JP2016069556A - 複合樹脂粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)分散剤を含む水性媒体中に、ポリオレフィン系樹脂の粒子を分散させて懸濁液を得る工程、(B)得られた懸濁液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記スチレン系単量体を前記ポリオレフィン系樹脂の粒子に含浸させて反応液を得る工程、及び(C)特定の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程を含むか、前記工程(A)〜(C)に(D)前記工程(C)で得られた反応液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、特定の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程をさらに含み、前記重合開始剤が、特定のジアルキルパーオキサイドであることを特徴とする複合樹脂粒子の製造方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
Description
一方、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡成形体は、耐衝撃性や柔軟性に優れているが、その成形時に大掛かりな設備を必要とする。また、樹脂の性質上、予備発泡粒子の形態で原料メーカーから成形加工メーカーに輸送しなければならない。そのため、嵩高い予備発泡粒子を輸送することになり、製造コストが上昇するという問題がある。
そこで、上記2つの異なる樹脂の特長を併せもつ、様々なポリスチレン系複合樹脂粒子及びそれらを用いた発泡成形体が提案されている。
しかしながら、発泡成形体の含有成分に由来する臭気が発生することがあり、特に発泡成形体を自動車用途に使用する場合にはその規制が厳しく、何らかの脱臭工程が必要となり、様々な技術が提案されている。
この技術によれば、複合樹脂粒子中の臭気を、55℃の測定雰囲気下で200以下の臭気レベル値に低減できるとされている。
この技術によれば、臭気が低減された複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、予備発泡させ、続いて型内成形させて得られた発泡成形体の臭気強度の平均値を、100000倍に希釈したイソ吉草酸の臭いを臭気強度0〜5段階の3の基準臭とする臭気試験において3以下に低減できるとされている。その結果、従来よりも低レベルの臭気含有率を要求される自動車内装の用途に使用可能な発泡成形体を得ることができるとされている。
この技術によれば、化学物質過敏症の原因となる揮発性成分の含有量が少ないにも拘わらず、優れた機械的物性、難燃性及び断熱性を有する発泡成形体を提供し得る発泡性スチレン系樹脂粒子が得られるとされている。
特に発泡成形体を自動車用途に使用する場合にはその規制が厳しく、製造工程における脱臭工程の軽減もしくは省略が求められている。
なお、特許文献4は、有機揮発性成分の軽減を課題とする技術ではあるが、難燃性を主たる課題とするポリスチレン系樹脂に関する技術である。
(A)分散剤を含む水性媒体中に、前記ポリオレフィン系樹脂の粒子を分散させて懸濁液を得る工程、
(B)次いで、得られた懸濁液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記スチレン系単量体を前記ポリオレフィン系樹脂の粒子に含浸させて反応液を得る工程、及び
(C)次いで、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程
を含むか、前記工程(A)〜(C)に
(D)次いで、前記工程(C)で得られた反応液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−25)〜(T+15)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程
をさらに含み、
前記重合開始剤が、次式:
で表されるジアルキルパーオキサイドであることを特徴とする複合樹脂粒子の製造方法が提供される。
上記の効果は、使用する重合開始剤がその分子内にベンゼン環などの臭気の原因となり得る構造を有さないことによるものと考えられる。
本発明の発明者は、従来から汎用されている、分子内にベンゼン環を含む構造を有する重合開始剤を用いて試験したところ、重合後の樹脂の揮発成分中に芳香族特有の臭気を確認した。
(1)重合開始剤がジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド及びジ−t−ヘキシルパーオキサイドから選択される、及び
(2)重合開始剤が工程(B)及び(D)において同時に添加されるスチレン系単量体のそれぞれに対して0.05〜0.5質量%である
の少なくとも1つの条件を満足する場合に、上記の優れた効果を更に発揮する。
(3)ポリオレフィン系樹脂の粒子がポリオレフィン系樹脂に対して1.5〜17.0質量%のカーボンブラックを含有する、カーボンブラック含有ポリオレフィン系樹脂の粒子である場合に、
(4)工程(C)または(D)の後に、(E)前記複合樹脂粒子を含む混合液に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して、難燃剤として、1.5〜6.0質量部のトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート又はビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、及び難燃助剤として、0.1〜2.0質量部の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを添加して、前記複合樹脂粒子を難燃化処理する工程をさらに含む場合に、
上記の優れた効果に加えて、それぞれ、優れた黒色度及び優れた難燃性(遅燃性)を発揮する発泡成形体を与え得る複合樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明の複合樹脂粒子の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子の製造方法であり、
(A)分散剤を含む水性媒体中に、前記ポリオレフィン系樹脂の粒子を分散させて懸濁液を得る工程、
(B)次いで、得られた懸濁液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記スチレン系単量体を前記ポリオレフィン系樹脂の粒子に含浸させて反応液を得る工程、及び
(C)次いで、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程
を含むか、前記工程(A)〜(C)に
(D)次いで、前記工程(C)で得られた反応液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−25)〜(T+15)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程
をさらに含み、
前記重合開始剤が、次式:
で表されるジアルキルパーオキサイドであることを特徴とする。
まずは、重合開始剤について説明し、重合時の温度調整を含めた各工程毎について、順次説明する。
式中の置換基R1〜R3及びR' 1〜R' 3は各置換基の炭素数の合計が6〜20になる直鎖状のアルキル基であり、R1、R3、R' 1及びR' 3は同一であり、R2及びR' 2は同一である。
上記の置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル等のアルキル基が挙げられる。
重合開始剤の添加量がスチレン系単量体に対して0.05質量%未満では、スチレン系単量体の重合が完了せずに揮発分として複合樹脂粒子中に残存し、臭気の原因となることがある。一方、重合開始剤の添加量がスチレン系単量体に対して0.5質量%を超えると、重合速度が速くなるため、スチレン系単量体がポリオレフィン系樹脂中に含浸される前に重合反応が進行し、重合体粉末の発生や黒色度、耐薬品性、などの好ましい物性が得られないことがある。好ましい重合開始剤の添加量は、0.1〜0.45質量%である。
まず、分散剤を含む水性媒体中に、ポリオレフィン系樹脂の粒子(以下「ポリオレフィン系樹脂粒子」ともいう)を分散させて懸濁液を得る。
(ポリオレフィン系樹脂粒子)
ポリオレフィン系樹脂粒子を構成するポリオレフィン系樹脂(PO)としては、当該技術分野で用いられるポリオレフィン系樹脂であれば特に限定されず、公知の重合方法で得られた樹脂が挙げられ、それは架橋されていてもよい。例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらの低密度ポリエチレンは、0.90〜0.94g/cm3の密度を有することが好ましく、0.91〜0.94g/cm3の密度を有することがより好ましく、0.91〜0.93g/cm3の密度を有することが最も好ましい。具体的には、実施例において用いているような市販品が挙げられる。
前記スクリュー構造を有する押出機やダイス、押出条件、水中カット条件を組み合わせることで所望の核樹脂粒子が得られる。
また、上記核樹脂粒子は本発明の効果を損なわない限り、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂の相容化剤、気泡調整剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。
更に、上記の製造方法において、スチレン系単量体の液滴及び核樹脂粒子の分散性を安定させるために分散剤(懸濁安定剤)を用いる。このような懸濁安定剤としては、従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。
また、難溶性無機化合物を用いる場合には、通常アニオン界面活性剤が併用される。
なお、複合樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、着色剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、滑剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等の添加剤を添加してもよい。
本発明の複合樹脂粒子は、0.5〜5.0質量%のカーボンブラックを含有するのが好ましい。
カーボンブラックの含有量が0.5質量%未満では、発泡成形体に十分な黒色度を付与できないことがある。一方、カーボンブラック含有量が5.0質量%を超えると、発泡成形体の難燃性の確保が困難になることがある。好ましい複合樹脂粒子のカーボンブラック含有量は、1.5〜3.0質量%である。
後述する実施例のようにカーボーンブラック含有ポリオレフィン系樹脂粒子を用いる場合には、ポリオレフィン系樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂に対して1.5〜17.0質量%のカーボンブラックを含有するのが好ましい。カーボンブラックの含有量がこの範囲であれば、スチレン系単量体の使用量にも依るが、複合樹脂粒子中のカーボンブラックの含有量が上記の範囲になる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
難燃剤及び難燃助剤の添加方法としては、例えば、後述する工程(E)及び実施例に記載のように、複合樹脂粒子の懸濁液中に難燃剤及び難燃助剤を加え、加熱下で撹拌混合する方法が挙げられる。
好ましい難燃剤の添加量は、発泡粒子100質量部に対して2.0〜5.0質量部である。
難燃助剤の添加量が0.1質量部未満では、難燃性を十分に付与することができないことがある。一方、難燃助剤の添加量が2.0質量部を超えると、発泡成形体の耐熱性が低下することがある。
好ましい難燃助剤の添加量は、発泡粒子100質量部に対して1.0〜2.0質量部である。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペート等のアジピン酸エステル、ヤシ油等の可塑剤が挙げられる。
可塑剤の複合樹脂粒子中における含有量は、0.1〜3.0質量%が好ましい。
気泡調整剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。
充填材としては、合成又は天然に産出される二酸化ケイ素等が挙げられる。
融着促進剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
核樹脂粒子、スチレン系単量体及び必要に応じて他の分散物及び溶解物を含めた水性媒体1m3を攪拌させるのに要する撹拌所要動力(Pv)が、0.06〜0.8kw/m3となるように調整された攪拌条件が好ましい。撹拌所要動力は、0 .1〜0.5kw/m3であることが好ましい。この撹拌所要動力は、反応容器内の内容物が攪拌により受けた、正味の単位体積当たりのエネルギーに対応する。
すなわち、核樹脂粒子、スチレン系単量体及び必要に応じて他の分散物並びに溶解物を含有する水性媒体を重合装置の重合容器内に供給し、攪拌翼を所定の回転数で回転させて水性媒体を攪拌する。このとき、攪拌翼を回転させるのに必要な回転駆動負荷を電流値A1(アンペア)として計測する。この電流値A1に実効電圧(ボルト)を乗じた値をP1(ワット)とする。
撹拌所要動力(Pv)=(P1−P2)/V
また、攪拌翼は、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。
具体的には、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内、パドル翼が好ましく、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼がより好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。
また、攪拌翼の大きさについても、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。
更に、重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
次いで、得られた懸濁液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記スチレン系単量体を前記ポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させて反応液を得る。
(スチレン系単量体)
スチレン系単量体は、次工程(C)及び(D)により重合して、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂(PS)となる。
なお、スチレン系単量体と重合後に得られるポリスチレン系樹脂の量はほぼ同一である。
ポリスチレン系樹脂が100質量部未満では、発泡粒子の発泡剤を保持する能力が低下することがあり、高発泡化ができなくなることがあると共に、発泡成形体の剛性が低下することがある。一方、ポリスチレン系樹脂が400質量部を超えると、ポリオレフィン系樹脂粒子の内部にまで十分に含浸されずに、ポリスチレン系樹脂が複合樹脂粒子の表面に多量に存在してしまい、白色粒子が発生することがあるため好ましくない。加えて、発泡成形体の耐割れ性が低下するだけでなく、耐薬品性も低下することがあるため好ましくない。好ましいポリオレフィン系樹脂100質量部に対するポリスチレン系樹脂(質量部)は、120〜300質量部である。
スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
ビニル系単量体としては、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体;(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、多官能性単量体が好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン単位数が4〜16のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンがより好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。尚、単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
また、単量体を併用する場合、その含有量は、スチレン系単量体が主成分となる量(例えば、50質量%以上)になるように設定されることが好ましい。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
スチレン系単量体が実質的に重合しない温度は、原料樹脂の種類や配合割合、製造する発泡粒子の物性等に応じて適宜設定すればよいが、通常45〜80℃である。
また、ポリオレフィン系樹脂粒子内部にスチレン系単量体を含浸させる時間は30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行すると、ポリスチレンの重合体粉末を生成してしまうからである。
次いで、ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させる。
重合温度が(T−10)℃未満では、得られる樹脂粒子の中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。一方、重合温度が(T+20)℃を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分に含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。
例えば、ポリオレフィン系樹脂の融点が140℃であるとき、重合温度は130〜160℃である。
また、重合時の系内の圧力は、通常0.05〜0.5MPa程度であり、重合の安定性作業面での安全性を考慮すれば、好ましくは0.1〜0.3MPaである。
加えて、各工程の設定温度への昇温又は降温時間は外気温により変動するが、開始温度から目的温度に到達するまでの区間全体で換算すると0.3℃/min〜3.0℃/minが適当である。
特に、昇温速度が速すぎると、スチレン系単量体がポリオレフィン系樹脂粒子に十分に含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。一方で、昇温速度が遅すぎる場合は、工程が長くなり、製造コストが掛かってしまう。より好ましくは0.4℃/min〜2.5℃/minである。
その他の重合条件は、製造する複合樹脂粒子の組成等により適宜設定すればよい。
本発明の複合樹脂粒子の製造方法は、上記の工程(A)〜(C)を含むか、前記工程(A)〜(C)に次の工程(D)を含む。
次いで、前記工程(C)で得られた反応液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−25)〜(T+15)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させる。
この工程は、単量体を核樹脂粒子に吸収させながら重合させる点が異なるが、上記の工程(B)及び(C)の変形であり、それらの繰り返し、すなわち2段重合工程に相当する。
また、必要に応じて、工程(B)〜(C)、すなわちポリオレフィン系樹脂粒子へのスチレン系単量体の含浸と重合を繰り返してもよい。
工程(B)及び(C)を含めて、1回の重合に用いるスチレン系単量体の量は、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂の質量割合が上記のようになるように適宜分割すればよい。
ここでアニールの必要性について記述する。
アニール工程に至るそれまでの工程において、核樹脂粒子に吸収させたスチレン系単量体及び重合開始剤は完全には反応を完了しておらず、複合樹脂粒子内部には未反応物も少なからず存在している。そのため、アニールせずに得た複合樹脂粒子を用いて発泡成形体を得た場合、スチレン系単量体等低分子量の未反応物の影響により、発泡成形体の機械的物性や耐熱性の低下や揮発性の未反応物を原因とした臭気が問題となる。そこで、アニール工程を導入することによって未反応物が重合反応を起こす時間を確保し、発泡成形体の物性に影響しないように残存する未反応物を除去することができる。
本発明の複合樹脂粒子の製造方法は、工程(C)または(D)の後に、
(E)複合樹脂粒子を含む混合液に、複合樹脂粒子100質量部に対して、難燃剤として、1.5〜6.0質量部のトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート又はビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、及び難燃助剤として、0.1〜2.0質量部の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを添加して、前記複合樹脂粒子を難燃化処理する工程
をさらに含むのが好ましい。
難燃剤及び難燃助剤は、工程(A)に記載の他の添加剤と同様に、樹脂原料と混錬してもよいが、難燃性能を発揮するためには、複合樹脂内部よりも複合樹脂表面に難燃剤及び難燃助剤が存在するのが好ましく、上記のように複合樹脂粒子の表面に難燃化処理するのが好ましい。
本発明の複合樹脂粒子の製造方法により得られる複合樹脂粒子は、0.5〜3.0mmの平均粒子径を有するのが好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径が0.5mm未満では、高い発泡性を得られないことがある。一方、複合樹脂粒子の平均粒子径が3.0mmを超えると、成形加工時の予備発泡粒子の充填性が不十分になることがある。より好ましい複合樹脂粒子の平均粒子径は、0.5〜2.0mmである。
上記の複合樹脂粒子に、公知の方法により発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得ることができる。
複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させる温度としては、低いと、含浸に時間を要し、発泡性粒子の製造効率が低下することがある一方、高いと、発泡性粒子同士の合着が多量に発生することがあるので、50〜130℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
発泡剤としては揮発性発泡剤が好ましく、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン等炭素数5以下の脂肪族炭化水素等の揮発性発泡剤が挙げられ、特にブタン系発泡剤、ペンタン系発泡剤が好ましい。なお、ペンタンは可塑剤としての作用も期待できる。
揮発性発泡剤の含有量が少なく、例えば2質量%未満では、発泡性粒子から低密度の発泡成形体を得ることができないことがあると共に、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が得られないために、発泡成形体の外観が低下することがある。一方、揮発性発泡剤の含有量が多く、例えば10質量%を超えると、発泡性粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなり生産性が低下することがある。
発泡性粒子には、発泡剤と共に発泡助剤を含有させることができる。
発泡助剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の1気圧下における沸点が200℃以下の溶剤が挙げられる。
発泡助剤の含有量が少なく、例えば0.3質量%未満では、ポリスチレン系樹脂の可塑化効果が発現しないことがある。一方、また、発泡助剤の含有量が多く、2.5質量%を超えると、発泡性粒子を発泡させて得られる発泡成形体に収縮や融けが発生して外観が低下する、あるいは発泡性粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなることがある。
上記の発泡性粒子を、密閉容器内で、導入したゲージ圧力0.004〜0.09MPaの水蒸気(スチーム)で加熱し、所定の嵩密度に予備発泡させて発泡粒子を得ることができる。
その方式は、蒸気を導入するバッチ式発泡や連続発泡、加圧下からの放出発泡が挙げられ、必要に応じて発泡する際に水蒸気と同時に空気を導入してもよい。
発泡粒子は、0.015〜0.25g/cm3の嵩密度を有するのが好ましい。発泡粒子の嵩密度が0.015g/cm3未満では、発泡成形体が収縮しやすく外観を損なうことがあり、機械的強度も十分ではなくなることがある。一方、発泡粒子の嵩密度が0.25g/cm3を超えると、発泡成形体として軽量化のメリットが損なわれることがある。好ましい発泡粒子の嵩密度は、0.025〜0.033g/cm3である。
嵩密度の測定方法については、実施例において詳述する。
複合樹脂粒子を発泡した発泡粒子は、0.8〜12.0mmの平均粒径を有するのが好ましい。
発泡粒子の平均粒子径が0.8mm未満では、発泡成形時の発泡性が低く、成形体表面の伸びが悪くなることがある。一方、発泡粒子の平均粒子径が12.0mmを超えると、成形加工時の予備発泡粒子の充填性が不十分になることがある。より好ましい複合樹脂粒子の平均粒子径は、0.8〜6.0mmである。
発泡粒子は、5〜50質量%の表面ポリスチレン系樹脂量を有するのが好ましい。
発泡粒子の表面ポリスチレン系樹脂量が5質量%未満では、予備発泡時に予備発泡粒子から局所的にポリスチレン系樹脂成分が噴出し、発泡成形時に黒色度のムラといった外観不良が発生することがある。一方、発泡粒子の表面ポリスチレン系樹脂量が50質量%を超えると、発泡成形体に十分な黒色度を付与できないことがあり、同時に耐薬品性や耐衝撃性を低下させることがある。
表面ポリスチレン系樹脂量(質量%)は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50である。
好ましい発泡粒子の表面ポリスチレン系樹脂量は、5〜30質量%である。
表面ポリスチレン系樹脂量の測定方法については、実施例において詳述する。
上記の予備発泡粒子を型内発泡成形させて発泡成形体を得ることができる。
具体的には、発泡成形体は、公知の方法、例えば、予備発泡粒子を発泡成形機の金型(キャビティ)内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることにより得られる。
発泡成形体は、0.015〜0.25g/cm3の範囲の密度を有するのが好ましい。発泡成形体の密度が0.015g/m3未満では、耐衝撃性が十分でないことがある。一方、発泡成形体の密度が0.25g/cm3を超えると、発泡成形体の軽量化効果が限定的になってしまう。好ましい発泡成形体の嵩密度は、0.025〜0.033g/cm3である。
カーボンブラックを含有する発泡成形体は、JIS Z8729−2004「色の表示方法−L*a*b*表色系」に基づく色差測定において、次式:
ΔE’=L*+|a*|+|b*|<31
(式中、ΔE’は黒色度、L*は明度、a*及びb*は色座標を表す)
で示される関係式を満足し、かつ前記ΔE’の標準偏差σがσ<1.0の関係を満足するのが好ましい。
黒色度の測定方法については、実施例において詳述する。
実施例及び比較例においては、得られた予備発泡粒子及び発泡成形体を次のようにして評価した。
予備発泡粒子の嵩密度を次のように測定する。
約5gの予備発泡粒子の質量(a)を小数以下2位で秤量し、最小メモリ単位が5cm3である500cm3メスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れる。次に、メスシリンダーの口に、その口径よりやや小さい円形の樹脂板であって、その中心に幅約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具を当てて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取る。
得られた予備発泡粒子の質量(a)及び予備発泡粒子の体積(b)から、次式により予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=(a)/(b)を求める。
吸光度比(D698/D1376)は下記の要領で測定する。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、複合樹脂粒子に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さをいう。
無作為に選択した10個の粒子について、赤外分光分析ATR測定法により表層分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、粒子表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。
各赤外吸収スペクトルから個別吸光度比(D698/D1376)をそれぞれ算出し、表層について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とする。
ポリスチレン系樹脂比率(質量%)は、後述の検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出する。
吸光度D698及びD1376は、Nicolet社製の測定装置;商品名「フーリエ変換赤外分光分析計MAGNA560」と、ATRアクセサリーとしてSpectra−Tech社製「サンダードーム」を用いて次の条件で測定する。
高屈折率結晶種:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°±1°
測定領域:4,000cm-1〜675cm-1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm-1
積算回数:32回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを上記の条件で測定し、測定された赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドとする。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理する。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化する。そのため、ATRアクセサリーの「サンダードーム」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行う。
赤外吸収スペクトルから得られる698cm-1での吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、698cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D698は、1,280cm-1と860cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、710cm-1と685cm-1間の最大吸光度を意味する。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1,376cm-1での吸光度D1376は、ポリプロピレン系樹脂に含まれる−C−CH3炭化水素のCH3の対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、1,376cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施しない。吸光度D1376は、1,414cm-1と1,340cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、1,400cm-1と1,350cm-1間の最大吸光度を意味する。
発泡成形体の黒色度ΔE’を、JIS Z8729−2004「色の表示方法−L*a*b*表色系」に基づく色差測定により評価する。
測定には、色彩色差計(コニカミノルタ株式会社製、型式:CR−400)及び標準合わせに標準白板校正板(Y:94.3、x:0.3144、y:0.3208)を用いる。
具体的には、発泡成形体の縦横面の任意の10点について、測定面積をφ8mmとして測定し平均値を算出した明度L*値、色座標a*値及びb*値から、次式により黒色度としてΔE’を算出する。
ΔE’=L*+|a*|+|b*|
発泡成形体の難燃性を、米国自動車安全基準FMVSS 302に基づく燃焼速度の測定により評価する。
発泡成形体から切り出した350mm×100mm×12mm(厚み)試験片の燃焼速度を測定し、次の基準により難燃性を評価する。
燃焼速度80mm/min以下:良好(○)
燃焼速度80mm/minを超える:不良(×)
ASTM D 3575に準拠して測定する。
発泡成形体を縦50mm×横50mm×厚み25mmに切断加工した試験片を、圧縮速度12.5mm/分の条件で圧縮し、50%圧縮時の強度(MPa)を測定する。
成形体を55℃の恒温槽の中に1時間置いた後に取り出し、23℃で24時間放置する。
その後、発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚み30mmの平面長方形状の板状試験片を切り出し、その試験片を直径160mm×深さ200mmの蓋付きのステンレス容器内に入れ、このステンレス容器ごと60℃の恒温槽の中に1時間置いた後に取り出し、23℃で30分間放置する。
次に、10000倍に希釈したイソ吉草酸(第一薬品産業社製)の臭い(臭気強度が0〜5段階のうちの3)を嗅ぎ、これを基準臭とする。
次に、ステンレス容器の蓋を少し開けて、容器内の臭いを嗅ぎ、基準臭より臭いが強い場合、臭気強度を4もしくは5とし、より臭いが強い場合、臭気強度5に近づける。一方、基準臭より臭いが弱い場合、臭気強度を0、1もしくは2とし、より臭いが弱い場合、臭気強度0に近づける。
この試験を5人が同様に行い、その5人の平均値を臭気強度とし、次の基準により評価する。
臭気強度4〜5;×
臭気強度3 ;△
臭気強度0〜2;○
発泡成形体に含有する有機揮発成分として、スチレン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンの含有量(%)を次のようにして測定する。
20mLバイアルに、発泡成形体0.2gを入れ、溶媒としてジエチルベンゼン(DEB)含有ジメチルホルムアミド(DMF)1mLを加え、試料を溶媒に溶解して試料溶液を調製する。次に、この試料溶液を入れたバイアルを90℃で1時間加熱した後、この試料溶液の蒸気を採取し、この蒸気を、ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製、商品名「GC−18A」)を用いて、次の測定条件で内部標準法により定量する。
カラム:直径0.25mm×長さ30m、膜厚0.25μmのカラム(J&W社製、商品名「DB−WAX」)
検出器:水素炎イオン化型検出器(Flame Ionization Detector、FID)
カラムの温度条件:50℃で2分間保持後、100℃まで10℃/minで昇温し、100℃で5分間保持後、220℃まで40℃/minで昇温し、220℃で2分間保持
カラムの注入口温度:150℃
検出器温度:250℃
測定試料溶液注入量:2mL
スプリット比:70:1
カラム流量:1.6mL/min(He)
ガス圧力:122kPa
JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと、30℃から−40℃まで降温した後、10分間保持し、−40℃から220℃まで昇温(1st Heating)、10分間保持後、220℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間保持後、−40℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得る。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/minで行い、基準物質としてアルミナを用いる。本発明において、融点とは、2nd Heating過程にみられる融解ピークのトップの温度を読みとった値である。
(核樹脂粒子の作製)
ポリプロピレン系樹脂(株式会社プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ(フィルム)」、銘柄「F−744NP」、融点140℃)1,900gと、黒色着色剤としてのファーネスブラック(三菱化学株式会社製、商品名「三菱カーボンブラック」、銘柄「中級カラー(MCF)#900」)100gとを、タンブラーミキサーに投入し、7分間混合した。
次いで、得られた混合物を押出機(東芝機械株式会社製、型式:SE−65)に供給し、加熱溶融して押出し、水中カット方式により造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂にファーネスブラックを5質量%含有させた球状のカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子(ポリオレフィン系樹脂に対するカーボンブラック5.0質量%)を得た。このときの樹脂粒子を100粒あたり74mg、平均粒子径約1mmに調整した。
以下の実施例/比較例においては、重合、難燃化及び発泡性粒子の作製について、昇温/降温速度を1℃/minで行った。
(懸濁液の調製:工程(A))
次いで、得られたカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子760gを、撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)に入れ、更に水性媒体としての純水2,000g、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム20g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2g、重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mgを加えた。得られた混合物を撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間25℃で保持し、その後70℃に昇温して懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジ−t−ブチルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーブチルD」)0.3gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジ−t−ブチルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーブチルD」)2.0gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体920gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間30分保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
次いで、反応液の温度を60℃に降温(冷却)し、反応液中に、難燃剤としてのトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成株式会社製)60gと、難燃助剤としての2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ株式会社製)10gとを投入した。投入後、反応液を140℃に昇温し、同温度、撹拌下で4時間保持し、カーボンブラック含有複合樹脂粒子を難燃化処理した。
次いで、反応液を25℃まで冷却した後、20%塩酸水溶液を用いて酸洗浄を行うことによって分散剤を除去し、オートクレーブからカーボンブラック含有複合樹脂粒子2,000gを取り出した。
次いで、取り出したカーボンブラック含有複合樹脂粒子2,000gと水2,000gとを、再び撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブに投入し、更に発泡剤としてのブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)300gを注入した。注入後、その混合物を70℃に昇温し、同温度、撹拌下で4時間保持した。
その後、混合物を25℃まで冷却し、オートクレーブからカーボンブラック含有複合樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥した後に発泡性カーボンブラック含有複合樹脂粒子2,100gを得た。
次いで、得られた発泡性カーボンブラック含有複合樹脂粒子を、缶容量40リットルの予備発泡機(笠原工業株式会社製、型式:PSX40)に1,000g投入し、缶内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱し、嵩発泡倍数42倍に予備発泡させ、発泡粒子を得た。
次いで、得られた予備発泡粒子を、1日間25℃に放置した後、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの内寸のキャビティを有する成形型のキャビティ内に充填し、成形型に0.23MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱し、その後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、複合樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の各種物性を評価した。
それらの結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第1の重合:工程(B)及び(C))
実施例1と同様にして得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジ−t−アミルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスDTA」)0.4gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジ−t−アミルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスDTA」)2.6gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体920gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間30分保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は実施例1と同様にして、複合樹脂発泡成形体を得、その物性を評価した。
それらの結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第1の重合:工程(B)及び(C))
実施例1と同様にして得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジ−t−ヘキシルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーヘキシルD」)0.6gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジ−t−ヘキシルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーヘキシルD」)3.7gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体920gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間30分保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は実施例1と同様にして、複合樹脂発泡成形体を得、その物性を評価した。
それらの結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(核樹脂粒子の作製)
実施例1と同様にして、球状のカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
(カーボンブラック含有複合樹脂粒子の作製)
(懸濁液の調製)
次いで、得られたカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子760gを、撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)に入れ、更に水性媒体としての純水2,000g、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム20g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2g、重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mgを加えた。得られた混合物を撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間25℃で保持し、その後70℃に昇温して懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パークミルD」)0.6gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パークミルD」)3.7gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体920gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間30分保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、カーボンブラック含有複合樹脂粒子を得た。
(難燃化)
実施例1と同様にして、難燃化処理したカーボンブラック含有複合樹脂粒子を得た。
得られた発泡成形体の各種物性を評価した。
それらの結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第1の重合)
実施例1と同様にして得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「ナイパーBW」0.5gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「ナイパーBW」3.3gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体920gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間30分保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は実施例1と同様にして、複合樹脂発泡成形体を得、その物性を評価した。
それらの結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第1の重合)
実施例1と同様にして得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジ−t−ブチルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーブチルD」)1.6gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジ−t−ブチルパーオキサイド(日油株式会社製、商品名「パーブチルD」)7.7gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体920gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間30分保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得たこと以外は実施例1と同様にして、複合樹脂発泡成形体を得、その物性を評価した。
それらの結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
以上のことから、本発明は、発泡成形体の含有成分に由来する臭気の脱臭工程を軽減もしくは省略することを可能にする臭気低減複合樹脂粒子の製造方法であることがわかる。
Claims (5)
- ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子の製造方法であり、
(A)分散剤を含む水性媒体中に、前記ポリオレフィン系樹脂の粒子を分散させて懸濁液を得る工程、
(B)次いで、得られた懸濁液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記スチレン系単量体を前記ポリオレフィン系樹脂の粒子に含浸させて反応液を得る工程、及び
(C)次いで、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程
を含むか、前記工程(A)〜(C)に
(D)次いで、前記工程(C)で得られた反応液に、スチレン系単量体と重合開始剤とを添加し、前記ポリオレフィン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−25)〜(T+15)℃の温度に、得られた反応液を加熱して前記スチレン系単量体を重合させて複合樹脂粒子を得る工程
をさらに含み、
前記重合開始剤が、次式:
で表されるジアルキルパーオキサイドであることを特徴とする複合樹脂粒子の製造方法。 - 前記重合開始剤が、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド及びジ−t−ヘキシルパーオキサイドから選択される請求項1に記載の複合樹脂粒子の製造方法。
- 前記重合開始剤が、前記工程(B)及び(D)において同時に添加されるスチレン系単量体のそれぞれに対して0.05〜0.5質量%である請求項1又は2に記載の複合樹脂粒子の製造方法。
- 前記ポリオレフィン系樹脂の粒子が、前記ポリオレフィン系樹脂に対して1.5〜17.0質量%のカーボンブラックを含有する、カーボンブラック含有ポリオレフィン系樹脂の粒子である請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子の製造方法。
- 前記工程(C)または(D)の後に、
(E)前記複合樹脂粒子を含む混合液に、前記複合樹脂粒子100質量部に対して、難燃剤として、1.5〜6.0質量部のトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート又はビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、及び難燃助剤として、0.1〜2.0質量部の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを添加して、前記複合樹脂粒子を難燃化処理する工程
をさらに含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子の製造方法。
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