JP2016067306A - ヒト免疫不全ウイルスの感染防御方法 - Google Patents

ヒト免疫不全ウイルスの感染防御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 より有効性の高いHIV感染症の治療、予防方法を提供すること。【解決手段】 HIVのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸、並びに転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、を有する核酸分子、当該核酸分子を細胞に導入する方法、当該核酸分子が導入された細胞、当該細胞を用いたHIV感染の防御・治療方法、疑似HIV感染評価系。【選択図】 なし

Description

本発明は、ヒト免疫不全ウイルスの感染防御あるいは予防に有用な方法、当該方法のためのベクター並びに組成物に関する。
ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus:HIV)は、ヒトにおける後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)の原因因子であり、免疫不全とそれに伴う日和見感染症を引き起こす。HIV感染は、世界保健機関により流行病として指定されていることからも明らかなように重大な国際健康問題である。抗レトロウイルス剤による薬剤療法の普及により、新規HIV感染者は減少傾向にあり、また複数の抗HIV薬を組み合わせた多剤併用療法(combination anti−retroviral therapy:cART)の普及により、AIDSによる死亡者数も減少しつつあるが、それでも毎年百万人を超える命が奪われている。また、多剤併用療法の普及によりHIV感染患者の寿命が延びたことから、HIV感染患者数は増加しており、現在では全世界で3000万人を超える患者がHIVに感染していると推定されている。
HIV感染症の治療においては、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、および侵入阻害剤の組み合わせを含む多剤併用療法などの抗レトロウイルス剤療法により、この療法が利用可能である世界の地域においてHIV/AIDS新規罹患率および死亡率が低下している。しかしながら、多剤併用療法はHIV/AIDSのすべての症状を治癒または完全に除去はしないことから、感染患者は一生涯、多剤併用療法をうける必要がある。また、多剤併用療法は、いくつかの副作用ならびに薬剤耐性HIV株の出現も伴う可能性がある。
上述のような多剤併用療法の問題点に加え、服薬アドヒアランスの難しさ、長期間の服薬による毒性の問題もあり、新たな治療法の開発が望まれており、遺伝子治療法もその一つとして提案されている。即ち、HIV感染患者の造血幹細胞やCD4陽性ヘルパーT細胞に、HIVに対して抵抗性を発揮するような遺伝子を導入し、この細胞を感染患者に投与することによって、血中のHIV量、HIV感染細胞の割合を減少させ、CD4陽性ヘルパーT細胞の数を十分に維持することで患者の免疫機能を保持させる治療法が提案されている。上記遺伝子治療方法の一つとして、一本鎖RNAを特異的に切断するエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を利用した方法が報告されている(特許文献1)。当該方法は、HIVが感染した細胞において、効率的にHIVの複製/産生を抑制できる。
HIV感染症に対する別のアプローチとして、宿主細胞内へのウイルス侵入を阻害する機能を細胞に付与する方法が知られている。(特許文献2)
国際公開第2007/020873号パンフレット 国際公開第2011/008348号パンフレット
本発明は、上記従来技術に鑑みて行われたものであり、本発明の目的はより有効性の高いHIV感染症の治療、予防方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、HIVのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸、並びに転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸を調製し、両者を細胞に導入することにより、高い抗HIV効果が発揮されることを見いだした。また、これらの核酸分子が搭載されたベクター並びに組成物を開発し、本発明の方法を完成させた。さらに、本発明の過程で疑似HIV感染評価系も見いだした。
本発明を概説すれば、本発明の第一の発明は、下記(i)の核酸と(ii)の核酸の組み合わせ;
(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、に関する。
本発明の第一の発明において、一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが、塩基配列特異的にRNAを切断する活性を有するものであってもよく、一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドがMazFタンパク質であってもよい。また本発明の第一の発明において、ヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドが、膜局在領域を有するポリペプチドであってもよい。また、ヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドが、ヒト免疫不全ウイルスの膜タンパク質に由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。さらに、ヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドが、C46ポリペプチドであってもよい。
本発明の第二の発明は、(i)の核酸と(ii)の核酸が同一核酸分子上に配置された、本発明の第一の発明の核酸の組み合わせに関する。
本発明の第三の発明は、(i)の核酸と(ii)の核酸が異なる核酸分子上に配置された、本発明の第一の発明の核酸の組み合わせに関する。
本発明の第四の発明は、下記(i)の核酸と(ii)の核酸の両者が搭載されたベクター;
(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、に関する。
本発明の第五の発明は、下記(i)の核酸が搭載されたベクターと(ii)の核酸が搭載された他のベクターからなる、少なくとも2種類のベクター;
(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、に関する。
本発明の第四の発明及び第五の発明において、当該ベクターは、ウイルスベクターであってもよく、好ましくはレトロウイルスベクターである。
本発明の第六の発明は、ヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製を抑制できる細胞の製造方法であって、下記(i)の核酸と(ii)の核酸を細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法;
(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、に関する。
本発明の第七の発明は、ヒト免疫不全ウイルスの感染を防御する又は治療する方法であって、下記(i)の核酸と(ii)の核酸を細胞に導入する工程を含むこと又は当該細胞をヒトに投与する工程を含むことを特徴とする方法;
(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、に関する。
本発明の第八の発明は、下記(i)の核酸と(ii)の核酸を保持する細胞;
(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、に関する。
本発明の第九の発明は、細胞の免疫不全ウイルス感受性を評価する方法であって、
(a)ヒト免疫不全ウイルスのエンベロープに包まれ、かつレポータータンパク質をコードする核酸を有するレンチウイルスベクターを細胞に感染させる工程;及び
(b)細胞で発現されるレポータータンパク質由来の信号を解析し、感染防御の程度を数値化する工程を含むことを特徴とする、方法に関する。
本発明の第九の発明において、エンベロープは、ヒト免疫不全ウイルス由来のgp160タンパク質に由来するエンベロープタンパク質を含むものが好適に使用できる。
本発明により、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染を防御し、併せて細胞内でも当該ウイルスの複製を抑制するための核酸分子、当該核酸分子が導入された細胞、当該細胞を用いたHIVの感染防御方法が提供される。更に、当該感染防御を評価するための疑似HIV感染評価系が提供される。本発明の核酸分子及び細胞は、HIV感染症の予防、治療に有用である
本発明のHIV感染防御方法の効果の一例を示す図である。 本発明のHIV感染防御方法の効果の一例を示す図である。
本発明において、「核酸の組合せ」とは、2種以上の核酸分子を含有する構成物を意味し、単離された核酸分子、核酸を保持する機能的核酸分子(プラスミドやウイルスゲノム等)やそれらの組合せからなる構成物が例示される。2種以上の核酸分子を含む核酸構築物や機能性核酸分子も、本発明における「核酸の組合せ」である。
本発明において、「核酸分子」は、所望の核酸を、それにコードされているRNA又はポリペプチドが細胞内で発現するように、他の要素と組み合わせ、配置して作製されたものを指す。
(1)本発明の核酸の組み合わせ
本発明の核酸は、(i)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸、及び(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルス(HIV)と宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸の組み合わせであることを特徴とする。当該(i)の核酸と(ii)の核酸は、同一の核酸分子上に配置されてもよく、別々の異なる核酸分子上に配置されてもよい。
前記HIVのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列には特に限定はないが、例えば、HIVのTatタンパク質により転写が誘導される転写調節配列を使用することができる。Tatタンパク質はHIVのLTRプロモーターの作用により転写されたRNA内に存在するTAR(trans−activation responsive element)配列に結合してそれより下流の転写を活性化することから、本発明には、転写開始点の下流にTAR領域の塩基配列を有する転写調節配列を使用することができる。特に好適には、HIVのLTRや、前記LTRに適切な改変を施した転写調節配列が使用される。前記の改変としては、例えばプロモーター内に存在する宿主細胞由来の転写因子との結合部位の欠失やTat特異的な転写に不要な領域の欠失が例示される。前者の改変により、宿主由来転写因子による、HIV感染とは無関係な転写のレベルを低下させることが可能である。このような転写調節配列の改変については、例えば[プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第91巻、p365−369(1994)]に記載されている。また、後者の改変としてLTRのU5領域やTAR配列より下流の領域(R領域の一部及びU5領域)の欠失が例示される。このような欠失LTRを有する本発明の核酸は、当該核酸を保持する高タイターのレトロウイルスベクターを作製する際に有利である。
また、本発明において前記(i)の核酸は、HIVゲノムに存在するRRE(Rev−responsible element)を含んでいてもよい。当該RREは、HIV由来のトランス作用因子であるRevタンパク質との相互作用によって核内から細胞質に効率よくRRE配列を含むmRNAが輸送される。さらに、gag、pol遺伝子内に存在するCRS(cis−acting regulatory sequences)またはINS(inhibitory sequences)と呼ばれる領域は、Revタンパク質の非存在下ではHIVのmRNAの転写を抑制しているが、前記のRREならびにRevタンパク質との相互作用によってこの抑制作用が解除される。従って、本発明の核酸において、外来のポリペプチドをコードする遺伝子の3’側にこれらの転写調節配列を組み込むことにより、前記核酸にコードされるポリペプチドをRevタンパク質依存的に、すなわちHIV感染依存的に発現させることができる。
前記のHIV由来のトランス作用因子と相互作用する配列は、当該配列が本来的に組み込まれている機能的配列、例えばプロモーターとともに使用してもよく、異種の機能的配列と組み合わせて使用してもよい。例えば、本発明の核酸の導入が望まれる細胞においてmRNAの転写を開始しうる、HIV由来ではないプロモーターと前記の配列を組み合わせて構築された配列も、本発明に使用される「転写調節配列」に包含される。
本発明において前記(i)の核酸は、上記の転写調節配列に、前記転写調節配列によって発現の制御が可能な形態で一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレア−ゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を接続することにより作製される。
前記転写調節配列の下流に位置する、一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレア−ゼ活性を有するポリペプチドは、構成塩基として少なくとも1分子のリボヌクレオチドを含有する一本鎖核酸中の、リボヌクレオチドの3’側のリン酸ジエステル結合を加水分解する活性を有する。前記活性により加水分解された核酸は、水酸基を有する3’末端とリン酸基を有する5’末端、リン酸基を有する3’末端と水酸基を有する5’末端、もしくは2’,3’サイクリックホスフェートと水酸基を有する5’末端を生じる。本発明を特に限定するものではないが、二本鎖核酸、例えば二本鎖RNA、RNA−DNAハイブリッド等は切断できないポリペプチドを本発明に使用することができる。前記の基質特異性は、一本鎖RNAであるHIVのゲノムを効率よく分解するという観点から本発明に適している。特に好適には、RNAをその塩基配列特異的に切断する活性を有するもの、リボソーム非依存的にmRNAを分解しうるものが本発明に使用される。前記のポリペプチドとしては、後述のMazFやPemKのような、mRNA Intereferaseと称される酵素が例示される。MazF及びPemKは、それぞれ5’−A/CA−3’、5’−U/A(C、A又はU)−3’を認識、切断する大腸菌由来のエンドリボヌクレアーゼである。さらに、これらとは特異性や起源を異にする一本鎖RNA特異的エンドリボヌクレア−ゼ(特許文献1参照)も本発明に使用することができる。
前記エンドリボヌクレアーゼは、3〜7塩基程度の短い塩基配列を認識して一本鎖RNAを切断することから、前記のエンドリボヌクレアーゼが細胞内で発現された場合には細胞内のmRNAの一部が分解される場合があり、細胞内でのタンパク質合成が一時的に阻害される。また、HIVのゲノムであるRNAを切断するため、HIVの複製、細胞外への放出(出芽)も防止される。さらに、HIVゲノムにコードされているポリペプチドの発現も阻止されることから、たとえば細胞外に放出されたTatタンパク質によるHIV非感染細胞のアポトーシス誘発等も抑制される。
また、本発明においてもう一つの核酸は、(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸が含有される。当該HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドは、宿主表面に発現させた場合にその効果を期待できることから、膜局在領域を有しているものが好ましい。膜局在領域としては、レセプタータンパク質由来の膜貫通ドメイン、セラミダーゼ等に存在するムチンボックス、GPIアンカータンパク質由来のペプチド等が知られており、本発明にはこれらから適切なものを選択しても、あるいはさらに他のペプチドと組み合わせて、使用することができる。
前記の「HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチド」は、目的の細胞へのHIV融合を阻害する機能を有するポリペプチドであれば特に限定はない。例えば、HIVの膜タンパク質であるgp41遺伝子産物のアミノ酸配列を有するポリペプチドを本発明に使用することができる。本発明に好適なポリペプチドとして、HIV gp41のC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)ペプチドに由来する膜融合阻害物質であるC36ポリペプチド(国際公開第94/28920号パンフレット)およびC46ポリペプチド、並びに当該ポリペプチドの機能的同等物等が挙げられる。当該C46ポリペプチドをヒト免疫グロブリンヒンジ領域およびCD34膜貫通ドメインと融合したタンパク質は本発明に特に好適である。また本発明において、「HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチド」は、「HIVの宿主細胞への侵入を阻害するポリペプチド」であってもよい。
前記の「HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチド」は、目的の細胞表面に存在させる必要があり、そのための分泌シグナル配列を有することが好ましい。当該分泌シグナルは、LNGFR由来のシグナルペプチド配列が例示されるが、当該シグナルペプチド配列と同等の機能を持つものであれば、いずれもが好適に使用できる。
本発明において前記(ii)の核酸は、HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドの発現のために、発現調節領域、すなわちプロモーターを含む領域を有する。当該発現調節領域は、特に限定するものではないが、哺乳類細胞で機能する任意のプロモーターが例示され、CMVプロモーター、SV40プロモーター、EF−1αプロモーター、CAGプロモーター、MSCVプロモーター、PGKプロモーター等の恒常的発現プロモーター、U3プロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター等が好適に例示される。これらのプロモーターの他、公知の誘導性プロモーター、組織・器官特異的プロモーター、時期特異的プロモーター、又はそれらと機能的同等性を有する変異配列等を本発明に使用しても良い。本発明におけるプロモーターとしては、hPGKプロモーターが特に好適である。HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸は、当該発現調節領域の制御下に発現される限りにおいて、発現制御領域に接して配置されていてもよく、他の要素を挟んで配置されていてもよい。
本発明においては、一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレア−ゼ及び/又はHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドの発現を増強するために、プロモーターの周辺や転写開始点下流の非翻訳領域に、転写活性化因子結合領域に相当する配列が配置されていてもよい。ここで転写活性化因子結合領域に相当する配列としては、AP−1やNF−κBの結合する塩基配列が例示される。転写活性化因子結合領域に相当する配列は、必要に応じて(i)及び/又は(ii)の核酸の複数か所に、あるいは繰り返し配列として使用しても良い。更に、本発明の核酸分子には転写の調節に関わる各種の調節配列、例えばターミネーター等が含まれていても良い。さらに、非翻訳領域にmRNAの核から細胞質への能動的な輸送と細胞質でのmRNAの安定性を高める配列を使用しても良い。このような配列としては、例えばWPRE(woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element)配列が例示される。
本発明の核酸の組合せは、(i)の核酸と(ii)の核酸は、これら両者が同一の核酸分子上に保持された核酸分子とされていている形態、又は別々の核酸分子として存在している形態のいずれであってもよい。例えば、(i)の核酸と(ii)の核酸の両者が搭載されたベクターや、(i)の核酸が搭載されたベクターと(ii)の核酸が搭載されたベクターの組合せであってもよい。
一態様としては、それぞれ適切なプロモーターが組み込まれた(i)の核酸と(ii)の核酸が同一のウイルスベクター上に配置された形態が挙げられる。言い換えれば、例えばHIVのLTRプロモーターの下流に一本鎖特異的エンドリボヌクレアーゼをコードする核酸配列が配置され、さらにその下流に構成的なプロモーターに続きHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸配列が配置された形態が例示される。あるいは、HIVのLTRプロモーターに続き一本鎖特異的エンドリボヌクレアーゼをコードする核酸配列が配置された発現ユニットが、構成的なプロモーターに続きHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸配列が配置された発現ユニットに対して干渉しあわないような形で逆向きに接続された形態が例示される。このような形態にすることによって、本核酸分子が導入された細胞では、HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドは恒常的に発現し、HIVの感染を常に防御することができる。さらに一本鎖特異的エンドリボヌクレアーゼがHIVの転写活性化因子依存的に発現するように挿入されているため、HIV非感染時には、細胞に影響を与えることが無い状態を保ち、HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドによる防御を突破して侵入したHIVが感染細胞で複製を開始しようとすると一本鎖特異的エンドリボヌクレアーゼが発現し、HIVの複製を阻止することができる。また、細胞に影響を与えることが無いレベルで定常発現している一本鎖特異的エンドリボヌクレアーゼは、HIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドによる防御を突破して侵入したHIVが逆転写反応を起こす前に作用ことによって、細胞内に侵入したHIV RNAを切断することにより、HIVの感染細胞染色体への組み込みを阻止することができる。
別態様としては、(i)の核酸と(ii)の核酸が別々のウイルスベクター上でそれぞれ最適なプロモーターの下流に配置された形態が挙げられる。特に限定はされないが例えばHIVのLTRプロモーターの下流に一本鎖特異的エンドリボヌクレアーゼをコードする核酸配列が配置されたベクターと構成的なプロモーターに続きHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸配列が配置されたベクターの組み合わせが例示される。別々のベクターに配置された場合でも、前記同一ベクターの形態と同様の効果が得られれば特に限定はされない。
本発明のベクターにおける核酸の組み合わせは、(i)の核酸と(ii)の核酸の両者を、又は(i)の核酸と(ii)の核酸のそれぞれを搭載して作製することができる。当該技術分野で知られている多数のベクターとしては、線状ポリヌクレオチド、イオン化合物もしくは両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、ならびにウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の核酸分子が搭載されたベクターも本発明に包含される。
ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター(オンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターやそれらの改変体を包含する)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はセンダイウイルスベクター等が挙げられる。好適にはレトロウイルスベクター、すなわち遺伝子組み換えレトロウイルスベクターが例示される。特に、無制限な感染、遺伝子導入を防止された複製能欠損レトロウイルスベクターが本発明に好適に使用される。公知の複製能欠損レトロウイルスベクターとしては、MFGベクターやαSGCベクター(国際公開第92/07943号パンフレット)、pBabe[ヌクレイック アシドズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第18巻、第3587−3596頁(1990)]、LXIN(クロンテック社製)、DON−AI(タカラバイオ社製)等のオンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター[ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来ベクター、サル免疫不全ウイルス(SIV)由来ベクター等]あるいはこれらを改変したベクター、例えばシュードタイプベクターが例示される。シュードタイプのオンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターは、ウイルスベクターのゲノムが由来するものとは異種のウイルス由来のエンベロープを有するウイルスベクターである。例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、水泡性口内炎ウイルス(VSV)、ネコ内在性ウイルス(feline endogenous virus)由来のエンベロープやエンベロープとして機能しうるタンパク質を有するシュードタイプレトロウイルスを使用することができる。さらに、糖鎖合成に関与する酵素遺伝子などを導入したレトロウイルス産生細胞を用いて作製された、糖鎖修飾を受けたタンパクをその表面に有するレトロウイルスベクターも本発明に使用できる。
本発明の核酸の組み合わせは、周知の方法により前記のウイルスベクターに搭載することができる。例えば、本発明の核酸分子を搭載したレトロウイルスベクターは、前記のウイルスベクターをコードするDNAをウイルスパッケージング細胞株に導入して作製されたウイルス産生細胞を培養し、次いで培養上清中に産生されたレトロウイルスベクターを採取することにより実施することができる。
前記のパッケージング細胞株には特に限定はなく、公知のパッケージング細胞株、例えばPG13(ATCC CRL−10686)、PA317(ATCC CRL−9078)、GP+E−86やGP+envAm−12(米国特許第5,278,056号)、Psi−Crip[プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ジ USA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第85巻、第6460−6464頁(1988)]等を使用することができる。また、トランスフェクション効率の高い293細胞、293T細胞あるいは293T/17細胞にレトロウイルス粒子産生に必要な遺伝子が搭載されたパッケージングプラスミド(レトロウイルスパッケージングキット:タカラバイオ社製、Lenti−X HTX パッケージングシステム:クロンテック社製、等)を導入してレトロウイルス産生細胞を作製することもできる。
本発明の核酸の組み合わせを細胞に導入する場合には、当該核酸分子が導入された細胞の選択を可能にする適当なマーカー遺伝子(例えば薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする遺伝子、β−ガラクトシダーゼやルシフェラーゼのようなレポーターとして機能しうる酵素をコードする遺伝子等)、レセプター遺伝子等を併用してもよい。さらに、本発明の核酸は遺伝子導入細胞による治療が完遂した場合、あるいは何らかの副作用が生じた場合に生体内から遺伝子導入細胞を排除する目的で、自殺遺伝子を搭載していても良い。また、遺伝子導入細胞が同種移植に利用できるように、TCR遺伝子やMHC遺伝子をノックダウン/ノックアウトできる核酸分子を組み合わせて使用してもよい。
(2)ヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製が抑制された細胞の製造方法
本発明は、(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、を細胞に導入する工程を含むことを特徴とする、ヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製を抑制できる細胞の製造方法、を提供する。
前記の方法において、(i)、(ii)のそれぞれの核酸は、前記した本発明の核酸の組み合わせにおいて使用されるものと同一であってよい。これら2種の核酸を適切な手段、例えば公知のベクターを使用して細胞に導入することにより、ヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製が抑制される細胞を製造することができる。好適な態様では、前記の本発明の核酸の組み合わせを細胞に導入することにより、ヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製が抑制された細胞が製造される。
本発明では、HIVに感染する可能性のある細胞において、本発明の核酸分子にコードされたポリペプチドが発現することが望まれる。例えば、CD4陽性細胞や、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞又はそれらに分化しうる前駆細胞(例えば、造血幹細胞やiPS細胞)、あるいは前記の細胞を含有する細胞集団を標的細胞として遺伝子導入が実施される。前記の細胞は、CD4陽性細胞やその前駆細胞を含有するものであれば特に限定はなく、個体より採取された血液細胞(末梢血細胞、臍帯血細胞)、骨髄細胞や、前記の細胞から公知方法により分画されたCD4陽性細胞、CD4陽性細胞の前駆細胞、造血幹細胞等が例示される。
本発明で用いられる核酸又は核酸の組み合わせを目的の細胞に導入する方法には特に限定はない。例えば、プラスミドベクターやウイルスベクターに組み込んだうえ、ベクターに応じて適切な方法で細胞に導入すればよい。プラスミドベクターを使用する場合は、リン酸カルシウム法、カチオニック・リピド法、リポソーム法、エレクトロポレーション法等の遺伝子導入法が使用できる。これらの方法には市販の遺伝子導入キットや装置を利用することもできる。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター等のウイルスベクターを使用する場合には、各ウイルスに適した条件で目的の細胞に感染させればよい。
本発明の核酸の組み合わせをウイルスベクターで細胞に導入する手法について説明する。例えば、生物個体より採取された細胞に生体外でベクターを導入するエクス・ビボ(ex vivo)遺伝子導入が使用される。生体より採取された前記の標的細胞とウイルスベクター、たとえば(i)の核酸と(ii)の核酸の両方が搭載されたウイルスベクターとを混合し、適切な条件でインキュベートすることにより、遺伝子の導入が達成される。イン・ビボ(in vivo)で遺伝子導入可能なベクター、例えばアデノウイルスベクターを使用する場合には、本発明の核酸を含有するベクターを個体に直接投与してもよい。
上記の、本発明の方法で得られる細胞ではヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製が抑制される。すなわち、当該方法は「ヒト免疫不全ウイルスの感染防御方法」をも提供する。
(3)本発明の細胞
本発明は、(i)HIVのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸、及び(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、を保持する細胞を提供する。
例えば本発明の細胞では、まず細胞表面に発現されているHIVと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドによって、HIVの細胞内へのエントリーが阻止される。さらに、これを乗り越えてHIVが感染し細胞内にHIV由来のトランス作用因子が生成した場合には、一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレア−ゼ活性を有するポリペプチドの発現が誘導され、生成したポリペプチドによりHIVの複製過程で生成されるRNAゲノムが分解を受ける。この結果、HIVゲノムにコードされているポリペプチドの翻訳も阻害されることから、新たな感染性HIV粒子の生成と他の細胞への感染が防止される。このように、本発明により提供される細胞はHIVの感染と拡散に対して高い抵抗性を有している。
(4)本発明のヒト免疫不全ウイルスの感染を防御する又は治療する方法
本発明の核酸の組み合わせである(i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
(ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸、
を細胞に導入する工程を含むこと、又は当該細胞をヒトに投与する工程を含むことによりヒト免疫不全ウイルスの感染を防御する又は治療する方法が提供される。
例えば、本発明の細胞は、HIVの感染と拡散に対して高い抵抗性を有している。従って、個体内の細胞を予め抵抗性のある細胞に改変する手法、あるいは抵抗性のある細胞を個体に投与する手法、が使用される細胞医療の分野において有用である。
現在では、3〜4種類の抗ウイルス薬(逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤等)を併用する多剤併用療法がHIV感染症の治療法の主流である。多剤併用療法を行うことにより、HIV感染患者血液中のHIV量は顕著に減少し、臨床症状の改善が見られるようになる。しかし、ウイルス粒子の産生を積極的に行わないHIV感染細胞(長期生存型感染細胞:リザーバー)の存在のため、生体からのHIVの完全な排除は困難である。本発明の方法は、前記の多剤併用療法と組み合わせて実施してもよい。
以上のように本発明の方法においては、HIVと宿主細胞の融合の阻害、感染細胞内でのHIVゲノムであるRNAの切断、という2つの効果の組み合わせにより、驚くべき感染抑制効果が達成されることが実施例で示された。すなわち、本発明の細胞は、ヒト免疫不全ウイルスの感染の防御又は治療する方法に用いることができる。
また本発明においては、本発明の核酸の組み合わせを含む薬学的組成物も包含する。当該薬学的組成物は、有効量の本明細書に記載の核酸の組み合わせおよび薬学的に許容可能な担体を含む。例えば、前記の(i)の核酸と(ii)の核酸の両方が搭載されたベクターの有効量、および薬学的に許容可能な担体を含む組成物が例示される。さらに、本発明のヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製が抑制された細胞および薬学的に許容可能な担体を含む組成物も本発明の一態様である。こうして本発明により提供される、核酸分子又は細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、公知の生物学的製剤の製造方法によって調製することができる。
「薬学的に許容可能な」または「薬理学的に許容可能な」という語句は、動物またはヒトへ投与時に有害、アレルギー性、または他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用する「薬学的に許容可能な担体」は、医薬(ヒトへの投与に適した医薬など)の製剤化における使用のため許容可能な溶媒、緩衝液、溶液、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延化剤などを含む。薬学的活性物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、製剤に関する技術分野、特に核酸医薬や細胞医薬の分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が本発明の発現ベクターに適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が意図される。本発明の薬学的組成物は、経口、経鼻、口腔内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内注射が挙げられるが、これらに限定されない各種投与経路による投与用に製剤化し得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は直腸投与用に坐剤として製剤化し得る。補充活性成分も、有効成分である核酸または細胞を不活性化しない限り、組成物に組み込むことができる。
本発明は、HIV感染の治療または予防を、それを必要としている患者において行なう方法も含む。本明細書で使用する「患者」または「対象」は、ヒトおよび哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない任意の脊椎動物を含み得る。1つの好ましい実施形態では、患者はヒトである。
本発明の核酸の組み合わせを含む薬学的組成物の患者への投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般の経路を介し得る。これは、経口、経鼻、または口腔内を含む。あるいは、投与は、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射であり得る。一実施形態では、薬学的組成物は(例えば、坐剤で)直腸内投与してもよい。
(5)本発明の疑似HIV感染評価系
本発明の免疫不全ウイルスの感染防御の評価方法は、(a)HIVのエンベロープに包まれた、レポータータンパク質をコードする核酸を有する組換えウイルスゲノムを有するレトロウイルスベクターを細胞に感染させる工程、及び
(b)細胞で発現されるレポータータンパク質由来の信号を解析し、感染防御の程度を数値化する工程を含むことを特徴とする。
本発明の評価方法において、レポータータンパク質をコードする核酸に加え、HIVのTatタンパク質をコードする核酸を有するレトロウイルスベクターを使用することができる。
また、本発明の評価方法においては、HIV由来のエンベロープとして少なくともgp160エンベロープタンパク質をコードする遺伝子を使用することを特徴とする。当該エンベロープタンパク質は、レンチウイルスベクター産生時に宿主細胞由来のプロテアーゼにより切断され、gp120及びgp41エンベロープタンパク質として存在することが知られている。当該領域を用いることにより、HIV感染の形態を模倣することができる。すなわち、本発明の評価方法に使用するウイルスベクターは、gp160タンパク質を発現する細胞を宿主として作製することができる。また、本発明において、gp160エンベロープタンパク質を用いる限り、レポータータンパク質をコードする核酸を有する組換えウイルスとしてはオンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターの何れを使用しても良い。特に限定はされないが例えば、複製能を欠損した組換えレンチウイルスベクターが好適である。
このように本発明の評価方法においては、予めHIV感染に影響を与える可能性のある何らかの措置を施した細胞に対し、HIVに見立てたHIVのエンベロープに包まれた、かつレポータータンパク質をコードする核酸を有するウイルスベクターを感染させる。このウイルスベクターが感染すれば、試験された細胞内でレポーター遺伝子の発現を確認できる。一方、感染が抑制された場合には、試験された細胞内では当該レポーター遺伝子の発現を確認できないことにより、細胞に施された措置の効果を解析することができる。本発明の評価方法では、危険なHIVを使う必要がないことから、作業環境のセーフティレベルを下げることができ、その結果HIV感染防御の薬剤開発において、有用なツールとなりうる。
本発明の評価方法では、ウイルス結合活性を有する機能性物質の存在下にウイルスベクターの感染を実施することにより、細胞のHIV感受性を高感度に評価することができる。ウイルス結合活性を有する機能性物質を使用する遺伝子導入方法は、例えば国際公開第95/26200号パンフレット、国際公開第97/18318号パンフレット、Nature Medicine、第2巻、第876−882頁(1996)等に記載されている。当該方法には、レトロウイルス結合部位と標的細胞結合部位の両方を同一分子上に有する機能性物質を使用する方法、レトロウイルス結合部位を有する機能性物質と標的細胞結合部位とを有する機能性物質との混合物を使用する方法とがあり、本発明にはいずれの方法も使用することができる。
本発明の好適な態様では、フィブロネクチン由来のヘパリン結合ドメインを含有する機能性物質の存在下に標的細胞へのウイルスベクターの感染が実施される。前記機能性物質は、好適には、細胞接着ドメインとヘパリン結合ドメインの両者を有するフィブロネクチンフラグメントが例示される。前記細胞接着ドメインとしては、VLA−5及び/又はVLA−4への結合領域ポリペプチドが特に好適である。例えば、レトロネクチン(登録商標)としてタカラバイオ社から発売されている組換えフィブロネクチンフラグメントは本発明に特に好適である。
本発明の評価方法において、評価に使用されるレポーター遺伝子は感染細胞の検出を可能とするものであれば特に限定はされない。検出手段も物理的、化学的手段のいずれもが好適に使用できる。例えば、蛍光、発光、酵素活性、免疫的手法などを利用した検出が好適であり、そのために蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、細胞表面マーカー、レセプター、タグペプチド等が使用できる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 レンチウイルスベクタープラスミドの構築
(1)MazF発現レンチウイルスベクタープラスミドの構築
MazF発現レンチウイルスベクタープラスミド(pLV−U3TARMF5)を構築した。pLV−U3TARMF5は、国際公開第2014/092090号パンフレットの参考例2(1)に記載のMazF発現レンチウイルスベクタープラスミドであるpLV−U3TARMF−PL2を制限酵素NotI(タカラバイオ社製)およびKpnI(タカラバイオ社製)で消化してヒト由来PGKプロモーター領域とTruncated form of Low affinity Nerve Growth Factor Receptor(ΔLNGFR)領域を除去し、次いで両制限酵素の認識配列間に同じ制限酵素により末端処理したヒトPGKプロモーターの一部配列(配列表の配列番号1に塩基配列を示す)を挿入した。こうして構築したプラスミドをpLV−U3TARMF5と命名した。
(2)C46ペプチド発現レンチウイルスベクタープラスミドの構築
Jounal of Virology、第78巻、568〜575頁(2004)に記載のようにC46ペプチドはHIVエンベロープタンパク質gp41のC末端側46アミノ酸残基からなるペプチド配列である。当該C46ペプチドを細胞表面上に発現させるため、前記文献に記載のC46キメラポリペプチドをコードするDNA(以下、C46キメラDNAと記載する)を人工合成した。当該C46キメラDNAは、LNGFRのシグナルペプチド、HIVのC46ペプチド、IgGのhinge、及びCD34の膜貫通ドメインをコードする塩基配列を有している。このC46キメラDNAの塩基配列を配列表の配列番号2に、当該DNAがコードするキメラポリペプチドのアミノ酸配列を配列表の配列番号3に、それぞれ示す。次にpLV−U3TARMF−PL2プラスミドを制限酵素ClaI(タカラバイオ社製)とNotI(タカラバイオ社製)で消化し、U3TAR配列とMazF遺伝子を除去した。得られたプラスミド断片をさらに制限酵素EcoRI(タカラバイオ社製)およびKpnI(タカラバイオ社製)で消化してΔLNGFR遺伝子を除去し、次いで同じ制限酵素により消化したC46キメラDNAを挿入し、C46ペプチドが単独で恒常的に細胞表面に発現するレンチベクタープラスミド(pLV−PGKC46)を構築した。
(3)C46ペプチド−MazF発現レンチウイルスベクタープラスミドの構築
pLV−U3TARMF−PL2プラスミドを制限酵素EcoRI(タカラバイオ社製)およびKpnI(タカラバイオ社製)で消化し、細胞表面マーカーであるΔLNGFR遺伝子を除去した。こうして得られたプラスミド断片に、同じ制限酵素により消化したC46キメラDNA断片を挿入した。得られたレンチウイルスベクタープラスミド(pLV−U3TARMF−PGKC46)は、U3TAR制御下でMazFを発現し、PGKプロモーターでC46を恒常的に発現する。
(4)蛍光タンパク質ZsGreen1発現レンチウイルスベクタープラスミドの構築
配列表の配列番号4に示す塩基配列を有する人工合成遺伝子を常法により作製した。この人工合成遺伝子は、MSCV−U3プロモーターとマルチクローニングサイト、蛍光タンパク質ZsGreen1遺伝子をコードするORFを有する。この人工合成遺伝子を、レンチウイルスベクタープラスミドであるpLVSIN−CMV−Neo(タカラバイオ社製)の制限酵素ClaI−MluI認識配列間にIn−Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)を使用してクローニングした。得られたレンチウイルスベクタープラスミド(pLVSIN−MSCV−ZsGreen)は内部プロモーターであるMSCV−U3プロモーターからZsGreen1を恒常的に発現する。
(5)HIV−1のTatと蛍光タンパク質ZsGreen1の共発現レンチウイルスベクタープラスミドの構築
配列表の配列番号5に示す塩基配列を有するDNAを人工的に合成した。このDNAは、HIV−1のTatと蛍光タンパク質ZsGreen1をコードする遺伝子がIRESを介して連結されている構造を有している。このDNAを制限酵素ClaI(タカラバイオ社製)、XhoI(タカラバイオ社製)で消化し、同じ制限酵素により消化したpLVSIN−MSCV−ZsGreenプラスミドに挿入した。得られたレンチウイルスベクタープラスミド(pLVSIN−MSCV−Tat−IRES−ZsGreen)は内部プロモーターであるMSCV−U3プロモーターからHIV−1のTatとZsGreen1を恒常的に発現する。
実施例2 レンチウイルスベクターの調製
(1)C46ペプチド発現レンチウイルスベクターの調製
10%ウシ胎児血清(FBS、LifeTechnologies社製)を添加したDMEM(SIGMA社製)を入れた10cm径の細胞培養用ディッシュ(イワキ社製)に5×10個の293T/17細胞(ATCC CRL−11268)を入れ37℃で24時間培養した。細胞培養用ディッシュに実施例1(2)で作製したC46ペプチド発現レンチウイルスベクタープラスミド(pLV−PGKC46)、および表1で示した基本プラスミドからなる混合液を添加して導入操作を行った。プラスミドの導入にはTransIT−293(Mirus社製)を使用し、添付の説明書の記載どおりに操作を行った。37℃で48時間培養した後に上清を回収し、0.45μmのフィルターでろ過し、このろ液をウイルスベクターを含む上清として以下の実験に使用した。
Figure 2016067306
(2)MazF発現レンチウイルスベクター、およびC46ペプチド−MazF発現レンチウイルスベクターの調製
10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したDMEMを入れた10cm径の細胞培養用ディッシュに国際公開第2014/092090号パンフレットの参考例1(2)に記載の1D5細胞(MazEを構成的に発現するプラスミド(pCMV−MazE)を導入した293T/17細胞株)を5×10個入れ、37℃で24時間培養した。実施例1(1)で作製したMazF発現レンチウイルスベクタープラスミド(pLV−U3TARMF5)、あるいは実施例1(3)で作製したC46ペプチド−MazF発現レンチウイルスベクタープラスミド(pLV−U3TARMF−PGKC46)を、それぞれ表2で示した基本プラスミドとともに1D5細胞にトランスフェクションした。導入操作にはTransIT−293を使用し、添付の説明書の記載どおりに操作を行った。導入後の細胞を37℃で48時間培養した後に培養上清を回収し、0.45μmのフィルターでろ過し、このろ液をウイルスベクターを含む上清として以下の実験に使用した。
Figure 2016067306
(3)HIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクター、およびHIVエンベロープ型Tat−IRES−ZsGreen1発現レンチウイルスベクターの調製
10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したDMEMを入れた10cm径の細胞培養用ディッシュに5×10個の293T/17細胞を入れ、37℃で24時間培養した。この細胞に実施例1(4)、あるいは(5)で作製したレンチウイルスベクタープラスミドを、pE−gp160発現プラスミド(pAbT4674、ATCC Number 40829)ならびに表3で示した基本プラスミドを導入した。各プラスミドの導入にはTransIT−293を使用し、添付の説明書の記載どおりに操作を行った。37℃で48時間培養した後に培養上清を回収し、0.45μmのフィルターでろ過し、このろ液をウイルスベクターを含む上清として以下の実験に使用した。
Figure 2016067306
実施例3 C46ペプチド発現レンチウイルス、MazF発現レンチウイルスおよびC46ペプチド−MazF発現レンチウイルス導入MOLT−4細胞の構築
MOLT−4細胞(ATCC CRL−1582)は10%FBSを添加したRPMI1640(SIGMA社製)中、37℃、5%CO存在下で培養した。表面未処理24穴プレート(コーニング社製)にレトロネクチン(登録商標:タカラバイオ社製)をプロトコールに従いコーティングし、実施例2(1)および(2)で作製した3種類のウイルスベクターを含む上清0.5mLをそれぞれ各ウェルに加え、32℃、2,000×g、2時間の遠心操作により、レンチウイルスベクターをレトロネクチンコートプレートに吸着させた。各ウェルに1×10個のMOLT−4細胞を加え、32℃、1,000×G、30分の遠心操作を行った後、37℃、5%CO存在下で培養した。以上の導入操作は各レンチウイルスベクターについて2ウェルずつ実施した。3〜4日後に一部の細胞を回収し、そこからFast Pure DNAキット(タカラバイオ社製)によりゲノムDNAを回収した。回収したゲノムDNAを鋳型として、配列表の配列番号6〜8記載のレンチウイルスベクターのパッケージングシグナル領域の塩基配列に対するプライマーとプローブのセットを用いて、Cycleave PCR Reaction Mix(タカラバイオ社製)にてレンチウイルスベクターの導入コピー数を測定した。なお、測定にはリアルタイムサーマルサイクラー TP900(タカラバイオ社製)を使用した。なお、C46ペプチド発現レンチウイルスベクター、MazF発現レンチウイルスベクターおよびC46ペプチド−MazF発現レンチウイルスベクター導入MOLT−4細胞は、それぞれC46導入MOLT−4細胞、MazF導入MOLT−4細胞およびC46−MazF導入MOLT−4細胞と表記する。
リアルタイムPCRによる測定結果から、C46導入MOLT−4細胞は、レンチウイルスベクター由来のプロウイルスを、それぞれ1.4コピー/細胞および2.9コピー/細胞保持していることが示された。また、MazF導入MOLT−4細胞はそれぞれ1.1コピー/細胞および2.1コピー/細胞、C46−MazF導入MOLT−4細胞はそれぞれ1.7コピー/細胞および2.7コピー/細胞のプロウイルスを保持していた。
実施例4 HIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクターのMOLT−4細胞への感染
(1)細胞懸濁液とウイルスベクターを含む上清の混合による感染
本実施例で使用するMOLT−4細胞は、10%FBSを添加したRPMI1640(シグマ社製)中、37℃、5%CO存在下で培養した。最初に、MOLT−4細胞懸濁液と実施例2(3)で作製したウイルスベクターを含む上清を混合し、37℃にて4時間静置後に培養用培地にてまき直しを行った。3〜4日後に細胞を回収し、FACSCantoII(BD社製)を用いてZsGreen1の陽性率を測定することで導入効率を確認した。前記ZsGreen1の陽性率は、非導入細胞を比較対象として解析し、非導入細胞で蛍光強度が検出されないエリアにゲートをかけて、対象細胞でそのゲートに含まれる細胞の割合に基づき算出した。
(2)レトロネクチンコートプレートを用いた感染
表面未処理24穴プレートにレトロネクチンを添付の説明書に従いコーティングし、実施例2(3)で調製したHIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクターを含む上清0.5mLを各ウェルに加え、32℃、2,000×G、2時間の遠心操作により、レンチウイルスベクターをレトロネクチンコートプレートに吸着させた。各ウェルに1×10個のMOLT−4細胞を加え、32℃、1,000×G、30分の遠心操作を行った後、37℃、5%CO存在下で培養した。3〜4日後に細胞を回収し、FACSCantoIIを用いてZsGreen1の陽性率を確認した。その結果を表4に示した。
Figure 2016067306
表4より、細胞とウイルス上清を混合しただけでは、ほとんどZsGreen1の発現が確認できなかったのに対し、レトロネクチンをコーティングしたプレートでは55.0%の発現が確認できた。このことから、本実施例でHIV感染評価系として、上記HIVエンベロープ発現レンチウイルスベクター遺伝子導入系が利用できることが確認できた。
実施例5 C46導入MOLT−4細胞、MazF導入MOLT−4細胞およびC46−MazF導入MOLT−4細胞を用いたHIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクター感染実験
実施例3で得られた各種導入MOLT−4細胞に、実施例4の方法でHIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクターを感染させ、37℃、5%CO存在下で培養した。4日後に細胞を回収し、ZsGreen1の陽性率ならびに蛍光強度を測定した。また、それぞれのコントロールに対する相対値を算出し、相対導入率を得た。その結果を図1に示す。図1は、HIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクターが感染した各MOLT−4細胞におけるZsGreen1の陽性率をコントロールのMOLT−4での値を100とした場合の相対値として示した図である。横軸の値は実施例3でCycleave法により算出した各レンチウイルスベクターの導入コピー数である。
図1より、コントロールのMOLT−4細胞では、HIVエンベロープ型ZsGreen1発現レンチウイルスベクターの相対導入効率は、MazFを単独発現するMF5を導入したMOLT−4細胞と同程度であることが確認できた。従って、MazF単独発現によるHIVエンベロープ型レンチウイルスベクターの遺伝子導入効率への影響は低いと考えられた。一方、C46導入MOLT−4細胞では、プロウイルスのコピー数依存的にHIVエンベロープ型ウイルスベクターによる宿主ゲノムへの遺伝子導入は阻害されることが確認できた。さらに、MazFはHIV−1のTatタンパク質の発現が起こってから効力を発揮すると考えられているが、驚くべきことに、C46−MazF導入MOLT−4細胞では、C46導入MOLT−4細胞を上回る感染阻害効果が確認できた。
実施例6 C46導入MOLT−4細胞、MazF導入MOLT−4細胞およびC46−MazF導入MOLT−4細胞を用いたHIVエンベロープ型Tat−IRES−ZsGreen1発現レンチウイルスベクター感染実験
実施例3で得られた各種導入MOLT−4細胞に、実施例4の方法でHIVエンベロープ型Tat−IRES−ZsGreen1発現レンチウイルスベクターを感染させ、実施例5と同様の方法で評価を行った。図2は、各MOLT−4細胞にHIVエンベロープ型レンチウイルスベクターを感染させた際の、コントロールのMOLT−4を100とした相対導入率を示した図である。
図2より、MazFを単独発現するMazF導入MOLT−4細胞ではコントロールのMOLT−4に比べてZsGreen1の発現は低いことが確認できた。これはHIV−1のTatが発現することでMazFの発現が誘導され、それによってZsGreen1のmRNAが切断されて発現量が下がったと推察された。C46導入MOLT−4細胞においてもZsGreen1の発現は低いことが確認できたが、これについてはHIV−1のTatの影響はないためC46による阻害効果を表している。さらに、MazFとC46ペプチドを組み合わせて導入したC46−MazF導入MOLT−4細胞では、HIV−1のTatの効果により遺伝子導入阻害効果がさらに増大していることが確認できた。例えば、各コピー数においてMazF単独の効果では、コントロールに比較して1/2〜1/3と減少している。また、C46単独の効果は、同様に1/2〜1/3と減少している。ところが、本発明のC46とMazFの組み合わせの効果では、驚くべきことに1/10〜1/25と大幅な減少が見られた。このことから、本発明の有用性が確認できた。
本発明により、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染防御に有効な核酸分子が提供される。前記核酸分子が導入された細胞は、HIVの感染及び複製を抑制することから、HIV感染症の治療、予防に効果を示す。
SEQ ID NO:1; a portion of human PGK promoter DNA
SEQ ID NO:2; Synthetic DNA encoding C46 chimeric DNA
SEQ ID NO:3; Synthetic DNA encoding C46 chimeric polypeptide
SEQ ID NO:4; Synthetic DNA encoding ZsGreen gene.
SEQ ID NO:5; Synthetic DNA encoding HIV−Tat gene and ZsGreen gene.
SEQ ID NO:6; Primer Lenti−copy1−F to amplify a portion of Lentivirus vector packaging signal area.
SEQ ID NO:7; Primer Lenti−copy1−R to amplify a portion of Lentivirus vector packaging signal area.
SEQ ID NO:8; Probe Lenti−copy1−P1S to detect the Lentivirus vector packaging signal area.

Claims (15)

  1. 下記(i)の核酸と(ii)の核酸の組み合わせ;
    (i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
    (ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸。
  2. 一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが、塩基配列特異的にRNAを切断する活性を有するものである、請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  3. 一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドがMazFタンパク質である請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  4. ヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドが、膜局在領域を有するポリペプチドである、請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  5. ヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドが、ヒト免疫不全ウイルスの膜タンパク質に由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  6. ヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドが、C46ポリペプチドである請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  7. (i)の核酸と(ii)の核酸が同一核酸分子上に配置されている請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  8. (i)の核酸と(ii)の核酸が異なる核酸分子上に配置されている請求項1記載の核酸の組み合わせ。
  9. 下記(i)の核酸と(ii)の核酸の両者が搭載されたベクター;
    (i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
    (ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸。
  10. 下記(i)の核酸が搭載されたベクターと(ii)の核酸が搭載された他のベクターからなる、少なくとも2種類のベクター;
    (i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
    (ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸。
  11. ウイルスベクターである請求項9又は10記載のベクター。
  12. ヒト免疫不全ウイルスの感染及び複製を抑制できる細胞の製造方法であって、下記(i)の核酸と(ii)の核酸を細胞に導入する工程を含むことを特徴とする方法;
    (i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
    (ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸。
  13. ヒト免疫不全ウイルスの感染を防御する又は治療する方法であって、下記(i)の核酸と(ii)の核酸を細胞に導入する工程を含むこと又は当該細胞をヒトに投与する工程を含むことを特徴とする方法;
    (i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
    (ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸。
  14. 下記(i)の核酸と(ii)の核酸を保持する細胞;
    (i)ヒト免疫不全ウイルスのトランス作用因子により転写が誘導される転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置された一本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸;及び
    (ii)転写調節配列と、前記配列により発現の制御が可能な形態に配置されたヒト免疫不全ウイルスと宿主細胞の融合を阻害するポリペプチドをコードする核酸。
  15. 細胞の免疫不全ウイルス感受性を評価する方法であって、
    (a)ヒト免疫不全ウイルスのエンベロープに包まれ、かつレポータータンパク質をコードする核酸を有するレンチウイルスベクターを細胞に感染させる工程;及び
    (b)細胞で発現されるレポータータンパク質由来の信号を解析し、感染防御の程度を数値化する工程を含むことを特徴とする、方法。
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