の含有割合は10モル%であり、平均重合度は330であった。また、融点は206℃であった。
また、得られた変性PVAの5%水溶液から厚み30μmのキャストフィルムを作成した。このキャストフィルムから50×50mmの試験片を作製し、20℃で、湿度45%の雰囲気で24時間状態調整した。そして、調湿したフィルムから、3mm×3mmの正方形のサンプルを切り出した。そして、サンプルを所定の治具に固定し、200mlのビーカーに100mlの90℃の水を入れ、回転数120rpmで3cm長のバーを備えたマグネティックスターラーで攪拌した。そして、水に浸漬してから、サンプル片が完全に消失するまでの溶解時間を測定した。溶解時間は14秒であった。
[実施例1]
上記変性PVAと、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−トとを25:75(質量比)の割合で溶融複合紡糸用口金から吐出することにより、海島型繊維を形成した。なお、溶融複合紡糸用口金は、海成分ポリマー中に等断面積の島成分ポリマーが25個分布するような断面で、口金温度は250℃であった。そして、エジェクター圧力を紡糸速度3600m/minとなるように調整して、繊度2.5dtexの長繊維をネット上に捕集し、ロールプレスすることにより、厚さ方向に平行な断面に海島型繊維の断面が約230個/mm2存在し、目付量30g/mである長繊維ウェブが得られた。
得られた長繊維ウェブをクロスラッピングすることにより14枚重ねて、総目付が420g/mの重ね合わせウェブを作製した。そして、得られた重ね合わせウェブに、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、ニードルパンチ処理して絡合させることにより、不織布を得た。得られた不織布は、厚さ方向に平行な断面に海島型繊維の断面が約500個/mm2存在していた。
次に、得られた不織布に水を付与した後、温度110℃(乾球温度110℃、湿球温度73℃)、相対湿度23%の雰囲気中で湿熱収縮処理を行い、さらに、加熱プレス処理及び乾燥することにより、目付け1300g/m2、密度0.66g/cm3、厚さ方向に平行な断面において、海島型繊維の数密度が1900個/mm2である緻密化不織布を得た。
次に、緻密化不織布に、固形分濃度20質量%のポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンの水性エマルジョンを含浸させ、ロール・ニップ処理により付着量を調整した。このとき、水性エマルジョンの付着量は、緻密化された不織布と水系エマルジョン中の高分子弾性体との質量比(緻密化不織布/高分子弾性体(固形分))が、1/0.12であるように、ピックアップ率 60%で目付け780g/m2になるように付着させた。このとき、緻密化された不織布に含浸された水の目付けは624g/m2であり、緻密化された不織布の重量に対する含浸された水の重量の割合は48.0質量%であった。なお、この水性エマルジョンは、20℃での粘度が10cpsであり、湿球温度55℃の雰囲気中に1分間放置した後の粘度が500cps以上になるような、感熱ゲル化剤を含有するエマルジョンである。なお、粘度は、芝浦システム(株)製ビスメトロンVG-A1粘度計を使用して測定した。
そして、水性エマルジョンが含浸された緻密化不織布を、表1に記載されたような条件に制御された調温調湿装置内で1分間処理することにより、水性エマルジョンを感熱ゲル化処理した。そして、さらに、加熱乾燥処理を施すことにより、凝固したポリウレタンが含浸された緻密化不織布を得た。この加熱乾燥処理において、内部温度の初期温度20℃から100℃に達するまでの昇温速度は0.68℃/分であった。なお、緻密化不織布の内部温度は、厚み方向における中心付近の温度を熱電対で測定したときの温度である。
次に、ポリウレタンが含浸された緻密化不織布を95℃の熱水中に浸漬しながらニップ処理を10分間連続的に行うことによりPVAを溶解除去し、さらに、乾燥することにより、極細繊維の平均繊維径3μm、厚さ方向に平行な断面に繊維束の断面が約1800個/mm2存在し、目付量1044g/m、見掛け密度0.580g/cm、厚み1.8mmである、極細繊維の繊維束の絡合体と該絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートを得た。なお、極細繊維の繊維束の絡合体とポリウレタンとの質量比率は88/12であった。
そして、得られた複合基材シートを下記に示す評価方法により評価した。
[空隙の分布]
得られた複合基材シートを厚み方向に切断して垂直断面を形成した。そして、垂直断面を走査型電子顕微鏡(100〜300倍)で観察し、その顕微鏡写真を撮影した。そして、得られた顕微鏡写真を画像処理ソフト(Medhia Cybernetios社(製)のImageproPlus)を用いて二値化して、存在する空隙部の輪郭を明瞭にさせた。そして、画像解析ソフトを用いて複数の空隙の輪郭を特定し、各空隙の面積を算出し、その面積と同じ面積を有する仮想円を想定し、その仮想円の直径が100μm以上になるような空隙を特定した。そして、垂直断面を均一な厚みで3分割し、それらをそれぞれ第一表層、中層、及び第二表層とし、各層における、仮想円の直径が100μm以上になるような空隙の総面積を算出した。そして、第一表層及び第二表層の空隙面積の平均面積(B)、及び、中層の空隙の総面積(A)を算出した。そして、その面積倍率(A/B)を算出した。
[ポリウレタンの分布]
「空隙の分布」の評価で用いたものと同様の顕微鏡写真を得た。そして、得られた顕微鏡写真を画像処理ソフト(Medhia Cybernetios社(製)のImagepro Plus)を用いて二値化して、存在する高分子弾性体の輪郭を明瞭にさせた。そして、画像解析ソフトを用いて高分子弾性体の総面積を算出した。そして、垂直断面を均一な厚みで3分割し、それらをそれぞれ第一表層、中層、及び第二表層とし、各層の単位面積当たりに存在するポリウレタンの面積を求めた。そして、第一表層及び第二表層の単位面積当たりに存在するポリウレタンの面積の平均、及び、中層の単位面積当たりに存在するポリウレタンの面積を算出した。
結果を下記表1に示す。また、実施例1で得られた複合基材シートの厚み方向の断面のSEM写真を図3に示す。
[実施例2〜5、及び比較例1〜3]
調温調湿装置内の条件を、それぞれ表1に記載された条件に変更した以外は実施例1と同様にして複合基材シートを製造し、評価した。結果を表1に示す。また、比較例1で得られた複合基材シートの厚み方向の断面のSEM写真を図4に示す。
[比較例4]
実施例1において、水性エマルジョンが含浸された緻密化不織布を調温調湿装置内で処理する代わりに、水性エマルジョンが含浸された緻密化不織布に温度100℃、湿度100%のスチームを60秒間当てることにより、水性エマルジョンを感熱ゲル化させ、ポリウレタンを凝固させた。なお、このとき、PVAが緻密化不織布の表面に糊状に付着し、装置を汚染した。そして、さらに、140℃で7分間加熱乾燥処理することによりポリウレタンが含浸された緻密化不織布を得た。次に、ポリウレタンが含浸された緻密化不織布を95℃の熱水中に浸漬しながらニップ処理を10分間連続的に行うことによりPVAを溶解除去し、さらに、乾燥することにより、極細繊維の平均繊維径3μm、厚さ方向に平行な断面に繊維束の断面が約2600個/mm2存在し、目付量1050g/m、見掛け密度0.600g/cm、厚み1.75mmである、極細繊維の繊維束の絡合体と該絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートを得た。なお、極細繊維の繊維束の絡合体とポリウレタンとの質量比率は88/12であった。そして、得られた複合基材シートを実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、水性エマルジョンが含浸された緻密化不織布を調温調湿装置内で処理する代わりに、水性エマルジョンが含浸された緻密化不織布に20kW/m2のパワーで30秒間赤外線を当てることにより、水性エマルジョンを感熱ゲル化させ、ポリウレタンを凝固された。そして、さらに、140℃で7分間加熱乾燥処理することによりポリウレタンが含浸された緻密化不織布を得た。次に、ポリウレタンが含浸された緻密化不織布を95℃の熱水中に浸漬しながらニップ処理を10分間連続的に行うことによりPVAを溶解除去し、さらに、乾燥することにより、極細繊維の平均繊維径3μm、厚さ方向に平行な断面に繊維束の断面が約2600個/mm2存在し、目付量1060g/m、見掛け密度0.575g/cm、厚み1.85mmである、極細繊維の繊維束の絡合体と該絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートを得た。なお、極細繊維の繊維束の絡合体とポリウレタンとの質量比率は88/12であった。そして、得られた複合基材シートを実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
表1から、湿球温度68℃以下で、且つ、相対湿度10RH%以上に制御された調湿調温された雰囲気で感熱ゲル化処理を行った実施例1〜5の製造方法によれば、中層における円換算したときの直径が100μm以上の空隙が少ない複合基材シートが得られていることがわかる。また、単位面積当たりのポリウレタン面積が中層と中層以外の部分において偏在が少なく、マイグレーションも抑制されていることがわかる。一方、湿球温度70℃及び乾球温度100℃の雰囲気に制御した比較例1、湿球温度70℃及び乾球温度80℃の雰囲気に制御した比較例2、及び湿球温度70℃及び乾球温度85℃の雰囲気に制御した比較例3の場合には中層における円換算したときの直径が100μm以上の空隙が多い複合基材シートが得られていることがわかる。また、スチーム処理した比較例4及び赤外線で加熱した比較例5の場合には、中層における円換算したときの直径が100μm以上の空隙が極めて多い複合基材シートが得られていることがわかる。
[実施例6〜14]
上述した実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた結果を踏まえ、空隙の発生に対する他の因子の影響をさらに調べるために、緻密化不織布に対する水性エマルジョンの含浸条件及び乾燥条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合基材シートを製造し、評価した。なお、実施例6〜14においては、目付け1300g/m2の緻密化不織布の代わりに、目付け1350g/m2の緻密化不織布を用いて複合基材シートを製造した。また、実施例6〜14においては、[空隙の分布]の評価において、極細繊維化処理後の複合基材シートを評価する代わりに、極細繊維化処理前で高分子弾性体を乾燥させた後の緻密化不織布における[空隙の分布]の評価を行った。極細繊維化処理前の緻密化不織布の段階において、乾燥条件の違いによる繊維の分布の差違がより明確に見られたためである。
詳しくは次のような条件で複合基材シートを製造した。実施例6においては、水性エマルジョンの含浸条件及び加熱乾燥条件を実施例1と同様の条件で複合基材シートを製造した。実施例7〜10においては、図5に示すように、内部温度が100℃に到達するまでの昇温速度がそれぞれ0.54℃/秒、0.8℃/秒、1.07℃/秒、または2.14℃/秒になるように加熱乾燥条件を変更した以外は実施例6と同様の条件で複合基材シートを製造した。実施例11及び12においては、それぞれピックアップ率を60%に代えて68%または74%に変更することにより、緻密化された不織布に含浸された水の割合を48.0質量%に代えて54.4質量%または59.2質量%に変更し、また、乾燥条件を変更した以外は実施例6と同様の条件で複合基材シートを製造した。実施例13においては、固形分濃度20%の水系エマルジョンに代えて、固形分濃度17質量%の水系エマルジョンを用いることにより、緻密化された不織布に含浸された水の割合を59質量%に変更し、また、乾燥条件を変更した以外は実施例6と同様の条件で複合基材シートを製造した。なお、実施例13中に含浸されたポリウレタンの割合は、実施例6と同じである。また、実施例14においては、固形分濃度20%の水系エマルジョンに代えて、固形分濃度25質量%の水系エマルジョンを用い、また、ピックアップ率を60質量%に代えて64質量%に調整することにより、緻密化された不織布に含浸された水の割合を実施例6と同様の48質量%に調整し、さらに、乾燥条件を変更した以外は実施例6と同様の条件で複合基材シートを製造した。なお、実施例13の複合基材シートに付与したポリウレタンの量は、実施例6の複合基材シートに付与したポリウレタンの量の約1.3倍である。結果を表2に示す。
表2の結果から、内部温度が100℃に到達するまでの昇温速度が0.8℃/秒以下である実施例6〜8で得られた複合基材シートはいずれも100μm以上の空隙が少ない複合基材シートが得られることがわかる。一方、内部温度が100℃に到達するまでの昇温速度が0.8℃/秒を超える条件で乾燥した以外は実施例6と同様の条件で製造された実施例9〜10で得られた複合基材シートはいずれも100μm以上の空隙が実施例6〜8に比べて多い複合基材シートになることがわかる。また、エマルジョンを多く含浸させた結果、緻密化された不織布に含浸された水の割合が高くなった実施例11及び12はいずれも実施例6に比べて空隙が多い複合基材シートになることがわかる。また、実施例6と同じ割合のポリウレタンを含浸させる場合において、エマルジョンの固形分濃度が薄いエマルジョンを用いた実施例13の場合にも、相対的に水の割合が高くなって100μm以上の空隙が多い複合基材シートになることがわかる。
本発明の製造方法により得られる複合基材シートは、人工皮革基材や研磨パッド基材として利用できる。
1 海島型繊維
1a 島成分
1b 海成分
2 水系エマルジョン
2a 高分子弾性体
2b 水
3 空隙

Claims (9)

  1. (a)海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂であり、島成分が熱収縮性ポリマーである海島型繊維の繊維ウェブを形成する工程と、
    (b)前記繊維ウェブを絡合処理することにより、不織布を得る工程と、
    (c)前記不織布を湿熱収縮処理することにより、緻密化不織布を得る工程と、
    (d)前記緻密化不織布に、水に高分子弾性体を乳化分散させた水系エマルジョンを含浸させる工程と、
    (e)前記緻密化不織布に含浸させた前記水系エマルジョンを調湿調温された雰囲気で加熱することにより感熱ゲル化させる工程と、
    (f)前記工程(e)の後、前記感熱ゲル化された前記水系エマルジョンを含む前記緻密化不織布を加熱乾燥して前記高分子弾性体を凝固させる工程と、
    (g)前記工程(f)の後、前記緻密化不織布を形成する前記海島型繊維から海成分を熱水抽出除去する工程と、を備え、
    前記調湿調温された雰囲気は、湿球温度68℃以下で、且つ相対湿度10〜90RH%に制御された雰囲気であることを特徴とする複合基材シートの製造方法。
  2. 前記水系エマルジョンは、前記調湿調温された雰囲気中に1分間放置されたときに、その粘度が該放置前の粘度に比べて50倍以上上昇する請求項1に記載の複合基材シートの製造方法。
  3. 前記水系エマルジョンは、感熱ゲル化剤を含む請求項1または2に記載の複合基材シートの製造方法。
  4. 前記調湿調温された雰囲気の湿球温度が55℃以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の複合基材シートの製造方法。
  5. 前記調湿調温された雰囲気の乾球温度が125℃以下である請求項1〜4の何れか1項に記載の複合基材シートの製造方法。
  6. 前記工程(d)において、前記緻密化不織布に含浸される水の量が前記緻密化不織布の重量に対して55質量%以下の割合になるように、該水系エマルジョンを含浸する請求項1〜5の何れか1項に記載の複合基材シートの製造方法。
  7. 前記工程(f)における前記加熱乾燥において、
    前記感熱ゲル化された前記水系エマルジョンを含む前記緻密化不織布の厚み方向の中心部の温度を初期温度〜100℃の温度域が0.8℃/分以下の速さで昇温させるような加熱条件で加熱する、請求項1〜6の何れか1項に記載の複合基材シートの製造方法。
  8. 前記水溶性ポリビニルアルコール系樹脂は、厚み30μmのフィルムを90℃の水に溶解させたときの溶解時間が1〜60秒である請求項1〜7の何れか1項に記載の複合基材シートの製造方法。
  9. 平均繊維径6μm以下の極細繊維の繊維束の絡合体である不織布と該不織布に含浸一体化された高分子弾性体とを含有する複合基材シートであって、
    厚み方向に平行な垂直断面の電子顕微鏡写真において、複数の空隙が観察され、各空隙と同一の面積を有する仮想円を想定し、その仮想円の直径が100μm以上になるような空隙の単位面積当たりの総面積を算出した場合、
    前記垂直断面を均一な厚みで3分割して形成された層を、それぞれ第一表層、中層、及び第二表層としたとき、前記中層における空隙の総面積が、前記第一表層及び前記第二表層の前記総面積の平均に比べて0.8〜1.3倍であることを特徴とする複合基材シート。
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