JP2016053014A - 眼科組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】角膜への異物吸着の抑制作用を向上させ、眼の異物感を緩和することが可能な眼科組成物を提供すること。
【解決手段】ポリソルベート80と、清涼化剤と、を含有する、眼科組成物であって、眼科組成物中のポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、眼科組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ポリソルベート80と、清涼化剤と、を含有する、眼科組成物であって、眼科組成物中のポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、眼科組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、眼科組成物に関する。
角膜は、外界から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜及び角膜内皮の5層で形成された、眼球最表面に構成された組織である。角膜は、外界と直接接する解剖学的特徴から、抗原、微生物及び砂埃等、種々の異物が侵入しやすい。角膜の知覚は人体の疼痛知覚の中でも最も鋭敏な知覚の一つとされている。
砂埃、花粉等の異物が角膜上皮に侵入することによって異物感、眼痛等の症状が現れることもある。つまり、眼球表面への異物の侵入及びそれに端を発する異物感を改善することは、不定愁訴を取り除き、クオリティ・オブ・ライフを向上させる観点からも重要となる。
このような異物の侵入への対策として、眼球又は眼瞼から化粧料又は花粉を除去するために、カルボキシビニルポリマー及びモノテルペンを含み、一回の洗眼の使用量が500μL以上である洗眼剤が見出されている(特許文献1)。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、角膜への異物吸着の抑制作用を向上させ、眼の異物感を緩和することが可能な眼科組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、眼科組成物中の多分散度が比較的高いポリソルベート80と、清涼化剤とを共存させると角膜の異物吸着の抑制効果が阻害されるが、眼科組成物中の多分散度が比較的低いポリソルベート80と清涼化剤を共存させると角膜への異物吸着の抑制効果が向上することを新たに確認した。すなわち、(A)ポリソルベート80(以下、「(A)成分」という場合がある。)と(B)清涼化剤(以下、「(B)成分」という場合がある。)とを含有する眼科組成物であって、上記眼科組成物中の(A)成分の多分散度が1.00〜1.26である眼科組成物は、角膜への異物吸着を抑制し、眼の異物感を緩和することを見出した。角膜への異物吸着の抑制及び眼の異物感への影響について、眼科組成物中のポリソルベート80の多分散度に着目したのは本発明者らが初めてである。これらの知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の態様の眼科組成物を提供する。ポリソルベート80の多分散度を下記範囲にすることによる、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感を緩和するメカニズムの詳細は明らかにされていないが、多分散度の違いによってポリソルベート80と清涼化剤とのミセル構造がわずかに異なり、角膜上皮細胞と異物との間の親和性に影響することも一因として考えられる。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]を提供する。
[1]ポリソルベート80と、
清涼化剤と、
を含有する、眼科組成物であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、眼科組成物;
[2]上記眼科組成物の総量を基準として、前記清涼化剤の総含有量が、0.00005〜0.5w/v%である、上記[1]に記載の眼科組成物;
[3]上記眼科組成物に含まれる上記ポリソルベート80の含有量1質量部に対して、上記清涼化剤の総含有量が、0.0001〜100質量部である、上記[1]又は[2]に記載の眼科組成物;
[4]点眼剤である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の眼科組成物;
[5]コンタクトレンズに適用される、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の眼科組成物;
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の眼科組成物を含む、異物感緩和剤;
[7]眼科組成物に、ポリソルベート80と、清涼化剤と、を配合することを含む、上記異物感の緩和作用を眼科組成物に付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、方法。
また、本発明は以下の[P1]〜[P7]を提供する。
[P1]ポリソルベート80と、
清涼化剤と、
を含有する、眼科組成物であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である、眼科組成物;
[P2]上記清涼化剤が、メントール、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[P1]に記載の眼科組成物;
[P3]上記眼科組成物に含まれる上記ポリソルベート80の含有量1質量部に対して、上記清涼化剤の総含有量が、0.0001〜100質量部である、上記[P1]又は[P2]に記載の眼科組成物;
[P4]点眼剤である、上記[P1]〜[P3]のいずれかに記載の眼科組成物;
[P5]ソフトコンタクトレンズ用である、上記[P1]〜[P4]のいずれかに記載の眼科組成物;
[P6]上記[P1]〜[P5]のいずれかに記載の眼科組成物を含む、異物感緩和剤;
[P7]ポリソルベート80と、清涼化剤と、を配合することによって、異物感の緩和作用を眼科組成物に付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である、方法。
[1]ポリソルベート80と、
清涼化剤と、
を含有する、眼科組成物であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、眼科組成物;
[2]上記眼科組成物の総量を基準として、前記清涼化剤の総含有量が、0.00005〜0.5w/v%である、上記[1]に記載の眼科組成物;
[3]上記眼科組成物に含まれる上記ポリソルベート80の含有量1質量部に対して、上記清涼化剤の総含有量が、0.0001〜100質量部である、上記[1]又は[2]に記載の眼科組成物;
[4]点眼剤である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の眼科組成物;
[5]コンタクトレンズに適用される、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の眼科組成物;
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の眼科組成物を含む、異物感緩和剤;
[7]眼科組成物に、ポリソルベート80と、清涼化剤と、を配合することを含む、上記異物感の緩和作用を眼科組成物に付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、方法。
また、本発明は以下の[P1]〜[P7]を提供する。
[P1]ポリソルベート80と、
清涼化剤と、
を含有する、眼科組成物であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である、眼科組成物;
[P2]上記清涼化剤が、メントール、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[P1]に記載の眼科組成物;
[P3]上記眼科組成物に含まれる上記ポリソルベート80の含有量1質量部に対して、上記清涼化剤の総含有量が、0.0001〜100質量部である、上記[P1]又は[P2]に記載の眼科組成物;
[P4]点眼剤である、上記[P1]〜[P3]のいずれかに記載の眼科組成物;
[P5]ソフトコンタクトレンズ用である、上記[P1]〜[P4]のいずれかに記載の眼科組成物;
[P6]上記[P1]〜[P5]のいずれかに記載の眼科組成物を含む、異物感緩和剤;
[P7]ポリソルベート80と、清涼化剤と、を配合することによって、異物感の緩和作用を眼科組成物に付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である、方法。
本発明によれば、角膜への異物吸着の抑制作用を向上させ、眼の異物感を緩和することが可能な眼科組成物を提供することが可能になる。具体的には、砂埃、花粉、目やに、大気汚染粒子及び化粧料等の異物の角膜への吸着を減少させ、眼の異物感を緩和する眼科組成物を提供することが可能になる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において含有量の単位「%」とは、「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
本明細書において「異物感」とは、角膜への異物の吸着によって引き起こされる、コロコロ又はチクチクとした眼の自覚症状(違和感、刺激感)を意味する。このような自覚症状としては例えば、まばたきしたときに何かが眼にあたるような自覚症状、眼に何かが刺さっているような自覚症状がある。したがって、本発明者らは、眼の異物感を緩和させるために、角膜への異物の吸着を抑制すること、及び自覚症状自体を改善することに着目した。特に、角膜への異物の吸着を抑制することは、眼の異物感に対して予防的効果を示す。
本実施形態に係る眼科組成物(以下、単に「眼科組成物」という場合がある。)は
、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤とを含有し、上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、別の本実施形態に係る眼科組成物は
、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤とを含有し、上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である。
、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤とを含有し、上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、別の本実施形態に係る眼科組成物は
、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤とを含有し、上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である。
(眼科組成物)
(A)成分
本実施形態に係るポリソルベート80(以下、単に「ポリソルベート80」という場合がある。)は、多分散度が1.00〜1.26であれば特に制限されない。上記ポリソルベート80は、市販品として得たポリソルベート80を後述する測定方法にて測定し、多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を選択することで入手できる。
(A)成分
本実施形態に係るポリソルベート80(以下、単に「ポリソルベート80」という場合がある。)は、多分散度が1.00〜1.26であれば特に制限されない。上記ポリソルベート80は、市販品として得たポリソルベート80を後述する測定方法にて測定し、多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を選択することで入手できる。
または、市販品として得たポリソルベート80を、公知の方法で更に分画又は精製することによって、多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を入手できる。上記ポリソルベート80の分画又は精製方法は特に制限されないが、イオン交換樹脂、活性炭若しくは吸着剤を使用した精製処理、水蒸気脱臭処理、脱色処理、脱水脱溶剤、フィルター濾過、ケーク濾過、遠心分離、沈降除去等の方法、又は、これらを2種以上組み合わせた方法を用いることができる。これらの分画又は精製方法は、多分散度の測定誤差等への悪影響を除く必要があれば行うことができる。上記ポリソルベート80のその他の分画方法としては、例えば、膜ろ過法、蒸留による手法、有機溶剤による抽出法若しくは洗浄、再沈澱法、液/液分離法等の手法、又は、これらを2種以上組み合わせた方法が挙げられる。具体例としては以下の膜ろ過法が挙げられる。市販品として得たポリソルベート80の分子量及び多分散度を後述するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法で測定し、阻止率90%に近く且つ透過流束が得られる適切な限外ろ過膜を選択する。ろ過膜は市販のものが使用できる(例えばUFディスク PLBC ウルトラセル RC 3K NMWL (分子量カットオフ3KDa、セルロース膜)(ミリポア(株)社製))。ろ過膜の限度圧に従い、0.5〜200Paの圧をかける。重量平均分子量及びZ平均分子量に基づいて分画して多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を入手することができる。
上記ポリソルベート80のその他の精製方法としては、例えば、晶析、樹脂クロマト、反応液をそのままスプレードライヤーで乾燥し粉末化する方法、水蒸気蒸留を行って除去する方法、有機溶媒と水とを用いた液液抽出法などが挙げられる。上記精製方法の具体例としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、ポリソルベート80をメタノールに溶解して光散乱法によって臨界ミセル濃度における分子量を測定し、限外ろ過膜の分画分子量を決定する。次に、膜ろ過は0.5〜10ml/分の流速、0.1〜20barの圧力の条件で行う。
上記ポリソルベート80のその他の精製方法としては、例えば、晶析、樹脂クロマト、反応液をそのままスプレードライヤーで乾燥し粉末化する方法、水蒸気蒸留を行って除去する方法、有機溶媒と水とを用いた液液抽出法などが挙げられる。上記精製方法の具体例としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、ポリソルベート80をメタノールに溶解して光散乱法によって臨界ミセル濃度における分子量を測定し、限外ろ過膜の分画分子量を決定する。次に、膜ろ過は0.5〜10ml/分の流速、0.1〜20barの圧力の条件で行う。
または、上記ポリソルベート80の製造方法は特に制限されないが、以下の方法で多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を入手できる。主としてオレイン酸からなる脂肪酸でソルビトール及び/又は無水ソルビトールを部分エステル化した混合物に、エチレンオキシドを付加させて製造する。エステル反応は、ソルビタンと脂肪酸とを、塩基性触媒下、不活性ガス気流下、常圧又は減圧下、通常150〜280℃の温度で行うことができる。反応後、塩基性触媒を失活させるために十分な少量の酸を加えて中和を行う。原料のソルビトールは、グルコースを高圧水素還元することによって得ることができるし、市販のものを使用してもよい(例えば、ソルビットD−70(東和化成工業(株)社製)、ソルビトールS(日研化学(株)社製)などが挙げられる。)。ソルビタンは、ソルビトールを脱水環化することによって得ることができるし、市販のものを使用してもよい(例えば当栄ケミカル(株)社製等が挙げられる。)。あるいは、市販品のソルビタンオレイン酸エステルを用いることもできる。ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを付加させる工程は、アルカリ金属触媒及び脂肪酸石鹸類等の触媒を使用する。製造したポリソルベート80は、ろ過を行うことができる。なお、エステル反応における塩基性触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、その他の金属、その酸化物、並びに、これらの混合物等のアルカリ性化合物と、亜リン酸(塩)及び/又は次亜リン酸(塩)との併用である。また、使用される不活性ガスは、例えば、窒素又はアルゴンを用いることができる。エステル反応後の生成物にエチレンオキシドを付加させる金属触媒は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等が挙げられる。このようにして得られたポリソルベート80を公知の方法で更に分画又は精製することによって、多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を入手できる。
さらに、多分散度が異なる2種以上のポリソルベート80を混合することによって、多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80を調製することもできる。
本実施形態に係る眼科組成物は、市販品として得た多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80、市販品を上記の精製方法で精製して得た多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80、又は上記の製造方法で製造した多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80と、清涼化剤とを配合する工程を含む方法によって製造してもよい。また、異なる方法によって入手した2種以上のポリソルベート80と、清涼化剤とを配合する工程を含む方法によって製造してもよい。このような方法で製造することによって、眼科組成物中のポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であるようにできる。
ポリソルベート80の多分散度は、1.00〜1.26であり、1.00〜1.23であることが好ましく、1.00〜1.21であることがより好ましく、1.00〜1.19であることが更により好ましい。上記多分散度をこのような範囲にすることで、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という本発明の効果をより顕著に発揮できる。
ポリソルベート80の重量平均分子量は特に制限されないが、好ましくは1200〜3200、より好ましくは1300〜3000の範囲である。また、ポリソルベート80のZ平均分子量は特に制限されないが、好ましくは1300〜3500、より好ましくは1400〜3300の範囲である。
ポリソルベート80の重量平均分子量、Z平均分子量を上述のような範囲にすることで、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という本発明の効果をより顕著に発揮できる。
なお、重量平均分子量、Z平均分子量及び多分散度の測定方法及び算出方法は、後述の通りである。
ポリソルベート80の重量平均分子量、Z平均分子量を上述のような範囲にすることで、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という本発明の効果をより顕著に発揮できる。
なお、重量平均分子量、Z平均分子量及び多分散度の測定方法及び算出方法は、後述の通りである。
ポリソルベート80の多分散度はMz/Mwとして定義される。MzはZ平均分子量を示し、Mwは重量平均分子量を示す。
分子量の測定方法は、液体クロマトグラフィー、超遠心法、光散乱法及び極限粘度法など多種の分子量測定方法が知られている。測定方法の違いによって、重量平均分子量、Z平均分子量等の得られる平均分子量の種類又は、測定可能な分子量範囲が異なる。本願発明の定義する重量平均分子量、Z平均分子量及び多分散度は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法によって測定したものである。SEC法は重量平均分子量、Z平均分子量及び多分散度を測定することができ、操作が容易であるため、高分子化合物やオリゴマー等の測定に最も広く利用される。
SEC法は細孔があるゲルを充てん剤としたカラムを使用し、試料溶液中の分子サイズによってカラム中の移動距離に差が生ずることで溶出する時間が異なることにより分離する機構をもつ。Mz及びMw等の平均分子量は、分子量既知の標準物質によって作成した検量線に基づいて計算される。このようにSEC法で得られるZ平均分子量、重量平均分子量及び多分散度は、標準物質を用いて分子量較正を行うことによる相対値であることから、同一の標準物質を用いて実施することでのみ得られる。そこで、本願発明のSEC法は、後述の通り、標準物質としてポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコールを用いるものと定義する。また相対値であるため、被検成分の分離及び検量線の作成における条件設定もまた重要である。本発明者らは、これらのSEC法の特性を鑑みて、ポリソルベート80のZ平均分子量、重量平均分子量及び多分散度の算出の精度を高めるべく、SEC法の測定条件を鋭意検討した。
本実施形態において、眼科組成物中のポリソルベート80の重量平均分子量、Z平均分子量及び多分散度は、以下の様にして測定される。
(検量線溶液の調製)
1.分子量数十万から数百のポリエチレンオキシド(東ソー株式会社)及びポリエチレングリコール(和光純薬株式会社)を標準物質とする。標準物質としてのポリエチレンオキシドとポリエチレングリコールは、分子量が数十万であるものを3種、分子量が数万であるものを2種、分子量が数千であるものを2種、分子量が数百であるものを1種、使用することが好ましい。さらに好ましくは、分子量580000、255000、146000、44900、27000のポリエチレンオキシド及び分子量8000、1000、600のポリエチレングリコールを使用し、分子量580000、146000、27000、1000及び分子量255000、44900、8000、600に分け、溶出位置が重複しないように組み合わせる。
2.標準物質の濃度が0.1w/v%となる水溶液を調製し、標準液とする。標準物質の濃度を0.1w/v%とすることは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
3.標準液1.0mLを正確に取り、メタノール4.0mLを正確に加えた液を検量線溶液とする。
(試料溶液の調製)
4.試験液1.0mLを正確に取り、メタノール4.0mLを正確に加えた液を試料溶液とする。
(液体クロマトグラフによる測定)
5.各検量線溶液及び試料溶液を液体クロマトグラフ(Agilent 1200シリーズ、Agilent Technologies製)により測定する。
6.カラムは東ソー株式会社製であり、親水性ビニルポリマーを充てんしたTSK-Gelα-4000(排除限界分子量約40万)及びTSK-Gelα-2500(排除限界分子量約5000)(両カラムともに内径7.8mm、長さ300mm)をこの順番に1本ずつ連結して設置する。カラム温度は40.0℃とする。40.0℃を一定に保つことは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
7.溶離液は、0.10mol/L塩化ナトリウム水溶液に対してメタノールの体積が4.0倍となる混合液を測定毎に調製して使用する。試料分子間あるいは試料分子と充てん剤との相互作用を抑制するため溶離液に塩化ナトリウムを含むことは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
8.流量は0.5mL/minである。
9.注入量は50μLである。注入の前に0.45μmのフィルターによりろ過する。
10.検量線溶液、試料溶液の順番に測定し、分析周期は検量線溶液が60分間で、試料溶液は90分間である。測定を中断せずに検量線溶液と試料溶液を連続して測定することは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
11.検出器は示差屈折率検出器で検出器温度は35.0℃である。
(Z平均分子量、重量平均分子量及び多分散度の算出)
12.得られたクロマトグラムをSEC解析装置で解析処理を行い、クロマトグラム曲線とベースラインに挟まれた範囲を対象としてZ平均分子量及び重量平均分子量を計算する。検量線溶液から各ピークの溶出時間及び分子量値をプロットし、1次式による近似を行い検量線とし、相関係数は0.99以上とする。さらに、クロマトグラムの解析処理上の誤差を軽減するために、得られたピークを0.1分以上0.001分未満の間隔で垂直分割し平均分子量の計算を行う。
13.Mz/Mwの式より多分散度を算出する。上記4.で示される工程の試料溶液を3回測定し、それぞれで求められたZ平均分子量、重量平均分子量又は多分散度の平均値をそれぞれ、本願のZ平均分子量、重量平均分子量又は多分散度として採用する。
(検量線溶液の調製)
1.分子量数十万から数百のポリエチレンオキシド(東ソー株式会社)及びポリエチレングリコール(和光純薬株式会社)を標準物質とする。標準物質としてのポリエチレンオキシドとポリエチレングリコールは、分子量が数十万であるものを3種、分子量が数万であるものを2種、分子量が数千であるものを2種、分子量が数百であるものを1種、使用することが好ましい。さらに好ましくは、分子量580000、255000、146000、44900、27000のポリエチレンオキシド及び分子量8000、1000、600のポリエチレングリコールを使用し、分子量580000、146000、27000、1000及び分子量255000、44900、8000、600に分け、溶出位置が重複しないように組み合わせる。
2.標準物質の濃度が0.1w/v%となる水溶液を調製し、標準液とする。標準物質の濃度を0.1w/v%とすることは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
3.標準液1.0mLを正確に取り、メタノール4.0mLを正確に加えた液を検量線溶液とする。
(試料溶液の調製)
4.試験液1.0mLを正確に取り、メタノール4.0mLを正確に加えた液を試料溶液とする。
(液体クロマトグラフによる測定)
5.各検量線溶液及び試料溶液を液体クロマトグラフ(Agilent 1200シリーズ、Agilent Technologies製)により測定する。
6.カラムは東ソー株式会社製であり、親水性ビニルポリマーを充てんしたTSK-Gelα-4000(排除限界分子量約40万)及びTSK-Gelα-2500(排除限界分子量約5000)(両カラムともに内径7.8mm、長さ300mm)をこの順番に1本ずつ連結して設置する。カラム温度は40.0℃とする。40.0℃を一定に保つことは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
7.溶離液は、0.10mol/L塩化ナトリウム水溶液に対してメタノールの体積が4.0倍となる混合液を測定毎に調製して使用する。試料分子間あるいは試料分子と充てん剤との相互作用を抑制するため溶離液に塩化ナトリウムを含むことは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
8.流量は0.5mL/minである。
9.注入量は50μLである。注入の前に0.45μmのフィルターによりろ過する。
10.検量線溶液、試料溶液の順番に測定し、分析周期は検量線溶液が60分間で、試料溶液は90分間である。測定を中断せずに検量線溶液と試料溶液を連続して測定することは、Z平均分子量、重量平均分子量、多分散度の相対標準偏差を抑制するために非常に重要である。
11.検出器は示差屈折率検出器で検出器温度は35.0℃である。
(Z平均分子量、重量平均分子量及び多分散度の算出)
12.得られたクロマトグラムをSEC解析装置で解析処理を行い、クロマトグラム曲線とベースラインに挟まれた範囲を対象としてZ平均分子量及び重量平均分子量を計算する。検量線溶液から各ピークの溶出時間及び分子量値をプロットし、1次式による近似を行い検量線とし、相関係数は0.99以上とする。さらに、クロマトグラムの解析処理上の誤差を軽減するために、得られたピークを0.1分以上0.001分未満の間隔で垂直分割し平均分子量の計算を行う。
13.Mz/Mwの式より多分散度を算出する。上記4.で示される工程の試料溶液を3回測定し、それぞれで求められたZ平均分子量、重量平均分子量又は多分散度の平均値をそれぞれ、本願のZ平均分子量、重量平均分子量又は多分散度として採用する。
一般に知られているSEC法での平均分子量の相対標準偏差は下記式A及び式Bで計算され、約4〜5%である。上述のSEC測定条件では多分散度の相対標準偏差が5%未満であることから、妥当な測定条件と言える。本願における多分散度は、相対標準偏差が5%未満となるように測定し、算出するものとする。上述した試薬、カラム、液体クロマトグラフ等が入手できない場合、これらと同等の代替品を用いて測定を行うことができる。ただし、多分散度の相対標準偏差が5%未満となるように測定する必要がある。5%以上の相対標準偏差となる場合は、通常実施する測定条件の検討範囲で相対標準偏差を抑制する必要がある。本発明者らの検討において相対標準偏差を抑制するために、標準物質の濃度、カラム温度、溶離液の組成及び検量線溶液と試料溶液の分析周期について、上述の条件を満たすことが重要であった。
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分の含有量は特に限定されず、併用する(B)成分の種類及び含有量等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量としては、例えば、眼科組成物の総量を基準として、0.0001〜8w/v%であることが好ましく、0.0001〜4w/v%であることがより好ましく、0.0005〜2w/v%であることがさらに好ましく、0.01〜1w/v%であることが特に好ましい。上記(A)成分の含有量は、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という効果の観点から好適である。
(B)成分
(B)成分は清涼化剤である。(B)成分は1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
(B)成分は清涼化剤である。(B)成分は1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る眼科組成物に用いられる清涼化剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。清涼化剤としては、例えば、テルペノイド、テルペノイドを含有する精油(例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント及びハッカ油)等が挙げられる。テルペノイドとしては、例えば、メントール、メントン、カンフル(「ショウノウ」又は「樟脳」ともいう。)、ボルネオール(「リュウノウ」又は「竜脳」ともいう。)、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール及び酢酸リナリルが挙げられる。テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよく、l−メントール、d−メントール、dl−メントール、dl−カンフル、d−カンフル、dl−ボルネオール及びd−ボルネオールが例示される。ただし、ゲラニオール、ネロール及びシネオール等のようにテルペノイドによっては光学異性体が存在しない場合がある。角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という効果の観点から、上記清涼化剤は、メントール、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好適であり、l−メントール、dl−カンフル、d−カンフル及びd−ボルネオールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好適である。
本実施形態に係る眼科組成物における清涼化剤の含有量は特に限定されず、清涼化剤の種類、併用する(A)成分の種類及び含有量等に応じて適宜設定される。清涼化剤の含有量としては、テルペノイドとして測定することができ、例えば、眼科組成物の総量を基準として、清涼化剤(テルペノイドとして)の総含有量が、0.00005〜0.5w/v%であることが好ましく、0.0001〜0.3w/v%であることがより好ましく、0.0005〜0.2w/v%であることが更に好ましく、0.001〜0.1w/v%であることが特に好ましい。上記清涼化剤の含有量は、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という効果の観点から好適である。
本実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する清涼化剤の含有比率は特に限定されず、清涼化剤の種類等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する清涼化剤の含有比率としては、例えば、眼科組成物に含まれる(A)成分の含有量1質量部に対して、清涼化剤の総含有量が、0.0001〜100質量部であることが好ましく、0.001〜80質量部であることがより好ましく、0.005〜60質量部であることが更に好ましく、0.01〜50質量部であることが特に好ましい。上記(A)成分に対する清涼化剤の含有比率は、角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という効果の観点から好適である。
本実施形態に係る眼科組成物は、緩衝剤をさらに含有することが好ましい。これによって、眼科組成物のpHを調整でき、本発明の効果をより一層顕著に発揮できる。
緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、エデト酸塩等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸又はその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸又はその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸又はその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸又はその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂との組合せ等)又はリン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムとの組合せ等)が好ましく、ホウ酸緩衝剤がさらに好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、該緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、例えば、眼科組成物の総量を基準として、該緩衝剤の総含有量が、0.001〜15w/v%であることが好ましく、0.01〜10w/v%であることがより好ましく、0.05〜7.5w/v%であることが更に好ましく、0.1〜5w/v%であることが特に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物は、キレート剤を更に含有することが好ましい。これによって、眼科組成物を長期間安定に使用でき、本発明の効果をより一層顕著に発揮できる。
キレート剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等が例示できる。これらのキレート剤の中でもエチレンジアミン四酢酸が好ましい。これらのキレート剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る眼科組成物にキレート剤を配合する場合、その含有量は、キレート剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。キレート剤の含有量としては、例えば、眼科組成物の総量を基準として、キレート剤の総含有量が、0.0001〜2w/v%であることが好ましく、0.0004〜1.5w/v%であることがより好ましく、0.0008〜1w/v%であることが更に好ましく、0.001〜0.8w/v%であることが特に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。眼科組成物のpHは、4.0〜9.5、好ましくは4.5〜9.0、より好ましくは、5.0〜8.5となる範囲が挙げられる。pHが上記範囲であると、眼科組成物を使用した際の眼に対する刺激が少なく、角膜への異物吸着を更に抑制し、眼の異物感をより緩和できる傾向にある。
本実施形態に係る眼科組成物は、等張化剤をさらに含有することが好ましい。これによって、眼科組成物の浸透圧を調整でき、本発明の効果をより一層顕著に発揮できる。等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。等張化剤としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの等張化剤の中でも、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムが好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウム又はプロピレングリコールがさらに好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。これらの等張化剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る眼科組成物が等張化剤を含有する場合、その含有量は、等張化剤の種類、他の含有成分の種類及び含有量等に応じて適宜設定される。等張化剤の含有量としては、例えば、眼科組成物の総量を基準として、等張化剤の総含有量が、0.001〜10w/v%であることが好ましく、0.01〜5w/v%であることがより好ましく、0.05〜3w/v%であることが更に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物の浸透圧は、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。眼科組成物の浸透圧比としては、例えば、0.5〜5.0であることが好ましく、0.6〜3.0であることがより好ましく、0.7〜2.0であることが更に好ましく、0.8〜1.6であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール又は糖を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
本実施形態に係る眼科組成物は、粘稠剤をさらに含有することが好ましい。これによって、眼科組成物の粘度を調整でき、本願の効果をより一層顕著に発揮できる。
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90等)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体[メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910等)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等]、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、トラガント、デキストラン(40、70等)、ブドウ糖、ソルビトールなどが例示でき、好ましくはポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体[メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)、カルボキシメチルセルロース又はそれらの塩等]、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000等)又はデキストラン(70)であり、さらに好ましくはポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90)、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000)又はデキストラン(70)である。角膜への異物吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という効果の観点から、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好適であり、ポリビニルピロリドンが特に好適である。これらの粘稠剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る眼科組成物が粘稠剤を含有する場合、その含有量は、粘稠剤の種類、他の含有成分の種類及び含有量等に応じて適宜設定される。粘稠剤の含有量としては、例えば、眼科組成物の総量を基準として、粘稠剤の総含有量が、0.0001〜5w/v%であることが好ましく、0.0005〜3w/v%であることがより好ましく、0.001〜2w/v%であることが更に好ましく、0.01〜1w/v%であることが特に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物の粘度については、生体に許容される範囲内であれば特に制限されない。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34’xR24)で測定した25℃における粘度が、例えば、0.1〜1000mPa・sであることが好ましく、0.5〜100mPa・sであることがより好ましく、1〜50mPa・sであることが更に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分又は生理活性成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗アレルギー剤:クロモグリク酸塩、アンレキサノクス、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラストカリウム、トラニラスト、オロパタジン塩酸塩、レボカバスチン塩酸塩及びアシタザノラスト等。
抗ヒスタミン剤:クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びケトチフェンフマル酸塩等。
血管収縮剤(充血除去剤):塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン及びdl−塩酸メチルエフェドリン等。
抗炎症剤:プラノプロフェン、グリチルリチン酸、アラントイン、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、アズレンスルホン酸、ε−アミノカプロン酸、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム、サリチル酸、トラネキサム酸、甘草及びこれらの塩等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン及び硫酸アトロピン等。
殺菌剤:アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド及び塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等。
アミノ酸類:グリシン、アラニン、γ−アミノ酪酸、アスパラギン酸、L−アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸、アルギニン、リジン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びアルギン酸等。
ビタミン類:ビタミンB1、ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、ナイアシン(ニコチン酸及びニコチン酸アミド)、パントテン酸、パンテノール、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール及びピリドキサミン)、ビオチン、葉酸、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン及びアデノシルコバラミン)、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール及び酢酸トコフェロール等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
抗アレルギー剤:クロモグリク酸塩、アンレキサノクス、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラストカリウム、トラニラスト、オロパタジン塩酸塩、レボカバスチン塩酸塩及びアシタザノラスト等。
抗ヒスタミン剤:クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩及びケトチフェンフマル酸塩等。
血管収縮剤(充血除去剤):塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン及びdl−塩酸メチルエフェドリン等。
抗炎症剤:プラノプロフェン、グリチルリチン酸、アラントイン、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、アズレンスルホン酸、ε−アミノカプロン酸、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム、サリチル酸、トラネキサム酸、甘草及びこれらの塩等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン及び硫酸アトロピン等。
殺菌剤:アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド及び塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等。
アミノ酸類:グリシン、アラニン、γ−アミノ酪酸、アスパラギン酸、L−アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸、アルギニン、リジン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム及びアルギン酸等。
ビタミン類:ビタミンB1、ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、ナイアシン(ニコチン酸及びニコチン酸アミド)、パントテン酸、パンテノール、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール及びピリドキサミン)、ビオチン、葉酸、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン及びアデノシルコバラミン)、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール及び酢酸トコフェロール等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
本実施形態に係る眼科組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途又は製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有していてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体及びdl体のいずれでもよい。
非イオン性界面活性剤:モノウラリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)及びトリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)及びPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)及びPOE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)及びPOE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。
両性界面活性剤:N−[2−[[2−(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシン及びその塩(アルキルジアミノエチルグリシン又はアルキルポリアミノエチルグリシンとも呼ばれる)等。
陰性界面活性剤:アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸等。
陽性界面活性剤:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
安定化剤:トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、パラフィン、プラスチベース、ラノリン、プロピレングリコール等。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体及びdl体のいずれでもよい。
非イオン性界面活性剤:モノウラリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)及びトリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)及びPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)及びPOE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)及びPOE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。
両性界面活性剤:N−[2−[[2−(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシン及びその塩(アルキルジアミノエチルグリシン又はアルキルポリアミノエチルグリシンとも呼ばれる)等。
陰性界面活性剤:アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸等。
陽性界面活性剤:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
安定化剤:トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、パラフィン、プラスチベース、ラノリン、プロピレングリコール等。
本実施形態に係る眼科組成物は、上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて他の含有成分を所望の含有量となるように担体に添加することによって調製される。具体的には、例えば、精製水で上記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等によって滅菌処理することで調製できる。
本実施形態に係る眼科組成物における水の含有量は、眼科組成物の総量に対して、85w/v%以上であることが好ましく、90w/v%以上であることがより好ましく、92w/v%以上であることが更に好ましく、94w/v%以上であることが更により好ましく、96w/v%以上であることが特に好ましい。眼科組成物に用いられる水としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。
本実施形態に係る眼科組成物は、任意の容器に収容して提供される。眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチルペンテン及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれらの材質を含む2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。眼科組成物は、例えば、有色透明のプラスチック製容器等に、繰り返し使用可能なマルチドーズの形態で収容して使用してもよく、1回使いきりの形態で収容して使用してもよい。
本実施形態に係る眼科組成物は医薬品又は医薬部外品の製剤として使用でき、いわゆる点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。]の他に、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。]、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]などが含まれる。本発明の好適な一例として、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液が挙げられ、特に好適な例として点眼剤、人工涙液が挙げられる。なお、上記眼科組成物をコンタクトレンズ用組成物として用いる場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能であり、上記コンタクトレンズに対して装用した状態で適用することも可能である。本実施形態に係る眼科組成物は、コンタクトレンズ装用による圧迫等による異物の角膜への吸着の抑制又は眼の異物感の緩和という効果の観点からも、コンタクトレンズへの適用に好適である。
上記眼科組成物は、公知のコンタクトレンズであればどのようなコンタクトレンズであっても適用可能である。レンズの直径が大きく、眼部との接触面積が大きい観点から、特に好ましくはソフトコンタクトレンズに適用される。ソフトコンタクトレンズ(SCL)は、例えば、ISO18369−1:2006及びISO18369−1:AMENDMENT1に記載の方法で分類される。
本実施形態に係る眼科組成物は、眼の異物感を緩和させるために、自覚症状そのものを改善するだけでなく、角膜への異物の吸着を抑制することもできる。異物感とは、コロコロ又はチクチクとした眼の自覚症状(違和感、刺激感)を意味し、眼の乾燥、コンタクトレンズの使用、又はアレルギー性結膜炎を発端として引き起こされることがある。異物感は炎症を伴うことによって、さらに増強される。本実施形態に係る眼科組成物は、異物感を伴う様々な症状に対する予防又は治療を目的として適用することができる。異物の吸着を抑制できるという観点から、アレルギー性結膜炎、コンタクトレンズ装用、眼のかわき等によって引き起こされる異物感に対して好適である。すなわち、上記眼科組成物は、異物感緩和剤として好適に用いられる。言い換えると、上記異物感緩和剤は、上記眼科組成物を含むものである。
(異物感の緩和作用を付与する方法)
本発明の他の実施形態では、眼科組成物に、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤と、を配合することを含む、上記眼科組成物に眼の異物感の緩和作用を付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、方法を提供するものである。
また、本発明の別の他の実施形態では、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤と、を配合することによって、眼科組成物に眼の異物感の緩和作用を付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である、方法を提供するものである。
本発明の他の実施形態では、眼科組成物に、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤と、を配合することを含む、上記眼科組成物に眼の異物感の緩和作用を付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
上記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、方法を提供するものである。
また、本発明の別の他の実施形態では、(A)ポリソルベート80と、(B)清涼化剤と、を配合することによって、眼科組成物に眼の異物感の緩和作用を付与する方法であって、
上記眼科組成物中の上記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26である、方法を提供するものである。
本実施形態に係る眼科組成物によれば、眼科組成物中の多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80と、清涼化剤とを組み合わせることによって、角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感をより緩和することが可能である。
(製造方法)
本実施形態に係る眼科組成物の製造においては、眼科組成物中で多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80と清涼化剤とを配合することによって、角膜への異物吸着の抑制効果(抑制作用)が維持又は向上した製剤の提供に貢献できると示唆される。
本実施形態に係る眼科組成物の製造においては、眼科組成物中で多分散度が1.00〜1.26であるポリソルベート80と清涼化剤とを配合することによって、角膜への異物吸着の抑制効果(抑制作用)が維持又は向上した製剤の提供に貢献できると示唆される。
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例1.角膜上皮細胞への異物吸着量の測定
(1)試験方法
表1に記載の、それぞれ異なる多分散度を有するポリソルベート80を使用して、表2及び表3に記載の試験液A及び試験液Bを調製し、各試験液中のポリソルベート80の多分散度を測定した。その後、蛍光標識したアルブミン(終濃度0.2%)を添加した各試験液を培養培地中に添加し、角膜上皮細胞への異物吸着に及ぼす影響について評価した。
(1)試験方法
表1に記載の、それぞれ異なる多分散度を有するポリソルベート80を使用して、表2及び表3に記載の試験液A及び試験液Bを調製し、各試験液中のポリソルベート80の多分散度を測定した。その後、蛍光標識したアルブミン(終濃度0.2%)を添加した各試験液を培養培地中に添加し、角膜上皮細胞への異物吸着に及ぼす影響について評価した。
ヒト角膜上皮細胞株HCE−T(理化学研究所バイオリソースセンター、No.RCB2280)を48ウェルマイクロプレート(コーニング社製)に3.0×105細胞/ウェルとなるように、各ウェルに対して培養培地で600μLずつ播種を行い、37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。培養後、培養培地を吸引除去し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で蛍光標識したアルブミン(終濃度0.2%)をそれぞれ添加した各試験液200μLを入れ、室温下で60分間静置した。処理後、ウェル中の液を吸引除去し、600μLのリン酸緩衝液を各ウェルに加えた。ウェル中の液を吸引除去して洗浄した後、200μLのリン酸緩衝液を入れ、蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent CF、MTX Labsystems社製)を用いて励起波長495nm/発光波長520nmにおける、各ウェルの蛍光値を測定した。あらかじめ用意した異物量(アルブミンの量)と蛍光値との検量線に基づいて、得られた蛍光値を、異物量に換算した。得られた異物量から、式(1)に基づいて、異物吸着の抑制率(%)を算出した。そして、式(2)に基づいて、異物吸着の抑制率の増減を算出した。なお、式(1)において、コントロールとは、(A)成分も(B)成分も含んでいない培養培地を指す。
異物吸着の抑制率(%)=[1−{(各試験液の異物量)/(コントロールの異物量)}]×100・・・式(1)
異物吸着の抑制率の増減={試験液Bを用いたときの異物吸着の抑制率(%)}−{試験液Aを用いたときの異物吸着の抑制率(%)}・・・式(2)
(2)試験結果
結果を表4に示す。多分散度が異なる各種(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによって、試験液中の多分散度が1.28以上である(A)成分においては異物吸着の抑制効果が低下するが(比較例1〜2)、試験液中の多分散度が1.28未満である(A)成分においては異物吸着の抑制効果が向上することが示された(実施例1〜4)。
異物吸着の抑制率(%)=[1−{(各試験液の異物量)/(コントロールの異物量)}]×100・・・式(1)
異物吸着の抑制率の増減={試験液Bを用いたときの異物吸着の抑制率(%)}−{試験液Aを用いたときの異物吸着の抑制率(%)}・・・式(2)
(2)試験結果
結果を表4に示す。多分散度が異なる各種(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによって、試験液中の多分散度が1.28以上である(A)成分においては異物吸着の抑制効果が低下するが(比較例1〜2)、試験液中の多分散度が1.28未満である(A)成分においては異物吸着の抑制効果が向上することが示された(実施例1〜4)。
試験例2.官能試験:異物感の改善効果
(1)試験方法
下記表5に従って常法に準じて各点眼剤を調製し、各点眼剤中のポリソルベート80の多分散度を測定した。各点眼剤をポリエチレンテレフタレート製容器に充てんした。普段から眼の異物感を自覚する被験者に対して、(A)ポリソルベート80及び(B)l−メントールを含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.21未満である点眼剤(実施例5〜7)を左眼に、(A)ポリソルベート80及び(B)l−メントールを含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.34以上である点眼剤(比較例3)を右眼にそれぞれ単回投与した。その後、表6に示す0から100の目盛りを付した10cmの直線を用い、Visual Analog Scale法(VAS法)で点眼後の眼の異物感の評価を行った。なお、異物感の評価は、コンタクトレンズ非装用者5名を被験者とした場合と、コンタクトレンズ装用者3名を被験者とした場合とに分けて行った。
(2)試験結果
結果を表5に示す。(A)ポリソルベート80及び(B)l−メントールを含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.34未満である実施例5〜7の点眼剤を用いた場合、顕著な異物感改善効果を示すことが確認された。
(1)試験方法
下記表5に従って常法に準じて各点眼剤を調製し、各点眼剤中のポリソルベート80の多分散度を測定した。各点眼剤をポリエチレンテレフタレート製容器に充てんした。普段から眼の異物感を自覚する被験者に対して、(A)ポリソルベート80及び(B)l−メントールを含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.21未満である点眼剤(実施例5〜7)を左眼に、(A)ポリソルベート80及び(B)l−メントールを含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.34以上である点眼剤(比較例3)を右眼にそれぞれ単回投与した。その後、表6に示す0から100の目盛りを付した10cmの直線を用い、Visual Analog Scale法(VAS法)で点眼後の眼の異物感の評価を行った。なお、異物感の評価は、コンタクトレンズ非装用者5名を被験者とした場合と、コンタクトレンズ装用者3名を被験者とした場合とに分けて行った。
(2)試験結果
結果を表5に示す。(A)ポリソルベート80及び(B)l−メントールを含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.34未満である実施例5〜7の点眼剤を用いた場合、顕著な異物感改善効果を示すことが確認された。
試験例3.官能試験:異物感の改善効果
(1)試験方法
下記表7及び表8に従って常法に準じて各点眼剤を調製したこと以外は、試験例2と同様の方法によって、点眼後の眼の異物感の評価を行った。なお、比較例4、実施例8及び実施例9の試験では、コンタクトレンズ非装用者5名及びコンタクトレンズ装用者5名を被験者とした。それ以外の試験ではコンタクトレンズ非装用者3名及びコンタクトレンズ装用者3名を被験者とした。
(2)試験結果
結果を表7及び表8に示す。(A)ポリソルベート80及び(B)清涼化剤(d−ボルネオール、d−カンフル又はゲラニオール)を含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.34未満である実施例8〜15の点眼剤を用いた場合、顕著な異物感改善効果を示すことが確認された。
(1)試験方法
下記表7及び表8に従って常法に準じて各点眼剤を調製したこと以外は、試験例2と同様の方法によって、点眼後の眼の異物感の評価を行った。なお、比較例4、実施例8及び実施例9の試験では、コンタクトレンズ非装用者5名及びコンタクトレンズ装用者5名を被験者とした。それ以外の試験ではコンタクトレンズ非装用者3名及びコンタクトレンズ装用者3名を被験者とした。
(2)試験結果
結果を表7及び表8に示す。(A)ポリソルベート80及び(B)清涼化剤(d−ボルネオール、d−カンフル又はゲラニオール)を含有し、点眼剤中のポリソルベート80の多分散度が1.34未満である実施例8〜15の点眼剤を用いた場合、顕著な異物感改善効果を示すことが確認された。
Claims (7)
- ポリソルベート80と、
清涼化剤と、
を含有する、眼科組成物であって、
前記眼科組成物中の前記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
前記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、眼科組成物。 - 前記眼科組成物の総量を基準として、前記清涼化剤の総含有量が、0.00005〜0.5w/v%である、請求項1に記載の眼科組成物。
- 前記眼科組成物に含まれる前記ポリソルベート80の含有量1質量部に対して、前記清涼化剤の総含有量が、0.0001〜100質量部である、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
- 点眼剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼科組成物。
- コンタクトレンズに適用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の眼科組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の眼科組成物を含む、異物感緩和剤。
- 眼科組成物に、ポリソルベート80と、清涼化剤と、を配合することを含む、前記眼科組成物に異物感の緩和作用を付与する方法であって、
前記眼科組成物中の前記ポリソルベート80の多分散度が1.00〜1.26であり、
前記清涼化剤がカンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、方法。
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