JP2016062748A - バンクの形成方法、有機el素子の製造方法 - Google Patents

バンクの形成方法、有機el素子の製造方法 Download PDF

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昭太朗 渡辺
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Abstract

【課題】バンクの表面における良好な撥液性を有すると共に耐薬品性に優れたバンクの形成方法、このバンクの形成方法を用いた有機EL素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】バンク133の形成方法は、素子基板101に撥液材料141を含む感光性レジストを塗布してレジスト層140を形成する工程と、レジスト層140を露光・現像してパターニングしバンク133を形成する工程と、バンク133が形成された素子基板101に、上記感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第1の温度の雰囲気下で第1の熱処理を施す工程と、第1の熱処理が施された素子基板101をホットプレート上に載置して、上記感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第2の温度で第2の熱処理を施す工程と、を含む。
【選択図】図8

Description

本発明は、バンクの形成方法、有機EL素子の製造方法に関する。
近年、機能性材料を含む溶液を所定の領域に塗布して乾燥・焼成することにより、該所定の領域に機能性材料からなる機能層を形成する液相プロセスが注目されている。このような液相プロセスは、真空蒸着法やスパッタ法などの気相プロセスに比べて、上記溶液の無駄を抑えて機能層を形成可能であることから量産性に優れている点で評価されている。該機能層としては、半導体層、電極、配線、カラーフィルター(着色層)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の発光機能を有する機能層などが挙げられる。
一方で、上記所定の領域に上記溶液を万遍なく行き渡らせた状態で、乾燥・焼成などのプロセスを行う必要がある。そこで、上記所定の領域を囲むバンク(隔壁)を形成し、バンクで囲まれた上記所定の領域に上記溶液を塗布する方法が採用されている。
例えば、特許文献1には、撥インキ性を付与する材料を含有した感光性樹脂組成物を基板に塗布する工程と、パターン露光・現像して隔壁パターンを形成する工程と、隔壁パターンが形成された基板に減圧真空下で加熱処理を施して隔壁パターンを熱硬化させる工程と、を有する隔壁パターンの形成方法が開示されている。また、熱硬化後の隔壁パターンで囲まれた領域に、インキジェット方式によりインキを吐出して着色層を形成する工程を含むカラーフィルターの製造方法が開示されている。上記特許文献1に示された隔壁パターンの形成方法では、隔壁パターンを熱硬化させる加熱方法として、熱風式焼成炉、ホットプレート、赤外線照射装置もしくは熱源ランプが挙げられている。具体的には、減圧真空度を75000Paとしたチャンバー内で、隔壁パターンが形成された基板をホットプレート上に載置して160℃、30分加熱する例が示されている。
特開2007−248899号公報
しかしながら、上記特許文献1では、撥インキ性を付与する材料を含む感光性樹脂組成物に含まれる溶媒成分の例として沸点が156℃のシクロヘキサノンが示されているが、熱硬化工程で、当該感光性樹脂組成物に含まれる溶媒成分を十分に除去できるか定かではない。また、熱硬化工程で撥インキ性を付与する材料が隔壁パターンの内部からホットプレートに接する基板側に拡散し、熱硬化工程後に、隔壁パターンの表面において必ずしも良好な撥液状態が得られないおそれがあった。また、このような方法で形成された隔壁パターンで囲まれた領域に、有機EL素子の発光機能を有する機能層を液相プロセスで形成すると、隔壁パターンに含まれる溶媒成分の影響を受けたり、所望の膜厚や膜形状の機能層を形成できなかったりするおそれがあった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例]本適用例に係るバンクの形成方法は、基板に撥液材料を含む感光性レジストを塗布してレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層を露光・現像してパターニングしバンクを形成する工程と、前記バンクが形成された前記基板に、前記感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第1の温度の雰囲気下で第1の熱処理を施す工程と、前記第1の熱処理が施された前記基板をホットプレート上に載置して、前記感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第2の温度で第2の熱処理を施す工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例によれば、バンク形成後の熱処理を少なくとも2つの工程に分けて行い、先に行われる第1の熱処理では、感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第1の温度の雰囲気下で熱処置が行われる。したがって、バンク中に含まれる撥液材料は、第1の熱処理によってバンクの表面側に拡散して偏析する。第1の熱処理が終わった後に、基板をホットプレート上に載置して感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第2の温度で加熱する第2の熱処理を施せば、バンクの表面側に撥液材料を偏析させた状態で、バンク中に含まれる溶媒成分を十分に除去することができる。
つまり、表面において良好な撥液性を有すると共に、溶媒成分が十分に除去され耐薬品性を有するバンクを形成可能なバンクの形成方法を提供することができる。
上記適用例に記載のバンクの形成方法において、前記第1及び第2の温度が200℃以上240℃以下であることが好ましい。
この方法によれば、バンクに含まれる溶媒成分を十分に除去可能な温度で熱処理を行うことができ、且つ必要以上の温度で熱処理を行わないので、熱処理におけるエネルギーや時間の無駄を抑えることができる。
上記適用例に記載のバンクの形成方法において、前記第1の熱処理を施す工程は、複数の前記基板を受入れ可能な乾燥炉を用いることが好ましい。
この方法によれば、複数の基板を一括して熱処理が可能であることから、量産性に優れたバンクの形成方法を実現できる。
上記適用例に記載のバンクの形成方法において、前記第2の熱処置を施す工程は、減圧下で行うことが好ましい。
この方法によれば、ホットプレートにより基板を加熱するだけでなく、減圧下で基板を加熱するので、バンク中に含まれる溶媒成分を確実に除去することができる。
[適用例]本適用例に係る有機EL素子の製造方法は、上記適用例に記載のバンクの形成方法を用い、基板上に配置された第1電極を含む領域を区画するバンクを形成する工程と、前記バンクにより区画された前記領域に機能性材料を含む機能液を塗布する工程と、塗布された前記機能液を固化して機能層を形成する工程と、前記機能層に積層して第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例によれば、上記適用例に記載のバンクの形成方法を用いてバンクを形成しているので、バンクの表面に良好な撥液性が付与され液相プロセスにより所望の膜厚の機能層を形成することができる。また、バンク中の溶媒成分が十分に除去されているので、液相プロセスを用いて形成される機能層に該溶媒成分が作用することに起因する発光特性の低下が生じ難い。つまり、優れた発光特性を有する有機EL素子を製造することができる。
上記適用例に記載の有機EL素子の製造方法において、前記機能層は、正孔注入層を含み、前記正孔注入層は、正孔注入層形成材料を溶媒に添加した前記機能液を用いて形成され、前記溶媒は、芳香族炭化水素、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスソルアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン及びその誘導体、グリコールエーテル類の中から少なくとも1種が選ばれることを特徴とする。
上記適用例に記載の有機EL素子の製造方法において、前記機能層は、正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層は、正孔輸送層形成材料をジメチルナフタレンに添加した前記機能液を用いて形成されることを特徴とする。
上記適用例に記載の有機EL素子の製造方法において、前記機能層は、発光層を含み、前記発光層は、発光層形成材料をジメチルナフタレンに添加した前記機能液を用いて形成されることを特徴とする。
これらの方法によれば、バンクは機能液に含まれる溶媒に対して耐薬品性を示し、バンクで囲まれた領域に機能液が塗布されて、正孔注入層、正孔輸送層、発光層がそれぞれ形成されるので、優れた発光特性を有する有機EL素子を製造することができる。
有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。 有機EL装置の構成を示す概略平面図。 有機EL装置の発光画素の構造を示す概略断面図。 有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。 (a)〜(d)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 (e)〜(h)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 (a)は機能液に対するバンクの側壁部の撥液性が頭頂部に比べて劣る例を示す概略断面図、(b)は機能液に対するバンクの側壁部の撥液性がばらついている例を示す概略断面図、(c)は機能液に対するバンクの側壁部の撥液性が好適な状態である例を示す概略断面図。 (a)〜(d)はバンクの形成方法を示す概略断面図。 乾燥炉としてのオーブンを示す概略断面図。 ホットプレートを含む減圧装置を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法における実施例及び比較例のバンクのポストベークの仕方と有機EL素子の評価結果との関係を示す表。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
<有機EL装置>
まず、本実施形態の有機EL素子を備えた有機EL装置の一例について、図1〜図3を参照して説明する。図1は有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、図2は有機EL装置の構成を示す概略平面図、図3は有機EL装置の発光画素の構造を示す概略断面図である。
図1に示すように、有機EL装置100は、互いに交差する複数の走査線112及び複数のデータ線113と、複数のデータ線113のそれぞれに対して並列する電源線114とを有している。複数の走査線112が接続される走査線駆動回路103と、複数のデータ線113が接続されるデータ線駆動回路104とを有している。また、複数の走査線112と複数のデータ線113との各交差部に対応してマトリックス状に配置された複数の発光画素107を有している。
発光画素107は、発光素子である有機EL素子130と、有機EL素子130の駆動を制御する画素回路111とを有している。
有機EL素子130は、第1電極としての画素電極131と、第2電極としての対向電極134と、画素電極131と対向電極134との間に設けられた機能層132とを有している。本実施形態では、画素電極131は陽極として機能し、対向電極134は陰極として機能するものである。このような有機EL素子130は電気的にダイオードとして表記することができる。なお、詳しくは後述するが、対向電極134は複数の発光画素107に亘る共通電極として形成されている。
画素回路111は、スイッチング用トランジスター121と、駆動用トランジスター122と、蓄積容量123とを含んでいる。2つのトランジスター121,122は、例えばnチャネル型もしくはpチャネル型の薄膜トランジスター(TFT;Thin Film transistor)やMOSトランジスターを用いて構成することができる。
スイッチング用トランジスター121のゲートは走査線112に接続され、ソースまたはドレインのうち一方がデータ線113に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が駆動用トランジスター122のゲートに接続されている。
駆動用トランジスター122のソースまたはドレインのうち一方が有機EL素子130の画素電極131に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が電源線114に接続されている。駆動用トランジスター122のゲートと電源線114との間に蓄積容量123が接続されている。
走査線112が駆動されてスイッチング用トランジスター121がオン状態になると、そのときにデータ線113から供給される画像信号に基づく電位がスイッチング用トランジスター121を介して蓄積容量123に保持される。該蓄積容量123の電位すなわち駆動用トランジスター122のゲート電位に応じて、駆動用トランジスター122のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用トランジスター122がオン状態になると、電源線114から駆動用トランジスター122を介して画素電極131と対向電極134とに挟まれた機能層132にゲート電位に応じた量の電流が流れる。有機EL素子130は、機能層132を流れる電流量に応じて発光する。
なお、画素回路111の構成は、これに限定されるものではない。例えば、駆動用トランジスター122と画素電極131との間に、駆動用トランジスター122と画素電極131との間の導通を制御する発光制御用トランジスターを備えていてもよい。
図2に示すように、有機EL装置100は、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の発光画素107を備えた素子基板101と、素子基板101に所定の間隔を置いて対向配置された封止基板102とを備えている。封止基板102は、複数の発光画素107が設けられた発光領域106を封着するように、高い気密性を有する封着剤を用いて素子基板101に貼り合わされている。
発光画素107は、有機EL素子130(図3参照)を備えるものであって、同色の発光が得られる発光画素107が、図面上の縦方向に配列した所謂ストライプ方式となっている。なお、実際には、発光画素107は微細なものであり、図示の都合上拡大して現している。また、発光画素107の配置は、ストライプ方式に限定されず、デルタ方式やモザイク方式であってもよい。
素子基板101は、封止基板102よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、発光画素107の前述した画素回路111と接続される2つの走査線駆動回路103及び1つのデータ線駆動回路104が設けられている。走査線駆動回路103、データ線駆動回路104は、例えば、電気回路が集積されたICとして素子基板101に実装してもよいし、走査線駆動回路103及びデータ線駆動回路104が素子基板101に形成されていてもよい。
素子基板101の端子部101aには、これらの走査線駆動回路103やデータ線駆動回路104と外部駆動回路とを接続するための中継基板105が実装されている。中継基板105は、例えば、フレキシブル回路基板などを用いることができる。
図3に示すように、有機EL装置100において、有機EL素子130は、画素電極131と、画素電極131を区画するバンク133と、画素電極131上に形成された発光層を含む機能層132と、機能層132を介して画素電極131と対向するように配置された対向電極134と、を有している。
バンク133は、多官能アクリル樹脂などの絶縁性を有する感光性レジスト(感光性樹脂材料)からなり、発光画素107を構成する画素電極131の周囲を覆って、複数の画素電極131をそれぞれ区画するように設けられている。
画素電極131は、素子基板101上に形成された駆動用トランジスター122の3端子のうちの1つに接続しており、例えば、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)を厚さ100nm程度に成膜した電極である。
陰極としての対向電極134は、例えばAlやAgなどの光反射性を有する金属材料や、該金属材料と他の金属(例えばMg)との合金などにより形成されている。
本実施形態の有機EL装置100は、ボトムエミッション型の構造となっており、画素電極131と対向電極134との間に駆動電流を流して機能層132で発光した光を対向電極134で反射させて素子基板101側から取り出す。したがって、素子基板101はガラスなどの透明基板を用いる。また、封止基板102は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
素子基板101には、有機EL素子130を駆動する画素回路111が設けられている。すなわち、素子基板101の表面には、例えばシリコン酸化物(SiO2)を主体とする下地絶縁膜115が形成され、その上には例えばポリシリコンなどからなる半導体層122aが形成されている。この半導体層122aの表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁膜116が形成されている。
また、半導体層122aのうち、ゲート絶縁膜116を挟んでゲート電極126と重なる領域がチャネル領域とされている。なお、このゲート電極126は、図示しない走査線112の一部である。一方、半導体層122aを覆い、ゲート電極126を形成したゲート絶縁膜116の表面には、例えばSiO2を主体とする第1層間絶縁膜117が形成されている。
また、半導体層122aのうち、チャネル領域のソース側には、低濃度ソース領域及び高濃度ソース領域122cが設けられる一方、チャネル領域のドレイン側には低濃度ドレイン領域及び高濃度ドレイン領域122bが設けられて、所謂LDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域122cは、ゲート絶縁膜116と第1層間絶縁膜117とにわたって開孔するコンタクトホール125aを介して、ソース電極125に接続されている。このソース電極125は、電源線114(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域122bは、ゲート絶縁膜116と第1層間絶縁膜117とにわたって開孔するコンタクトホール124aを介して、ソース電極125と同一配線層に設けられたドレイン電極124に接続されている。
ソース電極125及びドレイン電極124が形成された第1層間絶縁膜117の上層には、第2層間絶縁膜118が形成されている。この第2層間絶縁膜118は、画素回路111を構成する駆動用トランジスター122などや、ソース電極125、ドレイン電極124などによる表面の凹凸をなくすために形成されたものであり、第1層間絶縁膜117と同様に例えばSiO2を主体として構成され、CMPなどの平坦化処理がほどこされている。
そして、画素電極131が、この第2層間絶縁膜118の表面上に形成されると共に、第2層間絶縁膜118に設けられたコンタクトホール118aを介してドレイン電極124に接続されている。すなわち、画素電極131は、ドレイン電極124を介して、半導体層122aの高濃度ドレイン領域122bに接続されている。対向電極134は、GNDに接続されている。したがって、駆動用トランジスター122により、前述した電源線114から画素電極131に供給され対向電極134との間で流れる駆動電流が制御される。これにより、画素回路111は、所望の有機EL素子130を発光させカラー表示を可能としている。
機能層132は、有機膜からなる正孔注入層、正孔輸送層、発光層を含む複数の薄膜層からなり、画素電極131側からこの順で積層されている。本実施形態において、これらの薄膜層は液滴吐出法(インクジェット法)を用いて成膜されている。
正孔注入層の材料としては、例えば、分散媒としてのポリスチレンスルホン酸(PSS)にポリチオフェン誘導体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を分散させさらに水を加えた混合物(PEDOT/PSS)や、PEDOT/PSS/Nafion(登録商標)、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体などを用いてもよい。
正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間に設けられ、発光層に対する正孔の輸送性(注入性)を向上させると共に、発光層から正孔注入層に電子が侵入することを抑制するために設けられている。すなわち、発光層における正孔と電子との結合による発光の効率を改善するものである。正孔輸送層の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なトリフェニルアミン系ポリマー(TFB)を含んだものが挙げられる。
発光層の材料としては、蛍光発光材料、燐光発光材料のいずれかを含むものでよく、例えば、赤色、緑色、青色の発光が得られるポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、PEDOT等のポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)等を用いることができる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリン等低分子材料をドープしてもよい。
なお、機能層132は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層を有する構成に限定されず、キャリア(正孔や電子)の流れを制御するための有機層や無機層をさらに含んでいてもよい。
このような有機EL素子130を有する素子基板101は、熱硬化型エポキシ樹脂等を封着部材として用いた封着層135を介して封止基板102と隙間なくベタ封止されている。
本実施形態の有機EL装置100の有機EL素子130は、後述する製造方法を用いて製造されており、機能層132がほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)を有しているため、異なる発光色が得られる機能層132R,132G,132Bにおいてそれぞれ所望の発光特性が得られる。
なお、本実施形態の有機EL装置100は、ボトムエミッション型に限定されず、例えば画素電極131を光反射性の導電材料を用いて形成し、対向電極134を透明な導電材料を用いて形成して、有機EL素子130の発光を画素電極131で反射させて、封止基板102側から取り出すトップエミッション型の構造としてもよい。また、トップエミッション型とする場合、有機EL素子130の発光色に対応させたカラーフィルターを各有機EL素子130に対応させて設ける構成としてもよい。さらには、有機EL装置100がカラーフィルターを有する場合、有機EL素子130から白色発光が得られる構成としてもよい。
このような有機EL装置100は、例えば、薄型TV、パーソナルコンピューター、携帯型の情報端末である携帯電話機やスマートフォン、POS端末、ナビゲーターなど電子機器の表示部として好適に用いることができる。
<有機EL素子の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL素子130の製造方法を適用した有機EL装置100の製造方法ついて、図4〜図6を参照して説明する。図4は有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図5(a)〜(d)及び図6(e)〜(h)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
図4に示すように、本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、バンク形成工程(ステップS1)と、正孔注入層形成工程(ステップS2)と、正孔輸送層形成工程(ステップS3)と、発光層形成工程(ステップS4)と、陰極形成工程(ステップS5)と、有機EL素子130が形成された素子基板101と封止基板102とを接着する基板接着工程(ステップS6)と、を少なくとも備えている。なお、素子基板101上に画素回路111(図1及び図3参照)を形成する工程や画素回路111に電気的に接続した画素電極131を形成する工程は、公知の製造方法を用いればよく、本実施形態では詳細の説明は省略する。したがって、図5(a)〜(d)及び図6(e)〜(h)では、画素回路111の図示を省略している。
図4のバンク形成工程(ステップS1)では、図5(a)に示すように、画素電極131の外縁を覆って画素電極131を区画するようにバンク133を形成する。バンク133の詳しい形成方法については後述するが、画素電極131が形成された素子基板101の表面に、撥液材料を含む感光性レジスト(感光性樹脂材料)をおよそ1μm〜3μm程度の厚みで塗布して乾燥(プレベーク)することにより、レジスト層を形成する。感光性レジストの塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、転写法などが挙げられる。そして、発光画素107の形状に対応した露光用マスクを用いてレジスト層を露光し、現像することにより断面が台形状のバンク133を形成する。バンク133は撥液材料を含んでおり、バンク133の表面が後述する機能液に対して好適な撥液性を示すと共に、バンク133中の溶媒成分を十分に除去できるようにポストベークが施されバンク133が形成されている。以降、バンク133により区画された領域を膜形成領域Aと呼ぶ。
なお、次工程で正孔注入層132aを液相プロセス(液滴吐出法)で形成するに際して、膜形成領域Aにおいて機能液がむらなく濡れ広がるように、画素電極131の表面のバンク残渣などの不要物を取り除く目的で表面処理を行ってもよい。表面処理方法としては、例えば紫外線を照射してオゾンを発生させ、オゾンの作用で上記不要物を酸化させて取り除く方法などを挙げることができる。なお、表面処理は、画素電極131の表面を清浄化できればよく、例えば溶媒による洗浄・乾燥工程を行ってもよい。また、画素電極131の表面が清浄な状態であれば、表面処理を実施しなくてもよい。そして、ステップS2へ進む。
図4の正孔注入層形成工程(ステップS2)では、まず、図5(b)に示すように、正孔注入層形成材料を含む機能液70を膜形成領域Aに塗布する。機能液70は、例えば、溶媒に正孔注入層形成材料として前述したPEDOT/PSS(1/6)の混合物を重量比で1.3%程度含んだものを用いた。溶媒は、芳香族炭化水素、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスソルアミド(HMPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン(DMI)及びその誘導体、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエーテル類の中から少なくとも1種を選択して用いる。機能液70の粘度は、液滴吐出法を適用可能な程度(例えば、20mPa・s(ミリパスカル秒)以下)に溶媒の割合が調整されている。
機能液70を塗布する方法としては、機能液(インク)をノズルから液滴として吐出可能な吐出ヘッド(インクジェットヘッド)50を備えた液体吐出装置を用いる。吐出ヘッド50とワークである素子基板101とを対向させ、吐出ヘッド50から機能液70を吐出する。吐出された機能液70は、液滴として画素電極131に着弾して濡れ拡がる。また、乾燥・焼成後の正孔注入層132aの膜厚がおよそ50nm〜60nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。吐出された機能液70は、バンク133の表面が撥液性を有していることも手伝って、膜形成領域Aにおいて界面張力により盛り上がるように充填される。そして乾燥・焼成工程へ進む。
乾燥・焼成工程では、素子基板101を例えば真空乾燥後、大気雰囲気下で150℃、1時間程度加熱する焼成処理を行う。これにより、機能液70の溶媒成分を蒸発させて除去し、図5(c)に示すように膜形成領域Aの画素電極131上に正孔注入層132aを形成する。なお、本実施形態では、各膜形成領域Aに同一材料からなる正孔注入層132aを形成したが、後に形成される発光層に対応して正孔注入層132aの材料を発光色ごとに変えてもよい。そしてステップS3へ進む。
図4の正孔輸送層形成工程(ステップS3)では、図5(d)に示すように、正孔輸送層形成材料を含む機能液80を膜形成領域Aに塗布する。
機能液80は、例えば、溶媒としてジメチルナフタレンを含み、正孔輸送層形成材料として、前述したトリフェニルアミン系ポリマー(TFB)を重量比で0.9%程度含んだものを用いた。機能液80の粘度も、液滴吐出法を適用可能な程度に溶媒の割合が調整されている。
機能液80を塗布する方法としては、機能液70を塗布する場合と同様に、吐出ヘッド50を備えた液体吐出装置を用いる。乾燥・焼成後の正孔輸送層132cの膜厚がおよそ10nm〜30nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。機能液80も膜形成領域Aにおいて界面張力により盛り上がるように充填される。そして乾燥・焼成工程へ進む。
乾燥・焼成工程では、素子基板101を例えば真空乾燥後、窒素雰囲気下で180℃、1時間程度加熱する焼成処理を行う。これにより、機能液80の溶媒成分を蒸発させて除去し、図6(e)に示すように膜形成領域Aの正孔注入層132a上に正孔輸送層132cを形成する。そしてステップS4へ進む。
図4の発光層形成工程(ステップS4)では、図6(f)に示すように、発光層形成材料を含む機能液90R,90G,90Bをそれぞれ対応する膜形成領域Aに塗布する。
機能液90R,90G,90Bは、例えば、溶媒としてジメチルナフタレンを含んでおり、発光層形成材料(蛍光発光材料もしくは燐光発光材料を含む)を重量比で1.5%含んだものを用いた。機能液90R,90G,90Bの粘度も、液滴吐出法を適用可能な程度にそれぞれ溶媒の割合が調整されている。
機能液90R,90G,90Bを塗布する方法は、やはり吐出ヘッド50を備えた液体吐出装置を用い、それぞれ異なる吐出ヘッド50に充填されて吐出される。
機能液90R,90G,90Bは、乾燥・焼成後の発光層の膜厚がおよそ60nm〜80nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出される。機能液90R,90G,90Bもまた、膜形成領域Aにおいて界面張力により盛り上がるように充填される。そして乾燥・焼成工程へ進む。
本実施形態における吐出された機能液90R,90G,90Bの乾燥・焼成工程は、一般的な加熱乾燥に比べて溶媒成分を比較的均一に乾燥可能な真空乾燥を用いている。また、真空乾燥後、窒素雰囲気下で130℃、30分程度加熱する焼成処理を行う。膜形成領域Aには満遍なく必要量の機能液90R,90G,90Bが塗布されているので、図6(g)に示すように、乾燥・焼成後に形成された発光層132r,132g,132bは膜形成領域Aごとにほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)を有する。これにより、各機能層132R,132G,132Bができあがる。そして、ステップS5へ進む。
図4の陰極形成工程(ステップS5)では、図6(h)に示すように、バンク133と各機能層132R,132G,132Bとを覆うように陰極としての対向電極134を形成する。
対向電極134の材料としては、アルミニウム(Al)や銀(Ag)とマグネシウム(Mg)の合金などが用いられる。対向電極134の膜厚はおよそ200nmである。また、機能層132R,132G,132Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を例えば10nm程度の膜厚で形成してもよい。このようにすれば、陰極としての対向電極134から機能層132R,132G,132Bへの電子の輸送性を改善できる。
また、対向電極134の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、対向電極134の酸化を防止することができる。対向電極134の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に機能層132R,132G,132Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。ここまでが、有機EL素子130の製造工程を示すものである。そして、ステップS6へ進む。
図4の基板接着工程(ステップS6)では、有機EL素子130が形成された素子基板101に封着層135を塗布して、封止基板102と隙間なくベタ封止する(図3参照)。さらに封止基板102の外周領域において水分や酸素等の浸入を防ぐ接着層を設けて接着することが望ましい。これにより、水分や酸素の影響を受けて有機EL素子130の発光機能が損なわれ難い優れた表示品質を有する有機EL装置100ができあがる。
以上のような有機EL素子130の製造方法によれば、液滴吐出法により成膜された機能層132R,132G,132Bは、ほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)の正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132r,132g,132bを有している。したがって、膜厚ムラに起因する輝度ムラが低減された有機EL素子130を製造することができる。
このようにして製造された異なる発光色が得られる有機EL素子130を備えた有機EL装置100は、所望の発光特性が実現され、見映えのよいカラー表示が可能である。
ほぼ一定の膜厚と安定した膜形状の機能層132R,132G,132Bを得るには、各機能液70,80,90R,90G,90Bに対するバンク133の撥液性がどのようになっているかが重要である。バンク133と機能液70,80,90R,90G,90Bとの関係について、図7を参照して説明する。図7(a)は機能液に対するバンクの側壁部の撥液性が頭頂部に比べて劣る例を示す概略断面図、図7(b)は機能液に対するバンクの側壁部の撥液性がばらついている例を示す概略断面図、図7(c)は機能液に対するバンクの側壁部の撥液性が好適な状態である例を示す概略断面図である。なお、図7(a)〜(c)は、機能液70を例に挙げて、機能液70に対するバンク133の撥液性を示すものである。
図7(a)に示す例では、バンク133の表面において、側壁部133bの撥液性が頭頂部133aの撥液性よりも劣っている。機能液70の乾燥工程では、頭頂部133aに近い側壁部133bの位置で乾燥が始まって、正孔注入層132aが成膜され始める。本実施形態では、機能液から溶媒が除去されて、機能液中の固形分が固定され始める状態をピニングと呼ぶ。図7(a)では側壁部133bにおけるピニング位置は頭頂部133aに近い。そうすると、本来、バンク133で囲まれた膜形成領域A内で一定の膜厚を有するように正孔注入層132aを形成したいが、乾燥工程では機能液70が頭頂部133aに近いところからピニングされるので、側壁部133bを覆って成膜される分、膜形成領域Aの例えば中央部の膜厚が薄くなってしまうおそれがある。言い換えれば、機能液70が頭頂部133aよりも側壁部133bに対して濡れ性が高い状態である場合、機能液70は有効に消費され難い。
また、図7(b)に示す例では、バンク133の表面において、側壁部133bの撥液性が頭頂部133aよりもばらついている。すると、機能液70の乾燥工程では、側壁部133bにおけるピニング位置がばらついて、正孔注入層132aの膜形状が安定しない。
これに対して、図7(c)に示す例では、バンク133の表面において、頭頂部133aと側壁部133bとの撥液性に優劣やばらつきが生じていない。すると、機能液70の乾燥工程では、側壁部133bの画素電極131に近い側においてピニングされるため、膜形成領域Aにおいて膜厚がほぼ一定で、且つ膜形状が安定した正孔注入層132aが得られる。
前述したように、機能層132を構成するところの、正孔注入層132a、正孔輸送層132c、発光層132r,132g,132bは、それぞれ機能液を塗布して乾燥・焼成することにより、バンク133の頭頂部133aよりも低い位置の画素電極131上に形成される、膜厚が薄い有機層であることから、バンク133の側壁部133bは各機能液に対して十分な撥液性を示すことが求められる。以降、より具体的なバンク133の形成方法について述べる。
<バンクの形成方法>
本実施形態のバンク133の形成方法について、図8を参照して説明する。図8(a)〜(d)はバンクの形成方法を示す概略断面図である。なお、図8では、素子基板101上において画素電極131以外の画素回路111や信号配線等の表示を省略している。
まず、図8(a)に示すように、素子基板101の複数の画素電極131が形成された表面を覆って、撥液材料141を含む感光性レジスト(感光性樹脂材料)を塗布してレジスト層140を形成する(レジスト層形成工程)。撥液材料141としては、例えば、フッ素系化合物やシロキサン系化合物を挙げることができる。感光性レジストとしては、ネガ型の多官能アクリル樹脂を挙げることができる。本実施形態では、フッ素系化合物を0.5wt%〜10wt%程度の範囲内で含んだ多官能アクリル樹脂を主成分とする樹脂溶液をスピンコート法により塗布して、乾燥(プレベーク)させることにより、膜厚がおよそ2μmのレジスト層140を形成した。上記樹脂溶液は、主成分である多官能アクリル樹脂を溶解可能な、例えばジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM;沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;沸点120℃)、イソプロピルアルコール(IPA;沸点82℃)などの有機溶媒を含んでいる。この場合の乾燥(プレベーク)における条件は、レジスト層140を完全に硬化させない、例えば110℃、90秒である。なお、プレベークの方法は、バッチ方式のオーブンを用いる方法だけでなく、枚葉方式の乾燥炉を用いる方法でもよい。
次に、図8(b)に示すように、膜形成領域Aに対応した遮光部151と、透光部152とを有する露光用マスク150を用いて、ネガ型のレジスト層140を露光する(露光工程)。遮光部151と画素電極131とがほぼ重なるように素子基板101と露光用マスク150とが位置決めされて露光が行われる。露光条件としては、例えば、紫外線の露光量が540mW/cm2、露光時間が65秒である。露光されたレジスト層140の部分において高分子化が進み、現像液に対して不溶化する。
次に、図8(c)に示すように、露光されたレジスト層140を現像することにより、画素電極131の外縁と重なり、膜形成領域Aを区画するバンク133を形成する(現像工程)。現像条件としては、素子基板101を回転させながら、有機現像液として2.38wt%(0.261N)のTMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)溶液を塗布する方法が挙げられる。現像時間はおよそ30秒である。ここまでの工程では、レジスト層140にプレベーク温度(110℃)以上の温度が加えられていないので、撥液材料141はレジスト層140中で分散された状態となっている。
次に、現像されてバンク133が形成された素子基板101をポストベークする(熱処理工程)。ポストベークの方法について、図9及び図10を参照して説明する。図9は乾燥炉としてのオーブンを示す概略断面図、図10はホットプレートを含む減圧乾燥装置を示す概略断面図である。
図9に示すように、乾燥炉としてのオーブン200は、密閉可能なチャンバー201と、チャンバー201内の空間を複数段に仕切る棚202と、棚202上に立設された複数のプロキシピン203と、チャンバー201内に気体を導入するための気体導入口204と、チャンバー201内の気体を排気可能な排気口205とを備えている。また、オーブン200は、チャンバー201内の雰囲気を所定の温度に加熱可能なIRヒーターなどの加熱手段(図示省略)を備えている。なお、オーブン200は、レジスト層140のプレベークにも流用可能である。
図10に示すように、減圧乾燥装置300は、密閉可能なチャンバー301と、チャンバー301の底面に配置され、ヒーターなどの加熱手段303を具備したホットプレート302と、チャンバー301内を減圧可能な例えばロータリーポンプやオイル拡散ポンプなどの減圧手段304と、チャンバー301内を外気と連通させるための連通部305と、連通部305に設けられた開閉バルブ306とを備えている。
本実施形態におけるバンク133のポストベークは、オーブン200を用いた第1の熱処置工程と、減圧乾燥装置300を用いた第2の熱処理工程とを行う。なお、バンク133が形成された素子基板101を、以降、ワークWと呼ぶこととする。
第1の熱処理工程では、200℃以上240℃以下の第1の温度、具体的には、220℃に設定されたオーブン200中にワークWを1時間ほど放置する。図9に示すように、チャンバー201内は棚202によって仕切られているので、複数のワークWを同時に熱処理することができる。ワークWはその外縁部と中央部とがプロキシピン203によって背面側から支持された状態で棚202上に配置されて熱処理が施される。本実施形態では、チャンバー201内に大気が導入されているが、気体導入口204から窒素などの不活性ガスを導入してもよい。
第1の熱処理を施すことによって、レジスト層140中で分散していた撥液材料141は、バンク133の表面側に偏析する。
次に、第2の熱処理工程では、図10に示すように、第1の熱処理が施されたワークWを減圧乾燥装置300のホットプレート302上に載置し、チャンバー301内を減圧手段304によって減圧した状態で熱処理を行う。具体的には、200℃以上240℃以下の第2の温度、より具体的には加熱手段303により220℃に設定されたホットプレート302上にワークWを1時間程度放置して加熱する。チャンバー301内の減圧状態は、1.0×106Pa(およそ1気圧)以下の例えば1.0×104Pa(およそ1気圧の十分の一)である。
第1の熱処理における第1の温度と第2の熱処理における第2の温度は、感光性レジスト(感光性樹脂材料)に含まれる有機溶媒のうち最も沸点が高い有機溶媒を除去できるように設定する。また、各熱処理において用いられるオーブン200やホットプレート302における温度のばらつきを考慮して設定される。本実施形態では、上記有機溶媒のうち最も沸点が高いのは、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)であって、沸点が176℃であることから、プレベーク温度(110℃)よりも高い200℃以上の温度とした。また、過剰な加熱はエネルギーの無駄や加熱後に取り扱うことが可能となるよう冷却する時間を考慮して240℃以下とした。これにより、バンク133に含まれる有機溶媒が十分に除去される。本実施形態では、上記第1の温度と上記第2の温度の設定が共に220℃であったが、これに限定されず、200℃以上240℃以下の温度範囲であれば双方の温度設定が異なっていてもよい。
一方で、バンク133がパターニングされる前のレジスト層140にプレベーク温度以上の温度で加熱すると、撥液材料141はレジスト層140の表面側に偏析する。そして、露光・現像を行うと、頭頂部133aには撥液材料141が偏析するが、側壁部133bには撥液材料141がほとんど偏析していない状態のバンク133が形成される。そうすると、先に説明した図7(a)のような撥液性を示すバンク133ができあがってしまう。
本実施形態では、現像工程までは、レジスト層140を過剰に加熱せずにバンク133を形成し、バンク133の形状を確定させた後に、ポストベークを段階的且つ異なった方法で行うことで、図8(d)に示すように、バンク133の表面において万遍なく撥液性が発揮されるようにした。
なお、ポストベークにおける各熱処理の時間は、上述したように撥液材料141の偏析と、有機溶媒の除去とを考慮して適宜設定可能であるが、本実施形態の第2の熱処理工程では、ホットプレート302に載置されたワークWを減圧下で加熱するので、第2の熱処理の時間は、第1の熱処理の時間よりも短くするこが可能である。言い換えれば、第2の熱処理は、減圧下でワークWを加熱することに限定されず、大気や不活性ガスなどの雰囲気下でホットプレート302上にワークWを載置して所定の時間(例えば2時間程度)に亘り加熱してもよい。また、第1の熱処理は大気圧で行うことに限定されず、オーブン200のチャンバー201内を減圧状態として第1の熱処理を行ってもよい。
<実施例と比較例>
次に、有機EL素子130の製造方法の実施例と比較例とを挙げて、バンク133の形成方法の違いによる有機EL素子130の発光特性への影響について図11を参照して説明する。図11は有機EL素子の製造方法における実施例及び比較例のバンクのポストベークの仕方と有機EL素子の評価結果との関係を示す表である。
図11に示すように、実施例は、上述したように有機EL素子130の製造方法において、バンク133のポストベークとして、第1の熱処理(220℃、1時間)と、第2の熱処理(220℃、1時間、減圧状態;1.0×104Pa)とを施したものである。機能層に含まれるところの、正孔注入層はPEDOT/PSS(1/6)を用いて形成され、正孔輸送層はTFBを用いて形成され、発光層は緑色発光が得られる発光材料を用いて形成されている。いずれも前述したように液滴吐出法を用いて形成され、正孔注入層の膜厚は50nm〜60nm、正孔輸送層の膜厚は10nm〜30nm、発光層の膜厚は60nm〜80nmである。
図11に示すように、比較例は、実施例に対してバンク133のポストベークの仕方を異ならせたものであって、第1の熱処理だけが施され、第2の熱処理は実施していない。機能層の構成は、実施例と同じである。
図11に示すように、実施例と比較例の製造方法を用いて製造された有機EL素子130をそれぞれ所定の輝度(例えば最大輝度の50%)が得られるように駆動電圧を設定したときの、駆動電圧は、比較例を基準とすると実施例と比較例とにおいてほぼ同じ水準であった。また、有機EL素子130を流れる電流の値から発光効率も実施例と比較例とにおいてほぼ同じ水準であった。これに対して、実施例と比較例の有機EL素子130のそれぞれを所定の輝度で発光させる通電を行い、該所定の輝度が半減する通電時間(LT50)を調べたところ、実施例の有機EL素子130のLT50は、比較例に対しておよそ1.5倍であった。つまり、発光特性のうち発光寿命が改善された。
なお、上記実施例及び比較例では、発光層として緑色発光が得られる発光材料を用いたが、他の赤色や青色の発光が得られる発光材料を用いた場合も発光寿命を改善することが可能である。また、発光寿命の評価は、LT50に限らず、LT80(上記所定の輝度に対して輝度が80%となる通電時間)やLT95(上記所定の輝度に対して輝度が95%となる通電時間)などを含めてもよい。このようにすれば、輝度の低下傾向つまり発光寿命の時間的な推移についても評価できる。
上記実施形態のバンク133の形成方法によれば、現像後のバンク133に対して第1の熱処理と第2の熱処理とを含むポストベークが行われるので、バンク133の表面において万遍なく撥液性が付与されると共に、感光性レジストに含まれる溶媒成分が確実に除去され優れた耐薬品性を有するバンク133を形成することができる。
また、このようなバンク133を用いた有機EL素子130の製造方法によれば、液相プロセスで機能層132を形成する過程で、感光性レジストに含まれる溶媒成分の影響を受けず、また乾燥・焼成後に断面形状が比較的に平坦な機能層132を形成できる。ゆえに、特に発光寿命が改善され優れた発光特性を有する有機EL素子130を製造することができる。
また、有機EL素子130が適用された有機EL装置100は、優れた表示品質に加えて優れた表示寿命を実現できる。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うバンクの形成方法及び有機EL素子の製造方法を適用する有機EL装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)バンク133を構成する感光性レジスト(感光性樹脂材料)は、ネガ型に限定されず、ポジ型の感光性レジスト(感光性樹脂材料)を用いてもよい。
(変形例2)バンク133の断面形状は、台形状であることに限定されない。実際には、現像後のバンク133の頭頂部133aが緩やかな曲面となることもある。
(変形例3)有機EL装置100は、赤(R)、緑(G)、青(B)、3色の発光画素107を有することに限定されず、黄(Y)の発光画素107を含む構成としてもよい。色再現性が向上した有機EL装置100を提供できる。また、有機EL装置100の3色の発光画素107のうちの少なくとも1色の発光画素107において、本実施形態の有機EL素子130が適用されていればよい。さらに、有機EL素子130を適用する有機EL装置100は表示装置に限定されず、単色発光あるいは多色発光の照明装置や露光装置であってもよい。
70,80,90B,90G,90R…機能液、100…有機EL装置、101…基板としての素子基板、130…有機EL素子、131…第1電極としての画素電極、132,132B,132G,132R…機能層、132a…正孔注入層、132c…正孔輸送層、132b,132g,132r…発光層、133…バンク、134…第2電極としての対向電極、140…レジスト層、200…乾燥炉としてのオーブン、300…減圧乾燥装置、302…ホットプレート、W…基板としてのワーク。

Claims (8)

  1. 基板に撥液材料を含む感光性レジストを塗布してレジスト層を形成する工程と、
    前記レジスト層を露光・現像してパターニングしバンクを形成する工程と、
    前記バンクが形成された前記基板に、前記感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第1の温度の雰囲気下で第1の熱処理を施す工程と、
    前記第1の熱処理が施された前記基板をホットプレート上に載置して、前記感光性レジストに含まれる溶媒の沸点よりも高い第2の温度で第2の熱処理を施す工程と、を含むことを特徴とするバンクの形成方法。
  2. 前記第1及び第2の温度が200℃以上240℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のバンクの形成方法。
  3. 前記第1の熱処理を施す工程は、複数の前記基板を受入れ可能な乾燥炉を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のバンクの形成方法。
  4. 前記第2の熱処置を施す工程は、減圧下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバンクの形成方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバンクの形成方法を用い、基板上に配置された第1電極を含む領域を区画するバンクを形成する工程と、
    前記バンクにより区画された前記領域に機能性材料を含む機能液を塗布する工程と、
    塗布された前記機能液を固化して機能層を形成する工程と、
    前記機能層に積層して第2電極を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法。
  6. 前記機能層は、正孔注入層を含み、
    前記正孔注入層は、正孔注入層形成材料を溶媒に添加した前記機能液を用いて形成され、
    前記溶媒は、芳香族炭化水素、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスソルアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン及びその誘導体、グリコールエーテル類の中から少なくとも1種が選ばれることを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記機能層は、正孔輸送層を含み、
    前記正孔輸送層は、正孔輸送層形成材料をジメチルナフタレンに添加した前記機能液を用いて形成されることを特徴とする請求項5または6に記載の有機EL素子の製造方法。
  8. 前記機能層は、発光層を含み、
    前記発光層は、発光層形成材料をジメチルナフタレンに添加した前記機能液を用いて形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子の製造方法。
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CN107046106A (zh) * 2016-07-29 2017-08-15 广东聚华印刷显示技术有限公司 像素界定层及其制备方法和应用
JP2018026512A (ja) * 2016-08-12 2018-02-15 株式会社デンソー 有機el表示装置およびその製造方法
JP2018181658A (ja) * 2017-04-17 2018-11-15 独立行政法人国立高等専門学校機構 有機発光素子の製造方法
CN109192875A (zh) * 2018-09-04 2019-01-11 京东方科技集团股份有限公司 背板及制造方法、显示基板及制造方法和显示装置

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