以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1及び図2はこの発明の実施の形態1に係る帯電装置を適用した画像形成装置を示す構成図である。図1はその画像形成装置の全体の概要を示し、図2はその画像形成装置における要部(作像装置など)を拡大して示している。
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばモノクロプリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、画像データに基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成手段の一例としての画像形成部2を備えている。
画像形成部2は、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する作像装置10と、作像装置10で形成されるトナー像を記録媒体の一例としての記録用紙5に転写する転写装置20と、転写装置20の転写位置Tに供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置50と、転写装置20で転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。なお、図1中、符号1aは支持構造部材、外装カバー等で形成される装置本体を示している。
作像装置10は、ブラック(K)色のトナー像を専用に形成する一つの作像装置で構成されている。この作像装置10は、装置本体1aの内部空間において所要位置に配置されている。
作像装置10は、図1に示されるように、回転する像保持体の一例としての感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光LBを照射して電位差のある静電潜像を形成する静電潜像形成手段としての露光装置13と、その静電潜像をブラック色(K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置14と、転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置15等である。
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない回転駆動装置から動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転可能に支持されている。
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電装置で構成される。帯電装置12には帯電用高圧電源によって帯電用電圧が印加される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、その現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。なお、帯電装置12の構成については、後述する。
露光装置13は、画像形成装置1に入力される画像の情報に応じて構成される光(矢付破線)LBを、帯電された後の感光体ドラム11の周面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置13には、潜像形成時になると画像形成装置1に任意の手段で入力される画像の情報(信号)が送信される。
現像装置14は、図2に示されるように、開口部と現像剤4の収容室が形成された筐体140の内部に、現像剤4を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロール141と、現像剤4を撹拌しながら現像ロール141を通過させるよう搬送する図示しないスクリューオーガー等の撹拌搬送部材142,143と、一方の撹拌搬送部材142が収容された第1の収容室と他方の撹拌搬送部材143が収容された第2の収容室を仕切る仕切り壁144と、現像ロール141に保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材145などを配置して構成されたものである。この現像装置14には、その現像ロール141と感光体ドラム11の間に現像用電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロール141や撹拌搬送部材142,143は、図示しない回転駆動装置からの動力が伝達されて所要の方向に回転する。さらに、上記現像剤4としては、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。なお、図1中、符号146は現像装置14に少なくともトナーを含む現像剤を供給する現像剤供給装置を模式的に示したものである。
転写装置20は、転写位置Tにおいて感光体ドラム11の周面に接触し回転するとともに転写用電圧が供給される転写ロールを備えた接触型の転写装置である。転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
ドラム清掃装置15は、図2に示されるように、図示しない容器状の本体の内部に配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板151を備え、清掃板151で残留トナー等の付着物を回収して容器状の本体内部に収容するよう構成されている。清掃板151としては、ゴム等の材料からなる板状の部材(例えばブレード)が使用される。
定着装置40は、表面温度が予め定められた温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるロール形態又はベルト形態の加熱用回転体41と、この加熱用回転体41に所要の圧力で接触して回転するロール形態又はベルト形態の加圧用回転体42などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱用回転体41と加圧用回転体42が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部となる。
給紙装置50は、装置本体1aの下方側の位置に存在するように配置される。この給紙装置50は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体51と、用紙収容体51から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置52a,52bとで主に構成されている。用紙収容体51は、例えば、装置本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられている。
給紙装置50と転写装置20との間には、給紙装置50から送り出される記録用紙5を転写位置Tまで搬送する複数の用紙搬送ロール対53,54や搬送ガイド材55で構成される給紙搬送路56が設けられている。給紙搬送路56において転写位置Tの直前の位置に配置される用紙搬送ロール対54は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。
転写装置20の下流側には、当該転写装置20によりトナー像が転写された記録用紙5を定着装置40へと搬送する搬送ガイド材56が配置されている。また、定着装置40の入口には、記録用紙5を加熱用回転体41と加圧用回転体42が接触する定着処理部へと案内する入口ガイド部材43が、その出口には、定着処理が施された記録用紙5を案内する出口ガイド部材44,45がそれぞれ設けられている。
定着装置40の下流側には、当該定着装置40によりトナー像が定着された記録用紙5を、装置本体1aの上部に配置された用紙排出部57に排出するための用紙排出ロール58を備えた用紙排出搬送路59が設けられている。
図1中、符号100は、画像形成装置1の動作を制御する制御装置を示している。
<画像形成装置の基本的な動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
前記作像装置10を使用して、ブラック色(K)のトナー像からなるモノクロ画像を形成するときの画像形成動作を説明する。
画像形成装置1は、画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、作像装置10、転写装置20、定着装置40等が始動する。
そして、作像装置10においては、まず感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、帯電装置12が感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の信号に基づいて発光される光LBを照射し、その表面に所要の電位差で構成される静電潜像を形成する。
続いて、現像装置14が、感光体ドラム11に形成された静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電されたトナーを供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、感光体ドラム11に形成された静電潜像は、トナーで現像されたトナー像として顕像化される。
続いて、作像装置10の感光体ドラム11上に形成されたトナー像が転写位置Tまで搬送されると、転写装置20が、そのトナー像を記録用紙5に対して転写させる。
また、転写が終了した作像装置10では、ドラム清掃装置15が感光体ドラム11の表面に残留するトナー等の付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、作像装置10は次の作像動作が可能な状態にされる。
一方、給紙装置50では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路56に送り出す。給紙搬送路56では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対54が記録用紙5を転写時期に合わせて転写位置Tに送り出して供給する。
続いて、トナー像が転写された記録用紙5は、搬送ガイド材56を介して定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱用回転体41と加圧用回転体42との間の定着処理部に入口ガイド部材43を介して転写後の記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙5に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、用紙排出搬送路59を介して用紙排出ロール58により、例えば画像形成装置1の上部に設けられた用紙排出部57に排出される。
以上の動作により、モノクロの画像が片面に形成された記録用紙5が出力される。
<帯電装置の構成>
図3はこの発明の実施の形態1に係る帯電装置を示す構成図である。
帯電装置12は、図3に示されるように、無端円筒状のフィルム基材121の外周面に導電性繊維122が植毛されてなる帯電部材120と、帯電部材120が感光体ドラム11の表面に接触部で接触して従動回転するよう当該帯電部材120を支持するとともに、当該接触部におけるフィルム基材121が感光体ドラム11の表面に沿った形状に弾性変形するよう当該帯電部材120を押圧する支持押圧部材123と、帯電部材120の導電性繊維122に帯電用の電圧を印加するための電圧印加手段の一例としての給電部材124とを備えている。フィルム基材121は、図5に示されるように、例えば、外力が作用しない自由形状が外径Dの円筒形状となるよう形成される。フィルム基材121は、必ずしも導電性を有することが要求されず、絶縁性の材料からなるフィルム部材をそのまま使用することができる。フィルム基材121の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリフッ化ビリニデン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、PFA、ETFE、CTFE等のフッ素系樹脂などの合成樹脂、あるいはシリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴムを挙げることができる。この実施の形態では、フィルム基材121としてポリエチレンテレフタレートからなる円筒形状のフィルムを用いている。
なお、フィルム基材121は、上述した合成樹脂や合成ゴム等の材料から直接的に無端円筒状に形成しても勿論よいが、結果的に無端円筒状に形成されれば良い。このフィルム基材121としては、例えば、上述した合成樹脂や合成ゴム等の材料を所定の幅を有するテープ状に形成した後、当該テープ状に形成された材料を円筒状又は円柱状の部材に螺旋状に隙間無く巻き付けることで、結果的に無端円筒状に形成したものを用いても良い。
また、フィルム基材121の厚さは、特に限定されるものではないが、像保持体(被帯電体)としての感光体ドラム11の回転に追従して回転可能な可撓性を有するものである。フィルム基材121は、円筒形状に形成された場合であっても可撓性を有しない場合、感光体ドラム11の表面に接触したときに当該感光体ドラム11の回転方向に沿った表面形状(円弧状)に倣った形状に変形することができず、感光体ドラム11表面との接触が不十分となる虞れがある。この実施の形態では、外径が10〜12mmの円筒形状に形成された相対的に厚さが薄い50μm程度の厚さを有するポリエチレンテレフタレート製のフィルム基材121を用いている。
フィルム基材121の外周面には、導電性繊維122が密に植毛されている。導電性繊維122としては、例えば、ナイロン、レーヨンまたはポリエステル等の合成樹脂にカーボンブラック等の導電材料を分散させたものを紡糸することによって体積抵抗率が調整された合成樹脂製の繊維を用いることができる。この実施の形態では、導電性繊維122としてカーボンブラックを分散させたナイロン製の繊維を採用している。導電性繊維122の体積抵抗率は、例えば103〜1010Ω・cmに設定される。体積抵抗率が102Ω・cm以下であると火花放電が発生し易く、体積抵抗率が1011Ω・cm以上であるとドット状の帯電不良を起こし易い。この実施の形態では、体積抵抗率が106〜107Ω・cm程度の導電性繊維122を用いている。
また、導電性繊維122の長さは、例えば、0.5〜2.0mm程度に設定される。導電性繊維122の太さは、例えば、0.5〜10d程度に設定される。この実施の形態では、太さ2dの導電性繊維122を用いている。また、導電性繊維122の植毛密度は、例えば、10〜20万本/inch2に設定されるが、これに限定されるものではない。
導電性繊維122は、図4に示されるように、フィルム基材121の外周にアクリル系、ウレタン系、エポキシ系等の導電性接着剤125を塗布した状態で、静電植毛によって略均一な密度となるよう植毛される。導電性繊維122は、フィルム基材121の外周面に略垂直に植毛しても良いが、導電性繊維122の先端122aを帯電部材120の回転方向Bに沿った下流側に向けて傾斜した状態若しくは回転方向Bに沿った方向と略平行に寝た状態で植毛している。その理由は、導電性繊維122をフィルム基材121の外周面に略垂直、又は導電性繊維122の先端122aを帯電部材120の回転方向Bに沿った上流側に向けて傾斜した状態で植毛した場合、感光体ドラム11の表面に接触して導電性繊維122が倒れた状態となった後、感光体ドラム11の表面から離間する際、導電性繊維122の先端122aが感光体ドラム11の表面を摺擦することとなるため、感光体ドラム11の帯電電位にバラツキが発生しやすいためである。
なお、導電性繊維122は、その先端122aが帯電部材120の回転方向Bに沿った下流側に向けて傾斜した状態で直接植毛しても良いが、導電性繊維122をフィルム基材121の外周面に略垂直に植毛した後、機械的な力及び/又は熱を加えることによって、その先端122aが帯電部材120の回転方向Bに沿った上流側に向けて傾斜した状態となるように植毛しても良い。また、感光体ドラム11の帯電電位に生じるバラツキが問題とならないレベルであれば、導電性繊維122をフィルム基材121の外周面に略垂直、又は導電性繊維122の先端122aが帯電部材の回転方向Bに沿った下流側に向けて傾斜した状態で植毛しても良い。
支持押圧部材123は、例えば、合成樹脂等の絶縁性の材料により帯電部材120の外周を囲むように感光体ドラム11側の面が開口した断面矩形の枠体状に形成されている。支持押圧部材123は、図3に示されるように、感光体ドラム11の回転方向Aに沿った下流側に配置され、帯電部材120の感光体ドラム11の回転方向Aに沿った下流側への移動を規制する第1の規制部としての平板状に形成された第1の規制板部123aと、感光体ドラム11の表面と対向するよう配置され、帯電部材120を感光体ドラム11の表面に向けて押圧するよう規制する第2の規制部としての平板状に形成された第2の規制板部123bと、感光体ドラム11の回転方向Aに沿った上流側に配置され、帯電部材120の脱落を規制する第3の規制部としての平板状に形成された第3の規制板部123cを備えている。
また、第2の規制板部123bは、感光体ドラム11表面との間隙Gが帯電部材120の自由形状(円筒形状)における外径D(図5参照)よりも小さく(D>G)設定されており、第2の規制板部123bの内面が帯電部材120に当接することで、上述したように帯電部材120を感光体ドラム11の表面に向けて押圧するよう配置されている。第2の規制板部123bにより押圧される帯電部材120は、当該押圧に伴って感光体ドラム11の外周面に沿った形状に弾性変形し、感光体ドラム11の外周面に対して所要の接触幅Wを以て圧接する。
また、支持押圧部材123の第1の規制板部123aの内面には、帯電部材120に帯電用の電圧を印加する電圧印加手段の一部を構成する給電部材124が、帯電部材120の表面に長手方向に沿った略全長にわたり接触するよう配置されている。給電部材124は、帯電部材120に帯電用の電圧を印加することが可能なものであれば、その形状は任意であり、例えば、板状、棒状、ループ状、ブラシ状、発泡体状など種々のものが用いられる。また、給電部材124は、帯電部材120の導電性繊維122より体積抵抗率が低い材質からなるものであれば良く、例えば、金属や導電性が付与された合成樹脂、合成ゴム、合成発泡体などから形成することができる。この実施の形態では、平板状の給電部材124が用いられている。
給電部材124には、電圧印加手段の一例としての帯電用高圧電源125(図2参照)によってトナーの帯電極性と同極性(マイナス極性)の所要の帯電電圧が印加される。なお、給電部材124には、交流電圧を重畳した直流電圧を印加するように構成しても良い。
上記の如く構成される帯電装置12は、帯電部材120の導電性繊維122に給電部材124を介して帯電用高圧電源125によって帯電用電圧を印加することにより、フィルム基材121の表面に静電植毛された導電性繊維122が感光体ドラム11の表面に静電気力により吸着された状態で、帯電部材120が感光体ドラム11表面の移動に伴って従動回転する。その際、帯電部材120は、当該帯電部材120と感光体ドラム11の表面とが接触する接触領域の回転方向に沿った上流側及び下流側に形成される微小間隙に生じる微少放電により、感光体ドラム11の表面を所要の電位に帯電する。
ところで、この帯電装置12は、帯電部材120を感光体ドラム11の表面に対して押圧しない場合、帯電部材120の導電性繊維122が静電的に感光体ドラム11の表面に吸着する静電吸着力のみにより、感光体ドラム11の回転に伴って矢印B方向に沿って従動回転する。そのため、帯電部材120の導電性繊維122と感光体ドラム11表面との間に作用する静電吸着力が不十分であると、帯電部材120が感光体ドラム11の回転に追従することができず、帯電部材120に従動不良が発生する虞れがある。このように、帯電部材120に従動不良が発生すると、感光体ドラム11の表面電位に帯電ムラ等が生じ、画質低下の原因となる。
更に説明すると、帯電部材120と感光体ドラム11の表面との接触面積が小さく、帯電部材120の導電性繊維122と感光体ドラム11表面との間に作用する静電吸着力が不十分であると、図6に示されるように、導電性繊維122のこし(剛性)の力による反発力で導電性繊維122が感光体ドラム11の表面に十分に接触せず、フィルム基材121と感光体ドラム11の間に隙間が生じ、帯電部材120と感光体ドラム11表面との密着性が低下し、帯電部材120の従動不良が発生し易くなる。なお、図6(b)では、便宜上、模式的に導電性繊維122が1本のみ図示されているが、フィルム基材121の表面には、導電性繊維122が密に植毛されていることは勿論である。
また、帯電部材120と感光体ドラム11表面との密着性が低下し、帯電部材120の従動不良が発生すると、帯電部材120と感光体ドラム11表面との間に速度差が生じ、帯電部材120が感光体ドラム11の表面を摺擦することとなり、帯電部材120の導電性繊維122に付着したトナーやトナーの外添剤が感光体ドラム11の表面に擦り付けられることでフィルム状に転移する所謂フィルミングが生じる虞れがある。特に、かかるトナーや外添剤によるフィルミングは、ドラム清掃装置15を備えない所謂クリーナーレス方式を採用した画像形成装置1において顕著に発生する。
そこで、この実施の形態では、上述したように、帯電部材120を支持押圧部材123によって感光体ドラム11の表面に押圧させるように構成している。このように構成することで、帯電部材120のフィルム基材121を感光体ドラム11の表面形状に倣った形状に弾性変形させ、帯電部材120のフィルム基材121を所要の接触幅Wをもって感光体ドラム11の表面に接触させるように構成している。
<画像形成装置の特徴部分の動作>
画像形成装置1は、上述したように、画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、作像装置10、転写装置20、定着装置40等が始動する。
そして、作像装置10においては、まず感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、帯電装置12が感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電する。
その際、帯電装置12は、図3に示されるように、帯電部材120を支持押圧部材123によって感光体ドラム11の表面に押圧するよう支持している。このように構成することで、帯電部材120のフィルム基材121は、感光体ドラム11の表面形状に倣った形状に弾性変形し、帯電部材120のフィルム基材121が所要の接触幅Wをもって感光体ドラム11の表面に接触する。そのため、帯電装置12では、帯電部材120の外径に比較して、当該帯電部材120と感光体ドラム11表面との間に静電吸着力が作用する領域が拡大するとともに、当該静電吸着力に加えて押圧に伴う摩擦力を作用させることができ、帯電部材120に従動不良が発生することが防止乃至抑制される。その結果、帯電部材120の従動不良に起因したトナーやトナーの外添剤等の付着物が感光体ドラム11の表面にフィルム状に付着して、当該付着物のフィルミングによる画質欠陥の発生が防止乃至抑制される。
また、この実施の形態では、給電部材124を感光体ドラム11の回転方向に沿った下流側に位置する支持押圧部材123の第1の規制板部123aの内面に配置しているため、給電部材124から感光体ドラム11の表面に接触する帯電部材120までの距離が相対的に短く、給電部材124から帯電部材120の放電領域に効率良く帯電用電圧が印加され、帯電性能が向上される。
<実験例1>
次に、本発明者らは、上記実施の形態に係る帯電装置12を適用した画像形成装置1の効果を確認するため、図2に示されるような作像装置10を備えたベンチモデルを試作し、帯電装置12の帯電部材120を支持押圧部材123により感光体ドラム11の表面に対して押圧するよう構成し、A4サイズの記録用紙5に対して画像密度5%にて50KPV(5万枚)の通紙テストを行い、定期的に中間調の画像をプリントして、帯電装置120の感光体ドラム11に対する従動不良に起因して感光体ドラム11の表面に発生するフィルミング及び当該フィルミングによる画質欠陥の状態を目視により確認する実験を行った。
なお、帯電部材120への印加電圧は、機器の電位設定によっては比較的低い電位設定が選択される場合があることを考慮して、比較的低い電圧である−930Vに設定した。
<比較例1〜3>
また、比較例1〜3として図7(a)〜(c)に示されるように、帯電部材120を静電吸着力のみ又は静電吸着力と自重のみによって感光体ドラム11の表面に接触するように配置した帯電装置12を用い、A4サイズの記録用紙5に対して画像密度5%にて50KPV(5万枚)の通紙テストを行い、定期的に中間調の画像をプリントして、感光体ドラム11の表面に発生するフィルミングの状態を目視により確認した。なお、帯電部材120への印加電圧は、実験例と同様、−930Vに設定した。
図7(a)に示される比較例1は、無端状に形成された帯電部材120をその内部に配置された円柱状の給電部材124によって支持するとともに、帯電部材120を感光体ドラム11の表面接触させた状態で、導電性を有するフィルム基材121を介して導電性繊維122に給電するように構成したものである。
また、図7(b)に示される比較例2は、無端状に形成された帯電部材120をその外周に配置された支持部材123によって押圧することなく支持し、支持部材123の感光体ドラム11の回転方向に沿った下流側の内面に配置された給電部材124を介して導電性繊維122に給電するように構成したものである。
さらに、図7(c)に示される比較例3は、比較例2と同様に、無端状に形成された帯電部材120をその外周に配置された支持部材123によって押圧することなく支持し、支持部材123の感光体ドラム11の表面と対向する内面に配置された給電部材124を介して導電性繊維122に給電するように構成したものである。
図8は実験例及び比較例1〜3の結果を示す図表である。
図8から明らかなように、帯電装置12の帯電部材120を支持押圧部材123により感光体ドラム11の表面に対して押圧するよう構成した実験例では、帯電部材120への印加電圧が−930Vと比較的低い電圧であっても、帯電部材120が感光体ドラム11の表面に対して良好に従動回転し、従動不良が発生しないか又は従動不良の発生が問題とならないレベルであり、感光体ドラム11表面へのトナーや外添剤のフィルミング及び当該フィルミングに起因した画質欠陥は未発生であった。
これに対して、比較例1〜3の場合には、図8から明らかなように、帯電部材120の感光体ドラム11表面に対する従動不良が発生し、感光体ドラム11の表面にトナーや外添剤のフィルミング及び当該フィルミングに起因した画質欠陥が顕著に発生した。
[実施の形態2]
図9はこの発明に係る帯電装置の実施の形態2を示す構成図である。
この実施の形態2では、図9に示されるように、給電部材124を支持押圧部材123の第2の規制板部123bの内面に配置している。そのため、給電部材124として導電性の発泡弾性体を用いた場合には、給電部材124の弾性変形力を利用して帯電部材120が感光体ドラム11の表面に押圧される。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
[実施の形態3]
図10はこの発明に係る帯電装置の実施の形態3を示す構成図である。
この実施の形態3では、図10に示されるように、支持押圧部材123が、帯電部材120の外周面と部分的に接触することで当該帯電部材120との接触面積を低減させる接触面積低減部を有するように構成されている。また、この接触面積低減部としては、支持押圧部材123の内面に設けられた複数の凹凸からなるものが用いられている。
更に説明すると、この実施の形態3では、支持押圧部材123の第1及び第2の規制板部の内面に、円柱形状や角柱形状の凸部126が帯電部材120の長手方向及び周方向に沿って複数設けられるよう構成されている。なお、図中、凸部126が設けられていない領域が凹部に相当する。
また、支持押圧部材123の第1の規制板部123bには、帯電部材120と接触する位置に形成された凸部126の表面に、複数の給電部材124が積層乃至蒸着等の手段によって設けられている。これら複数の給電部材124は、互いに接続されている。
このように、上記実施の形態3では、支持押圧部材123の第1及び第2の規制板部123a,123bの内面に複数の凸部が設けられているため、これらの第1及び第2の規制板部123a,123bの内面と帯電部材120との接触面積が低減される。そのため、この実施の形態3では、第1及び第2の規制板部123a,123bの内面と帯電部材120との接触抵抗を減少させることができ、支持押圧部材123によって帯電部材120を感光体ドラム11の表面に押圧した場合であっても、帯電部材120に従動不良が発生するのが防止乃至抑制される。
また、帯電部材120の表面に植毛された導電性繊維122は、第1及び第2の規制板部123a,123bの内面に設けられた複数の凸部126に接触することにより、当該導電性繊維122に付着したトナーやトナーの外添剤等の付着物が掻き落とされ、トナーや外添剤等の導電性繊維122に対するフィルミング、或いは感光体ドラム11の表面に対するフィルミングが発生するのが長期間にわたり抑制される。
なお、支持押圧部材の第1及び第2の規制板部123a,123bに設けられる複数の凹凸126としては、円柱形状や角柱形状の凸部に限定されるものではなく、図11(a) (b)に示されるように、帯電部材120の長手方向に沿って長尺に形成された複数本の凸部126などを用いても良く、その形状は任意に設定することができる。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
[実施の形態4]
図12はこの発明の実施の形態4に係る帯電装置を示す構成図である。
この実施の形態4では、図12に示されるように、接触面積低減部として、支持押圧部材に設けられた複数の貫通穴からなるものを備えるように構成されている。
更に説明すると、この実施の形態4では、図13(a)に示されるように、支持押圧部材123の第1及び第2の規制板部123a,123bに、帯電部材120の長手方向に沿って細長く形成された貫通穴127が、帯電部材120の回転方向に沿った複数設けられている。
また、支持押圧部材123の第2の規制板部123bには、帯電部材120と接触する位置の内面に複数の給電部材124が積層乃至蒸着等の手段によって設けられている。これら複数の給電部材124は、互いに接続されている。
このように、上記実施の形態4では、支持押圧部材123の第1及び第2の規制板部123a,123bに複数の貫通穴127が設けられているため、これらの第1及び第2の規制板部の123a,123b内面と帯電部材120との接触面積が低減される。そのため、この実施の形態4では、第1及び第2の規制板部123a,123bの内面と帯電部材120との接触抵抗が減少され、支持押圧部材123によって帯電部材120を感光体ドラム11の表面に押圧した場合であっても、帯電部材120に従動不良の発生が防止乃至抑制される。
また、帯電部材120の表面に植毛された導電性繊維122は、第1及び第2の規制板部123a,123bに設けられた複数の貫通穴127のエッジ部に接触することにより、当該導電性繊維122に付着したトナーやトナーの外添剤等の付着物が掻き落とされ、トナーや外添剤等の導電性繊維122に対するフィルミング、或いは感光体ドラム11の表面に対するフィルミングの発生が長期間にわたり抑制される。
図13(b)〜(e)は支持押圧部材の第1及び第2の規制板部に設けられる複数の貫通穴の他の実施形態をそれぞれ示すものである。
支持押圧部材の第1及び第2の規制板部123a,123bに設けられる複数の貫通穴としては、図13(b)に示されるように、帯電部材120の回転方向に沿って細長い矩形状に形成された貫通穴127を、帯電部材120の長手方向に沿って複数設けたものが用いられる。
また、支持押圧部材の第1及び第2の規制板部に設けられる複数の貫通穴としては、図13(c)に示されるように、帯電部材120の長手方向に沿って傾斜した状態で細長い矩形状に形成された貫通穴を用いても良い。
さらに、支持押圧部材123の第1及び第2の規制板部123a,123bに設けられる複数の貫通穴としては、図13(d)(e)に示されるように、第1及び第2の規制板部123a,123bに一様に設けられる平面円形状や平面三角形状等の貫通穴127を用いるように構成しても良い。
<実験例2〜4>
次に、本発明者らは、上記実施の形態1,3,4に係る帯電装置12を適用した画像形成装置1の効果を確認するため、図2に示されるような作像装置10を備えたベンチモデルを試作し、帯電装置12の帯電部材120を支持押圧部材123により感光体ドラム11の表面に対して押圧するよう構成し、A4サイズの記録用紙5に対して画像密度5%にて実験例1よりも多い100KPV(10万枚)の通紙テストを行い、定期的に中間調の画像をプリントして、帯電装置120の感光体ドラム11に対する従動不良に起因して感光体ドラム11の表面に発生するフィルミング及び当該フィルミングによる画質欠陥の状態を目視により確認する実験を行った。
なお、帯電部材120への印加電圧は、機器の電位設定によっては比較的低い電位設定が選択される場合があることを考慮して、比較的低い電圧である−930Vに設定した。
また、実験例2は、図3に示される実施の形態1に係る帯電装置12を、実験例3は、図10及び図11(a)に示される実施の形態3に係る帯電装置12を、実験例4は、図12及び図13(a)に示される実施の形態4に係る帯電装置12をそれぞれ使用した。
図14は実験例2〜4の結果を示す図表である。
図14から明らかなように、実施の形態1に係る帯電装置12を用いた実験例2では、支持押圧部材123の内壁との摩擦による従動不良に起因した導電性繊維及び感光体ドラム表面に対するフィルミングが若干発生したが、実使用上は問題のないレベルであった。
これに対して、実施の形態3,4に係る帯電装置12を用いた実験例3,4では、支持押圧部材123の内壁との摩擦による従動不良に起因した導電性繊維及び感光体ドラム表面に対するフィルミングが未発生であり、良好な結果が得られることが判った。
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
[実施の形態5]
図15はこの発明の実施の形態5に係る帯電装置を示す構成図である。
この実施の形態5では、図15に示されるように、帯電部材120の内周に接触するように配置された円柱形状の給電部材124によって帯電部材120に帯電用電圧を印加するように構成されている。なお、この実施の形態5では、フィルム基材121として導電性を有する材料からなるものが用いられている。
このように構成した場合には、支持押圧部材123に凹凸126や貫通穴127を設けた場合であっても、帯電部材120に容易に帯電用電圧が印加される。