JP2016059386A - 遠心血液ポンプの駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハウジング内の血液の性状に関する情報を取得するために設けられた光ファイバの曲げ限界に対する余裕を拡大できる遠心血液ポンプの駆動装置を提供する。【解決手段】駆動装置3は透光性を有するハウジング4を備えた遠心血液ポンプ2が装着された状態でインペラ5を回転駆動する。駆動装置3は、遠心血液ポンプ2が装着された状態で投光位置Aにハウジング4の外部から検査光Laを投光するための投光用光ファイバ42と、検査光Laの反射光Lbを受光するための受光用光ファイバ43とを備え、これらの光ファイバ42、43は磁石カバー27に形成された溝28内に収められている。溝28は磁石カバー27に存在する突出部27bの各縁Ei、Eoを、回転軸線Axの方向から見て磁石カバー27の半径方向に対して傾斜する方向に向かって横切るようにして磁石カバー27に形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、体外循環回路で使用される遠心血液ポンプを駆動する駆動装置に関する。
体外循環回路で使用される遠心血液ポンプが従来から広く知られている。遠心血液ポンプは血液を送液する装置のため、ハウジングの内部に血栓が付着する場合がある。特に、軸受がインペラの回転軸を回転支持する箇所及びその近くには血液が淀み易く血栓が付着し易いことが知られている。
従来、体外循環中に遠心血液ポンプの異常を知る方法は異音の発生やその発生後に起こる軸受の摩擦増加に伴うインペラの回転速度低下等の情報を取得することに限られていた。遠心血液ポンプに異音が発生する場合は既に遠心血液ポンプの劣化が進行していることを示唆するので、異音の発生を遠心血液ポンプの交換時期の判定項目とすることが多い。遠心血液ポンプの異音の発生はハウジング内への血栓付着の後に、あるいは溶血の急激な増加の後に起こる場合が多いと考えられている。そこで、遠心血液ポンプ内の血栓付着や溶血の発生を事前に予測するために有用な情報を得ることができれば、血栓付着や溶血等の発生前に抗凝固療法の変更や遠心血液ポンプの交換などの対策を取ることができる。
遠心血液ポンプはそのハウジングが透光性を有する透明材料で構成されている場合が多いが、このような素材のハウジングであっても体外循環中にはハウジング内が血液で満たされているのでハウジング内部を目視で確認することは困難である。そこで、光学的手法を利用して血液の状態を非接触で観察する方法として、送液路を流れる血液の性状を、光ファイバを利用した光学的センサで検出する方法が知られている(非特許文献1及び2参照)。
また、遠心血液ポンプである人工心臓内の血栓を検出する装置として、光ファイバプローブを、その先端部がインペラを回転支持するピボット軸受の近辺に向くように配置した装置が知られている(特許文献1)。
特開2002−345787号公報
特許文献1の装置は、人工心臓のモータ固定子に、ピボット軸受が位置する中心に向かって直線的に延びる溝が形成され、その溝内に光ファイバプローブが配置されている。このため、その中心に向かう溝の長さが最短となる利点がある。しかしながら、光ファイバを収める溝が形成される形成面が平面でなく、例えば中心から離れた位置に周方向に延びる突出部や凹み部等の凹凸部が存在する形成面の場合には、この溝は凹凸部の縁を直角に横切りながら凹凸部に沿うように形成されるのでその縁における溝の曲率が最大となる。したがって、このような溝内に光ファイバを収めようとすると光ファイバの曲げ限界に対する余裕が不足するおそれがある。
そこで、本発明は、ハウジング内の血液の性状に関する情報を取得するために設けられた光ファイバの曲げ限界に対する余裕を拡大できる遠心血液ポンプの駆動装置を提供することを目的とする。
本発明の遠心血液ポンプの駆動装置は、被駆動側磁性体(16)が設けられたインペラ(5)を内部に収容し、かつ前記インペラの回転軸(10)を回転自在に支持する軸受(11)が設けられた透光性を有するハウジング(4)を備えた遠心血液ポンプ(2)が着脱されるとともに、電動モータ(23)と、前記被駆動側磁性体を吸引する駆動側磁石(26)が設けられて前記電動モータにて回転軸線(Ax)の回りに回転駆動される磁石駆動部(25)と、前記回転軸線よりも外側に位置して周方向に延びる凹凸部(27b)が存在し、かつ前記磁石駆動部を覆う磁石カバー(27)と、前記遠心血液ポンプが装着された状態で前記軸受が前記回転軸を支持する位置又はその近くに設定された投光位置(A)に前記ハウジングの外部から検査光(La)を投光する投光手段(40、42)と、前記ハウジングの外部に出た前記検査光の反射光(Lb)、散乱光(Lx)又は透過光(Ly)を受光して電気信号に変換する受光手段(41、43)と、を備え、前記遠心血液ポンプが装着された際に前記インペラと前記磁石駆動部とが前記ハウジングと前記磁石カバーとを介在させた状態でマグネットカップリングされる遠心血液ポンプの駆動装置(3)であって、前記投光手段は、光源(40)と、前記光源が発光する光を前記検査光として導くとともに、前記磁石カバーに形成された溝(28)内に収められた投光用光ファイバ(42)とを有し、前記溝は、前記磁石カバーに存在する前記凹凸部の縁(Ei、Eo)を、前記回転軸線の方向から見て前記磁石カバーの半径方向(Dr)に対して傾斜する方向(Di、Do)に向かって横切るようにして前記磁石カバーに形成されている、ものである。
この駆動装置によれば、インペラの回転軸を軸受が支持する位置又はその近くに設定された投光位置にハウジングの外部から検査光を投光し、その検査光の反射光、散乱光又は透過光を電気信号に変換できる。この電気信号を監視することにより、ハウジング内の血液の性状に関する情報を遠心血液ポンプの使用中に取得できる。また、検査光を投光し難い箇所への検査光の投光を、磁石カバーに形成された溝内に収められた投光用光ファイバを利用することによって省スペースで容易に実施できる。投光用光ファイバを収める溝は、磁石カバーに存在する凹凸部の縁を磁石カバーの半径方向に対して傾斜する方向に向かって横切るので、凹凸部の縁を半径方向に向かって横切る場合と比較して、その縁における溝の曲率が小さくなる。これにより、溝内に収められる投光用光ファイバの曲げ限界に対する余裕を拡大できる。その結果、投光用光ファイバとして使用可能な光ファイバの選択の幅が広がるので設計の自由度が向上する。
受光手段の構成は特に制限されないが、例えば、本発明の駆動装置の一態様においては、前記受光手段は、前記反射光、前記散乱光又は前記透過光を導く受光用光ファイバ(43)と、前記受光用光ファイバが導いた前記反射光、前記散乱光又は前記透過光を受光して電気信号に変換する光電変換手段(41)とを有し、前記受光用光ファイバは、前記磁石カバーに形成された前記溝内に収められてもよい。この態様によれば、受光用光ファイバが投光用光ファイバと同じ溝内に設けられているので、反射光等の受光を省スペースで容易に実施できる。また、投光用光ファイバと同様に、受光用光ファイバの曲げ限界に対する余裕を拡大できるので、受光用光ファイバとして使用可能な光ファイバの選択の幅が広がり設計の自由度が向上する。しかも、投光用光ファイバ及び受光用光ファイバが磁石カバーに形成された溝内に設けられているので、遠心血液ポンプの着脱に影響を与えることもないし、遠心血液ポンプに手を加える必要もない。したがって、投光手段及び受光手段を駆動装置に設けることによって遠心血液ポンプの実用性が低下することがない。
本発明の駆動装置の一態様において、前記溝は、前記磁石カバーの表面(27a)に開口し、かつ前記投光用光ファイバ又は前記受光用光ファイバが収められた状態で前記表面と同一面となるように充填材にて充填されてもよい。この態様によれば、磁石カバーの表面と同一面となるように充填材にて溝が充填されるので、遠心血液ポンプの着脱への影響をより低減できるし、見栄えも向上する。
本発明の駆動装置の一態様において、前記投光用光ファイバ及び前記受光用光ファイバとして兼用される一本の投受光用光ファイバをさらに備えてもよい。これにより、一本の投受光用光ファイバによって検査光及び反射光のそれぞれを導くことができるので、部品点数の削減とさらなる省スペース化を実現できる。
なお、本発明の駆動装置において、血液中の赤血球の密集度に相関する特性を持つ反射光、散乱光又は透過光が得られる限度において検査光の種類には特に制限はない。もっとも、検査光として可視光や近赤外光を使用することによって、非侵襲性つまり人体への無害性を確保しつつ血液の性状に関する情報を取得できるので、血液を扱う遠心血液ポンプを駆動する駆動装置として好ましい。また、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
以上説明したように、本発明の駆動装置によれば、検査光の投光に利用する投光用光ファイバを収める溝が、磁石カバーに存在する凹凸部の縁を磁石カバーの半径方向に対して傾斜する方向に向かって横切るので、凹凸部の縁を半径方向に向かって横切る場合と比較して、その縁における溝の曲率が小さくなる。これにより、溝内に収められる投光用光ファイバの曲げ限界に対する余裕を拡大できる。
本発明の一形態に係る駆動装置に遠心血液ポンプが装着された遠心血液ポンプシステムの全体構成を示した図。 図1に示された遠心血液ポンプの上面図。 図2のIII-III線に関する遠心血液ポンプの断面図。 図1のVI部を拡大するとともに監視装置の構成を示した図。 図4の矢印V方向から磁石カバーを見た状態を示した図。 検査光の散乱光及び透過光の様子並びに投光用及び受光用光ファイバの配置の様子を模式的に示した図。
図1の遠心血液ポンプシステム1は体外循環回路に組み込まれて使用される。遠心血液ポンプシステム1は、遠心血液ポンプ2と、遠心血液ポンプ2又はこれと同規格のポンプを着脱できる駆動装置3とを備えている。
図2及び図3に示したように、遠心血液ポンプ2は概略円形状のハウジング4とハウジング4の内部に収容されるインペラ5とを備える。ハウジング4はポリカーボネート等の透明な素材で構成されていて透光性を有している。ハウジング4には血液が流入する流入ポート6と、血液が流出する流出ポート7とが形成されており、これらのポート6、7には不図示の送液用チューブが接続される。なお、図1にはハウジング4の流入ポート6にキャップ6aが装着された状態が図示されている。
インペラ5は全体として円板状に形成されておりその中心に設けられた回転軸10を有している(図3参照)。回転軸10はハウジング4の底部に設けられた軸受11にて回転自在に支持されている。軸受11は回転軸10との摩擦抵抗を低減するため、ハウジング4に固定された軸受本体11aと、特によく研磨されていて、回転軸10の半球状の先端部10aに接する支持面11bとを有している。回転軸10の先端部10aは窪み10bに対して回転しないように固定されている。
図2に示したように、インペラ5には、流入ポート6に開口し、かつインペラ5の中央部から放射状に延びてインペラ5の縁部で流路を拡大させながら開口する複数の血液流路15が形成されている。これらの血液流路15は互いにインペラ5の中心に関して点対称の形状を有している。インペラ5が回転すると流入ポート6から流入した血液は各血液流路15に導かれ、各血液流路15に流入した血液に対して矢印で示す方向に遠心力が作用する。この遠心力によりインペラ5の中心部が陰圧に、インペラ5の外周部が陽圧となって血液がハウジング4の流出ポート7から吐出される。図3に示したように、インペラ5の周縁部の下方には被駆動側磁性体としての複数の被駆動側磁石16が周方向に関して等間隔で設けられている。被駆動側磁石16は永久磁石であるが、その代わりに、平時に磁気を帯びていない磁性体を被駆動側磁性体として使用することもできる。各被駆動側磁石16はインペラ5に固定されたホルダ17に埋め込まれていてハウジング4内の血液との接触が回避されている。
図1に示したように、駆動装置3は、遠心血液ポンプ2を駆動するためのモータユニット20と、装着された遠心血液ポンプ2を監視するための監視装置21と、モータユニット20を制御するとともに、ユーザによる所定の入力操作を受け付け、かつユーザ等のために各種情報を出力するメインユニット22とを備えている。なお、メインユニット22は不図示の筺体に各種の要素が格納されて構成されているが、便宜的に外観の図示を省略した。
図1に示したモータユニット20は、電動モータ23と、遠心血液ポンプ2を着脱するためのカップリング部24とを備えている。カップリング部24は、遠心血液ポンプ2が装着された際にインペラ5の被駆動側磁石16を吸引する駆動側磁石26が設けられかつ電動モータ23にて回転軸線Axの回りに回転駆動される磁石駆動部25と、磁石駆動部25を覆う磁石カバー27とを含む(図4も参照)。
電動モータ23には所定の電源PSの電力がメインユニット22を介して供給される。電動モータ23はモータ軸23aを有しており、モータ軸23aは回り止め31が施された状態で磁石駆動部25のロータ29に対してボルト30によって連結されている。
磁石駆動部25のロータ29の端部には、被駆動側磁石16と同数の駆動側磁石26が被駆動側磁石16を吸引する方向に極性が揃えられた状態で固定されている。駆動側磁石26は永久磁石であるが、これを電磁石に変更することもできる。磁石カバー27は駆動側磁石26との接触を回避するためのクリアランスを確保した状態で磁石駆動部25を覆っており、遠心血液ポンプ2をカップリング部24に装着した際にハウジング4との過干渉を回避できるようにハウジング4の底部形状に沿った形状を有している。なお、磁石カバー27の詳細な形状は後述する。
モータユニット20がこのように構成されているため、遠心血液ポンプ2がモータユニット20のカップリング部24に装着された際にインペラ5の被駆動側磁石16が駆動側磁石26にて吸引されることによりインペラ5と磁石駆動部25とがハウジング4と磁石カバー27とを介在させた状態でマグネットカップリングされる。そのため、磁石駆動部25とインペラ5との間でトルク伝達が可能となる。したがって、磁石駆動部25が電動モータ23にて回転駆動されることによって磁石駆動部25とマグネットカップリングされた遠心血液ポンプ2のインペラ5が磁石駆動部25と非接触状態で回転軸線Axと共通の軸線の回りに回転駆動される。
図1及び図4に示したように、監視装置21は、駆動装置3に装着された遠心血液ポンプ2を監視する装置であり、検査光Laの投光と反射光Lbの受光とを行うセンシング部35と、センシング部35に対する制御及びセンシング部35が出力する情報を処理する制御部36と、制御部36への入力操作を受け付けるとともに制御部36からの出力を受け付ける入出力部37とを備えている。
センシング部35は、可視光を発光する光源としての投光用発光ダイオード(以下、投光用LEDという。)40と、光を電気信号に変換する光電変換手段としての受光用フォトダイオード(以下、受光用PDという。)41と、投光用LED40が発光した可視光を検査光Laとして導く投光用光ファイバ42と、投光用光ファイバ42から射出された検査光Laの反射光Lbを受光して受光用PD41に導く受光用光ファイバ43とを備える。投光用LED40及び受光用PD41は投受光モジュール44に組み込まれている。図示を省略したが、投受光モジュール44は投光用LED40及び受光用PD41を駆動する駆動回路や投光用LED40及び受光用PD41と各光ファイバ42、43との接続を行う光コネクタ等の周辺装置を含んでいる。
各光ファイバ42、43はプラスチックを素材とし、石英系の光ファイバと比べて比較的柔軟性の高いプラスチック光ファイバとして構成されている。もっとも、各光ファイバ42、43をプラスチック光ファイバとして構成する代わりに石英系の光ファイバや他の材料で構成された光ファイバとして構成することもできる。各光ファイバ42、43は、磁石カバー27に形成されて表面27aに開口する溝28に収められた状態でその溝28が接着剤や紫外線硬化樹脂等の充填材にて充填されることによって、磁石カバー27に埋め込まれた状態で設けられている。充填材で充填された溝28は磁石カバー27の表面27aと同一面となっており平滑化されている。なお、溝28を充填材で充填せずに、各光ファイバ42、43を溝28に嵌めこむことにより固定する形態に変更することもできるし、各光ファイバ42、43と溝28との接触部分に限定的に接着剤等の固定手段を使用して各光ファイバ42、43を溝28内に固定する形態に変更することもできる。
図1、図4及び図5に示したように、磁石カバー27には回転軸線Axよりも外側に位置する凹凸部としての突出部27bが存在している。図1に示されているように、遠心血液ポンプ2の装着面よりも突出しかつ中空状に形成されたロータ29を磁石カバー27で覆うことができるように、その突出部27bは電動モータ23に対するロータ29の連結位置から離れる方向に突出しかつ磁石カバー27の周方向に延びたドーナツ状の形状を有している(図5も参照)。このような突出部27bを持つ磁石カバー27に溝28を形成し、その溝28内に各光ファイバ42、43を収めるため、本形態に係る溝28は図5に示す特徴的な形状を有している。
図5に示すように、磁石カバー27の突出部27bは、回転軸線Axに近い側の内側縁Eiと、回転軸線Axから遠い側の外側縁Eoと、二つの縁Ei、Eoに挟まれた平坦部efとを有している。溝28は、これらの縁Ei、Eoを、回転軸線Axの方向から見て磁石カバー27の半径方向Drに対して傾斜する方向Di、Doに横切るようにして磁石カバー27に形成されている。このような方向Di、Doで縁Ei、Eoを横切っているため、溝28は回転軸線Axの方向から見ると内側縁Eiから平坦部efを経由して外側縁Eoに至る過程で蛇行しているように見える。
溝28は、半径方向Drに対して傾斜する方向Di、Doに向かって横切っているので、各縁Ei、Eoを半径方向Drに向かって横切る場合と比較して、各縁Ei、Eoにおける溝28の曲率が小さくなる。一般に、光ファイバは曲げに伴う歪の影響で伝送光が劣化する曲げ損失が生じるので、曲率の許容上限を意味する曲げ限界が光ファイバの種別毎に設定されている。本形態に係る溝28は投光用光ファイバ42及び受光用光ファイバ43を収めるものであるため、これらの光ファイバ42、43の曲げ限界に対する余裕が必要であり、溝28の曲率はできる限り小さいほうがよい。本形態の溝28は各縁Ei、Eoを半径方向Drに向かって横切る場合よりも各縁Ei、Eoにおける曲率が小さくなるので、各光ファイバ42、43の曲げ限界に対する余裕を拡大できる。
図4に示したように、各光ファイバ42、43の先端部42a、43aは、遠心血液ポンプ2のハウジング4内の投光位置Aに向けられている。投光位置Aは軸受11が回転軸10を支持する位置及びその近くに設定されている。投光位置Aは遠心血液ポンプ2が装着された際に磁石カバー27によって隠される位置にあるので、外部から目視によって投光位置Aを確認することは不可能である。
遠心血液ポンプ2の使用中つまり体外循環中にはハウジング4の内部は血液で満たされていて投光位置Aにも血液が存在する。そのため、透光性を有するハウジング4の外部から投光位置Aに投光用光ファイバ42を介して検査光Laが投光されることによって、赤血球の密集度等の血液の性状に応じた光強度を持つ反射光Lbが得られる。その反射光Lbは受光用光ファイバ43の先端部43aから入射して受光用PD41に導かれ、受光用PD41は反射光Lbの光強度に応じた電気信号を出力する。
制御部36は、監視装置21による遠心血液ポンプ2の監視の実行や監視結果の解析及び出力処理等を実行するコンピュータとして構成された演算処理部45と、演算処理部45の指令に従って投光用LED40の動作を制御する動作制御部46と、受光用PD41の出力信号に対して増幅やフィルタリング等の所定の処理を実行する信号処理部47と、演算処理部45が実行する処理に必要なプログラムの記憶や処理実行中の一時的な情報の読み書きを行う記憶部48とを備えている。入出力部37はユーザによる遠心血液ポンプ2の監視に関する操作を受け付ける入力部49と、制御部36の演算処理部45による処理結果を出力する出力部50とを備えている。出力部50は、処理結果をユーザ等に警告音で知らせる不図示の報知部や、文字や画像等の視覚情報を表示してユーザ等に知らせる不図示の表示部等を含む。
演算処理部45が実行する処理としては、遠心血液ポンプ2の劣化による異音が発生する前に早期に異常を判定するプログラムに従って信号処理部47から得られた反射光に関する情報(信号)を記憶部48に逐次記憶させつつ解析し、その解析結果を出力部50の報知部や表示部にてユーザ等に知らせる処理がある。こうした情報を、出力部50を用いてユーザ等に知らせることによって、血栓の形成、血栓の付着あるいは急激な溶血の増加等が起こる前に、抗凝固療法の変更や遠心血液ポンプ2の交換などの対策の検討に役立てることができる。
本形態の駆動装置3では、監視装置21の投受光モジュール44、制御部36及び入出力部37がメインユニット22に組み込まれている(図1参照)。ただし、監視装置21のこれらの要素をメインユニット22とは物理的に分離するように構成することも可能である。また、制御部36の各機能要素を後述するメインユニット22の機能要素と共通化し、メインユニット22によって制御部36の各機能要素を実現することも可能である。
図1に示すように、メインユニット22は、モータユニット20の電動モータ23を制御するモータ制御部51と、ユーザによる遠心血液ポンプ2の動作に関する各種操作を受け付けて、各種操作に応じた信号をモータ制御部51に送る操作部52と、遠心血液ポンプ2の動作状態に関する情報を出力する表示部53とを備えている。モータ制御部51は、電動モータ23及び電源PSに電気的に接続された駆動回路55と、コンピュータとして構成されていて電動モータ23を制御するための所定のプログラムを実行する演算処理部56と、演算処理部56にて実行されるプログラム等を記憶するとともに処理に必要な情報を一時的に読み書きする記憶部57とを含む。演算処理部56は、操作部52から送られた信号に基づいて駆動回路55を制御し、これによって電動モータ23の動作制御つまり遠心血液ポンプ2の動作制御を行う。例えば、演算処理部56は、操作部55に入力された電動モータ23の回転速度の指示操作や遠心血液ポンプ2の各種の動作モードの選択操作に対応する電動モータ23の動作が得られるように、電動モータ23に供給される電力を決定する処理等を実行する。また、演算処理部56は、図示を省略したが、電動モータ23に装着された回転数測定素子、血液流量計や圧力計等の測定機器から入力された信号に基づいて得られた遠心血液ポンプ2の動作情報を表示部53に表示させる。
本形態の駆動装置3によれば、受光用PD41が変換した電気信号を監視することにより、遠心血液ポンプ2のハウジング4内の血液の性状に関する情報を遠心血液ポンプ2の使用中に取得できる。そして、こうして取得した情報を監視装置21の制御部36にて適宜に解析することによって、遠心血液ポンプ2内の血栓形成や血栓付着の発生を事前に予測するための情報として活用することが期待できる。
また、本形態は磁石カバー27によって隠される投光位置Aに対して磁石カバー27に設けられた投光用光ファイバ42を利用して投光できるとともに、磁石カバー27に設けられた受光用光ファイバ43を利用して投光位置Aで反射した反射光を導くことができる。したがって、検査光の投光及び反射光の受光が困難な箇所での投光及び受光を、投光用光ファイバ42及び受光用光ファイバ43を利用することにより省スペースで容易に実施できる。また、投光用光ファイバ42及び受光用光ファイバ43が磁石カバー27に設けられているので、遠心血液ポンプ2の着脱に影響を与えることもないし、遠心血液ポンプ2に手を加える必要もない。したがって、センシング部35を駆動装置3に設けることによって遠心血液ポンプ2の実用性が低下することがない。しかも、各光ファイバ42、43は、磁石カバー27に埋め込まれた状態で設けられていて、充填材で充填された溝28は磁石カバー27の表面27aと同一面となっており平滑化されている。そのため、遠心血液ポンプ2の着脱への影響をより低減できるし、見栄えも向上する。
また、本形態の溝28は、図5に示したように突出部27bの各縁Ei、Eoを方向Di、Doに向かって横切るので、上述したように、各光ファイバ42、43の曲げ限界に対する余裕を拡大できる。したがって、投光用光ファイバ42及び受光用光ファイバ43として使用可能な光ファイバの選択の幅が広がるので設計の自由度が向上する。
ただし、本発明は上記形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記形態では、検査光の投光のために投光用光ファイバ42が、反射光の受光のために受光用光ファイバ43がそれぞれ設けられているが、本発明は、これらの代わりに、投光用光ファイバ42及び受光用光ファイバ43として兼用される一本の投受光用光ファイバ(不図示)を用いて実施することもできる。この場合には、一本の投受光用光ファイバによって検査光及び反射光のそれぞれを導くことができるので部品点数の削減とさらなる省スペース化を実現できる。
上記形態では、可視光を発光する投光用LEDを光源として用いているが、レーザ光を出力するレーザ光発生装置を光源として使用することもできる。また、上記形態では検査光の反射光を解析することによって血液の性状に関する情報を取得しているが、検査光の反射光だけでなく散乱光や透過光にも赤血球の密集度に相関する強度変化が現れることが知られている。そこで、図6に示すように、上記形態の装置を用いて検査光Laの散乱光Lxを受光用光ファイバ43に導いて解析に用いることもできる。透過光Lyについては、投光用光ファイバ42と同一直線上に受光用光ファイバ43を配置しても回転軸10や軸受11に遮られて透過光Lyを受光することが難しい。そこで、図6の想像線で示すように、検査光Laの方向に対して鈍角となる適当な角度に向けて受光用光ファイバ43を配置することにより、検査光Laの透過光Lyを受光用光ファイバ43に導くことができる。この場合における受光用光ファイバ43の設置は上記形態と同様な溝を磁石カバー27に形成してその溝に収めることによって実現してもよい。
検査光の種類は上記形態で採用された可視光に限らず、血液中の赤血球の密集度に相関する反射光、散乱光又は透過光が得られる限度において検査光の種類には特に制限はない。もっとも、検査光として可視光や近赤外光を使用することにより非侵襲性を確保しつつ血液中の赤血球の密集度に相関する反射光、散乱光又は透過光が得られるので血液を扱う装置として好ましい。
反射光等を電気信号に変換する光電変換手段として受光用PDを使用することは一例である。例えば、フォトトランジスタやフォトコンダクタ等の光電変換素子や光電子増倍管等の光デバイスを光電変換手段として使用して本発明を実施することも可能である。反射光等の受光のために受光用光ファイバを用いることも一例にすぎない。設置スペースに余裕がある場合には、例えば、受光用光ファイバを用いずに、検査光の反射光等を直接的に光電変換手段で受光する形態で本発明に係る受光手段を実施することもできる。
投光用又は受光用光ファイバを収める溝は磁石カバーの形状によって変化する。例えば、磁石カバーに周方向に延びる凹み部が存在する場合、その凹み部の縁を、磁石カバーの半径方向に対して傾斜する方向に向かって横切るようにして溝を磁石カバーに形成する形態で本発明を実施できる。つまり、上記形態の図示の突出部だけでなく、このような凹み部を持つ磁石カバーに対しても曲率の小さな溝を形成できる。本発明に係る凹凸部は上記形態のような突出部の他にこうした凹み部をも含む概念である。なお、突出部や凹み部に高さが一定の平坦部が存在しない場合には、このような突出部の頂上部や凹み部の底部に縁が一つだけ存在することもあり得る。この場合には一か所の縁を横切るようにして溝が形成されることになる。
上記形態の溝は、磁石カバーの表面に開口するように形成されているが、これとは反対に、磁石カバーの裏面つまり磁石駆動部と対面する側の面に開口する溝を磁石カバーに形成し、当該溝内に光ファイバを収める形態で本発明を実施してもよい。このような磁石カバーの裏面に開口する溝であっても、上記形態と同様に磁石カバーに存在する突出部や凹み部等の凹凸部の縁を、回転軸線の方向から見て半径方向に対して傾斜する方向に向かって横切ることになるので、上記形態と同じ効果を得ることができる。さらに、磁石カバーの裏面に開口する溝を形成した場合、磁石カバーの表面は溝が形成されていない磁石カバーと全く変わらないので、遠心血液ポンプの着脱への影響を完全に排除できる。
1 遠心血液ポンプシステム
2 遠心血液ポンプ
3 遠心血液ポンプの駆動装置
4 ハウジング
5 インペラ
16 被駆動側磁石(被駆動側磁性体)
21 遠心血液ポンプの監視装置
23 電動モータ
26 駆動側磁石
25 磁石駆動部
27 磁石カバー
27a 表面
27b 突出部(凹凸部)
28 溝
40 投光用LED(光源、投光手段)
41 受光用PD(光電変換手段、受光手段)
42 投光用光ファイバ(投光手段)
43 受光用光ファイバ(受光手段)
A 投光位置
Ax 回転軸線
Ei、Eo 縁
Dr 半径方法
Di、Do 半径方向に対して傾斜する方向
La 検査光
Lb 反射光
Lx 散乱光
Ly 透過光

Claims (4)

  1. 被駆動側磁性体が設けられたインペラを内部に収容し、かつ前記インペラの回転軸を回転自在に支持する軸受が設けられた透光性を有するハウジングを備えた遠心血液ポンプが着脱されるとともに、
    電動モータと、
    前記被駆動側磁性体を吸引する駆動側磁石が設けられて前記電動モータにて回転軸線の回りに回転駆動される磁石駆動部と、
    前記回転軸線よりも外側に位置して周方向に延びる凹凸部が存在し、かつ前記磁石駆動部を覆う磁石カバーと、
    前記遠心血液ポンプが装着された状態で前記軸受が前記回転軸を支持する位置又はその近くに設定された投光位置に前記ハウジングの外部から検査光を投光する投光手段と、
    前記ハウジングの外部に出た前記検査光の反射光、散乱光又は透過光を受光して電気信号に変換する受光手段と、を備え、
    前記遠心血液ポンプが装着された際に前記インペラと前記磁石駆動部とが前記ハウジングと前記磁石カバーとを介在させた状態でマグネットカップリングされる遠心血液ポンプの駆動装置であって、
    前記投光手段は、光源と、前記光源が発光する光を前記検査光として導くとともに、前記磁石カバーに形成された溝内に収められた投光用光ファイバとを有し、
    前記溝は、前記磁石カバーに存在する前記凹凸部の縁を、前記回転軸線の方向から見て前記磁石カバーの半径方向に対して傾斜する方向に向かって横切るようにして前記磁石カバーに形成されていることを特徴とする遠心血液ポンプの駆動装置。
  2. 前記受光手段は、前記反射光、前記散乱光又は前記透過光を導く受光用光ファイバと、前記受光用光ファイバが導いた前記反射光、前記散乱光又は前記透過光を受光して電気信号に変換する光電変換手段とを有し、
    前記受光用光ファイバは、前記磁石カバーに形成された前記溝内に収められている請求項1に記載の駆動装置。
  3. 前記溝は、前記磁石カバーの表面に開口し、かつ前記投光用光ファイバ又は前記受光用光ファイバが収められた状態で前記表面と同一面となるように充填材にて充填されている請求項1又は2に記載の駆動装置。
  4. 前記投光用光ファイバ及び前記受光用光ファイバとして兼用される一本の投受光用光ファイバをさらに備える請求項2又は3に記載の駆動装置。
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