以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
《空気調和機の構成》
図1と図2により、本実施例の概要を説明する。図1は、実施例の空気調和機Sの全体構成を示す図である。図2は、室内機100の側断面図である。
図1に示す本実施例の空気調和機Sは、室内機100、室外機200、及びリモコンReから構成される。
室内機100と室外機200とは冷媒配管(図示せず)で接続され、周知の冷凍サイクルによって、室内機100が設置されている室内を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。
リモコンReはユーザによって操作され、室内機100のリモコン送受信部Qに対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマー値の設定、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機Sは、これらの信号に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転を行う。また、室内機100のリモコン送受信部Qから、室温情報、湿度情報、電気代情報などの情報をリモコンReへ送信し、ユーザにこれらの情報を通知する。
また、室内機100の前面の下部には、室内の画像情報を取得するための撮像手段110と近赤外線投光器115が設置されている。この撮像手段110と近赤外線投光器115の設置位置は、後述する画像情報の取得目的に応じて、変更可能であり、図1の位置に限定されない。本実施例で、近赤外線投光器115を設ける理由については、後述する。
また、図1では、近赤外線投光器115を一箇所に設けるようにしているが、室内機100の複数個所に配置する構成としても良い。
図2は、室内機100の撮像手段110の位置における側断面図である。
筐体ベース101は、熱交換器102、送風ファン103、フィルタ108などの内部構造体を収容している。
熱交換器102は複数本の伝熱管102aを有し、送風ファン103により室内機100内に取り込まれた空気を、伝熱管102aを通流する冷媒と熱交換させ、前記空気を加熱又は冷却するように構成されている。なお、伝熱管102aは、前記した冷媒配管(図示せず)に連通し、周知の冷凍サイクル(図示せず)の一部を構成している。
図2に示す送風ファン103が回転する事によって、空気吸込み口107及びフィルタ108を介して室内空気を取り込み、熱交換器102で熱交換された空気が吹出し風路109aに導かれる。さらに、吹出し風路109aに導かれた空気は、左右風向板104及び上下風向板105によって風向きが調整され、空気吹出し口109bから送風されて室内を空調する。
左右風向板104は、後述する制御手段130(図3)からの指示に従い、左右風向板104の下部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして左右風向板用モータ(図示せず)により回動される。
上下風向板105は、後述する制御手段130(図3)からの指示に従い、両端部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして上下風向板用モータ(図示せず)により回動される。
これにより、室内の所定位置に、空調風を送風することができる。
室内機100の前面を覆うように設置されている前面パネル106の下部には、撮像手段110が設けられている。そして、図示されていない紙面の垂直方向の位置に、近赤外線投光器115が設置されている。
撮像手段110は、撮像手段110の設置位置から水平方向に対して所定角度だけ下方を向くように設置され、室内機100が設置されている室内を適切に撮像できるようになっている。ただし、詳細な撮像手段110の搭載位置や角度については、空気調和機Sの仕様や用途に合わせて設定すればよく、構成を限定するものではない。
なお、図1、図2に示す空気調和機S構成は、あくまで本実施例に係る一例であり、本発明が本実施形態に限定して適用されるものでないことは言うまでもない。
《空調機の制御ブロック構成》
次に、図3により、実施例の空気調和機Sの制御ブロックの構成を説明する。
本実施例の空気調和機Sの制御手段130は、温度センサ・湿度センサ・照度センサ等を有し、空調制御をおこなう室内の温度や湿度や明るさを検出する環境検出部160と、ユーザの操作指示を受信するリモコン送受信部Q(図1参照)の環境情報や操作指令に基づいて、冷媒システム(図示せず)と送風ファン103や左右風向板104と上下風向板105の駆動をおこなうモータを制御して室内の空調制御をおこなう負荷駆動部150を制御する。
さらに、詳細を後述する撮像手段110により取得した空調対象の室内の画像情報を基に、画像検出部139により在室者の位置や家材の配置、空調対象の部屋の間取りを検出して、空調制御をおこなう。
また、本実施例の空気調和機Sは、詳細を後述する近赤外線投光器115により近赤外線を室内に照射して、撮像手段110で撮像をおこなうようにしている。この近赤外線照射は、近赤外線投光器駆動回路116により制御されている。
以下、より詳細に、空調機の制御ブロックの内容を説明する。
まず、撮像手段110の詳細な構成については後述するが、構成を簡単に説明する。
図3に示すように、撮像手段110は、撮像範囲やピントを調整する光学レンズ111と、光学レンズ111から入射した室内光を電気信号に変換する撮像素子112と、撮像素子112の信号をデジタル化して画像情報に変換するA/D変換器113と、画像情報の輝度や色調を補正するデジタル信号処理部114から構成される。
撮像手段110で取得した室内の画像情報は、画像検出部139により、各種の画像処理がおこなわれる。
本実施例の画像検出部139は、人の頭部、胸部、腕、足等の人の身体を検出する人体検出部131、空調室内の家財の形状等を検出する物体検出部132、室内の部屋の壁までの距離や室内の壁の角の位置を検出する事で被空調室内の間取りを推定する間取り検出部133を備えている。
この際、デジタル信号処理部114には、画像検出部139から、上記の画像処理に適した撮像パラメータが設定される。
画像検出部139で検出された在室者の位置情報などの検出結果と、検出結果に基づく動作指令は、演算処理部141に通知される。
演算処理部141は、空調機の制御ブロックを統括制御し、設定された空調運転の運転設定に加え、この検出結果を用いて駆動制御部136を制御し空調運転を行う。撮像手段110は、演算処理部141からの撮像要求信号の動作指令により、撮像動作をおこなう。
駆動制御部136は、負荷駆動部150に駆動信号を通知して、駆動指示をおこなう。
負荷駆動部150は、冷凍サイクル(図示せず)、室内機100が備える室内ファンモータ(図示せず)、室外機200が備える圧縮機モータ(図示せず)、上下風向板105に設置される上下風向板用モータ(図示せず)、左右風向板104に設置される左右風向板用モータ(図示せず)の個々の駆動をおこなう。
また、詳細を後述する撮像手段110または近赤外線投光器115の回動駆動をおこなう駆動部を含めてもよい。
近赤外線投光器駆動回路116は、演算処理部141の撮像要求信号の動作指令に連携して、近赤外線投光器115を駆動する。近赤外線投光器115の詳細については後述する。
記憶手段140A、140Bは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)など含んで構成される。そして、ROMに記憶されたプログラムが制御手段130の演算処理部141内のCPU(Central Processing Unit)によって読み出されてRAMに展開され、実行される。
また、環境検出部160として、サーモパイルによる温度センサや、またはフレネルレンズ及び赤外線センサを用いた活動量検出センサなど、各種センサを空気調和機S本体に備える構成としても良い。
上記の構成により、制御手段130は、撮像手段110から入力される画像情報、リモコンReから入力される指令信号、及び各種センサから入力されるセンサ出力などに応じて、空気調和機Sの動作を統括制御する事により、きめの細かい運転制御が可能としている。
ところで、画像検出部139の画像処理によって得られる検出結果は、空調運転の補正を行うのに用いるために抽出された在室者の位置や活動量等の情報、検出された物体の形状や位置、距離情報等の情報のみであり、人が目視で映像として捉える事が可能な画像情報は含んでいない。これにより、記憶手段140A、140Bに保持されるデータ量の軽減が行えるだけでなく、画像情報が制御手段130の外へ取りだせない構成となっているため、空調室内の在室者のプライバシーを守る事ができる構成を実現できる。
《制御手段の実装形態》
上述の制御手段130は、演算処理部141や駆動制御部136を含み、空気調和機Sの運転制御を行うメインマイコンが搭載されている制御基板と、撮像手段110によって得た画像情報を基に各種画像処理を行うソフトウェアを内包するカメラマイコンと撮像手段110を搭載するカメラ基板の、二つの基板によって構成すると良い。
カメラ基板は、撮像手段110で取得した画像情報の画像処理をおこなうため、多くのデータ処理をおこなう必要があり、高速動作に対応する必要がある。このため、比較的高価な多層基板を使用する。
これに対して、制御基板は、高速動作の必要がないため、低価格な基板を使用できる。
制御手段130を、制御基板とカメラ基板の2つの基板に分割する構成を採用しても、両者の間では、画像検出による検出結果のみを送信するなど、通信を行う情報量を最小限とすることができるので、接続本数の少ないシリアル通信で接続すればよい。
この制御基板とカメラ基板の2つの基板に分割する構成により、制御手段130を安価に構成する事が可能となる。
近赤外線投光器115の実装については、その構成により、実装の優劣が変わる。詳細は後述するが、近赤外線投光器115により室内全体に近赤外線を一括照射する場合や、近赤外線投光器115自身で所定の照射方向に分割照射する場合には、カメラ基板とは関係なく、近赤外線投光器115を実装すればよい。
しかし、撮像素子112を回動させて室内を分割撮像する場合で、近赤外線投光器115が撮像範囲に近赤外線を照射する場合には、撮像素子112と連動するように、カメラ基板に近赤外線投光器115を搭載するとよい。
これにより、近赤外線投光器115の回動駆動が不要となり、省スペース・低価格化が可能となる。
《撮像素子》
ここで、撮像手段110に構成について詳しく説明する。
撮像手段110は、例えば、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)等、撮像が可能な撮像素子112によって構成される。このような撮像手段110は、一般によく用いられている。
撮像素子112のアナログ出力を信号処理し、デジタル信号で画像情報を出力するモジュールデバイスを用いても良い。また、この場合、撮像を行う際の補正などのパラメータを、カメラマイコンから読み込んで使用する構成が可能である。
また、撮像手段110の構造は、通常、撮像素子上に光学フィルタ、光学フィルタ上に光学レンズ111が配置され、必要に応じて光学フィルタの手前にシャッター等が配置されるものとなっている。
一般的な可視光帯域を撮像するカメラに於いては、撮像素子112として、可視光帯域及びその帯域の前後である近赤外線領域、紫外線領域の帯域にも感度を持つ。そのため、光学フィルタにより紫外線及び近赤外線帯域の波長の光を減衰させるバンドパス特性の光学フィルタを使用することにより、カメラでの撮像画像への赤外線、紫外線の影響を抑える構成となっている。
本実施例の撮像手段110では例えば、近赤外線帯域の波長の減衰率を任意に抑えた光学フィルタを使用、または紫外線および近赤外線領域の波長の光を減衰させる光学フィルタを削除する事により、可視光帯域に合わせて近赤外領域についても受光可能な構成とするのが望ましい。
しかしながら、紫外線及び近赤外線帯域の波長の光を減衰させる光学フィルタは、あくまで紫外線及び近赤外線を減衰させているのみで、完全に遮断している訳ではない。そのため、撮像手段110での近赤外線の受光量が確保できる場合は、敢えて近赤外線領域の波長の減衰率を変更、または光学フィルタを削除するなどの処置は不要であり、一般に使用されているCMOSイメージセンサやCCD等を、撮像手段110として、そのまま使用する事が可能である。
《空調制御の概要》
次に、図4の近赤外線を利用した空調制御の概要を説明する図を参照しながら、画像検出部139における画像検出の結果と、検出結果に基づく空調制御の一例を説明する。
画像検出部139は、撮像手段110の撮影方向及び撮像画像上の位置座標を基に、人体および物体の位置を求め、検出結果として制御に用いる。
例えば、身体検出及び顔検出の検出結果を組み合わせる事により、多くの情報を得る事が可能な構成を実現できる。前記の撮像手段110によって取得された画像情報の中にある身体の大きさ及び顔の大きさから、空気調和機Sから検出された在室者までの距離を推測する事も可能である。詳細には、空気調和機Sの近くの在室者の顔または身体は大きく写り、空気調和機Sからより離れている在室者の顔または身体は小さく写る。これを検出し、さらに身体の位置情報と関連づける事により、精度良く在室者の位置を検出する事が可能となる。
また、制御手段130は、空調室内の在室者の位置だけでなく、その経時変化を捉えることで活動量を検出する事が可能である。これを空調運転に反映することで、より空調室内の快適性を高める事も可能である。これは、空調室内の在室者の活動量の検出結果から所定のパラメータに応じて、室内の人の活動量に応じた体感温度を算出し、これを空調運転設定に反映させることで実現される。
《近赤外線による画像検出》
ここで、近赤外線投光器115により近赤外線を室内に照射し、撮像手段110により室内画像を撮像する特徴について説明する。
近赤外線は、可視光帯域の光より波長が長く、人の肉眼で認識する事が出来ない帯域の光であるが、前述の通り、撮像手段110は近赤外線を検出する事が可能であるため、近赤外線投光器115から近赤外線を照射しつつ撮像手段110で撮像する事で、空調室内の近赤外画像情報を取得する事が可能である。
可視光帯域を捉える事を目的として構成されている撮像素子112は、一般に赤色、緑色、青色の三色の光強度を測定し、そのデータを画像情報上の1ドット分となるよう、マトリクス状に配置された赤色、緑色、青色の光センサ出力から、画像情報を生成する。
物体の色は、可視光領域波長の内、対象の物体が吸収する波長により決まる。例えば、青色の物体は、赤色から緑色の帯域の波長の光を吸収し、青色の波長の光を反射しているために、その物体の色が青色に見える。
しかしながら近赤外線は可視光帯域とは異なる波長であるため、近赤外線を照射している場合に取得される画像では、物体の色とは異なり、物体の近赤外線の吸収率、反射率に応じた色調で表現される。
一般に、画像情報上から物体を検出する場合、色調や輝度の差から画面上の境界を導き出し、これを輪郭として検出する事で物体を検出する。そのため、撮像対象が模様や柄など、色味が異なる物体の場合、この模様や柄を輪郭の境界として誤検出してしまう。
このような物体であっても、同一の物体では同一の素材が使用されており、同一の素材であれば近赤外線の吸収率、反射率はほぼ同一である。
つまり、本実施例の空気調和機Sでは、撮像時に近赤外線を近赤外線投光器115から照射する事で、画像処理の外乱となる物体の柄や模様の影響を受けづらい構成となっている。
このような、柄や模様により画像検出の外乱となりうる物体は、例えば絨毯や床材、壁紙であり、近赤外線投光器115により近赤外線を室内に照射し、撮像手段110により室内画像を撮像することで、物体の認識が容易になる。
また、近赤外線投光器115を備えている事から、空調室内が暗い夜間等に於いても、近赤外線を照射する事により撮像が可能となる。また、このとき、近赤外線は肉眼で捉える事ができないため、在室者に不快感を与える事がない。つまり、本実施例の空気調和機Sは暗視機能をもつことができる。
さらに、日射光や室内照明光の撮像画像から物体の輪郭を検出する場合には、撮像方向と異なる方向からの日射光や室内照明光による物体の影を、物体の輪郭として誤検出してしまう問題がある。
本実施例では、近赤外線投光器115から近赤外線を照射することで、照明方向と撮像方向のずれが小さくなり、この照射された近赤外線によって生じる物体の影が撮像画像に写り込みにくくなっている。
これにより、日射光や室内照明光により生じる撮像画像の物体の影を画像情報からリダクションする事が可能となり、画像の誤検出を低減することもできる。
近赤外線は、人の肉眼で捉える事ができないため、撮像時に在室者に不快感を与える事がない。
このように、近赤外線を照射することで、暗視を可能にするだけでなく、日射光や室内照明光により明るい室内でも、容易に誤検出を低下することができる。
《人体検出と物体検出》
図4の説明に戻り、空調制御の概要を説明する。
図4(a)は、空調制御する室内の撮像される範囲を表わしている。
実施例の制御手段130では、可視光による人検出と近赤外線による物体の検出をおこない、検出結果を複合して、空調制御をおこなう。
図4(b)は、可視光環境下での人検出結果をあらわし、図4(c)は、近赤外線を利用した物体検出の結果をあらわしている。
また、図4(d)と(e)は、人検出結果と物体検出の結果から求めた、人と物の位置(図4(d))や方向(図4(e))をあらす図である。
図4(f)は、実際の空調制御の様子をあらわす図である。
図4(b)の可視光下で人の身体の輪郭を基に人体を検出する際には、人の身体の形に類似したものを人の身体として誤検出してしまう場合も考えられる。このような場合には、例えば、顔検出や個人検出、または人の顔のパーツや肌等から性別や年齢を推測する制御等、その他の画像検出を併用する事により、誤検出を回避してより正確な検出が可能となる。また、連続的に検出する事により、人の動きとして判定することもできる。
身体検出及び顔検出の検出結果を組み合わせる事により、異なる情報を得ることができる場合もある。例えば、画像情報の中にある身体の大きさ及び顔の大きさから、空気調和機Sから検出された在室者までの距離を推測する事も可能である。
具体的には、空気調和機Sの近くの在室者の顔または身体は大きく写り、空気調和機Sからより離れている在室者の顔または身体は小さく写ることから、顔または身体の大きさから位置情報を推定できる。
また、制御手段130では、画像情報を連続して取得することにより、その経時変化を捉えることで人の活動量を検出する事が可能である。人の活動量を空調反映することで、より空調室内の快適性を高める事が可能である。例えば、人の活動量が大きい場合には、風量を大きくして、体感温度の低下を高める制御をおこなうか、または、風向を制御して、人に直接風が当たるようにする。
このように、空調室内の在室者の活動量の検出結果から所定のパラメータに応じて、室内の人の活動量に応じた体感温度を算出し、これを空調運転設定に反映させるようにする。
また、図4(c)の近赤外線を利用した物体の検出では、画像情報上から人体検出同様、輪郭を検出し、抽出することで物体を検出する。このとき、この検出された物体から、物体の大きさ、空気調和機S本体から物体までの距離、形状等を推定することができる。
また、検出された物体の輪郭から、重心位置や、形状の複雑度の算出など、既存の各形状分析等を行うパラメータを取得するようにしてもよい。
本実施例の制御手段130では、可視光下の人検出により、在室者が空気調和機Sから4mの距離の位置にいることが検出され(図4(b))、近赤外線を利用した物体の検出では、空気調和機Sから2.5mの距離の位置に、物体があることが検出されている(図4(c))。
そして、制御手段130は、これら2つの検出結果を複合し、人の座標位置と距離と、物体の座標位置と距離を認識する(図4(d))。制御手段130は、人と物体の水平位置と距離から、人と物体の室内機100からの方向を判定することができる(図4(e))。
制御手段130は、図4(f)に示すように、非画像検出時に物体に向いていた風向を、画像検出により判定した人の居る方向に、風向を制御する。
《近赤外線の照射範囲》
次に、図5の近赤外線投光器による照射範囲の一例を示す図により、撮像素子112の撮像範囲と、近赤外線投光器115の照射範囲に関係を説明する。
図5(a)は、撮像素子112の視点(正面)から見たときの、撮像範囲と赤外線の照射範囲をしめした図である。特定の範囲における近赤外線の照射量を増やすために、近赤外線投光器115は、撮像範囲の一部を含む所定の範囲に近赤外線を照射する。
近赤外線投光器115の照射範囲は、撮像素子112の撮像範囲以外の範囲を一部に含んでもよいが、近赤外線投光器115の照射範囲は撮像素子112の撮像範囲より狭いことが望ましい。この場合、近赤外線照射器115を駆動する近赤外線照射手段駆動手段として、例えばステッピングモータにより近赤外線照射器115の照射方向が変更できるよう、制御手段130からの指令に応じて任意に回動出来るよう構成する。これにより、赤外線発光素子の個数を最小限に抑える事が可能で、赤外線投光器115の電源容量を抑えることができる。
また、近赤外線の照射が必要なエリアを絞る事により、赤外線の照射を最小限に抑えることができる。これにより、使用LEDの数量を低減し、又、LEDの長寿命化、電源容量を減らせるため、電源回路の簡略化による原価の低減、基板の小型化が可能である。
なお、撮像範囲の各方向にそれぞれ配置された近赤外線発光素子を備え、近赤外線の照射が必要な方向へのみ近赤外線を照射できるよう構成した場合であっても、同様の効果を得る事ができる。
近赤外線の照射範囲については、空気調和機において画像検出を行う上で、照射が必要となる対象の存在する方向に近赤外線を照射出来るよう配置すればよく、本実施例に係る空気調和機の仕様によっては、近赤外線の照射が不要である範囲への近赤外線の照射を省く事で、同様に、赤外線発光素子の個数を抑える事ができる。
図5(b)は、空調室内の上面から見たときの、撮像素子112の撮像範囲と、近赤外線投光器115の照射範囲に関係を、撮像素子112の水平方向の画角αと、近赤外線投光器115の水平方向の照射角βa及びβbで示した図である。図からも明らかなように、水平方向の近赤外線投光器115の照射角βa及びβbは、撮像素子112の画角αより小となっている。
図5(c)は、空調室内の横面から見たときの、撮像素子112の撮像範囲と、近赤外線投光器115の照射範囲に関係を、撮像素子112の垂直方向の画角αと、近赤外線投光器115の垂直方向の照射角βa及びβbで示した図である。図からも明らかなように、垂直方向の近赤外線投光器115の照射角βa及びβbは、撮像素子112の画角αより大となっている。なお、より特定の範囲における近赤外線の照射量を増やすために、垂直方向の近赤外線投光器115の照射角βa及びβbを撮像素子112の画角αより小としてもよい。
近赤外線照射手段として使用する近赤外線LEDは、発光強度に角度分布(指向特性)をもっている。一般に、LEDの照射角度は、発光強度がピーク値の半分になるところでとった光の出射角度で規定されている。このため、近赤外線LEDを単灯で照明する場合には、照射範囲の周辺部に照射強度の低下が生じる。そこで、図5(a)(b)等に示すように撮像範囲αが照明範囲βa、βbを合わせた範囲に含まれるようにしている。
《近赤外投光器の構造》
次に、図6に基づき、撮像素子112の撮像範囲を含んで近赤外線を照射する近赤外線投光器115の構成例を説明する。
実施例の近赤外線投光器115は、複数の近赤外線照射手段(近赤外線LED)を使用して構成される。
撮像手段110が回動して、図5に示した撮像範囲を分割し順次撮像する構成とする場合には、分割された一回の撮像範囲をさらに分割した特定の範囲に近赤外線を照射する構成としてもよい。
また、近赤外線照射手段の前面に光学レンズを配し、任意の範囲に近赤外線を照射できるよう、集光する配置としても良い。もしくは、リフレクタにより集光する構成としてもよい。
以下、図6により、近赤外線投光器115の構造例を説明する。
図6(a)(b)(c)に示す近赤外線投光器115は、6個の近赤外線照射手段(近赤外線LED)を同じ向きに台座に取り付ける構造としている。図は、近赤外線投光器115を上面から見た図(水平断面)を示している。この例では、近赤外線LEDの基板実装が容易になる特徴がある。
しかし、近赤外線の照射方向が同一となるため、近赤外線の照射範囲βをカバーするために、近赤外線LEDの照射光軸を光学的に変える必要がある。
図6(a)の近赤外線投光器115は、近赤外線照射手段の照射面に複眼レンズを設けて光軸を変える例である。近赤外線LEDに対応する複眼レンズのひとつレンズにより、それぞれの近赤外線LEDの近赤外線の照射光軸を変えて、β1とβ2とβ3の3つの方向に近赤外線を照射する。
図6(b)の近赤外線投光器115は、図6(a)の複眼レンズに変えて、複数のレンズをもつフレネルレンズにした例である。
図6(c)の近赤外線投光器115は、リフレクタにより、近赤外線LEDの近赤外線の照射光軸を変えて、β1とβ2とβ3の3つの方向に近赤外線を照射する例である。
図6(a)(b)(c)に示す近赤外線投光器115は、6個の近赤外線LEDを設けた構成としたが、6個に限定されるものではなく、複数の近赤外線LEDにより面発光する構成とすればよい。
このように複数の近赤外線LEDにより近赤外線投光器115を構成することにより、近赤外線LEDの放熱が容易となり、近赤外線投光器115の長寿命化を図ることができる。
《近赤外線の照射動作》
次に、図7により、撮像手段110が回動して、図5に示した撮像範囲を分割し順次撮像する構成とする場合の、撮像範囲αと照明範囲βの関係を説明する。θは、撮像手段110の回動角度を表している。
図7は、撮像手段110及び近赤外線投光器115それぞれに回動機構を設けた場合を示している。近赤外線基板駆動角Φをカメラ基板駆動角θに基づいて制御して、近赤外線照射範囲βがカメラ撮像視野αの特定の範囲に位置するようにしている。そして、同一範囲のカメラ撮像視野αで近赤外線照射範囲βの照射範囲を変更して撮像した複数の撮像画像を合成した合成画像を作成する。この構成では、照明範囲にむだが生じない。
次に、図8の近赤外線を分割照射する一例を説明する図により、近赤外線投光器115の照射範囲を、回動する撮像手段110の撮像範囲に合わせて、分割する構成について説明する。図8では、撮像範囲を3分割し、照明範囲を6分割する例を示すが、これに限ったものではない。
図8は、撮像範囲α1、α2、α3と、照明範囲β1a、β1b、β2a、β2b、β3a、β3bの関係を示したもので、1つの撮像範囲が2つの照明範囲を合わせた範囲に含まれるようにしている。例えば、撮像範囲α1が照明範囲β1a、β1bを合わせた範囲に含まれる。撮像タイミングにあわせて、撮像範囲に対応する照明範囲を照明すればよい。より具体的には、撮像範囲α1を撮像する際には照明範囲β1a及びβ1bに近赤外線を順次照射し、撮像範囲α2を撮像する際には照明範囲β2a及びβ2bに近赤外線を順次照射し、撮像範囲α3を撮像する際には照明範囲β3a及びβ3bに近赤外線を順次照射する。
近赤外線投光器115は、照明範囲β1a、β1b、β2a、β2b、β3a、β3bに順次、近赤外線を照射すればよいので、近赤外線LEDからなる近赤外線照射手段を間欠駆動する。この本実施例では、6分割しているので、1/6のデューティでパルス駆動する。このとき、近赤外線LEDの駆動電流は、連続点灯時の駆動電流より大きくすることができるので、近赤外線の発光量を増すことができる。なお、撮像手段110及び近赤外線投光器115ともに時計回りに駆動する場合について説明したが、反時計回りに駆動させて順次撮像するようにしてもよい。
近赤外線照射範囲の垂直方向に設けられた2つの近赤外線LED(図示せず)は、空調室内の奥行方向に近赤外線を照射する。主に、垂直方向の上側の近赤外線LEDは、空調室内の壁面に近赤外線を照射し、下側の近赤外線LEDは、空調室内の床面に近赤外線を照射している。
この2つの近赤外線LEDは、同時に点灯してもよいし、別々に点灯してもよい。空調室内の奥行方向の壁面を主に撮像する場合には、上側の近赤外線LEDを駆動し、空調室内の奥行方向の床面を主に撮像する場合には、下側の近赤外線LEDを駆動して、近赤外線の発光強度を制御するようにしてもよい。
次に、図9により、上記の近赤外線の照射をおこなって近赤外線の室内画像を検出し、可視光の室内画像の検出結果と複合して、空調制御をおこなう制御フローの一例を説明する。
この制御により、撮像画像から人体の位置及び活動量を検出し、近赤外線照射時の撮像画像から家具を検出して、空調運転時、家具を避けて人の在室しているエリアに送風を行う。また、空気調和機Sからの送風が家具にあたり滞留することにより発生する無駄な空調を省く事により、効率よく室内の空調を行うことができる。
ここで、空気調和機Sからの送風の制御は、風向制御を行う上下風向板および左右風向板、風量、風速の調整を行う室内還流ファンモータを、駆動することにより行うものとする。
以下、図9にしたがいフローを説明する。
まず、左・中央・右の3方向に撮像手段110を順次回動して可視光の室内画像情報を取得する(S110)。S110で取得した可視光の室内画像情報から、画像検出により、位置と空気調和機Sとの距離とを含む人位置を検出する(S111)。
次に、右・中央・左の3方向に撮像手段を順次回動し、撮像手段の回動に連動して近赤外線を照射して近赤外線の室内の画像情報を取得する(S112)。S112で取得した近赤外線の室内画像情報から、画像検出により、物形状・位置を含む物位置を検出する(S113)。
S111で検出した人位置とS113で検出した物位置とを複合して、物を避けて人に空調風を送るような送風方向を決定する(S114)。
なお、検出結果は上記に限定されず、また、検出結果による制御内容も上記に限定されるものでなく、種々の検出・制御をおこなうことができる。
図10は、分割して取得された近赤外画像を合成して画像検出用の画像を取得する場合の例を示した図である。
本実施形態では、近赤外線投光器115は撮像素子112の撮像範囲の一部を含む所定の範囲に近赤外線を照射するので、一度に画像検出を行うことができない。そこで、本実施形態では、一部に近赤外線が照射されている複数の撮像画像から近赤外線が照射されている範囲のみを合成して一つの画像として処理を行う。図10に示す例では、撮像範囲αに対し、照射範囲βa、βb、βc、βdの4つの範囲に分けて近赤外線投光器115を照射している。このとき、それぞれの照射範囲に向けて照射した際に撮像した撮像画像a、撮像画像b、撮像画像c、撮像画像dを合成して一つの合成画像を作成している。
このとき、撮像された画像上の物体が、実際の位置と異なる位置とならないよう撮像された撮像画像のうち近赤外線投光器115が照射されている範囲を切り出して、他の撮像画像に置換える操作を行う際は、元の画像と同様の位置に配置する必要がある。
しかしながら、撮像素子112が駆動される構成となっている場合、駆動部品には構造的な遊びが必要となるため、部品のガタ付きなどにより、一度撮像素子112を駆動させた後、全く同様の画角を再現させる事が出来ない場合がある。
そこで、本実施形態では、近赤外線投光器115を走査して、撮像素子112を動作させずに一連の流れで撮影を行う。画像を合成した場合のズレ等が生じず、より正確な物体検出等を行う事ができる。
なお、合成画像を作成する代わりに、撮像画像のうち近赤外線が照射されている範囲のみを画像処理を行い、近赤外線投光器115の照射範囲を変えて撮像した画像を順次処理するようにしてもよい。
また、近赤外線投光器115の照射範囲のみの画像検出を行う場合、検出対象が近赤外線の照射されている範囲より大きい場合、検出精度が落ちてしまうことから、検出対象に応じて近赤外線の照射範囲を設定するのが望ましい。
本実施形態では、近赤外線を用いた場合について説明したが、近赤外線を中赤外線、遠赤外線と読み替えて、中赤外線や遠赤外線を用いるようにしてもよい。
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。