JP2016065267A - 表面処理銅箔、該表面処理銅箔の製造方法、および該表面処理銅箔を用いた銅張積層板 - Google Patents
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Abstract
Description
前記表面処理銅箔は、銅原箔に対して、該銅原箔の前記樹脂フィルムと貼り合わせる側の表面に複数の被覆層が形成されたものであり、
前記複数の被覆層は、前記銅原箔の上に形成され所定の平均粒径を有する粗化銅結晶粒からなる粗化銅めっき層と、前記粗化銅めっき層の上に形成された防錆ニッケルめっき層と、前記防錆ニッケルめっき層の上に形成され所定の平均粒径を有する小突起銅結晶粒からなる小突起銅めっき層と、前記小突起銅めっき層の上に形成された亜鉛めっき層とを有する表面処理銅箔を提供する。
(i)前記粗化銅結晶粒の平均粒径が、0.1μm以上0.5μm以下であり、前記小突起銅結晶粒の平均粒径が、0.03μm以上でありかつ前記粗化銅結晶粒の平均粒径の1/2以下である。
(ii)前記粗化銅めっき層の平均厚さが、0.07μm以上0.35μm以下である。なお、本発明において、めっき層の平均厚さとは、該めっき層の被膜量(単位面積あたりの質量)と該めっき層を構成する金属の理論密度(単位体積あたりの質量)とから換算したものである。
(iii)前記亜鉛めっき層の被膜量が、0.1μg/cm2以上3μg/cm2以下である。
(iv)前記銅原箔が圧延銅箔であり、前記複数の被覆層は、前記銅原箔と前記粗化銅めっき層との間に形成された下地銅めっき層を更に有する。
(v)前記複数の被覆層は、前記亜鉛めっき層の上に形成されたクロメート処理層と、前記クロメート層の上に形成されたシランカップリング処理層とを更に有する。
前記銅原箔の上に粗化銅めっき層を形成する粗化銅めっき層形成工程と、前記粗化銅めっき層の上に防錆ニッケルめっき層を形成する防錆ニッケルめっき層形成工程と、前記防錆ニッケルめっき層の上に小突起銅めっき層を形成する小突起銅めっき層形成工程と、前記小突起銅めっき層の上に亜鉛めっき層を形成する亜鉛めっき層形成工程とを含み、
前記小突起銅めっき層形成工程が電解めっきによってなされ、該電解めっきを限界電流密度末満の電流密度で行う表面処理銅箔の製造方法を提供する。
(vi)前記粗化銅めっき層形成工程の前に、前記銅原箔と前記粗化銅めっき層との間に下地銅めっき層を形成する下地銅めっき層形成工程を更に含む。
(vii)前記亜鉛めっき層の上にクロメート処理層を形成するクロメート処理層形成工程と、前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を形成するシランカップリング処理層形成工程とを更に含む。
(viii)前記表面処理銅箔と前記樹脂フィルムとの間のピール強度が、0.8 N/mm以上である。
(ix)前記複数の被覆層の内の前記小突起銅めっき層と前記亜鉛めっき層とが合金化した銅−亜鉛合金層が形成されている。
本発明者等は、前述したようなFPCに対する最近の要求(例えば、CCLにおける樹脂フィルムと銅箔の接合面低粗度化と高い接合性との両立)を満たすべく、接合面の低粗度化とピール強度との関係を詳細に調査した。
図1は、本発明に係る表面処理銅箔の構造の一例を示す断面模式図および部分拡大模式図である。なお、図1には、銅張積層板の構成が理解し易くなるように、貼り合わせる樹脂フィルムも示した。図1に示したように、本発明に係る表面処理銅箔10は、樹脂フィルム11と貼り合わせて銅張積層板を形成するための表面処理銅箔であって、銅原箔1の少なくとも一方の表面(樹脂フィルム11と貼り合わせる側の表面)上に複数の被覆層が形成されたものである。
銅原箔1に特段の限定はなく、従前の銅箔(圧延銅箔、電解銅箔)を用いることができる。FPCにおいて極めて優れた屈曲特性(例えば、100万回以上の屈曲特性)が要求される場合、圧延銅箔を用いることが好ましい。また、素材としては、純銅(例えば、タフピッチ銅(JIS H 3100 C1100)や無酸素銅(JIS H 3100 C1020))、および銅(Cu)にスズ(Sn)や銀(Ag)が微量添加された希薄銅合金がよく用いられる。機械的強度特性が優先される場合は、銅原箔1として銅合金材(希薄合金よりも添加元素濃度が高い合金)が用いられることもある。
下地銅めっき層2は、銅原箔1の直上に形成され、銅原箔1の表面に残存する望まない凹凸(例えば、銅原箔1製造時に生じた微小なオイルピットや傷)を補修するための層である。所定の下地銅めっき層2を設けることにより、その上に形成する粗化銅めっき層3の粗化粒形状(厚さ(凹凸)方向や面内方向の形状)を均等化・安定化することができる利点がある。下地銅めっき層2の平均厚さは0.1μm以上0.6μm以下が好ましい。平均厚さが0.1μm未満になると、下地銅めっき層2の作用効果が不十分になる。平均厚さが0.6μm超では、作用効果が飽和しプロセスコストが無駄になる。素材としては、純銅または銅原箔1と同じ組成が好ましい。
粗化銅めっき層3は、下地銅めっき層2の直上に形成される。粗化銅めっき層3の粗化粒形状は、「樹脂フィルムと銅箔との接合性(アンカー効果)」、「銅箔のエッチング制御性」、「FPC回路配線の電気的な高周波特性」および「導体箔除去後の樹脂フィルム部分での透過視認性」に対して影響するため、平均粒径が0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
防錆ニッケルめっき層4は粗化銅めっき層3の直上に形成され、防錆ニッケルめっき層4’は銅原箔1の反対側の面の直上に形成される。防錆ニッケルめっき層4,4’は、Cu原子の拡散バリアとして作用し、銅箔の変色を抑制する効果がある。樹脂フィルムへのCu原子の拡散は接合性を劣化させると言われており、それを抑制する効果もある。
小突起銅めっき層5は、防錆ニッケルめっき層4の直上に形成され、一次粗化銅粒子(粗化銅めっき層3)の上に形成される微細な二次粗化銅粒子の層である。前述したように、異種界面となる防錆ニッケルめっき層4上に銅めっき層を析出成長させることにより、析出粒の沿面成長が抑制され、定常成長条件下であっても多核三次元成長を主とする電解めっきが可能になる。
亜鉛(Zn)めっき層6は、小突起銅めっき層5の直上に形成され、亜鉛(Zn)めっき層6’は、防錆ニッケルめっき層4’の直上に形成される。亜鉛めっき層6,6’は、クロメート処理層7,7’の形成やシランカップリング処理層8の形成の下地となる層である。亜鉛めっき層6,6’の被膜量は、0.1μg/cm2以上3μg/cm2以下が好ましい。該被膜量が0.1μg/cm2未満では、亜鉛めっき層6,6’の作用効果が不十分になる。該被膜量が3μg/cm2超になると、耐薬品性(例えば、耐酸性)が低下する。
クロメート処理層7,7’は、それぞれ亜鉛めっき層6,6’の直上に形成される。クロメート処理層7,7’は、表面処理銅箔10において主に防錆・耐食性の確保を担う層である。クロメート処理層7,7’として特段の限定はなく、従前の技術を利用できるが、環境保護の観点から3価クロメート処理層であることが好ましい。クロメート処理層7,7’の被膜量は、クロム量として0.1μg/cm2以上1μg/cm2以下が好ましい。該被膜量が0.1μg/cm2未満では、防錆・耐食効果が不十分になる。該被膜量が1μg/cm2超になると、クロメート処理層自体が厚く脆弱になり、ピール強度が低下する。
シランカップリング処理層8は、クロメート処理層7の直上に形成される。シランカップリング処理層8は、CCLにおいて樹脂フィルム11との化学的な接合作用を担う層である。シランカップリング処理層8として特段の限定はなく、従前の技術を利用できる。
本発明に係る銅張積層板の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る銅張積層板の製造工程の一例を示すフロー図である。なお、以下では、洗浄工程や乾燥工程の説明を省略する場合があるが、それらの工程は必要に応じて適宜行われることが好ましい。
本工程では、銅原箔1を準備する。前述したように、銅原箔1自体に特段の限定はなく、従前の圧延銅箔や電解銅箔を用いることができるので、銅箔準備方法にも特段の限定はなく、従前の方法を用いることができる。
本工程では、銅原箔1の直上に下地銅めっき層2を形成する。前述したように、本工程は、必須の工程ではないが、銅原箔1の表面に残存する望まない凹凸を補修する観点から、行われることが好ましい。
硫酸銅五水和物:20 g/L以上300 g/L以下(50 g/L以上300 g/L以下がより好ましい)
硫酸:10 g/L以上200 g/L以下(30 g/L以上200 g/L以下がより好ましい)
添加剤:所定の有機系添加剤を添加
液温:15℃以上50℃以下
電流密度:2 A/dm2以上15 A/dm2以下(限界電流密度末満とする)
処理時間:1秒間以上30秒間以下
平均厚さ:0.1μm以上0.6μm以下。
本工程では、下地銅めっき層2の直上に粗化銅めっき層3を形成する。粗化銅めっき層3の形成は、硫酸銅および硫酸を主成分とする酸性銅めっき浴にて銅原箔1を陰極とする電解処理により行い、粗化粒を下地銅めっき層2の表面に析出・成長させるものである。酸性銅めっき浴の液組成、液温、電解条件、粗化銅めっき層の平均厚さは、例えば下記の範囲から選択されることが好ましい。
硫酸銅五水和物:20 g/L以上300 g/L以下
硫酸:10 g/L以上200 g/L以下
その他成分:Fe,Mo,Ni,Co,Cr,Zn,Wから選ばれる一種以上の添加が好ましい
液温:15℃以上50℃以下
電流密度:20 A/dm2以上100 A/dm2以下(限界電流密度超とする)
処理時間:0.1秒間以上5秒間未満
平均厚さ:0.07μm以上0.35μm以下。
本工程では、粗化銅めっき層3の直上に防錆ニッケルめっき層4を形成する。防錆ニッケルめっき層4の形成は、例えば、下記のめっき条件から選択されることが好ましい。
硫酸ニッケル六水和物:280 g/L以上320 g/L以下
塩化ニッケル:40 g/L以上50 g/L以下
硼酸:40 g/L以上60 g/L以下
その他成分:他の金属元素(例えばCo)を添加してNi合金めっき層としてもよい
液温:30℃以上60℃以下
電流密度:0.5 A/dm2以上10 A/dm2以下(限界電流密度末満とする)
処理時間:1秒間以上10秒間以下
平均厚さ:0.005μm以上0.1μm以下
被膜量:2μg/cm2以上20μg/cm2以下。
硫酸ニッケル六水和物:150 g/L以上250 g/L以下
硫酸コバルト七水和物:5 g/L以上50 g/L以下
クエン酸三ナトリウム:5 g/L以上50 g/L以下。
本工程では、防錆ニッケルめっき層4の直上に小突起銅めっき層5を形成する。小突起銅めっき層5の形成は、硫酸銅および硫酸を主成分とする酸性銅めっき浴にて銅原箔1を陰極とする電解処理により行い、微細粒(小突起粒)を防錆ニッケルめっき層4の表面に析出成長させるものである。酸性銅めっき浴の液組成、液温、電解条件、小突起銅結晶粒の平均粒径は、例えば下記の範囲から選択されることが好ましい。
硫酸銅五水和物:20 g/L以上300 g/L以下(50 g/L以上300 g/L以下がより好ましい)
硫酸:10 g/L以上200 g/L以下(30 g/L以上200 g/L以下がより好ましい)
その他成分、添加剤:特になし
液温:15℃以上50℃以下
電流密度:2 A/dm2以上15 A/dm2以下(限界電流密度末満とする、3 A/dm2以上10 A/dm2以下がより好ましい)
処理時間:0.1秒間以上25秒間以下。
本工程では、小突起銅めっき層5の直上に亜鉛めっき層6を形成する。亜鉛めっき層6の形成は、例えば、下記のめっき条件から選択されることが好ましい。
硫酸亜鉛:80 g/L以上120 g/L以下
硫酸ナトリウム:60 g/L以上80 g/L以下
液温:15℃以上35℃以下
電流密度:0.1 A/dm2以上10 A/dm2以下(限界電流密度末満とする)
処理時間:0.2秒間以上10秒間以下
被膜量:0.1μg/cm2以上3μg/cm2以下。
本工程では、亜鉛めっき層6の直上にクロメート処理層7を形成する。クロメート処理層7の形成は、例えば、下記の処理条件から選択されることが好ましい。
処理液:3価クロムの反応型クロメート液(3価クロムイオン濃度:金属クロム換算で70 mg/L以上500 mg/L未満。3価クロムイオンの供給源に特段の限定はなく、例えば、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロムが挙げられる)
液温:15℃以上40℃以下
処理時間:3秒間以上30秒間以下
被膜量:クロム量として0.1μg/cm2以上1μg/cm2以下。
本工程では、クロメート処理層7の直上にシランカップリング処理層8を形成する。シランカップリング処理層8の形成は、例えば、下記の処理条件から選択されることが好ましい。
処理液:シランカップリング液(積層する可撓性基材に適したものを選択する。例えば、可撓性基材がポリイミドからなる場合、アミノシランやアミノプロピルトリメトキシシランを主成分とするものを選択することが望ましい)
液温:15℃以上35℃以下
処理時間:3秒間以上40秒間以下
乾燥温度:100℃以上200℃以下
乾燥時間:5秒間以上35秒間以下
厚さ:分子層レベル。
本工程では、表面処理銅箔10と樹脂フィルム11とを積層する。二層銅張積層板の場合、表面処理銅箔10と樹脂フィルム11とが、樹脂接着層を介さずに加熱・押圧されて直接積層される。加熱・押圧の条件は、樹脂フィルム11の性状により適宜設定されるが、例えば下記の範囲から選択されることが好ましい。
温度:150℃以上350℃以下
圧力:0.5 MPa以上30 MPa以下
保持時間:5分間以上60分間以下。
上記で得られた銅張積層板に対し、回路配線の形成工程を行うことによりFPCが製造される。回路配線の形成工程は、通常、銅張積層板の表面処理銅箔10の一部を化学エッチング除去することによりなされる。
以下の手順により、実施例1の表面処理銅箔10を作製した。はじめに、銅原箔1として、無酸素銅からなる圧延銅箔(厚さ11μm)を準備した。次に、銅原箔1に対して電解脱脂処理および酸洗処理をそれぞれ下記の条件で施して、銅原箔1の表面を清浄化した。酸洗処理の後、銅原箔1を水洗した。
溶液:水酸化ナトリウム40 g/Lと炭酸ナトリウム20 g/Lとを含む水溶液
液温:40℃
電荷密度:100 C/dm2(10 A/dm2×10 s)。
溶液:硫酸150 g/Lを含む水溶液
液温:室温(25℃)
処理時間:10秒間。
(下地銅めっき層形成工程)
硫酸銅五水和物:170 g/L
硫酸:70 g/L
添加剤1:有機硫黄化合物としてSPS 30 mg/L
添加剤2:界面活性剤として荏原ユージライト株式会社製のCU-BRITE TH-R III
シリーズの界面活性剤薬液 3 mL/L
添加剤3:レベリング剤として荏原ユージライト株式会社製のCU-BRITE TH-R III
シリーズの高分子炭化水素を主成分とするレベリング剤薬液 5 mL/L
添加剤4:塩化物イオンを含む水溶液として塩酸試薬原液 0.15 mL/L
液温:35℃
電荷密度:210 C/dm2(7 A/dm2×30 s)
平均厚さ:0.3μm。
(粗化銅めっき層形成工程)
硫酸銅五水和物:100 g/L
硫酸:150 g/L
その他成分:硫酸鉄七水和物 20 g/L
液温:30℃
電荷密度:120 C/dm2(60 A/dm2×2 s)
平均厚さ:0.2μm。
(防錆ニッケルめっき層形成工程)
硫酸ニッケル六水和物:200 g/L
硫酸コバルト七水和物:30 g/L
クエン酸三ナトリウム:30 g/L
液温:50℃
電荷密度:14 C/dm2(2 A/dm2×7 s)
被膜量:20μg/cm2(平均厚さ:0.025μm)。
(小突起銅めっき層形成工程)
硫酸銅五水和物:170 g/L
硫酸:70 g/L
液温:40℃
電荷密度:0.55 C/dm2(5.5 A/dm2×0.1 s)
平均厚さ:0.001μm。
(亜鉛めっき層形成工程)
硫酸亜鉛:90 g/L
硫酸ナトリウム:70 g/L
液温:30℃
電荷密度:1.5 C/dm2(1.5 A/dm2×1 s)
被膜量:1.2μg/cm2(平均厚さ:0.0017μm)。
(クロメート処理層形成工程)
処理液:硝酸クロムを3価クロムイオンの供給源とした3価クロムの反応型クロメート液
(3価クロムイオン濃度:金属クロム換算で300 mg/L)
液温:30℃
処理時間:5秒間
被膜量:0.7μg/cm2。
(シランカップリング処理層形成工程)
処理液:5%の3-アミノプロピルトリメトキシシランを含有するシランカップリング液
液温:室温(25℃)
処理時間:5秒間
加熱乾燥:200℃,15秒間。
実施例2の表面処理銅箔10は、小突起銅めっき層形成工程における電荷密度を15 C/dm2(5 A/dm2×3 s)として小突起銅めっき層5の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
実施例3の表面処理銅箔10は、小突起銅めっき層形成工程における硫酸銅五水和物の濃度を250 g/Lとし、電荷密度を0.68 C/dm2(6.8 A/dm2×0.1 s)として小突起銅めっき層5の析出成長形態を変更した。それ以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
実施例4の表面処理銅箔10は、粗化銅めっき層形成工程における電荷密度を4.4 C/dm2(22 A/dm2×0.2 s)として粗化銅めっき層4の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
実施例5の表面処理銅箔10は、粗化銅めっき層形成工程における電荷密度を210 C/dm2(60 A/dm2×3.5 s)として粗化銅めっき層4の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
実施例6の表面処理銅箔10は、小突起銅めっき層形成工程における電荷密度を70 C/dm2(7 A/dm2×10 s)として小突起銅めっき層5の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例5の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
実施例7の表面処理銅箔10は、防錆ニッケルめっき層4,4’を純ニッケルめっき層としたこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。純ニッケルめっき層のめっき条件は、下記のとおりである。
(防錆ニッケルめっき層形成工程)
硫酸ニッケル六水和物:300 g/L
塩化ニッケル:45 g/L
硼酸:50 g/L
液温:50℃
電荷密度:10 C/dm2(2 A/dm2×5 s)
被膜量:15μg/cm2(平均厚さ:0.02μm)。
比較例1の表面処理銅箔は、従来技術の範疇で粗化銅めっき層を低粗度化したものであり、従来技術の基準となる試料である。具体的な作製方法としては、下地銅めっき層形成工程において所定の有機系添加剤を添加しないで下地銅めっき層2を形成し、本発明の小突起銅めっき層5を形成しなかった。それ以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
比較例2の表面処理銅箔は、粗化銅めっき層3の直上に実施例1と同様のめっき条件で小突起銅めっき層5の形成を試み、該小突起銅めっき層5の直上に防錆ニッケルめっき層4を形成した。それ以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
比較例3の表面処理銅箔は、粗化銅めっき層形成工程における硫酸銅五水和物の濃度を25 g/Lとして硫酸鉄七水和物の濃度を5 g/Lとし、かつ電荷密度を0.55 C/dm2(5.5 A/dm2×0.1 s)として粗化銅めっき層4の析出成長形態を変更した。また、小突起銅めっき層形成工程における硫酸銅五水和物の濃度を250 g/Lとし、電荷密度を0.2 C/dm2(2 A/dm2×0.1 s)として小突起銅めっき層5の析出成長形態を変更した。それ以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
比較例4の表面処理銅箔は、粗化銅めっき層形成工程における電荷密度を252 C/dm2(60 A/dm2×4.2 s)として粗化銅めっき層4の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例2の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
比較例5の表面処理銅箔は、小突起銅めっき層形成工程における硫酸銅五水和物の濃度を250 g/Lとし、電荷密度を0.2 C/dm2(2 A/dm2×0.1 s)として小突起銅めっき層5の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
比較例6の表面処理銅箔は、小突起銅めっき層形成工程における電荷密度を70 C/dm2(7 A/dm2×10 s)として小突起銅めっき層5の析出成長形態を変更したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔10と同様の条件で作製した。
上記の実施例1〜7および比較例1〜6の表面処理銅箔を用いて、以下の条件により、実施例1〜7および比較例1〜6の銅張積層板(CCL)を作製した。なお、CCLとしては、表面処理銅箔の粗化面(粗化銅めっき層3を形成した側の面)を樹脂フィルムに対向させて、樹脂フィルムの片面に表面処理銅箔を積層した二層片面銅張積層板を作製した。
樹脂フィルム:ポリイミドフィルム(厚さ25μm、株式会社カネカ製、ピクシオ)
温度:300℃
圧力:5 MPa
保持時間:15分間。
実施例1〜7および比較例1〜6の銅張積層板に対して、表面処理銅箔の一部を化学エッチング除去して回路配線(線幅1 mm)を形成したFPC模擬試料(実施例1〜7および比較例1〜6)を作製した。化学エッチング除去は、塩化第二鉄のスプレーエッチングにより行った。
(1)表面処理銅箔の表面微細組織観察
実施例1〜7および比較例1〜6の表面処理銅箔の製造途中段階の試料に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、防錆ニッケルめっき層4表面および小突起銅めっき層5表面の微細組織を観察した(試料表面に対して垂直方向および斜め方向の2方向から観察した)。また、試料表面に対して垂直方向から観察したSEM像に画像解析を行って、粗化粒および小突起粒の平均粒径を求めた。具体的には、取得したSEM観察像内の各粒に対して、当該粒の面積と等価面積になる円(等価円)の直径を求め、その平均値を平均粒径とした。平均粒径の結果を後述の表1に示す。
実施例1〜7および比較例1〜6のFPC模擬試料における回路配線(表面処理銅箔が残存している部分)に対して、JIS C6481に準拠してピール強度の測定を行い、10試料の平均値を求めた。最近では、樹脂フィルムと銅箔との接合性の指標として、0.8 N/mm以上のピール強度が求められていることから、ここでの合否の判定基準も0.8 N/mmとした。結果を表1に併記する。
実施例1〜7および比較例1〜6のFPC模擬試料における露出したポリイミドフィルム部分対して、ヘイズメーター(BYKガードナー・ヘイズ-ガード プラス、株式会社東洋精機製作所)を用いて、該ポリイミドフィルムの全光線透過率Tt、拡散透過率Tdを測定し、曇度H(Td/Tt × 100%)を算出した。導体箔除去後の樹脂フィルム部分での透過視認性の観点からは、60%以下の曇度Hが指標の一つと考えられていることから、ここでの合否の判定基準も「H≦60%」とした。結果を表1に併記する。
上述の性状調査に加えて、本発明のCCLは、CCL製造工程の熱処理によって、小突起銅めっき層5と亜鉛めっき層6との合金化反応が生じるか否か(銅−亜鉛合金層の生成の有無)を調査した。
1…銅原箔、2…下地銅めっき層、3…粗化銅めっき層、
4,4’…防錆ニッケルめっき層、5…小突起銅めっき層、6,6’…亜鉛めっき層、
7,7’…クロメート処理層、 8…シランカップリング処理層。
Claims (12)
- 樹脂フィルムと貼り合わせて銅張積層板を形成するための表面処理銅箔であって、
前記表面処理銅箔は、銅原箔に対して、該銅原箔の前記樹脂フィルムと貼り合わせる側の表面に複数の被覆層が形成されたものであり、
前記複数の被覆層は、前記銅原箔の上に形成され所定の平均粒径を有する粗化銅結晶粒からなる粗化銅めっき層と、前記粗化銅めっき層の上に形成された防錆ニッケルめっき層と、前記防錆ニッケルめっき層の上に形成され所定の平均粒径を有する小突起銅結晶粒からなる小突起銅めっき層と、前記小突起銅めっき層の上に形成された亜鉛めっき層とを有することを特徴とする表面処理銅箔。 - 請求項1に記載の表面処理銅箔において、
前記粗化銅結晶粒の平均粒径が、0.1μm以上0.5μm以下であり、
前記小突起銅結晶粒の平均粒径が、0.03μm以上でありかつ前記粗化銅結晶粒の平均粒径の1/2以下であることを特徴とする表面処理銅箔。 - 請求項1又は請求項2に記載の表面処理銅箔において、
前記粗化銅めっき層の平均厚さが、0.07μm以上0.35μm以下であることを特徴とする表面処理銅箔。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表面処理銅箔において、
前記亜鉛めっき層の被膜量が、0.1μg/cm2以上3μg/cm2以下であることを特徴とする表面処理銅箔。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の表面処理銅箔において、
前記銅原箔が圧延銅箔であり、
前記複数の被覆層は、前記銅原箔と前記粗化銅めっき層との間に形成された下地銅めっき層を更に有することを特徴とする表面処理銅箔。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表面処理銅箔において、
前記複数の被覆層は、前記亜鉛めっき層の上に形成されたクロメート処理層と、前記クロメート層の上に形成されたシランカップリング処理層とを更に有することを特徴とする表面処理銅箔。 - 銅原箔の少なくとも一方の表面上に複数の被覆層が形成された表面処理銅箔を製造する方法であって、
前記銅原箔の上に粗化銅めっき層を形成する粗化銅めっき層形成工程と、
前記粗化銅めっき層の上に防錆ニッケルめっき層を形成する防錆ニッケルめっき層形成工程と、
前記防錆ニッケルめっき層の上に小突起銅めっき層を形成する小突起銅めっき層形成工程と、
前記小突起銅めっき層の上に亜鉛めっき層を形成する亜鉛めっき層形成工程とを含み、
前記小突起銅めっき層形成工程が電解めっきによってなされ、該電解めっきを限界電流密度末満の電流密度で行うことを特徴とする表面処理銅箔の製造方法。 - 請求項7に記載の表面処理銅箔の製造方法において、
前記粗化銅めっき層形成工程の前に、前記銅原箔と前記粗化銅めっき層との間に下地銅めっき層を形成する下地銅めっき層形成工程を更に含むことを特徴とする表面処理銅箔の製造方法。 - 請求項7又は請求項8に記載の表面処理銅箔の製造方法において、
前記亜鉛めっき層の上にクロメート処理層を形成するクロメート処理層形成工程と、
前記クロメート処理層の上にシランカップリング処理層を形成するシランカップリング処理層形成工程とを更に含むことを特徴とする表面処理銅箔の製造方法。 - 表面処理銅箔と樹脂フィルムとが貼り合わされた銅張積層板であって、
前記表面処理銅箔が、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の表面処理銅箔であることを特徴とする銅張積層板。 - 請求項10に記載の銅張積層板において、
前記表面処理銅箔と前記樹脂フィルムとの間のピール強度が、0.8 N/mm以上であることを特徴とする銅張積層板。 - 請求項10又は請求項11に記載の銅張積層板において、
前記複数の被覆層の内の前記小突起銅めっき層と前記亜鉛めっき層とが合金化した銅−亜鉛合金層が形成されていることを特徴とする銅張積層板。
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