JP2005129450A - 有機el素子、その製造方法、及び電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 複数の有機機能層を積層した構造を備えた有機EL素子における製造時の相溶解を抑制することで、有機機能層間の機能分離を良好なものとし、もって高発光効率かつ長寿命の有機EL素子を提供する。
【解決手段】 本発明の有機EL素子10は、陽極(第1の電極層)4と、有機EL層(有機機能層)3と、陰極(第2の電極層)7とを含む積層膜を具備し、前記有機EL層3の正孔注入/輸送層5と発光層8との間に、相溶防止層181が設けられた構成を備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機EL素子、その製造方法、及び電子機器に関するものである。
近年、液晶ディスプレイに替わる自発発光型ディスプレイとして、有機物を用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と略称する)装置の開発が加速している。このような有機EL装置の作成方法として、高分子を液相法で形成する方法が知られている。
有機EL装置の構造においては、発光効率、耐久性を向上させるために、正孔注入層や電子注入層を、それぞれ陽極と発光層との間、及び発光層と陰極との間に形成することが多い。そして、このような薄膜積層構造を液相法で形成する場合、塗布液の溶媒により既に形成された有機膜が溶解される、いわゆる相溶性が問題となる。そこで、例えば特許文献1には、正孔注入層にシランカップリング剤を入れて架橋し、不溶化することで、発光層との相溶を防止する技術が開示されている。
特開2000−208254号公報
上記従来技術の有機EL装置によれば、正孔注入層と発光層との相溶解を防止でき、発光層を良好に形成することが可能になる。しかしながら、シランカップリング剤のような絶縁物質を正孔注入層に混入することは、正孔注入層のキャリア注入性、ないしキャリア輸送性を少なからず低下させることになると考えられ、発光効率のさらなる向上を図る上での問題となる可能性がある。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、複数の有機機能層を積層した構造を備えた有機EL素子における製造時の相溶解を抑制することで、有機機能層間の機能分離を良好なものとし、もって高発光効率かつ長寿命の有機EL素子及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、第1の電極層と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、第2の電極層とを含む積層膜を具備した有機EL素子であって、前記積層膜のいずれかの層間に、隣接する層と異なる溶解性を有する相溶防止層が設けられていることを特徴とする有機EL素子を提供する。
この構成によれば、当該有機EL素子を構成する積層膜を形成するに際して、隣接する層間での相溶解を前記相溶防止層により効果的に防止することができ、各層を良好に分離しつつ形成することが可能になる。これにより、発光効率が高く、また発光寿命の長い、良好な素子特性を備えた有機EL素子とすることができる。
本発明の有機EL素子では、前記有機機能層は、発光層と正孔注入/輸送層とを含んでなり、前記発光層と正孔注入/輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられている構成とすることができる。この構成によれば、前記正孔注入/輸送層と発光層との間の相溶解を効果的に防止でき、もってホール輸送性に優れ、発光効率が高く、発光寿命の長い有機EL素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子では、前記有機機能層は、発光層と電子注入/輸送層とを含んでなり、前記発光層と電子注入/輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられている構成とすることもできる。この構成によれば、前記発光層と電子注入/輸送層との相溶解を効果的に防止でき、もって電子輸送性に優れ、発光効率が高く、発光寿命の長い有機EL素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子では、前記有機機能層と、前記第2の電極層との間に前記相溶防止層が設けられている構成とすることもできる。この構成によれば、前記有機機能層と電極層との間の相溶解も効果的に防止できる、特に第2の電極層を導電性高分子により形成する場合に極めて有効な構成となる。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層の層厚は、隣接する層の厚さの2倍以下であることが好ましい。前記相溶防止層の層厚を、隣接して設けられる層の2倍以上とした場合、層間での相溶解を防止する効果は大きくなるものの、発光層への電荷輸送性が低下するおそれがある。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層の層厚は、30nm以下であることが好ましい。前記相溶防止層の層厚をこのような範囲とすることで、良好な電荷輸送性を保持しつつ相溶解を防止することができる。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層は、電荷輸送性を有していることが好ましい。このような構成とすることで、発光層への電荷輸送性を損なうことなく層間での相溶解を効果的に防止することができる。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層は、導電性高分子を含んでいることが好ましい。このような構成とすることで、相溶防止層についても液相法による形成が容易になり、特に高分子型の有機EL素子に適用して有効な構成である。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層は、絶縁性を有している構成とすることもできる。この構成によれば、相溶防止層の両側に設けられる層の形成に用いる溶媒の選択肢が広くなり、製造時の制限が緩和されることによる製造容易性の向上、並びに素子性能の向上を図ることが容易になる。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層の層厚は、10nm以下であることが好ましい。相溶防止層を絶縁性材料で形成する場合、積層膜間での電荷輸送性を確保するために、上記層厚を上限とするのがよい。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層は、水溶性材料からなるものとすることができる。このような構成とすることで、相溶防止層と隣接して設けられる層に、有機溶媒への溶解性を示す材料を用いることができ、類似の溶解性を有する正孔注入/輸送層形成材料や発光層形成材料の組み合わせが容易になる。
本発明の有機EL素子では、前記正孔注入/輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層とを含んでなり、前記正孔注入層と前記正孔輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられている構成とすることもできる。このような構成とすることで発光層へのホール輸送性をさらに向上させ、素子特性に優れた有機EL素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子では、前記電子注入/輸送層は、電子注入層と電子輸送層とを含んでなり、前記電子注入層と電子輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられている構成とすることもできる。このような構成とすることで、発光層への電子輸送性をさらに向上させ、素子特性に優れた有機EL素子を提供することができる。
次に、本発明は、上記課題を解決するために、第1の電極層と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、第2の電極層とを含む積層膜を具備した有機EL素子の製造方法であって、前記積層膜を液相法により形成するに際して、前記積層膜のいずれかの層間に、隣接する層と異なる溶解性を有する相溶防止層を設ける工程を含むことを特徴とする有機EL素子の製造方法を提供する。
前記液相法とは、目的物の構成材料を含む溶液を塗布し、乾燥させることで目的物を形成する方法である。この製造方法によれば、前記積層膜を形成するに際して、隣接して設けられる層間での相溶解を、前記相溶防止層により効果的に防止することができ、得られる積層膜の層分離を良好なものとすることができる。これにより、発光効率が高く、長寿命の有機EL素子を製造することができる。
本発明の有機EL素子の製造方法では、前記相溶防止層を、液相法により形成することができる。この製造方法によれば、前記相溶防止層の形成を、他の層とともに液相法により形成でき、効率的に有機EL素子の製造を行うことができる。
本発明の有機EL素子では、前記相溶防止層を、水溶性材料を用いた液相法により形成することもできる。この製造方法によれば、相溶防止層を水溶性材料により形成するので、相溶防止層と隣接して設けられる層の形成に有機溶媒を用いることができ、例えば類似の溶解性を有する正孔注入/輸送層形成材料と発光層形成材料に同一の有機溶媒を用いることも可能になる。これにより、前記積層膜の形成材料についての制限が緩和され、製造の容易性、並びに素子特性の向上を図ることができる。
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の有機EL素子を備えたことを特徴とする。この構成によれば、色度や画質に優れ、長寿命の表示部を備えた電子機器が提供される。本発明に係る有機EL素子は、画像表示手段やインジケータ等の識別情報表示手段として電子機器に搭載することが可能である。
(有機EL素子)
<第1実施形態>
以下、本発明に係る有機EL素子の第1実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の有機EL素子の断面構成図である。図1において、有機EL素子10は、基板2と、基板2の一方の面側に設けられた陽極(第1の電極)4、陰極(第2の電極)7と、これらの電極4、7間に狭持された有機EL層(有機機能層)3とを備えて構成されている。また、前記陽極4と陰極7とには、素子制御部conが接続され、両電極に任意の電圧を印加可能になっている。
有機EL層3は、正孔注入/輸送層5と、発光層8とを主体として構成されており、正孔注入/輸送層5と発光層8との間に、相溶防止層181が設けられている。
ここで、図1に示す有機EL素子10は、発光層8からの出力光を基板2側から装置外部に取り出す形態であり、基板2は、光を透過可能な透明あるいは半透明材料に少なくとも光を透過可能な透明あるいは半透明な陽極4を形成したものである。本実施形態では図示を省略したが、基板2上には、配線や薄膜トランジスタ等の素子を形成することができる。光を透過可能な透明あるいは半透明材料としては、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが挙げられる。特に、基板2の形成材料としては、安価なソーダガラスが好適に用いられる。
陽極4は、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)等からなる透明電極であって光を透過可能なものである。
一方、基板を構成する材料と反対側から発光光を取り出す形態の場合には、基板を構成する材料は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。この場合、陽極4は遮光性や光反射性の材料で形成することができる。
正孔注入/輸送層5は、発光層8の発光効率、寿命などの素子特性を向上させる機能を提供する。つまり、正孔注入/輸送層5を設けることで、発光層8内を移動する電子が効率よくブロッキングされ、発光層8内での正孔と電子との再結合確率を高める効果を得られる。正孔注入/輸送層を形成するための材料(形成材料)としては、例えば、チオフェン系化合物(ポリチオフェン(PEDOT)等)、ピロール系化合物(ポリピロール等)、アニリン系化合物(ポリアニリン等)、アセチレン系化合物(ポリアセチレン等)や、それらの誘導体などを用いることができる。
発光層8の形成材料としては、低分子の有機発光色素や高分子発光体、即ち、各種の蛍光物質や燐光物質などの発光物質、Alq3(アルミキレート錯体)などの有機エレクトロルミネッセンス材料が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン又はポリフルオレン構造を含むものなどが特に好ましい。低分子発光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、又は特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
陰極7はアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)等からなる金属電極である。
発光層8と正孔注入/輸送層5との間に設けられた相溶防止層181としては、チオフェン系化合物(ポリチオフェン(PEDOT)等)、ピロール系化合物(ポリピロール等)、アニリン系化合物(ポリアニリン等)、銅フタロシアニン(CuPc)、ポリフェニレンビニレン(PPV)等を好適な材料として挙げることができる。これらの導電性材料により相溶防止層181を形成する場合、その層厚は、基板2側に形成される正孔注入/輸送層5の層厚の2倍以下とすることが好ましく、具体的な層厚を例示するならば、30nm以下である。
あるいは、上記相溶防止層181は、絶縁性材料によって形成することもできる。この場合、発光層8への電荷輸送性を低下させないよう相溶防止層181の層厚を10nm以下にまで薄くすることが好ましい。上記絶縁性材料としては、ポリビニルアルコール等の絶縁ポリマーを用いることができる。
また有機EL素子10では、陰極7を覆う封止部材を設けることが好ましく、さらには、陽極4と基板2との間に、基板2側から陽極4、陰極7を含む有機EL層3に対して大気が侵入するのを遮断するための封止層を設けることもできる。光取り出し側に設ける封止層は、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの透明な材料により形成し、この中でも酸化窒化珪素が透明性、ガスバリア性の観点から好ましい。なお、封止層の厚さは発光層8から射出される光の波長より小さくすることが好ましい(例えば0.1μm)。
本実施形態の有機EL素子10は、その駆動方式として、アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型のいずれも適用可能であり、電極4,7を介して有機EL層3に電流を供給することで発光層8を発光させ、基板2の外面側に光を放射できるようになっている。
上記構成を備えた本実施形態の有機EL素子10では、発光層8と正孔注入/輸送層5との間に、相溶防止層181が設けられていることで、正孔注入/輸送層5上に発光層8を形成する製造工程において、発光層8を構成する発光層形成材料と正孔注入/輸送層5との相溶解を効果的に防止することができる。これにより、発光層8への正孔注入/輸送層材料の混入が防止され、従来の有機EL素子に比して、明るく、かつ長寿命の有機EL素子を得ることができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を、図2を参照して説明する。図2に示す本実施形態の有機EL素子11は、基板2と、基板2の一方の面側に設けられた陽極(第1の電極)4、陰極(第2の電極)7と、これらの電極4、7間に狭持された有機EL層(有機機能層)13とを備えて構成されている。
有機EL層13は、正孔注入/輸送層5と、発光層8と、電子注入/輸送層6とを主体として構成されており、正孔注入/輸送層5と発光層8との間、及び発光層8と電子注入/輸送層6との間には、それぞれ相溶防止層181,182が設けられている。そして本実施形態では、正孔注入/輸送層5が、陽極4側から正孔注入層5aと、相溶防止層185と、正孔輸送層5bとを積層して備える構成とされており、電子注入/輸送層6が、陰極7側から電子注入層6aと、相溶防止層186と、電子輸送層6bとを積層して備える構成とされている。
正孔注入層5aを形成するための材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、または、それらのドーピング体、銅フタロシアニン(CuPc)、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等を採用することができる。
正孔輸送層5bを形成するための材料としては、例えば、アミン系、ヒドラゾン系、スチルベン系、スターバスト系などに分類される有機材料が種々知られている。例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等、さらには特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等を例示することができる。これらのうちでも、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4'−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
発光層8と正孔輸送層5bとの間に設けられた相溶防止層181、及び正孔注入層5aと正孔輸送層5bとの間に設けられた相溶防止層185としては、先の第1実施形態に係る相溶防止層181と同様の構成を採用することができる。
陰極7と発光層8との間に設けられた電子注入/輸送層6は、陰極7から発光層8への電子注入性、電子輸送性を高めるために必要に応じて設けられる。
電子注入層6aの形成材料としては、金属のハロゲン化物あるいは酸化物を採用することができる。その金属として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属または遷移金属等の金属元素を採用することが可能である。また金属ハロゲン化物は、金属フッ化物であることが望ましいが、これ以外の金属塩化物や金属臭化物等であってもよい。そして、具体的な金属ハロゲン化物として、フッ化リチウム(LiF)を使用することが望ましい。
なお、電子注入層を構成する電子注入性材料として、フッ化リチウム等の無機リチウム化合物の他にも、安息香酸リチウムや酢酸リチウム等の有機リチウム化合物を採用することも可能である。
電子輸送層6bの形成材料としては、例えばオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
発光層8と電子輸送層6bとの間に設けられた相溶防止層182、及び電子注入層6aと電子輸送層6bとの間に設けられた相溶防止層186としては、ポリフェニレンビニレン(PPV)を好適な構成材料として挙げることができる。また、これらの相溶防止層182,186についても、絶縁性材料を用いることができ、この場合、発光層8への電荷輸送性を低下させないよう相溶防止層182,185の層厚を10nm以下にまで薄くすることが好ましい。上記絶縁性材料としては、ポリビニルアルコール等の絶縁ポリマーを用いることができる。
上記構成を備える本実施形態の有機EL素子11では、正孔注入/輸送層5が正孔注入層5aと正孔輸送層5bとの積層構造を成して形成されるとともに、両層の間に相溶防止層185が設けられているので、正孔注入層5a上への正孔輸送層5bの形成に際して、正孔注入層5aと正孔輸送層5bとが相溶解するのを効果的に防止することができ、両層の機能分離を良好なものとすることが可能である。これにより、正孔注入/輸送層5におけるホール注入/輸送効率を向上させることができ、もって発光層8における発光効率を高めることができる。さらには、このように正孔輸送層を正孔注入層とともに形成することにより、駆動電圧の上昇を制御することができ、駆動寿命(半減期)を長くすることが可能となる。
また、電子注入/輸送層6が、電子注入層6aと電子輸送層6bとの積層構造を成して形成されるとともに、前記両層間に相溶防止層186が設けられているので、電子輸送層6b上への電子注入層6aへの形成に際して、電子注入層6aと電子輸送層6bとの相溶解を効果的に防止することができ、両層の機能分離を良好なものとすることが可能である。これにより、電子注入/輸送効率を向上させることができ、もって発光層8における発光効率を高めることができる。
このように、本実施形態に係る有機EL素子11によれば、正孔注入層と正孔輸送層との積層構造、並びに電子注入層と電子輸送層との積層構造を備えた有機EL素子において、さらに良好な電荷注入性、電荷輸送性を得ることができ、さらなる発光効率の向上を図ることができる。また、先の実施形態と同様に、発光層8の両側に設けられた相溶防止層181,182の作用により、得られる発光波長が、発光層形成材料本来の発光波長からずれるのを防止でき、高い色度の発光光が得られるようになっている。
尚、上記第1、第2実施形態では、有機EL層3を構成する積層膜中に、相溶防止層が設けられている構成としたが、有機EL層3と陰極7との間に相溶防止層を設けることもできる。このような構成は、特に陰極7として導電性高分子材料を用いる場合に有効である。この構成によれば、陰極7を形成する際に、発光層8ないし電子注入層6aと、陰極7とが相溶解するのを効果的に防止でき、発光層8に対する良好な電子注入性を得ることができる。
<有機ELディスプレイ>
次に、上記実施形態の有機EL素子10,11を備えた有機ELディスプレイについて、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本実施形態の有機ELディスプレイの回路構成図、図4(a)は、図3に示す画素71の平面構造を示す図であって反射電極や有機EL層を取り除いた状態の拡大平面図、図4(b)は、画素71の断面構成図である。本実施形態の有機ELディスプレイ70は、図3に示す画素71として、先の実施形態の有機EL素子10,11を備えたものである。
図3に示すように、有機ELディスプレイ70は、透明の基板上に、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素71が設けられて構成されたものである。
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ側駆動回路72が設けられている。
一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素71の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ142と、このスイッチング薄膜トランジスタ142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ143と、このカレント薄膜トランジスタ143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と反射電極154との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。すなわち、画素71において、画素電極141が図1,2に示す陽極4に対応し、反射電極154が陰極7に対応し、発光部140が有機EL層3に対応している。
ここで、図4(a)に示すように、各画素71の平面構造は、平面形状が長方形の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。また、図4(b)に示す断面構造を見ると、カレント薄膜トランジスタ143が設けられた上には、カレント薄膜トランジスタ143と電気的に接続された画素電極141が、隔壁150に囲まれた領域内に設けられており、この画素電極140上に、正孔注入/輸送層140Aと、相溶防止層145と、発光層8との積層膜からなる発光部140が設けられ、隔壁150と発光部140とを覆って反射電極154が設けられている。
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング薄膜トランジスタ142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、カレント薄膜トランジスタ143のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて反射電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
上記構成を備えた有機ELディスプレイ70は、各画素71が本発明に係る有機EL素子10、11により構成されているので、発光光の色度に優れ、また長寿命のディスプレイとなっている。
(有機EL素子の製造方法)
<製造装置>
図5は本発明に係る有機EL素子の製造方法に適用できる製造装置(液滴吐出装置)を示す概略斜視図である。また、図6は前記液滴吐出装置に備えられた液滴吐出ヘッドを示す図である。
図5において、液滴吐出装置IJは、基板(基材)Pの表面(所定面)に液状体組成物を設置可能な成膜装置であって、ベース12と、ベース12上に設けられ、基板Pを支持するステージ(ステージ装置)STと、ベース12とステージSTとの間に介在し、ステージSTを移動可能に支持する第1移動装置14と、ステージSTに支持されている基板Pに対して有機機能材料を含む液状体組成物を定量的に吐出(滴下)可能な液滴吐出ヘッド20と、液滴吐出ヘッド20を移動可能に支持する第2移動装置16とを備えている。液滴吐出ヘッド20の液状体組成物の吐出動作や、第1移動装置14及び第2移動装置16の移動動作を含む液滴吐出装置IJの動作は、制御装置CONTにより制御される。
第1移動装置14はベース12上に設置されており、Y軸方向に沿って位置決めされている。第2移動装置16は、支柱16A,16Aを用いてベース12に対して立てて取り付けられており、ベース12の後部12Aにおいて取り付けられている。第2移動装置16のX軸方向は、第1移動装置14のY軸方向と直交する方向である。ここで、Y軸方向はベース12の前部12Bと後部12A方向に沿った方向である。これに対してX軸方向はベース12の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に垂直な方向である。
第1移動装置14は、例えばリニアモータによって構成され、ガイドレール40、40と、このガイドレール40に沿って移動可能に設けられているスライダー42とを備えている。このリニアモータ形式の第1移動装置14のスライダー42は、ガイドレール40に沿ってY軸方向に移動して位置決め可能である。
また、スライダー42はZ軸回り(θz)用のモータ44を備えている。このモータ44は、例えばダイレクトドライブモータであり、モータ44のロータはステージSTに固定されている。これにより、モータ44に通電することでロータとステージSTとは、θz方向に沿って回転してステージSTをインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置14は、ステージSTをY軸方向及びθz方向に移動可能である。
ステージSTは基板Pを保持し、所定の位置に位置決めするものである。また、ステージSTは吸着保持装置50を有しており、吸着保持装置50が作動することにより、ステージSTの穴46Aを通して基板PをステージSTの上に吸着して保持する。
第2移動装置16はリニアモータによって構成され、支柱16A,16Aに固定されたコラム16Bと、このコラム16Bに支持されているガイドレール62Aと、ガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動可能に支持されているスライダー60とを備えている。スライダー60はガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20はスライダー60に取り付けられている。
液滴吐出ヘッド20は、揺動位置決め装置としてのモータ62,64,66,68を有している。モータ62を作動すれば、液滴吐出ヘッド20は、Z軸に沿って上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ64を作動すると、液滴吐出ヘッド20は、Y軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ66を作動すると、液滴吐出ヘッド20は、X軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。
モータ68を作動すると、液滴吐出ヘッド20は、Z軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置16は、液滴吐出ヘッド20をX軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持するとともに、この液滴吐出ヘッド20をθx方向、θy方向、θz方向に移動可能に支持する。
このように、図5の液滴吐出ヘッド20は、スライダー60において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能であるとともに、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pは、ステージST側の基板Pに対して正確に位置あるいは姿勢をコントロールすることができる。なお、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pには液状体組成物を吐出する複数のノズルが設けられている。
図6(a)は液滴吐出ヘッド20を示す分解斜視図である。同図に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル81を有するノズルプレート80と、振動板85を有する圧力室基板90と、これらノズルプレート80と振動板85とを嵌め込んで支持する筐体88とを備えている。液滴吐出ヘッド20の主要部構造は、図6(b)の斜視図一部断面図に示すように、圧力室基板90をノズルプレート80と振動板85とで挟み込んだ構造となっている。
ノズルプレート80には、圧力室基板90と貼り合わせられたときにキャビティ(圧力室)81に対応することとなる位置にノズル81が形成されている。圧力室基板90には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ81が複数設けられている。キャビティ81どうしの間は側壁92で分離されている。各キャビティ81は供給口94を介して共通の流路であるリザーバ93に繋がっている。振動板85は、例えば熱酸化膜等により構成される。振動板85にはタンク口86が設けられ、供給する液状体組成物の調整手段として設けられたタンク30からパイプ(流路)31を通して任意の液状体組成物を供給可能に構成されている。振動板85上のキャビティ81に相当する位置には圧電体素子87が形成されている。圧電体素子87はPZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示せず)で挟んだ構造を備える。圧電体素子87は制御装置CONTから供給される吐出信号に対応して体積変化を発生可能に構成されている。
液滴吐出ヘッド20から液状体組成物を吐出するには、まず、制御装置CONTが液状体組成物を吐出させるための吐出信号を液滴吐出ヘッド20に供給する。液状体組成物は液滴吐出ヘッド20のキャビティ81に流入しており、吐出信号が供給された液滴吐出ヘッド20では、その圧電体素子87がその上部電極と下部電極との間に加えられた電圧により体積変化を生ずる。この体積変化は振動板85を変形させ、キャビティ81の体積を変化させる。この結果、そのキャビティ81のノズル穴211から液状体組成物の液滴が吐出される。液状体組成物が吐出されたキャビティ81には吐出によって減った液状体組成物が新たに後述するタンク30から供給される。
なお、上記液滴吐出ヘッドは圧電体素子に体積変化を生じさせて液状体組成物を吐出させる構成であったが、発熱体により液体材料に熱を加えその膨張によって液滴を吐出させるようなヘッド構成であってもよい。
図5に戻って、基板P上に設けられる液状体組成物は、液状体組成物調整装置Sにより生成される。液状体組成物調整装置Sは、液状体組成物を収容可能なタンク30と、タンク30に取り付けられ、このタンク30に収容されている液状体組成物の温度を調整する温度調整装置32と、タンク30に収容されている液状体組成物を攪拌する撹拌装置33とを備えている。温度調整装置32はヒータにより構成されており、タンク30内の液状体組成物を任意の温度に調整する。そして、タンク30において、図示略の材料供給装置から供給される有機機能材料と溶媒とが攪拌装置33により攪拌され、液滴吐出ヘッド20から吐出する液状体組成物が生成される。攪拌装置33に攪拌されることにより液状体組成物に含まれる材料は均一に分散する。ここで、温度調整装置32は制御装置CONTにより制御され、タンク30内の液状体組成物は温度調整装置32により温度調整されることで所望の粘度に調整される。
タンク30はパイプ(流路)31を介して液滴吐出ヘッド20に接続されており、液滴吐出ヘッド20から吐出される液状体組成物はタンク30からパイプ31を介して供給される。また、パイプ31を流れる液状体組成物は図示略のパイプ温度調整装置によって所定の温度に制御され、粘度を調整される。更に、液滴吐出ヘッド20から吐出される液状体組成物の温度は、液滴吐出ヘッド20に設けられた図示略の温度調整装置により制御され、所望の粘度に調整されるようになっている。
なお、図5には液滴吐出ヘッド20及び組成物調整装置Sのそれぞれが1つだけ図示されているが、液滴吐出装置IJには複数の液滴吐出ヘッド20及び組成物調整装置Sを設けることができ、これら複数の液滴吐出ヘッド20のそれぞれから異種または同種の液状体組成物を吐出可能になっている。そして、基板Pに対してこれら複数の液滴吐出ヘッド20のうち、第1の液滴吐出ヘッドから第1の液状体組成物を吐出した後、これを焼成又は乾燥し、次いで第2の液滴吐出ヘッドから第2の液状体組成物を基板Pに対して吐出した後これを焼成又は乾燥し、以下、複数の液滴吐出ヘッドを用いて同様の処理を行うことにより、基板P上に複数の材料層を積層した積層膜を形成することができる。
<有機EL素子の製造手順>
次に、本発明に係る有機EL素子を備えた有機ELディスプレイ70の製造方法について図7〜図9を参照しながら説明する。尚、図7〜図9には、説明を簡略化するために単一の画素71についてのみ図示している。
まず、基板Pが用意する。ここで、有機EL素子では後述する発光層による発光光を基板側から取り出すことも可能であり、また基板と反対側から取り出す構成とすることも可能である。発光光を基板側から取り出す構成とする場合、基板材料としてはガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明なものを用いる。
尚、基板と反対側から発光光を取り出す構成の場合、基板は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
本実施形態では、基板として図7(a)に示すようにガラス等からなる透明基板Pが用いられる。そして、これに対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成する。
次に、透明基板Pの温度を約350℃に設定し、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nm程度のアモルファスシリコン膜からなる半導体膜200を形成する。その後、この半導体膜200に対してレーザアニールまたは固相成長法などの結晶化処理を施して半導体膜200を結晶化し、ポリシリコン膜とする。レーザアニール法を用いる場合には、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用いることができ、その出力強度は例えば200mJ/cmである。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
次に、図7(b)に示すように、半導体膜(ポリシリコン膜)200をパターニングして島状の半導体膜210を形成し、その表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜220を形成する。
なお、半導体膜210は、図4(a)に示したカレント薄膜トランジスタ143のチャネル領域及びソース・ドレイン領域を構成するものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング薄膜トランジスタ142のチャネル領域及びソース・ドレイン領域を構成する半導体膜となる。つまり、図7〜図9に示す製造工程では画素71に設けられる二種類のトランジスタ142、143を同時に作製するが、これらは同一手順にて作製するので、以下の説明ではトランジスタに関しては、カレント薄膜トランジスタ143についてのみ説明し、スイッチング薄膜トランジスタ142についてはその説明を省略することとする。
次に、図7(c)に示すように、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法等により成膜した後、この導電膜をパターニングしてゲート電極143Aを形成する。
その後、この状態で半導体膜に高濃度のリンイオンをドープすると、ゲート電極143Aに対して自己整合的にソース・ドレイン領域143a、143bが形成される。なお、ゲート電極143A二よりマスクあされて不純物が導入されなかった部分がチャネル領域143cとなる。
次に、図7(d)に示すように、層間絶縁膜230を形成した後、コンタクトホール232、234を貫設し、これらコンタクトホール232、234内に中継電極236、238を埋設する。次いで、図7(e)に示すように、層間絶縁膜230上に、信号線132、共通給電線133及び走査線(図7では図示を省略)をパターン形成する。ここで、中継電極238と各配線とは、同一工程で形成してもよい。このとき、中継電極236は、後述するITO膜により形成する。
次に、各配線の上面を覆うように層間絶縁膜240を形成し、中継電極236に対応する位置にコンタクトホール(図示せず)を形成してそのコンタクトホール内に埋め込むようにITO膜を形成する。さらにそのITO膜をパターニングすることで、信号線132、共通給電線133及び走査線(図示せず)に囲まれた所定位置に、ソース・ドレイン領域143aに対して電気的に接続された画素電極141を形成する。ここで、信号線132及び共通給電線133、さらには走査線(図示せず)に挟まれた部分が、後述するように正孔注入/輸送層や発光層の形成位置となっている。
次に、図8(a)に示すように、前記の形成場所を囲むように隔壁150を形成する。この隔壁150は仕切部材として機能するものであり、例えばポリイミド等の絶縁性有機材料で形成するのが好ましい。隔壁150の層厚は、例えば1〜2μmである。また、隔壁150は、液滴吐出ヘッド20から吐出される液状体組成物に対して非親和性を示すものが好ましい。隔壁150に非親和性を発現させるためには、例えば隔壁150の表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法を採用すればよい。フッ素化合物としては、例えばCF、SF、CHFなどを例示することができ、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などを挙げることができる。そして、このような構成のもとに、正孔注入/輸送層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲の隔壁150との間に、十分な高さの段差111が形成される。
次に、図8(b)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で、正孔注入/輸送層形成用材料を含む液状体組成物114Aを液滴吐出ヘッド20により隔壁150に囲まれた塗布位置、すなわち隔壁150内に選択的に塗布する。
正孔注入/輸送層を形成するための液状体組成物114Aは、前記組成物調整装置Sにより生成され、正孔注入/輸送層形成用材料と、溶媒とを含む。
正孔注入/輸送層形成材料としては、例えばポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、バイトロンP(商品名;バイエル社製)、ポリスチレンスルフォン酸等が挙げられる。
また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒が用いられる。
上述した正孔注入/輸送層形成用材料、及び溶媒を含む液状体組成物1114Aが液滴吐出ヘッド20より基板P上に吐出されると、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで隔壁150が形成されているので、液状体組成物114Aは隔壁150を越えてその外側に広がることはない。
その後、図8(c)に示すように加熱あるいは光照射により液状体組成物114Aの溶媒を蒸発させて、画素電極141上に、固形の正孔注入/輸送層140Aを形成する。あるいは、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間(一例として200℃、10分)焼成するようにしてもよい。あるいは大気圧より低い圧力環境下(真空環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。
上記正孔注入/輸送層140Aを形成したならば、図8(c)に示すように、正孔注入/輸送層140A上に相溶防止層145を形成する。この相溶防止層145は、液相又は気相を用いた成膜法法により形成することができ、相溶防止層145を構成する材料に応じて適宜選択することができる。例えば、相溶防止層145を高分子材料(ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等)により形成する場合には、溶媒に同材料を分散させた液状体組成物による液相法が好適である。また、銅フタロシアニンからなる相溶防止層145を形成する場合には、真空蒸着法を用いることが好ましい。
液相法を用いて相溶防止層形成材料の塗布を行う場合、正孔注入/輸送層140Aを形成するために用いた液状体組成物114Aと異なる溶媒を含む相溶防止層形成用の液状体組成物を用い、正孔注入/輸送層140Aから相溶防止層への成分の混入が生じないようにする。このように、液相法を用いた製造方法では、相溶防止層形成用の液状体組成物について溶媒の制限が生じることとなるが、これにより正孔注入/輸送層形成用の液状体組成物114Aと、後述する発光層形成用の液状体組成物114Bとで共通の溶媒を利用できるようになるため、正孔注入/輸送層140A及び発光層140Bに用いる材料ないし溶媒の制限は緩和されることとなり、これらの選択幅を広げることが可能になる。
また液相法を用いて上記相溶防止層材料を塗布した場合には、乾燥工程ないし加熱工程を経て固体化しておくことが好ましい。特に、相溶防止層にポリフェニレンビニレンを用いた場合、200℃程度でベークすることにより不溶不融の薄膜を形成することができるため、上側に塗布する発光層形成材料の溶媒について選択の自由度が増し、製造をより容易なものとすることができる。また歩留まりの向上も図れるという利点が得られる。
次に、図9(a)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で、液滴吐出ヘッド20より、発光層形成材料と、溶媒とを含む液状体組成物114Bを隔壁150内の相溶防止層145上に選択的に塗布する。
発光層形成材料としては、例えば共役系高分子有機化合物の前駆体と、得られる発光層の発光特性を変化させるための蛍光色素とを含んでなるものが好適に用いられる。共役系高分子有機化合物の前駆体は、蛍光色素等とともに液滴吐出ヘッド20から吐出されて薄膜に成形された後、例えば以下の式(I)に示すように加熱硬化されることによって共役系高分子有機EL層となる発光層を生成し得るものをいい、例えば前駆体のスルホニウム塩の場合、加熱処理されることによりスルホニウム基が脱離し、共役系高分子有機化合物となるもの等である。
Figure 2005129450
このような共役系高分子有機化合物は固体で強い蛍光を持ち、均質な固体超薄膜を形成することができる。しかも形成能に富みITO電極との密着性も高い。
さらに、このような化合物の前駆体は、硬化した後は強固な共役系高分子膜を形成することから、加熱硬化前においては前駆体溶液を後述する液滴吐出パターニングに適用可能な所望の粘度に調整することができ、簡便かつ短時間で最適条件の膜形成を行うことができる。
このような前駆体としては、例えばPPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))またはその誘導体の前駆体が好ましい。PPVまたはその誘導体の前駆体は、水あるいは有機溶媒に可溶であり、また、ポリマー化が可能であるため光学的にも高品質の薄膜を得ることができる。さらに、PPVは強い蛍光を持ち、また二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化している導電性高分子でもあるため、高性能の有機EL素子を得ることができる。
このようなPPVまたはPPV誘導体の前駆体として、例えば化学式(II)に示すような、PPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))前駆体、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))前駆体、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))前駆体、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)前駆体等が挙げられる。
Figure 2005129450
PPVまたはPPV誘導体の前駆体は、前述したように水に可溶であり、成膜後の加熱により高分子化してPPV層を形成する。前記PPV前駆体に代表される前駆体の含有量は、組成物全体に対して0.01〜10.0wt%が好ましく、0.1〜5.0wt%がさらに好ましい。前駆体の添加量が少な過ぎると共役系高分子膜を形成するのに不十分であり、多過ぎると組成物の粘度が高くなり、インクジェット法による精度の高いパターニングに適さない場合がある。
さらに、発光層の形成材料としては、1種以上の蛍光色素を含んでいてもよい。これにより、発光層の発光特性を変化させることができ、例えば、発光層の発光効率の向上、または光吸収極大波長(発光色)を変えるための手段としても有効である。すなわち、蛍光色素は単に発光層形成材料としてではなく、発光機能そのものを担う色素材料として利用することができる。例えば、共役系高分子有機化合物分子上のキャリア再結合で生成したエキシトンのエネルギーをほとんど蛍光色素分子上に移すことができる。この場合、発光は蛍光量子効率が高い蛍光色素分子からのみ起こるため、発光層の電流量子効率も増加する。したがって、発光層の形成材料中に蛍光色素を加えることにより、同時に発光層の発光スペクトルも蛍光分子のものとなるので、発光色を変えるための手段としても有効となる。
なお、ここでいう電流量子効率とは、発光機能に基づいて発光性能を考察するための尺度であって、下記式により定義される。
ηE =放出されるフォトンのエネルギー/入力電気エネルギー
そして、蛍光色素のドープによる光吸収極大波長の変換によって、例えば赤、青、緑の3原色を発光させることができ、その結果フルカラー表示体を得ることが可能となる。
さらに蛍光色素をドーピングすることにより、EL素子の発光効率を大幅に向上させることができる。
蛍光色素としては、赤色の発色光を発光する発光層を形成する場合、赤色の発色光を有するローダミンまたはローダミン誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素は、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく、均一で安定した発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩等が挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。
また、緑色の発色光を発光する発光層を形成する場合、緑色の発色光を有するキナクリドンおよびその誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
さらに、青色の発色光を発光する発光層を形成する場合、青色の発色光を有するジスチリルビフェニルおよびその誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素は前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水・アルコール混合溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
また、青色の発色光を有する他の蛍光色素としては、クマリンおよびその誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。このような蛍光色素として具体的には、クマリン、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343等が挙げられる。
さらに、別の青色の発色光を有する蛍光色素としては、テトラフェニルブタジエン(TPB)またはTPB誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素等と同様、低分子であるため水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
以上の蛍光色素については、各色ともに1種のみを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
これらの蛍光色素については、前記共役系高分子有機化合物の前駆体固型分に対し、0.5〜10wt%添加するのが好ましく、1.0〜5.0wt%添加するのがより好ましい。蛍光色素の添加量が多過ぎると発光層の耐候性および耐久性の維持が困難となり、一方、添加量が少な過ぎると、前述したような蛍光色素を加えることによる効果が十分に得られないからである。
また、前記前駆体および蛍光色素については、極性溶媒に溶解または分散させて液状体組成物とし、この液状体組成物を液滴吐出ヘッド20から吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記前駆体、蛍光色素等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッド20のノズル孔での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こすのを防止することができる。
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
このような発光層形成用材料を含む液状体組成物114Bを液滴吐出ヘッド20から吐出して、液状体組成物114Bを隔壁150内の相溶防止層145上に塗布する。本実施形態の場合、相溶防止層145が設けられていることで、液状体組成物114Bの溶媒が、先に形成した正孔注入/輸送層140Aの構成材料を溶解し得る溶媒であったとしても、発光層形成材料とは異なる溶解性を有する相溶防止層145によって正孔注入/輸送層140Aは効果的に保護されるようになっている。
ここで、液状体組成物114Bの吐出による発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成用材料を含む液状体組成物、緑色の発色光を発光する発光層形成用材料を含む液状体組成物、青色の発色光を発光する発光層形成用材料を含む液状体組成物を、それぞれ対応する画素71に吐出し塗布することによって行う。なお、各色に対応する画素71は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
このようにして各色の発光層形成用材料を含む液状体組成物114Bを吐出し塗布したら、液状体組成物114B中の溶媒を蒸発させることにより、図9(b)に示すように相溶防止層145上に固形の発光層140Bが形成され、これにより正孔層注入/輸送層140Aと発光層140Bとを主体とする発光部140が得られる。ここで、発光層形成用材料を含む液状体組成物114B中の溶媒の蒸発については、必要に応じて加熱あるいは減圧等の処理を行うが、発光層形成用材料は通常乾燥性が良好で速乾性であることから、特にこのような処理を行うことなく、したがって各色の発光層形成用材料を順次吐出塗布することにより、その塗布順に各色の発光層140Bを形成することができる。
その後、図9(c)に示すように、透明基板Pの表面全体に、あるいはストライプ状に反射電極154が形成される。このようにして、有機ELディスプレイが製造される。
上記有機ELディスプレイの製造方法において、正孔注入/輸送層140Aや発光層140Bといった有機EL素子の構成要素となる薄膜は成膜装置(液滴吐出装置)IJにより製造されるので、正孔注入/輸送層140Aや発光層140Bの形成用材料となる液状体組成物のロスは少なく、正孔注入/輸送層140Aや発光層140Bは比較的安価にしかも安定して形成される。
更に、上記実施形態では、液滴吐出装置IJを用いた液滴吐出法により有機機能材料を成膜するように説明したが、液滴吐出法に限らず、例えばスピンコート法など他の塗布方法を用いることもできる。また、上記第2の液状体組成物を塗布する際にも他の塗布方法を用いることができる。
また、液状体組成物の生成工程や成膜工程は大気環境下で行ってもよいし、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。なお、組成物調整装置Sによる液状体組成物の生成工程や液滴吐出装置IJによる成膜工程は、クリーンルーム内でパーティクル及びケミカル的にクリーン度を維持された環境下で行うのが望ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本例では、図3及び図4に示した構成を備える有機ELディスプレイのサンプルを、層構成を異ならせて2種類作製し、その素子特性の評価を行った。各サンプルは、上記実施形態にて説明した有機EL素子の製造方法に準じて作製した。以下では、手順の要部のみを説明することとする。
まず、ガラス基板上にITOからなる陽極を形成した後、その陽極上に、ジクロロエタンに溶解させたPoly−TPD(Poly(N,N'-bis-(4-butylphenyl)-N,N'-bis(phenyl)benzidine)を塗布し、乾燥させて30nm厚さの正孔注入/輸送層を形成した。
次に、メタノールを添加したPEDOT(ポリチオフェン)水溶液を正孔注入/輸送層上に塗布し、乾燥させて30nm厚さの相溶防止層を形成した。
次に、ジクロロエタンに溶解したPFBT(ポリフルオレンベンゾチアジアゾール;Poly[(9,9-dihexylfluoren-2,7-diyl)-alt-co-(benzo[2,1,3]thiadiazole-4,7-diyl)])を相溶防止層上に塗布し、乾燥させて60nm厚さの発光層を形成した。
そして、陰極を蒸着により形成して、本発明に係る構成を備えるサンプル1を作製した。サンプル1の正孔注入/輸送層、相溶防止層、発光層のそれぞれの層厚を測定したところ、それぞれ30nm、30nm、60nmと目標層厚に一致しており、相溶解は全く生じていなかった。
次に、比較サンプル(サンプル2)として、相溶防止層を設けない以外は、上記サンプル1と同様の工程により有機ELディスプレイを作製した。サンプル2の正孔注入/輸送層、発光層の合計層厚を測定したところ75nmであった。目標とする合計層厚は90nm(30nm+60nm)であり、正孔注入/輸送層と発光層との間で相溶解が生じていることが確認された。
次に上記にて得られたサンプル1,2の有機ELディスプレイについて、表1に示すような素子特性の評価を行った。評価結果を表1に併記する。
表1に示すように、正孔注入/輸送層と発光層との間に相溶防止層を設けたサンプル1の有機ELディスプレイでは、輝度、視感効率、電流効率、輝度半減期(寿命特性)のいずれにおいても、サンプル2に対して極めて良好な結果が得られており、相溶防止層を設けることによる効果は明らかである。さらに、サンプル1では、発光層形成材料の本来の発光波長が得られており、相溶防止層を設けることで、発光スペクトルのずれも無くすことができ、もって高画質の表示が得られる有機ELディスプレイを実現できることがわかる。
Figure 2005129450
(実施例2)
次に、相溶防止層を設けない場合における、発光層と正孔注入/輸送層との相溶解に起因する素子特性の変化を検証するために、上記実施例1にて作製したサンプル2を基本構成とし、発光層を形成するために用いた溶液の濃度を変えて3種類のサンプル2a〜2cを作製した(表2参照)。
具体的な製造手順としては、まず、層厚30nmの正孔注入/輸送層を形成し、その後、溶液濃度の異なる発光層形成材料を用いて層厚60nmの発光層を形成した。このとき、溶液濃度が薄いほど(すなわち溶媒が多いほど)正孔注入/輸送層は発光層形成材料の液状組成物を構成する溶媒によって溶解され易くなり、その層厚が目標値(30nm)から目減りする。この層厚の減少割合を相溶性(%)とし、各サンプルについて算出すると、表2に示すように、0%〜50%となる。
尚、本実施例におけるサンプルの作製手順は、上記実施例1に準じて行っている。
上記にて得られたサンプル2a〜2cの素子特性の評価結果を、サンプル1,2の素子特性とともに表2に併記した。表2には、発光層材料による相溶解の割合が最も大きいサンプル2の測定結果によって規格化された値を記載している。
評価結果から、正孔注入/輸送層と発光層との相溶性が小さくなるにつれて、発光効率と寿命特性が向上していることが分かる。しかし、サンプル2a〜2cに比しても、正孔注入/輸送層と発光層との相溶解を完全に無くすために相溶防止層を設けたサンプル1でより良好な結果が得られており、異なるポリマー同士の相溶解を完全に無くすべく相溶防止層を設けることが、素子特性の向上に極めて有効であることが確認された。
Figure 2005129450
(電子機器)
本発明の有機EL素子を備えたデバイスは、表示部を備えた様々な電子機器に適用される。以下、本発明の電気光学装置を備えた電子機器の適用例について説明する。
図10は、本発明の電気光学装置を携帯電話に適用した例を示す斜視図であり、携帯電話1300は、本発明の電気光学装置を小サイズの表示部1301として備える。携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
なお、上述した例に加えて、他の例として、腕時計、モバイル型コンピュータ、液晶テレビ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。本発明の電気光学装置は、こうした電子機器の表示部としても適用できる。
図1は、第1実施形態の有機EL素子の断面構成図。 図2は、第2実施形態の有機EL素子の断面構成図。 図3は、有機ELディスプレイの回路構成図。 図4は、画素の平面構成図(a)、断面構成図(b)。 図5は、有機EL素子の製造装置の斜視構成図。 図6は、液滴吐出ヘッドの斜視構成図。 図7は、有機ELディスプレイの断面工程図。 図8は、有機ELディスプレイの断面工程図。 図9は、有機ELディスプレイの断面工程図。 図10は、電子機器の一例を示す斜視構成図。
符号の説明
10,11…有機EL素子、3…有機EL層(有機機能層)、4…陽極(第1の電極)、7…陰極(第2の電極)、181,182,185,186…相溶防止層

Claims (17)

  1. 第1の電極層と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、第2の電極層とを含む積層膜を具備した有機EL素子であって、
    前記積層膜のいずれかの層間に、隣接する層と異なる溶解性を有する相溶防止層が設けられていることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記有機機能層は、発光層と正孔注入/輸送層とを含んでなり、前記発光層と正孔注入/輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記有機機能層は、発光層と電子注入/輸送層とを含んでなり、前記発光層と電子注入/輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL素子。
  4. 前記有機機能層と、前記第2の電極層との間に前記相溶防止層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  5. 前記相溶防止層の層厚は、隣接する層の厚さの2倍以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  6. 前記相溶防止層の層厚は、30nm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  7. 前記相溶防止層は、電荷輸送性を有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  8. 前記相溶防止層は、導電性高分子を含んでいることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子。
  9. 前記相溶防止層は、絶縁性を有していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  10. 前記相溶防止層の層厚は、10nm以下であることを特徴とする請求項9に記載の有機EL素子。
  11. 前記相溶防止層は、水溶性材料からなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  12. 前記正孔注入/輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層とを含んでなり、前記正孔注入層と前記正孔輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられていることを特徴とする請求項2ないし11のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  13. 前記電子注入/輸送層は、電子注入層と電子輸送層とを含んでなり、前記電子注入層と電子輸送層との間に、前記相溶防止層が設けられていることを特徴とする請求項3ないし12のいずれか1項に記載の有機EL素子。
  14. 第1の電極層と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、第2の電極層とを含む積層膜を具備した有機EL素子の製造方法であって、
    前記有機機能層を液相法により形成するに際して、前記積層膜のいずれかの層間に、隣接する層と異なる溶解性を有する相溶防止層を設ける工程を含むことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  15. 前記相溶防止層を、液相法により形成することを特徴とする請求項14に記載の有機EL素子の製造方法。
  16. 前記相溶防止層を、水溶性材料を用いた液相法により形成することを特徴とする請求項15に記載の有機EL素子の製造方法。
  17. 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の有機EL素子を備えたことを特徴とする電子機器。
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