JP2014082930A - 座屈型アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】大きな変位増幅ゲインをもたらし、且つ、大きな出力仕事を効率的に変換する機構を提供すること。
【解決手段】座屈型アクチュエータ100は、出力部14と、出力部14に関して対称に配置される圧電素子10L、10Rと、圧電素子10L、10Rのそれぞれの両側に配置されるキャップ10Lc、10Le、10Rc、10Reと、キャップ10Le、10Reのそれぞれと転がり接触するサイドブロック12L、12Rと、サイドブロック12L、12Rを剛結合するフレーム24とを含む。出力部14は、キャップ10Lc、10Rcの間に転がり接触で保持されると共に、圧電素子10L、10Rへの印加電圧に応じた出力を発生させる。
【選択図】図12

Description

本発明は、座屈型アクチュエータに関し、特に、圧電素子を含む座屈型アクチュエータに関する。
圧電素子等の容量性アクチュエータは、エネルギをほとんど消費することなく、一定の姿勢を維持しながら力を発生させることができる。対照的に、電磁アクチュエータは、トルクを発生させる場合には常にエネルギを消費する。具体的には、電磁アクチュエータは、電流の供給を受けてかなりの量のエネルギを消費するばかりでなく、大きなヒートシンク又は強制冷却システムを用いて頻繁に除去されなければならない熱を発生させる。
製造業等で使用されるロボットは、かなりの重力荷重及び他の非慣性荷重を長時間にわたって支えることが要求される。図1は、ハンドドリルを保持するタスク及びワークピースに穴を空けるタスクを含む一連のタスクをロボットが実行したときの肘関節トルク及び肘関節速度の実験データを示す。図1のデータは、80%以上の時間にわたり、アクチュエータが静止位置でほぼ一定の荷重を支える必要があることを示している。残りの時間では、アクチュエータは、様々な肘関節トルク及び肘関節速度を提供しなければならない。
トルクと速度の関係を示すデータはタスクの内容に応じて異なるが、実質的に動きのない状態でほぼ一定のトルクを維持するためにかなりの時間が費やされることは注目に値する。この期間中、ロボットは動いていないわけではなく、穴空けタスクを実行したり、ワークピースをしっかりと保持したりしている。このように、今日のロボット応用において支配的である電磁アクチュエータは、トルクを発生させるために電流を必要とするため、エネルギ効率の点で明らかに不利である。
この事実は、圧電素子に関する研究の動機付けとなっている。ほぼ一定のトルク荷重を支えるためのエネルギ消費を無くすことはアクチュエータのエネルギ効率を著しく向上させることができるためである。
際立った潜在的特徴にもかかわらず、チタン酸ジルコン酸鉛(Lead Zirconate Titanate (PZT))等の圧電材料でできた圧電素子は、広範なロボットシステムへの適用性を制限する欠点を有する。そのうちで特に厄介な欠点は、圧電素子が0.1%のオーダーの極めて小さな歪みしかもたらさないという点にある。そのため、圧電素子から有用なエネルギを取り出すにはいくつかの機構が必要となる。
例えば、超音波モータは、小さな周期運動を大きな変位に拡大するために摩擦駆動機構を用いる。そのため、超音波モータは、限定的な力の適用の下で正確な位置決めをもたらすのに有効である。しかしながら、摩擦駆動機構は、特定の装置及びシステムへの適用には有効であっても、接触面に関する厳格な管理を必要とし、その管理はしばしば困難なものとなる。このように、超音波モータは、基本的に位置決めアクチュエータとして使用され、ロボット応用において重要となる力の制御には使用できない。
圧電素子の出力を機械的システムに伝達するために用いられる別のタイプの機構には、変位増幅機構がある。具体的には、圧電素子の小さな変位を増幅するために撓み機構が積極的に用いられている。しかしながら、撓み機構の機械的剛性を検討する際に常に重要なトレードオフが存在していた。すなわち、撓み機構は、伝達される力を支えるのに十分な剛性を有する必要があるが、剛性が大きすぎるとその出力変位を制限してしまう。通常、最適化された撓み機構は、約10倍の増幅をもたらすが、出力エネルギを半分に低減させてしまう。また、より大きな変位増幅を得るため、撓み機構は、入れ子構造内に配置される場合があるが、この場合にも上述と同じトレードオフに悩まされることとなる。
このように、撓み機構は、その撓み機構を通じて伝達される正味出力仕事が、圧電素子が生成可能な出力仕事に比べて大幅に小さいという問題を有する。その撓み機構でのコンプライアンスのために、圧電素子で生成される力がその最大値(ブロッキング力)よりもかなり低いものとなるためである。また、撓み機構のジョイントでの剛性も出力仕事を低減させる。圧電素子の出力変位がその最大値(自由変位)よりもかなり小さいものとなるためである。このように、撓み機構のこれらの特性は、変位増幅機構のエネルギ伝達性を著しく低下させる。
上述より、大きな変位増幅ゲインをもたらし、且つ、実現可能な出力仕事の大部分を効率的に変換する機構の提供が望まれている。
本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、出力部と、前記出力部に関して対称に配置される2つの圧電素子と、前記2つの圧電素子のそれぞれの両側に配置される4つのキャップと、前記出力部と転がり接触する2つのキャップ以外の2つのキャップのそれぞれと転がり接触する2つのブロックと、前記2つのブロックを剛結合するベース構造と、を含み、前記出力部は、前記4つのキャップのうちの2つのキャップの間に転がり接触で保持されると共に、前記2つの圧電素子への印可電圧に応じた出力を発生させる。
上述の手段により、大きな変位増幅ゲインをもたらし、且つ、実現可能な出力仕事の大部分を効率的に変換する機構が提供される。
ロボットが製造作業を行ったときの肘関節トルク及び肘関節速度の実験データを示す図である。 圧電素子の1サイクルの動きによってもたらされる出力仕事及びその理論的限界を示す図である。 圧電素子及び一般的な変位増幅機構の集中パラメータモデルである。 座屈型アクチュエータの概略、圧電素子単体の力・変位特性、及び、圧電素子を含む座屈型アクチュエータの対応する力・変位特性を示す図である。 撓みを発生させることのない座屈型アクチュエータの概略図である。 形状記憶合金(Shape Memory Alloy(SMA))製のワイヤを用いて圧電素子にプリロード(予荷重)を付与する構成を示す図である。 予荷重補償ばねの利点を説明する図である。 撓みを発生させることのない座屈型アクチュエータの構成例を示す図である。 座屈型アクチュエータの双極性動作を示す図である。 圧電アクチュエータ型直動モータの基本アーキテクチャを示す図である。 座屈型アクチュエータの変位増幅率を示す図である。 転がり接触式座屈型アクチュエータの概念構成を示す図である。 転がり接触式座屈型アクチュエータにおけるジョイント機構を構成する構成要素の接触面の構成例を示す図である。 転がり接触式座屈型アクチュエータの詳細図である。 転がり接触式座屈型アクチュエータのコンプライアンス特性を示す図である。 座屈型アクチュエータの出力特性を示す図である。 接触剛性の変化を示す図である。 位相配列型(Phased Array Shaped(PAS))機構によって変換される座屈型アクチュエータの変位と推力の特性を示す図である。 構成要素であるユニットアクチュエータの数に応じた圧電アクチュエータ型直動モータの最大出力特性を示す図である。 圧電アクチュエータ型直動モータの設計モデルを示す図である。 ユニットアクチュエータの設計モデルを示す図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
最初に、図2を参照して、圧電素子の出力仕事の理論的限界について検討し、最大出力エネルギを発生させる条件を導き出す。その上で、その最大出力エネルギを発生させる条件に適合する、撓みを発生させることのない、構造座屈を利用する座屈型アクチュエータを提示する。
なお、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータでは撓み機構が使用されることはない。また、全ての構成要素は転がり線接触で接触し、その接触力は静止摩擦力を含まない。さらに、本実施例では、出力仕事を倍増するためにほぼ一定のプリロード(予荷重)を圧電素子に適用する強制変位生成部(制御された固定変位をもたらす要素)としての予荷重機構を含む。なお、予荷重機構の詳細については後述する。
ここで、図2(a)に示す力−変位平面について検討する。圧電素子の出力特性は、この平面内で循環的な軌跡を辿ると仮定する。圧電素子によって生み出される仕事は、以下の式に示すように、力−変位平面内の閉ループ積分によって与えられる。
この出力仕事を最大にするため、圧電素子の潜在能力を最大限に利用する。ここでは、明瞭化のため、図2(b)に示すような線形の力−変位特性を想定する。なお、図2(b)は、圧電素子の出力である変位xと推力Fの関係を示す図である。圧電素子が圧縮力(F≧0)のみをもたらすときに所与の最大電圧が適用された場合、最大出力仕事は、原点Oと、ブロッキング力点Aと、自由変位点Bとを繋ぐ三角形の面積によって与えられる。
しかし、実際には、正味の利用可能な出力仕事は、この理論的限界よりもはるかに小さい。特に、変位を増幅するために撓み機構が用いられると、その撓み機構は、圧電素子の動きを妨げながら、構造的剛性を低減させる。一般的には、そのような変位増幅機構の静的特性は、図3(a)に示すように、1つの直列ばねと1つの並列ばねを含む単純なモデルで表される。なお、圧電素子自体は、剛性KPZTを有する。
その撓み機構のために、圧電素子は、圧電素子の伸張を妨げる追加的な剛性Kparallelに対処しなければならない。さらに、その撓み機構は、図3(b)に示すようにジョイント(幅の狭いスロット)のところで不可避的にコンプライアンスを示し、出力動作の方向における剛性を低減させる結果をもたらす。これらのコンプライアンス要素は、図3(a)に示すように、圧電素子と負荷との間にある、剛性Kserialを有する直列ばねによって合成されて表される。この直列コンプライアンスのために、圧電素子による力は、その最大点であるブロッキング力に達することができない。そのため、図2(b)に示すように、圧電素子による力は、より低いレベルである点Dに到達したところでその増大が終わってしまう。なお、直線ODの傾きは、直列ばねの剛性Kserialを反映している。この傾きが小さいほど、正味出力仕事は顕著に減少する。また、三角形ODB’の面積で示されるように、並列剛性Kparallelも出力仕事を低減させる。この分析から、理想的な変位増幅機構は、無限大の直列剛性(Kserial=∞)と、値ゼロの並列剛性(Kparallel=0)を有する必要があることが分かる。この条件に近づくために、以下に説明するような、撓みを発生させることのないタイプの座屈型アクチュエータを用いることができる。
なお、上述の最大出力仕事は、圧電素子が圧縮力(F≧0)のみを生成できる場合のものである。そのため、負の力が許容される場合、その出力仕事を増大させることができる。これは、予荷重機構を用いることによって実現される。
ここで、最大のブロッキング力と同じ大きさの予荷重が適用される場合を想定する。力−変位平面は、図2(c)に示すように、原点をシフトさせることによって描き直され、力軸のプラス側及びマイナス側の双方に拡張される。その結果、理論的な最大出力仕事は倍増する。
平行四辺形の面積に相当する最大出力仕事maxWoutは、maxWout=Fblock×xfreeで与えられる。但し、この理論的限界は、圧電素子の変位にかかわらず、最大でブロッキング力Fblockまでの負の力を出力できるように、予荷重が厳密に一定に維持される場合に実現される。出力変位に関して予荷重が変化する(通常は増大する)場合、その予荷重は、追加的な並列剛性としてモデル化され、その結果、出力仕事を低減させる。

[座屈型アクチュエータ]
圧電素子の作動に用いられる圧電材料の欠点は、0.1%というその限られた歪みの大きさにある。そのため、圧電素子から荷重への機械的仕事の変換の際の上述の欠点に対処するために変位増幅機構が必要となる。
撓み機構は、圧電素子の小さな歪みを増幅するための手段のうちで最も一般的なものである。通常の撓み機構は、歪みを約5〜10倍に増幅できる。また、変位増幅ゲインを大きくするために、多段増幅が採用される場合もある。例えば、菱形入れ子機構は、2段階で80倍以上の大きさの変位をもたらす。これら既存の変位増幅機構は、5〜10のゲインに限定される三角法的運動学的増幅の準線形範囲を用いる。
本実施例では、座屈現象を利用する非線形変位増幅機構が採用される。座屈は、構造力学における際立った非線形現象であり、ほとんどの適用例では望ましくない挙動とされる。しかしながら、座屈は、その特異点の近くで桁違いに大きな変位増幅をもたらす。
図4(a)に示すように、一対の圧電素子としての圧電素子10L、10Rは、2つの剛壁としてのサイドブロック12L、12Rの間に配置される。それら2つの圧電素子10L、10Rは、その中央で、出力部としてのキーストーン14と接触する。なお、2つのサイドブロック12L、12Rはベース構造を介して互いに剛結合される。
2つの圧電素子10L、10Rの双方に電圧が掛けられるとそれらは伸張する。そして、座屈型アクチュエータ100は、一直線上に並ぶ一対の圧電素子10L、10Rの長手方向に垂直な出力軸D1の方向(y方向)に座屈する。この座屈による変位は、圧電素子10L、10Rによってもたらされる変位よりも二桁大きい。さらに、座屈型アクチュエータ100は、適切な機構を用いることで、特異点の両側(図の上下方向)に向かう動作(双極性動作)を生み出すことができ、それによってその変位(ストローク)を倍増できる。本実施例の座屈型アクチュエータ100は、圧電素子の変位よりも100倍以上大きな変位を実現する。この三桁の増幅は、単段増幅機構によって実現される。
図4(b)は、圧電素子10Lの出力としての力Fpztと出力軸D2の方向(x方向)における圧電素子10Lの伸びxとの関係を示す図である。なお、図4(b)に示す関係は、圧電素子10Rにも同様に適用される。
また、図4(c)は、座屈型アクチュエータ100の出力としての推力Fbuckleと出力軸D1の方向(y方向)における出力部14の変位yとの関係を示す図である。
また、図4(b)及び図4(c)において、実線は、圧電素子が作動(ON)状態、すなわち、圧電素子に電圧が印加された状態にあるときの推移を示す。また、破線は、圧電素子が非作動(OFF)状態、すなわち、圧電素子に電圧が印加されていない状態にあるときの推移を示す。また、点線は、圧電素子が作動(ON)状態と非作動(OFF)状態とで切り替わるときの推移を示す。
図4(b)に示すように、力Fpzt(伸張力)の大きさは、非作動時の安定状態(図4(a)の水平状態)にある圧電素子10Lが作動状態になると、伸びxが最小の場合の最大値から、伸びxが大きくなるにつれて減少し、伸びxが最大に達したときに消失する。そして、圧電素子10Lは、作動時の安定状態(図4(a)の座屈状態)に至る。その後、作動時の安定状態にある圧電素子10Lが非作動(OFF)状態になると、力Fpzt(収縮力)の大きさは、伸びxが最大の場合の最大値から、伸びxが小さくなるにつれて減少し、伸びxが最小に達したときに消失する。そして、圧電素子10Lは、再び非作動時の安定状態に至る。
一方、図4(c)に示すように、推力Fbuckleの大きさは、圧電素子10L、10Rが非作動時の安定状態から作動時の安定状態に向かう場合、変位yがゼロの場合の値ゼロから、変位yの大きさが大きくなるにつれて増大した後で減少に転じ、変位yの大きさが最大に達したとき、すなわち圧電素子10L、10Rが作動時の安定状態に達したときに消失する。
また、推力Fbuckelの大きさは、圧電素子10L、10Rが作動時の安定状態から非作動時の安定状態に向かう場合、変位yの大きさが最大の場合の最大値から、変位yが小さくなるにつれて減少し、変位yがゼロ付近に達したとき、すなわち圧電素子10L、10Rが非作動時の安定状態に達する前に消失する。
このように、推力Fbuckleは、図4(c)の第1象限及び第3象限では出力部14をゼロ点(図4(a)の水平状態のときの位置)から遠ざけるように作用し、第2象限及び第4象限では出力部14をゼロ点に近づけるように作用する。
本実施例の座屈型アクチュエータ100は、100倍のオーダーの大きな変位増幅と最大の出力仕事とをほぼ実現するための要件を満たす、撓みを発生させることのない、座屈型機構である。本実施例では、値ゼロの並列剛性と大きな直列剛性とを同時に実現するために、変位増幅機構の回転案内要素から撓み機構が取り除かれている。
その上で、本実施例の座屈型アクチュエータ100は、全ての回転案内要素が転がり線接触のみで接触し、それら構成要素が互いに摺動或いはスリップせず、且つ、接触力が接触面に垂直な方向にのみ作用するという3つの条件を満たす座屈型アクチュエータを構成する。なお、最後の条件は、接触面で摩擦力が作用しないことを意味する。
図5は、上述の3つの条件を満たす座屈型アクチュエータ100の概略図である。図5(a)に示すように、圧電素子10L、10Rのそれぞれの両端は、半径Rの円形断面を有する。また、サイドブロック12L、12Rのそれぞれの接触面、及び、出力部14における2つの接触面のそれぞれは、半径rの円形断面を有する。また、中央にある出力部14は、回転することなく、垂直方向(図の上下方向)のみに移動可能となるように拘束される。
図5(a)に示すように、電圧が印加されないときに2つの圧電素子10L、10Rが中心線CL上に完全に一直線に並ぶ場合を想定する。この配置において、圧電素子10L、10Rの双方に高電圧が印加されると、図5(b)に示すように、それらのそれぞれはΔxだけ伸張し、出力部14を垂直方向(図の上方)に押し、出力軸D1に沿って出力変位Δyを発生させる配置に至る。
4つの接触部分CP1〜CP4の全てでスリップ(滑り)が発生しないとすると、圧電素子10L、10Rの伸張Δxに対する出力変位Δyの比率(増幅ゲインG)は、以下の式(1)で近似される。
なお、zは、図中の点Aと点Bとの間の距離であり、点A、点Bは、それぞれ、圧電素子10Lの両端にある円形断面が描く曲率円の曲率中心である。
図5(b)に示すように、垂直方向における出力ノード(出力部14)で力FLoadが作用すると、4つの接触部分CP1〜CP4のそれぞれで内力(接触力)Fi1〜Fi4が生成される。
この機構の興味深い特徴は、距離zがゼロの場合(z=0)、4つの接触部分CP1〜CP4のそれぞれで摩擦力が完全に消失するという点にある。すなわち、図5(b)に示すように、圧電素子10Lの両端の2つの円形断面の円(半径R)が同心であれば、接触力Fi1、Fi2の方向は、関連する2つの接触部分CP1、CP2を結ぶ線分の方向(接触面に垂直な方向)と一致する。そのため、接線力すなわち摩擦力は接触部分CP1、CP2では発生せず、その結果、上述の機能的要件の全てが満たされる。接触部分CP3、CP4についても同様である。
その結果、特段の乱れがなければ、圧電素子10L、10R及び出力部14は互いに摺動しない。接線方向における力が存在しないためである。
なお、距離zがゼロでない場合には(z≠0)、図5(c)に示すように摩擦角μが生じ、接触力Fi1〜Fi4の接線成分として摩擦力が生じる。この場合、たとえ距離zが小さくても、予荷重が大きいため、出力の減少分もかなりの大きさとなる。
また、本実施例では、全ての接触が転がり線接触であり、且つ、運動を妨げる力が存在しないため、並列剛性はゼロである(Kparallel=0)。また、円形断面の転がり接触部は、撓み機構の剛性よりも高い剛性を与えることが可能である。
なお、撓み機構では、直列剛性と並列剛性との間でトレードオフが存在し、より太い撓みジョイントは、並列ばねにおけるより高い剛性という代償を払って、より剛い直列ばねをもたらす。一方、転がり接触の座屈型アクチュエータ100では相反する要件は存在しない。

[予荷重]
maxWout=Fblock×xfreeで与えられる理論的な最大出力仕事は、圧電素子10L、10Rがプラスの力(圧縮反力)及びマイナスの力(引張反力)の双方を生成できる場合に得られる。これは、理論的な最大出力仕事を倍増可能な予荷重によって実現される。但し、この理論的限界は、圧電素子の変位にかかわらず、最大でブロッキング力Fblockまでのマイナスの力を出力できるように、予荷重が厳密に一定に維持される場合に実現される。
具体的には、圧電素子10L、10Rは、電圧が印加されると伸張し、印加電圧が消失すると元に戻る。そのため、予荷重(圧縮力)が与えられている場合には、圧電素子10L、10Rは、電圧が印加されると自然長を超えて伸張し、印加電圧が消失すると自然長より短い長さに戻る(圧縮される)。なお、圧電素子10Lの自然長は、圧電素子10Lに電圧が印加されておらず、且つ、圧電素子10Lの構造全体が軸力を受けない力学的平衡状態にある仮定条件における圧電素子10Lの長さを意味する。圧電素子10Rの自然長についても同様である。
その結果、圧電素子10L、10Rは、見かけ上、電圧が印加されたときに伸張力を発生させ、印可電圧が消失したときに復元力を発生させることができる。そして、圧電素子10L、10Rが発生させる力と予荷重の大きさとが同じであれば、圧電素子10L、10Rは、伸張力と同じ大きさの復元力を発生させることができる。また、予荷重(圧縮力)を利用するこの構成では、圧電素子10L、10Rに対して引張力が実際に適用されることはない。そのため、圧電セラミックス及び電極の薄い層の積み重ねで形成される一般的な積層型圧電素子を圧電素子10L、10Rに適用する場合においても、構造に悪影響を及ぼすことはない。
図6は、出力仕事の理論的限界を検証するための装置を示す。圧電素子に予荷重を掛けるために圧電素子の周りにはワイヤが巻かれている。圧電素子の伸張にかかわらず一定の予荷重を維持するために、このワイヤの剛性はゼロに近いものでなければならない。この一定の予荷重の条件は、形状記憶合金(Shape Memory Alloy(SMA))の高強度・低弾性の特性を利用することでほぼ満たされる。2つの剛構造の間に圧電素子を保持することで、予荷重が掛けられた圧電素子に関する力−変位平面における軌跡は、ほぼ最大の出力仕事をもたらすことができる。しかしながら、SMAワイヤの使用による予荷重を座屈型アクチュエータ100に適用するには複雑な予荷重機構が必要となる。このような予荷重機構は、座屈型アクチュエータ100において、単純なばね機構で効果的に置き換えられる。
図7(b)は、予荷重を掛けるための標準的な機構を示す。図7(b)において、座屈型アクチュエータ100のサイドブロックの1つは、ブロッキング力以上の予荷重を掛けるために押し込まれる。この間、電圧は0Vに保持される。
予荷重は図7(b)に示す特異姿勢において適用されるので座屈を引き起こし、出力部14を垂直方向(出力軸D1の方向)の何れかの向きに変位させる。その結果、予荷重は減少してしまう。この予荷重の減少を防止するため、図7(b)に示すように、弾性部材としての予荷重補償ばね(Preload Compensation Spring(PCS))18が出力部14に取り付けられる。
予荷重は、電圧を印加するのと同様に圧電素子の圧縮抵抗力を引き起こすので、図7(a)に示す関係は、図4(c)における座屈型アクチュエータ100の出力としての推力Fbuckleと出力軸D1の方向(y方向)における出力部14の変位yとの関係と同様である。具体的には、図7(a)の破線カーブCV1は、PCS18が無い状態で予荷重を適用する場合の関係を表し、原点付近で出力部14がy方向に不安定であることを示す。
PCS18は、出力部14を中心に戻す傾向を有する復元力を生成する。また、PCS18の剛性は、図7(a)に示すように、推力Fbuckleと変位yとの関係が安定的な負の傾きを有する直線SL1となるように調整される。それ故に、PCS18は、予荷重によって生成される不安定な力(破線カーブCV1の原点における接線である直線SL2で表される特性)を相殺する。そのため、破線カーブCV1と直線SL1の合成によって得られる実線カーブCV2の原点における傾きは、PCS18の利用によって平らになる。この構成により、原点周辺の一定の領域において予荷重が一定に維持される。
以上の構成により、複雑で、巨大で、且つ高価なSMAワイヤによる予荷重機構が不要になる。そして、この線形ばねであるPCS18は、必要とされる復元力を一次近似領域で補正できる。また、座屈に関する非線形の力−変位カーブのより高次の特性に適合するようにPCS18を形成することで、より広いy方向の変位領域においても一定の予荷重が実現できる。
図8は、撓みを発生させることのない座屈型アクチュエータ100の構成例を示す図である。図8に示す構成例では、圧電素子10L、10Rのサイズに起因する座屈型アクチュエータ100の細長い形状を利用して、PCS18は、座屈型アクチュエータ100のフレーム24の両側(図の上下)に接続される2組の板ばねとして組み込まれる。また、フレーム24の両側(図の上下)にある2つの出力受け部15は、PCS18に接続され、且つ、フレーム24を非接触で貫通するシャフトを介して出力部14に接続される。この構成により、座屈型アクチュエータ100で発生する圧電素子10L、10Rに起因する力とPCS18による力とが合成される。出力方向における所望の剛性と変位を実現するにはかなり大きな圧縮ばねを用意する必要があるが、この構成により、座屈型アクチュエータ100の体積は、標準的な線形ばねを利用する場合に比べて有意に低減される。なお、本実施例では、PCS18は、ベース構造としてのフレーム24に接続されるが、他の固定構造物に接続されてもよい。
また、PCS18は、省略されてもよい。この場合、座屈型アクチュエータ100は、出力部14と固定構造物と間に接続される、出力軸D1に対して斜め方向に伸縮する弾性部材を含んでいてもよい。圧電素子10L、10Rのそれぞれの作動・非作動の切り替えタイミングを異ならせることで出力部14の出力変位の方向制御を実行するためである。
次に、座屈型アクチュエータ100を用いた圧電アクチュエータ型直動モータについて説明する。図9は、座屈型アクチュエータ100の基本設計を示す。座屈型アクチュエータ100は、非線形力を生み出す出力部14の“単極性”ストロークS1、又は、“双極性”ストロークS2をもたらす。出力変位の方向制御は容易ではなく、後述の追加的な制約条件によって制御される。
以下では、圧電アクチュエータ型直動モータで座屈型アクチュエータ100を用いる際に重要となる、出力(推力及び変位)の調整方法、変位方向の制御方法、及び、アクチュエータ効率の改善方法について説明する。
圧電アクチュエータ型直動モータは、標準的なロボット・メカトロニクスシステムにおける力の必要条件、十分な変位、及び、静的荷重保持中の低エネルギ消費を実現する、複数の高出力圧電素子によって駆動されるモータである。
その設計は、以下の機能的要件を満たすことが望ましい。
(1)500mm以上のストローク出力を実現する長いストローク
(2)最小限に抑えられたモータ質量で100Nを上回る出力を実現する高い力密度
(3)電力を消費せずに任意の出力位置で静的荷重を支持可能なエネルギ効率
(4)通常の周波数レバレッジ型(frequency-leveraged)アクチュエータの力制御性を上回る力制御性
(5)個々の機械的仕事要素の故障がアクチュエータ全体としての機能を妨げないように複数の故障許容レベルを提供する耐故障性
(6)逆駆動時のモータストロークインピーダンスを極小化する逆駆動性

[基本アーキテクチャ]
上述の圧電アクチュエータ型直動モータは、図10に示すような正弦波に近い形状のギヤ(軌跡)を有する成形ギヤ出力ロッド20と連動する複数の座屈型アクチュエータ1001〜100Nの段階的な双極性動作によって駆動される。
図10に示すように、ユニットアクチュエータとしての座屈型アクチュエータ100iにおける圧電素子の力に基づく出力部14iの往復運動は、フォロワ22iを介して線形のギヤ出力ロッド20の波状の溝に垂直に力Fyiを及ぼす。
複数の座屈型アクチュエータ1001〜100Nとギヤ出力ロッド20の組み合わせは、その容量性特性によって静的荷重保持中の低エネルギ消費を実現しながら、移動中におけるモータの高い出力効率を実現する。

[剛構造を通じたエネルギの伝達]
座屈型アクチュエータ100iのフレーム構造のコンプライアンスは、荷重方向に沿った材料剛性を増大させる異方性材料を適用することによって改善される。また、圧電アクチュエータ型直動モータにおける主要な荷重支持構造は、高弾性炭素繊維で形成されてもよい。

[圧電アクチュエータ型直動モータのモジュール性]
圧電アクチュエータ型直動モータにおけるモジュール方式は、いくつかの機能をもたらす。第一に、複数の座屈型アクチュエータ1001〜100Nの同時使用は、モータの出力が高い分解能で制御されることを可能にする。また、1つの座屈型アクチュエータ100iからギヤ出力ロッド20へ伝達される力Fxiのリップルすなわち非線形性は、別の座屈型アクチュエータの位相制御によって相殺される。要するに、力の伝達が行われない出力ノード、及び、力の出力が変化する領域は、正味の力が円滑に出力されるように、加法的/相殺的に合成される。また、複数の座屈型アクチュエータ1001〜100Nの並列接続による使用は、力の出力を増大させ、且つ、圧電素子、座屈型アクチュエータ、又は力を伝達するための構成要素の一部が故障したときのための冗長性及び耐故障性をもたらす。

[成形ギヤ出力ロッド]
座屈型アクチュエータ100iの単極性動作及び双極性動作を利用するためには、出力部14iの往復運動の変位、及び、ギヤ出力ロッド20に対する非線形な力Fxiの適用に対処する必要がある。
ギヤ出力ロッド20に対する力Fxiのリップルを最小限に抑えるために、且つ、駆動される荷重に円滑な力Fxを入力するために、ギヤの位相形成のパラメータが決定される。
また、座屈型アクチュエータにおける運動変換は、圧電素子による力の出力と、座屈型アクチュエータによる力の出力との間で生じるが、ギヤ出力ロッド20における“ピッチ”長さ及び振幅を調整することによってもう一段の運動変換が行われる。
図10に示すような構成のギヤ出力ロッド20を駆動するためには座屈型アクチュエータの双極性動作が必要なので、座屈型アクチュエータは、適切なロッド位置で適切な方向に作動するよう制御されなければならない。
また、座屈型アクチュエータは、その運動学的特異性のために、圧電素子への印加電圧の有無だけでは推力方向を一意に決定できないため、この推力方向は外部から制御されなければならない。
このモータ設計では、その制御は、複数の座屈型アクチュエータのそれぞれの出力部(フォロワ22)とギヤ出力ロッド20の成形面との間の連続的な接触係合によって実現される。
座屈特異点から離れた領域では、ギヤ出力ロッド20を駆動する座屈型アクチュエータの推力方向は、圧電素子への印加電圧の有無に基づいて一意に決定される。
特異点では、ギヤ出力ロッド20の動きは、ほぼゼロのインピーダンスを持つ座屈型アクチュエータにその特異点を横切るように強制する。そして、座屈型アクチュエータの推力方向は、その特異点を横切った後で再び圧電素子への印加電圧の有無に基づいて一意に決定されるようになる。

[分析]
このように、本実施例に係る圧電アクチュエータ型直動モータは、主に、座屈型アクチュエータと、位相配列型(Phased Array Shaped(PAS))機構としてのギヤ出力ロッド20とで構成される。

[PAS機構の特性]
図10に示す圧電アクチュエータ型直動モータでは、静的出力Fxは、式(2)によって与えられる。
式(2)において、iは、i番目の座屈型アクチュエータ100iを表し、Nは、圧電アクチュエータ型直動モータで用いられる座屈型アクチュエータの最大数である。また、ψは、PAS機構20の位相角で表される圧電アクチュエータ型直動モータの出力位置であり、φiは、i番目の座屈型アクチュエータ100iのレイアウト位置をPAS機構20の位相角で表したものである。
また、Fxiは、i番目の座屈型アクチュエータ100iによる圧電アクチュエータ型直動モータの力の出力Fxに対する寄与であり、Gは、PAS機構20のプロファイル(外形)に沿った座屈型アクチュエータの出力部のモータ変位に関する軌跡である。
また、Rは、圧電アクチュエータ型直動モータの実際の出力位置xに関する軌跡Gの傾きであり、Fyiは、i番目の座屈型アクチュエータ100iの力の出力であり、uiは、i番目の座屈型アクチュエータ100iに対する入力であり、λは、軌跡Gの1周期長である。
なお、出力位置x、傾きRPAS(ψ+φi)は、以下の関係を有する。
複数の座屈型アクチュエータ1001〜100NがPAS機構20を通じて並列に接続されているため、それら複数の座屈型アクチュエータ1001〜100Nの出力の全ては、PAS機構20による変換後に合成される。
式(2)は、このタイプの圧電アクチュエータ型直動モータには、座屈型アクチュエータ100iの特性、PAS機構20の軌跡、PAS機構20上の座屈型アクチュエータ100iのレイアウト、及び座屈型アクチュエータ100iに対する入力の4つの設計自由度があることを示す。
また、式(2)は、全ての座屈型アクチュエータ1001〜100NがPAS機構20を通じた相互作用を受けることを示す。
そのため、座屈型アクチュエータの最大数Nの値が小さい場合、設計者は、PAS機構20を介した座屈型アクチュエータ1001〜100N間の相互作用を考慮する必要がある。
反対に、最大数Nの値が大きい場合には、設計者は、PAS機構20と座屈型アクチュエータ1001〜100Nのそれぞれとの間の相互作用のみを主に考慮すればよい。座屈型アクチュエータ1001〜100Nの集合は、個々の座屈型アクチュエータ100iよりもはるかに高いインピーダンスを有するためである。

[幾何学的特性]
図9に示す座屈型アクチュエータ100の構成を参照し、且つ、ベース構造及びジョイントが理想的であると想定すると、ジョイント角度θに関する増幅率RBは、式(3)によって得られ、且つ、図11に示される。
なお、変位y、zは、以下のように表される。
図11に示すように、特異性のため、理論的には、ジョイント角度θ及び変位y、zがゼロの場合の姿勢で無限大の瞬間増幅が発生する。したがって、特異点の近くでは、他の1段レバレッジ機構に比べてはるかに大きな増幅率が得られる。

[スリップレス・ローラジョイント]
上述の理想的な特性を実現するために重要な構成要素は、出力部14と2つの圧電素子10L、10Rとの間、及び、2つの圧電素子10L、10Rと2つのサイドブロック12L、12Rとの間のジョイント機構である。その機構の構成を図12に示す。
本実施例では、ジョイント機構を構成する構成要素(キャップ10Lc、10Le、10Rc、10Re、サイドブロック12L、12R、及び出力部14)のそれぞれは何れも円筒形状を有する。また、ジョイント機構を構成する構成要素は、セラミックス、鋼材等のヤング率及び圧縮強度が高い材料で形成される。
また、本実施例では、サイドブロック12L、12R及び出力部14のそれぞれは、同じ半径rの円形断面を有し、4つのキャップ10Lc、10Le、10Rc、10Reのそれぞれは、同じ半径R(>r)の円形断面を有する。但し、ジョイント機構を構成する構成要素のそれぞれは、個々に異なる半径の円形断面を有していてもよい。
また、ジョイント機構を構成する構成要素(キャップ10Lc、10Le、10Rc、10Re、サイドブロック12L、12R、及び出力部14)は、円筒形状以外の形状を有していてもよい。具体的には、ジョイント機構を構成する構成要素は、互いに転がり接触を実現できる接触面を有していればよく、例えば、円筒面以外の凸曲面を接触面として有していてもよい。また、転がり接触する2つの構成要素の一方の接触面は、平坦面であってもよい。
図13は、ジョイント機構を構成する構成要素の接触面の別の構成例を示す図である。図13に示すように、転がり接触する2つの構成要素の一方の接触面が凸曲面の場合、他方の接触面は凹曲面であってもよい。なお、転がり接触する2つの構成要素の双方の接触面が凹曲面であってもよい。
図14は、座屈型アクチュエータ100の片側を示し、図14上図が特異姿勢を示し、図14下図が出力時姿勢を示す。なお、座屈型アクチュエータ100は出力軸D1に対して対称な構造、すなわち出力部14に関して2つの圧電素子10L、10Rが対称に配置される構造を有するため、出力部14は、出力軸D1の方向に沿って回転なしに移動できる。また、本実施例では、出力軸D1に対して対称に配置される2つの圧電素子10L、10Rは、同じ大きさ、形状、及び材料特性を有する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、出力軸D1に対して対称に配置される2つの圧電素子10L、10Rは、互いに異なる大きさを有していてもよく、互いに異なる形状を有していてもよい。すなわち、2つの圧電素子10L、10Rの配置が出力部14に関してほぼ対称であればよく、厳密な対称性が要求されることはない。
図14上図において、dは、キャップ10Lc、10Leの断面が描く円弧を含む円の中心間の距離を表す。また、図14下図において、zは、圧電素子10Lの変位(伸び)を表し、bは、キャップ10Lc、10Leの接触部分CP1、CP2における法線軸間の距離を表す。
距離dと変位zの合計がゼロに等しい場合、距離bもまたゼロとなる。しかし、変位zは圧電素子10Lの作動によって変化し、距離dは一定値である。そのため、作動状態の全てで距離bをゼロに維持することは不可能である。
距離bがゼロでなく、システム内の相互作用力がゼロでない場合、接触部分CP1、CP2のそれぞれにおける法線力と距離bとに起因するモーメントとの力のバランスを維持するために、キャップ10Leとサイドブロック12Lとの間、及び、キャップ10cと出力部14との間の接触部分CP1、CP2で摩擦力が生じる。
結果として生じる相互作用力をFZとし、接触部分間の距離をLCとし、接触部分CP1とサイドブロック12Lの中心と水平軸とで形成される角度をθとすると、摩擦力FFricは、式(4)によって導き出される。
摩擦は、接触部分でのスリップを引き起こし得るモーメントを相殺できる。しかし、転がり接触でマイクロスリップが生じ、そのマイクロスリップが作動毎に蓄積することが知られている。
本実施例では、不安定な座屈動作を引き起こすスリップを防止するために、距離dはゼロに設定される。その結果、角度θが小さい領域では、摩擦は、ほとんど無視できるレベルまで低減される。距離zは距離Lに比べてはるかに小さいためである。
この条件は、キャップ10Lcが描く円弧を含む円とキャップ10Leが描く円弧を含む円とが同心円であることを意味し、角度θが小さいときの三角関数の近似によって得られる式(5)によって確認される。

[予荷重補償ばね]
座屈型アクチュエータ100における予荷重の適用にはいつくかの要件が存在する。第1に、正味の圧縮出力負荷及び引張出力負荷を適用することによって圧電素子10L、10Rの出力を最大化することである。圧電素子10L、10Rは、圧電セラミックス及び電極の薄い層を積み重ねることによって形成される。この構造のため、圧電素子10L、10Rは、大きな圧縮力を許容できるが、大きな引張力に耐えることができない。しかし、十分な大きさの予荷重が適用されると、圧電素子10L、10Rによる力と予荷重による力の合力は、見かけ上、圧縮力及び引張力の双方を実現できる。その結果、座屈型アクチュエータ100は、圧縮力及び引張力の双方を出力できる。また、予荷重力は、圧電素子10L、10Rの変位全体を通じて一定のままでなければならない。予荷重機構の剛性は、出力変位を低減させ、その結果、圧電素子10L、10Rから取り出せる仕事を低下させるためである。さらに、接触面の全ては、常に圧縮状態で保持されなければならない。接触面の全てで圧縮力を維持できれば、圧電素子10L、10R及び出力部14を含む構成要素の全てをほぼ摩擦のみによって適切に保持できる。最後に、転がり接触面での非線形剛性を利用して直列コンプライアンスを低減させることである。
本実施例では、上述の要件の全てを満たすために、図15に示すように、線形ばね(ばね定数kPCS)としてのPCS18が出力部14に取り付けられ、且つ、サイドブロック12Lとサイドブロック12Rとの間に予荷重力FPLが適用される。
予荷重力FPLは、出力部14とサイドブロック12L、12Rのそれぞれとの間の距離を強制変位生成部(制御された変位をもたらす要素)としての予荷重機構によって強制変位(低減)させることによって生成される。その結果、特異姿勢において予荷重力FPLが与えられている場合には、接触部分CP1と接触部分CP4との間の距離は、圧電素子10L、10R、4つのキャップ10Lc、10Le、10Rc、10Re、及び出力部14のそれぞれの自然長の合計長さより短い。なお、各構成要素の自然長は、圧電素子10L、10Rが非作動状態にあり且つ座屈型アクチュエータ100の構造全体が付加的な軸力を受けない静的な平衡状態にある仮定条件における各構成要素の長さ(圧電素子10L、10Rの軸方向に沿った長さ)を意味する。
本実施例では、予荷重機構は、くさびを用いて出力部14とサイドブロック12L、12Rのそれぞれとの間の距離を低減させる。但し、予荷重機構は、シム等のスペーサを用いて出力部14とサイドブロック12L、12Rのそれぞれとの間の距離を低減させてもよい。なお、予荷重機構の剛性は、少なくとも圧電素子10L、10Rの剛性より高くなるように設定される。
圧電素子10L、10Rの変位は、出力部14とサイドブロック12L、12Rのそれぞれとの間の距離に比べて極めて小さいものである。そのため、2つのキャップ10Lc、10Leの変位は、2つのキャップ10Lc、10Leのそれぞれの断面が描く円弧を含む同心円の直径の変化と見なされる。2つのキャップ10Rc、10Reの変位についても同様である。
そのため、予荷重力FPLとPCS18によって生成される力との間の力の平衡は、式(6)で表される。また、予荷重力FPLと線形ばね(ばね定数kPCS)との関係は、三角関数の近似により、式(7)のように表される。

[出力特性]
圧電素子10L、10Rによって駆動される座屈型アクチュエータ100の静的出力特性を算出するために、図15に示すコンプライアンスモデルが用いられる。図15では、PCS18、圧電素子10L、10R、ローラジョイント、及びフレーム24のそれぞれにおける4種類のコンプライアンス特性kPCS、kPTZ、K、及びKが検討される。
以下の式(8)に示す基礎的関係から、以下の式(9)に示すような座屈型アクチュエータ100の出力である力Fの近似特性が得られる。
なお、式(9)における予荷重力FPLと線形ばね(ばね定数kPCS)との関係は、コンプライアンス特性のために、式(7)における関係とは異なる。
式(9)に基づいて、座屈型アクチュエータ100の出力としての推力と変位との関係は、図16のように示される。本実施例では、圧電素子が作動状態にあり且つ変位を妨げる外力が作用しない場合、推力の大きさは、変位の大きさが増大するにつれて最大推力が達成されるまで増大した後、自由変位に達するまで減少する。また、圧電素子が非作動状態にあり且つ変位を妨げる外力が作用しない場合、推力の大きさは、変位の大きさが増大するにつれて減少する。なお、変位を妨げる外力が作用する場合には、推力が発生しているにもかかわらず変位が発生しない場合もある。
座屈型アクチュエータ100のユニークな特性の1つであるいわゆる“双方向動作(双極性動作)”は、圧電素子10L、10Rが一直線に並ぶ“ゼロ出力姿勢(特異姿勢)”と呼ばれる姿勢から出力部が上下の何れの方向にも自然に動き得ることを意味する。特異性に基づく座屈変位はゼロ出力姿勢で発生するためである。その形状により、座屈型アクチュエータ100は、約50倍の変位増幅を容易に実現する。また、双方向動作は、そのストロークを2倍にし、約100倍の変位増幅をもたらす。
圧電素子10L、10Rに対する最小入力及び最大入力の際の、出力としての力がゼロとなる2つの姿勢(位置)の間の距離として定められる最大出力変位は、式(10)によって得られる。
ヘルツ接触理論を参照すると、ローラジョイントの剛性KJは、円筒面間の接触剛性として式(11)によって得られる。なお、FJは、接触力であり、δは、主に接触線の周りで発生する変形であり、LJは、円筒の長さである。また、Eは、円筒材料のヤング率であり、νは、ポアソン比である。
式(11)に示すように、接触剛性KJは、圧電素子10L、10Rによる力と予荷重FPLとの合力に等しい接触力FJに応じて変化する。
しかし、座屈型アクチュエータ100を通じて適用される予荷重のおかげで、使用領域における接触剛性KJの変動は、図17に示すように、10%程度のかなり小さいものとなる。

[正弦波状軌跡のPAS機構]
式(2)に示す圧電アクチュエータ型直動モータの一般的な特性に沿って、任意のタイプのPAS機構が利用できる。
本実施例では、図10に示すようなカム・ローラフォロワ型の伝達装置に基づくタイプのPAS機構20が利用される。通常のカム設計方法と同様に、フォロワ軌跡の最小曲率半径は、フォロワ22の半径よりも大きい必要がある。カム及びフォロワの双方の動きの方向が変化するときの連続的な推移を可能にするためである。
本実施例では、PAS機構20は、フォロワ22の中心の軌跡を、カムとフォロワとの間の円滑なエネルギの伝達、及び、フォロワ22の自然な往復運動を可能にする正弦波状の軌跡とする。そのフォロワ中心の軌跡は、式(12)で表される。
なお、yFCは、座屈型アクチュエータ100iの出力方向におけるPAS機構20に沿ったフォロワ22iの中心の位置であり、yFCmaxは、そのフォロワ22iの中心の最大変位である。また、λは、PAS機構20の波長であり、χは、圧電アクチュエータ型直動モータの出力方向における座屈型アクチュエータ100iとPAS機構20との間の相対変位である。
式(9)及び式(12)を考慮すると、PAS機構20によって変換される各座屈型アクチュエータの変換後の力Fχu(=Fχi)の特性は、式(13)によって与えられ、図18に示される。
なお、式(10)を考慮すると、上記の定数A、AFpztは、以下のようにも表される。
FCmaxがymaxに等しければ、FPZTがFPZTmaxに等しい場合にFPZTの係数は4となる。これは、図18に示すように、圧電素子のON状態とOFF状態との間で対称的なFχuの特性を与える。
χに対するFPZTの係数は、Ryの二乗とともに増大するが、同時に、Fχに対するコンプライアンスの影響もRyの4乗とともに増大する。これは、Ryが高いほど、Fχの制御がより困難になることを意味する。
式(13)を式(2)に代入することによって、圧電アクチュエータ型直動モータの力の特性は、式(15)で示される。
式(15)から、Fχは、PAS機構20の1波長において2サイクル及び4サイクルの成分を有することが分かる。この特性のため、PAS機構20が形成する波(PAS波)のサイクルに関してφが{0、π/8、2π/8、3π/8}の位相セットのみで構成される場合、FPZT,iを含む項以外の項は、座屈型アクチュエータ間で相殺される。その場合、Fχは、式(16)で示すものとなる。
式(16)において、圧電素子の全てが同じ出力状態で維持される場合、Fχはゼロとなる。
{0、π/12、2π/12、3π/12、4π/12、5π/12、6π/12}の位相セットで構成される別のケースでは、PAS波のサイクルの4倍の成分が、式(16)と同様に、FPZT成分とともにFχ内に残る。

[切換ドライブ]
図18に示すように、圧電アクチュエータ型直動モータの出力のために、各座屈型アクチュエータは、PAS波の位相に関してλ/4の倍数の位置毎に圧電素子に対する入力をONからOFFに或いはOFFからONに切り換えることによって、常に正の力及び負の力の双方を出力することができる。
また、予荷重力による座屈型アクチュエータ100の出力のための力とPCS力による座屈型アクチュエータ100の出力のための力とが同等である場合には、“波の中間点から波の頂点への移動に伴う圧電素子のON”の状態と、“波の頂点からゼロへの移動に伴う圧電素子のOFF”の状態とおいて、力の出力は同じである。
圧電アクチュエータ型直動モータのためにプラスに寄与する全ての座屈型アクチュエータの出力の合力は、各位置で最大出力を与える。
図19は、上述の位相配置を有する4つ又は6つの座屈型アクチュエータで構成される圧電アクチュエータ型直動モータの最大出力の特性を示す。座屈型アクチュエータの数が多くなるほど、圧電アクチュエータ型直動モータの最大推力の平均は大きくなり、且つ、その変動は小さくなる。

[実装]
図20は、圧電アクチュエータ型直動モータの構成例を示し、表1は、主要な設計パラメータを示す。最大速度は、圧電素子の熱的特性を考慮することによって設定される。電圧及び周波数は、圧電素子におけるエネルギ損失量及び熱励起に影響を与える。また、圧電材料は、そのキュリー温度を上回ったところで圧電性を喪失する。そのため、作動状態に関する実質的な制限は、温度を考慮することによって決定される。
PAS機構20の波長λは、座屈型アクチュエータによって駆動されるフォロワローラ(フォロワ)22とPAS機構20との間の接触応力を考慮することによって決定される。また、最大接触応力はPAS機構20の歯の先端で発生するため、本実施例では、その先端の曲率半径は0.5mmを上回るものとされ、また、硬化工具鋼(hardened tool steel)で形成される。
なお、本実施例では、圧電アクチュエータ型直動モータは、線形ガイド21に案内されてPAS機構20に沿った出力方向D3に移動し、その変位はPAS移動センサ23によって検出される。

[ユニットアクチュエータ]
図21は、圧電アクチュエータ型直動モータで使用されるユニットアクチュエータとしての座屈型アクチュエータ100の断面図を示す。本実施例では、図15に示す基本的な機構が座屈部分に適用される。実質的な変更は、出力部14の円弧間距離とPAS機構20の構造に対して行われている。
また、下記の要件を満たすために、三角形状で且つ厚みが変化する板ばねがPCS18として採用されている。
PCS18に関する主要な要件は、式(9)によって定められる座屈型アクチュエータ100の出力軸D1の方向における特定の剛性、圧電アクチュエータ型直動モータの出力軸D3の方向におけるできるだけ高い剛性、結合器26の側方の空間に適合する寸法、及び低い応力である。
また、座屈型アクチュエータ100を構成する部品間のずれは、出力部14の回転を引き起こす。具体的には、圧電素子10L、10Rの出力及び予荷重力が何れも大きいため、50μmのずれは、1Nmより大きなモーメントをもたらす。これは、柔軟なPCS18で支えるには困難な大きさである。そこで、出力部14に復元モーメントを与えるために、出力部14における2つの接触部分CP2、CP3の輪郭のそれぞれが描く円弧の間の距離は、同心状態(2つの円弧が同じ1つの円の円周の一部を形成する状態)のときよりも低減される。すなわち、出力部14における2つの接触部分CP2、CP3のうちの一方の円筒面が他方の円筒面の曲率円の内側となるように出力部14が構成される。円弧間距離が短いほど、出力部14が安定し、その回転が防止されるためである。この構成なしでは、出力部14は、回転に関して不安定となる。なお、本実施例では、接触部分CP1〜CP4において、関連する構成要素は、位置合わせ歯11によって位置合わせされる。

[炭素繊維強化プラスチックフレーム]
本実施例では、座屈型アクチュエータ100のフレーム24は、高弾性の炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic(CFRP))で形成される。
上述のように、フレーム24のコンプライアンスは、圧電素子から座屈型アクチュエータへのエネルギ伝達率を低減させる。また、フレーム24は、予荷重力及び圧電素子力による1つの主要な荷重方向における引張荷重のみを支える構成であるため、他の方向における剛性要件及び強度要件は有意に低い。また、座屈型アクチュエータ100では、誘導性モータのように磁束を収容するための磁気特性をフレーム材料が有する必要はない。
これらの要件のために、本実施例では、高弾性の一方向繊維CFRPが採用される。このフレーム24のための重要な機械的特性を、鋼鉄の機械的特性と比較できるように、表3に列挙する。
2つの材料の特性を比較すると、CFRP製のフレーム24の重量は、同じ剛性を有する鋼鉄製のフレームのほぼ1/8であり、この事実は、圧電アクチュエータ型直動モータの力密度を高めるのに寄与する。
それ故に、ベース構造の材料をより高い弾性係数を有する材料に変更することは、構造コンプライアンスを制限する同じ形状又は断面積がより小さい形状の使用を可能にする。
この構造では、高弾性炭素繊維が主荷重軸に沿って揃えられ、ベース構造(座屈型アクチュエータ100のフレーム24)の重量の低減を可能にしている。その結果、エネルギ効率は要件を満たすことができ或いはさらに改善され、力密度も改善される。
また、この構造で用いられる炭素繊維ラミネートは、フレーム材料の弾性係数を鋼鉄における200GPaから炭素繊維ラミネートの460GPaというように、2倍以上にすることができる。

以上では、複数の座屈型アクチュエータと多アクチュエータ・アーキテクチャとで構成される新しいタイプの直動モータを提示した。複数の高剛性座屈型アクチュエータと、それら座屈型アクチュエータ間での完全な並列接続を有する多アクチュエータ構造との組み合わせは、高い力密度と円滑な出力特性の実現が可能であることを示す。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、図10及び図20に示す圧電アクチュエータ型直動モータは、複数の座屈型アクチュエータによって駆動されるが、単一の座屈型アクチュエータによって駆動されてもよい。
また、座屈型アクチュエータの出力特性を考慮した、PAS機構(PASカム)20の正弦波状の軌跡とPAS機構20の位相に関する座屈型アクチュエータのレイアウトとは、直動モータによる力の良好な制御性能をもたらす。また、圧電素子に対する電圧入力は、座屈型アクチュエータの非線形特性による干渉を受けることなく、直動モータの出力を直接的に操作できるようにする。
上述のように、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、主要な構成要素同士が転がり接触する構成により、小さな並列剛性と大きな直列剛性とを同時に実現する。その結果、大きな変位増幅ゲインをもたらし、且つ、大きな出力仕事を効率的に変換することができる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、主要な構成要素同士が転がり接触する構成により、接触力が接触面に垂直な方向にのみ作用する状態をもたらす。その結果、接触部分で滑りを発生させずに、大きな変位増幅ゲインをもたらし、且つ、大きな出力仕事を効率的に変換することができる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、強制変位生成部が圧電素子に予荷重を掛ける構成を有していてもよい。その結果、転がり接触面のそれぞれでより大きな接触力を作用させることができ、また、転がり接触面間の接触剛性を高めることができる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、例えば図12に示すように、2つのブロック12L、12Rのそれぞれの接触部分の間の距離が、圧電素子10L、10R、キャップ10Le、10Lc、10Rc、10Re、及び出力部14のそれぞれの自然長の合計長さより短くなるように強制変位生成部が圧電素子に予荷重を掛ける構成を有していてもよい。その結果、圧電素子10L、10Rのそれぞれに伸張仕事ばかりでなく引張仕事を実行させることができ、最大出力仕事を増大させることができる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、弾性部材を介して出力部が固定構造物に接続される構成を有していてもよい。その結果、出力部を特異点に戻す傾向を有する復元力を発生させ、予荷重によって生成される不安定性を解消できる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、キャップの接触部分が凸曲面を含む構成を有していてもよい。その結果、キャップと他の構成要素との転がり接触を促進できる。同様に、出力部の接触部分及び2つのブロックの接触部分のそれぞれが凸曲面を含む構成を有していてもよい。その結果、出力部及びブロックと他の構成要素との転がり接触を促進できる。さらに、キャップの接触部分が円筒面を含む構成を有していてもよい。その結果、キャップと他の構成要素との転がり接触をさらに促進できる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、出力部の2つの接触部分のうちの一方の円筒面が他方の円筒面の曲率円の内側に配置されるように出力部を構成してもよい。その結果、回転した出力部を元に戻そうとする復元モーメントを発生させ、出力部の挙動を安定させることができる。
また、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータは、圧電素子の両側に配置される2つのキャップの接触部分の輪郭が同じ1つの円の円周の一部を形成するように圧電素子及びキャップを構成してもよい。その結果、接触部分で摩擦力を消失させることができる。具体的には、接触力の方向を接触面に垂直な方向に一致させ、接線力すなわち摩擦力が発生しないようにできる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、出力部14は、同一平面上で対向するように配置される2つの圧電素子10L、10Rの間に転がり接触で保持される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、出力部14は、3つの圧電素子により転がり接触で保持されてもよい。この場合、3つの圧電素子は、例えば、同一平面上で出力部14を中心として120度間隔で放射状に配置される。また、出力部14は、4つの圧電素子により転がり接触で保持されてもよい。この場合、4つの圧電素子は、例えば、同一平面上で出力部14を中心として90度間隔で放射状に配置される。さらに、出力部14は、5つ以上の圧電素子により転がり接触で保持されてもよい。
なお、圧電アクチュエータ型直動モータは、本発明の実施例に係る座屈型アクチュエータの適用例の1つにすぎない。そのため、座屈型アクチュエータの適用が圧電アクチュエータ型直動モータに限定されることはない。具体的には、上述の実施例に係る座屈型アクチュエータ及びPAS機構に関する設計思想は、直動モータの設計ばかりでなく、回転モータの設計に用いられてもよい。
10L、10R・・・圧電素子 11・・・位置合わせ歯 12L、12R・・・サイドブロック(剛壁) 14・・・出力部 15・・・出力受け部 18・・・PCS 20・・・成形ギヤ出力ロッド(PAS機構) 21・・・線形ガイド 22・・・フォロワ 23・・・PAS位置センサ 24・・・フレーム 26・・・結合器 100・・・座屈型アクチュエータ

Claims (10)

  1. 出力部と、
    前記出力部に関して対称に配置される2つの圧電素子と、
    前記2つの圧電素子のそれぞれの両側に配置される4つのキャップと、
    前記出力部と転がり接触する2つのキャップ以外の2つのキャップのそれぞれと転がり接触する2つのブロックと、
    前記2つのブロックを剛結合するベース構造と、を含み、
    前記出力部は、前記4つのキャップのうちの2つのキャップの間に転がり接触で保持されると共に、前記2つの圧電素子への印加電圧に応じた出力を発生させる、
    座屈型アクチュエータ。
  2. 前記出力部の出力は、前記2つの圧電素子、前記4つのキャップ、前記出力部、及び前記2つのブロックに関する接触部分で滑りを発生させることなく実現される、
    請求項1に記載の座屈型アクチュエータ。
  3. 前記2つのブロックのそれぞれの接触部分の間の距離を短縮する圧縮力を発生させる強制変位生成部を含む、
    請求項1又は2に記載の座屈型アクチュエータ。
  4. 前記2つのブロックのそれぞれの接触部分の間の距離は、前記2つの圧電素子が非作動状態にあり且つ当該座屈型アクチュエータの構造全体が軸力を受けない力学的平衡状態にある仮定条件における前記2つの圧電素子、前記4つのキャップ、及び前記出力部の合計長さより短い、
    請求項3に記載の座屈型アクチュエータ。
  5. 前記出力部は、弾性部材を介して固定構造物に接続される、
    請求項3又は4に記載の座屈型アクチュエータ。
  6. 前記キャップの接触部分は、凸曲面を含む、
    請求項4に記載の座屈型アクチュエータ。
  7. 前記出力部の接触部分及び前記2つのブロックの接触部分のそれぞれは、凸曲面を含む、
    請求項4に記載の座屈型アクチュエータ。
  8. 前記出力部の2つの接触部分はそれぞれ円筒面を含み、
    前記出力部の2つの接触部分のうちの一方の円筒面は、前記出力部の2つの接触部分のうちの他方の円筒面の曲率円の内側にある、
    請求項4に記載の座屈型アクチュエータ。
  9. 前記キャップの接触部分は、円筒面を含む、
    請求項6に記載の座屈型アクチュエータ。
  10. 前記圧電素子の両側に配置される2つのキャップの接触部分の輪郭は、同じ1つの円の円周の一部を形成する、
    請求項9に記載の座屈型アクチュエータ。
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