JP2016068681A - 鞍乗型車両のカウル - Google Patents

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Abstract

【課題】カウルを大型化する場合には空気抵抗の増大を抑制でき、カウルを小型化する場合には運転者の腹部に当たる走行風の流れを抑制でき、デザイン設計の自由度を確保できるようなカウルを提供する。
【解決手段】カウル21のカウルボディ22の一部を構成するフロント部23に空気通路51を設け、空気通路51の流入口52をフロント部23の前部中央付近に配置し、空気通路51の流出口53をフロント部23の側部に配置する。自動二輪車の走行時に発生する走行風は、カウル21の前部中央付近から空気通路51に流入し、空気通路51を通過してカウル21の側方に流出する。
【選択図】図2

Description

本発明は、鞍乗型車両の前側に設けられたカウルに関する。
自動二輪車等の鞍乗型車両の前側に設けられたカウル(カウリング)は、走行時の空気(走行風)を整流し、走行風から運転者を保護し、または鞍乗型車両のデザインを良くする等の役割を有する(下記の特許文献1参照)。
カウルを大型化することにより、例えば、高速走行時に受ける強い走行風から運転者を保護する効果、または、長時間走行時において走行風を受け続けることによって生じる運転者の疲労を軽減する効果を高めることができる。また、ツアラー、レーサーレプリカ、スーパースポーツ等の車種では、カウルを大型化することにより、見栄えを良くし、または個性的なデザインを創り出すことができる。
特開2012−162094号公報
ところで、カウルの大型化には、上述したように、走行風からの運転者の保護を強化し、またはデザインをより良くする効果を得ることができる一方、走行時の空気抵抗が増大するという問題がある。
また、走行風がカウルに当たることにより、カウルの側方の外側を流れる走行風がカウルの後方位置でカウルの内側に巻き込まれるようにして鞍乗型車両の左右方向(車幅方向)中央に向けて吹き込み、その吹き込んだ風が運転者の腹部に当たることがある。運転者の不快感または疲労を軽減するために、このような運転者の腹部に当たる走行風の流れは抑制することが望ましい。しかし、カウルを大型化するだけでは、このような走行風の流れを抑制することは困難であるという問題がある。
また、特許文献1には、自動二輪車に設けるサイドカウルが記載されている。このサイドカウルはフロントカウルの側方に配置されている。このサイドカウルは、空気抵抗の増大を抑制しつつ、運転者に走行風や泥が当たるのを抑制するための走行風通路を備えている。すなわち、このサイドカウルは第1のカウルと第2のカウルとを備え、第1のカウルは自動二輪車のヘッドパイプおよびフロントフォークの左右方向側方を覆っている。第2のカウルは、第1のカウルにおいてヘッドパイプおよびフロントフォークの左右方向の外方に位置する部分の外方に配置されている。そして、第1のカウルと第2のカウルとの間には走行風通路が形成されている。特許文献1によれば、この走行風通路に走行風の一部を通すことで、空気抵抗の増大を抑制しつつ、運転者に走行風や泥が当たるのを抑制することができるとのことである。
しかし、この特許文献1のサイドカウルには次のような問題がある。すなわち、特許文献1のサイドカウルにおいて、走行風通路の流入口は、フロントカウルの前部の左右方向中央から側方に離れた位置に配置されている。自動二輪車の前方からフロントカウルおよびサイドカウルに当たる走行風の圧力をみた場合、圧力が最も大きい箇所はフロントカウルの前部の左右方向中央であり、その箇所から側方に移るに従って走行風の風圧が小さくなる。このため、フロントカウルの前部の左右方向中央から側方に離れた位置に配置されたサイドカウルの流入口には、走行風が十分に流入しないおそれがある。
また、特許文献1のサイドカウルにおいて、走行風通路の流出口は、自動二輪車の後方に向かって開口しているため、走行風通路を通過した走行風は流出口からサイドカウルの後方に向けて吹き出る。この構成では、サイドカウルの側方の外側を流れる走行風の向きを、流出口から吹き出た走行風により、サイドカウルから側方へ引き離す方向に変えることができない。この結果、運転者の腹部に当たる走行風を十分に抑制することができないおそれがある。
また、特許文献1のサイドカウルにおいては、第1のカウルの外方に第2のカウルを配置する構成であるため、全体的にみてサイドカウルが左右方向に大きくなってしまう。このため、フロントカウルとサイドカウルとを合わせたカウル全体のデザイン設計の自由度が制約され、カウルのデザインを良くすることが難しくなる。
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、大型化しても空気抵抗の増大を抑えることができ、または運転者の腹部に当たる走行風を抑制することができるカウルを提供することにある。
また、本発明の第2の課題は、デザイン設計の高い自由度を確保しつつ、空気抵抗の抑制または運転者の腹部に当たる走行風の抑制を実現することができるカウルを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、鞍乗型車両の前側を覆うカウルであって、カウルボディと、前記カウルボディの前部の左右方向中央部から前記カウルボディの側部にかけての部分に形成された通路形成部とを備え、前記通路形成部には、前記カウルボディの前部の左右方向中央部から前記カウルボディの側部にかけて伸長する空気通路が形成され、前記空気通路の流入口は前記カウルボディの前部の左右方向中央部において前記カウルボディの外側へ前向きに開口し、前記空気通路の流出口は前記カウルボディの側部において前記カウルボディの外側へ横向きに開口し、前記空気通路は前記乗鞍型車両の走行時に発生する走行風を通過させることを特徴とする。
本発明のカウルによれば、カウルボディに当たる走行風の圧力の高い領域に流入口を配置したことにより空気通路を通過する走行風の量を増やすことができ、カウルの空気抵抗を減らすことができる。また、空気通路を通過する走行風を、カウルボディの側部に開口した流出口から流出させることができ、カウルの側方で走行風の渦流が形成されるのを抑制でき、または、カウルの側方で形成された渦流をカウルの側方へ吹き飛ばしてカウルから離すことができる。これにより、運転者の腹部に当たる走行風を減らすことができる。
また、上述した本発明において、前記カウルボディは、前面または前端と側面または側端との間を外向きに湾曲しながら伸張する湾曲部を有し、前記空気通路は前記湾曲部に配置されていることが望ましい。
これにより、デザイン設計上の自由度を確保しつつ、空気抵抗を低くし、運転者の腹部に当たる走行風を減らすことができる。
また、上述した本発明において、前記空気通路は、水平断面にて前記鞍乗型車両の左右方向の中心を前後方向に貫く基準線に対して傾斜していることが望ましい。
これにより、走行風を空気通路を介してカウルの側部に円滑に運ぶことができる。
また、上述した本発明において、前記カウルボディの前部の左右方向中央には前方に突き出た突出部が形成され、前記流入口は前記突出部に近接した位置に配置され、前記突出部の突出端から前記流入口に至るまでの間には、前記突出端から前記流入口に向かうに従って後方に緩やかに傾斜する傾斜面が形成されていることが望ましい。
これにより、流入口へ直接流入する走行風だけでなく、カウルボディの前部の左右方向中央に当たった走行風を、傾斜面上を移動させて流入口へ円滑に流して走行風を集め、より大量の走行風を流入口内に流入させることができる。
また、上述した本発明において、前記流出口は前記流入口よりも高い位置に配置されていることが望ましい。
通常カウルは運転者の腹部の前下方に配置されているが、これにより、空気通路を通過した走行風を、運転者の腹部の高さ位置の側方に向かって、カウルの側方へ流出させることができる。したがって、運転者の腹部に当たる走行風を減らす効果を向上させることができる。
また、上述した本発明において、前記通路形成部には、前記空気通路の断面積を前記流入口側から前記流出口側に向かうに従って小さくする狭窄部が形成されていることが望ましい。
これにより、流出口から流出する走行風の流速を速くすることができる。
また、上述した本発明において、前記通路形成部には、前記空気通路の中間部を前記カウルボディの内部に連通させる孔が形成されていることが望ましい。
これにより、カウルボディの内部の負圧を抑制することができると共に、孔を外部から見えにくい位置または見えない位置に配置することができる。
本発明によれば、カウルを大型化しても、空気抵抗の増大を抑えることができ、またはカウルを小型化しても、運転者の腹部に当たる走行風の流れを抑制することができる。また、本発明によれば、デザイン設計の高い自由度を確保しつつ、空気抵抗の抑制または運転者の腹部に当たる走行風の流れの抑制を実現することができる。
本発明の第1の実施形態によるカウルが設けられた自動二輪車を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態によるカウルを示す正面図である。 本発明の第1の実施形態によるカウルを示す側面図である。 本発明の第1の実施形態によるカウルの分解図である。 図3中の矢示V−V方向から見たフロント部の断面図である。 図5中の矢示VI−VI方向から見たフロント部の断面図である。 本発明の第1の実施形態によるカウルの作用を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態によるカウルの作用を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態によるカウルにおける走行風の流れを示す説明図である。 他のカウルにおける走行風の流れを示す説明図である。 本発明の第2の実施形態によるカウルが設けられた自動二輪車を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態によるカウルのフロント部を示す断面図である。 本発明の実施形態によるカウルの変形例を示す正面図である。 本発明の実施形態によるカウルの他の変形例を示す正面図である。 本発明の実施形態によるカウルのさらなる他の変形例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の説明において、前、後、左、右の方向は自動二輪車の運転者を基準にする。
図1は鞍乗型車両の具体例である自動二輪車を示している。図1において、自動二輪車1は、車体フレーム2を備え、車体フレーム2にはエンジン3が支持されている。車体フレーム2の前端部にはヘッドパイプ4が固定され、ヘッドパイプ4にはステアリング軸5が支持されている。ステアリング軸5にはフロントフォーク6が取り付けられ、フロントフォーク6には前輪7が支持されている。また、フロントフォーク6の下部には前輪7の上側を覆うようにフロントフェンダ8が固定されている。また、ステアリング軸5の上側にはハンドル9が取り付けられている。また、ハンドル9の前方にはメータユニット10が配置され、メータユニット10には、スピードメータ、タコメータ等の表示機器が設けられている。また、エンジン3の前方において車体フレーム2にはラジエータ11が取り付けられている。一方、車体フレーム2の後端部にはスイングアーム12が接続され、スイングアーム12には後輪13が支持されている。
また、自動二輪車1の前部には、本発明の第1の実施形態によるカウル21が設けられている。本実施形態において、カウル21は、自動二輪車1の前部の主に上側のみを覆うハーフカウルであり、車体フレーム2の前部に固定されている。
図2ないし図6はカウル21を示している。すなわち、図2はカウル21の正面図であり、図3はカウル21の側面図である。図4はカウル21の分解図である。図5は図3中の矢示V−V方向からみたカウル21のフロント部23の断面図であり、図6は図5中の矢示VI−VI方向からみたフロント部23の断面図である。
図2に示すように、カウル21を形成するカウルボディ22は、カウルボディ22の前部に位置するフロント部23と、カウルボディ22の上部に位置するトップ部24と、カウルボディ22の左部(図2中の右側)に位置する左サイド部25と、カウルボディ22の右部(図2中の左側)に位置する右サイド部26と、左サイド部25および右サイド部26の前下部にそれぞれ取り付けられたロワーエッジ部27とを備えている。
図1に示すように、フロント部23、トップ部24、および両者間に取り付けられたヘッドランプ35からなる部分は、自動二輪車1の前部中央領域、すなわち、ヘッドパイプ4の前方を覆っている。また、左サイド部25(図3参照)は、自動二輪車1の前部左側領域、すなわち、ヘッドパイプ4の左方を覆っている。また、右サイド部26は、自動二輪車1の前部右側領域、すなわち、ヘッドパイプ4の右方を覆っている。また、左サイド部25および右サイド部26はそれぞれ、自動二輪車1の前部横側の下側領域まで伸張しており、ラジエータ11の側方をも覆っている。
また、図2に示すように、トップ部24の上側にはウインドスクリーン31が取り付けられている。また、カウルボディ22の前部中央部にはヘッドランプ取付部32が形成されている。また、トップ部24の左部および右部にはミラー取付部33がそれぞれ形成されている。また、左サイド部25および右サイド部26には方向指示器取付部34がそれぞれ形成されている。図1に示すように、ヘッドランプ取付部32にはヘッドランプ35が取り付けられ、各ミラー取付部33にはバックミラー36が取り付けられ、各方向指示器取付部34には方向指示器37が取り付けられている。また、図3に示すように、左サイド部25および右サイド部26のそれぞれの下部には、下部通気孔38が形成されている。下部通気孔38は、車両の前後方向で、ラジエータ11とエンジン3の間の側方に配置され、ラジエータ11を通過した走行風が通過して、カウルボディ22の外部に排気される。
また、図4に示すように、カウルボディ22において、フロント部23、トップ部24、左サイド部25、右サイド部26、および左、右のロワーエッジ部27はそれぞれ独立した部材により形成されており、さらに、フロント部23は、アウター部材41および2つのインナー部材42により形成されている。各部材は例えば樹脂成形により形成されている。カウルボディ22は、例えば、まず、アウター部材41に各インナー部材42をネジ等で固定してフロント部23を形成し、また、左サイド部25および右サイド部26にロワーエッジ部27をネジ等でそれぞれ固定し、次に、フロント部23に左サイド部25および右サイド部26をネジ等でそれぞれ固定し、次に、フロント部23、左サイド部25および右サイド部26にトップ部24をネジ等で固定することにより組み立てられる。つまり、カウルボディ22は、その基本部分が左サイド部25と右サイド部26に分割されており、ヘッドランプ35の下側であってカウルボディ22の先端部分となるフロント部23と、ヘッドランプ35の上側に配置されるトップ部24により左サイド部25と右サイド部26が連結されて組み立てられている。また、このように組み立てられたカウルボディ22の上部にウインドスクリーン31がネジ等で固定される。
また、フロント部23のアウター部材41は、図5に示すように、その平面視(水平方向断面)において、自動二輪車1の前側中央から左後方および右後方に向け、水平方向にそれぞれ緩やかに拡張する弓形状に形成されている。具体的には、アウター部材41の前部中央部には前方に突出する突出部43が形成されている。また、アウター部材41において、突出部43から左側(図5中の右側)の後方にかけての部分には、外向きに湾曲しながら伸張する湾曲部44が形成され、突出部43から右側(図5中の左側)の後方にかけての部分には、外向きに湾曲しながら伸張する湾曲部45が形成されている。
また、図2に示すように、フロント部23の前部の左右方向中央部からフロント部23の左部にかけての部分には通路形成部47が形成されている。また、フロント部23の前部の左右方向中央部からフロント部23の右部にかけての部分には通路形成部48が形成されている。
図3に示すように、左側の通路形成部47には、フロント部23の前部の左右方向中央部からフロント部23の左部にかけて伸長する空気通路51が形成されている。また、空気通路51の流入口52は、フロント部23の前部の左右方向中央部においてカウルボディ22の外側へ前向きに開口している。つまり、空気通路51の流入口52は、車両の前方側から見てフロント部23の左右方向中央部付近に配置されて、前方から直接流入する走行風やカウルボディ22に沿って流れる走行風を取り入れる。また、空気通路51の流出口53は、フロント部23の左部においてカウルボディ22の外側へ左向きに開口している。つまり、空気通路51の流出口53は、カウルボディ22の車両の前後方向に沿った側部(車両の前後方向に対して左右45度の範囲内の面)に配置されて、流入口52にて取り込まれた走行風を車両の後側方(詳細には、後上側方)に勢いよく吹き出す。
図4および図5に示すように、通路形成部47においては、アウター部材41にその内側からインナー部材42が取り付けられており、アウター部材41とインナー部材42により空気通路51が形成されている。インナー部材42は、図6に示すように、断面が車両の中央側に凸となる略U字状の溝状に形成され、図5に示すように、フロント部23の前部の左右方向中央部からフロント部23の左部にかけての部分をフロント部23の内側から覆っている。すなわち、インナー部材42はアウター部材41の内側から流入口52、流出口53、および両者間の部分を覆って、流入口52と流出口53とを連通させる空気通路51を形成している。アウター部材41とインナー部材42との間には両者により包囲された筒状または管状の空間が形成され、その空間が空気通路51となっている。また、流入口52と流出口53の両者間の空気通路51の部分は、囲まれた断面空間となっており、この空気通路51の一端側が流入口52に連通し、他端側が流出口53に連通している。
また、図5に示すように、通路形成部47の空気通路51は、略水平な空気通路51に沿った断面にて、自動二輪車1の左右方向中心を前後方向に貫く基準線A−Aに対し、後方に進むに従って左方(図5中の右側)に向かうように傾斜している。また、図5に示すように、空気通路51の外壁はアウター部材41により形成され、空気通路51の内壁はインナー部材42により形成されているが、空気通路51の流入口52から流出口53までの間において、空気通路51の内壁と外壁との平面視における形状を比較すると、外壁は曲率が大きく外向きの膨らみが大きいのに対し、内壁は曲率が小さく外向きの膨らみが小さい。さらに、図5に示すように、通路形成部47には、空気通路51の断面積を流入口52側から流出口53側に向かうに従って小さくする狭窄部54が形成されている。狭窄部54は、アウター部材41またはインナー部材42において流出口53の近傍に位置する部分に形成されている。また、流出口53の開口面積は流入口52の開口面積よりも小さい。空気通路51内の流れに垂直な断面において、流出口53の断面積は流入口52の断面積よりも小さい。
また、図3に示すように、空気通路51の流出口53は流入口52よりも高い位置に配置されており、空気通路51は、自動二輪車1の後方に進むに従って上方に向かうように車両の側面視で傾斜している。また、空気通路51は、その側面視において、直線B−Bに沿うように、直線状に伸長している。
また、図5に示すように、空気通路51はカウルボディ22の内部に配置されている。また、空気通路51の流入口52および流出口53は、フロント部23のアウター部材41の湾曲部44にそれぞれ配置されている。具体的には、流入口52は湾曲部44の前部(フロント部23の中央寄り部分)に配置され、流出口53は湾曲部44の後部(フロント部23の側部に達する部分)に配置されている。また、空気通路51の流入口52、流出口53および両者間の空気通路51の途中部分は、図1に示すように、自動二輪車1のヘッドパイプ4よりも前であって、ラジエータ11よりも上であって、かつメータユニット10よりも下に配置されている。
フロント部23において右側の通路形成部48は、左側の通路形成部47と左右対称に形成されており、右側の通路形成部48に形成された空気通路51の流入口52および流出口53は、フロント部23のアウター部材41の湾曲部45にそれぞれ配置されている。右側の通路形成部48は、左右の配置が異なる点を除き、上述した左側の通路形成部47と同様に形成されている。
図7および図8は、カウル21に形成された空気通路51を通過する空気の方向を示し、図9はカウル21の外側および空気通路51における空気の流れを示している。図10は、空気通路51を有しない他のカウル101の外側における空気の流れを示している。
自動二輪車1が走行すると走行風が発生する。カウル21の前部はこの走行風を受ける。カウル21のうち、走行風の圧力が最も高くなる領域は、車両の前端であって車両の前方に向け突出するカウル21の前部中央付近の前方領域である。フロント部23のアウター部材41の突出部43は、カウル21の前部中央に近い位置に配置されているので、突出部43の前方領域における走行風の圧力は高くなる。カウル21に当たる走行風は、この突出部43から、突出部43の周囲のカウル21の外面に沿って後方へ流れる。突出部43から後方に向かって流れる走行風の一部は、フロント部23、左サイド部25、右サイド部26、トップ部24およびウインドスクリーン31の外面上を流れて後方に進むが、突出部43から後方に向かって流れる走行風の他の一部は、図7または図8中の矢示に示すように、突出部43から各空気通路51の流入口52に向かって流れ、流入口52の車両側方側縁部(アウター部材41の流入口52と流出口53の両者間の空気通路51の部分)にて受け止められて流れる向きを変え、直接車両の前方側から流入口52に流入する走行風とともに、流入口52へ流入し、各空気通路51内を通過し、各流出口53から流出する。なお、アウター部材41の流入口52と流出口53の両者間の空気通路51の部分は、湾曲部44、45に配置されている。
ここで、各空気通路51の流入口52は、カウル21における前部中央部の、走行風の圧力が高い先端領域、あるいは、カウル21の前面であってカウル21の先端部に緩やかな斜面でつながる周辺部に配置されているので、流入口がカウルにおいて前部中央部から離れた位置(例えば上記特許文献1に記載されたカウルのように、カウルの側部)に配置されている場合と比較して、流入口52に流入する走行風の量を多くすることができ、また、流入口52に流入する走行風の流速を速くすることができる。これにより、カウル21の前方に発生する走行風の圧力を低減することができ、空気抵抗(走行抵抗)を減らすことができる。
特に、フロント部23のアウター部材41において、突出部43と各流入口52との間には、突出部43から各流入口52に向かって緩やかに後方および側方に傾斜する傾斜面46が形成されている。突出部43に当たった高圧の走行風は、この傾斜面46上を通過して各流入口52に至る。このように、突出部43の近傍に各流入口52を配置し、突出部43から各流入口52にかけて傾斜面46を形成したことにより、突出部43に当たった高圧の走行風を各流入口52に円滑に導くことができ、各流入口52に流入する走行風の量を増やし、また、各流入口52に流入する走行風の流速を速めることができる。これにより、カウル21による空気抵抗を減らす効果を高めることができる。
また、各空気通路51は、図5中の基準線A−Aに対して水平方向に傾斜しているので、各流入口52から各空気通路51に流入した走行風を、空気通路51によりカウル21の側部に運ぶことができる。また、各空気通路51に流入した走行風は、空気通路51の外壁(アウター部材41)に比べて曲率が小さい空気通路51の内壁(インナー部材42)に沿うように流れるので、より車両の前後方向に沿った流れとなり、各空気通路51を流れる走行風に作用する抵抗を下げることができ、それゆえ、走行風をカウル21の側方に円滑に流すことができ、カウル21による空気抵抗を減らすことができる。
また、各空気通路51は、車両の側面視で図3中の直線B−Bに沿うように、上向きに傾斜しつつ直線状に伸長しているので、各空気通路51に流入した走行風を、後上方の運転者15の腹部(腰より上で脇の下より下の領域)の高さ位置とほぼ同一の高さとなる位置に向けて流出口53から噴出させることができる。
また、各空気通路51を通過した走行風は、図8に示すように、各流出口53からカウル21の外側へ流出する。各流出口53は、カウル21の側方に向いて開口しているので、各空気通路51を通過した走行風を各流出口53からカウル21の側方へ流出させることができる。各空気通路51を通過した走行風は、図7に示すように、自動二輪車1のヘッドパイプ4よりも前の位置で、カウル21の左方および右方にそれぞれ流出する。また、各空気通路51には図5に示すように流出口53に近づくに従って空気通路51断面積が減少する狭窄部54が形成されている。これにより、各流出口53から流出する走行風の流速を速めることができる。
このように、走行風の一部を各空気通路51内に取り込み、運転者15の腰部の高さ位置とほぼ同一の高さ位置で、後上方の運転者15の腹部の高さ位置とほぼ同一の高さとなる位置に向けてカウル21の側方から外部へ排出することにより、図9に示すように、カウル21の側方において渦流(乱流)が形成されるのを抑制することができる。また、カウル21の側方において渦流が形成された場合には、その渦流を、各流出口53から流出した走行風により吹き飛ばして(流れ方向を変えて)カウル21から離すことができる。この結果、走行風の渦流が運転者15の腹部に当たるのを防止することができる。
ここで、図10に示すように、空気通路51を有してない他のカウル101と、図9に示すように、空気通路51を有する本発明の第1の実施形態によるカウル21との走行風の流れを比較する。図9および図10は、車両の側面視で上向きに傾斜しつつ直線状に伸長している空気通路51に沿った(図3中の直線B−Bに沿う)断面であり、図9および図10中の矢印は走行風の流れをそれぞれ示している。
図10に示すように、空気通路を有していない他のカウル101においては、走行風がカウル101の前面に当たり、カウル101の前面に沿ってカウル101の側面に向かって左、右に流れ、カウル101の前面と側面(概ね車両の前後方向と45度の範囲内の角度となるカウル101の後ろ側の部分)を接続する湾曲部104、105にて剥離等して走行風は乱れ、カウル101の側方で渦流が形成され、その渦流がカウル101の後方でカウル101の幅よりも内側に巻き込まれ、渦流の多くが運転者15の腹部に当たる。カウル101の後方でカウル101の幅よりも内側に巻き込まれるこの現象は、渦流が発生することでより顕著となり、渦流の発生は、カウル101の前面と側面の角度差が大きいほど起こりやすくなる傾向がある。
一方、図9に示すように、カウル21の前面と側面を接続する湾曲部44、45の裏側にカウル21の前面と側面をつなぐ空気通路51を有している本発明の第1の実施形態によるカウル21においては、走行風がカウル21の前面に当たり、カウル21の前面に沿ってカウル21の側面に向かって左右に流れるが、走行風はカウル21の前面に開口する流入口52に流れ込んでカウル21の前面と側面を接続する屈曲部の裏側の空気通路51を通過するので、前面と側面(概ね車両の前後方向と45度の範囲内の角度となるカウル21の後ろ側の部分)を接続する湾曲部44、45での形状による剥離等の走行風の乱れ、カウル21の側方での渦流の形成が抑制される。さらに、空気通路51以外の場所でカウル21の側方で渦流が形成されるも、その渦流は、各流出口53から流出する空気通路51を通過して整流されるとともに流速を増した走行風により後側方(カウル21の幅よりも車両の左右方向で外側)に吹き飛ばされるので、その渦流の多くは運転者15の腹部には当たらない。また、図9に示すように、空気通路51を有している本発明の第1の実施形態によるカウル21においては、カウル21の後方において走行風の渦流が形成されることがあるが、その渦流は運転者15の後方に運ばれるので、その渦流の多くは運転者15の腹部に当たることはない。
以上より、本発明の第1の実施形態によるカウル21によれば、カウル21の前方で高圧となる多量の走行風を各空気通路51を介してカウル21の側方に円滑に流すことができるので、カウル21を大型化しても、カウル21の前方に高圧が発生することを抑制またはカウル21の前方の圧力を低減でき、空気抵抗の増大(走行抵抗の増大)を抑えることができる。
また、運転者15の腰部の高さ位置とほぼ同一の高さ位置で、走行風を各流出口53からカウル21の側方に流出させ、車両の進行方向と角度を有し後上方の運転者15の腹部(腰より上で脇の下より下の領域)の高さ位置とほぼ同一の高さとなる位置に向けて流出口53から走行風を噴出させることができるので、カウル21の側方を通過して乱れた広い上下範囲の走行風に、流出口53から噴出させた走行風を作用させて運転者15の腹部に当たる走行風の流れを抑制することができる。
また、各空気通路51を、カウル21において前部に配置されたフロント部23の湾曲部44、45に配置し、また、各空気通路51を、カウル21の内部であって、ヘッドパイプ4よりも前であって、ラジエータ11よりも上であって、かつメータユニット10よりも下に配置することにより、カウル21のデザイン設計の高い自由度を確保することができる。すなわち、カウル21のフロント部23の湾曲部44、45に空気通路51を形成することで、デザインの悪化を防ぐことができ、また、空気通路51の形成自体をデザインの向上に生かすことができる。また、空気通路51をカウル21の内部に配置することで、カウル21の外面に大きな凹凸が形成されるのを防止することができ、良好なデザインを作り易くすることができる。また、多くの自動二輪車において、ラジエータとメータユニットとの間には、大きな未使用空間が存在している。したがって、空気通路51をラジエータ11とメータユニット10との間に配置することにより、この大きな未使用空間を有効活用することができ、カウルのデザインを大幅に変更することなく空気通路51を追加することができる。
図11は本発明の第2の実施形態によるカウルが設けられた自動二輪車の前部を示し、図12は図11中の本発明の第2の実施形態によるカウル61のフロント部を示している。なお、図11および図12において、本発明の第1の実施形態によるカウル21と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。図12に示すように、本発明の第2の実施形態によるカウル61のフロント部23において、各通路形成部47、48には、空気通路51の中間部をカウルボディ22の内部に連通させる孔62が形成されている。孔62は、インナー部材42において空気通路51の中間部に相当する部分に形成され、インナー部材42を貫通している。さらに詳細には、孔62は、狭窄部54の始まりの部分であって、インナー部材42の断面が略U字状で車両の中央側に凸となる溝の底に形成され、比較的高い圧力が発生する場所でカウルボディ22の内部と連通するように形成されている。
各空気通路51の中間部に孔62を形成したことにより、図11および図12中の矢示に示すように、各空気通路51に流入した走行風の一部は、孔62を通過してカウルボディ22の内部に流出する。これにより、自動二輪車1の走行中にカウル61の外側を流れる走行風により、カウルボディ22の内部が負圧になるのを抑制することができる。従来、カウル内部の負圧が高まることにより、運転者の頭部がカウル側に引き寄せられ、運転がし難くなることがあった。本発明の第2の実施形態によるカウル61によれば、これを防止することができる。また、空気通路51の中間部に孔62を形成したことにより、孔62がカウル61の外面に露出することを避けることができる。すなわち、孔62を外部から見にくい位置または見えない位置に配置することができる。これにより、孔62の形成によってカウル61のデザインが悪化することを防止することができる。
なお、上述した各実施形態では、フロント部23の前部の左右方向中央部に、2つの流入口52を形成し、これらの流入口52に左、右の空気通路51をそれぞれ連通させる場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、図13に示すカウル71のように、フロント部72の前部の左右方向中央に1つの流入口73を形成し、この1つの流入口73と左、右の流出口53とを接続する空気通路74を形成してもよい。この場合、カウル71の先端部は流入口73の上下に配置されるかあるいは流入口73の周縁である。また、この場合、空気通路74の形状に適合するようにインナー部材の形状を変更する。この構成により、カウル21の前部中央に当たる高い圧力の走行風を効率よく空気通路74に取り込むことができる。
また、上述した各実施形態では、フロント部23をアウター部材41とインナー部材42を備える構成とし、アウター部材41に流入口52および流出口53を形成し、アウター部材41の内側から流入口52および流出口53を覆うようにインナー部材42を取り付けることにより空気通路51を形成する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、図14に示すカウル81のように、フロント部82の前部の左右方向中央部から側部にかけて凹部83を形成し、その凹部83上(凹部83の外側)にカバー板84を取り付け、凹部83の開口部の中間部を塞ぐことにより空気通路85を形成してもよい。この場合、凹部83においてカバー板84で塞がれていない2つの部分をそれぞれ流入口86および流出口87とする。また、これに代え、凹部83の開口部の全部を塞ぐカバー板84を設け、カバー板84に2つの孔を形成し、それらの孔をそれぞれ流入口86および流出口87としてもよい。さらに、左サイド部25と右サイド部26のそれぞれに一体に凹部を形成し、その凹部の外側にカバー板を取り付け、空気通路を形成してもよい。
また、図15に示すように、カウルボディ91に流入口92および流出口93を形成し、カウルボディ91の内部に、流入口92と流出口93とを接続するパイプ状の別体の部材である通路部材94を取り付けることにより空気通路95を形成してもよい。
また、上述した各実施形態では、図4に示すように、カウルボディ22を、フロント部23、トップ部24、左サイド部25、右サイド部26等のそれぞれ独立した部材を組み立てることにより形成することとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、フロント部23、トップ部24、左サイド部25および右サイド部26を一体成形してもよい。
また、本発明は、ハーフカウルのみでなく、フルカウルにも適用することができる。また、本発明は、スクーター、三輪車、バギー車等にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカウルもまた本発明の技術思想に含まれる。
1 自動二輪車
4 ヘッドパイプ
10 メータユニット
11 ラジエータ
15 運転者
21、61、71、81 カウル
22、91 カウルボディ
23、72、82 フロント部
24 トップ部
25 左サイド部
26 右サイド部
27 ロワーエッジ部
31 ウインドスクリーン
35 ヘッドランプ
41 アウター部材
42 インナー部材
43 突出部
44、45 湾曲部
46 傾斜面
47、48 通路形成部
51、74、85、95 空気通路
52、73、86、92 流入口
53、87、93 流出口
54 狭窄部
62 孔
83 凹部
84 カバー板
94 通路部材

Claims (7)

  1. 鞍乗型車両の前側を覆うカウルであって、
    カウルボディと、
    前記カウルボディの前部の左右方向中央部から前記カウルボディの側部にかけての部分に形成された通路形成部とを備え、
    前記通路形成部には、前記カウルボディの前部の左右方向中央部から前記カウルボディの側部にかけて伸長する空気通路が形成され、前記空気通路の流入口は前記カウルボディの前部の左右方向中央部において前記カウルボディの外側へ前向きに開口し、前記空気通路の流出口は前記カウルボディの側部において前記カウルボディの外側へ横向きに開口し、前記空気通路は前記乗鞍型車両の走行時に発生する走行風を通過させることを特徴とするカウル。
  2. 前記カウルボディは、前面または前端と側面または側端との間を外向きに湾曲しながら伸張する湾曲部を有し、前記空気通路は前記湾曲部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカウル。
  3. 前記空気通路は、水平断面にて前記鞍乗型車両の左右方向の中心を前後方向に貫く基準線に対して傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載のカウル。
  4. 前記カウルボディの前部の左右方向中央には前方に突き出た突出部が形成され、前記流入口は前記突出部に近接した位置に配置され、前記突出部の突出端から前記流入口に至るまでの間には、前記突出端から前記流入口に向かうに従って後方に緩やかに傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカウル。
  5. 前記流出口は前記流入口よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のカウル。
  6. 前記通路形成部には、前記空気通路の断面積を前記流入口側から前記流出口側に向かうに従って小さくする狭窄部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のカウル。
  7. 前記通路形成部には、前記空気通路の中間部を前記カウルボディの内部に連通させる孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のカウル。
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