JP2016065973A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2016065973A
JP2016065973A JP2014194449A JP2014194449A JP2016065973A JP 2016065973 A JP2016065973 A JP 2016065973A JP 2014194449 A JP2014194449 A JP 2014194449A JP 2014194449 A JP2014194449 A JP 2014194449A JP 2016065973 A JP2016065973 A JP 2016065973A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
layer
general formula
mass
solvent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014194449A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6476688B2 (ja
Inventor
竜輝 佐野
Tatsuki Sano
竜輝 佐野
額田 克己
Katsumi Nukada
克己 額田
廣瀬 英一
Eiichi Hirose
英一 廣瀬
佐々木 知也
Tomoya Sasaki
知也 佐々木
侑子 岩舘
Yuko Iwadate
侑子 岩舘
賢志 梶原
Kenji Kajiwara
賢志 梶原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Xerox Co Ltd filed Critical Fuji Xerox Co Ltd
Priority to JP2014194449A priority Critical patent/JP6476688B2/ja
Publication of JP2016065973A publication Critical patent/JP2016065973A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6476688B2 publication Critical patent/JP6476688B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)

Abstract

【課題】溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物であって、溶剤として、フッ素系の溶剤、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を単独で含有する組成物を適用した場合に比べ、下層の成分との混合及び空隙(ボイド)の発生が抑制された最表面層を有する電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性基体と、導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、1分子内にフッ素原子を含まない環状炭化水素系の溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物の硬化膜で構成された電子写真感光体。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
電子写真感光体としては、強度を向上させる観点から、表面に保護層を設けることが提案されている。保護層を形成する材料系としては、例えば、有機−無機ハイブリッド材料によるもの(例えば特許文献1参照)、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜(例えば特許文献2参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材料及び結着樹脂の混合物を熱又は光のエネルギーによってモノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷輸送材料の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成した膜(例えば特許文献3参照)が開示されている。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が開示されている(例えば特許文献4参照)。連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料の重合物を保護層に使用する技術が開示されている(例えば特許文献5参照)。
また、保護層の形成に使用されるアクリル系材料は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受けることから、例えば真空中又は不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜(例えば特許文献6参照)、不活性ガス中で加熱硬化された膜(例えば特許文献7参照)を保護層又は感光層に使用する技術が開示されている。
連鎖重合性基としてスチレン骨格が連結されている電荷輸送性化合物の架橋体が開示されている(例えば特許文献8〜12参照)。
一方、表面層形成用塗布液として、連鎖重合性官能基を有する化合物であるモノマーと、潤滑剤と、環状構造を有するフッ素系溶剤とを含有する組成物を用いて、浸漬コーティング法により塗布することで、表面層を形成した電子写真感光体の製造方法が開示されている(例えば特許文献13参照)。
導電性基体から最も離隔する層が、環状炭化水素鎖を有する有機溶剤と、バインダ樹脂と、含フッ素樹脂の少なくとも3種を含む塗布液を塗布乾燥してなる電子写真感光体が開示されている(例えば特許文献14参照)。
基体上に、少なくとも、電荷発生剤、電荷輸送剤、フルオロプロペン誘導体に由来した構造である界面活性剤及び結着樹脂を含む感光層を設けた電子写真感光体が開示されている(例えば特許文献15参照)。
特開2000−019749号公報 特開平5−40360号公報 特開平5−216249号公報 特開2000−206715号公報 特開2001−175016号公報 特開2004−12986号公報 特開平7−72640号公報 特許第2546739号公報 特許第2852464号公報 特開2013−044818号公報 特開2013−060572号公報 特開2013−061640号公報 特許第4298568号公報 特開昭63−56658号公報 特開2010−230912号公報
本発明の課題は、溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物であって、溶剤として、フッ素系の溶剤、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を単独で含有する組成物を適用した場合に比べ、下層の成分との混合及び空隙(ボイド)の発生が抑制された最表面層を有する電子写真感光体を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、1分子内にフッ素原子を含まない環状炭化水素系の溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物の硬化膜で構成された電子写真感光体である。
請求項2に係る発明は、
前記環状炭化水素系の溶剤は、極性基を有さない飽和環状炭化水素系の溶剤である請求項1に記載の電子写真感光体である。
請求項3に係る発明は、
前記最表面層中の前記環状炭化水素系の溶剤の含有量が前記最表面層の質量に対して5000ppm以上50000ppm以下である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
請求項4に係る発明は、
前記連鎖重合性官能基の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はビニルフェニル基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
請求項5に係る発明は、
前記電荷輸送材料が、下記一般式(I)及び下記一般式(II)で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。

(一般式(I)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。)

(一般式(II)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。L’は、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(n+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。 m’は、1以上6以下の整数を示す。nは、2以上3以下の整数を示す。)
請求項6に係る発明は、
前記組成物中の前記環状炭化水素系の溶剤の含有量が、全溶剤に対して30質量%以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
請求項7に係る発明は、
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジである。
請求項8に係る発明は、
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置である。
請求項1に係る発明によれば、溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物であって、溶剤として、フッ素系の溶剤、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を単独で含有する組成物を適用した場合に比べ、下層の成分との混合及び空隙の発生が抑制された最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
請求項2に係る発明によれば、溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物であって、溶剤として、極性基を有する飽和炭化水素系の溶剤を単独で含有する組成物を適用した場合に比べ、下層の溶解が抑制された最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
請求項3に係る発明によれば、前記最表面層中の環状炭化水素系の溶剤の含有量が最表面層の質量に対して5000ppm未満、又は50000ppm超えの場合に比べ、摩耗特性が向上した電子写真感光体が提供される。
請求項は4に係る発明によれば、溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物であって、溶剤として、フッ素系の溶剤、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を単独で含有する組成物を適用した場合に比べ、前記連鎖重合性官能基の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はビニルフェニル基である電荷輸送材料を含み、下層の成分との混合及び空隙の発生が抑制された最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
請求項5に係る発明によれば、前記組成物中に含有される電荷輸送材料として、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を有する電荷輸送材料を適用した場合に比べ、摩耗特性が向上した電子写真感光体が提供される。
請求項6に係る発明によれば、前記組成物中の環状炭化水素系の溶剤の含有量が、全溶剤に対して30質量%未満の場合に比べ、下層の成分との混合が抑制された最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
請求項7、又は8に係る発明によれば、溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物であって、溶剤として、フッ素系の溶剤、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を単独で含有する組成物を適用して最表面層を当該組成物の硬化膜で構成した電子写真感光体を適用した場合に比べ、繰り返し画像形成しても画像の画質劣化(具体的には、濃度ムラやカブリの発生)を抑制するプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。 画質維持性評価に用いた画像パターンを示す図である。
以下、本発明の一例である本実施形態について説明する。
(電子写真感光体)
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、「感光体」と称することがある)は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、1分子内にフッ素原子を含まない環状炭化水素系の溶剤(以下、「フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤」と称することがある)と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料(以下、「特定の連鎖重合性電荷輸送材料」と称することがある)と、を含有する組成物の硬化膜で構成されている。
ここで、従来の感光体では、強度を向上させることを目的として、溶剤と、連鎖重合性電荷輸送材料とを含有する組成物(以下、塗布液)を用いて、連鎖重合性電荷輸送材料を連鎖重合させることにより感光体の最表面層(例えば、保護層)を硬化膜で構成することが知られている。
塗布液中の溶剤としては、連鎖重合性電荷輸送材料の溶解性を向上させる観点から、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤が用いられている。しかしながら、塗布液中にエステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を含有させると、塗布液を下層に付与する際に、溶剤によって下層が溶解されてしまうことがある。これにより、塗膜と下層の成分との混合が生じる。このため、塗膜から形成される最表面層は、下層の成分が混入されやすくなる。
一方、塗膜と下層の成分との混合を抑制することを目的として、塗布液中に、環状構造を有するフッ素系の溶剤を含有させることが知られている。
このフッ素系の溶剤を含有する塗布液を用いれば、溶剤による下層の溶解は抑制される。しかしながら、フッ素系の溶剤は撥水撥油性を有するため下層との親和性が低下しやすく、塗布液を下層に付与する際に、塗膜が下層にはじかれてしまい、塗膜中に空隙が発生しやすくなる。これにより、塗膜から形成される最表面層中にも空隙が発生しやすくなる。
そこで、本実施形態では、最表面層を、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤と、特定の連鎖重合性電荷輸送材料と、を含有する組成物の硬化膜で構成する。これにより、下層の成分との混合及び空隙の発生が抑制された最表面層となる。
この理由は、定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤は、特定の連鎖重合性電荷輸送材料に対する溶解能が高い。その上、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤は、環状炭化水素系の溶剤であることから、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤に比べると極性が低く、下層は溶剤によって溶解されにくくなる。これにより、塗膜と下層の成分との混合が抑制されると共に、塗膜から形成される最表面層と下層の成分との混合も抑制され、最表面層に下層の成分が混入されにくくなる。
さらに、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤は、フッ素含有の溶剤に比べると親油性が高いため、塗膜が下層にはじかれにくくなる。これにより、塗膜中への空隙が発生しにくくなり、塗膜から形成される最表面層中への空隙も発生しにくくなる。
よって、本実施形態に係るフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤を用いることにより、下層の成分との混合が抑制され、且つ空隙の発生が抑制された最表面層が得られる。
さらに、本実施形態に係る感光体は、下層の成分との混合及び空隙の発生が抑制された最表面層を有することから、下層と最表面層との界面が形成されやすく、各層の機能が発現されやすくなる。これにより、感光体の摩耗特性及び電気特性は向上し、繰り返し画像形成しても画像の画質劣化(具体的には、濃度ムラやカブリの発生)が抑制される。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す概略断面図である。図2、図3はそれぞれ本実施形態に係る電子写真感光体の他の一例を示す概略断面図である。
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成される。
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aのごとく、電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3及び電荷発生層2により感光層が構成される。
図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6)に含有するものである。図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
そして、図1、図2及び図3に示す電子写真感光体7A、7B及び7Cにおいて、保護層5が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっている。本実施形態では、最表面層(保護層5)が、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤と、特定の連鎖重合性電荷輸送材料と、を含有する組成物の硬化膜で構成される。
なお、図1、図2及び図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aの各要素について説明する。なお。符号は省略して説明する。
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro−Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基材からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp−型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn−型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n−型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012−155282号公報の段落[0288]〜[0291]に記載された化合物(CG−1)〜(CG−27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n−型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn−型とする。
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
構造式(a−1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、−C−C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は−C−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
構造式(a−2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
ここで、構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
高分子電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。特に、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂がよく、具体的にはFeders法で算出した溶解度パラメーターが11.40以上11.75以下であるポリカーボネート共重合体であることがよい。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
(保護層)
保護層は、感光体における最表面層であり、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤と、特定の連鎖重合性電荷輸送材料と、を含有する組成物の硬化膜で構成されている。つまり、保護層(最表面層)は、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤と、特定の連鎖重合性電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む。
−フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤−
保護層を形成するために用いる組成物(塗布液)中には、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤が含まれる。ここで、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤は、1分子内に炭化水素からなる環状構造を有し、フッ素原子を含まない溶剤であり、具体的に、1分子内にフッ素原子を含まない環状飽和炭化水素溶剤、若しくは1分子内にフッ素原子を含まない環状不飽和炭化水素溶剤が挙げられる。
フッ素非含有の環状飽和炭化水素溶剤としては、炭素数4以上8以下(好ましくは炭素数5以上7以下)の環状飽和炭化水素溶剤が挙げられる。具体的には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等、又はこれらの置換体が挙げられる。この置換体としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が置換されたアルキル置換体;水酸基が置換された水酸基置換体;が挙げられる。
フッ素非含有の環状不飽和炭化水素溶剤としては、炭素数4以上8以下(好ましくは炭素数5以上7以下)の環状不飽和炭化水素溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等、又はこれらの置換体が挙げられる。この置換体としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が置換されたアルキル置換体;水酸基が置換された水酸基置換体;等が挙げられる。
これらのフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
上記フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の中でも、下層の溶解を効果的に抑制する観点から、極性基を有さない飽和環状炭化水素系の溶剤であることが好ましい。飽和環状炭化水素系の溶剤は、不飽和結合を含む溶剤に比べ反応性が低いため、電荷輸送材料等との反応を起こしにくくする。さらに、極性基を有さない飽和環状炭化水素系の溶剤は、極性基を有さないため、下層の溶解をより抑制し、保護層の均一性を高める。
この観点から、特にフッ素非含有の環状不飽和炭化水素溶剤としては、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンが好ましい。
さらに、本実施形態では、保護層(最表面層)に、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤を残留させることが好ましい。これにより、放電生成物の感光体への付着が抑制され、保護層の機械的強度も高まる。
放電生成物の感光体への付着が抑制される点については、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤が保護層(感光体表面)に積極的に染み出すことで、帯電装置から発生する放電生成物の感光体への付着が抑制されるためであると考えられる。さらに、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤が、極性基を有さない飽和環状炭化水素系の溶剤であれば、放電生成物との反応が抑制され、放電生成物の感光体への付着がより抑制される。
また、保護層の機械的強度が高まる点については、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤を保護層中に積極的に残留させることで、電荷輸送材料が連鎖重合によって形成された網目構造の隙間に環状構造を有する残留溶剤が入りこむことによって、網目構造がより安定化されるためであると考えられる。
保護層(最表面層)中のフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量(残留量)は、上記効果を発現しやすくする観点、即ち、放電生成物の感光体への付着を抑制する観点、及び保護層の機械的強度を高める観点から、保護層の質量に対して5000ppm以上50000ppm以下が好ましく、10000ppm以上30000ppm以下がより好ましく、10000ppm以上20000ppm以下がさらに好ましい。ppmは質量基準である。
なお、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性材料を重合して形成される重合硬化型の保護層を有する感光体以外の感光体(即ち非硬化型の感光体)の保護層中に前記溶剤が残留すると、樹脂が膨潤し、機械的な強度が保持しにくくなると推察される。したがって、感光層の保護層中に前記溶剤を残留させる技術は、樹脂が膨潤することのない上記重合硬化型の保護層を有する感光体において有効な技術である。
保護層中のフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量(残留量)を上記範囲に制御する手法としては、例えば、特定の連鎖重合性輸送材料の重合の際の加熱時間を10分以上1時間以下とすることにより制御する手法;塗布液中におけるフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量を塗布液中の10質量%以上70質量%以下とすることにより制御する手法;が挙げられる。
また、保護層中のフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量(残留量)は以下の方法により測定される。最表面層を一定量秤量し、有機溶媒(2種類)中に浸漬する。これを震盪機に掛けて、最表面層中に残存する有機溶媒を抽出する。このようにして得られた液を液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)に掛けて、溶媒種を同定する。更に高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、同定された各種溶媒毎に検量線を作成し、この検量線を用いて、上記抽出液中の溶媒量を測定する。
また、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤は、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤以外の溶剤と併用してもよい。その場合、塗布液中におけるフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量は、全溶剤に対して30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量を30質量%以上とすることにより、下層の溶解を抑制する効果が発現されやすくなる。
なお、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤以外の溶剤として、極性を有する溶剤を併用した場合、塗布液中での特定の電荷輸送材料の溶解性は向上するが、極性を有する溶剤の割合(含有量)を増加すると、下層の溶解を引き起こしやすくなる。したがって、特定の電荷輸送材料の溶解性を確保する範囲において、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の割合を大きくすることが好ましい。
フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤以外の溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸nブチル、乳酸エチル等のエステル類;等が挙げられる。
−特定の連鎖重合性電荷輸送材料−
特定の連鎖重合性電荷輸送材料は、1分子内に電荷輸送性骨格と、少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する化合物であれば、周知の材料から選択される。ここで、連鎖重合性官能基としては、例えば、ラジカル重合し得る官能基であることよく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基が挙げられる。連鎖重合性官能基としては、具体的に、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも一つを有する基(特に、これら基が末端に有する基)が挙げられる。これらのうち、連鎖重合反応性、得られた硬化膜の機械強度の観点で、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基(スチリル基)が好ましく、さらに電気特性との両立の観点でビニルフェニル基(スチリル基)が最も好ましい。
ビニルフェニル基(スチリル基)が最も好ましい理由としては、電荷輸送性能に優れる上、−OH、−NH−などのキャリア輸送を妨げる極性基が少なく、また、キャリア輸送に有効なπ電子を有し、アクリロイル基、メタクリロイル基よりも疏水的で水分が付着しにくい性質があることから、長期にわたって電気特性が維持されると考えられる。
また、電荷輸送性骨格としては電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料は、電気特性と機械的強度の観点から、一般式(I)及び一般式(II)で示される連鎖重合性化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この理由は定かではないが、以下に示す理由によると考えられる。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料から選択される少なくとも1種を含む組成物の硬化膜(特定の連鎖重合性電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む膜)を保護層(最表面層)として有すると、保護層が優れた電気特性と機械的強度を兼ね備えると考えられる。また、保護層の厚膜化(例えば10μm以上)も実現されると考えられる。
これは、特定の連鎖重合性電荷輸送材料自身が電荷輸送性能に優れる上、上述したように、−OH、−NH−などのキャリア輸送を妨げる極性基が少なく、また、キャリア輸送に有効なπ電子を有するビニルフェニル基で、重合により当該材料が連結されることから、残留歪が抑制され、電荷を捕獲する構造的なトラップの形成が抑制されるため考えられる。
また、特定の連鎖重合性電荷輸送材料は、アクリル系材料よりも疎水的で水分がつきにくい性質があることから、長期にわたって電気特性が維持されると考えられる。
一般式(I)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。
Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
mは1以上8以下の整数を示す。
一般式(II)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。
L’は、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−の基からなる群より選択される2種以上を含む(n+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。なお、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基とは、アルカン又はアルケンから水素原子を3つ又は4つ取り除いた基を意味する。以下、同様である。
m’は、1以上6以下の整数を示す。nは、2以上3以下の整数を示す。
一般式(I)及び(II)中、Fは、電荷輸送性骨格、つまり電荷輸送性を有する構造を示し、具体的には、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物、などの電荷輸送性を有する構造が挙げられる。
一般式(I)中、Lで示される連結基としては、例えば、
アルキレン基中に−C(=O)−O−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−C(=O)−N(R)−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−C(=O)−S−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−O−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−N(R)−が介在した2価の連結基、
アルキレン基中に−S−が介在した2価の連結基、
が挙げられる。
なお、Lで示される連結基は、アルキレン基中に、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(=O)−S−、−O−、又は−S−の基が2つ介在してもよい。
一般式(I)中、Lで示される連結基として具体的には、例えば、
*−(CH−C(=O)−O−(CH−、
*−(CH−O−C(=O)−(CH−C(=O)−O−(CH−、
*−(CH−C(=O)−N(R)−(CH−、
*−(CH−C(=O)−S−(CH−、
*−(CH−O−(CH−、
*−(CH−N(R)−(CH−、
*−(CH−S−(CH−、
*−(CH−O−(CH−O−(CH
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、pは、0、又は1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。qは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。rは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Fと連結する部位を示している。
一方、一般式(II)中、L’で示される連結基としては、例えば、
分岐状に連結したアルキレン基中に−C(=O)−O−が介在した(n+1)価の連結基、
分岐状に連結したアルキレン基中に−C(=O)−N(R)−が介在した(n+1)価の連結基、
分岐状に連結したアルキレン基中に−C(=O)−S−が介在した(n+1)価の連結基、
分岐状に連結したアルキレン基中に−O−が介在した(n+1)価の連結基、
分岐状に連結したアルキレン基中に−N(R)−が介在した(n+1)価の連結基、
分岐状に連結したアルキレン基中に−S−が介在した(n+1)価の連結基、
が挙げられる。
なお、L’で示される連結は、分岐状に連結したアルキレン基中に、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(=O)−S−、−O−、又は−S−の基が2つ介在してもよい。
一般式(II)中、L’で示される連結基として具体的には、例えば、
*−(CH−CH[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH[C(=O)−N(R)−(CH−]
*−(CH−CH[C(=O)−S−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[(CH−O−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−N(R)−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−S−(CH−]

*−(CH−O−C[(CH−O−(CH−]
*−(CH−C(=O)−O−C[(CH−O−(CH−]
等が挙げられる。
ここで、L’で示される連結基中、pは、0、又は1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。qは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。rは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。sは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、L’で示される連結基中、「*」は、Fと連結する部位を示している。
これらの中でも、一般式(II)中、L’で示される連結基としては、
*−(CH−CH[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[C(=O)−O−(CH−]
*−(CH−CH[(CH−O−(CH−]
*−(CH−CH=C[(CH−O−(CH−]
がよい。
具体的には、一般式(II)で示される連鎖重合性化合物のFで示される電荷輸送性骨格に連結する基(一般式(IIA−a)で示される基が該当)は、下記一般式(IIA−a1)、下記一般式(IIA−a2)、下記一般式(IIA−a3)、又は下記一般式(IIA−a4)で示される基であることがよい。
一般式(IIA−a1)又は(IIA−a2)中、Xk1は2価の連結基を示す。kq1は0又は1の整数を示す。Xk2は2価の連結基を示す。kq2は0又は1の整数を示す。
ここで、Xk1及びXk2で示される2価の連結基は、例えば、−(CH−(但しpは1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す))が挙げられる。当該2価の連結基としては、アルキレンオキシ基も挙げられる。
一般式(IIA−a3)又は(IIA−a4)中、Xk3は2価の連結基を示す。kq3は0又は1の整数を示す。Xk4は3価の連結基を示す。kq4は0又は1の整数を示す。
ここで、Xk3及びXk4で示される2価の連結基は、例えば、−(CH−(但しpは1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す)が挙げられる。当該2価の連結基としては、アルキレンオキシ基も挙げられる。
一般式(I)及び(II)中、L、L’で示される連結基において、「−N(R)−」のRで示されるアルキル基としては、炭素数1以上5以下(好ましくは1以上4以下)の直鎖状、分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
「−N(R)−」のRで示されるアリール基としては、炭素数6以上15以下(好ましくは6以上12以下)のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリジル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7以上15以下(好ましくは7以上14以下)のアラルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ビフェニルメチレン基等が挙げられる。
一般式(I)及び(II)中、mは、1以上6以下の整数を示すことが好ましい。
m’は、1以上6以下の整数を示すことが好ましい。
nは、2以上3以下の整数を示すことが好ましい。
次に、一般式(I)及び(II)で示される連鎖重合性化合物の好適な化合物について説明する。
一般式(I)及び(II)で示される連鎖重合性化合物としては、Fとしてトリアリールアミン系化合物に由来する電荷輸送性骨格(電荷輸送性を有する構造)を有する連鎖重合性化合物がよい。
具体的には、一般式(I)で示される連鎖重合性化合物としては、一般式(I−a)、一般式(I−b)、一般式(I−c)、及び一般式(I−d)で示される連鎖重合性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好適である。
一方、一般式(II)で示される連鎖重合性化合物としては、一般式(II−a)で示される連鎖重合性化合物が好適である。
・一般式(I−a)で示される連鎖重合性化合物
一般式(I−a)で示される連鎖重合性化合物について説明する。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料として一般式(I−a)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、環境変化に起因する電気特性の劣化が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、従来用いられていた、(メタ)アクリル基を有する連鎖重合性化合物は、重合の際に電荷輸送性能を発現する骨格の部位に対して、(メタ)アクリル基の親水性が強いことから、ある種の層分離状態を形成してしまい、ホッピング伝導の妨げとなっていることが考えられる。このため、(メタ)アクリル基を有する連鎖重合性化合物の重合体又は架橋体を含む電荷輸送性膜は、電荷輸送の効率が落ち、更に、部分的な水分の吸着などにより環境安定性が低下するものと考えられる。
これ対して、一般式(I−a)で示される連鎖重合性化合物は、親水性の強くないビニル系の連鎖重合性基を有しており、更に、電荷輸送性能を発現する骨格を一分子内に複数有し、その骨格同士を芳香環や共役二重結合などの共役結合を有しない、柔軟性のある連結基で連結している。このような構造を有することから、効率的な電荷輸送性能と高強度化が図れると共に、重合の際の層分離状態の形成が抑制されるものと考えられる。その結果として、一般式(I−a)で示される連鎖重合性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、電荷輸送性能と機械的強度との両方に優れ、更に、電荷輸送性能の環境依存(温湿度依存)を低減しうるものと考えられる。
以上から、一般式(I−a)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、環境変化に起因する電気特性の劣化が抑制され易くなると考えられる。
一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ara5及びAra6は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Xaは、アルキレン基、−O−、−S−、及びエステルから選ばれる基を組み合わせてなる2価の連結基を示す。Daは、下記一般式(IA−a)で示される基を示す。ac1〜ac4は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。但し、Daの総数は1又は2である。
一般式(IA−a)中、Lは、*−(CHan−O−CH−で示され、*にてAra1〜Ara4で示される基に連結する2価の連結基を示す。anは、1又は2の整数を示す。
以下、一般式(I−a)の詳細を説明する。
一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、「Da」以外のものとして、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(I−a)中、Ara1〜Ara4としては、下記構造式(1)〜(7)のうちのいずれかであることが好ましい。
なお、下記構造式(1)〜(7)は、Ara1〜Ara4の各々に連結され得る「−(Da)ac1」〜「−(Da)ac4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
構造式(1)〜(7)中、R11は、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を示す。R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を示す。R14は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を示す。Arは、置換又は未置換のアリーレン基を示す。sは、0又は1を示す。tは、0以上3以下の整数を示す。Z’は、2価の有機連結基を示す。
ここで、式(7)中、Arとしては、下記構造式(8)又は(9)で示されるものが好ましい。
構造式(8)及び(9)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t1及びt2はそれぞれ0以上3以下の整数を示す。
また、式(7)中、Z’は、下記構造式(10)〜(17)のうちのいずれかで示されるものが好ましい。
構造式(10)〜(17)中、R17及びR18は、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を示す。Wは、2価の基を示す。q1及びr1は、それぞれ独立に1以上10以下の整数を示す。t3及びt4は、それぞれ0以上3以下の整数を示す。
構造式(16)〜(17)中、Wとしては、下記構造式(18)〜(26)で示される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。但し、式(25)中、uは、0以上3以下の整数を示す。
一般式(I−a)中、Ara5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基において、このアリーレン基としては、Ara1〜Ara4の説明で例示されたアリール基から目的とする位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
また、置換アリーレン基における置換基としては、Ara1〜Ara4の説明で、置換アリール基における「Da」以外の置換基として挙げられているものと同様である。
一般式(I−a)中、Xaで示される2価の連結基は、アルキレン基、又はアルキレン基、−O−、−S−、及びエステルから選ばれる基を組み合わせてなる2価の基であって、芳香環や共役二重結合などの共役結合を含まない連結基である。
具体的には、Xaで示す2価の連結基として、炭素数1以上10以下のアルキレン基が挙げられ、その他、炭素数1以上10以下のアルキレン基と−O−、−S−、−O−C(=O)−、及び−C(=O)−O−から選ばれる基とを組み合わせてなる2価の基も挙げられる。
なお、Xaで示される2価の連結基がアルキレン基である場合、このアルキレン基はアルキル、アルコキシ、ハロゲン等の置換基を有していてもよく、この置換基の2つが互いに結合して、構造式(16)〜(17)中のWの具体例として記載した構造式(26)で示される2価の連結基のような構造となってもよい。
・一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物
一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物について説明する。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料として一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、保護層(最表面層)の摩耗が抑制される共に、画像の濃度ムラの発生が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、かさ高い電荷輸送骨格と重合部位(スチリル基)が構造的に近く、剛直(リジッド)であると重合部位同士が動きずらくなり、硬化反応による残留歪が残りやすく、電荷輸送骨格が歪むことによりキャリア輸送をになうHOMO(最高被占軌道)のレベルの変化が起こり、結果としてエネルギー分布が広がった状態(エネルギー的ディスオーダー:σが大きい)となりやすいと考えられる。
これに対し、メチレン基、エーテル基を介すると、分子構造に柔軟性が得られ、σが小さいものが得られやすく、さらに、メチレン基、エーテル基は、エステル基、アミド基などに比較し、双極子モーメント(ダイポールモーメント)が小さく、この効果もσを小さくすることに寄与し、電気特性が向上すると考えられる。また、分子構造に柔軟性が加わることで、反応部位(反応サイト)の動きの自由度が増し、反応率も向上することで強度の高い膜となると考えられる
これらのことから、電荷輸送骨格と重合部位との間に柔軟性に富む連結鎖を介在させる構造がよい。
このため、一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物は、硬化反応により分子自身の分子量が増大し、重心は移動し難くなると共に、スチリル基の自由度が高いと考えられる。の結果、一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、電気特性に優れ、且つ、高い強度を有すると考えられる。
以上から、一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、保護層(最表面層)の摩耗が抑制される共に、画像の濃度ムラの発生が抑制され易くなると考えられる。
一般式(I−b)中、Arb1〜Arb4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arb5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dbは、下記一般式(IA−b)で示される基を示す。bc1〜bc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。bkは、0又は1を示す。但し、Dbの総数は、1又は2である。
一般式(IA−b)中、Lは、*−(CHbn−O−で示される基を含み、*にてArb1〜Arb5で示される基に連結する2価の連結基を示す。bnは、3以上6以下の整数を示す。
以下、一般式(I−b)の詳細を説明する。
一般式(I−b)中、Arb1〜Arb4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arb5は、bkが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arb5は、bkが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
次に、一般式(IA−b)の詳細を説明する。
一般式(IA−b)中、Lで示される2価の連結基としては、例えば、
*−(CHbp−O−、
*−(CHbp−O−(CHbq−O−
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、bpは、3以上6以下(好ましくは3以上5以下)の整数を示す。bqは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Arb1〜Arb5で示される基と連結する部位を示している。
・一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物
一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物について説明する。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料として一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、繰り返し使用しても表面にキズが発生しにくく、かつ画質劣化が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、特定の連鎖重合性電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む最表面層を形成する際には、その重合反応又は架橋反応に伴う膜収縮や、電荷輸送構造と連鎖重合性基周辺の構造の凝集が起きると考えられる。よって、繰り返し使用で電子写真感光体表面が機械的負荷を受けると、膜自体が摩耗したり、分子中の化学構造が切断されたりして、膜収縮や凝集状態が変化し、電子写真感光体としての電気特性が変化し、画質劣化を引き起こしてしまうと考えられる。
一方、一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物は、連鎖重合性基としてスチレン骨格を有していることから、電荷輸送材料の主骨格であるアリール基と相溶性が良く、膜収縮や重合反応又は架橋反応による電荷輸送構造、連鎖重合性基周辺構造の凝集が抑制されると考えられる。その結果、一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)を持つ電子写真感光体は、繰り返し使用による画質劣化が抑制されると考えられる。
加えて、一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物は、電荷輸送性骨格とスチレン骨格を、−C(=O)−、−N(R)−、−S−など特定の基を含む連結基を介して連結することにより、特定の基と電荷輸送性骨格中の窒素原子との間や、特定の基同士の相互作用等が生じると考えられる、その結果、一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、強度がさらに向上すると考えられる。
以上から、一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、繰り返し使用しても表面にキズが発生しにくく、かつ画質劣化が抑制され易くなると考えられる。
なお、−C(=O)−、−N(R)−、−S−など特定の基は、その極性や親水性に起因し、電荷輸送性や高湿条件下における画質劣化を引き起こす要因となるが、一般式(I−c)で示される連鎖重合性化合物は、連鎖重合性基として(メタ)アクリルなどよりも疎水性の高いスチレン骨格を有してるため、電荷輸送性悪化や前サイクルの履歴による残像現象(ゴースト)等の画質劣化が生じ難いと考えられる。
一般式(I−c)中、Arc1〜Arc4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arc5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dcは、下記一般式(IA−c)で示される基を示す。cc1〜cc5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。ckは、0又は1を示す。但し、Dcの総数は、1以上8以下である。
一般式(IA−c)中、Lは、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び、−C(=O)−と−O−、−N(R)−又は−S−とを組み合わせた基からなる群より選択される1つ以上の基を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
以下、一般式(I−c)の詳細を説明する。
一般式(I−c)中、Arc1〜Arc4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arc5は、ckが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Arc5は、ckが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
Dcの総数は、より強度の高い保護層(最表面層)を得る観点から、好ましくは2以上であり、更に好ましくは4以上である。一般に、一分子中の連鎖重合性基の数が多すぎると、重合(架橋)反応が進むにつれ、分子が動きにくくなり連鎖重合反応性が低下し、未反応の連鎖重合性基の割合が増えてしまうことから、Dcの総数は、好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下である。
次に、一般式(IA−c)の詳細を説明する。
一般式(IA−c)中、Lで示される2価の連結基としては、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び、−C(=O)−と−O−、−N(R)−又は−S−とを組み合わせた基(以下、「特定連結基」と称する)を含む2価の連結基である。
ここで、特定連結基としては、保護層(最表面層)の強度と極性(親疎水性)のバランスの観点から、例えば、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(=O)−S−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−N(R)−がよく、好ましくは−N(R)−、−S−、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(H)−、−C(=O)−O−、より好ましくは−C(=O)−O−である。
そして、Lで示される2価の連結基としては、例えば、特定連結基と、飽和炭化水素(直鎖状、分岐状、環状いずれも含む)または芳香族炭化水素の残基と、酸素原子と、を組み合わせて形成される2価の連結基が挙げられ、これらの中でも、特定連結基と、直鎖状の飽和炭化水素の残基と、酸素原子と、を組み合わせて形成される2価の連結基がよい。
で示される2価の連結基に含まれる炭素原子の総数としては、分子中のスチレン骨格の密度と連鎖重合反応性の観点から、例えば、1以上20以下がよく、好ましくは2以上10以下である。
一般式(IA−c)中、Lで示される2価の連結基として具体的には、例えば、
*−(CHcp−C(=O)−O−(CHcq−、
*−(CHcp−O−C(=O)−(CHcr−C(=O)−O−(CHcq−、
*−(CHcp−C(=O)−N(R)−(CHcq−、
*−(CHcp−C(=O)−S−(CHcq−、
*−(CHcp−N(R)−(CHcq−、
*−(CHcp−S−(CHcq−、
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、cpは、0、又は1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。cqは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。crは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Arc1〜Arc5で示される基と連結する部位を示している。
これらの中でも、一般式(IA−c)中、Lで示される2価の連結基としては、*−(CHcp−C(=O)−O−CH−が好ましい。つまり、一般式(IA−c)で示される基は、下記一般式(IA−c1)で示される基であることが好ましい。但し、一般式(IA−c1)中、cp1は0以上4以下の整数を示す。
・一般式(I−d)で示される連鎖重合性化合物
一般式(I−d)で示される連鎖重合性化合物について説明する。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料として一般式(I−d)で示される連鎖重合性化合物を適用すると、保護層(最表面層)の摩耗が抑制される共に、画像の濃度ムラの発生が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、一般式(I−b)で示される連鎖重合性化合物と同様の理由によるものと考えられる。
特に、一般式(I−d)で示される連鎖重合性化合物は、一般式(I−b)に比べ、Ddの総数が3以上8以下と多いため、形成される架橋体がより高い架橋構造(架橋ネットワーク)が形成され易く、より保護層(最表面層)の摩耗が抑制され易くなると考えられる。
一般式(I−d)中、Ard1〜Ard4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ard5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Ddは、下記一般式(IA−d)で示される基を示す。dc1〜dc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。dkは、0又は1を示す。但し、Ddの総数は、3以上8以下である。
一般式(IA−d)中、Lは、*−(CHdn−O−で示される基を含み、*にてArd1〜Ard5で示されるに連結する2価の連結基を示す。dnは、1以上6以下の整数を示す。
以下、一般式(I−d)の詳細を説明する。
一般式(I−d)中、Ard1〜Ard4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ard5は、dkが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ard5は、dkが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
Ddの総数は、より強度の高い保護層(最表面層)を得る観点から、好ましくは4以上である。
次に、一般式(IA−d)の詳細を説明する。
一般式(IA−d)中、Lで示される2価の連結基としては、例えば、
*−(CHdp−O−、
*−(CHdp−O−(CHdq−O−
等が挙げられる。
ここで、Lで示される連結基中、dpは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。dqは、1以上6以下(好ましくは1以上5以下)の整数を示す。
なお、Lで示される連結基中、「*」は、Ard1〜Ard5で示される基と連結する部位を示している。
・一般式(II−a)で示される連鎖重合性化合物
一般式(II−a)で示される連鎖重合性化合物について説明する。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料として、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される連鎖重合性化合物を適用すると、長期に亘り繰り返し使用しても電気特性の劣化が抑制され易くなる。その理由は定かではないが、以下の通りと考えられる。
まず、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される連鎖重合性化合物は、電荷輸送性骨格から、1つの連結基を介して2つ又は3つの連鎖重合性の反応性基(スチレン基)を有する化合物である。
このため、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される連鎖重合性化合物は、高い硬化度、架橋部位数を保ちつつも、この連結基の存在により、重合又は架橋させた際に電荷輸送性骨格に歪みを発生させ難く、高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立が実現され易くなると考えられる。
また、従来用いられていた、(メタ)アクリル基を有する電荷輸送性化合物は、上記のようにひずみを生じやすい上に、反応性部位は親水性が高く、電荷輸送性部位は疎水性が高いため、微視的な相分離(ミクロ相分離)しやすいのに対し、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される連鎖重合性化合物は、スチレン基を反応性基として有しており、更に、硬化(架橋)させた際に電荷輸送性骨格に歪みを生じさせ難い連結基を有している構造であること、反応性部位、電荷輸送性部位ともに疎水性のため相分離が起きに難くなるため、効率的な電荷輸送性能と高強度化が図れると考えられる。その結果として、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される連鎖重合性化合物の重合体又は架橋体を含む保護層(最表面層)は、機械的強度に優れると共に、電荷輸送性能(電気特性)がより優れるものと考えられる。
以上から、一般式(II)(特に一般式(II−a))で示される連鎖重合性化合物を適用すると、長期に亘り繰り返し使用しても電気特性の劣化が抑制され易くなると考えられる。
一般式(II−a)中、Ark1〜Ark4は、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ark5は、置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dkは、下記一般式(IIA−a)で示される基を示す。kc1〜kc5は,それぞれ独立に0以上2以下の整数を示す。kkは、0又は1を示す。但し、Dkの総数は、1以上8以下である。
一般式(IIA−a)中、Lは、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(kn+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。knは、2以上3以下の整数を示す。
以下、一般式(II−a)の詳細を説明する。
一般式(II−a)中、Ark1〜Ark4で示される置換若しくは未置換のアリール基は、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ark5は、kkが0のとき、置換若しくは未置換のアリール基を示し、この置換若しくは未置換のアリール基としては、一般式(I−a)中のAra1〜Ara4で示される置換若しくは未置換のアリール基と同様である。
Ark5は、kkが1のとき、置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、この置換若しくは未置換のアリーレン基としては、一般式(I−a)中のAra5及びAra6で示される置換若しくは未置換のアリーレン基と同様である。
Dkの総数は、より強度の高い保護層(最表面層)を得る観点から、好ましくは2以上であり、更に好ましくは4以上である。一般に、一分子中の連鎖重合性官能基の数が多すぎると、重合(架橋)反応が進むにつれ、分子が動きにくくなり連鎖重合反応性が低下し、未反応の連鎖重合性基の割合が増えてしまうことから、Dcの総数は、好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下である。
次に、一般式(IIA−a)の詳細を説明する。
一般式(IIA−a)中、Lで示される(kn+1)価の連結基としては、例えば、一般式(II)中、L’で示される(n+1)価の連結基と同様である。
以下に、特定の連鎖重合性電荷輸送材料の具体例を示す。
具体的には、一般式(I)及び(II)の電荷輸送性骨格F(例えば一般式(I−a)中のDaや一般式(II−a)のDkを除く骨格に相当する部位)の具体例、電荷輸送性骨格Fに連結する官能基(例えば一般式(I−a)中のDaや一般式(II−a)のDkに相当する部位)の具体例と共に、一般式(I)及び(II)で示される特定の連鎖重合性電荷輸送材料の具体例を示すが、これらに限定されるわけではない。
なお、一般式(I)及び(II)の電荷輸送性骨格Fの具体例の「*」部分は、電荷輸送性骨格Fに連結する官能基の「*」部分が連結していることを意味する。
つまり、例えば、例示化合物(I−b)−1は、電荷輸送性骨格Fの具体例:(M1)−1、官能基の具体例:(R2)−1と示されているが、その具体的な構造は以下の構造を示す。
まず、電荷輸送性骨格Fの具体例を以下示す。
次に、電荷輸送性骨格Fに連結する官能基の具体例を示す。
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−a)で示される化合物の具体例を示す。
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−b)で示される化合物の具体例を示す。
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−c)で示される化合物の具体例を示す。
次に、一般式(I)、具体的には一般式(I−d)で示される化合物の具体例を示す。
次に、一般式(II)、具体的には一般式(II−a)で示される化合物の具体例を示す。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料(特に一般式(I)で示される連鎖重合性化合物)は、例えば、以下のようにして合成される。
即ち、特定の連鎖重合性電荷輸送材料は、前駆体であるカルボン酸、又は、アルコールと、対応するクロロメチルスチレンなどでのエーテル化などにより合成される。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料の例示化合物(I−d)−22の合成経路を一例として以下に示す。
アリールアミン化合物カルボン酸は、アリールアミン化合物のエステル基を、例えば、実験化学講座、第4版、20巻、P.51などに記載されたように、塩基性触媒(NaOH、KCO等)、酸性触媒(例えばリン酸、硫酸等)を用いる加水分解により得られる。
この際、溶媒としては、種々のものが挙げられるが、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール系を用いるか、これに水を混合して用いることがよい。
さらに、アリールアミン化合物の溶解性が低い場合には、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ジメチルスルホキシド、エーテル、テトラヒドロフランなどを加えてもよい。
溶媒の量は、特に制限はないが、例えば、エステル基を含有するアリールアミン化合物1質量部に対して1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下で用いることがよい。
反応温度は、例えば、室温(例えば25℃)以上溶媒の沸点以下の範囲で設定され、反応速度の問題上、50度以上が好ましい。
触媒の量については、特に制限はないが、例えば、エステル基を含有するアリールアミン化合物1質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下、好ましくは0.01質量部以上0.5質量部以下で用いることがよい。
加水分解反応後、塩基性触媒で加水分解を行った場合には、生成した塩を酸(例えば塩酸等)で中和し、遊離させる。さらに、十分に水洗した後、乾燥して使用するか、必要によっては、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトンなど、適当な溶媒により、再結晶精製を行った後、乾燥して使用してもよい。
アリールアミン化合物のアルコール体は、アリールアミン化合物のエステル基を、例えば、実験化学講座、第4版、20巻、P.10などに記載されたように、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどを用いて対応するアルコールに還元して合成する。
例えば、エステル結合にて連鎖重合性官能基を導入する場合、アリールアミン化合物カルボン酸と、ヒドロキシメチルスチレンを酸触媒にて脱水縮合させる通常のエステル化や、アリールアミン化合物カルボン酸と、ハロゲン化メチルスチレンを、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いて縮合させる方法が使用し得るが、ハロゲン化メチルスチレンを用いる方法が副生成物が抑制されることから好適である。
アリールアミン化合物カルボン酸の酸に対し、ハロゲン化メチルスチレンを1当量以上、好ましくは、1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上加えることがよく、塩基はハロゲン化メチルスチレンに対し0.8当量以上2.0当量以下、好ましくは1.0当量以上1.5当量以下で用いることがよい。
溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;トルエン、クロロベンゼン、1ークロロナフタレンなどの芳香族系溶媒;などが有効であり、アリールアミン化合物カルボン酸の1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられることがよい。
反応温度は特に制限はない。反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶媒で抽出、水洗し、さらに、必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
また、エーテル結合にて導入する場合、アリールアミン化合物アルコールと、ハロゲン化メチルスチレンを、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いて縮合させる方法が使用することがよい。
アリールアミン化合物アルコールのアルコールに対し、ハロゲン化メチルスチレンを1当量以上、好ましくは、1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上加えることがよく、塩基はハロゲン化メチルスチレンに対し0.8当量以上2.0当量以下、好ましくは、1.0当量以上1.5当量以下で用いることがよい。
溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;トルエン、クロロベンゼン、1ークロロナフタレンなどの芳香族系溶媒;などが有効であり、アリールアミン化合物アルコールの1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いることがよい。
反応温度は特に制限はない。反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶媒で抽出、水洗し、さらに、必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料(特に一般式(II)で示される連鎖重合性化合物)は、例えば、以下に示す一般の電荷輸送材料の合成方法(ホルミル化、エステル化、エーテル化、水素添加)を利用して、合成される。
・ホルミル化:電子供与性基を持つ芳香族化合物・複素環化合物・アルケンにホルミル基を導入するのに適した反応。DMFとオキシ三塩化リンを用いるのが一般的であり、反応温度は室温(例えば25℃)から100℃程度で行われることが多い。
・エステル化:有機酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシル基を含む化合物との縮合反応。脱水剤を共存させたり、水を系外へ除去することで平衡をエステル側へ偏らせる手法を用いることが好ましい。
・エーテル化:アルコキシドと有機ハロゲン化合物を縮合させるウィリアムソン合成法が一般的である。
・水素添加:種々の触媒を用いて不飽和結合に水素を反応させる方法。
なお、特定の連鎖重合性電荷輸送材料としては、一般式(I)及び一般式(II)で示される連鎖重合性化合物以外にも、特開2012−163693号公報の[0110]〜[0153]に記載の化合物、特許第4365960号公報の[0055]〜[0082]に記載の化合物、特許第4429340号公報の[0040]〜[0043]に記載の化合物、特開2013−195762号公報の[0161]〜[0166]に記載の化合物、などが挙げられる。
特定の連鎖重合性電荷輸送材料の含有量は、例えば、保護層形成用塗布液中の全固形分に対して40質量%以上95質量%以下がよく、好ましくは50質量%以上95質量%以下である。
−樹脂粒子−
保護層(最表面層)を構成する膜は、樹脂粒子を含有してもよい。
樹脂粒子としては、例えば、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂の粒子;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂の粒子;ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーの粒子;等が挙げられる。
これらの樹脂粒子は、中空粒子であってもよい。また、樹脂粒子は、これらの樹脂を単独又は2種以上混合して用いてもよい。
また、保護層(最表面層)を構成する膜は、樹脂粒子として、フッ素含有樹脂粒子を含有してもよい。
フッ素含有樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマー、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種又は2種以上と非フッ素系のモノマーとの共重合体の粒子が挙げられる。
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン;フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン;等が挙げられる。
一方、非フッ素系のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン;シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル;ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステル;などが挙げられる。
これらのうち、フッ素化率の高いものが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが好ましい。これらのうちでも、PTFE、FEP、PFAが特に好ましい。
フッ素含有樹脂粒子は、例えばフッ素系単量体を乳化重合などの方法で製造した粒子(フッ素樹脂水性分散液)をそのまま使用してもよく、十分に水洗した後に乾燥したものを使用してもよい。
フッ素含有樹脂粒子の平均粒子径としては0.01μm以上100μm以下が好ましく、特に0.03μm以上5μm以下であることが好ましい。
尚、上記フッ素含有樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−700(堀場製作所製)を用いて測定した値をいう。
フッ素含有樹脂粒子は、市販で入手したものを用いてもよく、例えばPTFE粒子としては、フルオンL173JE(旭ガラス社製)、ダニイオンTHV−221AZ、ダニイオン9205(住友3M社製)、ルブロンL2、ルブロンL5(ダイキン社製)などが挙げられる。
フッ素含有樹脂粒子は、紫外領域の発振波長を有するレーザー光を照射されたものであってもよい。フッ素含有樹脂粒子に照射されるレーザー光については特に限定されるものではなく、例えば、エキシマレーザー等が挙げられる。エキシマレーザー光としては、波長が400nm以下、特に193nm以上308nm以下の紫外レーザー光が好適である。特に、KrFエキシマレーザー光(波長:248nm)およびArFエキシマレーザー光(波長:193nm)等が好ましい。エキシマレーザー光照射は、通常、室温(25℃)大気中で行うが、酸素雰囲気中で行ってもよい。
また、エキシマレーザー光の照射条件は、フッ素樹脂の種類および求められる表面改質の程度によって左右されるが、一般的な照射条件は次の通りである。
フルエンス:50mJ/cm/パルス以上
入射エネルギー:0.1J/cm以上
ショット数:100以下
特に好適なKrFエキシマレーザー光およびArFエキシマレーザー光の常用される照射条件は次の通りである。
KrF
フルエンス:100mJ/cm/パルス以上500mJ/cm/パルス以下
入射エネルギー:0.2J/cm以上2.0J/cm以下
ショット数:1以上20以下
ArF
フルエンス:50mJ/cm/パルス以上150mJ/cm/パルス以下
入射エネルギー:0.1J/cm以上1.0J/cm以下
ショット数:1以上20以下
フッ素含有樹脂粒子の含有量は、保護層(最表面層)の固形分全量に対して1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
−フッ素含有分散剤−
保護層(最表面層)を構成する膜は、フッ素含有樹脂粒子と共に、フッ素含有分散剤を含有してもよい。
フッ素含有分散剤は、フッ素含有樹脂粒子を保護層(最表面層)中に分散させるために用いられるものであるため、界面活性作用を有していることが好ましく、つまり分子内に親水基と疎水基とを持つ物質であることがよい。
フッ素含有分散剤としては、以下の反応性の単量体を重合した樹脂(以下「特定樹脂」と称する。)が挙げられる。具体的には、パーフルオロアルキル基を有するアクリレートと、フッ素を有さないモノマーと、のランダム又はブロック共重合体、メタクリレートホモポリマーおよび前記パーフルオロアルキル基を有するアクリレートと、前記フッ素を有さないモノマーと、のランダム又はブロック共重合体、メタクリレートと、前記フッ素を有さないモノマーと、のランダム又はブロック共重合体が挙げられる。尚、パーフルオロアルキル基を有するアクリレートとしては、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレートが挙げられる。
また、フッ素を有さないモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレートが挙げられる。また、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーなどが挙げられる。またその他に、フッ素系界面活性剤が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−611、サーフロンS−385(AGCセイミケミカル社製)、フタージェント730FL、フタージェント750FL(ネオス社製)、PF−636、PF−6520(北村化学社製)、メガファックEXP,TF−1507、メガファックEXP、TF−1535(DIC社製)、FC−4430、FC−4432(3M社製)などが挙げられる。
なお、特定樹脂の重量平均分子量は100以上50000以下が好ましい。
フッ素含有分散剤の含有量は、保護層(最表面層)の固形分全量に対して0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
フッ素含有分散剤をフッ素含有樹脂粒子の表面に付着させる方法としては、フッ素含有分散剤を直接フッ素含有樹脂粒子の表面に付着させてもよいし、まず上記の単量体をフッ素含有樹脂粒子の表面に吸着させた後に重合を行なって、フッ素含有樹脂粒子の表面に前記特定樹脂を形成させてもよい。
フッ素含有分散剤は、他の界面活性剤と併用してもよい。但し、その量としては極力少ないことがよく、他の界面活性剤の含有量は、フッ素含有樹脂粒子1質量部に対し、0質量部以上0.1質量部以下がよく、好ましくは0質量部以上0.05質量部以下、より好ましくは0質量部以上0.03質量部以下である。
他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤がよく、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、グリセリンエステル類、フッ素系界面活性剤およびその誘導体などが挙げられる。
ポリオキシエチレン類の具体例としては、例えばエマルゲン707(花王社製)、ナロアクティーCL−70、ナロアクティーCL−85(三洋化成工業社製)、レオコールTD−120(ライオン社製)などが挙げられる。
−不飽和結合を有する化合物−
保護層(最表面層)を構成する膜は、本実施形態に係る特定の連鎖重合性電荷輸送材料以外に、不飽和結合を有する化合物を併用してもよい。この場合、保護層は、特定の連鎖重合性電荷輸送材料と不飽和結合を有する化合物との重合体又は架橋体を含む。
不飽和結合を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。また、不飽和結合を有する化合物としては、電荷輸送性骨格を有さないものが挙げられる。
不飽和結合を有する化合物として、電荷輸送性骨格を有さないものとしては以下のようなものが挙げられる。
1官能のモノマーは、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、スチレン、などが挙げられる。
2官能のモノマーは、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
3官能のモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート、トリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
4官能のモノマーは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能以上のモノマーは、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、不飽和結合を有する化合物のうち、反応性のポリマーとしては、例えば、特開平5−216249号公報、特開平5−323630号公報、特開平11―52603号公報、特開2000−264961号公報、特開2005−2291号公報などに開示されたものが挙げられる。
電荷輸送性骨格を有さない不飽和結合を有する化合物を用いる場合には、単独又は2種以上の混合物として使用される。
電荷輸送性骨格を有さない不飽和結合を有する化合物の含有量は、保護層形成用塗布液中の全固形分に対して、例えば、好ましくは60質量%以下がよく、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
−非反応性の電荷輸送材料−
保護層(最表面層)を構成する膜は、非反応性の電荷輸送材料を併用してもよい。ここで、非反応性の電荷輸送材料とは、電荷輸送性骨格を有し、反応性基を有さない電荷輸送材料をいう。非反応性の電荷輸送材料を保護層(最表面層)に用いた場合には電荷輸送成分の濃度が高まり、電気特性を更に改善するのに有効である。また、非反応性の電荷輸送材料を添加して架橋密度を減じ、強度を調整してもよい。
非反応性の電荷輸送材料としては、公知の電荷輸送材料を用いてもよく、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等が用いられる。
中でも、電荷移動度、相溶性など点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが好ましい。
非反応性の電荷輸送材料は、保護層形成用塗布液中の全固形分に対して0質量%以上30質量%以下で用いられることが好ましく、より好ましくは1質量%以上25質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
−その他の添加剤−
保護層(最表面層)を構成する膜は、更に成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、特にフッ素含有のカップリング剤と混合して用いてもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。また、ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物を用いてもよい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越化学工業社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が挙げられる。
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えてもよい。
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、保護層の成膜性の観点から、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが好ましい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性のフッ素化合物などを混合してもよい。
ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物としては、特開2007−11005号公報に記載の化合物などが挙げられる。
保護層(最表面層)を構成する膜には、劣化防止剤を添加することが好ましい。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、又はヒンダードアミン系が好ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。
劣化防止剤の添加量としては、保護層の全固形分全量を基準として20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス1076、イルガノックス1010、イルガノックス1098、イルガノックス245、イルガノックス1330、イルガノックス3114、イルガノックス1076(以上、チバ・ジャパン社製)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、サノールLS2626、サノールLS765、サノールLS770、サノールLS744(以上、三共ライフテック社製)、チヌビン144、チヌビン622LD(以上、チバ・ジャパン社製)、マークLA57、マークLA67、マークLA62、マークLA68、マークLA63(以上、アデカ社製)が挙げられ、チオエーテル系として、スミライザーTPS、スミライザーTP−D(以上、住友化学社製)が挙げられ、ホスファイト系として、マーク2112、マークPEP−8、マークPEP−24G、マークPEP−36、マーク329K、マークHP−10(以上、アデカ社製)等が挙げられる。
保護層(最表面層)を構成する膜には、導電性粒子や、有機、無機粒子を添加してもよい。
この粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、好ましくは平均粒径1nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、又はアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれる。該粒子としては一般に市販されているものを使用してもよい。
保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、保護層の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下の範囲で用いられる。
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。
保護層中のシリコーン粒子の含有量は、保護層の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
また、その他の粒子としては、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。さらに、粒子を分散させるために公知の種々の分散材を用いてもよい。
保護層(最表面層)を構成する膜には、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;等が挙げられる。
保護層(最表面層)を構成する膜には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属を樹脂の粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着での混合でもよい。導電性粒子の平均粒径は0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
保護層(最表面層)を構成する膜には、塗膜の濡れ性改善のため、シリコーン含有オリゴマー、フッ素含有アクリルポリマー、シリコーン含有ポリマー等を添加してもよい。
−組成物−
組成物は、各成分を溶剤中に溶解又は分散してなる保護層形成用塗布液として調製されることが好ましい。
前述の成分を反応させて塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、好ましくは室温(20℃)以上100℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下で、好ましくは10分以上100時間以下、より好ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温する。また、この際に超音波を照射することも好ましい。
−保護層の形成−
塗布液(保護層形成用塗布液)は、被塗布面(電荷輸送層)の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット塗布法、突上げ塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、光、電子線又は熱を付与してラジカル重合を生起させて、該塗膜を硬化させる。
塗布法の中でも、生産性や効率性といった観点から、浸漬塗布法が大量生産を考えた場合に有効的な塗布法であるが、浸漬塗布法の場合、塗布液中の溶剤による下層の溶解が起こると、下層の成分の最表面層への混入が生じやすくなる。したがって、浸漬塗布法を用いる場合には、塗布液中の溶剤としてフッ素非含有の環状炭化水素系溶剤を用いることによる下層溶解の抑制効果がより発揮されやすくなる。
硬化膜の硬化方法としては、熱、光、又は放射線などによるラジカル重合が行なわれる。反応が早く進行しすぎないよう調整すると、保護層(最表面層)の機械的強度及び電気特性が向上し、また膜のムラやシワの発生も抑制されるため、ラジカル発生が比較的ゆっくりと起こる条件下で重合させることが望ましい。この点からは、重合速度を調整しやすい熱重合が好適である。つまり、保護層(最表面層)を構成する硬化膜を形成するための組成物には、熱ラジカル発生剤又はその誘導体を含むことがよい。また、このような熱重合条件下では、物質の拡散速度が上がり、かつ、重合にかかる時間が長いために、光や放射線などによる重合に比べて、下層の溶解が促進されてしまう。したがって、下層の溶解を抑制することが特に重要となるため、環状炭化水素系の溶剤を用いる効果が大いに発揮される。
なお、熱、光で硬化を行う場合、重合開始剤は必ずしも必要ではないが、光硬化触媒又は熱重合開始剤を用いてもよい。この光硬化触媒及び熱重合開始剤としては、公知の光硬化触媒や熱重合開始剤が用いられる。放射線としては電子線が好ましい。
以下、電子線硬化、光硬化、及び熱硬化について説明する。
・電子線硬化
電子線を用いる場合、加速電圧は300KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、線量は好ましくは1Mrad以上100Mrad以下の範囲、より好ましくは3Mrad以上50Mrad以下の範囲である。加速電圧が300KV以下であることにより感光体特性に対する電子線照射のダメージが抑制される。また、線量が1Mrad以上であることにより架橋が十分に行なわれ、100Mrad以下であることにより感光体の劣化が抑制される。
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が1000ppm、好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、又は照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
・光硬化
光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプなどが用いられ、バンドパスフィルター等のフィルターを用いて好適な波長を選択してもよい。照射時間、光強度は自由に選択されるが、例えば照度(365nm)は300mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、例えば600mW/cmのUV光を照射する場合、5秒以上360秒以下照射すればよい。
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、又は照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
光硬化触媒として、分子内開裂型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系などが挙げられる。
より具体的には、ベンジルケタール系として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
また、アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モリホニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
ホスフィノキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンキサイドなどが挙げられる。
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
より具体的には、ベンゾフェノン系として、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
・熱硬化
熱重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤又はその誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、VE−073、Vam−110、Vam−111(和光純薬工業製)、OTazo−15、OTazo−30、AIBN、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤;パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(化薬アクゾ社製)、ルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531(アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
これらのうち、分子量250以上のアゾ系重合開始剤を用いると、低い温度でムラなく反応が進行することから、ムラが抑制された高強度の膜の形成が図られる。より好適には、アゾ系重合開始剤の分子量は、250以上であり、300以上が更に好適である。
加熱は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、好ましくは50℃以上170℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下で、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは15分以上100分以下加熱する。
光硬化触媒又は熱重合開始剤の総含有量は、保護層形成のための溶解液中の全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、更には0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲が特に好ましい。
なお、本実施態様では、反応が早く進行しすぎると架橋により塗膜の構造緩和ができ難くなり、膜のムラやシワを発生しやすくなるといった理由から、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化方法が採用される。
特に、特定の連鎖重合性電荷輸送材料と熱による硬化とを組み合わせることで、塗膜の構造緩和の促進が図られ、表面性状に優れた高い保護層(最表面層)が得られ易くなる。
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは3μm以上40μm以下、より好ましくは5μm以上35μm以下の範囲内に設定される。
以上、図1に示される電子写真感光体を参照し、機能分離型の感光層における各層の構成を説明したが、図2に示される機能分離型の電子写真感光体における各層においてもこの構成が採用しうる。また、図3に示される電子写真感光体の単層型感光層の場合、以下の態様であることが好ましい。
即ち、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含んで構成されることがよい。なお、これら材料は、電荷発生材料及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して10質量%以上85質量%以下がよく、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
なお、本実施形態に係る電子写真感光体では、最表面層が保護層である形態を説明したが、保護層がない層構成であってもよい。
保護層がない層構成の場合、図1に示される電子写真感光体では、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が最表面層となる。そして、当該最表面層となる電荷輸送層が、上記特定の組成物の硬化膜で構成される。
また、保護層がない層構成の場合、図3に示される電子写真感光体では、その層構成において最表面に位置する単層型感光層が最表面層となる。そして、当該最表面層となる単層型感光層が、上記特定の組成物の硬化膜で構成される。但し、上記組成物には、電荷発生材料が配合される。
これら最表面層となる電荷輸送層及び単層型感光層の膜厚は、例えば、7μm以上70μm以下がよく、好ましくは10μm以上60μm以下である。
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図4に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
なお、図4には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図5に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表す。
<実施例1>
−下引層の作製−
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学工業社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理を施した酸化亜鉛を得た。表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、更に60℃で減圧乾燥を行い、アリザリンを付与させた酸化亜鉛を得た。
このアリザリンを付与させた酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学工業社製):15質量部と、をメチルエチルケトン85質量部に混合した液38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。 得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ20μmの下引層を得た。
−電荷発生層の作製−
電荷発生材料としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン(CGM−1)15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温(25℃)で乾燥して、厚さが0.2μmの電荷発生層を形成した。
−電荷輸送層の作製−
次に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)45質量部、及び結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(以下、「PCZ500」と標記、粘度平均分子量:5万):55質量部をクロルベンゼン:800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
−保護層(最表面層)の形成−
特定の連鎖重合性電荷輸送材料(A)として、例示化合物(A−1);95質量部と、開始剤として、OTazo15(大塚化学社製)2質量部とを、溶剤としてのシクロヘキサン(X−1):150質量部に溶解させ、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に塗布し、酸素濃度100ppmの雰囲気下で150℃、40分加熱し、厚さ7μmの保護層を形成した。
以上の工程を経て、電子写真感光体を得た。
<実施例2〜22、比較例1〜4>
表1、表2に従って、特定の連鎖重合性電荷輸送材料(A)、及び保護層形成用塗布液の溶剤の種類、組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、各電子写真感光体を得た。
但し、実施例17は、保護層を突上げ塗布法により形成した。また、実施例19は、保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に塗布した後、光強度600mW/cm、光照射時間1分の条件で、光(紫外線)を照射して保護層を形成した。
また、実施例11〜15は、溶剤として、シクロヘキサン(X−1)と、酢酸エチル(Z−1)とを混合して用いた。実施例11〜15において、X−1/Z−1=a/bとの表記は、シクロヘキサンがa質量%、酢酸エチルがb質量%で混合されていることを意味する。例えば、表2の実施例11において、X−1/Z−1=80/20は、シクロヘキサンが80質量%、酢酸エチルが20質量%で混合されていることを意味する。
<成膜性評価>
−保護層(最表面層)/電荷輸送層界面観察評価(下層の溶解性評価)−
各例で得られた電子写真感光体の一部を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、最表面層と電荷輸送層との界面を観察し、以下の評価基準で判断した。A+が最も良好な特性であることを示す。各評価結果を表1、2に示す。
A+:下層が全く溶解されず、界面がくっきりと観察される。
A :下層との界面がくっきりと観察される。
B :界面の一部が、不明瞭である。
C :界面の全部が、不明瞭である。
−塗布性評価−
各例で得られた電子写真感光体を、目視にて感光体表面(最表面層)を観察し、以下の評価基準で判断した。A+が最も良好な特性であることを示す。
A+:全面が平滑で欠陥等が全く観察されない。
A :全面が平滑で欠陥等がほとんど観察されない。
B :一部、ハジキや欠陥等が観察される。
C :全面にハジキや欠陥等が観察される。
<長期出力評価>
各例で得られた電子写真感光体を、富士ゼロックス社製 Docucentre−IV C2260に装着し、常温常湿(20℃、50%RH)の環境下において、A4紙に、画像濃度100%のベタ塗り画像部分、画像濃度0%の非画像部分とを有する画像を連続して300000枚出力した。その後、下記に示す評価を行った。なお、画像形成には、富士ゼロックス製P紙(A4サイズ、横送り)を用いた。各評価結果を表1、2に示す。
−感光体の摩耗特性評価−
300000枚出力した後、電子写真感光体表面に対し、画像濃度100%のベタ塗り画像部分、画像濃度0%の非画像部分に相当する各表面を目視にて観察し、以下の評価基準で判断した。A+が最も良好な特性であることを示す。
A+:顕微鏡観察でもキズが確認されない。
A :目視でキズが確認されないが、顕微鏡観察で小さなキズが確認される。
B :部分的にキズが発生。
C :全面にキズ発生。
−画質維持性評価−
300000枚出力した後、電子写真感光体に対し、画像濃度100%のベタ塗り画像部分、画像濃度0%の非画像部分に相当する各部分で、図6に示す画像評価パターンを出力し、画質の劣化度合い(具体的には、濃度ムラやカブリの発生)を目視にて下記に示すように評価した。A+が最も良好な特性であることを示す。
A+:最も良好(出力した画像パターン全てにおいて劣化がほとんど見られない)
A :良好(目視では変化は確認できないが、拡大画像では変化を確認)
B :画質劣化は確認し得るが、許容レベル
C :画質劣化が生じており、問題となるレベル
表1、表2の結果から、本実施例では、比較例1,2に比べ、塗布性評価において最表面層に欠陥が観察されなかった。また、本実施例では、比較例3,4に比べ、下層の溶解性評価において界面がくっきりと観察された。これにより、溶剤として、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤を含有する組成物を適用した本実施例は、フッ素系の溶剤、エステル系の溶剤、又はエーテル系の溶剤を単独で含有する組成物を適用した本比較例に比べ、欠陥等に起因する空隙の発生が抑制され、且つ下層の溶解(つまり、下層の成分との混合)が抑制された最表面層を有する感光体が得られることがわかった。
さらに、本実施例では、本比較例に比べ、感光体の摩耗特性が向上し、且つ画質の劣化が抑制されることがわかった。
特に、組成物中の環状炭化水素系の溶剤が、全溶剤に対して30質量%以上の実施例10〜13は、30質量%未満の実施例14、15に比べ、下層の溶解(つまり、下層の成分との混合)がより抑制された最表面層が得られることがわかった。
また、極性基を有さない飽和環状炭化水素系の溶剤を用いた実施例7、8は、極性基を有する飽和環状炭化水素系の溶剤を用いた実施例9に比べ、下層の溶解がより抑制された最表面層が得られることがわかった。
また、フッ素非含有の環状炭化水素系溶剤の含有量が5000ppm以上50000ppm以下の実施例18、20は、当該含有量が5000ppm未満の実施例21、及び50000ppm超えの実施例22に比べ、感光体の摩耗特性が向上し、且つ画質の劣化がより抑制されることがわかった。
また、組成物中に含有される電荷輸送材料がビニルフェニル基を有する実施例2、4、5、10、16、18、20は、当該電荷輸送材料がアクリロイル基、又はメタクリロイル基を有する実施例1、3に比べ、感光体の摩耗特性が向上し、且つ画質の劣化がより抑制されることがわかった。
以下、表中の略称の詳細について示す。
[特定の連鎖重合性電荷輸送材料(A)]
・A−1:下記構造式で示される電荷輸送材料

・A−2:例示化合物(I−c)−15
・A−5:下記構造式で示される特定の連鎖重合性電荷輸送材料

・A−6 :例示化合物(I−c)−43
・A−7 :例示化合物(I−d)−20
・A−8 :例示化合物(II)−58
・A−9 :例示化合物(I−d)−22
・A−10:例示化合物(I−d)−28
・A−11:例示化合物(II)−56
[溶剤]
・(X−1):シクロヘキサン
・(X−2):シクロペンタン
・(X−3):シクロヘキサノール
・(Y−1):1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン
・(Y−2):1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロシクロヘキサン
・(Z−1):酢酸エチル
・(Z−2):テトラヒドロフラン
−例示化合物(I−c)−15の合成−
500ml三口フラスコに4,4’−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジフェニルアミン68.3g、4−ヨードキシレン46.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム20g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、(I−c)−15aを65.1g得た(収率73%)。
3L三口フラスコに(I−c)−15aを59.4g、テトラヒドロフラン450mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム11.7gを水450mlに溶解した水溶液を添加し、60℃で3時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸60ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。さらにこの固体にアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、(I−c)−15bを46.2g得た(収率83%)。
500ml三口フラスコに(I−c)−15bを29.2g、4−クロロメチルスチレン23.5g、炭酸カリウム21.3g、ニトロベンゼン0.17g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら3時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、例示化合物(I−c)−15を36.4g得た(収率80%)。
−例示化合物(I−c)−43の合成−
500ml三口フラスコに4,4’−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジフェニルアミン68.3g、4,4’−ジヨードー3,3’−ジメチルー1,1’−ビフェニル43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、(I−c)−43aを56.0g得た(収率65%)。
3L三口フラスコに(I−c)−43aを43.1g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム8.8gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸40ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、(I−c)−43bを36.6g得た(収率91%)。
500ml三口フラスコに(I−c)−43bを28.2g、4−クロロメチルスチレン23.5g、炭酸カリウム21.3g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、例示化合物(I−c)−43を37.8g得た(収率85%)。
なお、他の例示化合物も、上記合成に準じて合成した。
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性支持体、5 保護層、6 単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)、7A、7B、7C、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、100、120 画像形成装置、300 プロセスカートリッジ

Claims (8)

  1. 導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
    最表面層が、1分子内にフッ素原子を含まない環状炭化水素系の溶剤と、1分子内に少なくとも1つの連鎖重合性官能基を有する電荷輸送材料と、を含有する組成物の硬化膜で構成された電子写真感光体。
  2. 前記環状炭化水素系の溶剤は、極性基を有さない飽和環状炭化水素系の溶剤である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記最表面層中の前記環状炭化水素系の溶剤の含有量が前記最表面層の質量に対して5000ppm以上50000ppm以下である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記連鎖重合性官能基の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はビニルフェニル基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記電荷輸送材料が、下記一般式(I)及び下記一般式(II)で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。

    (一般式(I)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。Lは、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む2価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。)

    (一般式(II)中、Fは、電荷輸送性骨格を示す。L’は、アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基、並びに、アルキレン基、アルケニレン基、−C(=O)−、−N(R)−、−S−、及び−O−からなる群より選択される2種以上を含む(n+1)価の連結基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。 m’は、1以上6以下の整数を示す。nは、2以上3以下の整数を示す。)
  6. 前記組成物中の前記環状炭化水素系の溶剤の含有量が、全溶剤に対して30質量%以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
    画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
    を備える画像形成装置。
JP2014194449A 2014-09-24 2014-09-24 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Active JP6476688B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014194449A JP6476688B2 (ja) 2014-09-24 2014-09-24 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014194449A JP6476688B2 (ja) 2014-09-24 2014-09-24 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016065973A true JP2016065973A (ja) 2016-04-28
JP6476688B2 JP6476688B2 (ja) 2019-03-06

Family

ID=55805433

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014194449A Active JP6476688B2 (ja) 2014-09-24 2014-09-24 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6476688B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020033397A (ja) * 2018-08-27 2020-03-05 富士ゼロックス株式会社 電荷輸送性ポリエステル樹脂
US11987665B2 (en) 2018-11-13 2024-05-21 Lg Chem, Ltd. Polymer and organic light emitting device comprising same

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005055729A (ja) * 2003-08-06 2005-03-03 Canon Inc 電子写真感光体、その製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
JP2005091742A (ja) * 2003-09-17 2005-04-07 Canon Inc 電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、電子写真装置及びプロセスカートリッジ
JP2014139642A (ja) * 2013-01-21 2014-07-31 Fuji Xerox Co Ltd 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005055729A (ja) * 2003-08-06 2005-03-03 Canon Inc 電子写真感光体、その製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
JP2005091742A (ja) * 2003-09-17 2005-04-07 Canon Inc 電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、電子写真装置及びプロセスカートリッジ
JP2014139642A (ja) * 2013-01-21 2014-07-31 Fuji Xerox Co Ltd 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020033397A (ja) * 2018-08-27 2020-03-05 富士ゼロックス株式会社 電荷輸送性ポリエステル樹脂
JP7124560B2 (ja) 2018-08-27 2022-08-24 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 電荷輸送性ポリエステル樹脂
US11987665B2 (en) 2018-11-13 2024-05-21 Lg Chem, Ltd. Polymer and organic light emitting device comprising same

Also Published As

Publication number Publication date
JP6476688B2 (ja) 2019-03-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6015264B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP5994707B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6003669B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6007691B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP5929785B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6582475B2 (ja) 電荷輸送性膜、光電変換装置、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
JP5888271B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6413549B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6217348B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6167964B2 (ja) 画像形成装置、及びプロセスカートリッジ
JP6476688B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6036058B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6024555B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6432244B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6592908B2 (ja) 画像形成装置、及びプロセスカートリッジ
JP6565197B2 (ja) 画像形成装置、及びプロセスカートリッジ
JP6024554B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP2018028603A (ja) 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
JP6241322B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6354249B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6171901B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP6241293B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
JP2019023705A (ja) 画像形成装置及びプロセスカートリッジ
JP2016186547A (ja) 画像形成装置、及びプロセスカートリッジ
JP6036057B2 (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170831

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180613

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180619

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180810

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181113

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181211

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190121

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6476688

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350