上述した従来のX線検査装置においては、2次元透過X線画像に基づいてボイド部分を特定しているが、当該2次元透過X線画像においては、ボイドの3次元的な特徴を捉えることができず、正確に良否判定を行うことができなかった。特に、スルーホールがメッキによって充填されることで充填形成部が形成される場合、不良の原因となるボイドの3次元的な形状や位置は、通常の球状のボイドとは顕著に異なり、3次元的な特徴を捉えなければ正確に良否判定をすることは困難であった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を判定する技術の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、X線検査装置は、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部にX線を照射して異なる方向から複数のX線画像を撮影し、再構成演算を行う。そして、当該X線検査装置は、再構成演算によって得られた再構成情報からスルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドに特有の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて充填形成部内のボイドの有無を判定する。
すなわち、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部においては、他の検査対象における通常のボイド(例えば、はんだバンプ内の球形ボイド)と異なるボイドが形成されやすい。従って、通常のボイドの検出指標とは異なる指標を使わなければ、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無(またはボイドによる充填形成部の良否)を正確に判定することができない。
そこで、本発明の一実施形態にかかるX線検査装置においては、再構成情報からスルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドに特有の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて充填形成部内のボイドの有無を判定する構成とした。この構成によれば、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内におけるボイドの有無を判定することができる。
ここで、X線画像取得手段においては、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部の像を再構成演算で生成することができるように複数のX線画像を取得することができればよい。すなわち、異なる方向から充填形成部が撮影されることにより、複数の撮影位置でX線画像が撮影されれば良い。X線画像の撮影は、X線の出力範囲内に充填形成部を配置し、透過したX線を検出器によって撮影することによって行われればよい。X線画像の撮影に際しては、X線の照射範囲内に所望の充填形成部が含まれるように配設することができればよい。このためには、充填形成部を容易に移動できる構成を採用するのが好ましく、例えば、X−Yステージや回転ステージ等に充填形成部を載置する構成を採用することができる。
なお、X線は、異なる方向から充填形成部に照射できるように構成される。例えば、所定の回転軸とX線の照射方向とが傾斜した角度で交わる状態とされ、回転軸を中心にX線の照射方向が回転したとみなすことができるように、X線源と検出器とを複数の撮影位置に配置することによって再構成情報が取得できるように撮影が行われる。この構成によれば、再構成情報を切断する位置を所定方向に変化させることで、異なる切断位置のX線画像を解析することが可能になる。
再構成演算手段は、複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行することにより、充填形成部の3次元構造に関する情報(再構成情報)を取得することができればよい。すなわち、再構成演算手段は、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの特徴を反映した特徴量が再構成情報から取得できるように、当該再構成情報を生成することができればよい。尚、異なる方向から撮影したX線画像を用いれば、再構成演算手段によって再構成演算を実行することが可能であるが、この再構成演算を行う場合には、充填形成部に対して所定の対称性を有する位置からX線画像を撮影するのが好ましい。
このためには、充填形成部を配置する平面に対して所定の関係を持つ軸を中心にX線検出器の検出面を回転させたことを想定した場合の位置(以下、回転位置と呼ぶ)に検出器を配設する。より具体的には、検査対象部の移動平面(X−Yステージによる移動平面等)に対して垂直な軸を中心にした所定の半径の円周上に回転位置を想定すればよい。以上のように、検出面を複数の回転位置に配置すれば、回転対称性のある位置から検査対象部を撮影することができ、撮影したX線画像の回転対称性を考慮して3次元構造を解析することが可能になる。
判定手段は、再構成演算によって得られた再構成情報からスルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドに特有の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて充填形成部内のボイドの有無を判定することができればよい。すなわち、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部においては、当該充填形成部を不良とみなすべきボイドの3次元構造が通常の球体のボイドと異なる。
例えば、メッキによってスルーホールを形成する過程では、スルーホールの奥側から開口部に向けてメッキが徐々に形成されていく。正常であれば、奥側から開口部に向けてスルーホール内の壁面に対して徐々に積層されていくようにしてメッキが形成されるため、メッキの成長はスルーホールの壁面から中心軸方向および開口部方向に向けて徐々に進行する。従って、スルーホールの内周の全周において壁面の厚さが徐々に厚くなり、やがてスルーホールの開口端までメッキが到達する。このため、メッキが正常に成長すればボイドは発生しない。しかし、メッキの過程で曲率の大きい部位が発生すると、その部位を起点にして他の曲面より速くメッキが成長し、壁面に対するメッキの成長が開口部に達する前に開口部が塞がれてしまう場合がある。このような、メッキの異常な成長は、曲率が他の部位よりも大きい部位、例えば、スルーホールの開口部の縁等において生じやすい。
このような異常なメッキの成長と、スルーホールの壁面からのメッキの成長とは同時に行われ、メッキの成長はスルーホールの壁面から中心軸方向および開口部方向に向けて徐々に進行する。従って、充填形成部内におけるボイドは、ほとんどの場合スルーホールの中心軸の付近に形成され、充填形成部の良否を判定する検査においてはスルーホールの中心軸から遠い位置にボイドが形成されることはないとみなすことができる。
そこで、判定手段が、再構成情報に基づいて充填形成部内のボイドの候補を特定するとともに、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離を特徴量として取得し、当該距離が所定の距離判定基準より長い場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす構成を採用しても良い。この構成によれば、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。なお、ボイドの候補は、充填形成部の像の中で特定されれば良く、判定手段が、再構成情報に基づいてX線がメッキ材(銅等の電気伝導体)で吸収された部位を特定することで充填形成部の像を特定し、さらに、当該充填形成部の像の中でX線がメッキ材で吸収されていない部位を特定することでボイドの候補を特定することができる。ボイドの候補が特定されれば、判定手段は、当該ボイドの候補の重心を容易に特定することができる。
また、スルーホールの中心軸は、スルーホールの深さ方向の中心を通る軸であれば良く、判定手段が、再構成情報に基づいて充填形成部が延びる方向を特定すれば、当該方向に垂直な方向の面の重心を通る軸を特定することによって、中心軸を容易に特定することができる。従って、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離を容易に特定することができる。
スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離について解析するための所定の距離判定基準は、ボイドの候補が中心軸から遠く、当該ボイドの候補の位置では不良の原因となるボイドが存在し得ないとみなすことができるような判定基準であり、予め決められていれば良い。このような距離判定基準による判定は、種々の手法を採用可能であり、例えば、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離が予め決められた基準距離以上である長い場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす構成を採用可能である。
なお、2次元透過X線画像は3次元的な像を検出面に投影した状態を示すため、当該2次元透過X線画像の解析で正確にボイドの有無を特定することは困難である。例えば、スルーホールの中心軸が検出器の検出面に対して傾いている場合、そもそもスルーホールの中心軸を特定することができない。従って、ボイドの形状に基づいた解析自体を行うことができず、ボイドの有無を正確に判定することはできない。しかし、本発明の一実施形態にかかるX線検査装置においては、3次元構造を示す再構成情報を解析しているため、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離や、ボイドの候補の径を特定することが可能であり、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。
さらに、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離を規格化し、当該規格化された距離が所定の距離閾値以上である場合に、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離が所定の距離判定基準以上であるとみなす構成を採用しても良い。このための構成としては、例えば、判定手段が、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離をボイドの候補の大きさで除した値(規格化後の値)が所定の距離閾値以上である場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす構成等を採用してもよい。この構成における規格化後の値は、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離が同一の複数個のボイドの候補において、ボイドの候補の大きさが小さくなるほど大きくなる。従って、規格化後の値を利用した判定により、判定手段は、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離が同一であっても比較的小さいボイドの候補はボイドでないと見なし、比較的大きいボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。
さらに、ボイドの候補の大きさが同一であっても、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離が大きくなるほど規格化後の値は大きくなる。従って、判定手段は、ボイドの候補の大きさが同一であってもスルーホールの中心軸から比較的遠いボイドの候補はボイドでないと見なし、比較的近いボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。以上の構成によれば、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。なお、ボイドの候補の大きさは、種々の指標で特定可能であり、例えば、ボイドの直径や半径を想定可能である。ボイドの候補は一方に長い回転楕円体であるため、直径や半径やある基準の位置の径、例えば、長軸方向の径や短軸方向の径等によって構成可能である。
さらに、スルーホールは、通常、スルーホールの中心軸方向に長い穴であるため、壁面に沿ったメッキが成長している過程では、壁面の内側でメッキがされずに残っている空間の形状が中心軸方向に長い形状になる。従って、充填形成部内に形成されるボイドはスルーホールの中心軸方向に長い回転楕円体のような形状になり、球形にはならない。このため、充填形成部の良否を判定する検査においてはボイドの形状がスルーホールの中心軸方向に長い回転楕円体でなければ、ボイドではないとみなすことができる。
そこで、判定手段が、再構成情報に基づいて充填形成部内のボイドの候補を特定するとともに、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さを特徴量として取得し、当該長さが所定の深さ判定基準未満である場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす構成を採用しても良い。この構成によれば、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。なお、ボイドの候補は、上述のように、判定手段が、再構成情報に基づいて、充填形成部の像の中でX線がメッキ材で吸収されていない部位を特定することによって特定される。また、スルーホールの像は、判定手段は、再構成情報に基づいて、充填形成部の像の中でX線がメッキ材で吸収された部位を特定することによって、特定される。従って、ボイドの候補とスルーホールの像が特定されれば、判定手段が、当該スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さを容易に特定することができる。
スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さについて解析するための所定の深さ判定基準は、深さ方向の長さが短いボイドはメッキ充填によって形成された充填形成部内に不良の原因となるボイドとして存在し得ないとみなすことができるような判定基準であり、予め決められていれば良い。このような深さ判定基準による判定は、種々の手法を採用可能であり、例えば、ボイドの候補の深さ方向の長さが予め決められた基準の長さ未満である場合に、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さが所定の深さ判定基準未満であると判定する構成を採用可能である。
なお、2次元透過X線画像は3次元的な像を検出面に投影した状態を示すため、当該2次元透過X線画像の解析で正確にボイドの有無を特定することは困難である。例えば、スルーホールの中心軸が検出面に対して傾いている場合、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さを特定することができない。従って、ボイドの形状に基づいた解析自体を行うことができず、ボイドの有無を正確に判定することはできない。しかし、本発明の一実施形態にかかるX線検査装置においては、3次元構造を示す再構成情報を解析しているため、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さを特定することが可能であり、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。
さらに、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さを規格化し、当該規格化された距離が所定の深さ閾値未満である場合に、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さが所定の深さ判定基準未満であるとみなす構成を採用しても良い。このための構成としては、例えば、判定手段が、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さをスルーホールの径方向におけるボイドの候補の長さで除した値(規格化後の値)が所定の深さ閾値未満である場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす構成等を採用してもよい。この構成における規格化後の値は、スルーホールの深さ方向の長さが同一の複数個のボイドの候補において、スルーホールの径方向の長さが長くなるほど小さくなる。従って、判定手段は、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さが同一であっても、ボイド候補がスルーホールの中心軸方向に長い回転楕円体でなければ(例えば、球に近ければ)、当該ボイドの候補はボイドでないと見なし、スルーホールの中心軸方向に長い回転楕円体であれば当該ボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。
さらに、規格化後の値は、スルーホールの径方向の長さが同一の複数個のボイドの候補において、スルーホールの深さ方向の長さが短くなるほど小さくなる。従って、判定手段は、スルーホールの径方向の長さが同一であっても、ボイド候補がスルーホールの中心軸方向に長い回転楕円体でなければ(例えば、球に近ければ)、当該ボイドの候補はボイドでないと見なし、スルーホールの中心軸方向に長い回転楕円体であれば当該ボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。以上の構成によれば、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。なお、スルーホールの径方向におけるボイドの候補の長さは、種々の指標で特定可能であり、スルーホールの軸に垂直な方向のボイドの候補の断面におけるボイドの像の面積(最大値)から換算しても良いし、当該ボイドの像の周と近似する近似円の径であっても良いし、特定の座標軸方向(例えば、スルーホールの深さ方向をZ軸方向とした場合のX軸方向またはY軸方向)のボイドの像の長さ等によって構成可能である。
いずれにしても、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドには、他の検査対象(例えば、バンプ)内の通常のボイド(球形ボイド)と異なる3次元的な特徴がある。そこで、判定手段は、再構成情報から充填形成部内のボイドに特有の3次元的な特徴を反映した特徴量を取得する。この結果、判定手段が、当該特徴量に基づいて充填形成部内のボイドの有無を判定することで、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラムにおいても本発明を適用可能である。以上のようなX線検査装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。むろん、発明の実施態様がソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)X線検査装置の構成:
(2)X線検査処理:
(3)他の実施形態:
(1)X線検査装置の構成:
図1は本発明の一実施形態にかかるX線検査装置の概略ブロック図である。X線検査装置は、X線撮像機構部10と制御部20とを備えている。X線撮像機構部10は、X線発生器11とX線検出器12とを備えている。X線撮像機構部10は、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部を含む部品WとX線発生器11とX線検出器12とが所定の相対位置関係となった状態で、X線発生器11によって部品WにX線を照射させる。
X線発生器11は、X線を出力するX線出力部11aを備えており、所定の強度でX線を部品Wに照射することができる。X線検出器12は、X線の強度を検出する検出面12aを備えており、部品Wを透過したX線の透過量を反映したX線画像を撮影することができる。すなわち、X線検出器12は、検出面12aの各位置におけるX線の透過量の画像を示すX線画像データ26bを生成する。
本実施形態において部品Wはメッキ充填されたスルーホールを有する基板(または基板のコア材)であり、部品Wは図示しない搬送機構によって所定の平面に沿って搬送される。すなわち、未検査の部品Wが所定の平面に沿って搬入され、X線の照射範囲に配置され、検査された後に再度搬送機構によって搬出される。本実施形態においては、X線発生器11とX線検出器12と部品Wとの相対位置関係を変化させる図示しない位置決め機構が備えられている。すなわち、位置決め機構は、X線の照射範囲内で部品Wを所定の平面(X−Y平面と呼ぶ)に沿って2次元的に移動させることが可能であるとともに、充填形成部とX線出力部11aと検出面12aとの少なくとも1個の位置を移動させる移動機構を備えており、再構成演算を実施するためのX線画像を取得できるように充填形成部とX線出力部11aと検出面12aとの相対位置関係を調整可能である。
再構成演算を実施するための相対位置関係は種々の態様で実現可能であるが、例えば、充填形成部とX線出力部11aと検出面12aの相対的な位置関係が所定の回転軸に対して回転するように変動させる構成等を採用可能である。すなわち、位置決め機構は、充填形成部とX線出力部11aと検出面12aとの少なくとも1個を移動させることにより、X線出力部11aと検出面12aとが回転軸に対して実質的に回転するように位置を変更させることができる。このような構成は、例えば、X線出力部11aと検出面12aとの双方が回転移動されても良いし、X線出力部11aが固定され、その出力範囲において検出面12aと部品Wが回転されても良いし、X線出力部11aと検出面12aとが固定されX線出力部11aの出力範囲において部品Wが回転されてもよい。
次に制御部20について説明する。制御部20は、発生器制御部21と検出器制御部22と位置決め機構制御部23と入力部24と出力部25とメモリ26とCPU27とを備えている。メモリ26はデータを記憶可能な記憶媒体であり、プログラムデータ26aとX線画像データ26bとが記憶される。CPU27は、プログラムデータ26aを読み出して実行することにより、後述する各種処理のための演算を実行する。なお、メモリ26はデータを記憶することができればよく、RAMやEEPROM,HDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
位置決め機構制御部23は、充填形成部のX線画像を撮影する撮影位置となるように、充填形成部とX線出力部11aと検出面12aとの少なくとも1個の位置を調整する。発生器制御部21は、X線発生器11を制御し、X線発生器11から部品Wに対してX線を照射させる。検出器制御部22は、X線検出器12が検出したX線の強度、すなわち透過量の画像を示すX線画像データ26bを取得する。X線画像データ26bは複数の画素の階調値によって構成される画像データであり、各画素の階調値はX線検出器12が検出したX線の強度を示す。検出器制御部22は、X線検出器12からX線画像データ26bを取得し、メモリ26に記憶する。出力部25は部品Wの検査結果等を表示するディスプレイであり、入力部24は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。
CPU27は、部品Wに含まれる充填形成部の良否判定を行うために、プログラムデータ26aに基づいてX線画像取得部27aと再構成演算部27bと判定部27cと良否判定部27dとの各機能を実行する。X線画像取得部27aは、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部にX線を照射して異なる方向から撮影した複数のX線画像を取得する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、発生器制御部21,検出器制御部22,位置決め機構制御部23に対して所定の指示を出力し、再構成演算を実行するためのX線画像データ26bを取得する処理をCPU27に実行させる。
再構成演算部27bは、複数のX線画像に基づいて再構成演算を実行する処理をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、再構成演算部27bの処理により、X線画像データ26bに基づいて再構成演算を実行する。この結果、X,Y,Z軸で構成される3次元空間内で再構成情報が定義された状態、すなわち、3次元空間内の座標毎にX線の吸収量に対応した値が定義された状態となる。以後、特定の平面内での再構成情報を当該平面で再構成情報を切断した断面のX線画像と呼ぶ。
判定部27cは、再構成演算によって得られた再構成情報からスルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドに特有の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて充填形成部内のボイドの有無を判定する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、判定部27cの処理により、再構成情報に基づいて充填形成部の像を抽出し、当該像から充填形成部内のボイドに特有の特徴量を抽出する。当該特徴量は、充填形成部が、スルーホールの中心軸に近く、かつ、スルーホールの深さ方向に長い回転楕円体であることに着目して特定される。
図2Aは、基板(または基板のコア材)Pに形成されたスルーホールTにメッキMが形成されていく様子を、スルーホールTの中心軸を通る断面で基板Pを切断した状態で示している。図2Aに示す(1)(2)(3a)は、正常の過程を経てメッキMによってスルーホールTが充填される様子を示している。正常な過程では、図2Aの(1)に示すように、スルーホールT内の壁面に対して奥側から徐々に積層されていくようにしてメッキが形成される。やがてスルーホールの開口端までメッキが到達すると、図2Aの(3a)に示すようにスルーホールTが充填され、スルーホールTであった部分に充填形成部Fが形成される。
しかし、メッキの過程で曲率の大きい部位が発生すると、その部位を起点にして他の曲面より速くメッキが成長し、壁面に対するメッキの成長が開口部に達する前に開口部が塞がれてしまう場合がある。このような異常なメッキの成長が発生すると、例えば、図2Aに示す(1)(2)のような過程の後、(3b)のように充填形成部F内にボイドVが形成される場合がある。
このように充填形成部F内に形成されたボイドVの3次元構造は、はんだバンプ等において通常見られる球体のボイド(表面張力によってほぼ球体となるボイド)と異なっている。すなわち、スルーホールTの壁面からのメッキの成長はスルーホールの奥から開口部に向けて徐々に進むため、スルーホールTの壁面から中心軸方向および開口部方向に向けて徐々にメッキの成長が進行することになる。また、この過程では、図2Aの(2)に示すように、スルーホールTの中心軸Ax付近にスルーホールTの深さ方向Dに長い空間が形成され、当該空間を埋めていくようにメッキが成長する。従って、充填形成部F内におけるボイドは、ほとんどの場合スルーホールTの中心軸の付近に形成され、充填形成部Fの良否を判定する検査においてはスルーホールTの中心軸から遠い位置に不良と見なすべきボイドが形成されることはないとみなすことができる。
また、スルーホールTは、通常、スルーホールTの中心軸方向に長い穴であるため、壁面に沿ったメッキが成長している過程では、壁面の内側でメッキされずに残っている空間の形状が中心軸方向に長い形状になる。従って、充填形成部内に形成されるボイドはスルーホールTの中心軸方向に長い回転楕円体のような形状になり、球形にはならない。このため、充填形成部の良否を判定する検査においてはボイドの形状がスルーホールTの中心軸方向に長い回転楕円体でなければ不良と見なすべきボイドではないとみなすことができる。そこで、本実施形態においてCPU27は、判定部27cの処理により、再構成情報に基づいてボイドの候補を特定し、ボイドの候補とスルーホールTの中心軸との関係を示す特徴量と、スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さを示す特徴量とを解析する。
具体的には、CPU27は、再構成情報の中から検査対象となる充填形成部Fの像を特定するとともに、当該充填形成部F内のボイドの候補を特定する(詳細は後述)。さらに、CPU27は、充填形成部Fの像に基づいて充填形成部Fが円柱であると見なした場合の中心軸を特定してスルーホールTの中心軸Axとみなす。さらに、CPU27は、ボイドの候補の重心を特定する。そして、CPU27は、中心軸Axとボイドの候補の重心との距離を特徴量として取得し、当該距離が所定の距離判定基準より長い場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす。なお、スルーホールTの中心軸Axとボイドの候補の重心との距離について解析するための所定の距離判定基準は、ボイドの候補が中心軸Axから遠く、当該ボイドの候補の位置では不良の原因となるボイドが存在し得ないとみなすことができるような判定基準であり、当該距離を規格化した後の値と閾値とを比較する判定基準であると予め決められている(詳細は後述)。
さらに、CPU27は、スルーホールTの中心軸Axに平行な方向をスルーホールの深さ方向Dとみなし、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さを特徴量として取得する。そして、CPU27は、当該長さが所定の深さ判定基準未満である場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす。なお、スルーホールの深さ方向Dにおけるボイドの候補の長さについて解析するための所定の深さ判定基準は、ボイドの候補がスルーホールの深さ方向に長い回転楕円体でない場合に不良の原因となるボイドではないとみなすことができるような判定基準であり、当該深さ方向の長さを規格化した後の値と閾値とを比較する判定基準であると予め決められている(詳細は後述)。以上の構成によれば、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドの有無を正確に判定することができる。
良否判定部27dは、充填形成部Fの良否を判定する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、良否判定部27dの処理により、充填形成部F内にボイドの候補が残っている場合に当該候補が不良の原因となるボイドであるとみなし、充填形成部Fが不良であると判定する。そして、CPU27は、充填形成部F内にボイドの候補が残っていない場合に充填形成部Fが不良でないと判定する。
(2)X線検査処理:
図2Bは、X線検査処理を示すフローチャートである。当該X線検査処理は、検査対象の部品WがX線の照射範囲に搬送された後に実行される。X線検査処理において、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、CT撮影処理を行う(ステップS100)。すなわち、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、発生器制御部21,検出器制御部22,位置決め機構制御部23に対して所定の指示を出力し、Z軸方向に傾斜した角度でX線が充填形成部Fに照射されるように、各部の配置を調整する。さらに、CPU27は、X線画像取得部27aの処理により、発生器制御部21に対して所定の指示を出力して所定の出力でX線を出力させ、検出器制御部22に対して所定の指示を出力してX線画像データ26bを取得する。さらに、CPU27は、以上のようにX線画像データ26b撮影する処理を、軸Aを回転軸とした回転を行ったと見なすことができる複数の撮影位置で実行し、複数の撮影位置で撮影したX線画像データ26bをメモリ26に記録する。
次に、CPU27は、再構成演算部27bの処理により、再構成演算処理を実行する(ステップS110)。再構成演算は、充填形成部Fの3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においてCPU27は、まず、複数のX線画像のいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。尚、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、X線検出器12の検出面12aにおけるある位置の像に対応する軌跡は、X線発生器11の焦点とこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に画像を逆投影する。以上の逆投影を複数のX線画像のすべてについて行うと、3次元空間上で充填形成部Fが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、充填形成部Fの3次元形状を示す再構成情報が得られる。
次に、CPU27は、判定部27cの処理により、充填形成部Fの像を取得する(ステップS120)。すなわち、CPU27は、予め判明している基板P内の充填形成部Fの概略位置に基づいて充填形成部Fの像の走査範囲を特定し、当該走査範囲内の再構成情報に基づいてX線がメッキ材で吸収された部位を特定し、充填形成部Fの像として取得する。図3AはCPU27によって取得された充填形成部Fの像を模式的に示す図であり、同図3Aにおいては再構成情報の座標系であるX,Y,Z軸を併記して示している。
上述のようにX線が吸収された部位が走査されると、スルーホールTの形状を反映した形状の像が取得される。本例におけるスルーホールTは、円柱状の穴であるため、充填形成部Fの像も円柱状である。充填形成部Fの像が特定されると、図3Aに示すように、充填形成部Fの像は再構成情報の座標軸に対して傾いている場合もあるが、CPU27は、充填形成部Fの像の長手方向に垂直な断面に現れる円形の重心を結んだ直線を特定する等して、スルーホールTの中心軸Axに相当する充填形成部Fの円柱軸を特定することが可能である。そこで、本実施形態において、CPU27は、充填形成部Fの像に基づいて中心軸Axを特定し、当該中心軸AxがZ軸方向に対して並行になるように、予め再構成情報の座標を変換する。従って、当該変換の後には、スルーホールの中心軸方向やスルーホールの深さ方向はZ軸方向に平行であり、スルーホールの径方向はX−Y平面に平行である。
次に、CPU27は、判定部27cの処理により、ボイドの候補を取得する(ステップS130)。すなわち、CPU27は、充填形成部Fの像の中でX線がメッキ材で吸収されていない部位を特定する。本実施形態においてCPU27は、当該部位(X線が吸収されていない部位)の中からボイドとしてあり得る形状の部位を抽出してボイドの候補とする。当該抽出は種々の手法で行うことが可能であり、本実施形態においてCPU27は、当該部位のX−Y平面に平行な方向への断面における断面積、真円度、扁平率、粗度に基づいて抽出を行う。
具体的には、CPU27は、X線が吸収されていない部位が連続している範囲を1個のボイドに相当する部位とみなし、判定対象の部位とする。さらに、CPU27は、判定対象の部位をX−Y平面に平行な方向に切断した場合に、切断面が最も大きい断面を当該判定対象の部位がボイドの候補として抽出されるべきであるか否か判定する対象の断面とする。さらに、CPU27は、当該対象の断面を2値化することによってX線が吸収されていない部位と吸収された部位を特定し、吸収されていない部位の画素数を断面積として取得する。そして、当該断面積が所定の断面積閾値未満である場合、判定対象の部位が小さい、または、ノイズであるため、CPU27は当該判定対象の部位はボイドの候補ではないとみなす。
さらに、CPU27は、対象の断面におけるX線が吸収されていない部位のエッジの位置から断面の周を特定するとともに当該周の長さPを特定し、4πS/P2を真円度として取得する。なお、SはX線が吸収されていない部位の断面積である。当該4πS/P2の値は、0より大きく1以下であり、周の形状が円に近いほど1に近く、周の形状が複雑になるほど小さい値になる。ボイドはメッキ内の空洞であり表面が複雑な形状になることはないため、当該真円度が所定の真円度閾値未満である場合、判定対象の部位はノイズであり、CPU27は当該判定対象の部位がボイドの候補ではないとみなす。
さらに、CPU27は、対象の断面におけるX線が吸収されていない部位の径の最大値aと最小値bとを特定し、a/bを扁平率として取得する。当該a/bは、1以上の値となり、判定対象の部位の断面が扁平であるほど大きい値になる。ボイドはメッキ内の空洞であり断面が扁平になることはないため、当該扁平率が所定の扁平率閾値以上である場合、判定対象の部位がノイズであり、CPU27は当該判定対象の部位はボイドの候補ではないとみなす。
さらに、CPU27は、対象の断面におけるX線が吸収されていない部位の周を特定するとともに包落線を特定し、包落線の長さ(包落周囲長)Eを特定して、P/Eを粗度として取得する。なお、Pは上述の周の長さである。当該P/Eの値は、1より大きい値であり、周に凹凸が多いほど大きい値になる。ボイドはメッキ内の空洞であり表面が複雑な形状になることはないため、当該粗度が所定の粗度閾値以上である場合、判定対象の部位がノイズであり、CPU27は当該判定対象の部位はボイドの候補ではないとみなす。
CPU27は、以上の処理を、充填形成部Fの像内に存在する判定対象の部位の全てについて実行し、判定対象の部位がボイドの候補ではないと見なされなかった場合、当該部位をボイドの候補として取得する。なお、図3Aにおいては、充填形成部Fの像内に存在し得るボイドの候補Vcを模式的に示している。
ボイドの候補が取得されると、CPU27は、判定部27cの処理により、ボイドの候補を選別する(ステップS140)。すなわち、不良となり得るとみなすべきボイドの候補と不良ではないとみなすべきボイドの候補とを選別する。具体的には、CPU27は、スルーホールTの中心軸Axとボイドの候補の重心との距離をボイドの候補の大きさで除した値(規格化後の距離の値)が所定の距離閾値以上である場合に、距離が所定の距離判定基準より長いとみなす。
このために、CPU27は、充填形成部Fの像の中心軸をスルーホールTの中心軸Axとみなす。また、CPU27は、ボイドの候補の像に基づいて当該ボイドの重心を特定し、当該重心を通る径の中で最も大きい径を直径として取得する。むろん、直径は、他の種々の手法で特定可能である。そして、CPU27は、中心軸Axと重心との距離を取得し、当該距離をボイド候補の大きさとしての直径で除した値を規格化後の距離の値として取得する。
図3B、図3C、図3Dは、充填形成部Fの像をボイドの重心を通るとともにX−Y平面に平行な断面で切断した場合の像を模式的に示す図である。図3Bにおいては、ボイドの候補V1の直径がR1、中心軸Axとボイドの候補V1の重心との距離がL1であり、図3Cにおいては、ボイドの候補V2の直径がR2、中心軸Axとボイドの候補V2の重心との距離がL1であり、図3Dにおいては、ボイドの候補V3の直径がR2、中心軸Axとボイドの候補V3の重心との距離がL2である。
さらに、CPU27は、規格化後の距離の値が所定の距離閾値以上である場合に、ボイドの候補をボイドではないとみなす。中心軸Axと重心との距離をボイド候補の直径で除して得られた規格化後の距離の値は、スルーホールTの中心軸Axとボイドの候補の重心との距離が同一の複数個のボイドの候補において、ボイドの候補の大きさが小さくなるほど大きくなる。従って、規格化後の距離の値と所定の距離閾値との比較により、CPU27は、スルーホールTの中心軸Axとボイドの候補の重心との距離が同一であっても比較的小さいボイドの候補はボイドでないと見なし、比較的大きいボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。
例えば、図3Bと図3Cとを比較すると、スルーホールTの中心軸Axとボイドの候補の重心との距離は同一の距離L1である。一方、直径R1>直径R2であり、図3Bに示されたボイドの候補V1の直径の方がボイドの候補V2の直径よりも大きい。このため、予めL1/R1<所定の距離閾値<L1/R2となるように所定の距離閾値が設定されていれば、CPU27は、ボイドの候補V1はボイドであり、ボイドの候補V2はボイドでないと見なすことができる。
さらに、CPU27は、ボイドの候補の大きさが同一であってもスルーホールTの中心軸Axから比較的遠いボイドの候補はボイドでないと見なし、比較的近いボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。例えば、図3Cと図3Dとを比較すると、ボイドの候補V2の直径とボイドの候補V3の直径は双方ともR2であって同一である。一方、スルーホールTの中心軸Axとボイドの候補の重心との距離は図3Cにおける距離L1の方が図3Dにおける距離L2よりも大きい。従って、予めL2/R2<所定の距離閾値<L1/R2となるように所定の距離閾値が設定されていれば、CPU27は、ボイドの候補V3はボイドであり、ボイドの候補V2はボイドでないと見なすことができる。
以上の構成によれば、スルーホールTがメッキによって充填されることで形成された充填形成部F内のボイドの有無を正確に判定することができる。なお、所定の距離閾値は、スルーホールTの中心軸Axから遠いボイドの候補や、大きさが小さいボイドの候補(またはノイズであるボイドの候補)をボイドではないと見なすことができるように、予め統計等によって特定されていれば良い。
さらに、CPU27は、スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さをスルーホールTの径方向におけるボイドの候補の長さで除した値(規格化後の深さの値)が所定の深さ閾値未満である場合に、深さ方向におけるボイドの候補の長さが所定の深さ判定基準未満であるとみなす(すなわち、ボイドの候補をボイドではないとみなす)。このために、CPU27は、充填形成部Fの像の中心軸方向の長さをスルーホールTの深さ方向の長さとみなす。また、CPU27は、上述のボイドの候補の直径を取得する。そして、CPU27は、スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さをスルーホールTの径方向におけるボイドの候補の長さで除した値を規格化後の深さの値として取得する。
図3E、図3F、図3Gは、ボイドの像を模式的に示す図であり、縦方向をスルーホールTの深さ方向D、横方向をスルーホールの径方向Raとしてボイドの候補の形状を模式的に示している。図3Eにおいては、ボイドの候補V4のスルーホールTの深さ方向の長さがD1、径方向の長さがRa1であり、図3Fにおいては、ボイドの候補V5のスルーホールTの深さ方向の長さがD1、径方向の長さがRa2であり、図3Gにおいては、ボイドの候補V6のスルーホールTの深さ方向の長さがD2、径方向の長さがRa1である。
さらに、CPU27は、規格化後の深さの値が所定の深さ閾値未満である場合に、ボイドボイドの候補をボイドではないとみなす。スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さをスルーホールTの径方向におけるボイドの候補の長さで除した規格化後の深さの値は、スルーホールTの深さ方向の長さが同一の複数個のボイドの候補において、スルーホールTの径方向の長さが長くなるほど小さくなる。従って、規格化後の深さの値と所定の深さ閾値との比較により、CPU27は、スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さが同一であっても、ボイド候補がスルーホールTの中心軸Ax方向に長い回転楕円体でなければ(例えば、球に近ければ)、当該ボイドの候補はボイドでないと見なし、スルーホールTの中心軸Ax方向に長い回転楕円体であれば当該ボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。
例えば、図3Eと図3Fとを比較すると、スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さは同一の長さD1である。一方、スルーホールTの径方向におけるボイドの候補の長さRa1,Ra2は、長さRa2>長さRa1であり、図3Eに示されたボイドの候補はD方向に長い回転楕円体に近く、図3Fに示されたボイドの候補は球形に近い。そして、予めD1/Ra2<所定の深さ閾値<D1/Ra1となるように所定の距離閾値が設定されていれば、CPU27は、規格化後の深さの値が所定の深さ閾値未満であるボイドの候補V5はボイドでなく、ボイドの候補V4はボイドであると見なすことができる。
さらに、CPU27は、スルーホールTの径方向の長さが同一であっても、ボイド候補がスルーホールTの中心軸Ax方向に長い回転楕円体でなければ(例えば、球に近ければ)、当該ボイドの候補はボイドでないと見なし、スルーホールTの中心軸Ax方向に長い回転楕円体であれば当該ボイドの候補はボイドであるとみなすことが可能である。
例えば、図3Eと図3Gとを比較すると、スルーホールTの径方向におけるボイドの候補の長さは、双方とも長さRa1で同一である。一方、スルーホールTの深さ方向におけるボイドの候補の長さはD1,D2であり、ボイドの候補V4の長さD1の方がボイドの候補V6の長さD2よりも長い。そして、図3Eに示されたボイドの候補はD方向に長い回転楕円体に近く、図3Gに示されたボイドの候補は球形に近い。このため、予めD2/Ra1<所定の深さ閾値<D1/Ra1となるように所定の距離閾値が設定されていれば、CPU27は、規格化後の深さの値が所定の深さ閾値未満であるボイドの候補V6はボイドでなく、ボイドの候補V4はボイドであると見なすことができる。
以上の構成によれば、スルーホールTがメッキによって充填されることで形成された充填形成部F内のボイドの有無を正確に判定することができる。なお、所定の深さ閾値は、ボイドの候補の形状がスルーホールTの深さ方向に長い回転楕円体ではなく、深さ方向に短いボイドの候補(またはノイズであるボイドの候補)をボイドではないと見なすことができるように、予め統計等によって特定されていれば良い。
以上のようにしてボイドが選別されると、CPU27は、良否判定部27dの処理により、良否判定処理を行う(ステップS150)。すなわち、CPU27は、良否判定部27dの処理により、充填形成部F内にボイドの候補が残っている場合に当該候補が不良の原因となるボイドであるとみなし、充填形成部Fが不良であると判定する。ボイドの候補の全てがボイドではないと見なされた場合、CPU27は、充填形成部Fが不良ではないと判定する。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、スルーホールがメッキによって充填されることで形成された充填形成部内のボイドに特有の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて充填形成部内のボイドの有無を判定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、良否判定のための処理は、上述の例に限定されず、ボイドと充填形成部のZ軸方向の端部との距離等に基づいて良否判定が行われる構成であってもよい。
さらに、ボイドの候補の選別を行う際に、距離や深さ方向の長さを規格化することなく選別を行ってもよい。すなわち、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離が所定の距離判定基準以上であるか否かをCPU27が判定する際に、スルーホールの中心軸とボイドの候補の重心との距離と閾値とを比較する構成であっても良い。また、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さが所定の深さ判定基準未満であるか否かをCPU27が判定する際に、スルーホールの深さ方向におけるボイドの候補の長さと閾値とを比較する構成であっても良い。さらに、上述の実施形態においては、X線を利用しているが、検査対象を透過する他の放射線、例えば、ガンマ線等が利用されてもよい。