JP2016049950A - 倒立二輪型移動体及びその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】倒立状態を維持するために要求されるモータ出力が、出力限界を超えないように制御可能な倒立二輪型移動体を提供すること。
【解決手段】倒立二輪型移動体10は、車両本体1に対して遊び量調整可能に連結された操作ハンドル4を備え、倒立制御により倒立状態を維持しつつ車輪2R、2Lをモータ31R、31Lによって駆動するものである。モータ31R、31Lの駆動を制御する制御部5と、モータ31R、31Lの駆動状態を検出するセンサ13R、13Lと、を備え、制御部5は、駆動状態に基づいて、モータ31R、31Lに要求される出力を推定し、推定した出力がモータ31R、31Lの出力限界を超えている場合、操作ハンドル4の遊び量を増加させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、倒立二輪型移動体及びその制御方法に関するものである。
例えば特許文献1には、姿勢センサから検出した自己の姿勢情報に基づいて、倒立制御を行い、自己の姿勢を維持しながら車輪をモータ駆動する倒立二輪型移動体が開示されている。このような倒立二輪型移動体は、搭乗者の重心移動により車体を傾斜させることなどにより、操作される。そのため、単なる移動手段ではなく、搭乗者の身体機能やバランス機能を向上あるいは回復させるための訓練に用いることもできる。
特許文献1に開示された倒立二輪型移動体は、通常モードに加え、訓練モードを備えている。ここで、特許文献1では、訓練の効果を向上させるために、訓練モードにおいて倒立制御の制御ゲインを低下させ、通常モード時よりも倒立二輪型移動体を動き易くしている。
特開2011−031669号公報
倒立二輪型移動体が動き易くなると、車輪を駆動するモータの出力は大きくなる。当然のことながら、モータ出力には限界がある。仮に、倒立状態を維持する(すなわち転倒を防止する)ために要求されるモータ出力が、出力限界を超えてしまうと、倒立状態を維持できない虞がある。なお、特許文献1に記載されたような従来の倒立二輪型移動体では、倒立状態をできる限り維持するために、モータの出力限界に対して充分にマージンを取った上で、倒立制御を行っていた。
本発明は、上記を鑑みなされたものであって、倒立状態を維持するために要求されるモータ出力が、出力限界を超えないように制御可能な倒立二輪型移動体を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る倒立二輪型移動体は、
車両本体に対して遊び量調整可能に連結された操作ハンドルを備え、倒立制御により倒立状態を維持しつつ車輪をモータによって駆動する倒立二輪型移動体であって、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記モータの駆動状態を検出するセンサと、を備え、
前記制御部は、
前記駆動状態に基づいて、前記モータに要求される出力を推定し、
推定した前記出力が前記モータの出力限界を超えた場合、前記操作ハンドルの前記遊び量を増加させるものである。
本発明の一態様に係る倒立二輪型移動体は、モータの駆動状態に基づいて、前記モータに要求される出力を推定し、推定した前記出力が前記モータの出力限界を超えている場合、操作ハンドルの遊び量を増加させる。操作ハンドルの遊び量が増加すると、倒立二輪型移動体は動き難くなるため、モータ出力は低下する。その結果、モータ出力が出力限界を超えることを回避でき、転倒を確実に防止することができる。
前記制御部は、推定した前記出力が予め定められた下限基準値を下回った場合、前記遊び量を減少させることが好ましい。モータ出力を出力限界に近付けて倒立二輪型移動体の有している性能を有効に利用することができる。
また、前記モータに電圧を供給するバッテリと、前記出力限界が格納される記憶部と、をさらに備え、前記バッテリから供給される電圧の変化に応じて、前記出力限界が更新されることが好ましい。バッテリの電圧が低下し、出力限界が低下した場合であっても、転倒を確実に防止することができる。
さらに、前記出力が、前記モータの回転情報とトルク情報とから規定され、前記出力限界が、前記モータの回転情報とトルク情報とから規定されていることが好ましい。
本発明の一態様に係る倒立二輪型移動体の制御方法は、
車両本体に対して遊び量調整可能に連結された操作ハンドルを備え、倒立制御により倒立状態を維持しつつ車輪をモータによって駆動する倒立二輪型移動体の制御方法であって、
前記モータの駆動状態を検出するステップと、
検出した前記駆動状態に基づいて、前記モータに要求される出力を推定するステップと、を備え、
推定した前記出力が前記モータの出力限界を超えた場合、前記操作ハンドルの前記遊び量を増加させるものである。
本発明の一態様に係る倒立二輪型移動体の制御方法では、モータの駆動状態に基づいて、前記モータに要求される出力を推定し、推定した前記出力が前記モータの出力限界を超えている場合、操作ハンドルの遊び量を増加させる。操作ハンドルの遊び量が増加すると、倒立二輪型移動体は動き難くなるため、モータ出力は低下する。その結果、モータ出力が出力限界を超えることを回避でき、転倒を確実に防止することができる。
推定した前記出力が予め定められた下限基準値を下回った場合、前記遊び量を減少させることが好ましい。モータ出力を出力限界に近付けて倒立二輪型移動体の有している性能を有効に利用することができる。
本発明によれば、倒立状態を維持するために要求されるモータ出力が、出力限界を超えないように制御可能な倒立二輪型移動体を提供することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の概略的な構成を示す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の概略的なシステム構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態に係る制御部の概略的なシステム構成を示すブロック図である。 モータの出力限界を示すマップ情報の一例を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態に係る倒立二輪型移動体10の制御方法のフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態に係るマップ情報の一例を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の制御方法のフローチャートである。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の概略的な構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10は、倒立制御により倒立状態を維持しつつ、搭乗者の重心移動に応じて、前後進、左右旋回、加減速などの走行を行うことができる同軸二輪車である。倒立二輪型移動体10は、車両本体1と、車両本体1に回転可能に連結された左右一対の車輪2R、2Lと、車両本体1に操作可能に設けられた操作ハンドル4と、車両本体1に設けられ搭乗者が搭乗可能な左右一対のステップ部6R、6Lと、を備えている。
操作ハンドル4は、これを前後方向に傾けることによって、倒立二輪型移動体10の前進又は後退操作が実行され、ロール方向(左右方向)へ傾けることによって、倒立二輪型移動体10の旋回操作が実行される操作部である。ここで、操作ハンドル4は、車両本体1に対して遊び量調整可能に連結されている。
車両本体1は、操作ハンドル4をロール方向へ回転自在に支持する。また、一対の車輪2R、2Lは、車両本体1の走行方向と直交する方向の両側において同軸上に配置されると共に当該車両本体1に回転自在に支持されている。
車両本体1の上面には、操作ハンドル4の左右両側に一対のステップ部6R、6Lが設けられている。各ステップ部6R、6Lは、搭乗者が片足ずつ乗せて搭乗するステップである。
車両本体1は、互いに平行に上下に配置された車体上部材及び車体下部材と、互いに平行に左右に配置されると共に車体上部材及び車体下部材と回動可能に連結された一対の側面部材と、を有する平行リンク機構として構成されている。なお、上述した倒立二輪型移動体10の構成は一例であり、これに限らず、例えば、操作ハンドル4を有しない構成でもよく、倒立状態を維持しつつ搭乗者の重心移動に応じて走行する任意の移動体に適用可能である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の概略的なシステム構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態1に係る倒立二輪型移動体10は、左右一対の車輪駆動ユニット3R、3Lと、制御部5と、左右一対のステップセンサ7R、7Lと、角度検出センサ8と、バッテリ9と、左右一対の駆動回路11R、11Lと、姿勢センサユニット12と、左右一対の回転センサ13R、13Lと、ハンドル固定部14と、を備えている。
各ステップセンサ7R、7Lは、例えば、各ステップ部6R、6Lにそれぞれ設けられ、重量センサにより構成されている。各ステップセンサ7R、7Lは、各重量センサを用いて各ステップ部6R、6Lのそれぞれに搭乗者の足が乗っているか否かを検出し、足が乗っている場合に足検知信号を制御部5に対してそれぞれ供給する。
車両本体1の各側面部材には、車輪駆動ユニット3R、3Lがそれぞれ取り付けられている。各車輪駆動ユニット3R、3Lは、各車輪2R、2Lを独立して回転駆動することができる。各車輪駆動ユニット3R、3Lは、例えば、車輪駆動モータ31R、31Lと、その各車輪駆動モータ31R、31Lの回転軸に動力伝達可能に連結された減速ギア32R、32Lと、によってそれぞれ構成することができる。各車輪駆動モータ31R、31Lは、倒立二輪型移動体10が減速状態(制動状態)のとき回生電力を生成し出力する。各車輪駆動モータ31R、31Lにより出力された回生電力は、各車輪駆動ユニット3R、3Lや制御部5に設けられた内部抵抗などにより消費される。
車両本体1には、操作ハンドル4の操作量(回動量)を検出するための角度検出センサ8が取り付けられている。角度検出センサ8としては、例えば、ポテンショメータやバリコン構造のセンサ等を適用することができる。
操作ハンドル4の基部には、各車輪駆動ユニット3R、3L、制御部5、その他の電子機器、電気装置等に対して電力を供給するバッテリ9が設けられている。バッテリ9としては、例えばリチウムイオンバッテリが用いられる。
車両本体1の車体上部材には、一対の車輪駆動ユニット3R、3L等を駆動する一対の駆動回路11R、11Lが内蔵されている。また、車両本体1の車体下部材には、車両本体1や操作ハンドル4等の姿勢を検出してそれらの検出信号を出力する姿勢センサユニット12と、一対の車輪駆動ユニット3R、3L等を駆動制御するためのトルク指令信号(トルク情報の一具体例)を出力する制御部5と、が設けられている。
各車輪駆動ユニット3R、3Lには、各車輪駆動モータ31R、31Lの回転数、回転角速度、回転角加速度などの回転情報を検出する回転センサ13R、13Lがそれぞれ設けられている。各回転センサ13R、13Lは、上記回転情報を検出する手段の一具体例であって、検出した各車輪駆動モータ31R、31Lの回転情報を制御部5に対して出力する。
制御部5は、姿勢センサユニット12からの検出信号、角度検出センサ8からの検出信号、各ステップセンサ7R、7Lから足検出信号、各回転センサ13R、13Lからの回転情報等に基づいて所定の演算処理を実行し、必要なトルク指令信号を各駆動回路11R、11Lを介して各車輪駆動ユニット3R、3Lに対して出力する。また、制御部5が、各車輪駆動ユニット3R、3Lを制御することで、倒立二輪型移動体10は倒立状態を維持しつつ所望の走行を行う。
制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路5aと、各種制御プログラムやデータなどが格納されたRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶部5bと、を備えている。
制御部5には、バッテリ9と一対の駆動回路11R、11Lが接続されている。各駆動回路11R、11Lは、制御部5から出力されるトルク指令信号に応じた駆動電流を各車輪駆動ユニット3R、3Lに出力する。各駆動回路11R、11Lは、各車輪2R、2Lの回転速度や回転方向等を独立して制御するもので、これらに各車輪駆動ユニット3R、3Lが個別に接続されている。
姿勢センサユニット12は、倒立二輪型移動体10の走行時における車両本体1の傾斜角度、傾斜角速度、傾斜角加速度など傾斜情報を検出する。姿勢センサユニット12は、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサなどから構成されている。搭乗者が操作ハンドル4を前方または後方に傾けると、各ステップ部6R、6Lが同方向に傾くことになるが、この姿勢センサユニット12は、かかる傾斜に対応した傾斜情報を検出する。
制御部5は、姿勢センサユニット12によって検出された傾斜情報に応じて、操作ハンドル4の傾斜方向に倒立二輪型移動体10が移動するように、車輪駆動ユニット3R、3Lを駆動制御する。このように搭乗者は、その重心移動により各ステップ部6R、6Lを傾斜させることで、倒立二輪型移動体10を前進又は後進させることができる。
ハンドル固定部14は、例えば操作ハンドル4の根元に設けられており、操作ハンドル4を車両本体1に対して遊び量調整可能に連結するものである。ハンドル固定部14は、例えば電磁石などからなり、制御部5によって車両本体1に対する固定度が調整される。固定度が小さくなり遊び量が大きくなると、搭乗者が重心移動をより大きくしないと、倒立二輪型移動体10が動かなくなる。そのため、モータ出力が抑制される。一方、固定度が大きくなり遊び量が小さくなると、より小さな重心移動で、倒立二輪型移動体10が動くようになる。そのため、モータ出力が増大する。
以上のような特徴から、倒立二輪型移動体10は、単なる移動手段ではなく、搭乗者の身体機能やバランス機能を向上あるいは回復させるための訓練に用いることもできる。例えば、車両本体1を自動走行させ、その自動走行に応じて、搭乗者が重心移動するなどの訓練を行うことができる。本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10は、通常の走行を行う通常モードに加え、上述の自動走行に応じて搭乗者が重心移動を行う訓練モードと、を有している。
訓練モードでは、制御部5は、訓練プログラムを実行し、各車輪駆動ユニット3L、3Rを制御して、一定もしくはランダム周期で、車両本体1を前後左右に自動走行させる。このとき、搭乗者は、この制御部5による車両本体1の自動走行に応じて、車両本体1が静止又は一定範囲内に収まるように、重心を前後もしくは左右に移動させる。
これにより、搭乗者は、ゲーム感覚で楽しみながら訓練を行うことができ、身体機能やバランス機能を効率的に向上させることができる。例えば、バランス機能に障害がある人は、足首、膝関節などの身体の各部を無理なく楽しく動作させて、その障害や衰えを改善することができる。
なお、訓練モードと通常モードとのモード切換は、例えば、操作ハンドル4に設けられたモードスイッチ(不図示)を操作することにより行われる。さらに、無線もしくは有線の遠隔操作によってモード切換を行うことができる構成であってもよい。これにより、搭乗者のみでなく訓練監督者などが、容易にモード切換を行うことができる。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る制御部5の概略的なシステム構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施の形態に係る制御部5は、図2に示した記憶部5bに加え、モータ出力推定部51、倒立制御部52、及び遊び量調整部53を有している。なお、図3では、演算回路5aは省略されている。
モータ出力推定部51は、回転センサ13Rから出力される回転情報と、倒立制御部52により生成された車輪駆動ユニット3Rに対するトルク情報とに基づいて、車輪駆動モータ31Rに要求されるモータ出力を推定する。同時に、モータ出力推定部51は、回転センサ13Lから出力される回転情報と、倒立制御部52により生成された車輪駆動ユニット3Lに対するトルク情報とに基づいて、車輪駆動モータ31Lに要求されるモータ出力を推定する。
さらに、モータ出力推定部51は、推定した車輪駆動モータ31R、31Lのモータ出力と、記憶部5bに格納されたマップ情報とを比較する。ここで、モータ出力推定部51は、マップ情報から車輪駆動モータ31R、31Lの出力限界を知ることができる。そして、モータ出力推定部51は、車輪駆動モータ31R、31Lのそれぞれについて、推定したモータ出力と出力限界との比較結果に基づいて、遊び量変更信号を遊び量調整部53に出力する。
倒立制御部52は、倒立状態を維持しつつ所望の走行を行うため、車輪駆動ユニット3R、3Lに対するトルク情報を生成する。
遊び量調整部53は、モータ出力推定部51から出力された遊び量変更信号に応じて、ハンドル固定部14の車両本体1に対する固定度を変更する。これにより、操作ハンドル4の遊び量が変更される。固定度が小さくなり遊び量が大きくなると、搭乗者が重心移動をより大きくしないと、倒立二輪型移動体10が動かなくなる。一方、固定度が大きくなり遊び量が小さくなると、より小さな重心移動で、倒立二輪型移動体10が動くようになる。詳細には後述するように、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、モータ出力推定部51が推定したモータ出力に応じて、操作ハンドル4の遊び量が自動的に変更される。なお、当然のことながら、搭乗者や訓練監督者の操作に応じて操作ハンドル4の遊び量を変更することもできる。
モータ出力推定部51の動作についてより具体的に説明する。ここで、図4は、モータの出力限界を示すマップ情報の一例を示すグラフである。図4の横軸はモータの回転数、縦軸はモータのトルクを示している。すなわち、モータ出力は回転数とトルクとにより規定される。図4では、出力限界が太い実線で示されている。
図4に示すように、出力限界では回転数とトルクとは、反比例の関係にある。すなわち、回転数が高い場合には、トルクを低くする必要があり、トルクが高い場合には、回転数を低くする必要がある。他方、出力限界は、回転数が所定の上限値Nmaxを超えないように、トルクが所定の上限値Tmaxを超えないように設定されている。
出力限界はモータのみならずバッテリ残量すなわちバッテリ9の出力電圧によって変化するため、マップ情報はバッテリ9の出力電圧に応じて更新されることが好ましい。これにより、バッテリ9の電圧が低下し、出力限界が低下した場合であっても、転倒を確実に防止することができる。
モータ出力推定部51は、回転センサ13Rから出力される回転数と、車輪駆動ユニット3Rに対するトルク指令信号と、に基づいて、図4に示したマップ情報における座標(回転数、トルク)の時間経過に伴う軌跡を推定する。この軌跡が、車輪駆動モータ31Rに要求されるモータ出力に該当する。そして、モータ出力推定部51は、推定した軌跡が出力限界内にあるか否かを判定する。車輪駆動モータ31Lに要求されるモータ出力についても同様に判定する。
図4に破線で示した推定出力Aのように、車輪駆動モータ31R、31Lの少なくともいずれか一方について、推定したモータ出力が出力限界超えた場合、モータ出力推定部51は、モータ出力が出力限界を超えないように、遊び量調整部53に対して操作ハンドル4の遊び量を増加させるように要求する。操作ハンドル4の遊び量が増加すると、倒立二輪型移動体10は動き難くなるため、図4に実線で示した出力Aのように、モータ出力は低下する。このように、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、モータ出力が出力限界を超えないように逐次制御しているため、転倒を確実に防止することができる。
また、従来の倒立二輪型移動体では、転倒を防止するために、モータの出力限界に対して充分にマージンが取られており、倒立二輪型移動体が有している性能を有効に利用することができなかった。これに対し、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、図4に実線で示した出力Aのように、モータ出力を出力限界に近付けることができる。すなわち、倒立状態を維持(転倒を防止)しつつ、倒立二輪型移動体10の有している性能を有効に利用することができる。
さらに、図4に破線で示した推定出力Bのように、車輪駆動モータ31R、31Lの両方について、推定したモータ出力が出力限界よりも充分に小さい下限基準値を下回った場合、モータ出力推定部51は、モータ出力が出力限界を超えない範囲で操作ハンドル4の遊び量を減少させるように遊び量調整部53に要求する。操作ハンドル4の遊び量が減少すると、倒立二輪型移動体10は動き易くなるため、図4に実線で示した出力Bのように、モータ出力は上昇する。
このように、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、推定したモータ出力が出力限界に比べて低過ぎる場合には、操作ハンドル4の遊び量を減少させ、モータ出力を出力限界に近付けることができる。すなわち、倒立状態を維持(転倒を防止)しつつ、倒立二輪型移動体10の有している性能を有効に利用することができる。
ところで、車輪駆動モータ31R、31Lに要求されるモータ出力を推定することにより、同時に搭乗者の搭乗状態も推定できる。例えば、訓練モードであれば、搭乗者の訓練改善度を推定できる。具体的には、推定したモータ出力が出力限界を超えるようであれば、搭乗者がバランスを崩しており、訓練改善度が低いと推定される。一方、推定したモータ出力が下限基準値を下回るようであれば、搭乗者がバランスを維持して搭乗できており、訓練改善度が高まっていると推定できる。すなわち、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、訓練改善度が低い搭乗者に対しては自動的に操作ハンドル4の遊び量を大きく設定し、改善度が高まるにつれて自動的に操作ハンドル4の遊び量を小さくしていくことが期待できる。
なお、本実施の形態では、回転情報として、車輪駆動モータ31R、31Lの回転数を用いているが、これに限定されることはない。例えば、車輪駆動モータ31R、31Lの回転角速度を回転情報として用いてもよい。また、トルク情報として、倒立制御部52から各駆動回路11R、11Lに出力されるトルク指令信号を用いているが、これに限定されることはない。例えば、トルク指令信号に応じて各駆動回路11R、11Lから各車輪駆動ユニット3R、3Lに出力される駆動電流をトルク情報として用いてもよい。さらに、各車輪駆動モータ3R、3Lに駆動トルクを検出するトルクセンサを設け、このトルクセンサにより検出されたトルク値をトルク情報として用いてもよい。
次に、図3、5を参照して、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10の制御方法について説明する。ここで、図5は、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10の制御方法のフローチャートである。また、制御の主体は図3に示した制御部5である。
まず、図5に示すように、制御の開始とともに、図3に示した制御部5の遊び量調整部53に対して操作ハンドル4の遊び量の初期値が設定される(ステップST1)。操作ハンドル4の遊び量の初期値は、例えば記憶部5bに格納されている。
次に、車輪駆動モータ31R、31Lの回転数及びトルクを監視する(ステップST2)。具体的には、図3に示すように、回転センサ13R、13Lにより回転情報が監視され、倒立制御部52により生成された車輪駆動ユニット3R、3Lに対するトルク情報が監視される。
次に、回転センサ13R、13Lから出力される回転情報と、倒立制御部52により生成された車輪駆動ユニット3R、3Lに対するトルク情報とに基づいて、モータ出力推定部51は車輪駆動モータ31R、31Lに要求されるモータ出力をそれぞれ推定する(ステップST3)。
次に、モータ出力推定部51は推定した車輪駆動モータ31R、31Lのモータ出力(推定値)が出力限界以下であるか否かを判定する(ステップST4)。車輪駆動モータ31R、31Lの少なくとも一方において、推定したモータ出力が出力限界を超えている場合(ステップST4NO)、モータ出力推定部51は遊び量調整部53に対して操作ハンドル4の遊び量を増加させるように要求する(ステップST5)。その後、制御が継続していれば(ステップST8NO)、ステップST2に戻って制御を継続する。
車輪駆動モータ31R、31Lの両方において、推定したモータ出力が出力限界以下である場合(ステップST4YES)、モータ出力推定部51は推定した車輪駆動モータ31R、31Lのモータ出力(推定値)が下限基準値以上であるか否かを判定する(ステップST6)。車輪駆動モータ31R、31Lの両方において、推定したモータ出力が下限基準値を下回っている場合(ステップST6NO)、モータ出力推定部51は遊び量調整部53に対して操作ハンドル4の遊び量を減少させるように要求する(ステップST7)。その後、制御が継続していれば(ステップST8NO)、ステップST2に戻って制御を継続する。
車輪駆動モータ31R、31Lの少なくとも一方において、推定したモータ出力が下限基準値以上である場合(ステップST6YES)、制御が継続していれば(ステップST8NO)、そのままステップST2に戻って制御を継続する。つまり、推定したモータ出力が下限基準値以上かつ出力限界以下である場合、操作ハンドル4の遊び量は変更されない。
このように、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、モータの回転情報及びトルク情報から要求されるモータ出力を逐次推定し、推定したモータ出力が出力限界を超えると判断した場合には、操作ハンドル4の遊び量を増加させる。操作ハンドル4の遊び量が増加すると、倒立二輪型移動体10は動き難くなるため、モータ出力は低下する。そのため、モータ出力が出力限界を超えることを回避でき、転倒を確実に防止することができる。
さらに、本実施の形態に係る倒立二輪型移動体10では、モータの回転情報及びトルク情報から要求されるモータ出力を逐次推定し、推定したモータ出力が下限基準値を下回る(出力限界に比べて低過ぎる)と判断した場合には、操作ハンドル4の遊び量を減少させる。そのため、倒立状態を維持(転倒を防止)しつつ、モータ出力を出力限界に近付けて倒立二輪型移動体10の有している性能を有効に利用することができる。
(第2の実施の形態)
図6、7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る倒立二輪型移動体について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係るマップ情報の一例を示すグラフである。図6は、本発明の第1の実施の形態における図4に相当するものである。図7は、本発明の第2の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の制御方法のフローチャートである。図7は、第1の実施の形態における図5に相当するものである。
図6に示すように、第2の実施の形態に係るマップ情報では、出力限界のみが規定されており、下限基準値は規定されていない。そのため、図7に示すように、第2の実施の形態に係る倒立二輪型移動体の制御方法では、第1の実施の形態におけるステップST6、ST7がない構成となっている。その他の構成は第1の実施の形態に係る倒立二輪型移動体と同様であるため、説明を省略する。
第2の実施の形態に係る倒立二輪型移動体でも、モータの回転情報及びトルク情報から要求されるモータ出力を逐次推定し、推定したモータ出力が出力限界を超えると判断した場合には、操作ハンドル4の遊び量を増加させる。操作ハンドル4の遊び量が増加すると、倒立二輪型移動体10は動き難くなるため、モータ出力は低下する。そのため、モータ出力が出力限界を超えることを回避でき、転倒を確実に防止することができる。なお、操作ハンドル4の遊び量を減少させるには、搭乗者や訓練監督者などが操作すればよい。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記モータ出力推定部51が実行する処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
1 車両本体
2L、2R 車輪
3L、3R 車輪駆動ユニット
4 操作ハンドル
5 制御部
5a 演算回路
5b 記憶部
6L、6R ステップ部
7L、7R ステップセンサ
8 角度検出センサ
9 バッテリ
10 倒立二輪型移動体
11L、11R 駆動回路
12 姿勢センサユニット
13L、13R 回転センサ
14 ハンドル固定部
31L、31R 車輪駆動モータ
32L、32R 減速ギア
51 モータ出力推定部
52 倒立制御部
53 遊び量調整部

Claims (6)

  1. 車両本体に対して遊び量調整可能に連結された操作ハンドルを備え、倒立制御により倒立状態を維持しつつ車輪をモータによって駆動する倒立二輪型移動体であって、
    前記モータの駆動を制御する制御部と、
    前記モータの駆動状態を検出するセンサと、を備え、
    前記制御部は、
    前記駆動状態に基づいて、前記モータに要求される出力を推定し、
    推定した前記出力が前記モータの出力限界を超えた場合、前記操作ハンドルの前記遊び量を増加させる、
    倒立二輪型移動体。
  2. 前記制御部は、
    推定した前記出力が予め定められた下限基準値を下回った場合、前記遊び量を減少させる、
    請求項1に記載の倒立二輪型移動体。
  3. 前記モータに電圧を供給するバッテリと、
    前記出力限界が格納される記憶部と、をさらに備え、
    前記バッテリから供給される電圧の変化に応じて、前記出力限界が更新される、
    請求項1又は2に記載の倒立二輪型移動体。
  4. 前記出力が、前記モータの回転情報とトルク情報とから規定され、
    前記出力限界が、前記モータの回転情報とトルク情報とから規定されている、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の倒立二輪型移動体。
  5. 車両本体に対して遊び量調整可能に連結された操作ハンドルを備え、倒立制御により倒立状態を維持しつつ車輪をモータによって駆動する倒立二輪型移動体の制御方法であって、
    前記モータの駆動状態を検出するステップと、
    検出した前記駆動状態に基づいて、前記モータに要求される出力を推定するステップと、を備え、
    推定した前記出力が前記モータの出力限界を超えた場合、前記操作ハンドルの前記遊び量を増加させる、
    倒立二輪型移動体の制御方法。
  6. 推定した前記出力が予め定められた下限基準値を下回った場合、前記遊び量を減少させる、
    請求項5に記載の倒立二輪型移動体の制御方法。
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