JP2016053044A - ヒトインスリン測定方法及び測定試薬 - Google Patents

ヒトインスリン測定方法及び測定試薬 Download PDF

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Abstract

【課題】ブタインスリンの影響を受けず、ヒトインスリンを正確に測定できる、ヒトインスリンに特異的な抗体と、該抗体を用いた測定方法及び測定試薬の提供。【解決手段】1)〜3)の工程を含む抗ヒトインスリンモノクローナルの製造方法により取られた抗ヒトインスリンモノクローナル抗体。1)ヒトインスリンを抗原として抗ヒトインスリン産生ハイブリドーマを取得する工程、2)1)で取得したハイブリドーマが産生する抗体を、RGFFYTPKTの配列から成る立体構造を喪失したペプチド断片とは反応せずに、インスリンの立体構造が維持された状態で反応する抗体をスクリーニングする工程、3)2)で選択されたハイブリドーマが産生する抗体を取得する工程。更に、前記抗体が豚、牛、犬及び免インスリンと反応せず、更にインスリンリスプロ、インスリンアスパルト等のインスリン類似化合物と反応せず、ヒトインスリンと反応する抗体。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒトインスリンに対して特異的に反応する抗体に関する。さらに本発明は、当該ヒトインスリンに対して特異的に反応するモノクローナル抗体を用いるヒトインスリン測定方法及び測定試薬に関する。
インスリンは、膵臓中のランゲルハンス島β細胞において前駆体であるプロインスリンを経て生成される分子量約5800のペプチドホルモンであり、21アミノ酸よりなるペプチドα鎖(A鎖ともいわれる)と30アミノ酸よりなるペプチドβ鎖(B鎖ともいわれる)により構成されている。インスリンは、糖代謝並びにアミノ酸代謝や脂質代謝に関与し、代表的な生理作用は血糖降下である。糖尿病は、β細胞の減少や機能低下に基づくインスリン分泌不足や末梢組織でのインスリン作用不足により発症する。それゆえ、β細胞のインスリン分泌機能を反映する血中インスリン濃度の測定は、糖尿病の診断や病態の把握及び耐糖能異常の原因鑑別に有用な指標となっている。
一方、インスリン補充療法は糖尿病治療の重要な手段である。従来のウシインスリン、ブタインスリンに加え、遺伝子組換により得られたヒトインスリン、さらには、ヒトインスリンのアミノ酸配列を変化(置換、欠失、付加、挿入)させたり、構成アミノ酸の一部を脂肪酸などで修飾したインスリンアナログ製剤(以下、インスリン類似化合物ということがある)の投与が行われている。このようなインスリン補充療法の臨床上の精密な効果判定などのため、糖尿病患者本人が体内で産生した内因性のインスリンと体外から体内に投与された外来性のインスリンとを区別し、ヒト体内に存在する内因性のヒトインスリンを特異的に測定したいとの要望がある。
モノクローナル抗体を用いたヒトインスリンの測定方法などに関して、次の開示がある。
特許文献1には、水不溶性担体に結合させた抗ヒトインスリンモノクローナル抗体と、該抗体と競合しないエピトープを認識し且つ酵素で標識された抗ヒトインスリンモノクローナル抗体とを用いた酵素免疫測定法(以下、ELISA法ということがある)によるヒトインスリンの定量方法が開示されている。特許文献1には、ブタインスリンをはじめとするヒト以外の動物種由来インスリン及びインスリン類似化合物との反応性について一切記載がなく、ヒトインスリンを特異的に測定できるかどうかは不明である。
特許文献2には、認識部位の異なる2種類のマウス産生抗ヒトインスリンモノクローナル抗体を水不溶性担体に担持させた粒子凝集免疫測定法によるヒトインスリンの定量方法が開示されている。当該2種類のマウス産生抗ヒトインスリンモノクローナル抗体は、特許文献3に記載された方法に基づいて製造したと記載されているが、特許文献3には、ブタインスリンを免疫原としてマウス産生抗ヒトインスリンモノクローナル抗体を製造したことが記載されている。また特許文献2には、粒子凝集免疫測定法に、モルモット産生抗ブタインスリン抗血清から精製したポリクローナル抗体を使用した場合と、2種類のマウス産生抗ヒトインスリンモノクローナル抗体を使用した場合で、標準ヒトインスリンに対する反応性が同様であったことも記載されている。
特許文献3には、ブタインスリンもしくはヒトインスリンに対する単クローン性抗体とその製造方法、及び前記単クローン抗体を用いた放射免疫測定法(以下、RIA法ということがある)が開示されている。特許文献3には、(1)モルモットなどの動物をウシインスリンまたはブタインスリンで免疫して得られる抗血清がヒトインスリンの測定に用いられていること、(2)ウシインスリンを免疫原としたとき、ブタインスリンあるいはヒトインスリンを免疫原にした場合に比較して、ヒトインスリンに対して反応性を有する単クローン性抗体が得られにくいこと、(3)ブタインスリンは、ウシインスリンと違って、B鎖C末端のアミノ酸が相違するに過ぎないので、これを免疫原としてもヒトインスリンに対して反応性を有する単クローン性抗体が得られること、についての言及があったうえで、ブタインスリンを免疫原として単クローン性抗体を取得し、当該取得された単クローン性抗体がブタインスリンとヒトインスリンに対してよく交叉することが記載されている。
特許文献2、3の記載を参酌すると、特許文献3の方法に基づいて作製された特許文献2に記載の2種類のマウス産生抗ヒトインスリンモノクローナル抗体は、ブタインスリンを免疫原としていると推測され、このような抗体はブタインスリンと反応するはずである。
特許文献1、2は、いずれもヒトインスリンに対する認識部位の異なる複数のモノクローナル抗体を用いてヒトインスリンを測定する方法であるが、少なくともブタインスリンと反応しない抗体を使用してヒトインスリンを特異的に測定しようとの発想はない。
非特許文献1〜3では、市販されているヒトインスリン測定試薬の反応特異性(ヒトインスリンに対するブタインスリン、インスリン類似化合物の交差反応性(率))が報告されている。
非特許文献1には、2種類の市販試薬のうち、一方の試薬におけるブタインスリンとの交差反応性が19.2%であり、インスリン類似化合物であるインスリンリスプロとの交差反応性が0.02%未満であること、及び、もう一方の試薬におけるブタインスリンとの交差反応性が100%であり、インスリンリスプロとの交差反応性が75%であったことが記載されている。
非特許文献2には、26種類の市販試薬のうち、16種類の試薬におけるブタインスリンとの交差反応性が19.2%〜450%であり、8種類の試薬におけるインスリンリスプロとの交差反応性が0.1%未満〜100%であったことが記載されている。
非特許文献3には、6種類の市販試薬についてインスリン類似化合物の希釈系列を測定し、1種類の試薬は、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンリスプロとの平均交差反応性が0.7%未満であったが、その他の5種類の試薬は、前記3種類のインスリン類似化合物との平均交差反応性が3.6%〜143%であったことが記載されている。しかし、当該文献には、これらの試薬のブタインスリンとの交差反応性について一切開示されていない。
以上のように、ヒトインスリン測定用の市販試薬のなかに、ブタインスリンと交差反応しない試薬は存在しなかった。また、複数のインスリン類似化合物との交差反応性が0.7%未満の市販試薬は1種類で、10%未満の市販試薬は1種類であった。なお、非特許文献3において、複数のインスリン類似化合物との交差反応性が0.7%未満である市販試薬は、非特許文献1、2におけるブタインスリンとの交差反応性が19.2%である市販試薬であった。
特開平1−148962号公報 特開平3−118472号公報 特開昭60−188327号公報
Clinical chemistry,47〔3〕(2001)P.602−5 Clinical laboratory,49〔3−4〕(2003)P.113−21 Clinical chemistry,50〔1〕(2004)P.257−9
本発明は、ブタインスリンと反応せず、ヒトインスリンと特異的に反応する抗ヒトインスリン抗体と、該抗体を用いたヒトインスリン特異的な測定方法及び測定試薬の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ヒトインスリンが固相に固定化された状態ではなく、溶液中においてその立体構造を保った状態で、抗ヒトインスリン抗体をスクリーニングした場合、ブタインスリン、ウシインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物のいずれとも反応せず、ヒトインスリンと特異的に反応する抗ヒトインスリン抗体を見出し、さらに当該特異的抗体を免疫学的測定方法に用いることでヒトインスリンをブタインスリンなどと区別して、正確に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
〔1〕下記の特徴(a)及び(b)を有する、抗ヒトインスリン抗体。
(a)ヒトインスリンと反応する
(b)ブタインスリンと反応しない
〔2〕以下のいずれか1以上の特徴をさらに有する、請求項1に記載の抗ヒトインスリン抗体。
(c)ウシインスリンと反応しない
(d)イヌインスリンと反応しない
(e)ウサギインスリンと反応しない
(f)プロインスリンと反応しない
(g)インスリン類似化合物と反応しない
(h)RGFFYTPKT(配列表配列番号1)の配列から成るぺプチド断片と反応しない
〔3〕インスリン類似化合物が、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジンよりなる群より選ばれるものである、前記〔2〕に記載の抗ヒトインスリン抗体。
〔4〕以下の特徴をさらに有する、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗ヒトインスリン抗体。
(i)ヒトインスリン分子におけるβ鎖C末端RGFFYTPKT領域の立体構造を認識する
〔5〕ヒトインスリン分子におけるβ鎖C末端RGFFYTPKT領域の立体構造が、以下の溶液中で取りうる構造である前記〔4〕に記載の抗ヒトインスリン抗体。
0.01M HEPES(pH8.5)、0.15M 塩化ナトリウム、3mM EDTA、0.005% SurfactantP20
〔6〕モノクローナル抗体である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の、抗ヒトインスリン抗体。
〔7〕受託番号FERM BP−11314のハイブリドーマより産生される、前記〔6〕に記載の抗ヒトインスリン抗体。
〔8〕受託番号FERM BP−11314のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体が認識するエピトープと同一のエピトープを認識しうる前記〔6〕に記載の抗ヒトインスリン抗体。
〔9〕請求項1〜8のいずれかに記載の抗体と生物由来試料とを接触させ、接触により形成された当該抗体とヒトインスリンとの複合体を検出する工程を含む、ヒトインスリン測定方法。
〔10〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の抗体が、検出可能な標識物質で標識されている、前記〔9〕に記載のヒトインスリン測定方法。
〔11〕下記2種類の抗体を用いるヒトインスリン測定方法。
1)前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の抗ヒトインスリン抗体
2)少なくともヒトインスリンと反応する性質を有する抗体A
〔12〕下記2種類の抗体を用いるヒトインスリン測定方法。
1)前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の抗ヒトインスリン抗体
2)上記1)の抗体を特異的に認識する性質を有する抗体B
〔13〕1)及び2)の抗体が、ともにモノクローナル抗体である前記〔11〕又は〔12〕に記載のヒトインスリン測定方法。
〔14〕1)の抗体がモノクローナル抗体であり、2)の抗体がポリクローナル抗体である前記〔11〕又は〔12〕に記載のヒトインスリンの測定方法。
〔15〕1)の抗体及び/又は2)の抗体が、固相に固定化されている、前記〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載のヒトインスリン測定方法。
〔16〕固相がラテックスであり、ラテックス免疫凝集法でインスリンを測定する、前記〔15〕に記載のヒトインスリン測定方法。
〔17〕1)の抗体は固相に固定化され、2)の抗体は標識物質で標識されている、ELISA法又はイムノクロマトグラフ法でインスリンを測定する、前記〔16〕に記載のヒトインスリン測定方法。
〔18〕以下の工程を含む外来性インスリンを測定する方法。
(1)ヒトインスリン及び外来性インスリンの総濃度を求める工程
(2)前記〔9〕〜〔17〕のいずれかのインスリン測定方法によってヒトインスリン濃度を求める工程
(3)(1)で求めた濃度から(2)で求めた濃度を差し引くことによって外来性インスリン濃度を求める工程
〔19〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の抗体を用いることを特徴とする、インスリン測定試薬。
〔20〕下記2種類の抗体を用いるインスリン測定試薬。
1)前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の抗ヒトインスリン抗体
2)少なくともヒトインスリンと反応する性質を有する抗体A
〔21〕下記2種類の抗体を用いるインスリン測定試薬。
1)前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の抗ヒトインスリン抗体
2)上記1)の抗体を特異的に認識する性質を有する抗体B
〔22〕1)及び2)の抗体が、ともにモノクローナル抗体である前記〔20〕又は〔21〕に記載のインスリン測定試薬。
〔23〕1)の抗体がモノクローナル抗体であり、2)の抗体がポリクローナル抗体である前記〔20〕又は〔21〕に記載のインスリンの測定試薬。
〔24〕1)の抗体及び/又は2)の抗体が、固相に固定化されている、前記〔20〕〜〔23〕のいずれかに記載のヒトインスリン測定試薬。
〔25〕固相がラテックスであり、ラテックス免疫凝集法によりインスリンを測定する前記〔24〕に記載のヒトインスリン測定試薬。
〔26〕1)の抗体は固相に固定化され、2)の抗体は標識物質で標識されている、ELISA法又はイムノクロマトグラフ法によりインスリンを測定する、前記〔24〕に記載のヒトインスリン測定試薬。
〔27〕以下の測定試薬を含む外来性インスリン測定試薬キット。
(1)ヒトインスリン及び外来性インスリンの総インスリン濃度を測定する試薬
(2)前記〔19〕〜〔26〕のいずれかのヒトインスリン測定試薬
本発明によれば、ブタインスリン、ウシインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物の影響を受けずに、ヒトインスリンの正確な測定が可能となる。即ち本発明によれば、ブタインスリン、インスリン類似化合物などを投与されているインスリン補充療法中の糖尿病患者においても、当該患者のβ細胞から分泌されたヒトインスリンのみを正確に測定できることから、糖尿病患者の病態把握を正確に行うことができる。
さらに、ヒトインスリン並びにインスリン補充療法に用いられるヒト以外の動物種由来のインスリン及びインスリン類似化合物とも交差反応性を示す抗ヒトインスリン抗体を用いた測定方法によるヒトインスリン並びにヒト以外の動物種由来のインスリン及びインスリン類似化合物の総量(総濃度)の測定結果と、本発明の抗体を用いた測定方法によるヒトインスリンのみの測定結果より、ヒト以外の動物種由来のインスリンやインスリン類似化合物など外来性のインスリンのみを測定することもできる。
ヒトインスリンのアミノ酸配列を示す概念図である。図中(a)〜(g)部分は本発明の抗体との反応性を検討したヒト以外の動物種由来インスリン(ブタインスリン、ウシインスリン、ウサギインスリン、イヌインスリン)及びインスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジン)と、ヒトインスリンとのアミノ酸配列の違いを示す部分である。図中の○の中のアルファベットはアミノ酸の1文字表記である。<ヒト以外の動物種由来インスリン>ブタインスリン:(c)部分は「T」ではなく「A」を有する。ウシインスリン:(c)部分は「T」ではなく「A」を有し、(f)部分は「T」ではなく「A」を有し、更に(g)部分は「I」ではなく「V」を有する。ウサギインスリン:(c)部分は「T」ではなく「S」を有する。イヌインスリン:ブタインスリンに同じ。<インスリン類似化合物>インスリンリスプロ:(a)、(b)部分は「P−K」ではなく「K−P」を有する。インスリンアスパルト:(a)部分は「P」ではなく「D」を有する。インスリングラルギン:(d)部分は「N」ではなく「G」を有し、更に(c)部分「T」に「RR」が付加されている。インスリンデテミル:(c)部分は「T」を有さず、更に(b)部分「K」にミリスチン酸(C14H28O2)が付加されている。インスリングルリジン:(b)部分は「K」ではなく「E」を有し、更に(e)部分は「N」ではなく「K」を有する。 ヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリンと66224抗体の反応性について、Biacore(登録商標)T100を用いた試験結果を示す図である。図中、(a)ヒトインスリン、(b)プロインスリン、(c)インスリンリスプロ、(d)インスリンアスパルトである。 同上。図中、(e)インスリングラルギン、(f)インスリンデテミル、(g)インスリングルリジン、(h)ブタインスリン、(i)ウシインスリンである。 ヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリンと66408抗体の反応性についてBiacore(登録商標)T100を用いた試験結果を示す図である。図中、(a)ヒトインスリン、(b)プロインスリン、(c)インスリンリスプロ、(d)インスリンアスパルトである。 同上。図中、(e)インスリングラルギン、(f)インスリンデテミル、(g)インスリングルリジン、(h)ブタインスリン、(i)ウシインスリンである。 ヒトインスリンβ鎖のC末端領域の配列「RGFFYTPKT」(配列表配列番号1)から成るペプチド断片(前記ペプチドのアミノ酸配列は、C末端アミノ酸が「T」である点のみが、ブタインスリン(C末端アミノ酸「A」)と異なる)と66224抗体の反応性を競合ELISA法を用いて試験した結果を示す図である。 1次抗体として66224抗体、2次抗体として66408抗体を用い、1次抗体をプレートに固相化して、ヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリン、ウサギインスリン、イヌインスリンとの反応性をサンドイッチELISA法を用いて試験した結果を示す図である。 1次抗体として66408抗体、2次抗体として66224抗体を用い、1次抗体をプレートに固相化して、ヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリン、ウサギインスリン、イヌインスリンとの反応性をサンドイッチELISA法を用いて試験した結果を示す図である。
本明細書において、抗体とある化合物が「反応する」、「反応性を示す」、「反応性を有する」、「結合する」、あるいは抗体がある化合物を「認識する」と表現する場合、本発明の分野で通常使用される意味を有し、いずれも同義で用いる。ただし、これらの例示に限定されることはなく、「親和性を有する」など、本発明の分野で用いられる同義の意味を含む別の表現も含め、最も広義に解釈する必要がある。抗体とある化合物とが「反応する」か否かの確認は、後述する当業者に周知の抗原固相化ELISA法、競合ELISA法、サンドイッチELISA法などにより行うことができるほか、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)の原理を利用した方法(SPR法)などにより行うことができる。SPR法は、Biacore(登録商標)の名称で市販されている、装置、センサー、試薬類を使用して行うことができる。
本明細書において、本発明の抗体と、ある化合物が「反応しない」とは、本発明の抗体とある化合物とが実質的に反応しないことをいう。「実質的に反応しない」とは、例えば、上記SPR法に基づき、Biacore(登録商標)T100を使用し、本発明の抗体を固定化して試験する化合物との反応性の測定を行った場合に、本発明の抗体と当該試験する化合物との反応性が、コントロール(試験する化合物の非存在下での試験)の反応性に対して有意に増加しないことをいう。上記SPR法以外の当業者に周知の方法・手段によっても「実質的に反応しない」ことを確認できることは言うまでもない。
本明細書において、「交差反応(性)」とは、抗体が本来の抗原のみと特異的(選択的)に反応(結合)する以外に、本来の抗原と化学構造が類似する物質(以下、交差性物質ということがある)と非特異的に反応(結合)する性質をいう。この抗体と交差性物質が非特異的に反応(結合)する程度を、例えば、抗体と本来抗原の反応(結合)に対する割合で示し、交差反応性あるいは交差反応率と表現する。
本明細書において、「不溶性担体」を「固相」と表現することがある。また、抗原や抗体を不溶性担体に物理的あるいは化学的に担持させること、あるいは担持させた状態を、「固定」、「固定化」、「固相化」と表現することがあるが、「感作」や「吸着」など、本発明の分野で用いられる同義に意味を含む別の表現も包含している。
本明細書において、「検出」又は「測定」という用語は、インスリンの存在の証明及び/又は定量などを含めて最も広義に解釈する必要があり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
本明細書において、「外来性(の)インスリン」とは、ヒト体内で産生される、いわゆる「内在性(の)インスリン」に対して、糖尿病治療のため、体外から体内に投与されるインスリンをいい、具体的には、ヒト以外の動物種由来のインスリン及び/又はインスリン類似化合物をいう。
本発明の抗ヒトインスリン抗体は、ヒトインスリンと特異的に反応し、ブタインスリンと反応しない抗体である。本発明の抗ヒトインスリン抗体は、さらにウシインスリン、イヌインスリン、ウサギインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物のいずれか1以上と反応しない性質を有していてもよい。インスリン類似化合物として、具体的には、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジンなどが挙げられる。なお、前記したインスリン類似化合物が「インスリンアナログ製剤」と呼ばれることがあることは前述したとおりである。
本発明の抗ヒトインスリン抗体は、上記の各反応性に加え、ヒトインスリンβ鎖のC末端領域の配列「RGFFYTPKT」(配列表配列番号1)から成るペプチド断片と反応しない性質をさらに有していることが望ましい。ヒトインスリンとブタインスリンは、β鎖C末端のアミノ酸が「T」であるか「A」であるかの点で唯一相違する。よって、ヒトインスリンに特異的に反応し、ブタインスリンと反応しない抗体を得るためには、ヒトインスリンβ鎖C末端領域のアミノ酸配列を含むペプチド断片それ自体に特異的な反応性を示す抗体を選択すればよいが、ヒトインスリンに反応しブタインスリンには反応せず、かつヒトインスリンβ鎖C末端領域のアミノ酸配列を含むペプチド断片それ自体には反応しない性質の抗体を選択することで、ヒトインスリンとブタインスリンで相違するアミノ酸を含む配列が関与するヒトインスリンの立体構造を認識する抗体が得られるので、より高い特異性を確保する上で望ましい。
本発明の抗ヒトインスリン抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。具体的にはハイブリドーマ66224(FERM BP−11314)が産生するモノクローナル抗体(66224抗体)が挙げられる。また、本発明の抗ヒトインスリン抗体には、FERM BP−11314のハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体が認識するエピトープと同一のエピトープを認識しうる抗体も含まれる。さらに、PCT/JP2010/62261に記載された66226抗体(国際寄託番号FERM BP−11234のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体)のように、抗ヒトインスリン抗体と結合したインスリン(以下、複合体インスリンということがある)の立体構造を認識するが、ブタインスリンそれ自体とは反応しない抗体も本発明の抗体と同様に使用することができる。当該抗体は、ヒトインスリンに結合した場合とブタインスリンに結合した場合で、形成される複合体インスリンの立体構造を異にする抗体と組み合わせて使用することにより、本発明の抗体と同様の特性を有する抗体として使用することができる。
本発明の抗体は、抗原(免疫原)としてヒトインスリンをリン酸緩衝生理食塩水などの溶媒に溶解し、この溶液をヒト以外の動物(以下抗体取得に関する記載において単に、動物ということがある)に投与して免疫することによりに容易に製造できる。抗原として利用されるインスリンは、インスリン分子全体であってもよく、その一部であってもよいが、前述したように、特異性のより高い抗体を得るためには、ヒトインスリンβ鎖C末端領域のアミノ酸配列が関与するヒトインスリンにおける立体構造が維持されるよう、ヒトインスリン分子全体であることが好ましい。必要に応じて前記溶液に適宜のアジュバントを添加してエマルジョンとした後、当該エマルジョンを用いて免疫を行ってもよい。アジュバントとしては、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、水中油型乳剤、リポソーム、水酸化アルミニウムゲルなどの汎用されるアジュバントのほか、生体成分由来のタンパク質やペプチド性物質などを用いてもよい。例えば、フロイントの不完全アジュバント又はフロイントの完全アジュバントなどを好適に用いることができる。アジュバントの投与経路、投与量、投与時期は特に限定されないが、抗原を免疫する動物において所望の免疫応答を増強できるように適宜選択することが望ましい。
免疫に用いる動物の種類は特に限定されないが、哺乳動物が好ましく、例えばマウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどを用いることができ、より好ましくはマウスを用いることができる。動物の免疫は、一般的な手法に従って行えばよく、例えば、抗原の溶液、好ましくはアジュバントとの混合物を動物の皮下、皮内、静脈、又は腹腔内に注射することにより免疫を行うことができる。免疫応答は、一般的に免疫される動物の種類及び系統によって異なるので、免疫スケジュールは使用される動物に応じて適宜設定することが望ましい。抗原投与は最初の免疫後に何回か繰り返し行うことが好ましい。
モノクローナル抗体を得る場合、引き続き以下の操作が行われるが、それに限定されることはなく、モノクローナル抗体それ自体の製造方法については、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1988))に記載の方法に準じて行うことができる。
最終免疫後、免疫した動物から抗体産生細胞である脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を摘出し、高い増殖能を有するミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを作製することができる。細胞融合には抗体産生能(質・量)が高い脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を用いることが好ましく、またミエローマ細胞は、融合する抗体産生細胞の由来する動物と適合性があることが好ましい。細胞融合は、当該分野で公知の方法に従って行うことができるが、例えば、ポリエチレングリコール法、センダイウイルスを用いた方法、電流を利用する方法などを採用することができる。得られたハイブリドーマは、公知の方法に従って増殖させることができ、産生される抗体の性質を確認しつつ所望のハイブリドーマを選択することができる。ハイブリドーマのクローニングは、例えば限界希釈法や軟寒天法などの公知の方法により行うことが可能である。
本発明の抗体を産生するハイブリドーマの選択は、産生される抗体が実際の測定に用いられる条件を考慮して、効率的、効果的に行うことができる。標準的な一例としては、ELISA法、RIA法、Biacore(登録商標)を用いる方法などにより、ヒトインスリンに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより得られる。具体的には、まず、ハイブリドーマの培養上清中の抗体を、プレートなどに固相化したヒトインスリンと反応させ、次いで標識抗IgG抗体を反応させる抗原固相化ELISA法により、ヒトインスリンに対し高い反応性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する。
さらに、例えば、Biacore(登録商標)T100を用いてブタインスリン、ウシインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジン)との反応性を確認し、所望の反応性(特異性)を示すハイブリドーマを選択することで、本発明の抗ヒトインスリン抗体を産生するハイブリドーマを確実に選択することができる。前記反応性の確認において、固相に固定化されず、溶液中においてその立体構造を保った状態のヒトインスリンとの反応性を確認することで、ヒトインスリンの立体構造を認識する抗ヒトインスリンモノクローナル抗体の絞り込みが容易になると推測される。
さらにまた、ブタインスリンとβ鎖C末端アミノ酸のみが異なる、ヒトインスリンβ鎖のC末端領域のアミノ酸配列を含むヒトインスリンのペプチド断片を作製し、当該ペプチド断片それ自体と反応しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより、当該配列の1次構造ではなく、ヒトインスリンの立体構造の中における当該配列を認識するモノロクーナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。当該ペプチド断片としては、ヒトインスリンβ鎖のC末端領域の配列「RGFFYTPKT」から成るペプチド断片が好適に使用しうるが、ヒトインスリンβ鎖のC末端アミノ酸を含み、少なくとも抗体が認識しうる長さであるヒトインスリンC末端領域のペプチド断片であればいずれでもよい。ペプチドのアミノ酸の数は、好ましくは、5アミノ酸以上である。
本発明のハイブリドーマ(抗体)のスクリーニング方法を、後述する実施例にそって整理すると以下である。
1次スクリーニング:抗原固相化ELISA法を行い、ヒトインスリンに対する反応性を確認し陽性wellを選別。
2次スクリーニング:ヒトインスリンの競合ELISA法を行い、抗体がヒトインスリンに対して反応していることを再確認し、陽性wellを選択。
3次スクリーニング:Biacore(登録商標)を用いた反応性測定法により、ヒトインスリンに特異的な反応性を示し、ヒト以外の動物種由来のインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物と交差反応性を示さないwellを選択。
4次スクリーニング:ヒトインスリンβ鎖のC末端領域の配列「RGFFYTPKT」から成るペプチド断片との競合ELISA法を行い、当該ペプチド断片に対して反応性を示さず、ヒトインスリンに対し高い反応性を示すwellを選択。
本発明者は、特定の理論に拘るわけではないが、本発明完成の理由の一つを以下のように推測している。
従来のスクリーニングでは、ヒトインスリンが直接あるいは間接に固相化されているか、標識が施されているため、ヒトインスリン本来の立体構造の一部を喪失していた可能性が考えられる。ブタインスリンとヒトインスリンの構造上の相違がβ鎖C末端のアミノ酸のみであることは前述しているが、このような場合、微妙な立体構造の変化が、抗体のエピトープ決定に大きく影響する可能性が考えられる。本発明では、上記したように、Biacore(登録商標)を用いて、ヒトインスリンの立体構造を維持した状態でスクリーニングし、さらにヒトインスリンβ鎖のC末端領域のペプチド断片との競合ELISA法により立体構造を意図的に喪失させてスクリーニングを行うことで、より高い特異性を持つ抗体を選別している。
なお、本明細書の全記載より、少なくともヒトインスリンとブタインスリンに対する反応性をBiacore(登録商標)を用いた反応性測定法において確認することによって、本発明の抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングが可能であることを、当業者は容易に理解しうる。
このようにして選別されたハイブリドーマを大量培養することにより、所望の特性を有するモノクローナル抗体を製造することができる。大量培養の方法は特に限定されないが、例えば、ハイブリドーマを適宜の培地中で培養してモノクローナル抗体を培地中に産生させる方法や、哺乳動物の腹腔内にハイブリドーマを注射して増殖させ、腹水中に抗体を産生させる方法などを挙げることができる。モノクローナル抗体の精製は、例えば陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組み合わせて行うことができる。
本発明の抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体の機能性断片を使用することも可能であり、前記のように動物への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものや、キメラ抗体を用いることも可能である。抗体の機能性断片としては、例えば、F(ab’) 、Fab’などが挙げられ、これらの機能性断片は前記のようにして得られる抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理することにより製造できる。
本発明の抗体は、不溶性担体上に固定された固定(固相)化抗体として使用したり、後述する当業者に周知慣用の標識物質で標識した標識抗体として使用することができる。このような固定化抗体や標識抗体はいずれも本発明の範囲に包含される。例えば、不溶性担体に本発明の抗体を物理的に吸着させ、あるいは化学的に結合(適当なスペーサーを介してもよい)させることにより固定化抗体を製造することができる。不溶性担体としては、ポリスチレン樹脂などの高分子基材、ガラスなどの無機基材、セルロースやアガロースなどの多糖類基材などからなる不溶性担体を用いることができ、その形状は特に限定されず、板状(例えば、マイクロプレートやメンブレン)、ビーズあるいは微粒子状(例えば、ラテックス粒子)、筒状(例えば、試験管)など任意の形状を選択できる。
標識抗体を製造するための標識物質としては、例えば酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジン、又は放射性同位体、金コロイド粒子、着色ラテックスなどが挙げられる。標識物質と抗体との結合法としては、当業者に利用可能なグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、又は過ヨウ素酸法などの方法を用いることができるが、固定化抗体や標識抗体の種類、及びそれらの製造方法は前記の例に限定されることはない。例えば、パーオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素を標識物質として用いる場合には、その酵素の特異的基質(酵素が西洋ワサビパーオキシダーゼ(以下、HRPということがある)の場合には、例えば1,2−フェニレンジアミン(以下、OPDということがある)あるいは3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、ALPの場合には、p−ニトロフェニルホスフェートなど)を用いて酵素活性を測定することができ、ビオチンを標識物質として用いる場合には少なくともアビジンあるいは酵素修飾アビジンを反応させるのが一般的である。
本発明の抗ヒトインスリン抗体は、A:少なくともヒトインスリンと反応する抗ヒトインスリン抗体(以下、抗体Aということがある)、あるいは、B:本発明の抗ヒトインスリン抗体を特異的に認識する抗体(以下、抗体Bということがある)、と組み合わせて使用することができる。
抗体Aは、ヒトインスリンに対して反応性を示すものであれば特に限定はされず、プロインスリン、インスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジン)、ブタインスリン、ウシインスリンのいずれかと交差反応性を示すものでもよい。ヒトインスリンと反応する抗体であればモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体の場合、具体的にはハイブリドーマ66408(FERM BP−11315)が産生するモノクローナル抗体(66408抗体)、ハイブリドーマ66221(FERM BP−11314)が産生するモノクローナル抗体が挙げられる。また、抗体分子全体のほかにヒトインスリンと反応する抗体の機能性断片であってもよい。なお、抗体Aのヒトインスリン認識部位は、本発明の抗体と組み合わせて本発明の測定方法、測定試薬を構成できることを限度として、本発明の抗ヒトインスリン抗体のヒトインスリン認識部位と完全に独立していることまでは要さない。
抗体Bは、いわゆる二抗体法などの間接検出系に使用されたり、増感のために用いられる抗体を指し、本発明の抗ヒトインスリン抗体と特異的に反応する抗体であればよく、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。また抗体分子全体のほかに本発明の抗ヒトインスリン抗体と反応する抗体の機能性断片であってもよい。本発明の抗体がマウス産生モノクローナル抗体である場合の、抗マウスIgG抗体を挙げることができる。
本発明の抗体を抗体Aと組み合わせて使用する場合、本発明の抗体と抗体Aのいずれか1以上を前記した標識物質で標識したり、不溶性担体に固相化して用いることができる。これらの具体的な態様としては、例えばサンドイッチELISA法や粒子凝集免疫測定法が挙げられる。
本発明により提供される測定用試薬(キット)の態様としては、ヒトインスリンの測定ができる試薬であれば、特に限定されるものではない。以下、代表的な標識免疫測定法であるサンドイッチELISA法、イムノクロマトグラフ法と、代表的な粒子凝集免疫測定法であるラテックス免疫凝集法(以下、LTIA法ということがある)を例にそれぞれを説明する。
<標識免疫測定法:サンドイッチELISA法>
試料中に存在するヒトインスリンを検出するための測定用試薬(キット)の態様としては、次のA、Bの2態様が考えられ、それぞれ(a)、(b)の要素が必要とされる。
A.(a)本発明の抗ヒトインスリン抗体を固定化した固相及び(b)標識物質で標識され、少なくともヒトインスリンと反応する性質を有する抗体A(以下、標識抗体Aということがある)。
B.(a)標識物質で標識された本発明の抗ヒトインスリン抗体及び(b)少なくともヒトインスリンと反応する抗体Aを固定化した固相。
固相に固定化された抗体は、試料中のヒトインスリンを捕捉し、固相上で複合体を形成する。標識物質で標識された抗体は、前記捕捉されたヒトインスリンに結合して前記複合体とサンドイッチを形成する。標識物質に応じた方法により標識物質の量を測定することにより、試料中のヒトインスリンを測定することができる。抗体の固相化の方法、抗体の標識物質での標識の方法など、測定試薬(キット)を構成する上での具体的な方法は、本明細書に記載された方法のほか、当業者に周知の方法を特に制限なく使用することができる。この構成の場合、ホモジーニアスな測定系、ヘテロジーニアスな測定系のいずれも好適に構成することができる。
<標識免疫測定法:イムノクロマトグラフ法>
一般的なイムノクロマトグラフ法では、メンブレンなどのシート状の固相上に、被検試料溶液の展開方向にそって、端から順に「1.被検試料供給部位」、「2.標識抗体A(金コロイドや着色ラテックスで標識されている)を、メンブレン上において展開可能に保持した標識試薬部位」、「3.標識抗体Aとヒトインスリンにより形成された複合体を捕捉するため本発明の抗体を固定化した捕捉試薬部位」を具備した試験片が使用され、被検試料溶液が毛細管現象により連続的に移動するように構成されている。
具体的には、まず、インスリンを含む被検試料を被検試料供給部位に所定量添加すると、試料は毛細管現象により標識試薬部位に侵入し、インスリンと標識抗体Aとが結合し、インスリンと標識抗体Aの複合体が形成される。該複合体は、そのままメンブレン上を展開移動し、メンブレン上の本発明の抗体を含む捕捉試薬部位に侵入すると、固相上に固定化された捕捉試薬に捕捉され、捕捉試薬−インスリン−標識抗体Aの三元複合体が捕捉試薬部位に形成される。そして標識試薬を任意の方法(例えば、金コロイドなど可視化可能な標識の場合にはその凝集像、酵素の場合には、基質を添加することによる発色反応)で検出することで、インスリンの存在を検出することができる。
<粒子凝集免疫測定法:LTIA法>
試料中に存在するヒトインスリンを検出するための測定用試薬(キット)の態様としては、次のA〜Dの4態様が考えられ、それぞれ(a)、(b)あるいは(a)のみの要素が必要とされる。
A.(a)本発明の抗ヒトインスリン抗体を固定化したラテックス粒子及び(b)少なくともヒトインスリンと反応する抗体Aを固定化したラテックス粒子
B.(a)本発明の抗ヒトインスリン抗体を固定化したラテックス粒子及び(b)少なくともヒトインスリンと反応する抗体A
C.(a)本発明の抗ヒトインスリン抗体及び(b)少なくともヒトインスリンと反応する抗体Aを固定化したラテックス粒子
D.(a)本発明の抗ヒトインスリン抗体及び少なくともヒトインスリンと反応する抗体Aの両抗体を固定化したラテックス粒子
これらの測定用試薬(キット)は特にLTIA法に好適に使用できる。上記A〜Dに使用されるラテックス粒子は、感度向上などの所望の性能を得るため、粒子径や種類を適宜選択することができる。ラテックス粒子としては、抗原あるいは抗体の担持に適したものであれば良い。例えば、ポリスチレン、スチレン−スルフォン酸(塩)共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。ラテックス粒子の形状は特に限定されないが、その平均粒子径は、ラテックス粒子表面の抗体又は抗原と、測定対象物との凝集反応の結果生じる凝集体が、肉眼又は光学的に検出できるに十分な大きさを有することが好ましい。透過型電子顕微鏡装置を用いた場合の好ましい平均粒子径としては0.02〜1.6μmであり、特に0.03〜0.5μmが好ましい。なお、金属コロイド、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体などの材質よりなる粒子をラテックス粒子に代えて使用することもできる。
臨床検査で使用されるLTIA法の試薬は、通常、第一試薬(液)、第二試薬(液)の形態で提供され、順次被検試料と混合して使用される。上記A〜Dの各態様における、(a)、(b)は、その両方または一方を、第一試薬あるいは第二試薬に含有させることができる。それぞれの含有のさせかたは、臨床検査における測定機器や測定試薬の設計(性能や使いやすさなど)を考慮し、適宜選択しうる。一般にはAの態様の(a),(b)の両方を第二試薬に含有させることが好適であるが、Aの態様の(a)を第一試薬、(b)を第二試薬に含有させることも好適に使用しうる。
以上、本発明の測定方法、測定試薬の代表的な態様を例として説明したが、本発明の抗体を使用することを限度として、競合免疫測定法など当業者に周知な各種態様をとりうることは当然に理解できる。
上記で説明した、本発明の測定方法、測定試薬におけるブタインスリンとの交差反応性は18%未満である。ヒトインスリンの測定目的に応じて要求される交差反応性の程度は変わるが、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満〜2%未満、特に好ましくは1%未満である。本発明の抗体を使用した場合、実質的な交差反応性を0%と評価することができるので、1%未満の交差反応性として、0.9〜0.01%といった交差反応性の測定方法、測定試薬を設計することができる。
測定方法、測定試薬における交差反応性の定量的な評価方法としては、交差反応性を評価したい測定方法、測定試薬を用い、(1)試験化合物による競合試験を行いIC50(50%阻害濃度)を求める方法、(2)試験化合物の濃度を測定し、理論濃度に対する割合を求める方法、(3)上記(2)において、試験化合物の系列希釈試料を測定し、各試料毎に交差反応性を求め、相加平均(平均交差反応性)を求める方法、などがある。上記(2)の具体的な計算式としては、以下を示すことができる。
交差反応性(率)(%)=測定された試験化合物の濃度/試験化合物の理論濃度×100
なお、交差反応性の厳密な意味からは、モル換算して比較するべきであるが、本発明におけるヒトインスリンとブタインスリンなど交差性物質の分子量は同一であるか、近似しているので、モル換算せず、質量のまま簡易に計算することでも、見積もることができる。
本発明は、以下の工程を含む、治療のために投与中のインスリン類似化合物及びヒト以外の動物種由来のインスリンなどの外来性インスリンを測定する方法も提供する。すなわち、ヒトインスリン及び外来性インスリンを測定し、ヒトインスリン及び外来性インスリンの総濃度を求める工程と組み合わせ、前記のヒトインスリン測定方法によってヒトインスリン濃度を求め、総濃度から差し引くことによって治療のために投与中の外来性インスリンの濃度を求めることができる。
本発明の抗体を用いる測定方法における検出対象の「試料」としては、主に生体(生物)由来の体液(生物由来試料)を挙げることができ、ヒトインスリンが含有される試料であれば特に限定されない。好ましくは、血液、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、膵臓抽出液など、より好ましくは、血液、血清、血漿などを挙げることができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔試験例1〕本発明のモノクローナル抗体の製造方法
1.免疫用抗原の調製
ヒトインスリン(リコンビナント、Fitzgerald社製 30−AI51)をコンプリートフロインドアジュバント(Wako社製)と1:1で混合後、連結シリンジを用いてエマルジョンを作製し、免疫用抗原とした。
2.ハイブリドーマの作製
上記、免疫用抗原を雌のBALB/cマウスの背部皮下に注射した(1匹当たり20〜50μg)。この操作(免疫)を1週間毎に2回繰り返した。免疫開始3週間後、試験採血して得た抗血清のうち、後述する抗原固相化ELISA法による試験にて、高い抗体価が確認されたマウスから脾臓を摘出し、50%−PEG1450(シグマ社製)を用いた常法により細胞融合を行った。ミエローマ細胞はSP2/Oを用いた。得られた融合細胞は、脾臓細胞として2.5×10個/mLになるようにHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)、15%ウシ胎児血清、及び10%のBM−Condimed H1 Hybridoma Cloning Supplement(Roche社製)を含むRPMI1640培地に懸濁し、96穴培養プレートに0.2mLずつ分注した。これを5%COインキュベーター中で37℃にて培養した。
3.本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合7日後に1次スクリーニングとして、培養上清を用いて後述する抗原固相化ELISA法を行い、ヒトインスリンに対し高い反応性を示したwellを1次陽性wellとして選別した。該1次陽性well中の細胞は、24穴プレートにおいて継代した。継代2日後、2次スクリーニングとして、培養上清を用いて後述するヒトインスリンの競合ELISA法を行い、ヒトインスリンに対し高い反応性を示すwellを2次陽性wellとして選択した。3次スクリーニングとして、Biacore(登録商標)を用いた反応性測定法により、ヒトインスリンのみに特異的な反応性を示し、その他プロインスリン、インスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジン)、ブタインスリン、ウシインスリンとは交差反応性を示さないwellを選択して3次陽性wellとした。さらに、4次スクリーニングとして、3次陽性well中の細胞を培養し、培養上清を用いてヒトインスリンと、ヒトインスリンβ鎖のC末端領域の配列「RGFFYTPKT」から成るペプチド断片(配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド断片であって、前記ペプチドのアミノ酸配列は、C末端アミノ酸が「T」である点のみが、ブタインスリン(C末端アミノ酸「A」)と異なる)との競合ELISA法を行い、当該ペプチド断片に対して反応性を示さず、ヒトインスリンに対し高い反応性を示すwellを選択して4次陽性wellとした。
3−1.抗原固相化ELISA法用プレートの作製
150mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.2;以下、PBSということがある)で1μg/mLの濃度に調製したヒトインスリン(Fitzgerald社製30−AI51)をスクリーニング用抗原として、50μL/wellずつ96穴プレートに固相化し、4℃で一晩静置した。0.05%Tween(登録商標)20及び0.1%プロクリン300(SUPELCO社製)を含むPBS溶液(以下、PBSTということがある)400μL/wellで3回洗浄後、1%BSAを含むPBST(以下、BSA−PBSTということがある)を100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、抗原固相化ELISA法用プレートを作製した。該抗原固相化ELISA法用プレートは、PBSTで3回洗浄後、下記、抗原固相化ELISA法はじめ各試験例、実施例に記載の試験に用いた。なお、本明細書に記載の試験例、実施例で使用されたヒトインスリンは、26IU/mgで国際単位に換算される。
3−2.抗原固相化ELISA法
(i)上記、抗原固相化ELISA法用プレートに、BSA−PBSTにより段階希釈した試験採血により得た各マウス抗血清、あるいは融合細胞の培養上清を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(ii)PBSTで3回洗浄後、HRP−Gt F(ab’)−Anti−Mouse Ig’s(BIOSOURCE社製 AMI4404)をBSA−PBSTで5000倍希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii)PBSTで3回洗浄後、0.02%過酸化水素水を含む0.2Mクエン酸緩衝液(以下、基質溶解液ということがある)にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLにて溶解し、50μL/wellずつ添加して室温で1時間静置した。
(iv)1mM EDTAを含む1.5N硫酸(以下、反応停止液ということがある)を50μL/wellずつ添加し、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMKII(Flow Laboratories社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
3−3.ヒトインスリンの競合ELISA法
(i)抗原固相化ELISA法用プレートに、ヒトインスリン(Fitzgerald社製 30−AI51)をBSA−PBSTで各々0μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mLに希釈した溶液を25μL/wellずつ分注した。
(ii)次いで、BSA−PBSTで各々5倍、25倍に希釈した融合細胞の培養上清あるいは培養上清の原液を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii)以降の操作は、前記3−2.抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
3−4.Biacore(登録商標)を用いた抗体と各試験化合物との反応性測定法
Biacore(登録商標)T100(GE Healthcare社製 JJ−1037−02)を用いて抗体の反応特異性を指標にハイブリドーマのスクリーニング試験を行った。
(i)Sensor Chip CM5(GE Healthcare社製 BR−1005−30)に Mouse Antibody Capture Kit(GE Healthcare社製 BR−1008−38)及びAmine Coupling Kit(GE Healthcare社製 BR−1000−50)を使用してAnti−Mouse IgG antibodiesを固定化した。
(ii)Anti−Mouse IgG antibodiesを固定化したSensor Chip CM5に、細胞融合の培養上清の原液を流速30μL/minで300秒間添加し、培養上清中に含まれる抗体をAnti−Mouse IgG antibodiesに捕捉させた。
(iii)HBS−EP+ 10×(ランニングバッファー)(GE Healthcare社製 BR−1006−69)をNaOHでpH8.5に調整したのち、精製水にて最終的に10倍希釈してHBS−EP+使用液を調整し、以下に挙げる試験化合物を10ng/mLに希釈するため用いた。Anti−Mouse IgG antibodiesを固定化したSensor Chip CM5に、各試験化合物の希釈液を、0ng/mL、10ng/mLの2濃度につき流速30μL/minで各120秒間添加した。またその際にフリーランニングによる解離時間を120秒間と設定した。なお、HBS−EP+使用液の処方は0.01M HEPES(pH8.5)、0.15M 塩化ナトリウム、3mM EDTA、0.005% SurfactantP20である。
<試験化合物>
(1)ヒトインスリン:Fitzgerald社製 30−AI51
(2)プロインスリン:IRR社製 Proinsulin,Human,for Immunoassay,NIBSC code: 84/611
(3)インスリン類似化合物
インスリンリスプロ100単位/mL:日本イーライリリー社製
インスリンアスパルト100単位/mL:ノボノルディスクファーマ社製
インスリングラルギン100単位/mL:サノフィ・アベンティス社製
インスリンデテミル100単位/mL:ノボノルディスクファーマ社製
インスリングルリジン100単位/mL:サノフィ・アベンティス社製
(4)ヒト以外の動物種由来インスリン
ウシインスリン:SIGMA I5500
ブタインスリン:WAKO 091−04211
(iv)Glycine 1.5(GE Healthcare社製 BR−1003−54)とGlycine 2.0(GE Healthcare社製 BR−1003−55)を1:1で混合して再生溶液とし、再生処理を180秒間行った。
3−5.合成ペプチド断片の競合ELISA法
(i)ヒトインスリンβ鎖のC末端領域の配列「RGFFYTPKT」(配列表配列番号1)から成るペプチド断片を作製した。当該ペプチド断片の作製にはペプチド自動合成装置を使用し、Fmoc法により合成、及び精製した。HPLCを用い、ペプチドの純度が95%以上であることを確認した。また、分子量は質量分析装置(MALDI−TOF)にて理論値と同じであることを確認した。
(ii)抗原固相化ELISA法用プレートに上記(i)で作製した合成ペプチド断片、またはヒトインスリン(Fitzgerald社製 30−AI51)をBSA−PBSTで各0μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mLに希釈した溶液を25μL/wellずつ分注した。
(iii)以降の操作は、前記3−3.ヒトインスリンの競合ELISA法の工程(ii)、(iii)と同様に行った。
4.本発明のモノクローナル抗体と組み合わせて使用するモノクローナル抗体Aを産生するハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合7日後に1次スクリーニングとして、培養上清を用いて抗原固相化ELISA法を行い、ヒトインスリンに対して高い反応性を示したwellを1次陽性wellとして選別した。該1次陽性well中の細胞は、24穴プレートで継代した。継代2日後、2次スクリーニングとして、培養上清を用いて競合ELISA法を行い、ヒトインスリンに対し高い反応性を示すwellを2次陽性wellとして選択した。
5.クローニング及びモノクローナル抗体採取
上記3.(4次スクリーニングまで完了)及び4.(2次スクリーニングまで完了)のスクリーニングで選択したハイブリドーマを限界希釈法にてクローニングし、それぞれハイブリドーマ66224、66408を得た。次いで各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取するため、ハイブリドーマ投与の2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.5×10個の量で腹腔内に投与した。14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3mol/L 塩化ナトリウム、1.5mol/L Glycine−NaOH緩衝液、pH8.5)と混和後、ろ過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAセファロースカラムに通し、ろ液中の抗体をカラムに吸着させた後、0.1mol/L クエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させた。該溶出液を、1mol/L Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で中和後、PBSで透析を行い、抗体を採取した。
以下、66224抗体、66408抗体としてそれぞれ試験に用いた。
66224抗体及び66408抗体を産生するハイブリドーマは、出願人によって独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2009年6月26日に寄託手続がされ、受託番号(FERM BP−11314、FERM BP−11315)が付与されている。
〔試験例2〕本発明のモノクローナル抗体のヒトインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリンとの交差反応性
66224抗体あるいは66408抗体のプロインスリン、インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリンとの交差反応性についてBiacore(登録商標)T100を用いて試験を行った。試験方法は、試験例1の3−4.と同様であり、66224抗体については抗体精製後における各試験化合物に対する特異反応性を確認するため、さらに66408抗体についても抗体精製後における各試験化合物に対する特異反応性を評価するため、同試験を実施した。
1.試験方法
Sensor Chip CM5に固定化したAnti−Mouse IgG antibodiesに66224抗体あるいは66408抗体を捕捉させ、試験化合物としてヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリンを添加することでそれぞれの反応性を評価した。具体的な操作手順は以下のとおりであり、試験化合物は試験例1と同じものである。
(i)Sensor Chip CM5にAnti−Mouse IgG
antibodiesを固定化した。
(ii)HBS−EP+使用液(pH8.5)で66224抗体あるいは66408抗体を5μg/mLとなるよう希釈し、流速30μL/minで300秒間添加し、Anti−Mouse IgG antibodiesが固定化されたSensor Chip CM5に66224抗体あるいは66408抗体を捕捉させた。
(iii)Anti−Mouse IgG antibodiesを固定化したSensor Chip CM5に、HBS−EP+使用液(pH8.5)で希釈した試験化合物を0ng/mL、10ng/mLの2濃度につき流速30μL/minで各120秒間添加した。またその際にフリーランニングによる解離時間を120秒間と設定した。
(iv)Glycine 1.5とGlycine 2.0を1:1で混合して再生溶液とし、再生処理を180秒間行った。
2.結果
2−1.66224抗体の反応性
66224抗体について、Biacore(登録商標)T100を用いてヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジン)、ブタインスリン、ウシインスリンとの反応性を確認した。結果を図2に示す。図2中、縦軸は、センサー表面上での反応(抗体への抗原の結合)による質量変化を表しており(Response)、「RU」は、Biacore(登録商標)測定系における独自の単位である。また、横軸は時間(Time)を示しており、単位は「秒(s)」である(以下、同様)。ヒトインスリン濃度10ng/mLにおいて2.0RUの反応性が認められた一方で、その他の試験化合物(10ng/mL)ではRUが0と算出され、全く反応性が認められなかった(図2)。これより、66224抗体は、本明細書でいう「ヒトインスリンと反応し、ブタインスリンとは反応しない抗体」で、「さらに、ウシインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物の1以上と反応しない性質を有する抗体」であることが確認された。
2−2.66408抗体の反応性
66408抗体について、Biacore(登録商標)T100を用いてプロインスリン、各種インスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル)、ブタインスリン、ウシインスリンとの反応性を確認した。結果を図3に示す。ヒトインスリン濃度10ng/mLにおいて、2.5RUの反応性が認められた一方で、ウシインスリンではRUが0と算出され、ウシインスリンに対する反応性は認められなかった。その一方で、その他の試験化合物については0.6RU〜13RUが算出され、反応性が認められた(図3)。これより66408抗体は、本明細書でいう「少なくともヒトインスリンと反応する抗体A」(ヒトインスリンと反応し、ヒト以外の動物種由来のインスリン及びインスリン類似化合物(の一部)と反応する抗体)であることが確認された。
〔試験例3〕66224抗体の認識エピトープの確認
試験例2の結果より、66224抗体は、ヒトインスリンには反応し、ブタインスリンには反応しないことが確認された。ヒトインスリンとブタインスリンは、β鎖C末端のアミノ酸が「T」であるか「A」である点が唯一相違しており(図1)、66224抗体はこの1アミノ酸の相違に起因してヒトインスリンとブタインスリンを識別認識していることが考えられた。そこで66224抗体の認識エピトープを確認するため、ヒトインスリンとブタインスリンの間で異なっているアミノ酸配列部位を含む合成ペプチド断片(前記〔試験例1〕3−5にて作製)を用いた競合ELISA法を行った。この試験において66224抗体が当該合成ペプチド断片と反応(競合)すれば、66224抗体はインスリンβ鎖C末端を含むアミノ酸配列の一次構造の違い(置換)を認識していると考えられる。66224抗体が当該合成ペプチド断片と反応しない場合には、66224抗体はヒトインスリン分子中で当該β鎖C末端アミノ酸配列領域が形成する立体構造を認識していると考えることができる。
1.試験方法
以下の手順に従って合成ペプチド断片と66224抗体との反応性の有無を調べた。
(i)PBSを用いて、ヒトインスリン(Fitzgerald社製 30−AI51)を1μg/mLに希釈して96穴プレートに50μLずつ添加し、室温で2時間静置した。
(ii)0.05%Tween(登録商標)20及び0.1%プロクリン300(SUPELCO社製)を含むPBS溶液(以下PBSTという)400μL/wellで3回洗浄した。
(iii)BSA−PBSTを100μLずつ添加し、室温で1時間静置した。
(iv)添加したBSA-PBST溶液を全て吸引除去した。
(v)競合させる試験化合物としてヒトインスリンあるいは合成ペプチド断片をBSA-PBSTで各0μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mLに希釈して25μLずつ添加し、さらにその上から66224抗体をBSA-PBSTで2μg/mLに希釈して 25μLずつ添加し、室温で1時間静置した。
(vi)PBST溶液400μL/wellで3回洗浄した。
(vii)HRP標識ヤギ抗マウスIgGγ(SouthernBiotech 社製、1030−05)を5000倍に希釈して50μLずつ添加し、室温で1時間静置した。
(viii)PBST溶液400μL/wellで3回洗浄した。
(ix)基質溶解液にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLになるよう溶解し、wellに50μLずつ添加して室温で1時間静置した。
(x)反応停止液を50μLずつ添加し、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMKII(Flow Laboratories社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
なお、希釈溶液は、記述のあるもの以外については全てBSA-PBSTとした。
2.結果
試験結果を表1及び図4に示す。
66224抗体はヒトインスリンと反応性を示すため、固相化されたヒトインスリンと競合させる試験化合物としてヒトインスリンを使用した場合には、その濃度に依存して反応性が低下した。これは競合させた溶液中のヒトインスリンによって66224抗体が吸収されるため、固相化されたヒトインスリンと反応する66224抗体量が少なくなるためである。しかしながら合成ペプチド断片を競合させる試験化合物として使用した場合には、合成ペプチド断片の濃度に依存した反応性の変動は全く見られなかった。これより、66224抗体は、合成ペプチド断片それ自体とは反応性が無いことが確認された。以上の結果から、66224抗体はヒトインスリンのβ鎖C末端のアミノ酸を含むアミノ酸配列の1次構造とは反応性を示さず、ヒトインスリン分子中で当該β鎖C末端アミノ酸配列領域が形成する立体構造を認識していると考えられた。
Figure 2016053044
〔実施例1〕本発明のモノクローナル抗体と、少なくともヒトインスリンと反応する抗体Aの組み合わせによるヒトインスリンの測定1<LTIA法>
1.ラテックス粒子の作製
攪拌機、還流用冷却器、温度検出器、窒素導入管及びジャケットを備えたガラス製反応容器(容量2L)に、蒸留水1100g、スチレン200g、スチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、及び、蒸留水50gに過硫酸カリウム1.5gを溶解した水溶液を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した後、70℃で攪拌しながら48時間重合した。重合終了後、上記溶液をろ紙にてろ過処理し、ラテックス粒子を取り出した。得られたラテックス粒子の粒子径を、透過型電子顕微鏡装置 (日本電子社製、「JEM−1010型」)を用いて10000倍の倍率でラテックス粒子を撮影し、最低100個以上の粒子について画像解析することにより平均粒子径を測定した。得られた平均粒子径は0.3μmであった。
2.抗インスリン抗体感作ラテックス粒子の調製
2−1.66224抗体感作ラテックス粒子溶液の作製
平均粒子径0.3μmの1.0%ラテックス溶液(5mM トリス−塩酸緩衝液(以下、Tris−HClという)(pH8.5))に、5mM Tris−HCl(pH8.5)で0.60mg/mLに希釈した66224抗体溶液を等量添加して4℃2時間攪拌した。その後、上記ラテックス溶液と抗体溶液の混合溶液に0.5%BSA含有5mM Tris−HCl(pH8.5)を等量添加して4℃1時間攪拌した。次に、これを遠心して上清を除去後、沈殿を5mM Tris−HCl(pH8.5)で再懸濁し、66224抗体感作ラテックス粒子溶液を作製した。
2−2.66408抗体感作ラテックス粒子溶液の作製
平均粒子径0.3μmのラテックスを用いて上記と同じ方法により66408抗体感作ラテックス粒子溶液を作製した。
3.試薬の調製
3−1.第一試薬の調製
500mMの塩化ナトリウム及び0.2%BSAを含む5mM Tris−HCl(pH8.5)を調製し第一試薬とした。
3−2.第二試薬の調製
66224抗体感作ラテックス粒子溶液及び66408抗体感作ラテックス粒子溶液を等量混合し、5mM Tris−HCl(pH8.5)で波長600nmでの吸光度が5.0Absとなるように希釈して第二試薬とした。
4.測定方法
第一試薬と第二試薬を組合せ、日立7170形自動分析装置を用いてヒトインスリン濃度依存的な粒子凝集塊の形成を確認した。具体的には、濃度0μU/mL、5μU/mL、25μU/mL、50μU/mL、100μU/mL、200μU/mLヒトのインスリン溶液10μLに、第一試薬150μLを加えて37℃で5分間加温後、第二試薬50μLを加えて攪拌した。その後5分間の凝集形成に伴う吸光度変化を、主波長570nm、副波長800nmにて測定した。
5.測定結果
測定結果を表2に示す。表2よりヒトインスリン濃度依存的に感度が上昇し定量が可能であることが確認された。
Figure 2016053044
〔実施例2〕本発明のモノクローナル抗体の組み合わせによるヒトインスリンの測定2<サンドイッチELISA法>
66224抗体及び66408抗体をそれぞれプレートに固相化(1次抗体)し、標識抗体(2次抗体)としてそれぞれ他方の抗体を組み合わせた。ヒトインスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物、ウサギインスリン、イヌインスリン、ブタインスリン、ウシインスリンとの反応性についてサンドイッチELISA法を用いて試験を行った。
1.使用した抗体及び試験化合物
(1)モノクローナル抗体
66224抗体:4.03mg/mL
66408抗体:9.04mg/mL
(2)試験化合物
ヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリン類似化合物(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル、インスリングルリジン)、ブタインスリン、ウシインスリンは、試験例1、2と同じものを用いた。ウサギインスリン、イヌインスリンについては、それぞれ以下のとおりである。
ウサギインスリン:(株)森永生科学研究所 200723
イヌインスリン:(株)森永生科学研究所 200722
2.サンドイッチELISA測定方法
(i)PBSに66224抗体あるいは66408抗体を2μg/mLに希釈した溶液を96穴プレートに50μL/wellずつ固相化し、室温で2時間静置した。
(ii)PBST400μL/wellで3回洗浄後、BSA−PBSTを100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、サンドイッチELISA用プレートを作製した。
(iii)サンドイッチELISA用プレートに、ヒトインスリン、プロインスリン、各種インスリンアナログ製剤、ブタインスリン、ウシインスリン、ウサギインスリン、イヌインスリンをBSA−PBSTで各0ng/mL、2.5ng/mL、5ng/mL、10ng/mLに希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iv)PBSTで3回洗浄後、ビオチン標識化した66224抗体あるいは66408抗体をBSA−PBSTで1μg/mLに希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(v)PBSTで3回洗浄後、Immuno Pure(登録商標)Streptavidin,HRP Conjugated(PIERCE社製 Prod#21126)をBSA−PBSTで5000倍に希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(vi)PBSTで3回洗浄後、基質溶解液にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLにて溶解し、50μL/wellずつ添加して室温で1時間静置した。
(vii)反応停止液を50μL/wellずつ添加し、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMKII(Flow Laboratories社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
3.結果
3−1.66224抗体固相化プレート測定結果
試験結果を表3及び図5に示す。
66224抗体を1次抗体、66408抗体を2次抗体とした場合、ヒトインスリンでは濃度依存的な吸光度の上昇が認められた一方で、その他の試験化合物では濃度依存的な吸光度の上昇が認められず、測定された吸光度自体も測定誤差程度のものであった。
Figure 2016053044
3−2.66408抗体固相化プレート測定結果
試験結果を表4及び図6に示す。
66408抗体を1次抗体、66224抗体を2次抗体とした場合、ヒトインスリンでは濃度依存的な吸光度の上昇が認められた一方で、その他の試験化合物では濃度依存的な吸光度の上昇が認められず、測定された吸光度自体も測定誤差程度のものであった。
Figure 2016053044
4.考察
前記実施例2の結果より、66224、66408のいずれの抗体を1次抗体、2次抗体とした場合においても、ヒトインスリン以外の試験化合物は測定されないことから、本発明の測定方法は、それらの影響を受けずにヒトインスリンのみを定量できることがわかる。すなわち、本発明の測定方法によれば、プロインスリン、インスリン類似化合物、ブタインスリン、ウシインスリン、ウサギインスリン、イヌインスリンのいずれの影響も受けずにヒトインスリンのみを特異的に測定することができた。また、実施例2の結果に基づけば、ヒトインスリン以外の試験化合物に対する交差反応性が、市販試薬と比較して極めて低い(例えば、ブタインスリンに対する交差反応性が18%未満)か、あるいは実質0%であるヒトインスリン測定方法及び測定試薬を構成することができる。
前記試験例2のBiacore(登録商標)T100を用いた本発明のモノクローナル抗体の交差反応性試験結果では、66224抗体はヒトインスリンとは反応するものの、それ以外の試験化合物とはいずれとも反応性を示さなかった。その一方で、66408抗体ではウシインスリン以外の試験化合物とはいずれとも反応性を示したことから、66224抗体のヒトインスリンに対する高い特異性により、ヒトインスリン特異的な測定が可能となったと考えられる。
また、前記試験例3により、66224抗体はヒトインスリンのβ鎖C末端領域のアミノ酸配列が関与するヒトインスリンの立体構造を認識すると考えられるため、ヒトインスリンとブタインスリンの立体的に異なる特定部位をエピトープとする特性により、ヒトインスリン特異的な測定が可能になったことも本発明のひとつの特徴である。
本発明によれば、ブタインスリンをはじめとするヒト以外の動物種由来インスリン、プロインスリン、インスリン類似化合物の影響を受けず、ヒトインスリンの正確な測定が可能となった。即ち本発明によれば、インスリン類似化合物などを投与中の糖尿病患者においても、糖尿病患者自身のβ細胞から分泌された内因性のヒトインスリンのみを正確に測定できることから、糖尿病患者の病態把握を正確に行うことができる。
さらに、本発明の測定方法の測定結果と、ヒトインスリンに加えヒト以外の動物種由来のインスリンやインスリン類似化合物とも交差反応性を示す、例えば従来のインスリン測定方法による測定結果と組み合わせることで、糖尿病患者自身が産生している内因性のインスリンとインスリン類似化合物やヒト以外の動物種由来のインスリンの識別測定が可能になり、投与している外来性インスリンがどれだけ治療に寄与しているのか把握できるため、非常に有用である。
(1)FERM BP−11314
(2)FERM BP−11315
(3)FERM BP−11233
(4)FERM BP−11234
[寄託生物材料への言及]
(1)66224抗体を産生するハイブリドーマ66224
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成21年6月26日(2009年6月26日)(原寄託日)
平成22年12月6日(2010年12月6日)(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11314
(2)66408抗体を産生するハイブリドーマ66408
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
(1)に同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成21年6月26日(2009年6月26日)(原寄託日)
平成22年12月6日(2010年12月6日)(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11315
(3)66221抗体を産生するハイブリドーマ66221
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
(1)に同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成21年4月8日(2009年4月8日)(原寄託日)
平成22年2月17日(2010年2月17日)(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11233
(4)66226抗体を産生するハイブリドーマ66226
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
(1)に同じ
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成21年4月8日(2009年4月8日)(原寄託日)
平成22年2月17日(2010年2月17日)(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11234

Claims (3)

  1. 以下の工程1)〜3)を含む抗ヒトインスリンモノクローナルの製造方法によって取得された抗ヒトインスリンモノクローナル抗体。
    工程1)ヒトインスリンを抗原として抗ヒトインスリン産生ハイブリドーマを取得する工程
    工程2)工程1で取得したハイブリドーマが産生する抗体を、
    RGFFYTPKT(配列表配列番号1)の配列から成る立体構造を喪失したペプチド断片とは反応せず、かつ、
    インスリンの立体構造が維持された状態で反応する抗体をスクリーニングする工程
    工程3)工程2で選択されたハイブリドーマが産生する抗体を取得する工程
  2. 下記の特徴(a)〜(i)を有する、請求項1に記載の抗ヒトインスリンモノクローナル抗体。
    (a)ヒトインスリンと反応する
    (b)ブタインスリンと反応しない
    (c)ウシインスリンと反応しない
    (d)イヌインスリンと反応しない
    (e)ウサギインスリンと反応しない
    (f)プロインスリンと反応しない
    (g)インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリン
    デテミル、インスリングルリジンよりなる群より選ばれる1以上のインスリン類似化合物
    と反応しない
    (h)RGFFYTPKT(配列表配列番号1)の配列から成るぺプチド断片と反応しな

    (i)以下の溶液中で取りうるヒトインスリン分子におけるβ鎖C末端RGFFYTPKT領域の立体構造を認識する
    0.01M HEPES(pH8.5)、0.15M 塩化ナトリウム、3mM E
    DTA、0.005% SurfactantP20
  3. 受託番号FERM BP−11314のハイブリドーマより産生される請求項1または2に記載の抗ヒトインスリンモノクローナル抗体。
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