JP2016050247A - 難燃性ポリアミド樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブリスターの発生が低減され、かつ成形品の機械特性の優れた難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が270〜340℃のポリアミド樹脂(A)30〜70質量%と、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)を1.5〜4.9質量%と、難燃剤(C)1.5〜20質量%と、繊維状充填材(D)10〜50質量%とを含む(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100質量%である)、難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性ポリアミド樹脂組成物およびその成形体に関する。
近年、樹脂材料が、電気電子部品、OA関連部品、家電製品、自動車部品、および建築材料などの種々の用途に用いられており、樹脂材料に要求される特性も多様化しつつある。中でも、樹脂材料は比較的易燃焼性であることから、電気電子部品などに用いられる樹脂材料には、難燃性が要求される。それにより、樹脂材料に難燃剤を添加して樹脂を難燃化する方法が検討されている。
樹脂を難燃化する方法として、臭素化ポリスチレンなどに代表されるハロゲン系難燃剤と、三酸化アンチモンなどに代表されるアンチモン系難燃剤とを添加する方法が知られている。しかしながら、燃焼時に有毒なガスが発生する懸念があることから、ハロゲン系難燃剤を含有する樹脂材料に対する規制が厳しく、非ハロゲン系難燃剤の使用が検討されている。
非ハロゲン系難燃剤を用いて樹脂を難燃化する方法として、金属水酸化物やリン化合物を添加する方法が知られている。金属水酸化物を添加する方法では、多量に金属水酸化物を添加することが必要なことから、樹脂自体の物性を低下させる問題がある。リン化合物を添加する方法としては、赤燐や有機(縮合)リン酸エステル化合物を添加する方法が知られている。赤燐は、乾燥中や成形中に有毒性のホスフィンガスを発生することから、使用方法や適用用途が制限される問題がある。比較的低分子量の有機(縮合)リン酸エステルは、揮発性、昇華性、耐熱性が不十分であり、また樹脂組成物を高温下で長時間使用すると当該リン酸エステルがブリードアウトし、難燃性が低下するという問題がある。そのなかで、ホスフィン酸塩化合物の利用が注目されている(特許文献1〜3を参照)。
一方、電気電子部品などを構成する樹脂材料として、耐薬品性に優れ、良好な射出流動特性を有するポリアミド樹脂が広く使用されている。一般に、ポリアミド樹脂としては、6ナイロン、66ナイロンなどの脂肪族ポリアミドが用いられる。これらの脂肪族ポリアミドは、比較的安価かつ良好な成形性を有するが、リフローはんだ工程のような高温に晒されるコネクターのような表面実装部品を製造するための原料としては十分な耐熱性を有していない。
このような背景から、高い耐熱性を有する脂肪族ポリアミドとして、46ナイロンが検討されている。しかしながら、吸水率が高いことに伴う寸法安定性の問題と、リフローはんだ工程での加熱によってブリスター、いわゆる膨れが発生するなどの問題があった。最近では、環境問題の観点もあり、鉛フリーはんだを使用した表面実装方式に大半が移行しつつあり、46ナイロンの使用はますます厳しくなっている。
これに対して、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとから誘導される半芳香族ポリアミドは、46ナイロンなどの脂肪族ポリアミドに比べて、高い耐熱性と低い吸水性とを有しつつ;ポリアミドの特徴である高い靱性を有する。そのような半芳香族ポリアミドとしては、ノナンジアミンやデカンジアミンを原料とするPA9T、PA10Tなどが知られている。
特表2006−522842号公報 特開2005−036231号公報 特表2007−507595号公報
ところで、近年では、電気電子部品として薄肉小型で狭ピッチの成形品を製造することが多くなっている。そのような薄肉小型成形品を得ようとすると、薄肉部の結晶化度が通常部の結晶化度よりも低くなる傾向があり、薄肉部で吸水しやすく、ブリスターが著しく発生しやすい。従って、薄肉小型成形品を得るためには、これまで以上にブリスターを抑制することが求められる。
しかしながら、ノナンジアミンやデカンジアミンを原料とするPA9T、PA10Tなどの半芳香族ポリアミドは、ブリスターの抑制にはある程度効果を有しうるが、比較的剛直な構造を有することから、薄肉小型成形品を得る際の射出流動性や靱性などの機械特性が低下する恐れがある。従って、薄肉小型成形品としたときに、ブリスターの発生を低減でき、かつ高い機械特性を有することが求められる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ブリスターの発生が低減され、かつ機械特性の優れた成形品が得られる難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
[1] 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が270〜340℃のポリアミド樹脂(A)30〜70質量%と、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)を1.5〜4.9質量%と、難燃剤(C)1.5〜20質量%と、繊維状充填材(D)10〜50質量%と、を含む(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100質量%である)、難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[2] 前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)は、エチレン・メタクリル酸共重合体である、[1]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[3] 前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の、FT−IR測定により求められる酸含有量が、3〜20質量%である、[1]または[2]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[4] 前記ポリアミド樹脂(A)が、多官能カルボン酸成分単位の合計量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族多官能カルボン酸成分単位を0〜70モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族多官能カルボン酸成分単位を0〜70モル%を含む多官能カルボン酸成分単位と、多官能アミン酸成分単位の合計量100モル%に対して、炭素原子数4〜13の脂肪族多官能アミン成分単位および/または炭素原子数4〜13の脂環族多官能アミン成分単位を30〜100モル%含む多官能アミン酸成分単位とを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[5] 前記ポリアミド樹脂(A)が、多官能カルボン酸成分単位の合計量100モル%に対して、テレフタル酸由来の構造単位40〜80モル%、およびアジピン酸由来の構造単位20〜60モル%からなる多官能カルボン酸成分単位と、多官能アミン酸成分単位の合計量100モル%に対して、ヘキサメチレンジアミン由来の構造単位を80〜100モル%含む多官能アミン酸成分単位とを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[6] 前記難燃剤(C)が、ホスフィン酸塩化合物(C−1)および亜鉛化合物(C−2)の少なくとも一方を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[7] 前記ホスフィン酸塩化合物(C−1)が、式(I)のホスフィン酸塩化合物、式(II)のビスホスフィン酸塩化合物、およびこれらのポリマーからなる群より選ばれる一以上である、[6]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
Figure 2016050247
[式中、
およびRは、直鎖状のまたは枝分かれしたC1−C6アルキルおよび/またはアリールであり、互いに同じであるかまたは異なってよく;
は、直鎖状のまたは枝分かれしたC1−C10アルキレン、C6−C10アリーレン、C6−C10アルキルアリーレンまたはC6−C10アリールアルキレンであり;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化窒素塩基であり;
mは1〜4であり;
nは1〜4であり;
xは1〜4である]
[8] 前記亜鉛化合物(C−2)が、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、硫化亜鉛、ステアリン酸亜鉛およびモンタン酸亜鉛からなる群より選ばれる一以上である、[6]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[9] 前記亜鉛化合物(C−2)が、硼酸亜鉛である、[6]に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
[11] 電気電子用部品である、[10]に記載の成形体。
本発明によれば、ブリスターの発生が低減され、かつ成形品の機械特性の優れた難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
本願の実施例および比較例にて実施した、リフロー耐熱性試験のリフロー工程の温度と時間との関係を示す図である。
本発明者らは、酸含有量が一定以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)と難燃剤(C)との組み合わせを含むポリアミド樹脂組成物は、薄肉小型に成形しても、高いブリスター耐性と高い機械特性とを両立しうることを見出した。
この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。即ち、ポリアミド樹脂組成物に含まれる難燃剤(C)は、例えばホスフィン酸塩(C−1)や亜鉛化合物(C−2)などの金属化合物でありうる。これらの金属化合物が、ポリアミド樹脂組成物のコンパウンド時に、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)が有するカルボキシル基と作用して、金属イオンまたは金属イオンクラスターを介した分子間イオン結合を形成し、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)のイオン架橋が生じやすい。そして、このイオン架橋に、繊維状充填材(D)などが取り込まれたり、その付近に凝集したりすることで、より強固なイオンクラスターが形成されると考えられる。それにより、ポリアミド樹脂組成物の見かけ上の結晶化度が高まり、成形品の吸水率を低くし、ブリスターを良好に抑制できると考えられる。また、そのような成形品は、靱性などの機械特性も高まると考えられる。
このように、上記ポリアミド樹脂組成物は高いブリスター耐性と機械特性とを有するので、例えばポリアミド樹脂(A)中の脂肪族カルボン酸成分単位の含有割合を一定以上としうる。それにより、例えば芳香族カルボン酸成分単位の含有割合が多いポリアミド樹脂(例えば9Tなど)を用いたり、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)を添加したりすることによる、ポリアミド樹脂組成物の流動性の低下もさらに抑制しうると考えられる。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
1.難燃性ポリアミド樹脂組成物
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)と、難燃剤(C)と、繊維状充填材(D)とを含む。
1−1.ポリアミド樹脂(A)
ポリアミド樹脂(A)は、リフローはんだ工程に耐えうるポリアミド樹脂であれば特に制限はないが、多官能カルボン酸成分単位(a−1)と、多官能アミン成分単位(a−2)とを含む構造が好ましい。
[多官能カルボン酸成分単位(a−1)]
ポリアミド樹脂(A)を構成する多官能カルボン酸成分単位(a−1)は、多官能カルボン酸成分単位(a−1)の合計量に対して、テレフタル酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族多官能カルボン酸成分単位0〜70モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族多官能カルボン酸成分単位0〜70モル%を有する。多官能カルボン酸成分単位の合計を100モル%とする。
テレフタル酸成分単位は、テレフタル酸またはそのエステル(炭素数1〜4のアルキルエステル)から誘導される成分単位であり、好ましくはテレフタル酸である。
テレフタル酸以外の芳香族多官能カルボン酸成分単位としては、例えばイソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられ;これらのなかで特に、イソフタル酸から誘導される単位が好ましい。これらは単独でも2種類以上組み合わせても構わない。
脂肪族多官能カルボン酸成分単位は、炭素原子数が4〜20、好ましくは4〜12、さらに好ましくは6〜10の脂肪族多官能カルボン酸化合物から誘導される単位である。このような化合物の例としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などが挙げられる。この中でも、アジピン酸が機械特性向上の観点で特に好ましい。
3官能以上の多官能カルボン酸化合物を使用する場合、3官能以上の多官能カルボン酸化合物は樹脂がゲル化しないような量に留めるべきであり、具体的には多官能カルボン酸成分単位(a−1)の合計100モル%中10モル%以下にすることが好ましい。
多官能カルボン酸成分単位(a−1)の合計量に対して、テレフタル酸成分単位は、40〜100モル%、好ましくは40〜80モル%、より好ましくは50〜80モル%の量で含有されうる。テレフタル酸以外の芳香族多官能カルボン酸成分単位および/または炭素原子数4〜20の脂肪族多官能カルボン酸成分単位;好ましくは炭素原子数4〜20の脂肪族多官能カルボン酸成分単位は、0〜60モル%、好ましくは20〜60モル%、より好ましくは20〜50モル%の量で含有されうる。芳香族多官能カルボン酸成分、特にテレフタル酸の含有率が増大すると、吸湿量が低下し、リフロー耐熱性が向上する傾向にある。特に、鉛フリーはんだを使用したリフローはんだ工程において使用される難燃性ポリアミド樹脂組成物のポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸成分単位を55モル%以上、好ましくは60モル%以上含むことが好ましい。
[多官能アミン成分単位(a−2)]
ポリアミド樹脂(A)を構成する多官能アミン成分単位(a−2)は、炭素原子数4〜25、好ましくは炭素原子数4〜13、より好ましくは炭素原子数が4〜10の、脂肪族多官能アミン成分単位および/または脂環族多官能アミン成分単位を含む。脂肪族多官能アミン成分単位は、直鎖および/または側鎖を有しうる。
直鎖脂肪族多官能アミン成分単位の具体的な例としては、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンが挙げられる。この中でも、1,6-ジアミノヘキサンが好ましい。
側鎖を有する直鎖脂肪族多官能アミン成分単位の具体的な例としては、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、2-メチル-1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,10-ジアミノデカン、2-メチル-1,11-ジアミノウンデカン等が挙げられる。この中では、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンが好ましい。
脂環族多官能アミン成分単位としては、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−アミノシクロヘキシル)-1,4-シクロヘキサン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,3-シクロヘキサン等の脂環族ジアミンから誘導される成分単位を挙げることができる。これらの脂環族ジアミン成分単位のなかでは、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンが好ましく;特に、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミンから誘導される成分単位が好ましい。
3官能以上の多官能アミン化合物を使用する場合は、樹脂がゲル化しないような添加量、具体的には多官能アミン成分単位(a−2)の合計100モル%中10モル%以下にすることが好ましい。
なかでも、多官能アミン成分単位(a−2)は、直鎖脂肪族多官能アミン成分単位を含むことが好ましく、直鎖脂肪族多官能アミン成分単位のみからなることがより好ましい。具体的には、多官能アミン成分単位(a−2)の合計量に対して、直鎖および/または側鎖を有する炭素原子数4〜13の脂肪族多官能アミン成分単位が30〜100モル、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%の量で含有されうる。直鎖脂肪族多官能アミン成分の含有割合が一定以上であると、特にリフロー耐熱性が向上する傾向にあるので好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、温度25℃、96.5%硫酸中で測定した極限粘度[η]が、0.5〜1.25dl/gであり、より好ましくは0.75〜1.15dl/gであり、更に好ましくは0.75〜1.05dl/gである。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]がこの範囲にある場合、流動性、リフロー耐熱性、高靭性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度は、後述する実施例におけるポリアミド樹脂(A)の極限粘度の測定方法と同様に測定されうる。
ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]を上記範囲のように調整するためには、例えば反応系内に分子量調整剤等を配合してジカルボン酸とジアミンとを反応させることが好ましい。分子量調整剤としては、モノカルボン酸およびモノアミンを使用することができる。
分子量調整剤として使用されるモノカルボン酸の例としては、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸を挙げることができる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。例えば、脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸を挙げることができる。また、芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸を挙げることができ、脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロヘキサンカルボン酸を挙げることができる。
分子量調整剤は、ジカルボン酸とジアミンとを反応させてポリアミドとする反応系に添加され、ジカルボン酸の合計量1モルに対して、通常は、0〜0.07モル、好ましくは0〜0.05モルの量で添加されうる。このような量で分子量調整剤を使用することで、少なくともその一部がポリアミド樹脂中に取り込まれ、ポリアミド樹脂の分子量、即ち極限粘度[η]が所望の範囲内に調整される。
ポリアミド樹脂(A)は、その末端アミノ基含量が、10〜400マイクロ当量であることが好ましく、10〜200マイクロ当量であることがより好ましく、10〜100マイクロ当量であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基を10マイクロ当量以上とすることで、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)との相溶性や樹脂界面の強度を高めうる。さらに、ポリアミド樹脂(A)と繊維状充填材(D)との密着性も高めうるため、耐衝撃性などの機械物性も向上する傾向がある。また、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量を400マイクロ当量以下とすることで、吸水率が低く抑えられ、また長期耐熱性に優れる傾向がある。
ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基含量は、以下の方法にて測定されうる。即ち、ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解し、メタノールを2mL混合し、試料溶液とする。この溶液に、チモールブルーを指示薬とし、0.01規定のHCl水溶液を使用した滴定を実施し、末端アミノ基含量([NH]、単位:μ当量/g)を測定する。
ポリアミド樹脂(A)は、結晶性であるため融点を有する。ポリアミド樹脂(A)の示差走査熱量測定(DSC)より求められる融点は、270〜340℃が好ましく、300〜340℃がより好ましく、更に好ましくは310〜330℃である。融点がこのような範囲にあるポリアミド樹脂(A)は、特に優れた耐熱性を有する。また、融点が270℃以上、さらに310℃以上、特に310〜330℃であると、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を、鉛フリーリフローはんだ工程、特に高融点を有する鉛フリーはんだを使用したはんだ工程に使用しても、十分な耐熱性が奏される。一方、融点が340℃以下であると、ポリアミドの分解点である350℃より低い融点となるので、成形時に分解ガスの発生、成形品の変色等を生じることがなく、十分な熱安定性を得ることができる。
ポリアミド樹脂(A)の、示差走査熱量測定(DSC)より求められるガラス転移温度(Tg)は、65〜150℃の範囲であることが好ましく、75〜140℃の範囲であることがより好ましい。難燃性ポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂(A)として、ガラス転移温度が上記の範囲内のものを用いると、より機械強度に優れたポリアミド樹脂組成物が得られるので好ましい。なお、難燃性ポリアミド樹脂組成物を同様に示差走査熱量測定(DSC)よりガラス転移温度(Tg)を求めた場合においても、ポリアミド樹脂(A)に由来するガラス転移温度(Tg)を得ることができる。
ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、後述する実施例におけるポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)の測定方法と同様にして測定されうる。
ポリアミド樹脂(A)は、従来のポリアミド樹脂と同様に公知の製造方法に基づいて製造することができる。例えば、ジカルボン酸とジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。より具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与することにより重縮合させて製造することができる。
難燃性ポリアミド樹脂組成物における、ポリアミド樹脂(A)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して、30〜70質量%、好ましくは45〜60質量%でありうる。ポリアミド樹脂(A)の含有量が30質量%以上であると、十分な靭性を得ることができ;70質量%以下であると、十分な難燃剤を含むことができ、所定の難燃性規格を満たす樹脂組成物を得ることができる。
1−2.エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)を含む。これらのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)は、ポリアミド樹脂組成物に靱性などの機械特性を付与しうるだけでなく、後述する難燃剤(C)と作用して高いブリスター耐性を付与しうる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)は、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体でありうる。エチレンと共重合される不飽和カルボン酸は、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸モノエステルなどでありうる。不飽和モノカルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸などが含まれ;不飽和ジカルボン酸の例には、マレイン酸、フマル酸などが含まれ;不飽和ジカルボン酸モノエステルの例には、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソブチルなどが含まれる。これらの中でも、アクリル酸もしくはメタクリル酸が好ましく、特にメタクリル酸が好ましい。
エチレン・不飽和カルボン共重合体(B)における、不飽和カルボン酸由来の構造単位の含有割合は、酸含有量が後述する範囲となればよく、当該共重合体に対して2〜20質量%、好ましくは2〜16質量%としうる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)は、エチレンと不飽和カルボン酸との二元共重合体だけでなく、エチレンと不飽和カルボン酸と他の単量体との多元共重合体であってもよい。他の単量体は、ビニルモノマーなどでありうる。ビニルモノマーの例には、酢酸ビニルのようなビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステルなどが含まれる。ただし、これらの他の単量体を多く含みすぎると、融点が低く、耐熱性を損なうことがある。そのため、他の単量体由来の構造単位の含有割合は、共重合体に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下としうる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の酸含有量(不飽和カルボン酸のカルボキシル基の含有量)は、3〜20質量%であることが好ましく、4〜15質量%であることがより好ましい。酸含有量が一定以上であると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)のカルボキシル基と、後述する難燃剤(C)としての金属化合物とがイオンクラスターを介して効率的に分子間イオン結合を形成しやすく、ブリスター耐性を発現しやすい。一方、酸含有量が一定以下であると、ポリアミド樹脂組成物中のカルボキシル基の含有量が高まりすぎないので、ポリアミド樹脂(A)との間の反応によるゲル化(架橋)が生じにくい。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の酸含有量は、FT−IR測定により測定することができる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の融点は、60〜120℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。融点が60℃以上であると、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性が損なわれにくい。融点が120℃以下であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融時の粘度が過剰に高くなりにくく、成形加工性を損ないにくい。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の融点は、JIS K 7121:1987に準拠して測定される。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、成形性が損なわれない限り、特に限定されないが、0.5〜1000g/10分(dl/g)、好ましくは1〜500g/10分(dl/g)としうる。
難燃性ポリアミド樹脂組成物における、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して、1.5〜4.9質量%、好ましくは1.8〜4.0質量%でありうる。(B)の含有量が1.5質量%以上であると、当該樹脂組成物に十分な靱性を付与しやすい。また、当該樹脂組成物中の酸含有量を一定以上としうるので、(B)と(C)とが分子間イオン結合を形成しやすく、当該樹脂組成物のブリスターを良好に抑制しやすい。一方、(B)の含有量が4.9質量%以下であると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)に起因する難燃性の低下を抑制しやすい。
難燃性ポリアミド樹脂組成物における、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の含有量は、難燃剤(C)と金属イオンクラスターを良好に形成し、ブリスター耐性を効率的に高める観点などから、(A)成分に対して1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
1−3.難燃剤(C)
難燃剤(C)は、分子中にハロゲン基を有さない難燃剤であり、樹脂の燃焼性を低下させる目的で添加される。難燃剤(C)は、ホスフィン酸塩化合物(C−1)と亜鉛化合物(C−2)の少なくとも一方;好ましくは亜鉛化合物(C−2)を含むことが好ましい。
[ホスフィン酸塩化合物(C−1)]
ホスフィン酸塩化合物(C−1)は、より好ましくはホスフィン酸金属塩化合物である。具体的には、以下の式(I)及び/又は式(II)で表される化合物が代表例である。
Figure 2016050247
式(I)および式(II)において、RおよびRは、互いに同じかまたは異なり、直鎖状のまたは枝分かれしたC−Cアルキルおよび/またはアリールである。Rは、直鎖状のまたは枝分かれしたC−C10アルキレン、C−C10アリーレン、C−C10アルキルアリーレンまたはC−C10アリールアルキレンである。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化窒素塩基である。m、n、およびxは、それぞれ独立して1〜4である。
ホスフィン酸塩化合物の具体的化合物としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。好ましくはジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛であり;さらに好ましくはジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
本発明で使用されるホスフィン酸塩化合物を含む難燃剤(C)の代表例としては、例えばクラリアントジャパン社製のEXOLIT OP1230やOP930などが挙げられる。
[亜鉛化合物(C−2)]
亜鉛化合物(C−2)は、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、硫化亜鉛、ステアリン酸亜鉛およびモンタン酸亜鉛からなる群より選ばれる一以上であることが好ましい。なかでも、ブリスターを高度に抑制しうることから、硼酸亜鉛が好ましい。
難燃性ポリアミド樹脂組成物における難燃剤(C)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して、1.5〜20質量%、好ましくは5〜18質量%、より好ましくは10〜18質量%でありうる。難燃剤(C)の含有量が1.5質量%以上であると、十分な難燃性が得られやすく;20質量%以下であると、成形時の当該樹脂組成物の流動性を損ないにくい。
難燃剤(C)中の、ホスフィン酸塩化合物(C−1)と亜鉛化合物(C−2)の合計含有割合は、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%でありうる。ホスフィン酸塩化合物(C−1)と亜鉛化合物(C−2)との含有比率は、(C−1):(C−2)=95:5〜70:30(質量比)であることが好ましく、90:10〜75:25(質量比)であることがより好ましい。亜鉛化合物(C−2)が一定以上であると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)が、亜鉛化合物(C−2)を介して分子間イオン結合を形成しやすく、当該樹脂組成物のブリスターを良好に抑制しうる。
亜鉛化合物(C−2)の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)と金属イオンクラスターを良好に形成し、ブリスター耐性を高めやすくする観点から、(B)の総量に対して、30〜130質量%であることが好ましく、40〜110質量%であることがより好ましい。
1−4.繊維状充填材(D)
繊維状充填材(D)は、ポリアミド樹脂組成物の成形性を向上させるとともに、その成形品の引張り強度、曲げ強度、曲げ弾性率等の機械的特性および熱変形温度などの耐熱特性を向上させうる。繊維状充填材(D)の例には、ガラス繊維(グラスファイバー)、チタン酸カリウム繊維、金属被覆ガラス繊維、セラミックス繊維、ワラストナイト、炭素繊維、金属炭化物繊維、金属硬化物繊維、アスベスト繊維およびホウ素繊維などの無機繊維や;アラミド繊維、炭素繊維のような有機繊維が挙げられる。なかでも、成形品の機械的強度を顕著に向上させうることなどから、ガラス繊維が好ましい。
繊維状充填材(D)の平均長さは、通常は0.1〜20mm、好ましくは0.2〜6mmの範囲にある。さらに、繊維状充填材(D)のアスペクト比(L(ガラス繊維の平均長さ)/D(ガラス繊維の平均外径))は、通常は10〜5000、好ましくは200〜3000の範囲にある。
繊維状充填材(D)の平均長さやアスペクト比は、難燃性ポリイミド樹脂組成物またはその成形体の一部を、アルゴンイオンビーム加工にて切り出して、走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)により観察して求めることができる。
さらに、成形品の反りを防止する目的で、繊維状充填材(D)の繊維断面の異径比(長径と短径の比)が1より大きい、好ましくは異径比が1.5〜6.0の繊維状物質を用いることが有効である。
繊維状充填材(D)は、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などの表面処理剤で処理して使用されうる。たとえばビニルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
繊維状充填材(D)は、集束剤が塗布されていてもよい。集束剤としては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルに代表されるアクリル系化合物、無水マレイン酸などのメタアクリル酸以外の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物、アミン系化合物が挙げられる。またこれらを組み合わせて強化材とすることもできる。好ましい組合せは、アクリル系化合物/カルボン酸化合物、ウレタン系化合物/カルボン酸化合物、ウレタン系化合物/アミン系化合物の組合せが挙げられる。上記表面処理剤を、集束剤と併用してもよく、併用により本発明の組成物中の繊維状充填材と、組成物中の他の成分との結合性が向上し、外観および強度特性が向上する。
難燃性ポリアミド樹脂組成物における、繊維状充填材(D)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の総量に対して、10〜50質量%、好ましくは20〜45質量%でありうる。繊維状充填材(D)の含有量が10質量%以上であると、成形品に良好な機械的強度を付与しやすく;50質量%以下であると、成形時の流動性を損ないにくい。
1−5.その他成分(E)
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、上記各成分に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤をさらに含んでもよい。他の添加剤の例には、難燃助剤、金属水酸化物または金属酸化物、他の充填材、流動性向上剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、染料、無機あるいは有機充填剤、核剤、繊維補強剤、カーボンブラック、タルク、クレー、マイカ等無機化合物などが挙げられる。
[難燃助剤]
難燃助剤としては、少量の難燃剤添加量で高い難燃効果を発揮するために有効である。具体的には、リン酸メラミン化合物に代表されるリン/窒素系化合物、メラミン化合物およびその縮合体、メラミンシアヌレートに代表されるような窒素系化合物、ホスファゼン化合物などでありうる。リン/窒素系化合物や窒素系化合物は、加工温度が270℃以上となるような高温下では、樹脂および難燃剤の分解が促進され、熱安定性に劣る場合があることから、ホスファゼン化合物が好ましい。
難燃助剤は、例えば式(1)で示される環状ホスファゼン化合物および/または式(2)で示される直鎖状ホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種であってもよい。これらのホスファゼン化合物の含有量は、難燃性ポリアミド樹脂組成物中に、0.01〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
Figure 2016050247
[式中mは3〜25の整数を示す。Phはフェニル基を示す。]
Figure 2016050247
[式中Xは、基−N=P(OPh)または基−N=P(O)OPhを示し、Yは基−P(OPh)または基−P(O)(OPh)を示す。nは、3〜1000の整数を示す。Phはフェニル基を示す。]
[金属水酸化物または金属酸化物]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、金属水酸化物または金属酸化物、好ましくは金属酸化物をさらに含有してもよい。金属水酸化物および金属酸化物は、難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造時に使用する押出機や、該組成物を用いて成形体を得るために使用する成形機などで用いられる装置のスクリュー、シリンダー、ダイス、ノズルなどの鋼材の腐食磨耗を抑制するのに有効である。特に、加工温度が270℃以上となるような高温下の条件において、高い抑制効果を奏する。
本発明で用いられる金属水酸化物および金属酸化物の好ましい金属元素としては、鉄、マグネシウム、亜鉛が挙げられ、より好ましくは亜鉛である。金属水酸化物または金属酸化物の具体例としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、錫酸亜鉛などが挙げられ、好ましくは酸化亜鉛である。金属水酸化物および金属酸化物は、単独または複数の化合物を併用することができる。
金属水酸化物および金属酸化物の平均粒子径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.01〜3μmでありうる。
難燃性ポリアミド樹脂組成物における、金属水酸化物および金属酸化物の合計量は、当該樹脂組成物全体に対して0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%の割合で用いることができる。上記化合物の含有量が一定以上であると、十分な腐食磨耗抑制効果が得られやすく;一定以下であると、難燃性、リフロー耐熱性、および成形時の熱安定性が低下する傾向にある。
[他の充填材]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で繊維状充填材(D)以外の他の充填材をさらに含有してもよい。そのような充填材は、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状などの形状を有する種々の無機充填材を使用することができ、単独あるいは複数種類を組み合わせて使用することができる。さらに詳述すると、シリカ、シリカアルミナ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、ワラストナイト、ケイソウ土、クレー、カオリン、球状ガラス、マイカ、セッコウ、ベンガラなどの粉状あるいは板状の無機化合物;チタン酸カリウムなどの針状の無機化合物として挙げられる。
[流動性向上剤]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、射出成形時における樹脂の流動性を向上させる流動性向上剤として、脂肪酸金属塩をさらに含有してもよい。脂肪酸金属塩は、薄肉小型電気電子部品の成形などの、高い流動性が求められる成形をする場合に有効である。
脂肪酸金属塩は、公知の化合物であってよい。脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸の例には、モンタン酸、ベヘン酸、ステアリン酸などが含まれる。脂肪酸金属塩を構成する金属塩の例には、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩などが含まれる。脂肪酸金属塩の好ましい例には、成形時の流動性を高める観点から、モンタン酸またはベヘン酸の、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩が含まれ、より好ましい例にはモンタン酸カルシウムが含まれる。
[他の重合体]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で他の重合体をさらに含有してもよい。このような他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリオレフィンエラストマーなどのポリオレフィン;ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、SEBS、テフロン(登録商標)などが挙げられる。これら以外にも、ポリオレフィンの変性体等が挙げられる。ポリオレフィンの変性体は、例えばカルボキシル基、酸無水物基、アミノ基等で変性されたポリオレフィンである。ポリオレフィンの変性体の例には、変性ポリエチレン、変性SEBSなどの変性芳香族ビニル化合物・共役ジエン共重合体またはその水素化物、変性エチレン・プロピレン共重合体などの変性ポリオレフィンエラストマーなどが挙げられる。これらの成分は、UL94V−0規格を満たさないことが好ましい。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物に含まれる(A)〜(D)の各成分の合計100質量%に対し、他の重合体の含有量は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
1−6.物性
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、良好な射出流動性を有しうる。具体的には、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の、後述する流動性の評価方法に従って測定される流動長が、30〜90mmであることが好ましく、40mm〜70mmであることがより好ましい。
難燃性ポリアミド樹脂組成物の流動性を一定以下とするためには、例えばポリアミド樹脂(A)中の脂肪族多官能カルボン酸成分由来の構造単位の含有量を一定以上としたり、当該樹脂組成物中の(B)成分や(C)成分の含有量をそれぞれ一定以下としたりすることが好ましい。
このように、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ハロゲンフリーである(すなわち、塩素、臭素の含有率が低い)だけでなく、高い温度条件下でも成形時の良好な熱安定性を有する。本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、特に電気電子部品用途に好適に使用可能である。
2.難燃性ポリアミド樹脂組成物の調製方法
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、前記の各成分を公知の樹脂混練方法を用いて製造することができる。例えば前記の各成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法;あるいは、混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。
3.成形体および電子電気部品材料
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法などの公知の成形法を利用することにより、各種成形体に成形することができる。特に、射出成形法が好適で、窒素、アルゴン、ヘリウムに代表される不活性ガスの雰囲気下、具体的には例えば0.1〜10ml/分の流量下で成形することができる。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形体は、良好な難燃性を有しうる。具体的には、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、UL94規格に準じた燃焼性評価がV−0;より具体的には、0.8mm以下の厚みの成形体の、UL94規格に準じた燃焼性評価がV−0であることが好ましい。
また、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形体は、高いブリスター耐性と高い機械特性とを有しうる。
ブリスター耐性の指標となる、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形体の温度40℃、相対湿度95%で96時間吸湿させた後のリフロー耐熱温度は、245〜280℃であることが好ましく、より好ましくは250〜280℃、さらに好ましくは255〜280℃、特に好ましくは260〜270℃である。リフロー耐熱温度は、後述するリフロー耐熱温度の測定方法に従って測定されうる。
ブリスターの指標となるリフロー耐熱温度を一定以上とするためには、例えば(B)成分の含有量や酸含有量を一定以上としたり、(C)成分として(C−2)亜鉛化合物を選択したりすることが好ましい。
また、機械特性、即ち靭性の指標となる破壊エネルギーは40〜70mJであることが好ましく、より好ましくは50〜70mJ、さらに好ましくは60〜70mJである。曲げ強度は、200〜250MPaであることが好ましく、より好ましくは210〜240MPa、さらに好ましくは215〜240MPaである。機械特性(破壊エネルギーや曲げ強度など)は、後述する薄肉曲げ試験法に従って測定されうる。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形体は、高い機械特性と、高いリフロー耐熱性とを有しうる。したがって、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、これらの特性が要求される分野、あるいは精密成形分野の用途に用いることができる。具体的には、自動車用電装部品、電流遮断器、コネクター、スイッチ、ジャック、プラグ、ブレーカー、LED反射材料などの電気電子部品、コイルボビン、ハウジング等の各種成形体が挙げられる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
実施例および比較例において用いたポリアミド樹脂(A)、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)、難燃剤(C)、繊維状充填材(D)、その他の成分を示す。
[ポリアミド樹脂(A)]
ポリアミド樹脂(A−1):下記合成例1で合成したポリアミド樹脂
[合成例1]
テレフタル酸1787g(10.8モル)、1,6-ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1921g(13.1モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g及び蒸留水554gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.01MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低縮合物の水分量は3600ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて220℃まで昇温した。その後、1時間反応し、室温まで降温した。得られたポリアミドの極限粘度[η]は0.48dl/gであった。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、ポリアミド樹脂を調製した。得られたポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは310℃、ガラス転移温度は85℃であった。
ポリアミド樹脂(A−2):下記合成例2で合成したポリアミド樹脂
[合成例2]
合成例1の原料をテレフタル酸1787g(10.8モル)、1,6-ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1921g(13.1モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、ポリアミド樹脂を調製した。得られたポリアミド樹脂の極限粘度[η]は0.8dl/g、融点Tmは320℃、ガラス転移温度は95℃であった。
ポリアミド樹脂(A−1)および(A−2)の極限粘度、融点、およびガラス転移温度は、それぞれ後述する方法で測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
[極限粘度[η]]
JIS K6810−1977に準拠して、ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定した。測定結果から、以下の式に基づいてポリアミド樹脂の極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
ηSP=(t−t0)/t0
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度、C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
[融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)]
ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。具体的には、約5mgのポリアミド樹脂(A)を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで330℃まで加熱した。当該樹脂を完全融解させるために、330℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで330℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)とし;ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。
Figure 2016050247
[エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)]
(エチレン・メタクリル酸共重合体(B−1))
商品名:ニュクレルAN42115C(商標)、三井・デュポンポリケミカル社製、密度930kg/m、融点95℃、酸含有量5質量%、MFR33g/10分
(エチレン・メタクリル酸共重合体(B−2))
商品名:ニュクレルN1108C(商標)、三井・デュポンポリケミカル社製、密度940kg/m、融点98℃、酸含有量11質量%、MFR8g/10分
(エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー(R−1))
商品名:ハイミラン1554(商標)、三井・デュポンポリケミカル社製、密度950kg/m、融点97℃、イオン架橋品、金属塩:亜鉛系
(無水マレイン酸グラフト変性エチレン−ブテン共重合体(R−2))
商品名:タフマーMH5040、三井化学社製、酸無水物基の含有量200μeq/g
酸含有量は、FT−IR法で測定される値とした。密度は、JIS K 7112:1999に準拠して測定される値とした。融点は、JIS K 7121:1987に準拠して測定される値とした。MFRは、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定される値とした。
[難燃剤(C)]
(C−1):クラリアントジャパン株式会社製、EXOLIT OP1230(ホスフィン酸塩化合物)、リン含有量:23.8質量%
(C−2):硼酸亜鉛(U.S.Borax社製、Firebrake 500)
[繊維状充填材(D)]
ガラス繊維:オーウェンスコーニングジャパン(株)製、FT756D、ガラス繊維長3mm、アスペクト比300
[その他成分(E)]
酸化亜鉛(金属酸化物)、平均粒子径0.02μm
タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#100ハクド95)
モンタン酸カルシウム(クラリアントジャパン株式会社製、CAV102)
[実施例1〜6]および[比較例1〜4]
上記各成分を、表2に示すような量比で混合し、温度320℃に設定した二軸ベント付押出機に装入し、溶融混練してペレット状組成物を得た。次いで、得られたポリアミド樹脂組成物について、以下の評価を行った。
[薄肉曲げ試験]
得られたポリアミド樹脂組成物を、以下の条件で射出成形して長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を調製した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:各ポリアミド樹脂の融点+10℃
金型温度:100℃
調製した試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行った。曲げ強度、歪量および弾性率から、その試験片を破壊するのに要するエネルギー(靭性)を求めた。
[流動長試験(流動性)]
得られたポリアミド樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を使用して、以下の条件で射出し、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm
シリンダー設定温度:各ポリアミド樹脂の融点+10℃
金型温度:120℃
[リフロー耐熱性試験]
得られたポリアミド樹脂組成物を、以下の条件で射出成形して、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を調製した。調製した試験片を温度40℃、相対湿度95%で96時間調湿した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:各ポリアミド樹脂の融点+10℃
金型温度:100℃
上記調湿処理を行った試験片を、厚み1mmのガラスエポキシ基板上に載置した。この基板上に温度センサーを設置した。試験片を載置したガラスエポキシ基板を、エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)にセットし、図1に示す温度プロファイルのリフロー工程を行った。図1に示されるように、所定の速度で温度230℃まで昇温し;次いで、20秒間で所定の設定温度(aは270℃、bは265℃、cは260℃、dは255℃、eは235℃)まで加熱したのち;230℃まで降温した。このとき、試験片が溶融せず、且つ表面にブリスターが発生しない設定温度の最大値を求め、この設定温度の最大値をリフロー耐熱温度とした。
一般的に、吸湿した試験片のリフロー耐熱温度は、絶乾状態のそれと比較して劣る傾向にある。
[燃焼性試験]
得られたポリアミド樹脂組成物を、以下の条件で射出成形して、1/32インチ×1/2×5インチの試験片を調製した。調製した試験片を用いて、UL94規格(1991年6月18日付のUL Test No.UL94)に準拠して、垂直燃焼試験を行い、難燃性を評価した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:各ポリアミド樹脂の融点+10℃
金型温度:120℃
実施例1〜6および比較例1〜4の評価結果を表2に示す。
Figure 2016050247
表2に示されるように、実施例1〜6の組成物は、比較例1〜4の組成物よりも、機械的強度が高く、かつブリスター耐性の指標であるリフロー耐熱温度が高いことがわかる。
具体的には、比較例1の組成物は、実施例3〜5の組成物よりもリフロー耐熱温度が低下している。これは、エチレン・メタクリル酸共重合体(B)と難燃剤(C)との相互作用が生じなかったためと考えられる。
比較例2の組成物は、実施例3〜6の組成物よりもリフロー耐熱温度が低く、かつ流動性が低下している。これは、エチレン・メタクリル酸共重合体(B)が多すぎると、酸性基も増えすぎるため、酸性基同士の結合が強すぎて流動性が低下したり;エチレン・メタクリル酸共重合体(B)自体が燃焼し易く、リフロー耐熱温度が低下したりしたためと考えられる。
比較例3および4の組成物は、実施例4の組成物よりもリフロー耐熱温度が低下している。これは、比較例3のエチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー(R−1)は、コンパウンド時に、当該アイオノマーはイオンクラスターを形成せず、イオン結合強度が弱いか;あるいはイオンクラスターを仮に形成したとしても、実施例1などのエチレン・メタクリル酸共重合体と比べて繊維状充填材が取り込まれにくく、イオンクラスターの強度が高まりにくいためであると考えられる。比較例4の無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体は、イオン架橋(イオンクラスター)を形成しないからであると考えられる。
本発明によれば、ブリスターの発生が低減され、かつ成形品の機械特性の優れた難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。

Claims (11)

  1. 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が270〜340℃のポリアミド樹脂(A)30〜70質量%と、
    エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)を1.5〜4.9質量%と、
    難燃剤(C)1.5〜20質量%と、
    繊維状充填材(D)10〜50質量%と、
    を含む(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100質量%である)、難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)は、エチレン・メタクリル酸共重合体である、請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B)の、FT−IR測定により求められる酸含有量が、3〜20質量%である、請求項1または2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記ポリアミド樹脂(A)が、
    多官能カルボン酸成分単位の合計量100モル%に対して、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族多官能カルボン酸成分単位を0〜70モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族多官能カルボン酸成分単位を0〜70モル%を含む多官能カルボン酸成分単位と、
    多官能アミン酸成分単位の合計量100モル%に対して、炭素原子数4〜13の脂肪族多官能アミン成分単位および/または炭素原子数4〜13の脂環族多官能アミン成分単位を30〜100モル%含む多官能アミン酸成分単位と
    を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミド樹脂(A)が、
    多官能カルボン酸成分単位の合計量100モル%に対して、テレフタル酸由来の構造単位40〜80モル%、およびアジピン酸由来の構造単位20〜60モル%からなる多官能カルボン酸成分単位と、
    多官能アミン酸成分単位の合計量100モル%に対して、ヘキサメチレンジアミン由来の構造単位を80〜100モル%含む多官能アミン酸成分単位と
    を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記難燃剤(C)が、ホスフィン酸塩化合物(C−1)および亜鉛化合物(C−2)の少なくとも一方を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記ホスフィン酸塩化合物(C−1)が、式(I)のホスフィン酸塩化合物、式(II)のビスホスフィン酸塩化合物、およびこれらのポリマーからなる群より選ばれる一以上である、請求項6に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
    Figure 2016050247
    [式中、
    およびRは、直鎖状のまたは枝分かれしたC1−C6アルキルおよび/またはアリールであり、互いに同じであるかまたは異なってよく;
    は、直鎖状のまたは枝分かれしたC1−C10アルキレン、C6−C10アリーレン、C6−C10アルキルアリーレンまたはC6−C10アリールアルキレンであり;
    Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化窒素塩基であり;
    mは1〜4であり;
    nは1〜4であり;
    xは1〜4である]
  8. 前記亜鉛化合物(C−2)が、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、硫化亜鉛、ステアリン酸亜鉛およびモンタン酸亜鉛からなる群より選ばれる一以上である、請求項6に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  9. 前記亜鉛化合物(C−2)が、硼酸亜鉛である、請求項6に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
  11. 電気電子用部品である、請求項10に記載の成形体。
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