この明細書中で、実施形態に関して、明快且つ簡潔な明細書を書くように、本発明を記述してきた。実施態様は、本発明を逸脱しない限り、種々に組合されあるいは分離され得ると意図されており、そのように理解されるべきである。
別記しない限り、本明細書中で用いられる技術および科学用語は全て、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学において)当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。標準技術は、分子的、遺伝的および生化学的方法(一般的に、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubel, et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.参照)(これらは参照により本明細書中に組入れられる)、ならびに化学的方法のために用いられる。
免疫グロブリン: 本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン」は、2つのβシートを、そして通常は保存ジスルフィド結合を含有する抗体分子に特徴的な免疫グロブリン襞を保持するポリペプチドの一ファミリーを指す。
ドメイン: 本明細書中で用いる場合、「ドメイン」は、残りのタンパク質とは無関係にその三次構造を保持する折り畳まれたタンパク質構造を指す。一般的に、ドメインは、タンパク質の別個の機能的特性に寄与し、そして多くの場合、残りのタンパク質および/またはドメインの機能を損失することなく、他のタンパク質に付加され、除去され、または移動され得る。単一抗体可変ドメインまたは免疫グロブリン単一可変ドメインとは、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインを意図される。したがってそれは完全抗体可変ドメインおよび修飾可変ドメインを包含し、例えば、この場合、抗体可変ドメインに特徴的でない配列、あるいは切頭化されているか、N−またはC末端伸長を含む抗体可変ドメイン、ならびに少なくとも一部は全長ドメインの結合活性および特異性を保持する可変ドメインの折り畳まれた断片により1つ以上のループが置き換えられている。
免疫グロブリン単一可変ドメイン: 「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という語句は、異なるまたは他のV領域またはドメインと関係なく抗原またはエピトープを特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)または結合ドメインを指す。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを伴うフォーマット(例えば、ホモまたはへテロ多量体)で存在し得るが、この場合、他の領域またはドメインは単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合に必要でない(すなわち、この場合、免疫グロブリン単一可変ドメインは付加的可変ドメインとは無関係に抗原を結合する)。「ドメイン抗体」または「dAb」は、本明細書中で用いる場合の「免疫グロブリン単一可変ドメイン」である。「単一抗体可変ドメイン」または「抗体単一可変ドメイン」は、本明細書中で用いる場合の「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同一である。免疫グロブリン単一可変ドメインは、一実施形態では、ヒト抗体可変ドメインであるが、しかし、他の種、例えば齧歯類(例えばWO00/29004(この記載内容は参照により本明細書中に組入れられる)に開示)、テンジクザメおよびラクダ類VHH dAbからの単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ類VHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含めた種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであって、これは、天然で軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する。VHHは、ヒト化され得る。
本発明の全ての態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、独立して、抗体重鎖および軽鎖単一可変ドメイン、例えばVH、VLおよびVHHから選択される。
本明細書中で用いる場合、「抗体」は、抗体を産生する任意の種に由来するものであれ、組換えDNA技術により作製されるものであれ;例えば血清、B細胞、ハイブリドーマ、形質転換体、酵母または細菌から単離されたものであれ、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、あるいは断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉鎖立体配座多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ)を指す。
抗体フォーマット: 一実施形態では、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドは、任意の抗体フォーマットで提供され得る。本明細書中で用いる場合、「抗体フォーマット」は、構造に抗原に対する結合特異性を付与する1つ以上の抗体可変ドメインが組入れられ得る任意の適切なポリペプチド構造を指す。種々の適切な抗体フォーマット、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体およびヘテロ二量体、前記のいずれかの抗原結合断片(例えば、Fv断片(例えば一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片)、単一抗体可変ドメイン(例えば、dAb、VH、VHH、VL)、ならびに前記のいずれかの修飾化バージョン(例えば、ポリエチレングリコールまたは他の適切なポリマーまたはヒト化VHHの共有結合により修飾される)が、当該技術分野で既知である。一実施形態では、代替的抗体フォーマットは、本発明による任意の分子のCDRが適切なタンパク質足場または骨格上にグラフトされ得る代替的足場、例えばアフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメイン、アビマー(例えば米国特許出願公開第2005/0053973号、2005/0089932号、2005/0164301号参照)またはEGFドメインを包含する。さらにリガンドは、本明細書中に記載されるような二価(ヘテロ二価)または多価(ヘテロ多価)であり得る。他の実施形態では、「普遍的フレームワーク」が用いられ得るが、この場合、「普遍的フレームワーク」は、カバト(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”, US Department of Health and Human Services)により定義されるような配列中に保存された抗体の領域に対応する、あるいはChothia and Lesk, (1987) J. Mol. Biol. 196:910‐917により定義されるようなヒト生殖系列免疫グロブリンレパートリーまたは構造に対応する単一抗体フレームワーク配列を指す。本発明は、超可変領域単独における変異による事実上任意の結合特異性の誘導を可能にすることが判明している単一フレームワークまたはこのようなフレームワークの一組の使用を提供する。
この開示全体を通して記載される本発明の実施形態では、本発明のペプチドまたはリガンドにおける抗TGFベータRII「dAb」の使用の代わりに、熟練受け手は、TGFベータRIIを結合する本発明のdAbのCDR(例えば、適切なタンパク質足場または骨格例えばアフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメインまたはEGFドメイン上にグラフトされたCDR)のうちの1つ以上または3つ全てを含むポリペプチドまたはドメインを用い得る、ということが意図される。したがって、全体としての開示は、dAbの代わりにこのようなどメインを用いてポリペプチドの開示を提供するよう意図されるべきである。この点で、WO2008096158(参照により本明細書中に組入れられる)を参照されたい。
一実施形態では、抗TGFβRII免疫グロブリン単一可変ドメインは任意の適切な免疫グロブリン可変ドメインであり、そして任意にヒト可変ドメイン、あるいはヒトフレームワーク領域(例えばDP47またはDPK9フレームワーク領域)を含むかまたはそれに由来する可変ドメインである。
抗原: 本明細書中で記載する場合、「抗原」は、本発明に従って結合ドメインにより結合される分子である。典型的には、抗原は抗体リガンドにより結合され、in vivoでの抗体応答を引き起こし得る。それは、例えばポリペプチド、タンパク質、核酸または他の分子であり得る。
エピトープ: 「エピトープ」は、免疫グロブリンVH/VL対により慣用的に結合される構造の単位である。エピトープは、抗体のための最小結合部位を限定し、したがって、抗体の特異性の標的を表す。単一ドメイン抗体の場合、エピトープは、単離に際して可変ドメインにより結合される構造の単位を表す。
結合: 典型的には、特異的結合は、50ナノモル以下、任意に250ピコモル以下の解離定数(Kd)により示される。抗原またはエピトープに対する抗原結合タンパク質の特異的結合は、適切な検定により、例えばスカチャード分析および/または競合結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫検定、例えばELISAおよびサンドイッチ競合検定、ならびにその種々の変法により確定され得る。
結合親和性: 結合親和性は、任意に、表面プラズモン共鳴(SPR)およびBiacore(Karlsson et al., 1991)を用いて、Biacoreシステム(Uppsala, Sweden)を用いて確定される。Biacoreシステムは、表面プラズモン共鳴(SPR、Welford K. 1991, Opt. Quant. Elect. 23:1;Morton and Myszka, 1998, Methods in Enzymology 295: 268)を用いて実時間での生体分子相互作用をモニタリングし、そして、300nmまで離れた表面の屈折率における変化の結果としてのガラス支持体上の薄い金皮膜の表面での光の共鳴角度の変化を検出し得る表面プラズモン共鳴を用いる。Biacore分析は、会合速度定数、解離速度定数、平衡解離定数および親和定数を生じると好都合である。結合親和性は、Biacore表面プラズモン共鳴システム(Biacore, Inc.)を用いて、会合および解離速度定数を査定することにより得られる。バイオセンサーチップは、メーカー(Biacore)の使用説明書に従って標的の共有結合のために活性化される。次いで、標的は希釈され、チップ上に注入されて、固定化物質の応答単位でシグナルを得る。共鳴単位(RU)でのシグナルは固定化物質の質量に比例するため、これは、マトリックス上の一連の固定化標的密度を表す。解離データは、kオフ+/−s.d.(測定値の標準偏差)を得るために一部位モデルに適合される。各解離曲線に関して擬一次速度定数(Kd)が算定され、タンパク質濃度の一関数としてプロットされて、kオン+/−s.e.(適合度の標準誤差)を得る。SPR測定値からkオフ/kオンとして、結合に関する平衡解離定数Kdが算定される。
本発明の別の態様は、ヒトTGFベータRIIと特異的に結合する抗TGFβRII免疫グロブリン単一可変ドメインを提供する。一実施形態では、可変ドメインは、約50nM、40nM、30nM、20nM、10nMまたはそれ未満、任意に、約9、8、7、6または5nMまたはそれ未満、任意に約4nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、あるいは約2nMまたはそれ未満あるいは約1nMまたはそれ未満、任意に約500pMまたはそれ未満の解離定数でヒトTGFベータRIIを結合する。適切には、可変ドメインが約50nM〜500pMの範囲の解離定数を有する場合、それは、肺のような当該組織への局所投与に特に適している。この実施形態では、高濃度のこのような「中等度親和性」結合剤が有効治療薬として提供され得る。別の実施形態では、可変ドメインは、約500pMまたはそれ未満、任意に約450pM、400pM、350pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pMまたはそれ未満、任意に約40pM、30pM、20pM、10pMまたはそれ未満の解離定数(Kd)を有するヒトTGFベータRIIを結合する。適切には、可変ドメインが約500pM〜10pMの範囲の解離定数を有する場合、当該組織のいずれか1つにおける量が有効な治療を提供するのに十分であるよう、それは全身投与のために特に適している。この実施形態では、低濃度のこのような「高親和性」結合剤が有効治療薬として提供され得る。
一実施形態では、本発明の単一可変ドメインは、ヒトTGFベータRIIと、別の種からのTGFベータRII、例えばマウスTGFベータRIIとの間の交差反応性を示す。この実施形態では、可変ドメインは、ヒトおよびマウスTGFベータRIIを特異的に結合する。これは、薬剤がヒトにおいて試験される前に薬剤開発が典型的にはマウス系における主要薬剤候補の試験を要するため、特に有用である。ヒトおよびマウス種を結合し得る薬剤の提供により、これらの系における結果を試験することが可能となり、同一薬剤を用いてデータを横並び比較し得る。これは、マウスTGFベータRIIに対して働く薬剤ならびにヒトTGFベータRIIに対して働く別個の薬剤を見つけ出す必要があるという厄介な問題を回避し、そして非同一薬剤を用いてヒトおよびマウスにおける結果を比較する必要性も会費する。疾患モデル、例えばイヌまたはサル、例えばカニクイザルにおいて用いられる他の種間の交差反応性も予測される。
任意に、少なくともマウスTGFベータRIIに関する免疫グロブリン単一可変ドメインの結合親和性ならびにヒトTGFベータRIIに関する結合親和性は、10、50または100のうちのわずか1因子が異なる。
CDR: 本明細書中に記載される免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)は、相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含有する。CDR、およびフレームワーク(FR)領域の場所ならびに番号付けシステムは、カバト等(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immun ological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Government Printing Office (1991))により定義されている。本明細書中に開示されるVH(CDRH1等)およびVL(CDRL1等)(Vκ)dAbのアミノ酸配列は、周知のカバトアミノ酸番号付けシステム、ならびにCDRの定義に基づいて、当業者には容易に明らかになる。配列変異性に基づいた最も一般に用いられる方法であるカバト番号付けシステムによれば、重鎖CDR−H3は種々の長さを有し、挿入は、Kまでの文字を用いて残基H100およびH101間で番号付けられる(すなわち、H100、H100A・・・・・H100K、H101)。CDRは、代替的には、以下のように、コチアのシステム(構造的ループ領域の場所に基づいて)(Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342, p877‐883)を用いて、AbM(カバトおよびコチア間の折衷案)によって、あるいはコンタクト法(結晶構造ならびに抗原との接触残基の予測に基づいて)によって確定され得る。CDRを確定するための適切な方法に関しては、http://www.bioinf.org.uk/abs/参照。
一旦、各残基が番号付けされると、次に、以下のCDR定義を適用し得る:
TGFベータRII: 本明細書中で用いる場合、「TGFベータRII」(形質転換増殖因子ベータII型受容体;TGFβRII)は、天然または内因性哺乳動物TGFベータRIIタンパク質を、ならびに天然または内因性の対応する哺乳動物TGFベータRIIタンパク質(例えば、組換えタンパク質、合成タンパク質(すなわち、合成有機化学の方法を用いて製造される))のものと同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。したがって、本明細書中で定義されるように、当該用語は、成熟TGFベータRIIタンパク質、多型性または対立遺伝子突然変異体、およびTGFベータRIIの他のアイソフォーム、ならびに前記のものの修飾または非修飾形態(例えば、脂質化、グリコシル化)を包含する。天然または内因性TGFベータRIIとしては、野生型タンパク質、例えば成熟TGFベータRII、多型性または対立遺伝子変異体、ならびに哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類)において天然に生じるその他のアイソフォームおよび突然変異体形態が挙げられる。このようなタンパク質は、例えばTGFベータRIIを天然に発現する供給源から回収されるかまたは単離され得る。これらのタンパク質および天然または内因性の対応するTGFベータRIIと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質は、対応する哺乳動物の名称により言及される。例えば、対応する哺乳動物がヒトである場合、タンパク質はヒトTGFベータRIIと呼ばれる。ヒトTGFベータRIIは、例えばLin, et al., Cell 1992, Vol. 68(4), p.775‐785およびGenBank寄託番号M85079により記載されている。
ヒトTGFベータRIIは、約159個のアミノ酸の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインならびに細胞質ドメイン(シグナル伝達のためのプロテインキナーゼドメインを含む)を伴う567個のアミノ酸からなる膜貫通受容体である。
本明細書中で用いる場合、「TGFベータRII」は、TGFベータRIIの一部または断片も包含する。一実施形態では、このような一部または断片は、TGFベータRIIの細胞外ドメインまたはその一部を包含する。
「抗TGFベータRII」とは、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、リガンド、融合タンパク質等に関しては、TGFベータRIIを認識し、結合する部分を意味する。一実施形態では、「抗TGFベータRII」は、タンパク質TGFベータRII、適切にはヒトTGFベータRIIを特異的に認識し、および/または特異的に結合する。別の実施形態では、本発明による抗TGFベータRII免疫グロブリン単一可変ドメインは、マウスTGFベータRIIとも結合する(GenBank寄託番号 NM_029575;例えばMassague et al., Cell 69 (7), 1067‐1070 (1992)に記載)。
「TGFベータ」は、TGFベータ1、TGFベータ2およびTGFベータ3のようなアイソフォームを包含する。
TGFベータはTGFベータRIIを結合し、そしてTGFベータRIとの複合体中で、シグナル伝達経路を開始する。したがって、TGFベータ活性、ならびにTGFベータ活性の抑制または中和は、TGFベータシグナル伝達の出力を測定する任意の検定により決定され得る。TGFベータシグナル伝達は、例えばItoh, et al., Eur. J. Biochem 2000, Vol. 267, p.6954;Dennler, et al., Journal of Leucocyte Biol. 2002, 71(5), p. 731−40で再検討されている。したがって、TGFベータ活性は、当業者に周知の多数の異なる検定で試験され得る。「抑制」または「中和」は、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの存在下では、このような免疫グロブリン単一可変ドメインの非存在下でのTGFベータの活性と比較して、TGFベータの生物学的活性が全体的または部分的に低減される、ということを意味する。
一実施形態では、TGFベータ活性の抑制または中和は、IL−11放出検定で試験される。この実施形態では、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメインの能力は、A549細胞のような細胞からのヒトTGFベータ1(TGFベータ1;TGF−β1)刺激性IL−11放出を抑制するその能力に関して試験される。TGFベータ1(TGF−β1)は、TGFベータRII(TGF−βRII)と直接結合して、TGFベータRI/RII(TGF−βRI/RII)複合体のアセンブリーを誘導する。TGFベータRI(TGF−βRI)はリン酸化され、そしてSmad4経路を含めたいくつかの経路によりシグナル伝達し得る。Smad4経路の活性化は、IL−11の放出を生じる。IL−11は、細胞上清中に分泌され、次いで、比色ELISA法により測定される。適切なIL−11放出検定は、本明細書中に記載されており、例えばヒトIL−11クアンチキンELISA検定キット(R & D system)(ref. D1100)である。
別の実施形態では、TGFベータ活性は、MC3T3−E1ルシフェラーゼ検定におけるMC3T3−E1細胞中でのCAGA−ルシフェラーゼのTGFベータ誘導性発現を抑制する本発明による免疫グロブリン単一可変ドメインの能力に関する検定で試験される。CAGAボックスと呼ばれるTGFベータ応答性配列モチーフの3つのコピーは、ヒトPAI−1プロモーター中に存在し、Smad3および4タンパク質を特異的に結合する。ルシフェラーゼレポーター構築物中へのCAGAボックスの多数のコピーのクローニングは、レポーター系でトランスフェクトされた細胞にTGFベータ応答性を付与する。適切な一検定は、本明細書中に記載されており、[CAGA]12−ルシフェラーゼレポーター構築物で安定的にトランスフェクトされたMC3T3−E1細胞(マウス骨芽細胞)を用いる(Dennler, et al., (1998) EMBO J. 17, 3091−3100)。
他の適切な検定としては、ヒトSBEベータ−ラクタマーゼ細胞検定(INVITROGEN(登録商標)、細胞センサー検定)が挙げられる。適切な検定の例は、本明細書中に記載されている。
適切には、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、リガンドまたは融合タンパク質は、それ自体、TGFベータRII受容体シグナル伝達を活性化しない。したがって、一実施形態では、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、リガンドまたは融合タンパク質は、10μMでアゴニスト活性を欠く。アゴニスト活性は、TGFベータの非存在下で、本明細書中に記載されるようなTGFベータRII検定において当該化合物を試験することにより確定され得る。TGFベータが存在しない場合、当該化合物のアゴニスト活性は、TGFベータRIIシグナル伝達を検出することにより検出される。
相同性: 本明細書中に開示される配列と類似のまたは相同の配列(例えば少なくとも約70%配列同一性)も、本発明の一部である。いくつかの実施形態では、アミノ酸レベルでの配列同一性は、約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であり得る。核酸レベルでは、配列同一性は、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であり得る。代替的には、実質的な同一性は、核酸セグメントが、選択的ハイブリダイゼーション条件(例えば、非常に高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件)下で、当該鎖の相補体とハイブリダイズする場合に存在する。核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分的に精製されたかまたは実質的に純粋な形態で存在し得る。
本明細書中で用いる場合、「低ストリンジェンシー」、「中等度ストリンジェンシー」、「高ストリンジェンシー」または「極高ストリンジェンシー」条件という用語は、核酸のハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記載する。ハイブリダイゼーション反応を実施するための指針は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1‐6.3.6(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に見出され得る。水性および非水性方法は、その参考文献中に記載されており、いずれかが用いられ得る。本明細書中で言及される具体的ハイブリダイゼーション条件を以下に示す:(1)低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃で、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中。その後、少なくとも50℃で0.2×SSC、0.1%SDS中で2回洗浄(洗浄温度は、低ストリンジェンシー条件に関しては55℃に増大され得る);(2)中等度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃で、6×SSC。その後、60℃で、0.2×SSC、0.1%SDS中で1回以上洗浄;(3)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃で、6×SSC中。その後、65℃で、0.2×SSC、0.1%SDS中で1回以上洗浄;そして任意に、(4)極高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:65℃で、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS。その後、65℃で、0.2×SSC、1%SDSで1回以上洗浄。極高ストリンジェンシー条件(4)は、好ましい条件であり、別記しない限り、用いられるべきものである。
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」または「類似性」(当該用語は、本明細書中で互換的に用いられる)の算定は、以下のように実施される。配列は、最適比較目的のために整列される(例えば、最適アラインメントのために、ギャップが、第一および第二アミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入され得るし、非相同配列は比較目的のためには無視される)。一実施形態では、比較目的のために整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも約30%、任意に少なくとも約40%、任意に少なくとも約50%、任意に少なくとも約60%、そして任意に少なくとも約70%、80%、90%または100%である。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドが、次に比較される。第一配列中の位置が第二配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められる場合には、分子はその位置で同一である(本明細書中で用いる場合、アミノ酸または核酸「相同性」は、アミノ酸または核酸「同一性」と等価である)。2つの配列間の同一性パーセントは、配列により共有される同一位置の数の一関数であり、ギャップの数ならびに各ギャップの長さを考慮するが、これは、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要がある。
本明細書中で定義されるようなアミノ酸およびヌクレオチド配列のアラインメントおよび相同性、類似性または同一性は、任意に、アルゴリズムBLAST 2シーケンスを用いて、デフォルトパラメーターを用いて、調製され、確定される(Tatusova, T. A. et al.., FEMS Microbiol Lett, 174:187‐188 (1999))。代替的には、BLASTアルゴリズム(バージョン2.0)は配列アラインメントのために用いられ、パラメーターをデフォルト値に設定する。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)は、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxにより用いられる発見的検索アルゴリズムである;これらのプログラムは、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(6):2264−8の統計学的方法を用いた彼等の知見により有意性を有する。
リガンド: 本明細書中で用いる場合、「リガンド」という用語は、TGFベータRIIに関する結合特異性を有する結合部位を有する少なくとも1つのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質部分を含む化合物を指す。リガンドは、「結合部分」としても言及され得る。
本発明によるリガンドまたは結合部分は、任意に、異なる結合特異性を有する免疫グロブリン可変ドメインを含み、そして標的化合物に関する結合部位を一緒になって形成する可変ドメイン対を含有しない(すなわち、TGFベータRIIに関する結合部位を一緒になって形成する免疫グロブリン重鎖可変ドメインおよび免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含まない)。任意に、標的に関する結合特異性を有する結合部位を有する各ドメインは、所望の標的(例えばTGFベータRII)に関する結合特異性を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、免疫グロブリン単一重鎖可変ドメイン(例えば、VH、VHH)、免疫グロブリン単一軽鎖可変ドメイン(例えば、VL))である。
したがって、「リガンド」は、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを包含し、この場合、各免疫グロブリン単一可変ドメインは異なる標的と結合する。リガンドは、少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド、あるいは適切なフォーマット、例えば抗体フォーマット(例えば、IgG様フォーマット、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2)あるいは適切なタンパク質足場または骨格、例えばアフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメイン、EGFドメイン、アビマーで異なる標的を結合する単一可変ドメインのCDR配列、ならびに本明細書中に記載されるような二重および多重特異性リガンドも包含する。
標的(例えば、TGFベータRII)に関する結合特異性を有する結合部位を有するポリペプチドドメインは、所望の標的に関する結合部位を含むタンパク質ドメインでもあり得るし、例えばタンパク質ドメインは、アフィボディ、SpAドメイン、LDL受容体クラスAドメイン、アビマーから選択される(例えば米国特許出願公開番号2005/0053973、2005/0089932、2005/0164301参照)。所望により、「リガンド」は、各々独立して、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質部分あるいは非ペプチド部分(例えば、ポリアルキレングリコール、脂質、炭水化物)であり得る1つ以上の付加的部分をさらに含み得る。例えば、リガンドは、本明細書中に記載されるような半減期延長部分(例えば、ポリアルキレングリコール部分、アルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体を含む部分、トランスフェリン、トランスフェリン断片またはトランスフェリン変異体を含む部分、アルブミンを結合する部分、新生児Fc受容体を結合する部分)をさらに含み得る。
競合する: 本明細書中で言及する場合、「競合する」という用語は、一次標的()とそのコグネイト標的結合ドメイン(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン)との結合が、上記コグネイト標的に特異的である二次結合ドメイン(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン)の存在下で抑制される、ということを意味する。例えば、結合は、標的に対するその親和性(アフィニティー)または親和力(アビディティー)が低減されるよう、例えば結合ドメインの物理的遮断により、あるいは結合ドメインの構造または環境の変化により、立体的に抑制され得る。競合ELISAおよび競合BiaCore実験を実施して、一次および二次結合ドメイン間の競合を確定する方法の詳細に関しては、WO2006038027を参照。その詳細は、本発明で用いるための明白な開示を提供するために、参照により本明細書中に組入れられる。
TGFベータシグナル伝達: 適切には、本発明の単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドは、TGFベータRIIを介したTGFベータシグナル伝達を中和し得る。「中和する」とは、TGFベータの存在がTGFベータRIIシグナル伝達に及ぼす中立的作用を有するよう、TGFベータの通常のシグナル伝達作用が遮断される、ということを意味する。中和作用を測定するための適切な方法としては、本明細書中に記載されるようなTGFベータ氏愚案流伝辰に関する検定が挙げられる。一実施形態では、中和は、TGFベータシグナル伝達検定におけるTFGベータ活性の抑制%として観察される。一実施形態では、単一可変ドメインまたはポリペプチドはTGFベータRIIの細胞外ドメインと結合し、それによりTGFベータとTGFベータRIIの細胞外ドメインとの結合を抑制し/遮断する。適切には、過剰量の生体利用可能TGFベータが存在する場合、単一可変ドメインまたはポリペプチドは有用であり、そして単一可変ドメインまたはポリペプチドは、TGFベータとそのコグネイト受容体TGFベータRIIとの結合を抑制することにより生体利用可能TGFベータのシグナル伝達活性を抑制するのに役立つ。
本明細書中で用いる場合、「TGFベータRIIのアンタゴニスト」または「抗TGFベータRIIアンタゴニスト」等という用語は、TGFベータRIIを結合し、TGFベータRIIの一(すなわち、1つ以上の)機能を抑制し得る作用物質(例えば、分子、化合物)を指す。例えば、TGFベータRIIのアンタゴニストは、TGFベータとTGFベータRIIとの結合を抑制し、および/またはTGFベータRIIにより媒介されるシグナル伝達を抑制し得る。したがって、TGFベータにより媒介される工程および細胞性応答は、TGFベータRIIのアンタゴニストを用いて抑制され得る。
一実施形態では、TGFベータRIIを結合するリガンド(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン)は、≦約10μM、≦約1μM、≦約100nM、≦約50nM、≦約10nM、≦約5nM、≦約1nM、≦約500pM、≦約300pM、≦約100pMまたは≦約10pMである抑制濃度50(IC50)で、TGFベータとTGFベータRII受容体との結合を抑制する。IC50は、任意に、in vitroTGFベータ受容体結合検定、または細胞検定、例えば本明細書中に記載される検定を用いて決定される。
リガンド(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン)は、任意に、適切なin vitro検定において、≦約10μM、≦約1μM、≦約100nM、≦約50nM、≦約10nM、≦約5nM、≦約1nM、≦約500pM、≦約300pM、≦約100pM、≦約10pM、≦約1pM≦約500fM、≦約300fM、≦約100fM、≦約10fMである中和用量50(ND50)で、TGFベータRII誘導性機能を抑制する、ということも意図される。
「二重特異性リガンド」: 一実施形態では、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドは、一次抗原またはエピトープ結合部位(例えば一次免疫グロブリン単一可変ドメイン)および二次抗原またはエピトープ結合部位(例えば二次免疫グロブリン単一可変ドメイン)を含むリガンドを指す「二重特異性リガンド」の一部であり得るが、この場合、結合部位または可変ドメインは、2つの抗原(例えば異なる抗原または同一抗原の2つのコピー)、あるいは一重特異性免疫グロブリンにより普通は結合されない同一抗原上の2つのエピトープと結合し得る。例えば、2つのエピトープは同一抗原上に存在し得るが、しかし同一エピトープではないかあるいは一重特異性リガンドにより結合されるほど十分に隣接していない。一実施形態では、本発明による二重特異性リガンドは、異なる特異性を有する結合部位または可変ドメインからなり、同一特異性を有する(すなわち、単位結合部位を形成しない)相互相補的可変ドメイン対(すなわち、VH/VL対)を含有しない。
一実施形態では、「二重特異性リガンド」は、TGFベータRIIと、ならびに別の標的分子と結合し得る。例えば、別の標的分子は、本発明の二重特異性リガンドが本発明による抗TGFベータRIIポリペプチドまたは免疫グロブリン単一可変ドメインを当該組織に対して標的にさせるよう、組織特異性標的分子であり得る。このような組織としては、肺、肝臓等が挙げられる。
本発明のリガンド(例えば、ポリペプチド、dAbおよびアンタゴニスト)は、二次免疫グロブリン単一可変ドメインと直接的に融合される一次免疫グロブリン単一可変ドメインを含有する融合タンパク質としてフォーマット化され得る。所望により、このようなフォーマットは、半減期延長部分をさらに含み得る。例えばリガンドは、血清アルブミンを結合する免疫グロブリン単一可変ドメインと直接的に融合される二次免疫グロブリン単一可変ドメインと直接的に融合される一次免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る。
一般的に、標的に関する結合特異性を有する結合部位を有するポリペプチドドメインの配向、ならびにリガンドがリンカーを含むか否かは、設計選択の問題である。しかしながら、いくつかの配向は、リンカーの有無にかかわらず、他の配向より良好な結合特質を提供し得る。全ての配向(例えば、dAb1−リンカー−dAb2;dAb2−リンカー−dAb1)が本発明に包含され、そして所望の結合特質を提供する配向を含有するリガンドはスクリーニングにより容易に同定され得る。
本発明によるポリペプチドおよびdAb、例えばdAb一量体、二量体、三量体は、C2およびC3ドメインの一方または両方を含む抗体Fc領域と、そして任意にヒンジ領域と連結され得る。例えば、単一ヌクレオチド配列としてFc領域と連結されるリガンドをコードするベクターが、このようなポリペプチドを調製するために用いられ得る。
本発明はさらに、前記のdAb単量体の二量体、三量体および多量体を提供する。
標的: 本明細書中で用いる場合、「標的」という語句は、結合部位を有するポリペプチドドメインが結合し得る生物学的分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物)を指す。標的は、例えば、細胞内標的(例えば、細胞内タンパク質標的)、可溶性標的(例えば、分泌型)、または細胞表面標的(例えば、膜タンパク質、受容体タンパク質)であり得る。一実施形態では、標的はTGFベータRIIである。別の実施形態では、標的はTGFベータRII細胞外ドメインである。
相補的: 本明細書中で用いる場合、「相補的」は、2つの免疫グロブリンドメインが、コグネイト対または群を形成する構造のファミリーに属するか、あるいはこのようなファミリーに由来し、この特徴を保持する場合を指す。例えば、抗体のVHドメインおよびVLドメインは相補的である;2つのVHドメインは相補的でなく、2つのVLドメインは相補的でない。相補的ドメインは、免疫グロブリンスーパーファミリーの他の成員に見出され、例えば、T細胞受容体のVαおよびVβ(またはγおよびδ)ドメインである。人工的なドメイン、例えばそうなるように工学処理されない限りエピトープを結合しないタンパク質足場を基礎にしたドメインは、非相補的である。同様に、(例えば)免疫グロブリンドメインおよびフィブロネクチンドメインを基礎にした2つのドメインは、相補的でない。
「親和性」および「親和力」は、結合相互作用の強度を記述する技術用語である。本発明のリガンドに関しては、親和力は、細胞上の標的(例えば一次標的および二次標的)およびリガンド間の結合の全体的強度を指す。親和力は、個々の標的に関する個々の親和性の合計より大きい。
核酸分子、ベクターおよび宿主細胞: 本発明は、本明細書中に記載されるようなリガンド(単一可変ドメイン、融合タンパク質、ポリペプチド、二重特異性リガンドおよび多重特異性リガンド)をコードする単離および/または組換え核酸分子も提供する。
「単離された」として本明細書中で言及される核酸は、それらの供給源のゲノムDNAまたは細胞性RNAの核酸から分離されている核酸を指し(例えばそれが、細胞中に、またはライブラリーのような核酸の混合物中に存在する場合)、例としては、本明細書中に記載される方法または他の適切な方法により得られる核酸、例えば本質的に純粋な核酸、化学合成により、生物学的および化学的方法の組合せにより産生される核酸、ならびに単離される組換え核酸が挙げられる(例えば、Daugherty, B.L. et al., Nucleic Acids Res., 19(9): 2471−2476 (1991); Lewis, A.P. and J.S. Crowe, Gene, 101: 297‐302 (1991)参照)。
「組換え体」として本明細書中で言及される核酸は、組換えDNA技法により産生された核酸、例えば人工組換えの方法に依っている手法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または制限酵素を用いるベクター中へのクローニングにより生成される核酸である。
ある実施形態では、単離および/または組換え核酸は、本明細書中に記載されるような免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドをコードするヌクレオチド配列を含み、この場合、上記リガンドは、本明細書中に開示されるTGFベータRIIを結合するdAbのアミノ酸配列、例えば配列番号1〜23のいずれかで記述されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ヌクレオチド配列同一性は、選択抗TGFベータRII dAbをコードするヌクレオチド配列の全長に亘って確定され得る。
本発明は、本発明の組換え核酸分子を含むベクターも提供する。ある実施形態では、ベクターは、本発明の組換え核酸と操作可能的に連結される1つ以上の発現制御素子または配列を含む発現ベクターである。本発明は、本発明の組換え核酸分子またはベクターを含む組換え宿主細胞も提供する。本発明の組換え宿主細胞を産生するための適切なベクター(例えばプラスミド、ファージミド)、発現制御素子、宿主細胞および方法は当該技術分野で周知であり、例は、本明細書中でさらに記載される。
適切な発現ベクターは、多数の構成成分、例えば複製の起点、選択可能マーカー遺伝子、1つ以上の発現制御素子、例えば転写制御素子(例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター)、および/または1つ以上の翻訳シグナル、シグナル配列またはリーダー配列等を含有し得る。発現制御素子およびシグナル配列は、存在する場合、ベクターまたは他の供給源により提供され得る。例えば、抗体鎖をコードするクローン化核酸の転写および/または翻訳制御配列を用いて、発現を指図し得る。
プロモーターは、所望の宿主細胞中での発現のために提供され得る。プロモーターは、構成性または誘導性であり得る。例えばプロモーターは、それが核酸の転写を指図するよう、抗体、抗体鎖またはその部分をコードする核酸と操作可能的に連結され得る。原核生物(例えば大腸菌に関するlac、tac、T3、T7プロモーター)および真核生物(例えばサルウイルス40早期または後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長い末端反復プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター)宿主に関する種々の適切なプロモーターが利用可能である。
さらに、発現ベクターは、典型的には、ベクターを保有する宿主細胞の選択のための選択可能マーカーを含み、複製可能発現ベクターの場合、複製の起点を含む。抗生物質または薬剤耐性を付与する生成物をコードする遺伝子は、共通選択可能マーカーであり、原核生物(例えば、ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)、テトラサイクリン耐性に関するTet遺伝子)および真核生物(例えば、ネオマイシン(G418またはゲネチシン)、gpt(ミコフェノール酸)、アンピシリンまたはヒグロマイシン耐性遺伝子)細胞に用いられ得る。ジヒドロフォレートレダクターゼマーカー遺伝子は、種々の宿主においてメトトレキサートによる選択を可能にする。宿主の栄養要求性マーカーの遺伝子産物をコードする遺伝子(例えば、LEU2、URA3、HIS3)は、しばしば、酵母における選択可能マーカーとして用いられる。ウイルス(例えばバキュロウイルス)またはファージベクター、ならびに宿主のゲノム中に組み込み得るベクター、例えばレトロウイルスベクターの使用も、意図される。哺乳動物細胞および原核生物細胞(大腸菌)、昆虫細胞(ショウジョウバエシュナイダーS2細胞、Sf9)および酵母(ピキア・メタノリカ(P. methanolica)、ピキア・パストリス(P. pastoris)、出芽酵母(S. cerevisiae))中での発現のための適切な発現ベクターは、当該技術分野で周知である。
適切な宿主細胞は、原核生物細胞、例えば細菌細胞、例えば大腸菌、枯草菌および/またはその他の適切な細菌;真核生物細胞、例えば真菌または酵母細胞(例えば、ピキア・パストリス、アスペルギルス種、出芽酵母、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、アカパンカビ(Neurospora crassa))、あるいはその他の下等真核生物細胞、ならびに高等真核生物の細胞、例えば昆虫(例えば、ショウジョウバエシュナイダーS2細胞、Sf9昆虫細胞(WO 94/26087(O‘Connor))、哺乳類(例えば、COS細胞、例えばCOS−1(ATCC寄託番号CRL−1650)およびCOS−7(ATCC寄託番号CRL−1651)、CHO(例えば、ATCC寄託番号CRL−9096、CHO DG44 (Urlaub, G. and Chasin, LA., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77(7):4216‐4220 (1980)))、293(ATCC寄託番号CRL−1573)、HeLa(ATCC寄託番号CCL−2)、CV1(ATCC寄託番号CCL−70)、WOP(Dailey, L., et al., J. Virol., 54:739‐749 (1985)、3T3、293T(Pear, W. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90:8392‐8396 (1993)) NS0細胞、SP2/0、HuT 78細胞等、または植物(例えば、タバコ)(例えば、Ausubel, F.M. et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons Inc. (1993)参照)。いくつかの実施形態では、宿主細胞は単離宿主細胞であり、多細胞生物(例えば、植物または動物)の一部ではない。ある実施形態では、宿主細胞は非ヒト宿主細胞である。
本発明は、本発明のリガンド(例えば、二重特異性リガンド、多重特異性リガンド)の産生方法であって、組換え核酸の発現に適した条件下で本発明の組換え核酸を含む組換え宿主細胞を維持し、それにより、組換え核酸が発現され、リガンドが産生されることを包含する方法も提供する。いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、リガンドを単離することを包含する。
本発明の実施形態に適用可能である開示の詳細に関しては、WO200708515、161ページ、24行目〜189ページ、10行目が参照される。この開示は、本発明の開示の本文中に明白に認められ、本発明の実施形態に関する場合のように、参照により本明細書中に組入れられる。これは、WO200708515、161ページ、24行目〜189ページ、10行目に提示された開示を含み、「免疫グロブリンベースのリガンドの調製」、「ライブラリーベクター系」、「ライブラリー構築」、「単一可変ドメイン組合せ」、「リガンドの特性化」、「リガンドの構造」、「骨格」、「タンパク質足場」、「リガンドを構築するのに用いるための足場」、「基準配列の多様化」および「治療用および診断用組成物ならびに使用」の詳細を、同様に、「操作可能的に連結される」、「ナイーブ」、「防止」、「抑制」、「処置」、「アレルギー性疾患」、「Th2により媒介される疾患」、「治療的有効用量」および「有効な」の定義を提供する。
「半減期」という語句は、例えばリガンドの分解、および/または天然のメカニズムによるリガンドのクリアランスまたは隔離のために、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドの血清濃度がin vivoで50%低減するのに要する時間を指す。本発明のリガンドは、in vivoで安定化され得るし、それらの半減期は、分解および/またはクリアランスまたは隔離を阻止する分子と結合することにより増大される。典型的には、このような分子は、それ自体がin vivoで長い半減期を有する天然タンパク質である。リガンドの半減期は、その機能的活性が半減期増大分子に特異的でない類似のリガンドより長い期間、in vivoで存続する場合、増大される。したがって、HSAおよび標的分子に特異的なリガンドは、HSAに対する特異性が存在しない、すなわち、HSAを結合しないがしかし別の分子を結合する同一リガンドと比較される。典型的には、半減期は、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上増大される。半減期の2×、3×、4×、5×、10×、20×、30×、40×、50×またはそれ以上の範囲の増大が可能である。代替的には、またはさらに、半減期の30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、150×の範囲の増大が可能である。
フォーマット: 半減期増大は、免疫グロブリン、特に抗体、最も特別には小サイズの抗体断片のin vivo適用に有用であり得る。このような断片(Fv、ジスルフィド結合Fv、Fab、scFv、dAb)は、一般的に、身体から迅速に掃去される。本発明によるdAb、ポリペプチドまたはリガンドは、in vivoでの半減期増大を提供し、その結果、リガンドの機能的活性の身体中でのより長い存続時間を提供するよう適合され得る。
薬物動態分析ならびにリガンド半減期の決定のための方法は、当業者には周知である。詳細は、Kenneth, A et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacistsに、そしてPeters et al, Pharmacokinetic analysis: A Practical Approach (1996)に見出され得る。薬物動態パラメーター、例えばtアルファおよびtベータ半減期ならびに曲線下面積(AUC)を記載している“Pharmacokinetics”, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. ex edition (1982)も参照される。
半減期(t1/2アルファおよびt1/2ベータ)およびAUCは、時間に対するリガンドの血清濃度の曲線から確定され得る。WinNonlin解析パッケージ(Pharsight Corp., Mountain View, CA94040, USAから入手可能)が、例えば曲線を形作るために用いられ得る。第一相(アルファ相)では、リガンドは主に、多少の排除を伴って患者における分配を受けつつある。第二相(ベータ相)は、終期であり、この時、リガンドは分配されており、リガンドが患者から掃去されるので、血清濃度は減少しつつある。tアルファ半減期は、第一相の半減期であり、tベータ半減期は第二相の半減期である。したがって、一実施形態では、本発明は、15分以上の範囲のtα半減期を有する本発明によるリガンドまたはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、範囲の下限は、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、10時間、11時間または12時間である。さらに、あるいは代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、12時間まで(12時間を含む)の範囲のtα半減期を有する。一実施形態では、範囲の上限は、11、10、9、8、7、6または5時間である。適切な範囲の一例は、1〜6時間、2〜5時間または3〜4時間である。
一実施形態では、本発明は、約2.5時間以上の範囲のtβ半減期を有する本発明によるリガンド(ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニスト)またはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、範囲の下限は、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約10時間、約11時間または約12時間である。さらに、あるいは代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、21日まで(21日を含む)の範囲のtβ半減期を有する。一実施形態では、範囲の上限は、約12時間、約24時間、約2日、約3日、約5日、約10日、約15日または約20日である。一実施形態では、本発明によるリガンドまたは組成物は、約12〜約60時間の範囲のtβ半減期を有する。さらなる実施形態では、それは、約12〜約48時間の範囲である。さらなる実施形態では、さらに、それは約12〜約26時間の範囲である。
上記の判定基準のほかに、または代替的には、本発明は、約1mg・分/ml以上の範囲のAUC値(曲線下面積)を有する本発明によるリガンドまたはリガンドを含む組成物を提供する。一実施形態では、範囲の下限は、約5、約10、約15、約20、約30、約100、約200または約300mg・分/mlである。さらに、または代替的には、本発明によるリガンドまたは組成物は、約600mg・分/mlまでの範囲のAUCを有する。一実施形態では、範囲の上限は、約500、約400、約300、約200、約150、約100、約75または約50mg・分/mlである。一実施形態では、本発明によるリガンドは、以下からなる群から選択される範囲のAUCを有する:約15〜約150mg・分/ml、約15〜約100mg・分/ml、約15〜約75mg・分/mlおよび約15〜約50mg・分/ml。
本発明のポリペプチドおよびdAb、ならびにこれらを含むアンタゴニストは、例えば、PEG基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体または少なくともそのトランスフェリン結合部分、抗体Fc領域の付着により、または抗体ドメインの接合により、より大きな流体力学的サイズを有するようフォーマットされ得る。例えば、ポリペプチド、dAbおよびアンタゴニストは、抗体のより大きな抗原結合断片として、または抗体としてフォーマットされる(例えば、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、IgG、scFvとしてフォーマットされる)。
本明細書中で用いる場合、「流体力学的サイズ」は、水溶液を通した分子の分散に基づいた分子(例えば、タンパク質分子、リガンド)の見掛けのサイズを指す。溶液を通してのタンパク質の分散または移動は、タンパク質の見掛けのサイズを引き出すよう処理され得るが、この場合、そのサイズは、タンパク質粒子の「ストークス半径」または「流体力学的半径」により与えられる。タンパク質の「流体力学的半径」は、同一分子質量を有する2つのタンパク質がタンパク質の全体的立体配座に基づいた異なる流体力学的サイズを有し得るよう、質量および形状(立体配座)の両方によって決まる。
本発明のリガンド(例えば、dAb単量体および多量体)の流体力学的サイズは、当該技術分野で周知である方法を用いて決定され得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて、リガンドの流体力学的サイズを決定し得る。リガンドの流体力学的サイズを決定するための適切なゲル濾過マトリックス、例えば架橋アガロースマトリックスは周知であり、容易に利用可能である。
リガンドフォーマットのサイズ(例えば、dAb単量体と連結されたPEG部分のサイズ)は、所望の用途によって変更され得る。例えば、リガンドが循環を離れて末梢組織中に入るよう意図される場合、リガンドの流体力学的サイズを低く維持して、血流からの溢出を助長するのが望ましい。代替的には、より長時間、全身循環中にリガンドが保持されることが所望される場合、リガンドのサイズは、例えばIg用タンパク質としてフォーマットすることにより増大され得る。
半減期をin vivoで増大する抗原またはエピトープを標的化することによる半減期延長: リガンドの流体力学的サイズおよびその血清半減期は、本発明のTGFベータRII結合ポリペプチド、dAbまたはリガンドを、本明細書中に記載されるようなin vivoで半減期を増大する抗原またはエピトープを結合する結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片)と接合するかまたは会合することによっても増大され得る。例えば、TGFベータRII結合作用物質(例えば、ポリペプチド)は、抗血清アルブミンまたは抗新生児Fc受容体抗体または抗体断片、例えば抗SAまたは抗新生児Fc受容体dAb、Fab、Fab’またはscFcと、あるいは抗SAアフィボディまたは抗新生児Fc受容体アフィボディまたは抗SAアビマー、あるいはCTLA−4、リポカリン、SpA、アフィボディ、アビマー、GroE1およびフィブロネクチン(これらに限定されない)からなる群から選択される(これらの結合ドメインの開示に関しては、WO2008096158参照。このドメインおよびそれらの配列は、参照により本明細書中に組み入れられ、本発明の本文の開示の一部を構成する)。コンジュゲート化すること(コンジュゲート)は、血清アルブミンに結合する結合ドメインのような結合ドメインと(共有的にまたは非共有的に)結合された本発明のポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストを含む組成物を指す。
典型的には、in vivoで血清半減期を増強するポリペプチドは、in vivoで天然に生じ、そして生物体(例えばヒト)から望ましくない物質を除去する内因性メカニズムによる分解または除去を阻止するポリペプチドである。例えば、in vivoで血清半減期を増強するポリペプチドは、細胞外マトリックスからのタンパク質、血中に見出されるタンパク質、血液脳関門でまたは神経組織中に見出されるタンパク質、腎臓、肝臓、肺、心臓、皮膚または骨に限局されるタンパク質、ストレスタンパク質、疾患特異的タンパク質、またはFc輸送に関与するタンパク質から選択され得る。適切なポリペプチドは、例えばWO2008/096158に記載されている。
このようなアプローチは、当該組織への本発明による単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドの標的化送達のためにも用いられ得る。一実施形態では、本発明による高親和性単一可変ドメインの標的化送達が提供される。
血清アルブミンを結合するdAb: 本発明は、一実施形態では、TGFベータRIIと結合するポリペプチドまたはアンタゴニスト(例えば、抗TGFベータRIIdAb(第一dAb)を含む二重特異性リガンド)、ならびに血清アルブミン(SA)を結合する第二dAb、第二dAb結合SAを提供する。二重特異性リガンドは、WO03002609、WO04003019、WO2008096158およびWO04058821に見出される。
リガンドおよびアンタゴニストの特定の実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンを結合し、アルブミンとの結合に関して、WO2004003019に開示されたdAb配列のいずれか(この配列およびそれらの核酸相対物は、参照により本明細書中に組入れられて、本発明の本文の開示の一部を構成する)、WO2007080392に開示されたdAb配列のいずれか(この配列およびそれらの核酸相対物は、参照により本明細書中に組入れられて、本発明の本文の開示の一部を構成する)、WO2008096158に開示されたdAb配列のいずれか(この配列およびそれらの核酸相対物は、参照により本明細書中に組入れられて、本発明の本文の開示の一部を構成する)からなる群から選択されるdAbと競合する。
ある実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンを結合し、そしてWO2004003019、WO2007080392またはWO2008096158のいずれかに記載されたdAbのアミノ酸配列と少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、ヒト血清アルブミンを結合するdAbは、これらのdAbのいずれかのアミノ酸配列と少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、dAbはヒト血清アルブミンを結合し、これらのdAbのいずれかのアミノ酸配列と少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
さらなる特定の実施形態では、dAbは、ヒト血清アルブミンを結合するVκdAbである。さらに特定の実施形態では、dAbは、ヒト血清アルブミンを結合するVHdAbである。
血清アルブミンを結合する適切なラクダ類VHHとしては、WO2004041862(Ablynx N.V.)に、ならびにWO2007080392に記載されたものが挙げられる(このVHH配列およびそれらの核酸相対物は、参照により本明細書中に組み入れられ、そして本発明の本文の開示の一部を構成する)。ある実施形態では、ラクダ類VHHはヒト血清アルブミンを結合し、WO2007080392に開示された配列、または配列番号518〜534(これらの配列番号はWO2007080392またはWO2004041862に列挙されたものに対応する)のうちのいずれか1つと少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
代替的実施形態では、アンタゴニストまたはリガンドは、TGFベータRII(例えば、ヒトTGFベータRII)に特異的な結合部分を含み、この場合、当該部分は、WO2008096158に記載されたような非免疫グロブリン配列を含み、これらの結合部分、それらの産生および選択方法(例えば、多様なライブラリーからの)、ならびにそれらの配列の開示は、本発明の本文の開示の一部として参照により本明細書中に組入れられる。
半減期延長部分(例えばアルブミン)とのコンジュゲーション: 一実施形態では、ある(1つ以上の)半減期延長部分(例えば、アルブミン、トランスフェリンならびにその断片および類似体)は、本発明のTGFベータRII結合ポリペプチド、dAbまたはアンタゴニストとコンジュゲート化されるかまたは会合される。TGFベータRII結合フォーマットに用いるための適切なアルブミン、アルブミン断片またはアルブミン変異体の例は、WO2005077042に記載されている(この開示は、参照により本明細書中に組入れられ、本発明の本文の開示の一部を構成する)。
TGFベータRII結合フォーマットに用いるための適切なアルブミン、断片および類似体のさらなる例は、WO03076567に記載されている(この開示は、参照により本明細書中に組入れられ、本発明の本文の開示の一部を構成する)。
ある(1つ以上の)半減期延長部分(例えば、アルブミン、トランスフェリンならびにその断片および類似体)が本発明のTGFベータRII結合ポリペプチド、dAbおよびアンタゴニストをフォーマットするために用いられる場合、それは、任意の適切な方法を用いて、例えば、TGFベータRII結合部分(例えば、抗TGFベータRII dAb)との直接融合により、例えば融合タンパク質をコードする単一ヌクレオチド構築物を用いることにより、コンジュゲート化され得るが、この場合、融合タンパク質は、TGFベータRII結合部分に対してNまたはC末端方向に限局される半減期延長部分を有する単一ポリペプチド鎖としてコードされる。代替的には、コンジュゲート化は、部分間のペプチドリンカー、例えばWO03076567またはWO2004003019に記載されたようなペプチドリンカーを用いることにより達成され得る(これらのリンカー開示は、本発明の開示中に参照により組入れられて、本発明で用いるための例を提供する)。
PEGへのコンジュゲート化: 他の実施形態では、半減期延長部分は、ポリエチレングリコール部分である。一実施形態では、アンタゴニストは、ポリエチレングリコール部分(任意に、前記部分は約20〜50kDa、任意に約40kDaのサイズの線状または分枝鎖PEGを有する)と連結された本発明の単一可燃ドメインを含む(任意に、それからなる)。dAbおよび結合部分のペギル化についてのさらなる詳細に関しては、WO04081026が参照される。一実施形態では、アゴニストはPEGと連結されたdAb単量体からなり、この場合、dAb単量体は本発明による単一可変ドメインである。
別の実施形態では、本発明による単一可変ドメイン、リガンドまたはポリペプチドは、毒素部分または毒素と連結され得る。
プロテアーゼ耐性: 本発明による単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドは、プロテアーゼ分解に対するそれらの耐性を改善するよう修飾され得る。本明細書中で用いる場合、「プロテアーゼ分解に対して耐性」であるペプチドまたはポリペプチド(例えば、ドメイン抗体(dAb))は、プロテアーゼ活性に適した条件下でプロテアーゼとともにインキュベートされる場合、プロテアーゼにより実質的に分解されない。プロテアーゼ活性に適した温度で約1時間、プロテアーゼとともにインキュベーション後にプロテアーゼにより、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約14%以下、約13%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下のタンパク質が分解されるか、またはタンパク質が実質的に分解されない場合、ポリペプチド(例えばdAb)は実質的に分解されない。例えば37または50℃で、任意の適切な方法を用いて、例えば、本明細書中に記載されるようなSDS−PAGEによりまたは機能性検定(例えばリガンド結合)により、タンパク質分解は査定され得る。
プロテアーゼ耐性増強を示すdAbの生成方法は、例えば、WO2008149143に開示されている。一実施形態では、本発明による単一可変ドメイン、ポリペプチドまたはリガンドは、ロイコザイムおよび/またはトリプシンによる分解に耐性である。本発明のポリペプチド、免疫グロブリン単一可変ドメインおよびリガンドは、以下のうちの1つ以上に対して耐性であり得る:セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパルテートプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、ロイコザイム、パンクレアチン、トロンビン、プラスミン、カテプシン(例えば、カテプシンG)、プロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼ1、プロテイナーゼ2、プロテイナーゼ3)、サーモリシン、キモシン、エンテロペプチダーゼ、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ9、カスパーゼ12、カスパーゼ13)、カルパイン、フィカイン、クロストリパイン、アクチニダイン、ブロメラインおよびセパラーゼ。特定の実施形態では、プロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムである。プロテアーゼは、生物学的抽出物、生物学的ホモジネートまたは生物学的調製物によっても提供され得る。一実施形態では、プロテアーゼは、痰、粘液(例えば、胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄液、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液中に見出されるプロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼは、眼および/または涙液中に見出されるものである。眼中に見出されるこのようなプロテアーゼの例としては、カスパーゼ、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、ジスインテグリン、メタロプロテイナーゼ(ADAMs)およびトロンボスポンジンモチーフを伴うADAM、プロテオソーム、組織プラスミノーゲン活性因子、セクレターゼ、カテプシンBおよびD、シスタチンC、セリンプロテアーゼPRSS1、ユビキチンプロテオソーム経路(UPP)が挙げられる。一実施形態では、プロテアーゼは、非細菌性プロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼは、動物、例えば哺乳動物、例えばヒトのプロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼは、消化管プロテアーゼまたは肺組織プロテアーゼ、例えば、ヒトに見出される消化管プロテアーゼまたは肺組織プロテアーゼである。ここに列挙されるこのようなプロテアーゼは、例えば、ライブラリーのレパートリーのプロテアーゼへの曝露を含めて、WO2008149143に記載された方法にも用いられ得る。
安定性: 本発明の一態様において、本発明のポリペプチド、単一可変ドメイン、dAb、リガンド、組成物または処方物は、ブリットン・ロビンソンまたはPBS緩衝液中で、37〜50℃で14日間(1mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメインの濃度で)インキュベーション後、実質的に安定である。一実施形態では、少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%のポリペプチド、アンタゴニストまたは可変ドメイン等は、37℃でのこのようなインキュベーション後、依然として非凝集性である。一実施形態では、少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%のポリペプチドまたは可変ドメインは、37℃でのこのようなインキュベーション後、依然として単量体である。
一実施形態では、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%のポリペプチド、アンタゴニストまたは可変ドメインは、50℃でのこのようなインキュベーション後、依然として非凝集性である。一実施形態では、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%のポリペプチドまたは可変ドメインは、50℃でのこのようなインキュベーション後、依然として単量体である。一実施形態では、ポリペプチド、可変ドメイン、アンタゴニストの凝集は、このようなインキュベーションのいずれの後にも観察されない。一実施形態では、ポリペプチドまたは可変ドメインのpIは、ブリットン・ロビンソン緩衝液中で1mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメインの濃度で、37℃でインキュベーション後、依然として変化しないかまたは実質的に変化しない。本発明の一態様では、本発明のポリペプチド、可変ドメイン、アンタゴニスト、組成物または処方物は、7〜7.5のpHで(例えばpH7またはpH7.5で)、ブリットン・ロビンソン緩衝液またはPBS緩衝液中で、4℃で7日間、(100mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメインの濃度で)インキュベーション後、実質的に安定である。一実施形態では、少なくとも95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%のポリペプチド、アンタゴニストまたは可変ドメインは、このようなインキュベーション後、依然として非凝集性である。一実施形態では、少なくとも95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%のポリペプチドまたは可変ドメインは、このようなインキュベーション後、依然として単量体である。一実施形態では、ポリペプチド、可変ドメイン、アンタゴニストの凝集は、このようなインキュベーションのいずれの後にも観察されない。
本発明の一態様では、本発明のポリペプチド、可変ドメイン、アンタゴニスト、組成物または処方物は、例えばジェット・ネブライザーで、例えばPari LC+カップ中で、例えば室温、20℃または37℃で1時間、(40mg/mlのポリペプチドまたは可変ドメインの濃度で)噴霧化後、実質的に安定である。一実施形態では、少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%のポリペプチド、アンタゴニストまたは可変ドメインは、このような噴霧化後、依然として非凝集性である。一実施形態では、少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99または99.5%のポリペプチドまたは可変ドメインは、このような噴霧化後、依然として単量体である。一実施形態では、ポリペプチド、可変ドメイン、アンタゴニストの凝集は、このような噴霧化のいずれの後にも観察されない。
単量体形態: 一実施形態では、本発明のdAbは、単量体形態で提供される。適切には、本発明は、(実質的に)純粋な単量体を提供する。一実施形態では、dAbは、少なくとも98、99、99.5%純粋、または100%純粋である。dAbが単量体であるかまたは溶液中でより高次のオリゴマーを形成するか否かを確定するために、それらは、SEC−MALLSにより分析され得る。SEC MALLS(多角度レーザー光散乱を用いるサイズ排除クロマトグラフィー)は、溶液中の高分子の特性化のための非侵襲性技法である。要するに、(緩衝液ダルベッコのPBS中、1mg/mLの濃度での)タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィー(カラム:TSK3000;S200)により、それらの流体力学的特性に従って分離される。分離後、光を散乱するタンパク質の傾向は、多角度レーザー光散乱(MALLS)検出器を用いて測定される。タンパク質が検出基を通過する間の散乱光の強度は、角度の一関数として測定される。屈折率(RI)検出器を用いて確定されるタンパク質濃度と一緒に得られるこの測定値は、適切な方程式を用いるモル質量の算定を可能にする(解析ソフトウェアAstra v.5.3.4.12の整数部分)。
治療的使用: 本発明は、TGFベータシグナル伝達に関連した疾患を処置し、抑制し、または防止するための方法を提供する。一実施形態では、このような疾患は、調節不全性TGFベータシグナル伝達により、TGFベータの過剰発現により、または高レベルの生体利用可能TGFベータにより引き起こされうるし、あるいはそれが一因であり得る。TGFベータシグナル伝達に関連する疾患としては、種々の組織の繊維症、例えば肺繊維症、例えば特発性肺繊維症(IPF)に関連した疾患、およびその他の間質性肺疾患、例えば急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肝臓の繊維症、例えば肝硬変および慢性肝炎、関節リウマチ、眼障害、血管症状、例えば再狭窄、皮膚の繊維症、例えば皮膚のケロイドおよび創傷治癒後の瘢痕、ならびに腎臓、例えば腎炎、腎繊維症および腎硬化症、あるいは血管症状、例えば再狭窄が挙げられる。TGFベータシグナル伝達に関連した他の疾患としては、血管性疾患、例えば高血圧症、子癇前症、I型遺伝性出血性毛細管拡張症(HHT1)、HHT2、肺動脈高血圧症、大動脈瘤、マルファン症候群、家族性動脈瘤障害、ロイス・ディーズ症候群、動脈蛇行症候群(ATS)が挙げられる。TGFベータシグナル伝達に関連した他の疾患としては、筋骨格症候群、例えばデュシェンヌ筋ジストロフィーおよび筋繊維症が挙げられる。TGFベータシグナル伝達に関連するさらなる疾患としては、癌、例えば結腸、胃および膵臓癌、ならびに神経膠腫およびNSCLCが挙げられる。さらに本発明は、腫瘍血管新生におけるTGFベータシグナル伝達を調整することにより、あるいは癌支質の処置により、癌を標的化するための方法を提供する。他の疾患または症状としては、組織瘢痕化に関連したものが挙げられる。他の疾患としては、肺疾患、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、肝臓疾患、例えば肝不全(例えば、ウイルス性肝炎、アルコール、肥満性、自己免疫性、代謝性、閉塞性)、腎臓疾患、例えば腎不全(例えば、糖尿病、高血圧)、肥大性心筋症、移植片拒絶(肺/肝臓/腎臓)、ならびに肥厚性およびケロイド瘢痕が挙げられる。
「繊維症」は、組織の過剰増殖、瘢痕および/または硬化を引き起こす細胞外マトリックス構成成分、例えばコラーゲンの過剰沈着の結果である。
肺繊維症におけるTGFベータの役割が観察されている(Wynn et al., J. Pathology 2008, 214, p.199‐210;Sime et al. J. Clinical Immunology 1997, Vol.100, p. 768‐776)。Th2サイトカインの産生増大およびTh1サイトカインの産生低減へのシフトは、未知の肺損傷の結果として観察される。TGFベータの過剰発現は、血管新生、繊維芽細胞活性化、ECMの沈着および繊維形成を刺激する。動物モデル(例えば、TGFベータ過剰発現、SMAD3 KO、TGFベータRシグナル伝達の抑制)は、TGFベータが肺繊維症の発症の重要な媒介因子である、ということを示している。
「特発性肺繊維症(IPF)」は、原因不明の肺間質の繊維性組織の異常および過剰沈着を生じる慢性および進行性疾患である。米国での年間発症率は、100,000人に約10〜20症例である。有病率は年齢に伴って明確に増大し、通常は50〜70歳で発症して、75歳以上では175症例/100,000人に達する。5年生存率は20%で、平均生存率は2.8年である。症候としては、乾いた咳および進行性息切れ、異常胸部x線またはHRCTならびに肺容積低減が挙げられる。一般的処置としては、コルチコステロイド(プレドニソン)、免疫抑制剤(シクロホスファミド)または移植が挙げられるが、しかし、一般に利用可能な両方は何れも効能が立証されていない。一実施形態では、本発明の単一可変ドメインまたはポリペプチドは、IPFのための治療を提供する。
適切には、特発性肺繊維症(IPF)のための上首尾の処置は、肺繊維芽細胞増殖の減少、肺繊維芽細胞アポトーシスの増大、過剰細胞外マトリックス合成および沈着の低減、細胞外マトリックス破壊およびリモデリングの増大のうちのいずれかを示し、あるいは進行中の組織損傷に対する何らかの保護ならびに正常組織病理学の回復を示す。
適切には、上首尾の処置は疾患進行を遅らせる。
IPFに関する処置の効力は、ブレオマイシン誘導性肺繊維症モデルで実証され得る。一実施形態では、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、その効力がマウスモデルで試験され得るよう、マウスTGFベータRIIと交差反応する。
TGFベータは、眼組織における細胞行動の調整における重要な細胞シグナル伝達分子である。TGFベータの過剰活性化は、創傷治癒関連性であり、視力および眼組織恒常性の減損を引き起こし得る眼組織における繊維性疾患の病因に関与する(例えばSaika, Laboratory Investigation (2006), 86, 106−115により再検討されている)。
したがって、一実施形態では、TGFベータシグナル伝達に関連した疾患としては、眼障害、例えば眼組織の繊維性疾患が挙げられる。眼の繊維性疾患は、角膜、結膜、水晶体または網膜に生じ得る。眼障害としては、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜剥離後の障害および網膜繊維症、糖尿病性網膜症、緑内障、例えば解放角緑内障、閉塞隅角緑内障、先天性および偽性落屑症候群、水晶体の創傷治癒反応、例えば化学的または温熱的熱傷後の治癒反応、あるいはスティーブン・ジョンソン症候群、ならびに白内障手術後合併症が挙げられる。TGFベータは、白内障発症においてもある役割を有する(Wormstone et al. Exp Eye Res; 83 1238‐1245, 2006)。多数の眼障害は、術後繊維症の結果として起こる。さらに、TGFベータ2(形質転換増殖因子β2)の過剰活性は、緑内障濾過手術後の眼の中および周囲に瘢痕を生じると考えられる。TGFベータ2は、眼組織、例えば角膜、網膜、結膜および小柱網の病理学的瘢痕に関与する優勢なアイソフォームである。小柱網の瘢痕または繊維症は、正常水性流出経路の閉塞を生じて、眼内圧上昇および緑内障発症の危険をもたらし得る。TGFベータ2は、緑内障の前臨床モデルにおける病理学的作用物質であることが示されている。TGFベータ2レベルは、緑内障患者において高められて、TGFベータ−2によるhuTM細胞のin vitro処置が、ECM調整タンパク質(MMP−2、PAI−1)の表現型変化および上方調節をもたらす(Lutjen−Drecol (2005), Experimental Eye Research, Vol. 81, Issue 1, pages 1‐4;Liton (2005), Biochemical and Biophysical Research Communications Vol. 337, issue 4, p.1229‐1236;Fuchshofer et al (2003), Experimental Eye Research, Vol. 77, issue 6, p. 757‐765;Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO) conference poster ♯1631 2009)。さらに、眼におけるTGFベータの過剰発現は、マウスにおける緑内障様病態を生じ(ARVO conference poster ♯5108 2009)、そしてAAVを用いたTGFベータ2の送達は緑内障のラットモデルにおいて網膜神経節細胞損失を抑制することが示されている(ARVO conference poster ♯5510 2009)。さらに近年、培養ヒト視神経乳頭星状細胞における酸化的ストレス誘導は、TGFベータ2分泌を増大することが示されている(Yu et al (2009) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 50: 1707‐1717)。これは全て、TGFベータ2レベルの低減が、緑内障で観察される特徴的視神経乳頭変化を最小限にし得る、ということを示している。しかしながら、TGFベータは、免疫抑制的役割を有することも知られており、したがって、いくつかの態様では保護的であり、そこで、完全削減というよりむしろTGFベータ2のレベル上昇の低減が、緑内障のような慢性眼症状の処置において選択され得る。したがって、本発明によるdAbおよび組成物等を用いて処置され得る疾患は、緑内障濾過手術後瘢痕を包含する。
したがって、一態様では、TGFベータシグナル伝達、特に調節不全性TGFベータシグナル伝達に関連した疾患を処置し、抑制し、または防止するための方法であって、それを必要とする哺乳動物に、治療的有効用量または量の本発明のポリペプチド、融合タンパク質、単一可変ドメイン、アンタゴニストまたは組成物を投与することを包含する方法が提供される。
別の態様では、本発明は、医薬として用いるための本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、リガンドまたは融合タンパク質を提供する。適切な医薬は、本明細書中に記載されるようにフォーマットされた本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン等を含み得る。
適切には、医薬は薬学的組成物である。本発明のさらなる態様では、本発明によるポリペプチド、単一可変ドメイン、リガンド、組成物またはアンタゴニスト、ならびに生理学的にまたは製薬上許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物(例えば、薬学的組成物)が提供される。一実施形態では、組成物は送達のためのビヒクルを含む。特定の実施形態では、ポリペプチド、融合タンパク質、単一可変ドメイン、アンタゴニストまたは組成物が、肺送達を介して、例えば吸入により(例えば気管支内、鼻内または経口吸入、鼻内(滴下による))、あるいは全身送達により(例えば、非経口的、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、皮下、膣または直腸投与)、投与される。別の実施形態では、本発明によるポリペプチド、単一可変ドメイン、リガンドまたは融合タンパク質または組成物は、例えば局所投与により、点眼薬、特にポリマー系、ゲルまたは埋込物として、あるいは例えば硝子体液中への眼内注射により、眼に投与される。送達は、眼の特定の領域、例えば眼の表面、または涙管または涙腺を、あるいは眼の前または後房(硝子体液)を標的とする。それは、免疫グロブリン単一可変ドメイン、組成物等が、眼振盪増強剤、例えばカプリン酸ナトリウムとともに、または粘性増強剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とともに眼に送達される場合、有用である。
さらに、本発明は、本発明によるポリペプチド、単一可変ドメイン、組成物、リガンドまたはアンタゴニストを用いる疾患の治療方法を提供する。一実施形態では、疾患は、組織繊維症、例えば肺繊維症、例えば特発性肺繊維症である。別の実施形態では、疾患は眼障害である。
本発明の一態様では、ヒトにおけるTGFベータシグナル伝達に関連した疾患あんたは症状の治療および/または予防のためのポリペプチド、単一可変ドメイン、リガンド、組成物またはアンタゴニストが提供される。別の実施形態では、ヒトにおけるTGFベータシグナル伝達に関連した疾患または症状の治療または予防のための医薬の製造におけるポリペプチド、単一可変ドメイン、組成物またはアンタゴニストの使用が提供される。別の態様では、ヒト患者におけるTGFベータシグナル伝達に関連した疾患または症状を処置しおよび/または防止するための方法であって、ポリペプチド、単一可変ドメイン、組成物またはアンタゴニストを患者に投与することを包含する方法が提供される。本発明は、治療的有効量の本発明のリガンド(例えば、アンタゴニストまたは単一可変ドメイン)をそれを必要とする被験者に投与することを包含する治療方法にも関する。
他の実施形態では、本発明は、特発性肺繊維症を処置するための方法であって、それを必要とする被験者に治療的有効量の本発明のリガンド(例えば、アンタゴニストまたは単一可変ドメイン)を投与することを包含する方法に関する。
本発明は、本発明の組成物(例えば薬学的組成物)を含む薬剤送達デバイスにも関する。いくつかの実施形態では、薬剤送達デバイスは、複数の治療的有効用量のリガンドを含む。
他の実施形態では、薬剤送達デバイスは、非経口送達デバイス、静脈内送達デバイス、筋肉内送達デバイス、腹腔内送達デバイス、経皮送達デバイス、肺送達デバイス、動脈内送達デバイス、くも膜下腔内送達デバイス、関節内送達デバイス、皮下送達デバイス、鼻内送達デバイス、眼送達デバイス、膣送達デバイス、直腸送達デバイス、注射器、経皮送達デバイス、カプセル、錠剤、噴霧器、吸入器、アトマイザー、エーロゾル化器、ミスト発生器、乾燥粉末吸入器、計量用量スプレー、計量用量ミスト発生器、計量用量アトマイザーおよびカテーテルからなる群から選択される。
適切には、本発明は、本発明によるポリペプチド、単一可変ドメイン、組成物またはアンタゴニストを含有する肺送達デバイスを提供する。デバイスは、吸入器または鼻内投与デバイスであり得る。適切には、肺送達デバイスは、治療的有効用量の本発明によるリガンド等の送達を可能にする。
別の実施形態では、本発明は、本発明によるポリペプチド、単一可変ドメイン、組成物またはアンタゴニストを含有する眼送達デバイスを提供する。適切には、眼送達デバイスは、治療的有効用量の本発明によるリガンド等の送達を可能にする。
本明細書中で用いる場合、「用量」という用語は、全て1回で(単位用量)、あるいは限定時間間隔に亘って2回以上の投与で、被験者に投与されるリガンドの量を指す。例えば、用量は、1日(24時間)(1日用量)、2日、1週間、2週間、3週間、あるいは1ヶ月以上(例えば、単一投与により、または2回以上の投与により)の経過中、被験者に投与されるリガンド(例えば、TGFベータRIIを結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むリガンド)の量を指し得る。用量投与間の間隔は、任意の所望量の時間であり得る。
一実施形態では、本発明の単一可変ドメインは、任意に非フォーマット化される(例えば、ペギル化または半減期延長化されない)かまたはPEGと連結されるdAb単量体として、任意に肺症状(例えば、特発性肺繊維症)を処置および/または防止するための、任意に吸入により(例えば、肺送達)患者に送達するための、乾燥粉末処方物として、提供される。
本発明のリガンドは、いくつかの利点を提供する。例えば、本明細書中に記載されるように、リガンドは、所望のin vivo血清半減期を有するよう作り上げられ得る。ドメイン抗体は、慣用的抗体よりはるかに小さく、慣用的抗体より良好な組織振盪を達成するために投与され得る。したがって、dAbおよびdAbを含むリガンドは、TGFベータシグナル伝達により媒介される疾患のような疾患を処置するために投与される場合、慣用的抗体を上回る利点を提供する。特に、特発性肺繊維症を処置するための本発明のdAbの肺送達は、TGFベータシグナル伝達の阻害剤の特異的局所送達を可能にする。有益には、TGFベータRIIと特異的に結合し、それを抑制する非フォーマット化dAb単量体は、肺送達を介して肺中に吸収されるのに十分に小さい。
WO2007085815の実施例は、参照により本明細書中に組入れられて、本発明のリガンドに等しく適用され得る関連検定、フォマッティングおよび実験の詳細を提供する。
(実施例)
以下の実施例において、例証目的だけのために、本発明をさらに記載する。
実施例1. TGFベータRIIを結合するdAbの選択
ナイーブ選択: 4Gに関するGAS1リーダー配列(WO2005093074参照)から発現される、ならびに付加的に6Gに関する加熱/冷却前選択を伴う(WO04101790参照)、抗体単一可変ドメインを呈示するファージライブラリーである4Gおよび6Gナイーブファージライブラリーを用いた。組換えヒトTGF−βRII/Fcキメラタンパク質(R&D systems, Abingdon, UK, cat no. 341‐BR)に対するVHおよびVKライブラリー(4G H11−19および6G VH2−4(VH dAbs)および4G κ1、4G κ2および6G κ(Vκ dAbs)として同定される)のプールをパニングすることにより、DOM23hリードを単離した。マウス骨髄腫細胞株NS0中のヒトIgG1のFc領域と融合されたヒトTGF−β受容体II型の159アミノ酸残基細胞外ドメイン(Lin, et al., 1992, Cell 68:775‐785)をコードするDNA配列の発現により、このキメラタンパク質を作製した。
初回パニングのために4℃で一晩、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中の10μg/ml抗原で管を被覆することにより、Maxisorp(商標)イムノチューブ(Nunc, Denmark)上に組換えヒトTGF−βRII/Fcキメラタンパク質を固定した。イムノチューブをPBSで3回洗浄し、次いで、PBS中の2%Marvell粉乳(MPBS)で管を縁まで充填することによりファージの非特異的結合を防止するよう遮断して、室温で少なくとも1時間、インキュベートした。ファージライブラリーを、6群にプールした:4G κ1およびκ2、6G κ、4G H11−13、4G H14−16、4G H17−19および6G VH2−4。1×1011ファージ/ライブラリーをプールした。室温で1時間、4mlの2%MPBS中でファージをインキュベートした。遮断イムノチューブを、PBSで3回洗浄した。遮断ファージプールをイムノチューブに移して、室温で少なくとも1時間回転しながらインキュベートした。0.1%トゥイーン−20を含有するPBS(PBST)で10回イムノチューブを洗浄した後、PBS中の1mg/mlトリプシン 0.5mlで結合ファージを溶離した。
10μg/mlヒトTGF−βRII/Fcで被覆したイムノチューブを用いて、2回目のパニングを実施した。投入ファージを上記のように1×1010ファージ/プールでプールして、0.5mlの2%MPBS中で遮断し、50μg/mlの対照Fc断片を付加した。ファージを、室温で1時間、遮断した。3.5mlのMPBSをファージに付加し、これを次に遮断イムノチューブに移して、室温で少なくとも1時間インキュベートした。イムノチューブをPBSTで20回洗浄した後、PBS中の1mg/mlトリプシン 0.5mlで結合ファージを溶離した。
1μg/mlヒトTGF−βRII/Fcで被覆したイムノチューブを用いて、3回目のパニングを実施した。投入ファージを上記のようにプールしたが、但し、6G κおよび4G κ1およびκ2投入ファージを一緒にプールした。ファージを4mlの2%MPBS中で、100μg/mlのヒトIgG Fc断片(ヒト骨髄腫血漿IgG由来のネイティブIgG Fc断片、Calbiochem, California, US、カタログ番号401104)を付加し、少なくとも1時間、遮断した。イムノチューブをPBSTで20回洗浄した後、PBS中の1mg/mlトリプシン 0.5mlで結合ファージを溶離した。2回目および3回目産出物をfd−ファージベクターpDOM4からpDOM10中にクローン化した。ベクターpDOM4は、遺伝子IIIシグナルペプチド配列が酵母糖脂質固定表面タンパク質(GAS)シグナルペプチドと置き替えられるfdファージベクターの誘導体である。それはまた、リーダー配列と遺伝子IIIとの間にc−mycタグを含有し、これが、遺伝子IIIをフレーム中に戻す。このリーダー配列は、ファージ呈示ベクター中だけでなく、他の原核生物発現ベクター中でも良好に機能し、普遍的に用いられ得る。pDOM10は、dAbの可溶性発現のために設計されたプラスミドベクターである。それはpUC119ベクターに基づいており、LacZプロモーターの制御下での発現を伴う。上清中でのdAbの発現を、N末端でのdAb遺伝子と普遍的GASリーダーシグナルペプチド(WO2005093074)との融合により確証した。さらに、FLAG−タグを、dAbのC末端に付した。メーカーの使用説明書(カタログ番号27104、Qiagen)に従って、QIAprep Spin Miniprep(商標)キットを用いて、選択dAb呈示fd−ファージに感染した細胞からpDOM4 DNAを単離することにより、dAb遺伝子のサブクローニングを実施した。ビオチニル化オリゴヌクレオチドDOM57(5’−TTGCAGGCGTGGCAACAGCG−3’(配列番号47)およびDOM6(5’−CACGACGTTGTAAAACGACGGCC−3’(配列番号48)を用いて、PCRによりDNAを増幅し、SalIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化し、SalIおよびNotIで消化されたpDOM10と結紮した。結紮産物を、大腸菌HB2151中で電気穿孔により形質転換して、100μg/mlのカルベニシリンを補足したTYE(トリプトン酵母抽出物)プレート(TYE−carb)上でプレート化した。個々のクローンを摘み取り、100μg/mlのカルベニシリンを補足した0.2ml/ウェル一晩発現自己誘導培地(高レベルタンパク質発現系、Novagen)中で、37℃で一晩、250rpmで96ウェルプレート中で発現させた。次に、これらのプレートを、1800gで10分間、遠心分離した。
ヒトTGF−βRII/Fcを結合したdAbクローンを、ELISAにより同定した。96ウェルMaxisorp(商標)免疫プレート(Nunc, Denmark)を、4℃で一晩、ヒトTGF−βRII/Fcで被覆した。ウェルをPBSTで3回洗浄し、次いで、室温で1時間、PBS中の1%トゥイーン(1%TPBS)で遮断した。遮断を除去し、1%TPBSおよびdAb上清の1:1混合物を、室温で1時間、付加した。プレートをPBSTで3回洗浄し、検出抗体(モノクローナル抗FLAG M2−ペルオキシダーゼ抗体、Sigma−Aldrich, UK)を付加して、室温で1時間インキュベートした。比色基質(SureBlue 1−成分TMB マイクロウェル・ペルオキシダーゼ溶液、 KPL, Maryland, USA)を用いてプレートを展開し、光学密度(OD)を450nMで測定した。OD450は、結合検出抗体の量に比例する。
上記のように実施した二次確認ELISAで、陽性結合剤を再試験した。ELISAで同定されたヒトTGF−βRII/Fc結合dAbを、一晩発現自己誘導培地(OnEx、Novagen)中で、30℃で48〜72時間、または37℃で24時間、発現させた。培養を遠心分離し(4,600rpm、30分間)、上清を、Streamline-プロテインAビーズ(Amersham Biosciences, GE Healthcare, UK。結合容量:5mgのdAb/ビーズ1ml)とともに、4℃で一晩または室温で2時間、インキュベートした。次に、ビーズをUnifilter 96ウェルプレート(Whatman, GE Healthcare, UK)中に入れて、2×PBS(400μl/ウェル)で洗浄し、その後、室温で2分間、1000rpmで遠心分離した。2×PBSを用いて洗浄手順をもう1度繰り返し、その後、10mMトリス−HCl、pH8.0(Sigma, UK)で最終洗浄した。0.1Mグリシン−HCl、pH2.0(210μl/ウェル)(Sigma, UK)を付加することにより結合dAbを溶離し、その後、遠心分離した。通過画分を、Unifilterプレートの真下に置いた96ウェル丸底プレート(Corning Costar)中に収集した。溶離dAbを中和するために、96ウェル丸底プレートのウェルは40μlの1Mトリス、pH8.0(Sigma, UK)を含入した。溶離手順を、もう1度反復した。代替的には、Streamline-プロテインAビーズをクロマトグラフィーカラム中に入れて、2×PBSで洗浄し、その後、10mMトリス−HCl、pH7.4(Sigma, UK)で洗浄した。結合dAbを0.1Mグリシン−HCl、pH2.0で溶離し、1Mトリス、pH8.0で中和した。dAbの280nmでのODを測定し、dAbのアミノ酸組成から算定した減衰係数を用いて、タンパク質濃度を確定した。
A549IL−11放出検定で測定した場合の効力に関して、ならびにSEC−MALLSおよびDSC(下記)により査定した場合の生物物理学的特質に関して、dAbを試験した。DOM23h−33(配列番号1)、DOM23h−251(配列番号2)、DOM23h−262(配列番号3)、DOM23h−271(配列番号4)、DOM23h−348(配列番号5)、DOM23h−435(配列番号6)、DOM23h−436(配列番号7)、DOM23h−437(配列番号8)、DOM23h−438(配列番号9)、DOM23h−439(配列番号10)およびDOM23h−440(配列番号11)ライブラリーを、エラープローン親和性成熟に関して選択した。
実施例2. エラープローン親和性成熟
DOM23h−33(配列番号1)、DOM23h−251(配列番号2)、DOM23h−262(配列番号3)、DOM23h−271(配列番号4)、DOM23h−348(配列番号5)、DOM23h−435(配列番号6)、DOM23h−436(配列番号7)、DOM23h−437(配列番号8)、DOM23h−438(配列番号9)、DOM23h−439(配列番号10)およびDOM23h−440(配列番号11)のエラープローン突然変異誘発を実施して、これらのdAbの親和性を改良した。
ファージライブラリー構築: DOM23h−33(配列番号1)、DOM23h−251(配列番号2)、DOM23h−262(配列番号3)、DOM23h−271(配列番号4)、DOM23h−348(配列番号5)、DOM23h−435(配列番号6)、DOM23h−436(配列番号7)、DOM23h−437(配列番号8)、DOM23h−438(配列番号9)、DOM23h−439(配列番号10)およびDOM23h−440(配列番号11)のエラープローンライブラリーを、GeneMorph(登録商標)II無作為突然変異誘発キット(Stratagene、カタログ番号200550)を用いて作製した。メーカーの使用説明書に従って、標的dAb遺伝子を、Taq DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドDOM008(5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGA−3’(配列番号49))およびDOM009(5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC−3’(配列番号50))を用いて、PCRにより増幅し、その後、オリゴヌクレオチドDOM172(5’ TTGCAGGCGTGGCAACAGCG−3’(配列番号51))およびDOM173(5’−CACGACGTTGTAAAACGACGGCC−3’(配列番号52))、ならびにMutazyme(商標)II DNAポリメラーゼを用いて、希釈PCR産物を再増幅した。このPCR産物を、Taq DNAポリメラーゼならびにオリゴヌクレオチドDOM172およびDOM173を用いてさらに増幅して、DNA産物収量を増大した。PCR産物を、SalIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化した。非消化産物および消化末端を、ストレプトアビジンビーズ(Dynal Biotech, UK)を用いて消化産物から除去した。消化産物を、SalIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化したpDOM4ファージベクター中に結紮し、大腸菌TB1細胞を形質転換するために用いた。形質転換細胞を、15μg/mlテトラサイクリンを補足した2×TY寒天上でプレート化して、ライブラリーサイズ>1×107の形質転換体を得た。
エラープローン選択: DOM23h−33、DOM23h−251、DOM23h−262、DOM23h−271およびDOM23h−348ライブラリーを、それぞれ100、5、0.5および0.1nMビオチニル化ヒトTGF−βRII/Fcに対して用いて、4回の選択を実施した。DOM23h−435、DOM23h−436、DOM23h−437、DOM23h−438、DOM23h−439およびDOM23h−440エラープローンライブラリーをそれぞれ100、10、1および0.1nMビオチニル化ヒトTGF−βRII/Fcに対して用いて、4回の選択を実施した。5倍モル過剰量のEZ−Link スルホ−NHS−LC−ビオチン試薬(Pierce, Rockford, USA)(Henderikx, et al., 2002, Selection of antibodies against biotinylated antigens. Antibody Phage Display: Methods and protocols, Ed. O‘Brien and Atkin, Humana Press)を用いて、ヒトTGF−βRII/Fcをビオチニル化した。上記と同様に、3回目および4回目の選択産出物を、pDOM10ベクター中でサブクローニングした。ここのクローンを摘み取り、100μg/mlのカルベニシリンを補足した0.5ml/ウェル一晩発現自己誘導培地中で、37℃で24時間、湿度90%で、850rpmで96ウェルプレート中で発現させた。次に、プレートを、1800gで10分間、遠心分離した。上清を、HBS−EP緩衝液中で1/5または1/2希釈して、ビオチニル化ヒトTGF−βRII/Fcとの結合に関してBiacore(商標)上でスクリーニングした(メーカーの推奨に従って、1000Ruビオチニル化hRII−Fcで被覆したSAチップ) (Biacore(商標)、GE Healthcare(登録商標))。試料を、50μl/分の流量で、Biacore上を走行させた。親クローンと比較して大きい数の共鳴単位(RU)で、または改善されたオフ速度で結合したクローンを、50mlの一晩発現自己誘導培地中で、30℃で48〜72時間発現させて、4,600rpmで30分間、遠心分離した。上清を、Streamline-プロテインAビーズとともに、4℃で一晩、インキュベートした。次に、ビーズを滴下カラム中に入れて、5カラム容積の2×PBSで洗浄し、その後、一床容積の10mMトリス−HCl、pH7.4で洗浄し、0.1Mグリシン−HCl、pH2.0中で溶離し、1Mトリス−HCl、pH8.0で中和した。dAbの280nmでのODを測定し、dAbのアミノ酸組成から算定した減衰係数を用いて、タンパク質濃度を確定した。
実施例3. dAb配列中へのK61N D64R突然変異の導入
効力を改善するための試みで、DOM23h−271、437および439に属するdAb中に、D61NおよびK64R二重突然変異を導入した。これらの突然変異を含有するdAbを、DOM23h−262エラープローンファージライブラリーを用いて実施した選択から単離し、A549IL−11放出検定で測定した場合に、DOM23h−262(配列番号3)より強力であることが判明した。A549IL−11放出検定で確定した場合、DOM23h−262−6(配列番号12)中のD61N(ならびにY102H)の存在は、DOM23h−262(配列番号3)に比してdAb効力を54倍改善し、DOM23h−262−10(配列番号13)中のD61NおよびK64R(ならびにQ39R、E53DおよびW103S)の存在は、DOM23h−262(配列番号3)に比して効力を540倍改善した(表1)。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、重複伸長により、DOM23h−271、DOM23h−437およびDOM23h−439に属するdAb中に突然変異を導入した(Ho, et al., Gene 1989 77(1)):相補的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、重複または相補的末端を有する2つのDNA断片を生成する。これらの断片をその後のアセンブリーPCRで組合せるが、この場合、重複末端をアニーリングして、各鎖の3’重複を相補鎖の3’伸長のためのプライマーとして役立たせて、その結果生じる融合産物をさらにPCRにより増幅する。ヌクレオチド配列における特異的変更は、重複オリゴヌクレオチドプライマー中にヌクレオチド変化を組入れることにより導入し得る。Taq DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチド対DOM008(dAb遺伝子の5’側 開始)およびCD131(5’−GAACCGGCCCCTCACGGAGTTTGCGTAGTA−3’(配列番号53))またはDOM009(dAb遺伝子の3’側末端)ならびにCD130(5’−TACTACGCAAACTCCGTGAGGGGCCGGTTC−3’(配列番号54))(突然変異化ヌクレオチド残基に下線を付す)を用いる2つの別個のPCRにより、標的dAb遺伝子断片を増幅した。プライマーを付加することなく、Taq DNAポリメラーゼを用いてアセンブリーPCRで、2つのPCR断片を再結合した。次に、フランキングプライマーDOM008およびDOM009をPCR反応に付加することにより、融合産物を増幅した。PCR産物をSalIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化して、SalIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化したpDOM10または13発現ベクター中に結紮して、大腸菌HB2151細胞を形質転換するために用いた。pDOM13発現ベクターはpDOM10と同一のヌクレオチド配列を有するが、但し、FLAGエピトープヌクレオチド配列は2つの停止コドン(5’−TAA TAA−3’)に置き換えられて、C末端FLAGタグを有さない可溶性dAbの発現を生じる。D61NおよびK64Rヌクレオチド突然変異を、DOM23h−271−3(配列番号14)、DOM23h−271−7(配列番号15)およびDOM23h−437−6(配列番号19)中に導入して、それぞれ、DOM23h−271−12(配列番号16)、DOM23h−271−13(配列番号17)およびDOM23h−437−9(配列番号21)を作製した。DOM23h−437−4(配列番号18)およびDOM23h 439−6(配列番号22)を、既にK64R突然変異を含有するエラープローン選択産出物から単離した。D61N突然変異をこれら2つのdAb中に導入して、それぞれDOM23h−437−8(配列番号20)およびDM23h−439−8(配列番号23)を作製した。
実施例4. TGF−βRII抑制に関する検定
A549IL−11放出細胞検定およびSBE−bla HEK 293T細胞センサー検定で、dAbを試験した。
A549IL−11放出検定: A549インターロイキン−11(IL−11)放出検定は、A549細胞からのヒトTGF−β1刺激性IL−11放出を抑制するdAbの能力を測定する。TGF−β1はTGF−βRIIと直接結合して、TGF−βRI/II複合体のアセンブリーを誘導する。TGF−βRIは、リン酸化され、Smad4経路を含めたいくつかの経路を介してシグナルを伝達し得る。Smad4経路の活性化は、IL−11の放出を生じる。IL−11は、細胞上清中に分泌され、次いで、比色ELISAにより測定される。
Smad4経路を介したTGF−β1シグナル伝達を遮断するそれらの能力に関して、可溶性dAbを試験した。要するに、検定培地(DMEM 高グルコース培地(Gibco(商標)、Invitrogen Ltd, Paisley, UK)、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(PAA、Austria)、10mM HEPES(Sigma, UK)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PAA, Austria))中の1×105A549細胞/ウェルを、組織培養96ウェルプレート(Nunc)に付加し、その後、dAbおよびTGF−β1(最終濃度3ng/ml)(R&D Systems, Abingdon, UK)を付加して、37℃、5%CO2で一晩、インキュベートした。dAbをPBS中で透析した後、検定した。メーカーの使用説明書に従って、ヒトIL‐11 Duoset(商標)(R&D systems, Abingdon, UK)を用いて、上清中に放出されるIL−11の濃度を測定する。
結果を、表1に要約する。
SBE−bla HEK293T細胞センサー検定: シグナル伝達分子のSmadファミリーの成員は、細胞表面から核にTGF−βシグナルを伝達する細胞内経路の構成成分である。TGF−β1はTGF−β1と直接結合して、TGF−βRI/II複合体のアセンブリーを誘導する。次に、TGF−βRIによりSmad2およびSmad3はリン酸化されて、その後、co−smadファミリー成員Smad4とヘテロマ複合体を形成する。これらの複合体は核に転位されて、そこで、それらはDNAを結合し、遺伝子転写を調節する。
細胞センサーSBE−bla HEK293T細胞は、HEK293細胞(Invitrogen, UK)中に安定的に組み込まれたSmad結合素子(SBE)の制御下のベータ−ラクタマーゼレポーター遺伝子を含有する。細胞はTGF−β1に応答性であり、Smad2/3シグナル伝達経路のアゴニスト/アンタゴニストを検出するために用いられ得る。
メーカーの推奨プロトコール(Invitrogen, UK)に従って、この経路を介したTGF−β1シグナル伝達を遮断するそれらの能力に関して、可溶性dAbを試験した。dAbをPBS中で透析した後、検定した。
個々のA549IL−11放出検定を二重反復実験で実施して、単一用量−応答曲線およびIC50値を検定毎に(n=1)確定した。検定は1〜6回実施した。平均IC50値(n=1〜6)±標準偏差(S.D.)を、表1に要約する。個々のSBE−bla HEK293細胞センサー検定を二重反復実験で実施して、2つの用量−応答曲線および2つのIC50値は検定毎に確定した。二重反復実験IC50値の平均を算定して、単一IC50値/検定(n=1)を得た。検定は1〜3回実施した(n=1〜3)。IC50値±標準偏差(S.D.)の平均を算定し、表1に要約する。
A549ホスホ−SmadMSD検定: この検定は、ヒト肺胞基底上皮細胞株であるA549細胞におけるSmad3のTGF−β1刺激性リン酸化を抑制するdAbの能力を測定する。TGF−β1はTGF−βRIIと直接結合して、TGF−βRI/II複合体のアセンブリーを誘導する。TGF−βRIはリン酸化され、ついで、Smad2およびSmad3がリン酸化されるようになる。
リン酸化Smad2/3のレベルは、抗Smad2/3捕捉抗体およびルテニル化抗Smad3検出抗体を用いて、細胞溶解物中で測定され得るし、電気化学発光検定により測定され得る。
この経路を介したTGF−β1シグナル伝達を遮断するそれらの能力に関して、可溶性dAbを試験した。要するに、増殖培地(10%熱不活性化ウシ胎仔血清を有するDMEM F12(Invitrogen, UK)、25mM HEPES(Invitrogen, UK)および1%GlutaMAX(商標)(Invitrogen, UK)を補足)中の2×104A549細胞/ウェルを、黒色透明底組織培養384ウェルプレート(Greiner Bio−one, UK)に付加し、37℃、5%CO2で一晩、インキュベートした。dAbの緩衝液をトリス緩衝生理食塩水、pH8.0(TBS)(Sigma, UK)に交換した後、検定した。次に、dAbを増殖培地中に希釈し、細胞に付加して、37℃(5%CO2)で1時間、インキュベートした。この後、TGF−β1(25mM HEPESおよび1%GlutaMAX(商標)を補足したDMEM 培地(Invitrogen, UK)中に希釈)を付加し、37℃で30分間インキュベートした。用いたTGF−β1の濃度は、A549細胞増殖のTGF−β1刺激に関するEC80値(80%最大応答を生じる濃度)と等しかった。典型的に用いたTGF−β1の濃度は、2.2ng/mlであった。ホスファターゼ阻害剤(Sigma, Poole, UK)およびプロテアーゼ阻害剤(Roche)を補足した溶解緩衝液(Cell Signaling Technology, MA, U.S.A)中で、4℃で20分間、細胞を溶解した。細胞溶解物を、384ウェル高結合MSDプレート(Meso Scale Discovery, MD, U.S.A)に移して、室温で3時間インキュベートした。MSDプレートは、60μg/mlビオチニル化Smad2/3(BD Biosciences, Oxford, UK)を予め点在させ、5%Marvel乾燥粉乳および0.1%トゥイーン20(Sigma, UK)を含有するTBS(MTTBS)で、4℃で一晩、遮断され、0.1%トゥイーン20を含有するTBS(TTBS)で1回洗浄されていた。細胞溶解物を除去し、プレートをTTBSで3回洗浄し、その後、ルテニル化抗ホスホSmad3抗体(Cell Signaling Technology MA, USA)を付加した。メーカーの使用説明書に従って、抗ホスホSmad3抗体をMSD TAG−NHS−Ester(ルテニウム(II)トリス−ビピリジン)(Meso Scale Discovery, MD, USA)で標識した。プレートを、室温で18時間インキュベートした。プレートをTTBSで1回洗浄し、界面活性剤(Meso Scale Discovery, MD, USA)を補足したRead緩衝液T(Meso Scale Discovery, MD, USA)を付加した。MSD Sector imager 6000(Meso Scale Discovery, MD, USA)を用いて、プレートを読取った。他の関連細胞株、例えば一次肺繊維芽細胞を用いて、この検定を実施することが可能である。
DOM23h dAbから得た検定データの結果を、表2に要約する。
RAW264.7ホスホ−Smad検定: この検定は、マウスマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞におけるSmad3のTGF−β1刺激性リン酸化を抑制するdAbの能力を測定する。TGF−β1はTGF−βRIIと直接結合して、TGF−βRI/II複合体のアセンブリーを誘導する。TGF−βRIはリン酸化され、ついで、Smad2およびSmad3がリン酸化されるようになる。リン酸化Smad2/3のレベルは、抗Smad2/3捕捉抗体およびルテニル化抗Smad3検出抗体を用いて、細胞溶解物中で測定され得るし、電気化学発光検定により測定され得る。
この経路を介したTGF−β1シグナル伝達を遮断するそれらの能力に関して、可溶性dAbを試験した。要するに、増殖培地(10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Invitrogen, UK)および0.01%プルロニック酸(Sigma, UK)を有する高グルコースDMEM(Invitrogen, UK)中の3.45×105RAW264.7細胞/ウェルを、組織培養96ウェルプレート(Corning Costar)に付加し、37℃、5%CO2で2日間、インキュベートした。dAbの緩衝液をTBSに交換した後、検定した。その後、dAbを増殖培地中に希釈し、細胞に付加して、37℃(5%CO2)で1時間、インキュベートし、この後、TGF−β1(25mM HEPES(Invitrogen, UK)を補足したDMEM 培地(Invitrogen, UK)中に希釈)を付加し、37℃で30分間インキュベートした。用いたTGF−β1の濃度は、RAW264.7細胞増殖のTGF−β1刺激のEC80値(80%最大応答を生じる濃度)と等しかった。典型的に用いたTGF−β1の濃度は、1.1ng/mlであった。ホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤を補足した溶解緩衝液中で、4℃で20分間、細胞を溶解した。細胞溶解物を、384ウェル高結合MSDプレート(Meso Scale Discovery, MD, U.S.A)に移して、室温で3時間インキュベートした。MSDプレートは、60μg/mlビオチニル化Smad2/3を予め点在させ、MTTBSで、4℃で一晩、遮断され、TTBSで1回洗浄されていた。細胞溶解物を除去し、プレートをTTBSで3回洗浄し、ルテニル化抗ホスホSmad3抗体をプレートに付加し、室温で18時間インキュベートした。メーカーの使用説明書に従って、抗ホスホSmad3抗体をMSD TAG−NHS−Ester(ルテニウム(II)トリス−ビピリジン)(Scale Discovery, MD, USA)で標識した。プレートをTTBSで2回洗浄し、界面活性剤を補足したRead緩衝液Tを付加した。MSD Sector imager 6000を用いて、プレートを読取った。
DOM23h dAbから得た検定データの結果を、表2に要約する。
個々のA549ホスホ−Smad MSD検定を、一重項、二重反復実験または三重反復実験で実施して、1、2または3つの用量−応答曲線ならびにIC50値を、それぞれ、検定毎に(n=1、2または3)確定した。DOM23h−271−12(配列番号16)を、7つの検定で、二重反復実験で4回、三重反復実験で3回、試験した(n=17)。DOM23h−437−9(配列番号21)を、3つの検定で、二重反復実験で1回、三重反復実験で2回、試験した(n=8)。DOM23h−439−8(配列番号23)を、3つの検定で、三重反復実験で2回、および一重項で1回試験した(n=7)。IC50値±標準誤差(S.E)の平均を算定し、表2に要約する。
個々のRAW264.7ホスホ−Smad検定を、一重項、二重反復実験または三重反復実験で実施して、1、2または3つの用量−応答曲線ならびにIC50値を、それぞれ、検定毎に(n=1、2または3)確定した。DOM23h−271−12(配列番号16)を、7つの検定で、一重項で1回、二重反復実験で6回、三重反復実験で2回、試験した(n=19)。得られたIC50値の範囲を、表2に要約する。DOM23h−437−9(配列番号21)およびDOM23h−439−8(配列番号23)をともに、二重反復実験で5回試験した(n=10)。
MC3T3−E1ルシフェラーゼ検定: MC3T3−E1ルシフェラーゼ検定は、MC3T3−E1細胞中でのCAGA−ルシフェラーゼのTGFβ誘導性発現を抑制するdAbの能力を測定する。CAGAボックスと呼ばれるTGFβ応答性配列モチーフの3つのコピーが、ヒトPAI−1プロモーター中に存在し、Smad3および4タンパク質を特異的に結合する。ルシフェラーゼレポーター構築物中へのCAGAボックスの多数のコピーのクローニングは、レポーター系でトランスフェクトされた細胞にTGFβ応答性を付与する。この検定は、[CAGA]12−ルシフェラーゼレポーター構築物で安定的にトランスフェクトされたMC3T3−E1細胞(マウス骨芽細胞)を用いる(Dennler, et al., (1998) EMBO J. 17, 3091−3100)。
Smad3/4経路を介したTGF−β1シグナル伝達を遮断するそれらの能力に関して、可溶性dAbを試験した。要するに、検定培地(RPMI培地(Gibco, Invitrogen Ltd, Paisley, UK)、10%熱不活性化ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中の2×104MC3T3−E1細胞/ウェルを、組織培養96ウェルプレート(Nunc)に付加し、その後、dAbおよびTGF−β1(最終濃度1ng/ml)を付加して、37℃、5%CO2で6時間、インキュベートした。dAbをPBS中で透析した後、検定した。Brightglowルシフェラーゼ試薬(Promega, UK)をウェルに付加し、室温で2分間インキュベートして、細胞を溶解させ、その結果生じた発光をルミノメーターで測定した。
DOM23h−271−12(配列番号16)、DOM23h−437−9(配列番号21)およびDOM23h−439−8(配列番号23)を、MC3T3−E1ルシフェラーゼ検定で試験した。結果を、表3に示す。
個々のMC3T3−E1ルシフェラーゼ検定を二重反復実験で実施して、IC50値を確定した。検定を2〜4回実施した(n=2〜4)。IC50値の範囲を表3に要約する。DOM23h−271−12(配列番号16)に関して得られた結果は、試験したdAbバッチ番号により変化した。したがって、IC50値の範囲および平均IC50値±標準偏差(S.D)を、各バッチ番号に関して算定し、表3に要約する。
実施例5. DSC(示差走査熱量測定)
示差走査熱量計(DSC)を用いて、dAbの熱安定性を測定した。PBS緩衝液中1mg/mlで、dAbを試験した。タンパク質を、PBS緩衝液中で一晩透析した。PBS緩衝液を、全試料に関する参照として用いた。180℃/時の加熱率で、毛細管セル微量熱量計VP−DSC(Microcal, MA, USA)を用いて、DSCを実施した。典型的走査は、参照緩衝液およびタンパク質試料の両方に関して、25〜90℃からであった。各参照緩衝液および試料対の後に、毛細管セルを、水中の1%Decon(Fisher−Scientific)ノ溶液で、その後、PBSで清浄化した。その結果生じたデータトレースを、Origin 7 Microcalソフトウェアを用いて解析した。参照緩衝液から得たDSCトレースを、試料トレースから差し引いた。試料の正確なモル濃度をデータ解析ルーチンに入れて、融解温度(Tm)、エンタルピー(ΔH)およびファント・ホッフエンタルピー(ΔHv)値に関する値を得た。1および2遷移事象(またはピーク)の両方を伴う非2状態モデルにデータを適合させた。
表4に要約した最良適合モデルからの見掛けの融解温度(app Tm)を用いて、両モデルに関してapp Tmを得た。dAbの融解温度(Tm)は、48.3℃〜62.9℃の範囲であった。DOM23h−271−12(配列番号16)およびDOM23h−271−13(配列番号17)中に存在する付加的D61NおよびK64R突然変異は、それぞれDOM23h−271−3(配列番号14)およびDOM23h−271−7に比してタンパク質の熱安定性を減少させる;DOM23h−271−3(配列番号14)およびDOM23h−271−12(配列番号16)対に関する4℃、ならびにDOM23h−271−7(配列番号15)およびDOM23h−271−13(配列番号17)対に関する2℃の差。DOM437−9中に存在する付加的D61NおよびK64R突然変異も、これらの突然変異がない同一配列(DOM23h−437−6(配列番号19))に比して熱安定性を低減する(少なくとも4℃)。DOM23h−439−7を作製するためにDOM23h−439にD61NおよびK64R突然変異を付加すると、約2℃の熱安定性低減を生じる。同様に、K64R突然変異を含有するdAbであるDOM23h−439−6(配列番号22)にD61N突然変異を付加すると、約2℃の熱安定性の低減が生じる。これらのデータ(表4に記述)は、D61N K64R突然変異がDOM23h dAbの熱安定性に負の作用を及ぼす、ということを示唆する。
実施例6: dAb発現:
DOM23h−271、437および439系列に属するdAbを、前記と同様に発現させた。DOM23h−271(配列番号4)は良好に発現し、発現レベルは72mg/lであった(表5)。DOM23h−271−3(配列番号14)およびDOM23h−271−7(配列番号15)(これらは、エラープローン突然変異選択産出物から単離した)も良好に発現し、発現レベルは親DOM23h−271 dAbに匹敵した(DOM23h−271−3(配列番号14)に関しては63mg/lおよびDOM23h−271(配列番号4に関しては71mg/l)(表5))。DOM23h−271−12(配列番号16)を作製するためのDOM23h−271−3(配列番号14)中へのD61NおよびK64R突然変異の導入は、発現レベルの7倍低減を生じた(表5)。DOM23h−271−7中に同一突然変異を導入して、DOM23h−271−13(配列番号17)を作製すると、dAb発現レベルは2.5倍の低減を生じた(表5)。
DOM23h−437系列からのdAb中へのD61NおよびK64R突然変異の導入は、上記と同様の作用を示した。DOM23h−437(配列番号8)、DOM23h−437−4(配列番号18)およびDOM23h−437−6(配列番号19)は全て、良好に発現し、発現レベルはそれぞれ、89、66および98mg/lであった(表5)。しかしながら、これらのdAb中にD61NおよびK64Rを導入すると、発現レベルは1.7〜2.5倍の低減を示した。DOM23h−439(配列番号10)およびDOM23h−439−8(配列番号23)中へのD61NおよびK64R突然変異の導入は同様の作用を示し、これらのdAbの発現レベルは、それぞれ1.8および4.6倍の低減を生じた(表5)。
HB2151細胞中で形質転換されたpDOM10またはpDOM13発現ベクターにおけるdAbを、一晩発現自己誘導培地中で、30℃で48〜72時間発現させた。Streamline-プロテインAビーズを培養上清に付加して、可溶性VH dAbを結合した。ビーズを2×PBSで洗浄し、結合dAbを0.1Mグリシン、pH2.0で溶離し、1Mトリス、pH8.0で中和した。dAbの280nmでのODを測定し、dAbのアミノ酸組成から算定した減衰係数を用いて、タンパク質濃度を確定した。
実施例7:競合BIAcore:
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、DOM23h−271、437および439系列からのdAbが、hTGFβ−RII上の同一のまたは異なる結合部位に関して互いに競合するか否かを調べるために、実験を実施した。BIAcore(商標)3000計器(BIAcore, GE healthcare, Sweden)で、SPR実験を実施した。メーカーの使用説明書に従って、10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4(BIAcore, GE Healthcare, Sweden)中50ug/mlのhTGFb−RII/Fc抗原をCM5センサーチップ(BIAcore, GE Healthcare, Sweden)と結合させた。約5500RUの抗原を結合させた。ブランク・フローセルを、参照として用いた。精製dAbをHBS−EP緩衝液(BIAcore, GE Healthcare, Sweden)中に希釈して、コ・インジェクトコマンドを用いて、30μl/分の流量で、抗原被覆およびブランク・フローセル上に流した。コ・インジェクトコマンドは、最初の試料の直後に第二の試料の注入を可能にする。一次注入は単一dAbからなり、二次注入は第一dAbおよび第二dAbの混合物で構成された。dAbはすべて、最大容量で抗原表面を結合するのに十分高い濃度で用いられた。第一dAbによる抗原表面の最大結合容量2つのdAbの混合物の注入により超過し得る場合、第二dAbは抗原上の異なる結合部位またはエピトープに関して競合すると思われる。二次注入後にさらなる結合がかんさつされない場合には、2つのdAbは同一抗原結合部位に関して競合すると思われる。最も強力なまたは最高親和性のdAbが最初に注入油される場合には、結果は解釈するのが容易である。CM5センサーチップの表面は、10mMグリシン、pH2.25を用いたコ・インジェクト(2回の10μl注入)サイクル後に、5分間の待ち期間をおいて、再生された。
DOM23h−437−6(配列番号19)、DOM23h−271−3(配列番号14)およびDOM23h−439−6(配列番号22)を、個別に、ならびに互いに組合せて、同時注入することにより、競合BIAcore実験を実施した。エラープローン突然変異ライブラリーを用いた選択後に、これらのクローンを単離した。それらはD61N K64R二重突然変異を含有しないが、しかし、DOM23h−439−6(配列番号22)はK64R単一突然変異を含有する。DOM23h−437−6(配列番号19)は、3つのdAbのうち最も強力であり、このようなものとして、最初に、100nMで注入され、その後、DOM23h−437−6(配列番号19)(100nM)およびDOM23h−271−3(配列番号14)(500nM)の混合物(図8A)またはDOM23h−437−6(配列番号19)(100nM)とDOM23h−439−6(配列番号22)(500nM)の混合物(図8B)が注入された。より大きなRUのdAbは二次注入中に結合したが、これは、DOM23h−271−3(配列番号14)およびDOM23h−439−6(配列番号22)に比して、DOM23h−437−6(配列番号19)が異なる抗原結合部位に関して競合することを示唆する。
DOM23h−437−9(配列番号21)を、DOM23h−262−10(配列番号13)、DOM23h−271−12(配列番号16)およびDOM23h−439−8(配列番号23)と組合せて同時注入することにより、競合BIAcore実験を実施した。これらのクローンはすべて、D61N K64R突然変異を含有した。DOM23h−262−10(配列番号13)はエラープローンライブラリー選択産出物から直接単離されたが、一方、DOM23h−437−9(配列番号 )、DOM23h−271−12(配列番号 )およびDOM23h−439−8(配列番号 )は、それぞれ、DOM23h−437−6(配列番号19)、DOM23h−271−3(配列番号14)およびDOM23h−439−6(配列番号22)中への部位特異的突然変異誘発により、D61N K64Rを導入することにより作製された。DOM23h−437−9(配列番号21)は4つのdAbのうち最も強力であり、このようなものとして、最初に注入され、次いで、他の3つのdAbのうちの1つと組合せて注入される。dAbはすべて、100nMで試験した。二次注入中に結合されたdAbのさらなるRUはなかったが、これは、全4つのdAbが同一結合部位に関して競合し、一方、D61N K64R二重突然変異がdAbヌクレオチド配列中に存在しない場合、3つの系列は同一抗原結合部位に関して競合しない、ということを示唆する。データを、図9および10に要約する。
NR突然変異の要約: 要するに、A549IL−11放出検定ならびにSBE−bla Hek293T細胞センサー検定で測定した場合、DOM23h−271、DOM23h−437およびDOM23h−439系列へのD61NおよびK64R突然変異の付加は、dAbがhTGFβ−RIIにより媒介されるシグナル伝達を中和する効力を改善する(表1)。さらに、D61NおよびK64R突然変異を含有するDOM23h−271−12(配列番号16)は、それが、MC3T3−E1ルシフェラーゼ検定およびRAW264.7ホスホ−Smad検定におけるmTGFβ−RIIにより媒介されるシグナル伝達を中和する能力をディスプレイするため、mTGFβRIIと交差反応する。DOM23h−437−9(配列番号21)は、MC3T3−E1ルシフェラーゼ検定においてmTGFβ−RIIにより媒介されるシグナル伝達を抑制し得たが、しかしRAW264.7ホスホ−Smad検定においては抑制できなかった。しかしながら、DSCにより確定下場合、D61N K64R突然変異の存在は、熱安定性の低減を生じる(表4)。発現レベルの低減も観察された(表5)。
実施例8 − ブレオマイシン誘導性肺繊維症のマウスモデル
ブレオマイシン(BLM)誘導性炎症および繊維症は、特発性肺繊維症に関する実験モデルの典型である。当該方法は、以前に記載されている(Anon, et al., AmJ Respir. Crit. Care Med. 2005 vol. 171, p 1279‐1285; Piguet et al., Int. J. Exp. Path. 1997, vol. 78,p. 43−48; Gasse, et al., J. Clin. Invest., (2007) vol 117, p 3786‐3799)。
BLMは、酸化的ストレス、DNA損傷、ならびに肺胞マクロファージおよび上皮細胞のアポトーシスを誘導して、ケモカインおよび前炎症性サイトカイン分泌、炎症細胞再動員、リモデリングおよび肺繊維症を引き起こす。
ブレオマイシンで処置したマウスに、TGFβ−RIIを結合するdAbを鼻内用量投与して、肺の炎症および繊維症に及ぼすそれらの作用を確定する。
本発明の実施形態を参照しながら本発明を具体的に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱しない限り、形態および詳細の種々の変更が成され得る、と当業者には理解されるであろう。