以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
最初に、本発明の実施例に係る充放電制御回路としてのピエゾ素子駆動回路により駆動制御されるピエゾモータについて簡単に説明をする。
図1は、ピエゾモータに適用されるピエゾアクチュエータ(座屈式アクチュエータ)PZTの基本構成を示す概略図である。また、図2は、本発明の実施例に係るピエゾ素子駆動回路により駆動制御(充放電制御)が実行されるピエゾアクチュエータPZTを備えるピエゾモータ(直動モータ)の基本構造の一例を示す概略図である。また、図3は、ピエゾモータ(直動モータ)の構成例を示す斜視図である。
図1に示すように、ピエゾモータに適用されるピエゾアクチュエータPZTは、座屈現象を利用した非線形変位拡大機構を有する座屈式ピエゾアクチュエータである。具体的には、ピエゾアクチュエータPZTは、一対のピエゾ素子10L、10R、その一対のピエゾ素子10L、10Rのそれぞれに対応するサイドブロック12L、12R、出力部14等から構成される。
一対のピエゾ素子10L、10Rは、それぞれの一端(それぞれの中央側の端部)で出力部14と接続する。また、一対のピエゾ素子10L、10Rは、2つの剛壁としてのサイドブロック12L、12Rの間に設置され、それぞれの他端でサイドブロック12L、12Rと接続する。なお、ピエゾ素子10L、10Rは、出力部14との接続点を中心とした回転動作が可能な構成で出力部14と接続される。また、ピエゾ素子10L、10Rはそれぞれサイドブロック12L、12Rとの接続点を中心とした回転動作が可能な構成でサイドブロック12L、12Rと接続される。また、2つのサイドブロック12L、12Rはベース構造を介して互いに剛結合される。
一対のピエゾ素子10L、10Rの双方に電圧が印加される(充電される)とそれらは伸張する。そのため、ピエゾアクチュエータPZTは、一直線上に並ぶ一対のピエゾ素子10L、10Rの長手方向に垂直な出力軸の方向(図中のy方向)に座屈する。また、一対のピエゾ素子10L、10Rの双方の印加電圧が消失するとそれらは収縮する。そのため、ピエゾアクチュエータPZTは、電圧が印加される前の状態(一対のピエゾ素子10L、10Rが一直線に並び出力部14のy方向の変位が0の状態)に戻る。
また、ピエゾモータに適用されるピエゾアクチュエータPZTは、出力部14がもたらす双極性動作(出力部14がピエゾ素子10L、10Rが一直線に並んだ状態から上下の両方向にストローク(図中のストロークS2に対応)する動作)が可能に構成される。
このようなピエゾアクチュエータPZTを用いて、図2、図3に示すようなピエゾモータが実現される。
図2に示すように、ピエゾモータ(直動モータ)は、ローラフォロア22の中心の動作軌跡が正弦波になるカム溝を有する出力ロッド20と、連動する複数(本例では、6つ)のピエゾアクチュエータ(座屈式アクチュエータ)PZT1〜PZT6の段階的な双極性動作により駆動される。
ピエゾアクチュエータPZT1〜PZT6のそれぞれにおけるピエゾ素子の力に基づく各出力部14の往復運動は、各ローラフォロア22を介して線形の出力ロッド20の正弦波状の溝に垂直に力Fxi(i=1〜6)を及ぼす。そして、ピエゾアクチュエータPZT1〜PZT6のそれぞれの力Fxiの合力として、直動モータの推力Fxが出力ロッド20に作用する。
具体的には、図3に示すように、上下に6つのピエゾアクチュエータPZTを搭載した直動モータユニット30は、ピエゾアクチュエータPZTの双極性動作により出力ロッド20に作用する推力Fxで出力方向Dzに移動する。なお、図2ではカム溝が出力ロッド20の内部に形成されるのに対し図3ではカム溝が出力ロッド20の外縁に形成されるが動作原理は同じである。
また、本発明の実施例に係るピエゾ素子駆動回路により駆動制御されるピエゾモータは、座屈式アクチュエータ以外のピエゾアクチュエータにより駆動されるものであってもよい。また、ピエゾ素子駆動回路により駆動制御されるピエゾモータは回転モータであってもよい。
次に、本発明の実施例に係るピエゾ素子駆動回路について説明をする。なお、上述した複数のピエゾアクチュエータPZTにより構成されるピエゾモータ(4相以上の偶数相のピエゾアクチュエータで駆動されるピエゾモータ)では、互いに逆相で駆動される一対のピエゾアクチュエータが存在する。そして、本発明の実施例に係るピエゾ素子駆動回路は、互いに逆相で駆動される一対のピエゾアクチュエータPZTの駆動制御(充放電制御)に適している。また、上述した座屈式アクチュエータでは、1つのピエゾアクチュエータに2つのピエゾ素子10L、10Rが含まれるが、2つのピエゾ素子10L、10Rに対して同じタイミングで電圧の印加、消失が実行される。そこで、説明を簡単にするため、以下のピエゾ素子駆動回路では、一対のピエゾ素子が1つのピエゾ素子に対応するものとして説明を行う。
図4は、本発明の実施例に係るピエゾ素子駆動回路100の構成例を示す機能ブロック図である。ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾモータに含まれるピエゾアクチュエータ部55の駆動(充放電)制御を行うための回路である。
具体的には、ピエゾ素子駆動回路100は、制御部50、電源51、電源接続制御部52、インダクタ53、充放電選択部54、及びピエゾアクチュエータ部55を含む。
制御部50は、ピエゾ素子駆動回路100の動きを制御するコントローラである。本実施例では、制御部50は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、電源接続制御部52及び充放電選択部54に対して制御指令を出力する。
電源51は、ピエゾアクチュエータ部55に電力を供給可能な装置である。本実施例では、電源51は直流電源であり、電源電位Vsを安定的にピエゾアクチュエータ部55に供給できる。具体的には、電源51は、電源電位Vsを有する高電位端子51aと、基準電位を有する低電位端子51bとを有する。基準電位は、例えばグランド電位であり、典型的には0Vである。
電源接続制御部52は、電源51とインダクタ53との間の接続を制御する機能要素である。本実施例では、電源接続制御部52は、制御部50からの制御指令に応じ、電源51の高電位端子51a及び低電位端子51bとインダクタ53の第一端子53a及び第二端子53bとの間の接続・切断を制御する。
インダクタ53は、電流によって形成される磁場にエネルギを蓄えることができる受動素子である。本実施例では、インダクタ53は鉄芯コイルである。但し、軽量化、設置場所の確保等の必要に応じ、鎖交面積の大きい消磁コイルのような空芯コイルが用いられてもよい。
充放電選択部54は、充電対象のピエゾアクチュエータと放電対象のピエゾアクチュエータとを選択する機能要素である。本実施例では、充放電選択部54は、制御部50からの制御指令に応じ、インダクタ53の第一端子53a及び第二端子53bとピエゾアクチュエータ部55との間の接続・切断を制御する。具体的には、充放電選択部54は、インダクタ53の第一端子53aに接続される放電端子54aと、インダクタ53の第二端子53bに接続される充電端子54bと、ピエゾアクチュエータ部55を構成するピエゾ素子の高電位側に接続される高電位側端子54cとを有する。また、高電位側端子54cは、明確化のため1つのみが図示されているが、典型的にはピエゾ素子の数と同じ数だけ用意される。また、充電対象のピエゾアクチュエータと放電対象のピエゾアクチュエータは同じ一つのピエゾアクチュエータであってもよい。
ピエゾアクチュエータ部55は、1又は複数のピエゾ素子で構成されるアクチュエータである。ピエゾ素子は、圧電体に加えられた電圧を力に変換する受動素子である。本実施例では、ピエゾアクチュエータ部55は、複数のピエゾ素子を含む。但し、ピエゾアクチュエータ部55は単一のピエゾ素子で構成されてもよい。また、複数のピエゾ素子のそれぞれは静電容量が同じであってもよく異なっていてもよい。
次に、図5を参照し、ピエゾ素子駆動回路100の具体的な構成について説明する。なお、図5は、ピエゾ素子駆動回路100の構成例を示す回路図である。図5のピエゾ素子駆動回路100は、3つのピエゾ素子A1〜A3のそれぞれの充放電を制御して3つのピエゾ素子A1〜A3で構成されるピエゾアクチュエータ部55の駆動を制御する。
図5のピエゾ素子駆動回路100における電源接続制御部52は、スイッチSH及びスイッチSLを含む。スイッチSHは、電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間に設置されるスイッチである。スイッチSLは、電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間に設置されるスイッチである。
また、図5のピエゾ素子駆動回路100における充放電選択部54は、ダイオードDd、ダイオードDc、スイッチS1d〜S3d、及びスイッチS1c〜S3cを含む。また、充放電選択部54は、インダクタ53の第一端子53aに接続される放電端子54aと、インダクタ53の第二端子53bに接続される充電端子54bと、ピエゾ素子A1〜A3のそれぞれの高電位側に接続される高電位側端子54c1〜54c3とを有する。
ダイオードDdは、高電位側端子54c1〜54c3のそれぞれから放電端子54aへの電流を許容し、放電端子54aから高電位側端子54c1〜54c3のそれぞれへの電流を遮断する整流素子である。ダイオードDcは、充電端子54bから高電位側端子54c1〜54c3のそれぞれへの電流を許容し、高電位側端子54c1〜54c3のそれぞれから充電端子54bへの電流を遮断する整流素子である。
スイッチS1dは、放電端子54aと高電位側端子54c1との間に設置されるスイッチである。スイッチS1cは、充電端子54bと高電位側端子54c1との間に設置されるスイッチである。スイッチS2dは、放電端子54aと高電位側端子54c2との間に設置されるスイッチである。スイッチS2cは、充電端子54bと高電位側端子54c2との間に設置されるスイッチである。スイッチS3dは、放電端子54aと高電位側端子54c3との間に設置されるスイッチである。スイッチS3cは、充電端子54bと高電位側端子54c3との間に設置されるスイッチである。
また、本実施例ではスイッチSH、SL、S1d〜S3d、S1c〜S3cは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor: IGBT)で構成される。なお、スイッチSH、SL、S1d〜S3d、S1c〜S3cは、寄生ダイオード特性を有するMOSFET、寄生ダイオード特性を有しないバイポーラトランジスタ等の他の半導体スイッチング素子で構成されてもよい。また、フォトカプラ、ダーリントントランジスタ等で構成されてもよい。
次に、図6を参照し、ピエゾ素子駆動回路100の動作について説明する。なお、図6は、ピエゾ素子を充放電させる際のピエゾ素子駆動回路100の状態を示す図である。具体的には、図6(A)はピエゾ素子A1を放電させる際のピエゾ素子駆動回路100の状態を示し、図6(B)はピエゾ素子A2を充電させる際のピエゾ素子駆動回路100の状態を示す。また、図6の太実線矢印は電流の方向を示す。
具体的には、図6(A)に示すようにピエゾ素子A1を放電させる場合、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLを閉じて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dを閉じて放電端子54aと高電位側端子54c1との間を導通させる。その結果、ピエゾ素子A1の高電位側に蓄えられた電荷がインダクタ53に向かって移動し、ピエゾ素子A1の電気エネルギはインダクタ53に転送され、磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えられる。そして、ピエゾ素子A1の高電位側の電位は低電位側と同じ基準電位まで低下し、ピエゾ素子A1の端子間電圧は0(V)となる。
その後、図6(B)に示すようにピエゾ素子A2を充電させる場合、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチSLを開いて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間を遮断し、且つ、スイッチSHを閉じて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dを開いて放電端子54aと高電位側端子54c1との間を遮断し、且つ、スイッチS2cを閉じて充電端子54bと高電位側端子54c2との間を導通させる。その結果、ピエゾ素子A1の放電が停止される。そして、インダクタ53によるフライホイール電流によって、インダクタ53の磁気エネルギはピエゾ素子A2に転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2に蓄えられる。また、インダクタ53からピエゾ素子A2への電磁エネルギの転送と並行して電源51からの電気エネルギ(電流)もピエゾ素子A2へ流入可能となり、両者のエネルギの合成によってピエゾ素子A2は電源電位Vsまで充電される。
その後、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHを開いて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間を遮断する。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cを開いて充電端子54bと高電位側端子54c2との間を遮断する。その結果、ピエゾ素子A2の充電が停止される。
なお、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1の放電を終了させたとき或いはピエゾ素子A2の充電を終了させたときにインダクタ53に残留するフライホイール電流を逃すために、環流ダイオード、バリスタ等の図示しない電気素子を備える。
以上の構成により、ピエゾ素子駆動回路100は、インダクタ53をあたかもチャージポンプとして機能させることができる。具体的には、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1〜A3のうちの1又は複数から電磁エネルギをインダクタ53に転送した上で、その電磁エネルギをインダクタ53からピエゾ素子A1〜A3のうちの1又は複数に転送できる。そのため、ピエゾ素子から電源51への電荷の移動(回生)を経ることなく、ピエゾ素子からピエゾ素子への電荷の移動を可能にする。
また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1の電磁エネルギの全部をインダクタ53に転送するが、ピエゾ素子A1の電磁エネルギの一部のみをインダクタ53に転送することもできる。そのため、ピエゾ素子A1の高電位側の電位を所望のレベルに維持できる。
また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、1つのピエゾ素子の電磁エネルギのみをインダクタ53に転送するが、複数のピエゾ素子の電磁エネルギを同時にインダクタ53に転送することもできる。そのため、放電対象の複数のピエゾ素子のそれぞれの高電位側の電位を同時に所望のレベルに調整できる。なお、所望のレベルは、放電対象の全てのピエゾ素子で共通であってもよく、放電対象のピエゾ素子毎に異なるものであってもよい。また、ピエゾ素子駆動回路100は、インダクタ53の電磁エネルギを1つのピエゾ素子のみに転送するが、インダクタ53の電磁エネルギを複数のピエゾ素子に同時に転送することもできる。そのため、充電対象の複数のピエゾ素子のそれぞれの高電位側の電位を同時に所望のレベルに調整できる。なお、所望のレベルは、充電対象の全てのピエゾ素子で共通であってもよく、充電対象のピエゾ素子毎に異なるものであってもよい。
また、上述の実施例では、放電対象がピエゾ素子A1とされ、充電対象がピエゾ素子A2とされるが、放電対象及び充電対象が同じ1つのピエゾ素子とされてもよい。その場合、同じ1つのピエゾ素子の高電位側の電位を一時的に低下させた後で元の電位に復帰させることができる。
次に、図7を参照し、ピエゾ素子駆動回路100の別の構成例について説明する。なお、図7は、ピエゾ素子駆動回路100の別の構成例を示す回路図である。図7のピエゾ素子駆動回路100は、複数のピエゾ素子A1〜An(本実施例では、"n"は2以上の整数を表す。なお、図7は一例として少なくとも3つのピエゾ素子を含む構成を示す。)のそれぞれの充放電を制御してn個のピエゾ素子A1〜Anで構成されるピエゾアクチュエータ部55の駆動を制御する。本実施例では、ピエゾ素子A1〜Anは同じ静電容量を有する。但し、ピエゾ素子A1〜Anはそれぞれ異なる静電容量を有していてもよい。
図7のピエゾ素子駆動回路100における電源接続制御部52は、スイッチSH、スイッチSL、ダイオードDH、及びダイオードDLを含む。
スイッチSHは、電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間に設置されるスイッチである。スイッチSLは、電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間に設置されるスイッチである。具体的には、スイッチSHは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタSHa、寄生ダイオードSHb、及びドライバSHcを含む。ドライバSHcは、制御部50からの制御指令に応じて絶縁ゲートバイポーラトランジスタSHaのゲートに所定のゲート電圧を印加する。絶縁ゲートバイポーラトランジスタSHaは、所定のゲート電圧が印加されるとコレクタ・エミッタ間に電流が流れるようにする。スイッチSL及び後述の他のスイッチも同様の構成を有する。
ダイオードDHは、電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第二端子53bとの間に設置される環流ダイオードである。ダイオードDLは、電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第一端子53aとの間に設置される環流ダイオードである。
なお、図7のピエゾ素子駆動回路100における電源51、電源接続制御部52、及びインダクタ53は1枚の基板Bs上に配置される。
また、図7のピエゾ素子駆動回路100における充放電選択部54は、ダイオードD1d〜Dnd、ダイオードD1c〜Dnc、スイッチS1d〜Snd、及びスイッチS1c〜Sncを含む。また、充放電選択部54は、インダクタ53の第一端子53aに接続される放電端子54aと、インダクタ53の第二端子53bに接続される充電端子54bと、ピエゾ素子A1〜Anのそれぞれの高電位側に接続される高電位側端子54c1〜54cnとを有する。
ダイオードD1dは、高電位側端子54c1から放電端子54aへの電流を許容し、放電端子54aから高電位側端子54c1への電流を遮断する整流素子である。ダイオードD1cは、充電端子54bから高電位側端子54c1への電流を許容し、高電位側端子54c1から充電端子54bへの電流を遮断する整流素子である。ダイオードD2d〜Dnd、ダイオードD2c〜Dncについても同様である。
スイッチS1dは、放電端子54aと高電位側端子54c1との間に設置されるスイッチである。スイッチS1cは、充電端子54bと高電位側端子54c1との間に設置されるスイッチである。スイッチS2d〜Snd及びスイッチS2c〜Sncについても同様である。
また、図7のピエゾ素子駆動回路100は、スイッチS1H〜SnH、スイッチS1L〜SnL、及びヒートシンクH1〜Hnを含む。
スイッチS1Hは、電源51の高電位端子51aとピエゾ素子A1の高電位側との間に設置されるスイッチである。スイッチS2H〜SnHについても同様である。スイッチS1Lは、電源51の低電位端子51bとピエゾ素子A1の高電位側との間に設置されるスイッチである。スイッチS2L〜SnLについても同様である。なお、スイッチS1H〜SnH及びスイッチS1L〜SnLは、フォトカプラ、ダーリントントランジスタ等で構成されてもよい。
ヒートシンクH1は、ピエゾ素子A1、スイッチS1d、スイッチS1c、スイッチS1H、スイッチS1L、ダイオードD1d、ダイオードD1c等が発する熱を放出する機能要素である。ヒートシンクH2〜Hnについても同様である。
なお、図7のピエゾ素子駆動回路100における充放電選択部54及びピエゾアクチュエータ部55は、複数の基板B1〜Bn上に分散して配置される。具体的には、ピエゾ素子A1に関連する回路部分が基板B1上に配置され、ピエゾ素子A2に関連する回路部分が基板B2上に配置されるというように、1つのピエゾ素子を含む回路部分につき1枚の基板が用意される。
次に、図8及び図9を参照し、図7のピエゾ素子駆動回路100を用いてピエゾ素子A1からピエゾ素子A2へ電荷(電気エネルギ)を転送する処理(以下、「第1エネルギ転送処理」とする。)について説明する。なお、図8及び図9は、ピエゾ素子を充放電させる際のピエゾ素子駆動回路100の状態を示す図である。また、図8及び図9のそれぞれにおける太実線矢印は電流の方向を示し、ハッチング領域はその領域に含まれるスイッチが導通状態にあることを示す。
具体的には、図8に示すようにピエゾ素子A1からピエゾ素子A2へ電荷を転送する場合、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dを閉じて放電端子54aと高電位側端子54c1との間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cを閉じて充電端子54bと高電位側端子54c2との間を導通させる。その結果、ピエゾ素子A1の高電位側に蓄えられた電荷がインダクタ53を経由してピエゾ素子A2の高電位側に移動し、ピエゾ素子A1の電気エネルギはピエゾ素子A2に転送される。なお、ピエゾ素子A1の高電位側の電位は低電位側と同じ基準電位まで低下することはない。また、ピエゾ素子A2の高電位側の電位は電荷移動前のピエゾ素子A1の高電位側の電位まで上昇することはない。実際の電気回路には内部抵抗が存在するためである。
そこで、制御部50は、ピエゾ素子A1からピエゾ素子A2への電気エネルギの転送が終了した後、ピエゾ素子A1をさらに放電させ、且つ、ピエゾ素子A2をさらに充電させる。ピエゾ素子の高電位側の電荷の過不足を調整するためである。具体的には、ピエゾ素子A1の高電位側の電位を基準電位まで低下させるためであり、また、ピエゾ素子A2の高電位側の電位を所望の電位(例えば電源電位Vs)まで上昇させるためである。
具体的には、図9に示すようにピエゾ素子A1をさらに放電させる場合、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dを開いて放電端子54aと高電位側端子54c1との間を遮断する。その上で、制御部50は、スイッチS1Lに対して制御指令を出力し、スイッチS1Lを閉じてピエゾ素子A1の高電位側と低電位側とを導通させる。その結果、ピエゾ素子A1の高電位側に残存する電荷はピエゾ素子A1の低電位側に移動し、ピエゾ素子A1は追加的に放電される。
また、図9に示すようにピエゾ素子A2をさらに充電させる場合、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cを開いて充電端子54bと高電位側端子54c2との間を遮断する。その上で、制御部50は、スイッチS2Hに対して制御指令を出力し、スイッチS2Hを閉じて電源51の高電位端子51aとピエゾ素子A2の高電位側とを導通させる。その結果、ピエゾ素子A2の高電位側の電位は電源電位Vsまで上昇し、ピエゾ素子A2は追加的に充電される。
以上の構成により、ピエゾ素子駆動回路100は、電源51を介さずにピエゾ素子A1の電気エネルギをピエゾ素子A2に転送した上で、ピエゾ素子A1の高電位側が基準電位となるまでピエゾ素子A1を追加的に放電させ、且つ、ピエゾ素子A2の高電位側が電源電位Vsとなるまでピエゾ素子A2を追加的に充電させることができる。
また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1の電磁エネルギをピエゾ素子A2のみに転送するが、ピエゾ素子A1の電磁エネルギを複数のピエゾ素子に同時に転送することもできる。そのため、充電対象の複数のピエゾ素子のそれぞれの高電位側の電位を同時に所望のレベルに調整できる。なお、所望のレベルは、充電対象の全てのピエゾ素子で共通であってもよく、充電対象のピエゾ素子毎に異なるものであってもよい。
また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1の電磁エネルギのみをピエゾ素子A2に転送するが、複数のピエゾ素子の電磁エネルギを同時にピエゾ素子A2に転送することもできる。そのため、放電対象の複数のピエゾ素子のそれぞれの高電位側の電位を同時に所望のレベルに調整できる。なお、所望のレベルは、放電対象の全てのピエゾ素子で共通であってもよく、放電対象のピエゾ素子毎に異なるものであってもよい。
しかしながら、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1の電磁エネルギをピエゾ素子A2に転送した後、ピエゾ素子A1の高電位側と低電位側とを短絡してピエゾ素子A1を追加的に放電させ、且つ、ピエゾ素子A2の高電位側を電源51の高電位端子51aに接続してピエゾ素子A2を追加的に充電させる。そのため、ピエゾ素子駆動回路100は、追加的な充放電の際に突入電流を発生させるおそれがあり、スイッチS1L、スイッチS2Hに過大な負荷を掛けるおそれがある。そこで、ピエゾ素子駆動回路100は、追加的な充放電を行うことなく、ピエゾ素子A1の高電位側の電位を基準電位まで低下させ、且つ、ピエゾ素子A2の高電位側の電位を所望の電位まで上昇させることもできる。
ここで、図10〜図12を参照し、図7のピエゾ素子駆動回路100を用いて、追加的な充放電を行うことなく、ピエゾ素子A1の高電位側の電位を基準電位まで低下させ、且つ、ピエゾ素子A2の高電位側の電位を所望の電位まで上昇させる処理(以下、「第2エネルギ転送処理」とする。)について説明する。なお、図10〜図12は、ピエゾ素子を充放電させる際のピエゾ素子駆動回路100の状態を示す図である。また、図10〜図12のそれぞれにおける太実線矢印は電流の方向を示し、ハッチング領域はその領域に含まれるスイッチが導通状態にあることを示す。
この第2エネルギ転送処理では、ピエゾ素子駆動回路100は、インダクタ53をあたかもチャージポンプとして機能させる。具体的には、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1の電気エネルギを磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えさせ、さらにそのインダクタ53に蓄えさせた磁気エネルギを電気エネルギとしてピエゾ素子A2に転送する。
より具体的には、図10に示すようにピエゾ素子A1からインダクタ53へエネルギを転送する場合、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLを閉じて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dを閉じて放電端子54aと高電位側端子54c1との間を導通させる。その結果、ピエゾ素子A1の高電位側に蓄えられた電荷がインダクタ53に移動し、ピエゾ素子A1の電気エネルギはインダクタ53に転送され、磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えられる。
上述の状態を維持し続ける場合、ピエゾ素子A1の高電位側の電位は低電位側と同じ基準電位まで低下する。ピエゾ素子A1の高電位側がインダクタ53を介して電源51の低電位端子51bに接続され、且つ、インダクタ53の第一端子53a側の通電経路がダイオードDL等を介して電源51の低電位端子51bに接続されているためである。そのため、ピエゾ素子A1からインダクタ53へのエネルギの転送が終了した後、ピエゾ素子A1からの過剰な放電は発生しない。
ピエゾ素子A1の高電位側の電位が基準電位まで低下した後、制御部50は、図11に示すように、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dを開いて放電端子54aと高電位側端子54c1との間を遮断する。また、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLを開いて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間を遮断する。その上で、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHを閉じて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cを閉じて充電端子54bと高電位側端子54c2との間を導通させる。
その結果、インダクタ53に蓄えられた磁気エネルギはピエゾ素子A2に転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2に蓄えられる。具体的には、インダクタ53によるフライホイール電流によって、インダクタ53の磁気エネルギはピエゾ素子A2に転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2に蓄えられる。この場合、インダクタ53からピエゾ素子A2への電磁エネルギの転送と並行してピエゾ素子A2は電源51によって電源電位Vsまで充電される。ピエゾ素子A2の高電位側の電荷の不足を調整するためである。なお、充電開始時に突入電流が発生することはない。スイッチの切り替えなしに電磁エネルギの転送から電源51による充電への移行が円滑に行われるためである。
ピエゾ素子A2の高電位側の電位が電源電位Vsまで上昇した後、制御部50は、図12に示すように、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cを開いて充電端子54bと高電位側端子54c2との間を遮断する。また、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHを開いて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間を遮断する。その結果、インダクタ53に残存する磁気エネルギは、電気エネルギとして電源51に回生される。具体的には、インダクタ53によるフライホイール電流によって、インダクタ53の磁気エネルギは電気エネルギとして電源51に回生され、インダクタ53における過剰エネルギが調整される。
以上の構成により、ピエゾ素子駆動回路100は、追加的な充放電を行うことなく、ピエゾ素子A1の高電位側の電位を基準電位まで低下させ、且つ、ピエゾ素子A2の高電位側の電位を電源電位Vsまで上昇させることができる。
また、ピエゾ素子駆動回路100は、スイッチS1H〜SnH、スイッチS1L〜SnLを動作させることなく、第2エネルギ転送処理を実行できる。そのため、ピエゾ素子駆動回路100は、スイッチS1H〜SnH、スイッチS1L〜SnLを省略可能である。
そこで、図13及び図14を参照し、ピエゾ素子駆動回路100の別の構成例について説明する。図13は、ピエゾ素子駆動回路100のさらに別の構成例を示す回路図である。図13のピエゾ素子駆動回路100は、スイッチS1H〜SnHの代わりにダイオードD1H〜DnHを有し、スイッチS1L〜SnLの代わりにダイオードD1L〜DnLを有する点で図7のピエゾ素子駆動回路100と相違するがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
ダイオードD1Hは、ピエゾ素子A1の高電位側から電源51の高電位端子51aへの電流を許容し、電源51の高電位端子51aからピエゾ素子A1の高電位側への電流を遮断する整流素子である。ダイオードD2H〜ダイオードDnHについても同様である。
ダイオードD1Lは、電源51の低電位端子51bからピエゾ素子A1の高電位側への電流を許容し、ピエゾ素子A1の高電位側から電源51の低電位端子51bへの電流を遮断する整流素子である。ダイオードD2L〜ダイオードDnLについても同様である。
この構成により、図13のピエゾ素子駆動回路100は、図7のピエゾ素子駆動回路100と同様に第2エネルギ転送処理を実行できる。また、ピエゾ素子A1〜Anの高電位側の電位を電源51の低電位端子51bにおける基準電位以上で且つ電源51の高電位端子51aにおける電源電位Vs以下に制御できる。
図14は、ピエゾ素子駆動回路100のさらに別の構成例を示す回路図である。図14のピエゾ素子駆動回路100は、スイッチS1H〜SnH及びスイッチS1L〜SnLを省略した点で図7のピエゾ素子駆動回路100と相違するがその他の点で共通する。
この構成により、図14のピエゾ素子駆動回路100は、スイッチS1H〜SnH及びスイッチS1L〜SnLを省略した上で、図7のピエゾ素子駆動回路100と同様に第2エネルギ転送処理を実行できる。
次に、図15を参照し、ピエゾ素子駆動回路100のさらに別の構成例について説明する。なお、図15は、ピエゾ素子駆動回路100のさらに別の構成例を示す回路図である。図15のピエゾ素子駆動回路100は、電源接続制御部52がHブリッジを構成する点、及び、充放電選択部54が充放電端子54L、54Rを有する点で図7のピエゾ素子駆動回路100と相違するがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
図15のピエゾ素子駆動回路100における電源接続制御部52は、スイッチSHL、スイッチSHR、スイッチSLL、及びスイッチSLRを含む。スイッチSHLは、電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間に設置されるスイッチである。スイッチSHRは、電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第二端子53bとの間に設置されるスイッチである。スイッチSLLは、電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第一端子53aとの間に設置されるスイッチである。スイッチSLRは、電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間に設置されるスイッチである。
また、図15のピエゾ素子駆動回路100における充放電選択部54は、インダクタ53の第一端子53aに接続される充放電端子54Lと、インダクタ53の第二端子53bに接続される充放電端子54Rと、ピエゾ素子A1L〜AnLのそれぞれの高電位側に接続される高電位側端子54c1L〜54cnLと、ピエゾ素子A1R〜AnRのそれぞれの高電位側に接続される高電位側端子54c1R〜54cnRとを有する。
充放電端子54L、54Rは、放電端子としても充電端子としても機能し得る端子である。具体的には、ピエゾ素子A1L〜AnLのうちの1又は複数から、ピエゾ素子A1R〜AnRのうちの1又は複数に電気エネルギを転送する場合、充放電端子54Lは放電端子として機能し、充放電端子54Rは充電端子として機能する。また、ピエゾ素子A1R〜AnRのうちの1又は複数から、ピエゾ素子A1L〜AnLのうちの1又は複数に電気エネルギを転送する場合、充放電端子54Lは充電端子として機能し、充放電端子54Rは放電端子として機能する。
ここで、図16〜図19を参照し、図15のピエゾ素子駆動回路100を用いて1のピエゾ素子から他のピエゾ素子へ電荷(電気エネルギ)を転送する処理について説明する。なお、図16〜図19は、ピエゾ素子を充放電させる際のピエゾ素子駆動回路100の状態を示す図である。また、図16〜図19のそれぞれにおける太実線矢印は電流の方向を示し、ハッチング領域はその領域に含まれるスイッチが導通状態にあることを示す。
ピエゾ素子駆動回路100は、インダクタ53をあたかもチャージポンプとして機能させる。具体的には、ピエゾ素子駆動回路100は、図16及び図17に示すように、ピエゾ素子A1Lの電気エネルギを磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えさせ、さらにそのインダクタ53に蓄えさせた磁気エネルギを電気エネルギとしてピエゾ素子A2Rに転送する。この場合、充放電選択部54の充放電端子54Lは放電端子として機能し、充放電端子54Rは充電端子として機能する。
また、ピエゾ素子駆動回路100は、図18及び図19に示すように、ピエゾ素子A1Rの電気エネルギを磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えさせ、さらにそのインダクタ53に蓄えさせた磁気エネルギを電気エネルギとしてピエゾ素子A2Lに転送する。この場合、充放電選択部54の充放電端子54Lは充電端子として機能し、充放電端子54Rは放電端子として機能する。
より具体的には、図16に示すようにピエゾ素子A1Lからインダクタ53へ電磁エネルギを転送する場合、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLRを閉じて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dLを閉じて充放電端子54Lと高電位側端子54c1Lとの間を導通させる。その結果、ピエゾ素子A1Lの高電位側に蓄えられた電荷がインダクタ53に移動し、ピエゾ素子A1Lの電気エネルギはインダクタ53に転送され、磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えられる。
この場合、ピエゾ素子A1Lの高電位側の電位は低電位側と同じ基準電位まで低下する。ピエゾ素子A1Lの高電位側がインダクタ53を介して電源51の低電位端子51bに接続されるためである。そのため、制御部50は、ピエゾ素子A1Lからインダクタ53への電磁エネルギの転送が終了した後、ピエゾ素子A1Lをさらに放電させる必要はない。
ピエゾ素子A1Lの高電位側の電位が基準電位まで低下した後、制御部50は、図17に示すように、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dLを開いて充放電端子54Lと高電位側端子54c1Lとの間を遮断する。また、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLRを開いて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第二端子53bとの間を遮断する。その上で、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHLを閉じて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cRを閉じて充放電端子54Rと高電位側端子54c2Rとの間を導通させる。
その結果、インダクタ53に蓄えられた磁気エネルギはピエゾ素子A2Rに転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2Rに蓄えられる。具体的には、インダクタ53によるフライホイール電流によって、インダクタ53の磁気エネルギはピエゾ素子A2Rに転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2Rに蓄えられる。この場合、インダクタ53からピエゾ素子A2Rへの電磁エネルギの転送に続き、ピエゾ素子A2Rは電源51によって電源電位Vsまで充電される。ピエゾ素子A2Rの高電位側の電荷の不足を調整するためである。なお、充電開始時に突入電流が発生することはない。スイッチの切り替えなしに電磁エネルギの転送から電源51による充電への移行が円滑に行われるためである。
ピエゾ素子A2Rの高電位側の電位が電源電位Vsまで上昇した後、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cRを開いて充放電端子54Rと高電位側端子54c2Rとの間を遮断する。また、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHLを開いて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第一端子53aとの間を遮断する。その結果、インダクタ53に残存する磁気エネルギは、電気エネルギとして電源51に回生される。具体的には、インダクタ53によるフライホイール電流によってインダクタ53の磁気エネルギは電気エネルギとして電源51に回生され、インダクタ53における過剰エネルギが調整される。
また、図18に示すようにピエゾ素子A1Rからインダクタ53へ電磁エネルギを転送する場合、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLLを閉じて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第一端子53aとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dRを閉じて充放電端子54Rと高電位側端子54c1Rとの間を導通させる。その結果、ピエゾ素子A1Rの高電位側に蓄えられた電荷がインダクタ53に移動し、ピエゾ素子A1Rの電気エネルギはインダクタ53に転送され、磁気エネルギとしてインダクタ53に蓄えられる。
この場合、ピエゾ素子A1Rの高電位側の電位は低電位側と同じ基準電位まで低下する。ピエゾ素子A1Rの高電位側がインダクタ53を介して電源51の低電位端子51bに接続されるためである。そのため、制御部50は、ピエゾ素子A1Rからインダクタ53への電磁エネルギの転送が終了した後、ピエゾ素子A1Rをさらに放電させる必要はない。
ピエゾ素子A1Rの高電位側の電位が基準電位まで低下した後、制御部50は、図19に示すように、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS1dRを開いて充放電端子54Rと高電位側端子54c1Rとの間を遮断する。また、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSLLを開いて電源51の低電位端子51bとインダクタ53の第一端子53aとの間を遮断する。その上で、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHRを閉じて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第二端子53bとの間を導通させる。また、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cLを閉じて充放電端子54Lと高電位側端子54c2Lとの間を導通させる。
その結果、インダクタ53に蓄えられた磁気エネルギはピエゾ素子A2Lに転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2Lに蓄えられる。具体的には、インダクタ53によるフライホイール電流によって、インダクタ53の磁気エネルギはピエゾ素子A2Lに転送され、電気エネルギとしてピエゾ素子A2Lに蓄えられる。この場合、インダクタ53からピエゾ素子A2Lへの電磁エネルギの転送に続き、ピエゾ素子A2Lは電源51によって電源電位Vsまで充電される。ピエゾ素子A2Lの高電位側の電荷の不足を調整するためである。なお、充電開始時に突入電流が発生することはない。スイッチの切り替えなしに電磁エネルギの転送から電源51による充電への移行が円滑に行われるためである。
ピエゾ素子A2Lの高電位側の電位が電源電位Vsまで上昇した後、制御部50は、充放電選択部54に対して制御指令を出力し、スイッチS2cLを開いて充放電端子54Lと高電位側端子54c2Lとの間を遮断する。また、制御部50は、電源接続制御部52に対して制御指令を出力し、スイッチSHRを開いて電源51の高電位端子51aとインダクタ53の第二端子53bとの間を遮断する。その結果、インダクタ53に残存する磁気エネルギは電気エネルギとして電源51に回生される。具体的には、インダクタ53によるフライホイール電流によって、インダクタ53の磁気エネルギは電気エネルギとして電源51に回生され、インダクタ53における過剰エネルギが調整される。
以上の構成により、ピエゾ素子駆動回路100は、インダクタ53をあたかもチャージポンプとして機能させることができる。具体的には、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1L〜AnLのうちの1又は複数から電磁エネルギをインダクタ53に転送した上で、その電磁エネルギをインダクタ53からピエゾ素子A1R〜AnRのうちの1又は複数に転送できる。また、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1R〜AnRのうちの1又は複数から電磁エネルギをインダクタ53に転送した上で、その電磁エネルギをインダクタ53からピエゾ素子A1L〜AnLのうちの1又は複数に転送できる。そのため、ピエゾ素子から電源51への電荷の移動(回生)を経ることなく、ピエゾ素子からピエゾ素子への電荷の移動を可能にする。
また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1Lの電磁エネルギをピエゾ素子A2Rのみに転送するが、ピエゾ素子A1Lの電磁エネルギを複数のピエゾ素子に同時に転送することもできる。また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1Rの電磁エネルギをピエゾ素子A2Lのみに転送するが、ピエゾ素子A1Rの電磁エネルギを複数のピエゾ素子に同時に転送することもできる。そのため、充電対象の複数のピエゾ素子のそれぞれの高電位側の電位を同時に所望のレベルに調整できる。なお、所望のレベルは、充電対象の全てのピエゾ素子で共通であってもよく、充電対象のピエゾ素子毎に異なるものであってもよい。
また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1Lの電磁エネルギのみをピエゾ素子A2Rに転送するが、複数のピエゾ素子の電磁エネルギを同時にピエゾ素子A2Rに転送することもできる。また、上述の実施例では、ピエゾ素子駆動回路100は、ピエゾ素子A1Rの電磁エネルギのみをピエゾ素子A2Lに転送するが、複数のピエゾ素子の電磁エネルギを同時にピエゾ素子A2Lに転送することもできる。そのため、放電対象の複数のピエゾ素子のそれぞれの高電位側の電位を同時に所望のレベルに調整できる。なお、所望のレベルは、放電対象の全てのピエゾ素子で共通であってもよく、放電対象のピエゾ素子毎に異なるものであってもよい。
また、上述の実施例では、充放電端子54Lに接続されるピエゾ素子A1L〜AnLの数は、充放電端子54Rに接続されるピエゾ素子A1R〜AnRの数と同じであるが、異なる数であってもよい。
また、上述の実施例では、図7のピエゾ素子駆動回路100におけるスイッチS1H〜SnH及びスイッチS1L〜SnLのような追加的な充放電を行うための構成要素を省略するが、それらの構成要素を含んでいてもよい。その場合、ピエゾ素子駆動回路100は、必要に応じて第1エネルギ転送処理と第2エネルギ転送処理とを使い分けてもよい。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
また、特許請求の範囲における記載「電気エネルギの過不足の調整」は、放電工程後に所望の放電レベルを超えて放電対象の静電アクチュエータに放電されずに残る電気エネルギを発生させないこと、充電工程後に充電対象の静電アクチュエータを所望の充電レベルまで充電すること、放電工程において所望の放電レベルを超えて静電アクチュエータを放電させないこと、充電工程において所望の充電レベルを超えて静電アクチュエータを充電させないこと、インダクタ53に蓄えられた磁気エネルギを電気エネルギとして電源51に回生させること等を含む。