JP2016050133A - イオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】乾燥条件下においても高いイオン伝導度を発揮するイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表されるプルシアンブルー型金属錯体微粒子を用いて、窒素、酸素、硫黄、リンの一種以上を含む官能基を有する基板上に形成され、50℃以上で加熱処理されたイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜。AxMA[MB(CN)6]y・zH2O …(1)(Aは陽イオン。MAは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウムの一種以上。MBは、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、銅の一種以上。xは0〜3、yは0.3〜1.5、zは0〜30。)【選択図】図1

Description

本発明は、イオン伝導体として優れた性能を有するプルシアンブルー型金属錯体薄膜と、これを用いたイオン伝導体及び電気的デバイスに関するものである。
電気的デバイスのひとつであるイオン伝導体は、燃料電池、リチウム電池等の二次電池、空気電池等の電解質や、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の電気化学的デバイスに用いられる電解質等として、幅広く用いられている。
水素−酸素燃料電池に代表される燃料電池は、その反応生成物が原理的には水のみであり、地球環境への悪影響がほとんどない発電システムとして知られている。特に、パーフルオロスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いた固体高分子電解質形燃料電池については、近年、研究、開発により高エネルギー密度、高出力化が可能となりつつあり、自動車用等の車載用電源や、家庭用電源としての実用化が大いに期待されている。
しかしながら、固体高分子電解質形燃料電池の電解質として用いられるパーフルオロスルホン酸型陽イオン交換樹脂膜は、高温での耐久性が不十分であること、フッ素系電解質は製造が困難であるため、非常に高価であること、さらに、発電中は、出力維持のために、連続して電解質膜に水や水蒸気を供給し続けなければならない、等の問題点があった。
一方で、青色顔料であるプルシアンブルー及びこれに類似した構造を持つプルシアンブルー型金属錯体は、多彩な電気化学的活性を持つことが知られており、エレクトロクロミック素子、二次電池、分子センサ、バイオセンサ、電気化学的な磁気特性制御等、幅広くその応用が検討され、そのための微粒子化や薄膜化の方法についても提案がなされている(例えば、特許文献1、非特許文献1,2)。
プルシアンブルー型金属錯体の結晶構造を図1に示す。その構造は比較的簡単で、NaCl型格子を組んだ二種類の金属原子(図1中、金属原子221(M)と金属原子224(M))の間をシアノ基(炭素原子222と窒素原子223からなる基)が三次元的に架橋した構造をとる。そして、この錯体化合物には金属原子M、Mとして、鉄原子以外にも広範な金属を利用することができ、その金属種を変えることにより、磁性、電気化学的性質や光応答性などの物性を変えることができる。結晶構造の表面部分の金属原子においては、シアノ基が配位した金属シアノサイトと、水が配位した金属アコサイトが存在する。
一般的に電気的デバイスにおけるイオン伝導体は薄膜の形態で用いられるため、プルシアンブルー型金属錯体をイオン伝導体として用いるためには、薄膜形状に成形して使用される。
このため、例えば、特許文献1では、微粒子化したプルシアンブルー型金属錯体の分散液を調製し、これをITO基板にスピンコート法で塗布して薄膜形成している。
一般的に、このような薄膜化させる材料の分散液を用いて基板上に薄膜を形成する場合、基板上に分散液を湿式製膜した後、基板上に残留した余分な分散媒や溶媒を乾燥させる必要がある。この際、基板の構造変化や薄膜体の急激な構造変化による破壊を防ぐために、乾燥はできるだけ低い温度で実施するのが望ましいとするのが当業者の技術常識であり、特許文献1においても、加熱は行われていない。
国際公開2008/081923号パンフレット
山田真実ら,「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエテイ(J. Am. Chem. Soc.)」,Vol.126,2004年,9482項 D.M.Delongchampら、「ケミストリー・オブ・マテリアル(Chem. Mater.)」,Vol.69,2007年,334項
しかしながら、従来のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、イオン伝導度が不十分であり、特に乾燥条件下でのイオン伝導度が低いために、電解質等のイオン伝導体としての商品化には到っていないのが現状である。
このため、安価に製造することができ、乾燥に強く、乾燥条件下でも十分なイオン伝導度を発揮することができ、イオン伝導体として好適に用いることができるプルシアンブルー型金属錯体薄膜の提供が強く望まれていた。
本発明は、乾燥条件下においても高いイオン伝導度を発揮し、安価に製造可能なイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜と、このイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜を用いたイオン伝導体及び電気的デバイスを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、微粒子化したプルシアブルー型金属錯体を用いて、窒素、酸素、硫黄、及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種類の元素を含む官能基を表面に有する基板上に作成した薄膜を、50℃以上の温度で加熱処理することによって、より乾燥した条件下においても、従来よりも高いイオン伝導度を示すプルシアンブルー型金属錯体薄膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を要旨とする。
[1] イオン伝導体として使用される、下記一般式(1)で表されるプルシアンブルー型金属錯体の薄膜において、該プルシアンブルー型金属錯体薄膜が、微粒子化したプルシアンブルー型金属錯体を、窒素、酸素、硫黄、及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種類の元素を含む官能基を表面に有する基板と接触させることによって形成されたものであり、さらに50℃以上の温度で加熱処理された後に、イオン伝導体として使用されることを特徴とする、イオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜。
[M(CN)・zHO …(1)
(式中、Aは陽イオンを示す。
は金属原子を示し、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。
は、金属原子を示し、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。
xは0〜3の数であり、yは0.3〜1.5の数であり、zは0〜30の数である。)
[2] [1]のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を用いたイオン伝導体。
[3] [2]のイオン伝導体を用いた電気的デバイス。
本発明のイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜によれば、より乾燥した条件下においても、より高いイオン伝導度が得られる。
しかも、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、所定の基板に対してプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液を用いて製膜した後、所定の温度で加熱することにより、安価に製造可能である。
そして本発明により、湿度65%においてイオン電導度が1×10-3S/cm以上になるプルシアンブルー型金属錯体薄膜を得ることができる。
本発明のイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜よりなる本発明のイオン伝導体は、各種電気的デバイスに有用であり、特にプロトン伝導体として、燃料電池の電解質に好ましく用いることができ、これによって発電効率等の電池性能に優れた燃料電池を実現することができる。
プルシアンブルー型金属錯体の結晶構造を模式的に示す説明図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
[プルシアンブルー型金属錯体]
本発明のイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜を構成するプルシアンブルー型金属錯体(以下、「本発明のプルシアンブルー型金属錯体」と称す場合がある。)は、下記一般式(1)で表されるものである。
[M(CN)・zHO …(1)
(式中、Aは陽イオンを示す。
は金属原子を示し、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。
は、金属原子を示し、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。
xは0〜3の数であり、yは0.3〜1.5の数であり、zは0〜30の数である。)
本発明のプルシアンブルー型金属錯体は、基本の組成式が前記一般式(1)で表されるものであればよく、さらにシアノ基(CN)の一部がヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、水などで置換されていてもよい。
また、陽イオンAは、必ずしも含有する必要はない。陽イオンAを含有している場合、陽イオンAとしては、カリウム、ナトリウム、セシウム、ルビジウム、水素の各イオンや、アンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
また、陰イオンなど他の構成成分を含有していても構わない。
また、水も必ずしも含有する必要はない。また、主成分(主成分とは全体の1/2以上を占める成分である。)が上記の組成式で表される構造を保っていれば、別の錯体などと混合されたものであってもよい。
金属原子Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属である。中でも、金属原子Mとしては、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウム、銅、マンガン、もしくは亜鉛が好ましく、鉄、コバルト、もしくはニッケルがより好ましい。金属原子Mに二種の金属の組み合わせを利用する場合には、鉄とニッケルの組み合わせ、鉄とコバルトの組み合わせ、ニッケルとコバルトの組み合わせが好ましく、鉄とニッケルの組み合わせがより好ましい。
金属原子Mは、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。中でも、金属原子Mとしては、鉄、クロム、もしくはコバルトが好ましく、鉄が特に好ましい。金属原子Mに二種の金属の組み合わせを利用する場合には、鉄とクロムの組み合わせ、鉄とコバルトの組み合わせ、クロムとコバルトの組み合わせが好ましく、鉄とクロムの組み合わせがより好ましい。
xは0〜3の数であり、0〜1の数であることが好ましい。
yは0.3〜1.5の数であり、0.5〜1の数であることが好ましい。
zは0〜30の数であり、5〜15の数であることが好ましい。
本発明のプルシアンブルー型金属錯体の製造方法としては、特に制限は無く、公知の方法を用いることができる。
[プルシアンブルー型金属錯体薄膜の形成]
一般的に電気的デバイスにおけるイオン伝導体は薄膜の形態で用いられる。
従って、本発明においては、プルシアンブルー型金属錯体を薄膜形状に成形して用いる。
プルシアンブルー型金属錯体を薄膜状に成形する方法は、例えば、プルシアンブルー型金属錯体を微粒子化して、水やアルコール等の溶媒に分散させてインク状態にした後、スピンコート法、デイップコート法、スプレーコート法等、の公知の方法で、基板上に湿式製膜する方法が挙げられるが、本発明においては、プルシアンブルー型金属錯体薄膜の製膜に用いる基板として、酸素、窒素、硫黄、及びリンからなる群より選ばれる一種または二種以上の元素を含む官能基を表面に有する基板を用い、この基板に、プルシアンブルー型金属錯体微粒子の分散液を接触させることによって薄膜を形成し、さらにこの薄膜を50℃以上の温度で加熱処理をすることによって、十分な性能を有するイオン伝導体とすることができる。
<プルシアンブルー型金属錯体の微粒子化>
プルシアンブルー型金属錯体を微粒子化する方法としては、微粒子の安定化分子として、ジ−2−エチルヘキシルスルホサクシネートのナトリウム塩等の界面活性剤(非特許文献1参照)や、PVP(ポリビニルピロリドン)などの水溶性高分子(非特許文献2参照)や、フェリチン等のタンパク質を用いたものが知られているが、本発明においては、水等の溶媒に不溶性のプルシアンブルー型金属錯体結晶を、アミン化合物やフェロシアン酸イオン等で表面処理する方法(特許文献1参照)が好ましく採用される。この方法によれば、表面処理に用いる化合物の種類を適切に選択することにより、プルシアンブルー型金属錯体を、水やアルコール、その他の有機溶媒等の多様な溶媒中に、微粒子化して安定に分散させることが可能である。
微粒子化したプルシアンブルー型金属錯体の粒径としては、溶媒に分散させることができれば特に制限は無いが、好ましくは1nm〜3μm、より好ましくは2nm〜1μm、さらに好ましくは5nm〜100nmであり、分散液中における体積基準の平均粒径で、1.5nm〜2.8μm、特に3.0nm〜0.9μm、とりわけ6nm〜90nmであることが望ましい。粒径分布はできるだけ狭く、平均粒径の100倍以上の大きさの粒子は、実質的に存在しないことが望ましい。粒径が上記範囲にあることによって、より均一でイオン伝導度の高い薄膜を形成させることができる。粒径もしくは粒径分布を所望の範囲にするために、プルシアンブルー型金属錯体微粒子の分散液に、さらに遠心分離等の処理を施すことによって粗大粒子等を取り除いて、所望の粒径分布に調整する等の方法も好ましく用いることができる。また、分散液中のプルシアンブルー型金属錯体微粒子を均一に分散させるために超音波処理を施すことも好適に採用される。
プルシアンブルー型金属錯体微粒子の粒径を測定する方法としては、粒径が1nm〜500nmの範囲のものは、動的光散乱法が適しており、粒径が0.1μm〜3μmの範囲のものは、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定法が適している。さらに、透過型電子顕微鏡により、プルシアンブルー型金属錯体微粒子を直接観察することにより、測定することもできる。
微粒子化したプルシアンブルー型金属錯体の表面には、分散性を向上させるための修飾分子が吸着していてもよい。
<プルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液>
湿式製膜に用いるプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液におけるプルシアンブルー型金属錯体微粒子の濃度は特に限定されないが、良好な製膜体を得るためには、0.0001〜20重量%の範囲、特に0.01〜10重量%の範囲であることが望ましい。分散液中のプルシアンブルー型金属錯体微粒子の濃度が上記の範囲にあることによって、より均一な薄膜を得ることができる。
なお、分散液の溶媒(分散媒)としては、水、メタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、石油エーテル等のエーテル系溶媒、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒類、これらの二種以上の混合溶媒が挙げられるが、取り扱い性、コスト等の面で水が好ましく用いられる。
<基板>
本発明において、プルシアンブルー型金属錯体薄膜を形成させる基板としては、表面に窒素、酸素、硫黄、及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種類の元素を含む官能基(以下「特定官能基」と称す場合がある。)を有する基板を用いる。
特定官能基としては、具体的には、窒素を含む官能基としては、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、アミド基等が、酸素を含む官能基としては、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、ペルオキシ基等が、硫黄を含む官能基としてはチオール基、スルフィド基、スルホン基等が、リンを含む官能基としては、ホスフィン基、ホスフェート基等が例示できるが、中でも、窒素を含む官能基が好ましく、窒素を含む官能基の中でもアミノ基がより好ましい。基板は、これらの特定官能基の2種以上を有していてもよい。
基板としては、ITO基板、ガラス基板、金属材料基板、カーボンペーパーやカーボンクロス等のカーボン材料製基板、シリコン基板、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物基板等、任意の基板を用いることができる。この基板は、形成されたプルシアンブルー型金属錯体薄膜をイオン伝導体として用いる場合に支持体を構成するものであってもよく、例えば、後述の燃料電池の燃料極や空気極、又はカーボンペーパーやカーボンクロス、グラファイト板等のような基板や支持体であってもよい。
表面に特定官能基を有する基板としては、基板の構成材料が、化学構造上、元来特定官能基を有することによって、基板表面に特定官能基が存在する場合は、当該基板をそのまま用いることができる。特定官能基を有さない基板については、基板の製膜表面に対して、特定官能基を有する化合物を作用させることにより、基板表面に特定官能基、もしくは特定官能基を有する化合物を結合させる。この場合、特定官能基を有する化合物と基板が縮合反応や重合反応等の化学反応によって、互いに化学的に結合するように処理することが好ましい。特定官能基は基板に直接結合していてもよいし、アルキル基やフェニル基、カルボニル基、エーテル基等の官能基や原子団を介して、基板に結合していてもよい。例えば、ガラス基板を、3−アミノプロピルトリメトキシシランのような、アミノ基を有するシランカップリング剤で処理することにより、プロピル基を介してアミノ基がガラス基板のガラスに強固に化学結合した基板を得ることができるが、このようなものも好適に用いることができる。
本発明において、用いる基板は、特定官能基を有する化合物と効果的に化学反応させるために、特定官能基を有する化合物を作用させるに先立ち、前処理として、加熱処理、プラズマ処理、エキシマー処理、オゾンや過酸化水素による酸化処理等、の物理的もしくは化学的処理を施していても構わない。金属酸化物基板や、シリコン基板、カーボン材料基板には、上記の前処理だけで、基板に前記特定官能基を導入することができるものもあるが、このような基板も、本発明の基板として用いることができる。
<製膜方法>
上記の特定官能基を表面(製膜表面)に有する基板と、前述のプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液(インク)を接触させることにより、プルシアンブルー型金属錯体の薄膜を製膜することができる。両者を接触させる方法には、含浸法、デイップコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の塗布法等、公知の製膜方法を用いることができる。この方法によれば、基板上の特定官能基とプルシアンブルー型金属錯体との化学的親和作用により、プルシアンブルー型金属錯体の薄膜を基板上に自発的に密着性よく形成させることができる。
本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、基板上の特定官能基とプルシアンブルー型金属錯体との化学的親和作用によって形成される。従って、公知の製膜方法であるデイップコート法やスピンコート法のように、分散液そのものを薄膜状に成形する必要は無い。さらに、基板とプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液を接触させて基板上に薄膜を形成させた後に、基板上に残った分散液は、ブローイングや水洗等によって、基板上から除去することが望ましい。これは、基板上に残った分散液に含まれるプルシアンブルー型金属錯体は、そのまま乾燥させると、薄膜状に余分な成分として残留して、イオン伝導体としての性能を低下させるためである。
例えば、プルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液に特定官能基を有する基板を浸漬した後引き上げる含浸法によりプルシアンブルー型金属錯体薄膜を製膜する場合、具体的には、プルシアンブルー型金属錯体微粒子濃度0.01〜10重量%程度のプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液に、基板を0.1秒〜10時間程度浸した後、引き上げることにより行われる。このときのプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液の温度については特に制限は無いが、高すぎると、プルシアンブルー型金属錯体微粒子と、基板上の特定官能基との化学的親和作用が弱まるために薄膜が十分に形成されなくなり、低すぎると、基板上に形成されるプルシアンブルー型金属錯体薄膜の均一性が低下することから、0℃〜100℃程度であることが望ましい。分散液のプルシアンブルー型金属錯体微粒子濃度、分散液の温度、浸漬時間を調整することにより、形成される薄膜の膜厚を制御することができる。
<加熱処理>
本発明においては、特定官能基を有する基板上に形成されたプルシアンブルー型金属錯体薄膜を、50℃以上の温度で加熱することによって、良好なイオン伝導性を有するイオン伝導体とすることができる。
前述のように、薄膜化させる材料の分散液を用いて基板上に薄膜を製膜する方法においては、基板上に分散液を湿式製膜した後、基板上に残留した余分な分散媒や溶媒を乾燥させる必要があるが、この際、基板の構造変化や薄膜体の急激な構造変化による破壊を防ぐために、乾燥はできるだけ低い温度で実施するのが望ましいとされている。特に、本発明のような、基板上の特定官能基とプルシアンブルー型金属錯体との化学的親和性によって形成された薄膜においては、薄膜の微細な構造変化を防ぐために、当業者の技術常識からすれば、特に低温で処理することが望ましく、処理温度は一般的には40℃以下が好ましいと考えられる。
しかしながら、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜においては、上記のような技術常識に反して50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上に加熱することによって、良好なイオン伝導性を有するプルシアンブルー型金属錯体薄膜を得る。また、本発明における加熱処理時の加熱温度は、成膜時の温度よりも高いことが望ましい。
一般的に、イオン伝導体においては、薄膜中に含有される水分量が多い程、より高いイオン伝導度が得られることが知られている。これは、薄膜中に含まれる水分子が、イオン伝導を促進するためである。これに対して、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、50℃以上で加熱して薄膜をより高度な乾燥状態にすることによって、逆に高いイオン伝導度が得られるという、従来のイオン伝導体には無い特徴を有する。このことから、本発明における薄膜の50℃以上の加熱処理は、単に薄膜を乾燥、安定化させるだけでなく、膜の構造そのものを良好なイオン伝導体となるように制御する処理であると言える。このため、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、加湿することなく、より乾燥した条件下でも高いイオン伝導度が得られる。
基板上のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を50℃以上に加熱する方法は、加熱炉による加熱、バーナーによる加熱等、任意の方法を用いることができる。
加熱温度の上限は、プルシアンブルー型金属錯体が分解しない温度であれば特に制限は無いが、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
加熱時間は、特に制限は無いが、望ましくは0.1秒〜100時間、さらに望ましくは1秒〜50時間、特に望ましくは1分〜10時間である。
<積層膜の形成>
本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、単層で用いても、二層以上積層させた状態で用いても構わない。二層以上積層させる方法としては、基板とプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液との接触により一層目の薄膜を形成した後、製膜面を特定官能基を少なくとも二つ有する化合物や、このような化合物を含有する溶液もしくは分散液と接触させた後、再び、プルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液と接触させ、その後に、50℃以上で加熱することにより、一層目のプルシアンブルー型金属錯体薄膜上に、二層目のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を形成することができる。さらに、同様の操作を繰り返すことによって、三層以上のプルシアンブルー型金属錯体薄膜の形成も可能である。ここで加熱処理の温度及び時間は、上記の<加熱処理>の説明に記載した通りである。なお、加熱処理は、プルシアンブルー型金属錯体薄膜層を一層形成する度に実施しても構わないし、製膜を繰り返し行い、最後に1回の加熱処理のみを行うのでもよい。
積層膜を形成する際に用いる特定官能基を少なくとも二つ有する化合物としては、酸素を含む官能基や窒素を含む官能基を少なくとも二つ有する化合物が好ましい。具体的には、ジカルボン酸類や、ジアミン類が挙げられるが、中でも脂肪族ジアミン類や芳香族ジアミン類のような、アミノ基を二つ有する化合物が好ましく、さらにパラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン類がより好ましく、これらは通常、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒による溶液として用いられる。
より具体的には、0.01〜20重量%程度の濃度のパラキシリレンジアミン溶液にプルシアンブルー型金属錯体薄膜を形成した基板を0.1秒〜10時間浸漬した後引き上げ、必要に応じてメタノール等のアルコール洗浄、水洗を行った後乾燥させればよい。その後、前述の方法で再度プルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液を用いてプルシアンブルー型金属錯体薄膜の形成を行う。このときパラキシリレンジアミン溶液の温度についてもプルシアンブルー型金属錯体薄膜形成時のプルシアンブルー型金属錯体微粒子分散液の温度と同様の理由から0〜150℃程度とすることが好ましい。
<膜厚>
上記のようにして製造される本発明のイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜の膜厚については特に制限はなく、用途や求められる材料の性能によって適宜決定されるが、用いる電子デバイスにおいて、できるだけ高いイオン伝導度を得ることが望ましい、との観点からは薄い方が好ましく、一方でデバイスの寿命や、安価な製造方法にて周辺材料との密着性を高めるとの観点からは、厚い方が好ましい。より具体的には、プルシアンブルー型金属錯体薄膜の膜厚は0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることが特に好ましい。また、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)により、測定することができる。
[イオン伝導体]
本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、所望のイオン伝導性を有するように構成することにより、燃料電池、リチウム電池等の二次電池や空気電池などの電解質、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の電気化学的デバイスに好適に使用することが可能となる。一般的に、これらの電気化学的デバイスは、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を電解質として、これを二つ又はそれ以上の数の電極等で挟持して電気化学的デバイスとして使用される。
[燃料電池]
以下に本発明のイオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜よりなるイオン伝導体を用いた電気的デバイスの一例として、燃料電池について詳細に説明する。
燃料電池の発電原理は、次の通りである。
電解質である膜状のイオン交換体(イオン伝導体)の両面に、燃料極(アノード)と空気極(カソード)の二つの電極を接触させる。燃料極に水素やメタノール等の燃料を供給すると、燃料が電気化学的に酸化されて、プロトンと電子が発生する。例えば、水素の場合は、下記式の反応が起こる。
→2H+2e
発生したプロトンは、電解質である膜状のイオン交換体(イオン伝導体)中を通って空気極に移動する。一方、電子は外部負荷回路を通って、空気極に移動する。空気極では、プロトンと空気中の酸素とで、以下の反応が起こり、水の生成と共に電気エネルギーが得られる。
+4H+4e→2H
従って、イオン伝導体を電解質として用いた場合、電解質中を移動するプロトンの速さ、すなわち電解質に用いるイオン伝導体中のプロトン伝導度の大きさ(プロトン伝導性)は、燃料電池の性能を決定する重要な性質である。つまり、燃料電池電解質に用いるためには、イオン伝導体のイオン伝導度は高い程望ましい。
本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜よりなるイオン伝導体を電解質として用いて、この膜を、燃料極(アノード)と空気極(カソード)とで挟持した起電部を構成することで、燃料電池を形成することができる。このときの電解質薄膜は、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を、燃料電池として使用する形状(通常薄膜状、シート状)に成形したものが好ましい。これは、燃料電池の組み立て作業中及び、組み立て後の運転時に一定の形状を保つことができる程度の形状保持性を有していることが望ましい、との意味である。
燃料電池の燃料極(アノード)には、通常、水素やメタノールを化学的に酸化して、プロトンと電子を生成させるための白金等の電極触媒が含有され、空気極(カソード)には、燃料極(アノード)から電解質中を伝導したプロトンを水に酸化するための白金等の電極触媒が含有される。また、アノード、カソードには、集電のための電気伝導性化合物が含有される。
本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜は、それ自体、単独でその形状を維持しなくても、燃料極や空気極、又はカーボンペーパーやカーボンクロス、グラファイト板等のような基板もしくは支持体上に、薄膜化、もしくは積層させたもので構わない。このとき用いる基板は、前述の通り、特定官能基を有するものである。
電極となる電極触媒や集電のための電気伝導性化合物を含有する基板もしくは支持体上に形成した本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜上に、さらに、電極触媒や電気伝導性化合物を含有する電極を形成させることで、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を電解質とする燃料電池起電部を製造することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定して解釈されるものではない。
なお、以下において、形成した薄膜の膜厚は、断面の原子間力顕微鏡(AFM)観察により測定した。
[実施例1]
<不溶性プルシアンブルー(PB)ナノ結晶の調製>
フェロシアン化ナトリウム・10水和物(29.0g)を水(116mL)に溶解した水溶液に、硝酸鉄・9水和物(32.3g)を水に溶解した水溶液(40mL)を混合し、30分間撹拌した。析出した青色のプルシアンブルー型金属錯体(PB)沈殿物を遠心分離し、これを水で6回、続いてメタノールで2回洗浄し、減圧下で乾燥させた。このときの収量は22.1gであり、収率はFe[Fe(CN)0.75・3.93HOとして96.7%であった。
<プルシアンブルー型金属錯体ナノ粒子分散液の調製>
得られたPB沈殿物(5.6g)を水(60mL)に懸濁させた。この懸濁液に、2.08重量%フェロシアン酸ナトリウム水溶液(40mL)を加えて撹拌したところ、青色透明溶液ないし分散液へと変化し、PBのナノ粒子分散液を得た。この分散液から遠心分離(15000回転)3回によって、沈降物をメンブレンフィルター(200nm)で2回濾過することで除去した上澄み液を回収した。上澄み液中のPBナノ粒子の粒径を、動的光散乱法によって測定したところ、PBナノ粒子の粒径は概ね10〜50nmの範囲にあり、平均粒径は30.2nmで、200nm以上の粒径の粒子は見られなかった。また、上澄み液は均一で、沈降する粗大粒子は見られなかった。この上澄み液を水で希釈し、PBナノ粒子の濃度を0.12重量%とし、超音波処理により更に分散させて分散液を得た。この分散液を「PBナノ粒子分散液」とする。
<含窒素官能基を有する基板の調製>
評価用の電極として、金蒸着によってパターンを作製したガラス基板を用意し、この基板を、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(0.215g)をメタノール(60mL)に溶解させた溶液に50℃で3時間含浸させた後、メタノールで洗浄し、室温下、窒素ガス気流下で乾燥させることにより、表面に3−アミノプロピル基を有するガラス基板を得た。
<プルシアンブルー型金属錯体加熱薄膜の作製>
得られた3−アミノプロピルトリメトキシシランを含有する基板を、上記で得られた「PBナノ粒子分散液」に、50℃で30分間浸した後引き上げ、水洗し、室温下、窒素ガス気流下で乾燥させることにより、プルシアンブルー型金属錯体(PB型金属錯体)薄膜を形成した。次いで、120℃で1時間加熱処理を行い、膜厚8.5nmのPB型金属錯体加熱薄膜を作製した。
<イオン伝導度の測定>
基板上に形成されたPB型金属錯体加熱薄膜に対して、基板上に蒸着させた金(電極間距離は200μm)を電極として、評価用セルを作製し、交流インピーダンス法(測定周波数1Hz〜20MHz、0V±0.1V)を用いて、恒温恒湿槽中、25℃において、相対湿度65%と95%における薄膜のイオン伝導度をそれぞれ測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
<プルシアンブルー型金属錯体加熱薄膜の作製>において、120℃、1時間の加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。加熱処理を行わなかった薄膜を「PB型金属錯体薄膜」とする。
[実施例2]
比較例1で得られたPB型金属錯体薄膜形成基板を、パラキシリレンジアミン(0.012g)をトルエン(60mL)に溶解させた溶液に、50℃にて1時間含浸させた後引き上げ、メタノールで洗浄し、室温下、窒素ガス気流下で乾燥させた。この後、50℃で、「PBナノ粒子分散液」に30分間含浸させた後引き上げ、水で基板を洗浄して、窒素ガス気流下で乾燥させた。この後、さらに120℃で1時間、加熱処理を行って二層積層PB型金属錯体加熱薄膜を得、得られたPB型金属錯体加熱薄膜のイオン伝導度を、実施例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例2において、「PBナノ粒子分散液」への含浸後の120℃、1時間の加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例2と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例2における、PB型金属錯体薄膜形成基板を、パラキシリレンジアミン(0.012g)をトルエン(60mL)に溶解させた溶液に、50℃にて1時間含浸させた後引き上げ、メタノールで洗浄し、室温下、窒素ガス気流下で乾燥させ、この後、50℃で、「PBナノ粒子分散液」に30分間含浸させた後引き上げ、水で基板を洗浄して、窒素ガス気流下で乾燥させる工程を2回行い、その後、さらに120℃で1時間、加熱処理を行って三層積層PB型金属錯体加熱薄膜を得、得られたPB型金属錯体加熱薄膜のイオン伝導度を、実施例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例3において、「PBナノ粒子分散液」への含浸後の120℃、1時間の加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例2における、PB型金属錯体薄膜形成基板を、パラキシリレンジアミン(0.012g)をトルエン(60mL)に溶解させた溶液に、50℃にて1時間含浸させた後引き上げ、メタノールで洗浄し、室温下、窒素ガス気流下で乾燥させ、この後、50℃で、「PBナノ粒子分散液」に30分間含浸させた後引き上げ、水で基板を洗浄して、窒素ガス気流下で乾燥させる工程を3回行い、その後、さらに120℃で1時間、加熱処理を行って四層積層PB型金属錯体加熱薄膜を得、得られたPB型金属錯体加熱薄膜のイオン伝導度を、実施例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例4において、「PBナノ粒子分散液」への含浸後の120℃、1時間の加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例4と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1における<含窒素官能基を有する基板の調製>で調製した3−アミノプロピル基を有するガラス基板について、PB金属錯体薄膜を形成せずにそのまま、実施例1と同様にイオン伝導度を測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1における<含窒素官能基を有する基板の調製>で調製した3−アミノプロピル基を有するガラス基板について、PB金属錯体薄膜を形成せずに、120℃で1時間の加熱処理のみを行った後、実施例1と同様にイオン伝導度を測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例7]
実施例1において、<含窒素官能基を有する基板の調製>工程を省略し、3−アミノプロピル基を有しないガラス基板を用い、また、実施例1の「PBナノ粒子分散液」を減圧濃縮することにより、PBナノ粒子濃度を2.4重量%とした分散液を用いて、スピンコート法により、薄膜形成を実施した。具体的には、スピンコーターに基板を設置して、PBナノ粒子分散液(150μL)を滴下し、15秒間かけて0〜2000rpmの回転数に上げ、続いて、2500rpmの回転数で5秒間スピンコートを行った後、水洗し、室温下、窒素ガス気流下で乾燥させることにより、平均膜厚150nmのPB型金属錯体薄膜を形成させた。この薄膜について実施例1と同様にイオン伝導度を測定した。得られた結果を表1に示す。
[比較例8]
比較例7と同様に、3−アミノプロピル基を有しないガラス基板にスピンコート法でPB型金属錯体薄膜を形成させた後、得られた薄膜を120℃で1時間加熱処理を行った。この加熱処理後の薄膜について実施例1と同様にイオン伝導度を測定した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2016050133
表1より、本発明のプルシアンブルー型金属錯体薄膜によれば、乾燥度の高い条件下でも、より高いイオン伝導度が得られることがわかる。
実施例1と比較例1から、プルシアンブルー型金属錯体薄膜を120℃で加熱処理することによって、高いイオン伝導度が得られることがわかる。さらに、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4から、プルシアンブルー型金属錯体薄膜を二層以上積層させたものについても、120℃で加熱処理することにより、高いイオン伝導性が得られることがわかる。
比較例5と比較例6より、含窒素官能基であるアミノ基を有する基板のみでは、120℃での加熱処理を行っても、十分なイオン伝導度は得られないことがわかる。
比較例7と比較例8の特定官能基のない基板を用いて従来のスピンコート法によって形成されたプルシアンブルー型金属錯体薄膜においては、特に加熱処理を行うことで、湿度95%という高湿度の環境では高いイオン伝導度が得られるものの、湿度65%というより乾燥した条件下においては、イオン伝導度が大きく低下してしまい、十分なイオン伝導度が得られないことが分かる。
220 プルシアンブルー型金属錯体
221 金属原子M
222 炭素原子
223 窒素原子
224 金属原子M

Claims (3)

  1. イオン伝導体として使用される、下記一般式(1)で表されるプルシアンブルー型金属錯体の薄膜において、該プルシアンブルー型金属錯体薄膜が、微粒子化したプルシアンブルー型金属錯体を、窒素、酸素、硫黄、及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種類の元素を含む官能基を表面に有する基板と接触させることによって形成されたものであり、さらに50℃以上の温度で加熱処理された後に、イオン伝導体として使用されることを特徴とする、イオン伝導体用プルシアンブルー型金属錯体薄膜。
    [M(CN)・zHO …(1)
    (式中、Aは陽イオンを示す。
    は金属原子を示し、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。
    は、金属原子を示し、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子である。
    xは0〜3の数であり、yは0.3〜1.5の数であり、zは0〜30の数である。)
  2. 請求項1のプルシアンブルー型金属錯体薄膜を用いたイオン伝導体。
  3. 請求項2のイオン伝導体を用いた電気的デバイス。
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