JP2016056053A - 多孔質炭素材料および多孔質炭素材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
表面積の利用効率が高く、かつ物質の流動速度や充填速度が速い多孔質炭素材料を提供する。
【解決手段】
構造周期が100〜3,000nmのマクロ共連続多孔構造と、該マクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格に形成された構造周期が1〜50nmのミクロ共連続多孔構造とを有する多孔質炭素材料。
【選択図】なし
表面積の利用効率が高く、かつ物質の流動速度や充填速度が速い多孔質炭素材料を提供する。
【解決手段】
構造周期が100〜3,000nmのマクロ共連続多孔構造と、該マクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格に形成された構造周期が1〜50nmのミクロ共連続多孔構造とを有する多孔質炭素材料。
【選択図】なし
Description
本発明は、吸着材料や電極材料など様々な用途に展開可能な多孔質炭素材料および多孔質炭素材料の製造方法に関するものである。
多孔質炭素材料は吸着材料、電極材料、触媒担体、分離膜など幅広い領域で利用可能な材料であり、活性炭、カーボンナノチューブ、メソポーラスシリカ、ゼオライト、微粒子などを鋳型とする鋳型カーボンなどが種々検討されている。
それらの中でも活性炭はその大きな比表面積を活かして吸着材料、電極材料、触媒担体などの工業材料を中心に広く用いられている。一般に、活性炭は植物質や樹脂などを炭化して得た炭素材料をガスや薬剤で賦活することにより微細な細孔を形成する。しかしながら賦活では細孔が炭素材料の表面から内部へと一方向へ形成されるため、分子やイオンなどの物質が細孔内を流動する際に圧力損失が大きくなり、物質の流動速度や充填速度が遅い課題があった。
また、賦活で形成された細孔は孔径が不均一であるため、細孔の孔径より大きい物質は細孔内に進入できず、さらに、その細孔は連通していないため、活性炭が凝集すると細孔が閉塞する場合があった。そのため、多孔質の炭素材料が有する本来の表面積を十分活用できず、吸着材料、電極材料、触媒担体として十分に性能が出ない課題があった。
上記のような課題に対し、特許文献1にはメソ孔の炭素質壁にミクロ孔が形成された多孔質炭素材料が示されている。
特許文献1に記載の多孔質炭素材料は、メソ孔を有することにより、物質が細孔内を流動する際の圧力損失が低下して流動速度や充填速度は改善される。しかしながら、形成したミクロ孔は一方向へ形成されているため、依然として物質が細孔内を流動する際に圧力損失が大きくなって物質の流動速度や充填速度が遅い課題があった。
本発明は、表面積の利用効率が高く、かつ物質の流動速度や充填速度が速い多孔質炭素材料を提供することを課題とする。
上記の課題を解決する本発明は、構造周期が100〜3,000nmのマクロ共連続多孔構造と、該マクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格に形成された構造周期が1〜50nmのミクロ共連続多孔構造とを有する多孔質炭素材料である。
本発明の多孔質炭素材料は、孔径が均一かつ連通したマクロな共連続多孔構造の骨格中に、孔径が均一で連通したミクロな共連続多孔構造が形成された構造であるため、表面積の利用効率が高い。また、物質が細孔内を流動または充填する際の流動速度や充填速度が速いため、例えば、吸着・脱着速度や充填速度が向上する。そのため、浄化用途や医療用途に用いられる吸着材料、リチウムイオン電池やキャパシタなどに用いられる電極材料などとして高い性能を発揮することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本明細書において「〜」はその両端の数値を含む範囲を表すものとする。
<多孔質炭素材料>
〔マクロ共連続多孔構造〕
本発明の多孔質炭素材料(以下、単に「材料」ということがある。)は、マクロな共連続多孔構造(以下、マクロ共連続多孔構造という)を構成する炭素骨格に、ミクロな共連続多孔構造(以下、ミクロ共連続多孔構造という)が形成された構造を有する。
〔マクロ共連続多孔構造〕
本発明の多孔質炭素材料(以下、単に「材料」ということがある。)は、マクロな共連続多孔構造(以下、マクロ共連続多孔構造という)を構成する炭素骨格に、ミクロな共連続多孔構造(以下、ミクロ共連続多孔構造という)が形成された構造を有する。
共連続多孔構造とは、枝部(炭素骨格)と細孔部(空隙)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造のことを指す。マクロ共連続多孔構造は、走査型電子顕微鏡を用いて倍率5万倍で多孔質炭素材料を観察した際、奥行き方向に枝部(炭素骨格)と細孔部(空隙)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合っていることにより確認することができる。
本発明の多孔質炭素材料におけるマクロ共連続多孔構造の構造周期は100〜3,000nmである。構造周期が100nm以上であると物質の流動速度や充填速度が向上する。マクロ共連続多孔構造の構造周期は300nm以上がより好ましく、500nm以上がさらに好ましい。一方、構造周期が3,000nm以下であると、大きな比表面積を確保しつつ、引張、圧縮、曲げなどの機械強度を保つことができる。マクロ共連続多孔構造の構造周期は、2,000nm以下がより好ましい。
ここでマクロ共連続多孔構造の構造周期とは、多孔質炭素材料にX線を入射し、散乱強度がピーク値を持つ位置の散乱角度2θより、下式で算出されるものである。なお、後述するミクロ共連続構造に由来する散乱も同時に観測されるため、散乱強度のピークは2つ観測されることになるが、より小角側の散乱ピークをマクロ共連続多孔構造の構造周期とする。マクロ共連続多孔構造の構造周期が大きいために小角での散乱が観測できない場合、散乱強度のピークが1つしか観測されないことがある。その場合には、X線CT法によって多孔質炭素材料を三次元撮影し、その三次元画像をフーリエ変換により二次元スペクトルの円環平均を取って一次元スペクトルを得る。続いてその一次元スペクトルにおけるピーク値に対応する特性波長を求め、その逆数により、マクロ共連続多孔構造の構造周期を算出する。
構造周期:L、λ:入射X線の波長
また、マクロ共連続多孔構造の空隙によって形成される細孔(以下、マクロ細孔という)の平均直径は50〜1,500nmが好ましい。マクロ細孔の平均直径が大きいほど圧力損失が低下して吸着・脱着速度や充填速度が向上する。そのため、マクロ細孔の平均直径は100nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましい。一方、マクロ細孔の平均直径が小さいほどBET比表面積が大きくなる。そのため、マクロ細孔の平均直径は1,400nm以下がより好ましく、1,300nm以下がさらに好ましい。
また、マクロ共連続多孔構造の空隙によって形成される細孔(以下、マクロ細孔という)の平均直径は50〜1,500nmが好ましい。マクロ細孔の平均直径が大きいほど圧力損失が低下して吸着・脱着速度や充填速度が向上する。そのため、マクロ細孔の平均直径は100nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましい。一方、マクロ細孔の平均直径が小さいほどBET比表面積が大きくなる。そのため、マクロ細孔の平均直径は1,400nm以下がより好ましく、1,300nm以下がさらに好ましい。
ここでマクロ細孔の平均直径の測定は、水銀圧入法による細孔径分布測定によって得た測定値を用いる。水銀圧入法は多孔質炭素材料の細孔に圧力を加えて水銀を浸入させ、圧力と圧入された水銀量から細孔容積と比表面積を求める。そして細孔を円筒と仮定したときに細孔容積と比表面積の関係から得た細孔直径をマクロ細孔の平均直径とする。
本発明の多孔質炭素材料では、マクロ細孔は物質を流す流路や物質を充填する部分としての役割を有する。マクロ細孔を有することにより、ミクロ共連続多孔構造の細孔(以下、ミクロ細孔という)のみからなる多孔質炭素材料と比べて、材料の外部からミクロ細孔内へと至る距離(流路長)が短くなる。その結果、圧力損失が低下して物質の流動速度や充填速度が速くなる。また、マクロ細孔が共連続多孔構造であることによってミクロ細孔が閉塞しにくくなり、表面積の利用効率が向上する。したがって、例えば吸着材料に適用すると吸着・脱着速度が速い材料となり、また、電池材料に適用すると充放電レートが大きい材料となる。さらに、炭素骨格が三次元的に連続する構造であるため、活性炭と比較して電気伝導性や熱伝導性が高くなり、電気抵抗が低い材料とすることができる。加えて炭素骨格が互いに構造体を支えあう効果により、引張、圧縮、曲げなどの機械強度が向上する材料となる。
〔ミクロ共連続多孔構造〕
本発明の多孔質炭素材料は、マクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格に構造周期が1〜50nmのミクロ共連続多孔構造が形成されている。ミクロ共連続多孔構造の構造周期が1nm以上であると物質の流動速度や充填速度が向上する。一方、構造周期が50nm以下であると大きなBET比表面積を確保しつつ、引張、圧縮、曲げなどの機械強度を保つことができる。そのためミクロ共連続多孔構造の構造周期は40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。ここでミクロ共連続多孔構造の構造周期の測定方法は、多孔質炭素材料にX線を入射し、散乱強度がピーク値を持つ位置の散乱角度2θより、下式で算出されるものである。なお、マクロ共連続構造に由来する散乱も同時に観測され、散乱強度のピークが2つ観測される場合は、より広角側の散乱ピーク値の散乱角度を採用してミクロ共連続多孔構造の構造周期を算出する。
本発明の多孔質炭素材料は、マクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格に構造周期が1〜50nmのミクロ共連続多孔構造が形成されている。ミクロ共連続多孔構造の構造周期が1nm以上であると物質の流動速度や充填速度が向上する。一方、構造周期が50nm以下であると大きなBET比表面積を確保しつつ、引張、圧縮、曲げなどの機械強度を保つことができる。そのためミクロ共連続多孔構造の構造周期は40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。ここでミクロ共連続多孔構造の構造周期の測定方法は、多孔質炭素材料にX線を入射し、散乱強度がピーク値を持つ位置の散乱角度2θより、下式で算出されるものである。なお、マクロ共連続構造に由来する散乱も同時に観測され、散乱強度のピークが2つ観測される場合は、より広角側の散乱ピーク値の散乱角度を採用してミクロ共連続多孔構造の構造周期を算出する。
構造周期:L、λ:入射X線の波長
本発明の多孔質炭素材料はミクロ共連続多孔構造が構造周期を有するため、ミクロ細孔の平均直径が均一で連通している。そのため、吸着や充填する物質のサイズより小さい細孔が形成されず、かつ細孔が閉塞しにくくなる効果によって表面積や細孔容積の利用効率が高くなり、吸着・脱着量や充填量が大きい材料とすることができる。
本発明の多孔質炭素材料はミクロ共連続多孔構造が構造周期を有するため、ミクロ細孔の平均直径が均一で連通している。そのため、吸着や充填する物質のサイズより小さい細孔が形成されず、かつ細孔が閉塞しにくくなる効果によって表面積や細孔容積の利用効率が高くなり、吸着・脱着量や充填量が大きい材料とすることができる。
ミクロ共連続多孔構造が共連続多孔構造であることは、三次元透過型電子顕微鏡で多孔質炭素材料のマクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格を観察した際、奥行き方向に枝部(炭素部)と細孔部(空隙)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合っていることにより確認することができる。ここで顕微鏡の観察方法としては、ミクロ共連続多孔構造の構造周期の0.1倍以下の長さを1画素とする解像度で、ミクロ共連続多孔構造の構造周期の20倍の長さを一辺とする立方体の領域を三次元観察する。
ミクロ細孔の平均直径は0.5〜25nmが好ましい。ミクロ細孔の平均直径が大きいほど分子量が大きい分子やイオンなどの物質を吸着・脱着、充填することが可能になり、また吸着・脱着速度や充填速度が向上する。一方、ミクロ細孔の平均直径が小さいほどBET比表面積が大きくなる。ミクロ細孔の平均直径は、吸着・脱着、充填する物質により適宜設定することが可能であるが、目的とする吸着物質などの直径に対して1.1〜2.0倍程度に適宜調整すると吸着効率が高くなることから好ましい。
なお、本発明においてミクロ細孔の平均直径は窒素吸着法によって測定し、MP法またはBJH法のいずれかの方法で解析した結果による測定値を用いる。すなわち、MP法またはBJH法による測定値のどちらか一方が0.5〜25nmの範囲に入っていればよい。MP法やBJH法は細孔径分布解析法として広く用いられている方法であり、多孔質炭素材料に窒素を吸着・脱着させることにより求めた脱着等温線に基づいて求めることができる。MP法は吸着等温線の各点での接線の傾きの変化から求められる各区間の外部表面積と吸着層厚み(細孔形状を円筒形とするため細孔半径に相当)を基に細孔容積を求め、吸着層厚みに対してプロットすることにより、細孔径分布を得る方法であり、主として0.4〜2nmの直径を有する細孔に適用できる。本発明では、いずれも小数第二位を四捨五入して、小数第一位まで求めた値を用いる。また、BJH法はBarrett-Joyner-Halendaの標準モデルに従って円筒状と仮定した細孔の直径に対する細孔容積の分布を解析する方法であり、主として2〜200nmの直径を有する細孔に適用できる。
さらに、本発明の多孔質炭素材料を窒素吸着法で測定した細孔容積は0.1cm3/g以上が好ましく、1.0cm3/g以上がより好ましく、1.5cm3/g以上がさらに好ましい。細孔容積が0.1cm3/g以上であることにより、吸着物質の吸着性能などがより向上する。上限は特に限定されないが、10cm3/gを超えると、多孔質炭素材料の強度が低下し、取り扱い性が悪くなる傾向がある。
〔多孔質炭素材料〕
本発明の多孔質炭素材料は、BET比表面積が100m2/g以上であることが好ましく、それにより物質の吸着・脱着量が向上する。そのため300m2/g以上がより好ましく、500m2/g以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、4,500m2/gを超えると多孔質炭素材料の強度が低下して取り扱い性が悪くなるため4,500m2/g以下が好ましい。なお本発明におけるBET比表面積は、JISR 1626(1996)に準じ、多孔質炭素材料に窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータをBET式に基づいて算出する。
本発明の多孔質炭素材料は、BET比表面積が100m2/g以上であることが好ましく、それにより物質の吸着・脱着量が向上する。そのため300m2/g以上がより好ましく、500m2/g以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、4,500m2/gを超えると多孔質炭素材料の強度が低下して取り扱い性が悪くなるため4,500m2/g以下が好ましい。なお本発明におけるBET比表面積は、JISR 1626(1996)に準じ、多孔質炭素材料に窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータをBET式に基づいて算出する。
〔共連続多孔構造を実質的に有しない部分〕
本発明の多孔質炭素材料は、共連続多孔構造を実質的に有しない部分(以下、単に「共連続多孔構造を有しない部分」という場合がある。)を含んでいることも好ましい態様である。共連続多孔構造を実質的に有しない部分とは、クロスセクションポリッシャー法(CP法)により形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)の倍率で観察した際に、1画素以下であることにより明確な細孔(空隙)が観察されない部分が、一辺が後述のX線から算出される構造周期Lの3倍に対応する正方形の領域以上の面積で存在することを意味する。
本発明の多孔質炭素材料は、共連続多孔構造を実質的に有しない部分(以下、単に「共連続多孔構造を有しない部分」という場合がある。)を含んでいることも好ましい態様である。共連続多孔構造を実質的に有しない部分とは、クロスセクションポリッシャー法(CP法)により形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)の倍率で観察した際に、1画素以下であることにより明確な細孔(空隙)が観察されない部分が、一辺が後述のX線から算出される構造周期Lの3倍に対応する正方形の領域以上の面積で存在することを意味する。
共連続多孔構造を実質的に有しない部分には炭素が緻密に充填されているため電子伝導性が高い。そのため、電気伝導性や熱伝導性が高くなり、例えば電池材料として使用した場合に反応熱を系外へ速やかに排出することや、電子の授受に際しての抵抗を低くすることが可能である。また、共連続構多孔造を有しない部分が存在することで、特に圧縮破壊に対する耐性を高めることが可能である。
共連続多孔構造を有しない部分の割合は、各用途によって適宜調整することができる。例えば、分画材料として共連続多孔構造を有しない部分を壁面として使用する場合や、電池材料として使用する場合は、5体積%以上が共連続多孔構造を有しない部分とすることで、流体が共連続多孔構造部分から漏出することを防止したり、電気伝導性や熱伝導性を高いレベルで維持したりすることが可能であるため好ましい。
また、共連続多孔構造部分を流路、共連続多孔構造を有しない部分を機能部分とした機能性材料とすることも可能であり、具体的には共連続多孔構造部分における細孔を流路としてガスまたは液体を流し、共連続多孔構造を有しない部分において分離を行うことができる。
共連続多孔構造を有しない部分がマクロ共連続多孔構造を有する部分を覆う形態である場合には、より効率的にマクロ細孔内へ流体を充填または流すことが可能となる。以降、このような形態の多孔質炭素材料において、マクロ共連続多孔構造を有する部分をコア層、そしてコア層を覆うように形成された共連続多孔構造を実質的に有しない部分をスキン層と呼ぶ。スキン層とコア層からなる構造であると、例えば分離膜用途に用いた場合には、スキン層を分離機能層とし、コア層を流体の流路とすることで、効率的に分離を行うことができる。
スキン層は、コア層の周囲に形成された共連続多孔構造を実質的に有しない部分である。スキン層の厚みは特に限定されず、材料の用途に応じて適宜選択することができるが、厚すぎると多孔質炭素材料として空隙率が低下する傾向が見られることから、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。また、スキン層の厚みの下限についても特に限定されないが、材料の形態を保ち、コア層と区別された機能を発揮させる観点から1nm以上が好ましい。
〔多孔質炭素材料の形状〕
本発明の多孔質炭素材料の形状は特に限定されず、例えば塊状、棒状、平板状、円盤状、球状などが挙げられるが、中でも繊維状、フィルム状、粉末状の形態が好ましい。
本発明の多孔質炭素材料の形状は特に限定されず、例えば塊状、棒状、平板状、円盤状、球状などが挙げられるが、中でも繊維状、フィルム状、粉末状の形態が好ましい。
繊維状の形態とは、繊維の平均直径に対して平均長さが100倍以上のものを指し、フィラメント、長繊維であっても、ステープル、短繊維、チョップドファイバーであってもよい。また断面の形状は、何ら制限されず、丸断面、三角断面などの多葉断面、扁平断面や中空断面など任意の形状とすることが可能である。
特に、マクロ共連続多孔構造を有するコア層を芯とし、その周囲に共連続多孔構造を実質的に有しないスキン層が形成された繊維である場合には、コア層に流体を充填または流すことができる。また高圧で流体を充填または流す際には、共連続多孔構造の炭素骨格が互いに支えあう構造となるため、引張、圧縮、曲げなどの機械強度が向上する。
繊維の平均直径は特に限定されず、用途に応じて任意に決定することができるが、取り扱い性や多孔質を維持する観点から10nm以上が好ましい。また曲げ剛性を確保して、取り扱い性が向上する観点から5mm以下が好ましい。
フィルム状の形態は、共連続多孔構造に他の素材を複合してそのままシートとして使用が可能になるため、例えば電池材料の電極や電磁波遮蔽材などの用途に用いることができる。特にマクロ共連続多孔構造を有するコア層と、その片面または両面に共連続多孔構造を実質的に有しないスキン層を有するフィルムである場合には、スキン層が電気伝導性や熱伝導性を高いレベルで維持でき、他素材との接着などに好適な界面として機能するため好ましい。さらにスキン層はフィルムの一面のみに形成された形態であると、コア層と他の素材との複合化が容易になるため好ましい。
フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて任意に決定することができるが、取り扱い性を考慮した場合、10nm以上が好ましく、曲げによる破損を防止する観点から5mm以下が好ましい。
粒子状の形態は、例えば吸着材や電池材料用途などに好適に用いられる。共連続多孔構造を有しない部分が、粒子1個のうちの一部を占めることにより、粒子内における電気伝導性、熱伝導性を高めることが可能になるほか、粒子自体の圧縮強度を高めることができるため好ましい。
また、粒子の直径は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することが可能であるが、10nm〜10mmの範囲であると、取り扱い性が向上するため好ましい。特に10μm以下であると、例えばペーストを形成する固形分として非常に滑らかなものが得られるため、塗布などの工程におけるペーストはがれや割れなどの欠点を防止することが可能である。一方、0.1μm以上であると、樹脂などと複合化した場合に、フィラーとしての強度向上効果を充分に発揮させられるため好ましい。
<多孔質炭素材料の製造方法>
本発明の多孔質炭素材料は、一例として、炭化可能樹脂10〜90重量%と消失樹脂90〜10重量%とを相溶させて樹脂混合物とする工程(工程1)と、相溶した状態の樹脂混合物を相分離させる工程(工程2)、炭化可能樹脂に溶解せず、かつ消失樹脂に溶解する溶媒により消失樹脂を溶解除去する工程(工程3)、加熱焼成により炭化する工程(工程4)とを有する製造方法により製造することができる。
本発明の多孔質炭素材料は、一例として、炭化可能樹脂10〜90重量%と消失樹脂90〜10重量%とを相溶させて樹脂混合物とする工程(工程1)と、相溶した状態の樹脂混合物を相分離させる工程(工程2)、炭化可能樹脂に溶解せず、かつ消失樹脂に溶解する溶媒により消失樹脂を溶解除去する工程(工程3)、加熱焼成により炭化する工程(工程4)とを有する製造方法により製造することができる。
〔工程1〕
工程1は、炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。
工程1は、炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。
炭化可能樹脂とは、焼成により炭化し、炭素材料として残存する樹脂であり、炭化収率が40%以上のものが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の双方を用いることができ、熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンエーテル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステルなどが挙げられ、熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。コストや生産性の点でポリアクリロニトリル、フェノール樹脂が好ましく、ポリアクリロニトリルがより好ましい。特に本発明では、ポリアクリロニトリルでも高比表面積が得られることから好ましい態様である。これらは単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。ここでいう炭化収率は、熱重量測定(TG)法で、窒素雰囲気下、10℃/分で昇温したときの重量変化を測定し、室温での重量と800℃での重量との差を、室温での重量で除したものをいう。
一方、消失樹脂とは、後述する工程3により除去可能な樹脂である。工程1においては、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶させ、樹脂混合物(ポリマーアロイ)とする。ここでいう「相溶させ」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離構造が観察されない状態を作り出すことをいう。
炭化可能樹脂と消失樹脂は、樹脂同士のみの混合により相溶させてもよいし、溶媒などを加えることにより相溶させてもよい。
複数の樹脂が相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また、特に炭化可能樹脂と消失樹脂の少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものも好適な例として挙げられる。
相溶する系の具体的な炭化可能樹脂と消失樹脂の組み合わせ例としては、溶媒を含まない系であれば、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/スチレン−アクリロニトリル共重合体、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリカーボネートなどが挙げられる。溶媒を含む系の具体的な組合せ例としては、ポリアクリロニトリル/ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル/ポリ乳酸、ポリビニルアルコール/酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール/ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール/デンプンなどを挙げることができる。
炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する方法については限定されず、均一に混合できる限りにおいて公知の種々の混合方式を採用できる。具体例としては、攪拌翼を持つロータリー式のミキサーや、スクリューによる混練押出機などが挙げられる。
また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際の温度を、炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることも好ましい態様である。ここで軟化する温度とは、炭化可能樹脂または消失樹脂が結晶性高分子であれば融点、非晶性樹脂であればガラス転移点温度を適宜選択すればよい。混合温度を炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることで両者の粘性を下げられるため、より効率のよい攪拌、混合が可能になる。混合温度の上限についても特に限定されないが、熱分解による樹脂の劣化を防止し、品質に優れた多孔質炭素材料の前駆体を得る観点から、400℃以下が好ましい。
工程1においては、炭化可能樹脂10〜90重量%に対し消失樹脂90〜10重量%を混合する。炭化可能樹脂と消失樹脂が前記の範囲内であると、細孔の平均直径や空隙率を任意に設計できるため好ましい。炭化可能樹脂が10重量%以上であれば、炭化後の材料の機械強度を保つことができるほか、材料の収率が向上するため好ましい。また炭化可能な材料が90重量%以下であれば、消失樹脂が効率よく細孔を形成できるため好ましい。
炭化可能樹脂と消失樹脂の混合比については、それぞれの材料の相溶性を考慮して、上記の範囲内で任意に選択することができる。具体的には、一般に樹脂同士の相溶性はその組成比が1対1に近づくにつれて悪化するため、相溶性のあまり高くない系を原料に選択した場合には、炭化可能樹脂の量を増やす、または減らして相溶性を改善することも好ましい。
溶媒を添加する場合、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶化させやすくなることに加え、炭化可能樹脂と消失樹脂の粘性を下げ、成形を容易にする効果を奏する。溶媒の種類については特に限定されず、炭化可能樹脂、消失樹脂のうち少なくともいずれか一方を溶解、膨潤させることが可能な常温で液体であればよいが、溶解性の指標となる炭化可能樹脂と消失樹脂の溶解度パラメーター(SP値)の平均値と、溶媒のSP値との差の絶対値が、5.0以下となる溶媒が好ましい。SP値の平均値と溶媒のSP値との差の絶対値が小さいほど樹脂の溶解性が高いことが知られているため、差が小さいことが好ましい。このことからSP値の平均値と溶媒のSP値との差の絶対値は、3.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。炭化可能樹脂および消失樹脂をいずれも溶解する溶媒であれば、両者の相溶性が向上するためより好ましい。
溶媒の添加量は、炭化可能樹脂と消失樹脂の相溶性を向上させ、粘性を下げて流動性を改善する観点から炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して20重量%以上が好ましい。また一方で溶媒の回収、再利用に伴うコストの観点から、炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して90重量%以下が好ましい。
〔工程2〕
工程2は、工程1において相溶させた樹脂混合物を、化学反応を伴わない方法で相分離させて微細構造を形成する工程である。
工程2は、工程1において相溶させた樹脂混合物を、化学反応を伴わない方法で相分離させて微細構造を形成する工程である。
一般的に、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離は、種々の物理的、化学的手法により誘発することができ、例えば温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法、物理的な場によって相分離を誘発する流動誘起相分離法、配向誘起相分離法、電場誘起相分離法、磁場誘起相分離法、圧力誘起相分離法、化学反応を用いて相分離を誘発する反応誘起相分離法などが挙げられる。これらの各種相分離法のうち、反応誘起相分離は重合の際に弾性率の向上などの特性変化が生じて繊維やフィルムなどの構造体に成形しにくいこと、そして他の手法に比べて高コストであるため、本発明の製造方法からは除かれる。
上記の相分離法の中では、本発明の多孔質炭素材料を容易に製造できる点で、非溶媒誘起相分離法や熱誘起相分離法が好ましい。このような相分離法は、単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用する場合の具体的な方法は、例えば凝固浴を通して非溶媒誘起相分離を進行させた後、加熱または冷却して熱誘起相分離を起こす方法や、凝固浴の温度を制御して非溶媒誘起相分離と熱誘起相分離を同時に起こす方法、口金から吐出された材料を冷却して熱誘起相分離を起こした後に非溶媒と接触する方法などが挙げられる。
〔工程3〕
工程3は、工程2において相分離で微細構造を形成させた後、炭化可能樹脂に溶解せず、かつ消失樹脂に溶解する溶媒により消失樹脂を溶解除去して、多孔質炭素材料の前駆体を得る工程である。
工程3は、工程2において相分離で微細構造を形成させた後、炭化可能樹脂に溶解せず、かつ消失樹脂に溶解する溶媒により消失樹脂を溶解除去して、多孔質炭素材料の前駆体を得る工程である。
消失樹脂を溶媒で溶解除去することにより、樹脂マトリックスの共連続多孔構造(焼成後にマクロ共連続多孔構造になる構造)が形成されるとともに、樹脂マトリックスの骨格にさらに微細な共連続多孔構造(焼成後にミクロ共連続多孔構造になる構造)が形成された構造を有する多孔質炭素材料前駆体となる。
消失樹脂に溶解する溶媒の種類は特に限定されず、炭化可能樹脂が溶解せず、消失樹脂が溶解しない溶媒であれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、水、エタノール、メタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、リモネン、フェノール、クレゾール、2−クロロフェノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどを用いることができる。炭化可能樹脂としてポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエステル、ポリアクリロニトリルを用いる場合、溶媒として水を用いるとミクロ共連続多孔構造が形成しやすく、また、環境負荷が小さいため好ましい。
工程3は、工程2で相分離させた後に連続的に溶媒に浸漬して溶解する方法、あるいはバッチ式で溶媒に浸漬して溶解する方法のいずれも採用できる。
消失樹脂の除去率は、最終的に多孔質炭素材料となった際に80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
多孔質炭素材料前駆体の微細な共連続多孔構造に形成された細孔の平均直径は、炭化後に所望のミクロ共連続多孔構造の細孔の平均直径となるように適宜設定することが可能であるが、2〜50nmの範囲になるように設定することが好ましい。ここでの細孔の平均直径の測定は上述のミクロ共連続多孔構造の細孔の平均直径の測定と同様に行うことができる。前駆体の微細な共連続多孔構造に形成された細孔の平均直径を決める因子は、工程1における炭化可能樹脂と消失樹脂の混合比、樹脂と溶媒の混合比(ポリマー濃度)、工程2における相分離法の種類、原液温度、凝固浴温度、繊維径、フィルム厚み、工程3における溶媒の種類、溶媒の温度、溶媒への浸漬時間、その他繊維やフィルムの延伸の有無等であり、これらは目的とする平均直径に応じて適宜実験的に定めることができる。
樹脂マトリックスの共連続多孔構造の骨格に微細な共連続多孔構造が形成されるメカニズムは十分明らかではないが、例えば、相溶させた樹脂混合物が工程2で炭化可能樹脂の濃厚相と消失樹脂の濃厚相に相分離する過程において炭化可能樹脂の濃厚相中に消失樹脂が残存し、続いて当該炭化可能樹脂の濃厚相中でさらに炭化可能樹脂と残存している消失樹脂の相分離が進行することで、このような構造が形成される可能性が考えられる。
〔不融化処理〕
工程3において相分離後の微細構造が固定化された樹脂混合物である多孔質炭素材料前駆体は、工程4の炭化工程に供される前に不融化処理を行うことが好ましい。不融化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法などが挙げられ、中でも酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法が、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用しても、それぞれを同時に使用しても別々に使用してもよい。
工程3において相分離後の微細構造が固定化された樹脂混合物である多孔質炭素材料前駆体は、工程4の炭化工程に供される前に不融化処理を行うことが好ましい。不融化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法などが挙げられ、中でも酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法が、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用しても、それぞれを同時に使用しても別々に使用してもよい。
酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法における加熱温度は、架橋反応を効率よく進める観点から150℃以上が好ましく、炭化可能樹脂の熱分解、燃焼などによる重量ロスに起因する収率悪化を防ぐ観点から、350℃以下が好ましい。
また処理中の酸素濃度については特に限定されないが、18%以上の酸素濃度を持つガス、特に空気をそのまま供給することが製造コストを低く抑えることが可能となるため好ましい。ガスの供給方法については特に限定されないが、空気をそのまま加熱装置内に供給する方法や、ボンベなどを用いて純酸素を加熱装置内に供給する方法などが挙げられる。
電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法としては、市販の電子線発生装置やガンマ線発生装置などを用いて、炭化可能樹脂へ電子線やガンマ線などを照射することで、架橋を誘発する方法が挙げられる。照射による架橋構造の効率的な導入から照射強度の下限は1kGy以上であると好ましく、主鎖の切断による分子量低下から材料強度が低下するのを防止する観点から1,000kGy以下が好ましい。
反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法は、反応性基を持つ低分子量化合物を樹脂混合物に含浸して、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法、予め反応性基を持つ低分子量化合物を混合しておき、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法などが挙げられる。
〔工程4〕
工程4は炭化可能樹脂を焼成して炭化物を得る工程である。焼成は不活性ガス雰囲気において500℃以上に加熱することにより行うことが好ましい。ここで不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものをいい、具体的な例としては、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素などである。中でも窒素、アルゴンを用いることが、経済的な観点から好ましい。炭化温度を1,500℃以上とする場合には、窒化物の形成を抑制する観点からアルゴンを用いることが好ましい。
工程4は炭化可能樹脂を焼成して炭化物を得る工程である。焼成は不活性ガス雰囲気において500℃以上に加熱することにより行うことが好ましい。ここで不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものをいい、具体的な例としては、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素などである。中でも窒素、アルゴンを用いることが、経済的な観点から好ましい。炭化温度を1,500℃以上とする場合には、窒化物の形成を抑制する観点からアルゴンを用いることが好ましい。
また不活性ガスの流量は、加熱装置内の酸素濃度を充分に低下させられる量であればよく、加熱装置の大きさ、原料の供給量、加熱温度などによって適宜最適な値を選択することが好ましい。流量の上限についても特に限定されないが、経済性や加熱装置内の温度変化を少なくする観点から、温度分布や加熱装置の設計に合わせて適宜設定することが好ましい。また炭化時に発生するガスを系外へ充分に排出できると、品質に優れた多孔質炭素材料を得ることができるため、より好ましい態様であり、このことから系内の発生ガス濃度が3,000ppm以下となるように不活性ガスの流量を決定することが好ましい。
加熱する温度の上限は限定されないが、3,000℃以下であれば設備に特殊な加工が必要ないため経済的な観点からは好ましい。また、BET比表面積を高めるためには1,500℃以下が好ましい。
連続的に炭化処理を行う場合の加熱方法については、一定温度に保たれた加熱装置内に、材料をローラーやコンベヤなどを用いて連続的に供給しながら取り出す方法であることが生産性を高くすることが可能であるため好ましい。
一方、加熱装置内にてバッチ式処理を行う場合の昇温速度や降温速度の下限は特に限定されないが、昇温や降温にかかる時間を短縮することで生産性を高めることができるため、1℃/分以上の速度であると好ましい。
〔賦活〕
工程4において得た炭化物をさらに賦活することも可能である。賦活の方法としては、ガス賦活法、薬品賦活法など特に限定されない。ガス賦活法とは、賦活剤として酸素、水蒸気、炭酸ガス、空気などを用い、400〜1500℃、好ましくは500〜900℃にて、数分から数時間、加熱することにより直径0.5〜20nm程度の細孔を形成させる方法である。また、薬品賦活法とは、賦活剤として塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどを1種または2種以上用いて数分から数時間、加熱処理する方法であり、必要に応じて水や塩酸などで洗浄を行った後、pHを調整して乾燥する。
工程4において得た炭化物をさらに賦活することも可能である。賦活の方法としては、ガス賦活法、薬品賦活法など特に限定されない。ガス賦活法とは、賦活剤として酸素、水蒸気、炭酸ガス、空気などを用い、400〜1500℃、好ましくは500〜900℃にて、数分から数時間、加熱することにより直径0.5〜20nm程度の細孔を形成させる方法である。また、薬品賦活法とは、賦活剤として塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどを1種または2種以上用いて数分から数時間、加熱処理する方法であり、必要に応じて水や塩酸などで洗浄を行った後、pHを調整して乾燥する。
賦活することによってBET比表面積が増加する。賦活剤の混合量は、対象とする炭素原料に対し、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上とする。上限は特に限定されないが、10重量部以下が一般的である。また、ガス賦活法より薬品賦活法の方が、細孔径は拡大する傾向にある。
本発明では、細孔径を大きくしたり、BET比表面積を増加させたりできることから、薬品賦活法が好ましく採用される。中でも、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ性薬剤で賦活する方法が好ましく採用される。
アルカリ性薬剤で賦活した場合、酸性官能基量が増大する傾向にあり、用途によっては好ましくない場合がある。この際には、窒素雰囲気下での加熱処理を行うことにより、低減させることもできる。
〔粉砕処理〕
工程4、または賦活を経て得られた炭化物を粉砕処理した多孔質炭素材料も、本発明の多孔質炭素材料の一態様である。粉砕処理は従来公知の方法を選択することが可能であり、粉砕処理を施した後の粒度、処理量に応じて適宜選択されることが好ましい。粉砕処理方法の例としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどが例示できる。粉砕処理は連続式でもバッチ式でも良いが、生産効率の観点から連続式が好ましい。ボールミルに充填する充填材は適宜選択されるが、金属材料の混入が好ましくない用途に対しては、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物によるもの、もしくはステンレス、鉄などを芯としてナイロン、ポリオレフィン、フッ化ポリオレフィンなどをコーティングしたものを用いることが好ましく、それ以外の用途であればステンレス、ニッケル、鉄などの金属が好適に用いられる。
工程4、または賦活を経て得られた炭化物を粉砕処理した多孔質炭素材料も、本発明の多孔質炭素材料の一態様である。粉砕処理は従来公知の方法を選択することが可能であり、粉砕処理を施した後の粒度、処理量に応じて適宜選択されることが好ましい。粉砕処理方法の例としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどが例示できる。粉砕処理は連続式でもバッチ式でも良いが、生産効率の観点から連続式が好ましい。ボールミルに充填する充填材は適宜選択されるが、金属材料の混入が好ましくない用途に対しては、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物によるもの、もしくはステンレス、鉄などを芯としてナイロン、ポリオレフィン、フッ化ポリオレフィンなどをコーティングしたものを用いることが好ましく、それ以外の用途であればステンレス、ニッケル、鉄などの金属が好適に用いられる。
また粉砕の際に、粉砕効率を高める点で粉砕助剤を用いることも好ましい態様である。粉砕助剤は、水、アルコールまたはグリコール、ケトンなどから任意に選ばれる。アルコールは、エタノール、メタノールが入手の容易さやコストの観点から好ましく、グリコールである場合には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどが好ましい。ケトンである場合には、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトンなどが好ましい。
粉砕処理を施された炭化物は、分級することによって粒度が揃い、例えば充填材料やペーストへの添加剤などで均一な構造体を形成できる。このため充填効率やペーストの塗工工程を安定化することが可能になり、生産効率を高めて低コスト化が期待できる。粒径については、粉砕処理後の炭化物の用途に応じて適宜選択することが好ましい。
Claims (8)
- 構造周期が100〜3,000nmのマクロ共連続多孔構造と、該マクロ共連続多孔構造を構成する炭素骨格に形成された構造周期が1〜50nmのミクロ共連続多孔構造とを有する多孔質炭素材料。
- 前記ミクロ共連続多孔構造の細孔の平均直径が0.5〜25nmである、請求項1に記載の多孔質炭素材料。
- さらに、共連続多孔構造を実質的に有しない部分を有する、請求項1または2に記載の多孔質炭素材料。
- BET比表面積が100m2/g以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
- 繊維状またはフィルム状の形態を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素材料を用いた電極材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素材料を用いた吸着材料。
- 工程1:炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%とを相溶させて樹脂混合物とする工程;
工程2:化学反応を伴わない方法で樹脂混合物を相分離させる工程;
工程3:炭化可能樹脂に溶解せず、かつ消失樹脂に溶解する溶媒により消失樹脂を溶解除去する工程;
工程4:焼成により炭化する工程;
をこの順に有する、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
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WO2022059594A1 (ja) * | 2020-09-17 | 2022-03-24 | デンカ株式会社 | 多孔質炭素材料及びその製造方法 |
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-
2014
- 2014-09-09 JP JP2014182875A patent/JP2016056053A/ja active Pending
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