本発明のゴム組成物は、天然ゴム(NR)およびアルコキシシリル基を有する変性ブタジエンゴム(以下、変性BRともいう。)を含むゴム成分、およびフィラーとしてのシリカを含有し、変性BRのシス1,4−結合含有率が97%以上であり、ゴム成分中に、NRおよび変性BRを合計30〜100質量%含み、フィラーとしてのシリカの含有量がゴム成分100質量部に対して15〜80質量部であり、フィラー中のシリカの含有量が50質量%以上であり、変性BRをシリカとのマスターバッチとして用いることを特徴とするものである。変性BRをシリカとのマスターバッチとして用いることにより、変性BRと比べて極性が高くシリカとの親和性の高いNRに偏在しやすいシリカを変性BRにも偏在させることができる。これにより、天然ゴムの優れた耐摩耗性能を損なうことなく、また変性BRの優れた低発熱性を活かした低燃費性を実現し、さらにシリカによる氷上性能の改善を行うことができる。
本発明に用いる変性BRは、シス1,4−結合含有率が97%以上のブタジエンゴム(BR)(ハイシスBR)に変性基としてアルコキシシリル基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。導入されるアルコキシシリル基としては、特に限定されるものではないが、たとえば、一般式(2):−SiR4R5R6(式中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、C1~3のアルコキシ基またはC1~3のアルキル基であり、R4、R5およびR6の少なくとも1つがC1~3のアルコキシ基である)で表されるものがあげられる。具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、メチルジメトキシ基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基などがあげられる。
本発明に用いる変性BRのムーニー粘度(ML1+4(125℃))は、10〜150であることが好ましく、20〜100であることがより好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(125℃))が10未満であると、破壊特性を始めとするゴム物性が低下するおそれがある。一方、ムーニー粘度(ML1+4(125℃))が150を超えるものであると、作業性が悪くなり、配合剤と共に混練りすることが困難になるおそれがある。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)が、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。分子量分布が3.5を超えるものであると、破壊特性、低発熱性などのゴム物性が低下する傾向がある。
また、コールドフロー値(mg/分)は、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。コールドフロー値が1.0を超えるものであると、貯蔵時におけるポリマーの形状安定性が悪化するおそれがある。なお、本明細書において、コールドフロー値(mg/分)は、後述する測定方法により算出される値である。
さらに、経時安定性の評価値は、0〜5であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。この評価値が5を超えるものであると、貯蔵時にポリマーが経時変化するおそれがある。なお、本明細書において、経時安定性は、後述する測定方法により算出される値である。
このような変性BRは、シス1,4−結合含有率が97%以上であり、活性末端を有するBRに、アルコキシシリル基以外にも少なくとも1つ反応性基を有するアルコキシシラン化合物を反応させることにより得ることができる。アルコキシシリル基以外の反応性基としては、とくにその種類を限定するものではないが、たとえば、(d):エポキシ基、(e):イソシアネート基、(f):カルボニル基および(g):シアノ基から選択された少なくとも1種の官能基が好ましい。つまり、アルコキシシリル基以外にも少なくとも1つ反応性基を有するアルコキシシラン化合物としては、(d):エポキシ基、(e):イソシアネート基、(f):カルボニル基および(g):シアノ基から選択された少なくとも一種の官能基を含有するアルコキシシラン化合物を用いることが好ましい。アルコキシシラン化合物は、SiORの一部(すなわち、全部ではない)が縮合によりSiOSi結合した部分縮合物であってもよく、アルコキシシラン化合物と部分縮合物との混合物であってもよい。
アルコキシシラン化合物の具体例としては、(d):エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物として、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランがあげられ、なかでも3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましく;(e):イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物として、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどがあげられ、なかでも3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好ましく;(f):カルボニル基を含有するアルコキシシラン化合物として、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどがあげられ、なかでも3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく;(g):シアノ基を含有するアルコキシシラン化合物として、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルトリイソプロポキシシランなどがあげられ、なかでも3−シアノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
これらのアルコキシシラン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記のように、アルコキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
使用するBRは、シス1,4−結合含有率が97%以上であり、活性末端を有するBRである。BRのシス1,4−結合含有率は、98.5%以上が好ましく、99.0%以上がより好ましく、99.2%以上がさらに好ましい。BRのシス1,4−結合含有率が97%未満であると、変性BRを含有する未加硫ゴム組成物に加硫処理を施して加硫ゴムとした場合に、この加硫ゴムは十分な低発熱性および耐摩耗性が得られなく恐れがある。なお、本明細書において、シス1,4−結合含有率は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
またBRは、分子量分布(Mw/Mn)が、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。分子量分布が3.5を超えるものであると、破壊特性、低発熱性をはじめとするゴム物性が低下する傾向にある。
また、BRの1,2−ビニル結合の含量が、0.5%以下が好ましく、0.4%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましい。0.5%以下を超えるものであると、破壊特性などのゴム物性が低下する傾向にある。本明細書において、1,2−ビニル結合含量は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
BRの1,2−ビニル含有率、シス1,4−結合含有率、またはこれらの両方は、製造過程における重合温度をコントロールすることによって、容易に調整することができる。また、Mw/Mnは、上記(a)〜(c)成分のモル比をコントロールすることによって、容易に調整することができる。
BRの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、5〜50の範囲が好ましく、10〜40がより好ましい。5未満では加硫後の機械特性、耐摩耗性などが低下することがある。一方、50を超えると、変性反応を行った後の変性BRの混練り時の加工性が低下することがある。このムーニー粘度は、上記(a)〜(c)成分のモル比をコントロールすることにより容易に調整することができる。
このようなBRは、1,3−ブタジエンを重合して得ることができ、重合は、溶媒を用いて行ってもよいし、または無溶媒下で行ってもよい。重合に用いる溶媒(重合溶媒)としては、不活性な有機溶媒があげられ、たとえばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの炭素数6〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテンなどのモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素をあげることができる。
BRを製造する際における重合反応の温度は、−30〜+200℃が好ましく、0〜+150℃がより好ましい。また、重合反応の形式は、特に制限されるものではなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。重合に溶媒を用いる場合は、この溶媒中のモノマー濃度は5〜50質量%が好ましく、7〜35質量%がより好ましい。また、重合系内に、酸素、水または炭酸ガスなどの失活作用のある化合物を極力混入させない配慮をすることが、BRの活性末端を失活させないためには好ましい。
BRとしては、つぎの(a)〜(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物の存在下で1,3−ブタジエンを重合したBRを用いることが好ましい。
(a)成分:ランタノイドの少なくともいずれか1つの元素を含有するランタノイド含有化合物、またはこのランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、および一般式(1):AlR1R2R3(式中、R1およびR2は、同一もしくは異なる炭素数1〜10の炭化水素基、または水素原子であり、R3は、R1およびR2と同一または異なる炭素数1〜10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物よりなる群から選択される少なくとも一種
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
このような触媒組成物を用いることにより、シス1,4−結合含有率が98.5%以上であるBRを得ることができる。また、この触媒は、極低温で重合反応を行う必要がなく、操作が簡便であり、工業的生産工程として有用である。
(a)成分について、以下に説明する。(a)成分は、ランタノイドの少なくともいずれか1つの元素を含有するランタノイド含有化合物またはこのランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物である。ランタノイドのなかでも、ネオジム、プラセオジウム、セリウム、ランタン、ガドリニウムまたはサマリウムが好ましく、ネオジムがより好ましい。これらのランタノイドは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ランタノイド含有化合物の具体例としては、ランタノイドのカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩または亜リン酸塩などをあげることができ、なかでもカルボン酸塩またはリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩がより好ましい。
ランタノイドのカルボン酸塩の具体例としては、一般式(3):(R7−CO2)3M(式中、Mはランタノイドであり、R7は炭素数1〜20の炭化水素基である)で表されるカルボン酸の塩をあげることができる。R7は、飽和または不飽和の炭化水素基であることが好ましく、直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であることがより好ましい。また、カルボキシル基は、一級、二級または三級のいずれかの炭素原子に結合しており、より具体的には、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、商品名「バーサチック酸」(シェル化学社製、カルボキシル基が三級炭素原子に結合しているカルボン酸)などの塩をあげることができる。なかでも、バーサチック酸、2−エチルヘキサン酸またはナフテン酸の塩が好ましい。
ランタノイドのアルコキサイドの具体例としては、一般式(4):(R8O)3M(式中、Mはランタノイドであり、R8は、炭素数1〜20の炭化水素基である)で表されるものをあげることができる。R8の具体例としては、2−エチルヘキシル基、オレイル基、ステアリル基、フェニル基、ベンジル基などをあげることができ、なかでも2−エチル−ヘキシル基またはベンジルアルコキシ基が好ましい。
ランタノイドのβ−ジケトン錯体の具体例としては、アセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体などをあげることができ、なかでもアセチルアセトン錯体またはエチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
ランタノイドのリン酸塩または亜リン酸塩の具体例としては、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸などの塩をあげることができ、なかでもリン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルまたはビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸の塩が好ましい。
これまで例示したもののうち、ランタノイド含有化合物としては、ネオジムのリン酸塩またはネオジムのカルボン酸塩がより好ましく、ネオジムのバーサチック酸塩またはネオジムの2−エチルヘキサン酸塩などのカルボン酸塩がさらに好ましい。
上記ランタノイド含有化合物を溶剤に可溶化させるため、または長期間安定に貯蔵するために、ランタノイド含有化合物とルイス塩基を混合すること、またはランタノイド含有化合物とルイス塩基を反応させて反応生成物とすることも好ましい。ルイス塩基の量は、ランタノイド1モルに対して、0〜30モルが好ましく、1〜10モルがより好ましい。ルイス塩基の具体例としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、一価または二価のアルコールなどをあげることができる。(a)成分は、これらの化合物を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(b)成分について、以下に説明する。(b)成分は、アルミノオキサンおよび一般式(1):AlR1R2R3(式中、R1およびR2は、同一もしくは異なる炭素数1〜10の炭化水素基、または水素原子であり、R3は、R1およびR2と同一または異なる炭素数1〜10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である。
アルミノオキサン(以下、アルモキサンとも称す)は、その構造が、下記一般式(5)または(6)で表される化合物である。また、月刊「ファインケミカル」、23(9)、5(1994);J. Am. Chem. Soc., 115, 4971(1993) および J. Am. Chem. Soc., 117, 6465(1995) で開示されているアルモキサンの会合体であってもよい。
上記一般式(5)および(6)中、R9は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、kは2以上の整数である。前記一般式(5)および(6)中、R9の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、イソオクチル基などをあげることができ、なかでもメチル、エチル、イソブチルまたはt−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、上記一般式(5)および(6)中、kは4〜100の整数であることが好ましい。
アルモキサンの具体例としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、n−プロピルアルモキサン、n−ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサンなどをあげることができ、なかでも、メチルアルモキサンが好ましい。アルモキサンは、公知の方法によって製造することができる。たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウムまたはジアルキルアルミニウムモノクロライドを加え、さらに水、水蒸気、水蒸気含有窒素ガス、または硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩などの結晶水を有する塩を加えて反応させることにより製造することができる。アルモキサンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム、エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライドなどがあげられ、水素化ジイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウムなどが好ましい。有機アルミニウム化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(c)成分について、以下に説明する。(c)成分は、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物である。ヨウ素含有化合物を用いることにより、シス1,4−結合含有率が98.5%以上であるBRを容易に得ることができるという利点がある。ヨウ素含有化合物は、その分子構造中に少なくとも一個のヨウ素原子を含有すれば特に制限はなく、たとえば、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カドミウム、ヨウ化水銀、ヨウ化マンガン、ヨウ化レニウム、ヨウ化銅、ヨウ化銀、ヨウ化金などをあげることができる。
ただし、上記ヨウ素含有化合物としては、一般式(7):R10 mSiI4-m(式中、R10は炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子であり、mは0〜3の整数である)で表されるヨウ化ケイ素化合物、一般式(8):R11 nI4-n(式中、R11は炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは1〜3の整数である)で表されるヨウ化炭化水素化合物またはヨウ素であることが好ましい。これらのヨウ化ケイ素化合物、ヨウ化炭化水素化合物、またはヨウ素は有機溶剤への溶解性が良好であるため、操作が簡便であり、工業的生産工程として有用である。
一般式(7)で表されるヨウ化ケイ素化合物の具体例としては、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨードなどをあげることができ、トリメチルシリルアイオダイドが好ましい。また、一般式(8)で表されるヨウ化炭化水素化合物の具体例としては、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイドなどをあげることができ、なかでもメチルアイオダイド、ヨードホルムまたはジヨードメタンが好ましい。上記ヨウ素含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記各成分(a)〜(c)の配合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。(a)成分は、100gの1,3−ブタジエンに対して、0.00001〜1.0ミリモル用いることが好ましく、0.0001〜0.5ミリモル用いることがより好ましい。0.00001ミリモル未満であると、重合活性が低下する傾向がある。一方、1.0ミリモルを超えると、触媒濃度が高くなり、脱灰工程が必要となる場合がある。
(b)成分がアルモキサンである場合、触媒に含有されるアルモキサンの好ましい量は、(a)成分と、アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)とのモル比で表すことができる。すなわち、「(a)成分」:「アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)」(モル比)=1:1〜1:500が好ましく、1:3〜1:250がより好ましく、1:5〜1:200がさらに好ましい。1:1〜1:500の範囲外では、触媒活性が低下する傾向にあるか、または触媒残渣を除去する工程が必要となる場合がある。
また、(b)成分が有機アルミニウム化合物である場合、触媒に含有される有機アルミニウム化合物の好ましい量は、(a)成分と、有機アルミニウム化合物とのモル比で表すことができる。すなわち、「(a)成分」:「有機アルミニウム化合物」(モル比)=1:1〜1:700が好ましく、1:3〜1:500がより好ましい。1:1〜1:700の範囲外では、触媒活性が低下する傾向にあるか、または触媒残渣を除去する工程が必要となる場合がある。
(c)成分の好ましい量は、(c)成分に含有されるヨウ素原子と、(a)成分とのモル比で表すことができる。すなわち、(ヨウ素原子)/((a)成分)(モル比)=0.5〜3が好ましく、1.0〜2.5がより好ましく、1.2〜1.8がさらに好ましい。(ヨウ素原子)/((a)成分)のモル比が0.5未満であると、重合触媒活性が低下する傾向にある。一方、(ヨウ素原子)/((a)成分)のモル比が3を超えると、触媒毒となる傾向にある。
触媒には、(a)〜(c)成分以外に、触媒活性を一段と向上させるため、必要に応じて1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物およびジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ビニルヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を、(a)成分1モルに対して、1000モル以上含有させることが好ましく、150〜1000モル含有させることがより好ましく、3〜300モル含有させることがさらに好ましい。
BRの製造に用いる触媒組成物は、たとえば、溶媒に溶解した(a)〜(c)成分、さらに必要に応じて添加される共役ジエン系化合物および非共役ジエン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を反応させることにより、調製することができる。各成分の添加順序は任意でよいが、各成分をあらかじめ混合および反応させるとともに、熟成させておくことが、重合活性の向上、および重合開始誘導期間の短縮の点から好ましい。熟成温度は、0〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。0℃未満であると、熟成が不十分となる傾向にある。一方、100℃超であると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが生じやすくなる傾向にある。熟成時間には、特に限定はなく、重合反応漕に添加する前に、各成分どうしをライン中で接触させてもよい。熟成時間は、0.5分以上であれば十分である。また、調製した触媒は、数日間は安定である。
具体的な好ましい変性BRの製造方法としては、上述のシス1,4−結合含有率が、97%以上であるBRの活性末端に、アルコキシシラン化合物を用いてアルコキシシリル基を導入させる変性反応(変性工程(A))を行い、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族に含有される元素の内の少なくとも1つを含む縮合触媒の存在下で、この活性末端に導入されたアルコキシシリル基を縮合反応(縮合工程(B))させることによって、低発熱性(すなわち、低燃費性)および耐摩耗性に優れた変性BRを得ることができる。このような変性BRは、カーボンブラックやシリカを配合してゴム組成物とした場合に、極めて加工性が良好なゴム組成物を得ることができ、また、この未加硫ゴム組成物に加硫処理を施して加硫ゴム組成物とした場合、低発熱性および耐摩耗性に優れた加硫ゴム組成物を得ることができる。
変性工程(A)に用いるアルコキシシラン化合物としては、上述したアルコキシシリル基以外の少なくとも1つの反応性基を有するものを使用することができる。
変性工程(A)における、アルコキシシラン化合物の使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01〜200モルが好ましく、0.1〜150モルがより好ましい。アルコキシシラン化合物の使用量が0.01モル未満では、変性反応の進行が十分でなく、充填剤の分散性が十分に改良されず、加硫後の機械特性、耐摩耗性、低発熱性が十分に得られなくなる。一方、アルコキシシラン化合物を、(a)成分1モルに対して200モルを超えて使用しても、変性反応は飽和しており、使用した分のコストが余計にかかってしまう。アルコキシシラン化合物の添加方法は、特に限定されるものではなく、一括して添加する方法、分割して添加する方法、または、連続的に添加する方法などがあげられ、一括して添加する方法が好ましい。
変性工程(A)の変性反応は、溶液中で行うことが好ましく、この溶液としては、重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液をそのまま使用することができる。変性反応の形式については、特に制限されるものではなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。またこの変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などの前に行うことが好ましい。
変性反応の温度は、BRの重合温度をそのまま用いることができる。具体的には、20〜100℃が好ましい範囲としてあげられ、40〜90℃がより好ましい。温度が低くなると重合体の粘度が上昇する傾向があり、温度が高くなると重合活性末端が失活し易くなるので好ましくない。
また、変性工程(A)における変性反応時間は、5分間〜5時間であることが好ましく、15分間〜1時間であることがさらに好ましい。変性反応時に、所望により、公知の老化防止剤や反応停止剤を、重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後の縮合工程(B)において、添加することができる。
変性BRの製造においては、上記アルコキシシラン化合物の他に、縮合工程(B)において、活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物残基と縮合反応し、消費されるものをさらに添加することが好ましい。具体的には、官能基導入剤を添加することが好ましい。この官能基導入剤により、変性共BRの耐摩耗性を向上させることができる。
官能基導入剤は、活性末端との直接反応を実質的に起こさず、反応系に未反応として残存するものであれば特に制限はないが、たとえば、上記アルコキシシラン化合物とは異なるアルコキシシラン化合物、すなわち、(h):アミノ基、(i):イミノ基、および(j):メルカプト基から選択された少なくとも一種の官能基を含有するアルコキシシラン化合物であることが好ましい。この官能基導入剤として用いられるアルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよく、官能基導入剤として用いるアルコキシシラン化合物とその部分縮合物との混合物であってもよい。
官能基導入剤の具体例としては、(h):アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物として、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどがあげられ、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく、(i):イミノ基を含有するアルコキシシラン化合物として、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、またN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、およびこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、またはエチルジメトキシシリル化合物、また、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−[10−(トリエトキシシリル)デシル]−4−オキサゾリン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールなどがあげられ、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールまたはN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが好ましく、(j):メルカプト基を含有するアルコキシシラン化合物として、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−メルカプトプロピル(モノエトキシ)ジメチルシラン、メルカプトフェニルトリメトキシシラン、メルカプトフェニルトリエトキシシランなどがあげられ、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
これらの官能基導入剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
官能基導入剤として、アルコキシシラン化合物を用いる場合、その使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01〜200モルが好ましく、0.1〜150モルがより好ましい。0.01モル未満では、縮合反応の進行が十分でなく、充填剤の分散性が十分に改良されず、加硫後の機械特性、耐摩耗性、低発熱性に劣る。一方、(a)成分1モルに対して200モルを超えて使用しても、縮合反応は飽和しており、経済上好ましくない。
官能基導入剤の添加時期は、変性工程(A)の後の縮合工程(B)であって、縮合反応開始前が好ましい。縮合反応開始後に添加した場合、官能基導入剤が均一に分散せず、触媒性能が低下する場合がある。官能基導入剤の添加時期は、具体的には変性反応開始5分〜5時間後が好ましく、変性反応開始15分〜1時間後がより好ましい。
官能基導入剤として、上記(h)〜(j)の官能基を含有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、活性末端を有するBRと、反応系に加えられた実質上化学量論的量の上記(d)〜(g)の官能基を含有するアルコキシシラン化合物とが変性反応を起こし、実質的に活性末端のすべてにアルコキシシリル基が導入され、さらに上記官能基導入剤を添加することにより、このBRの活性末端の当量より多くのアルコキシシラン化合物が導入されることになる。
アルコキシシリル基どうしの縮合反応は、遊離のアルコキシシラン化合物とBR末端のアルコキシシリル基の間で起こること、また場合によってはBR末端のアルコキシシリル基どうしで起こることが、反応効率の観点から好ましく、遊離のアルコキシシラン化合物どうしの反応は好ましくない。したがって、官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を新たに加える場合には、そのアルコキシシリル基の加水分解性が、BR末端に導入したアルコキシシリル基の加水分解性に比べて低いことが好ましい。
たとえば、BRの活性末端との反応に用いられるアルコキシシラン化合物には、加水分解性の高いトリメトキシシリル基を含有する物を用い、官能性導入剤として新たに添加するアルコキシシラン化合物には、トリメトキシシリル基含有化合物よりも加水分解性が低いアルコキシシリル基(たとえば、トリエトキシシリル基)を含有する物を用いる組み合わせが好ましい。
縮合工程(B)においては、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族に含まれる元素の少なくとも1つの元素を含有する縮合触媒の存在下で、上記BRの活性末端に導入されたアルコキシシリル基を縮合反応させる。
縮合触媒としては、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族に含まれる元素のうち少なくとも1つの元素を含有するものであれば、特に制限されるものではなく、なかでもチタン(Ti)(3B族)、スズ(Sn)(4B族)、ジルコニウム(Zr)(4A族)、ビスマス(Bi)(5B族)およびアルミニウム(Al)(3B族)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものであることが好ましい。
縮合触媒は、スズ(Sn)を含む縮合触媒として、たとえば、ビス(n−オクタノエート)スズ、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ラウレート)スズ、ビス(ナフトエネート)スズ、ビス(ステアレート)スズ、ビス(オレエート)スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジn−オクタノエート、ジブチルスズジ2−エチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジブチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジn−オクチルスズジアセテート、ジn−オクチルスズジn−オクタノエート、ジn−オクチルスズジ2−エチルヘキサノエート、ジn−オクチルスズジラウレート、ジn−オクチルスズマレート、ジn−オクチルスズビス(ベンジルマレート)、ジn−オクチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)などがあげられる。
ジルコニウム(Zr)を含む縮合触媒として、たとえば、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラi−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラsec−ブトキシジルコニウム、テトラtert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウムなどがあげられる。
ビスマス(Bi)を含む縮合触媒としては、たとえば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマスなどがあげられる。
アルミニウム(Al)を含む縮合触媒としては、たとえば、トリエトキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリi−プロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリtert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウムなどがあげられる。
チタン(Ti)を含む縮合触媒としては、たとえば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラn−プロポキシチタニウム、テトラi−プロポキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラsec−ブトキシチタニウム、テトラtert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウムなどをあげることができる。
これらのなかでも、縮合触媒としては、チタン(Ti)を含む縮合触媒がより好ましく、また、チタン(Ti)を含む縮合触媒のなかでも、チタン(Ti)のアルコキシド、カルボン酸塩またはアセチルアセトナート錯塩が好ましい。チタン(Ti)を含む縮合触媒を用いることにより、変性反応に用いる変性剤としてのアルコキシシラン化合物および官能基導入剤としてのアルコキシシラン化合物の残基の縮合反応をより効果的に促進させることができ、加工性、低温特性および耐摩耗性に優れた変性BRを得ることが可能となる。
縮合触媒の使用量としては、縮合触媒として用いる上記の化合物のモル数が、反応系内に存在するアルコキシシリル基総量1モルに対して、0.1〜10モルが好ましく、0.5〜5モルがより好ましい。縮合触媒の使用量が0.1モル未満では、縮合反応が十分に進行せず、一方、10モルを超えて使用しても縮合触媒としての効果は飽和しており、経済上好ましくない。
縮合触媒は、変性工程(A)前に添加することもできるが、変性反応後、かつ縮合反応前に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端にアルコキシシリル基が導入されない場合がある。また、縮合反応開始後に添加した場合、縮合触媒が均一に分散せず、触媒性能が低下する場合がある。縮合触媒の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分〜5時間後が好ましく、変性反応開始15分〜1時間後がより好ましい。
縮合工程(B)は、水溶液中で行うことが好ましく、縮合反応時の温度は85〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、110〜150℃がさらに好ましい。縮合反応時の温度が85℃未満の場合は、縮合反応の進行が遅く、縮合反応を完結することができないため、得られる変性BRに経時変化が発生し、品質上問題となるおそれがある。一方、180℃を超えると、ポリマーの老化反応が進行し、物性を低下させるおそれがある。
水溶液のpHは9〜14が好ましく、10〜12がより好ましい。このような範囲とすることにより、縮合反応が促進され、変性BRの経時安定性を改善するという利点がある。pHが9未満であると、縮合反応の進行が遅く、縮合反応を完結することができないため、得られる変性BRに経時変化が発生し、品質上問題となるおそれがある。一方、縮合反応時の水溶液のpHが14を超えると、単離後の変性BR中に多量のアルカリ由来成分が残留し、その除去が困難となるおそれがある。
縮合反応時間は、5分〜10時間が好ましく、15分〜5時間程度がより好ましい。反応時間が5分未満では、縮合反応が完結しないおそれがある。一方、反応時間が10時間を超えても縮合反応が飽和しているおそれがある。また、縮合反応時の反応系内の圧力は、0.01〜20MPaが好ましく、0.05〜10MPaがより好ましい。
縮合反応の形式については、特に制限されるものではなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行ってよい。そして、縮合反応後、従来公知の後処理を行い、変性BRを得ることができる。
本発明のゴム組成物における、全ゴム成分中の上述の変性BRとNRとの合計含有量は、30質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。変性BRとNRとの合計含有量が高いほど低温特性に優れ、必要な氷上性能を発揮することができる。
上記変性BRの含有量は、ゴム成分中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が最も好ましい。変性BRの含有量は、ゴム成分中、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。変性BRの含有量が、10質量%未満であると、十分な氷上性能を発揮し難い傾向があり、90質量%を超えると、NRの含有量を確保することができず、耐摩耗性能を確保し難い傾向がある。
本発明において使用するNRは特に限定されるものではなく、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などがあげられる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述の変性BRおよびNR以外にも、その他のゴム成分を含むことができ、具体的には、改質天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムから選択される1種以上のゴム成分があげられる。
さらに、本発明のゴム組成物におけるシリカの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。シリカの配合量が20質量部未満である場合、変性BRの効果が発揮できないおそれがある。また、本発明のゴム組成物におけるシリカの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましい。シリカの含有量が80質量部を超える場合、シリカが分散しにくくなり、加工性が悪化するおそれがある。
シリカは、特に限定されるものではなく、たとえば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)や、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)など、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。シリカのN2SAが80m2/g未満の場合は、十分な補強性が得られず、トレッドに必要とされる、破壊強度、耐摩耗性能が確保し難い傾向がある。また、シリカのN2SAは、200m2/g以下が好ましく、180m2/g以下がより好ましい。シリカのN2SAが200m2/gを超える場合は、低温特性を確保し難い傾向がある。ここで、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、ゴム成分およびシリカ以外に、シリカ以外のフィラーとしてカーボンブラックなど、シランカップリング剤、オイル、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛などの、ゴム組成物に一般的に使用される他の材料を適宜配合することができる。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどがあげられ、これらのカーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。なかでも、低温特性と摩耗性能をバランスよく向上させることができるという理由から、ファーネスブラックが好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、十分な補強性および耐摩耗性が得られる点から、15m2/g以上が好ましく、30m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、分散性に優れ、発熱しにくいという点から、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましい。なお、N2SAは、JIS K 6217−2「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」に準じて測定することができる。
カーボンブラックを含有する場合の全ゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。5質量部未満の場合は、十分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。60質量部を超える場合は、加工性が悪化する傾向、低燃費性が低下する傾向、および耐摩耗性が低下する傾向がある。
フィラーの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して、15質量部以上であり、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。フィラーの含有量が15質量部未満の場合は、破壊特性の向上効果が不十分となる傾向がある。また、フィラーの含有量は、全ゴム成分100質量部に対して80質量部以下であり、75質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。フィラーの含有量が80質量部を超える場合は、加工性が低下する傾向がある。フィラー中のシリカの含有量は、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましい。フィラー中のシリカの含有量が50質量%未満であると、燃費性能が悪化する傾向がある。
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を併用することができ、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;などがあげられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シリカとの反応性が良好であるという点から、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが特に好ましい。
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が3質量部未満では、破壊強度が悪化する傾向がある。また、該シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が20質量部を超える場合は、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
オイルとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、プロセスオイル、植物油脂またはその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、たとえば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。なかでも、低温でのタイヤ性能が良好であるという点からミネラルオイルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルを含有する場合の全ゴム成分100質量部に対する含有量は、12質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。オイルの含有量が12質量部未満の場合は、低温での硬度を柔らかく保つなどの低温特性が悪化する傾向がある。また、オイルの含有量は60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましい。オイルの含有量が60質量部を超える場合は、加硫ゴムの引張強度および低発熱性が悪化する傾向、加工性が悪化する傾向がある。
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩などの老化防止剤を適宜選択して配合することができ、これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐オゾン性を顕著に改善でき、破壊特性に優れるという理由からアミン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
老化防止剤を含有する場合の全ゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。老化防止剤の含有量が0.5質量部未満の場合は、十分な耐オゾン性が得られない傾向や、破壊特性を向上し難い傾向がある。また、老化防止剤の含有量は、6質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下がさらに好ましい。老化防止剤の含有量が6質量部を超える場合は、変色が生じる傾向がある。
ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛はいずれも、ゴム工業において一般的に用いられるものを好適に用いることができる。
本発明のゴム組成物には、その他、硫黄、含硫黄化合物などの加硫剤、加硫促進剤などを含有させることができる。
加硫剤は特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができるが、硫黄原子を含むものが好ましく、粉末硫黄が特に好ましく用いられる。
加硫促進剤も特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができる。
本発明のゴム組成物は、(1)変性BRおよびシリカを含むマスターバッチを作製する工程、(2)(1)で得られたマスターバッチにNRを混練りする工程、および(3)(2)で得られた混練物を加硫する工程により製造することができる。(1)工程では、変性BRとシリカの他、シランカップリング剤やオイルを添加し、バンバリーミキサーなどで混練りすることにより変性BRのマスターバッチを得ることができ、(2)工程では、NRとその他の添加成分を加えてバンバリーミキサーなどで混練りする。(3)工程では、加硫剤および加硫促進剤を添加したのち、一般的な方法で加硫することができる。
つまり、本発明のゴム組成物は、変性BRおよびシリカを含むマスターバッチを作製する工程を設ける以外は、本技術分野における一般的な方法で製造することができ、混練りにはバンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどを適宜用いることができる。変性BRとシリカとのマスターバッチは、たとえばバンバリーミキサーを用いて、変性BRとシリカを添加し、適切な排出温度、たとえば150℃で、適切な時間、たとえば5分間混練することにより製造することができる。
たとえば、バンバリーミキサーで混練する場合、上記変性BRをシリカとのマスターバッチとして用いないで、変性BR、NRおよびシリカを混練すると、シリカはNR相に偏在する。このため、ゴム組成物中のシリカの分散に限界があり、十分な低温特性、耐摩耗性能を得ることができない。一方、上記変性BRとシリカとのマスターバッチを使用することにより、NR相へのシリカの偏在を抑制し、シリカの分散を向上させることができる。このようにシリカの分散が向上し、分散状態が安定化することにより、歪みを加えた際の組成物中の応力集中を緩和し、低温特性の向上、耐摩耗性能の向上が得られる。
本発明のゴム組成物のガラス転移温度(Tg)は、−40℃以下が好ましく、−43℃以下がより好ましく、−46℃以下がさらに好ましく、−50℃以下が最も好ましい。Tgが−40℃より高くなるとスタッドレスタイヤに必要な低温特性が確保できないおそれがある。
本発明のゴム組成物のゴム硬度(0℃)は、40以上が好ましく、45以上がより好ましく、48以上がさらに好ましい。ゴム硬度が40未満の場合、ブロック剛性が確保し難いおそれがあり、ドライ性能が大幅に悪化する傾向がある。また、ゴム組成物のゴム硬度は、70以下が好ましく、68以下がより好ましく、65以下がさらに好ましい。ゴム硬度が70を超えると、低温特性が不足し、必要な氷上性能を確保できないおそれがある。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材、たとえばトレッド、カーカス、サイドウォール、ビードに使用することができ、なかでも、トレッドに好適に使用されるものであり、さらにトレッドがキャップトレッドとベーストレッドとからなる2層構造のトレッドである場合はキャップトレッドに好適に使用されるものである。
本発明のスタッドレスタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。すなわち、本発明のゴム組成物を未加硫の段階で所望の形状に合わせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合せ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱および加圧することにより、スタッドレスタイヤを製造することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
製造例1:変性ブタジエンゴムの製造
(1)BRの合成
まず、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを窒素置換された5Lオートクレーブに投入した。続いて、あらかじめ0.18mmolのバーサチック酸ネオジウム((a)成分)を含有するシクロヘキサン溶液、3.6mmolのメチルアルモキサン((b)成分)を含有するトルエン溶液、6.7mmolの水素化ジイソブチルアルミニウム((b)成分)を含有するトルエン溶液、および0.36mmolのトリメチルシリルアイオダイド((c)成分)を含有するトルエン溶液と、1,3−ブタジエン0.90mmolを30℃で60分間反応熟成させて得られる触媒組成物(ヨウ素原子/ランタノイド含有化合物(モル比)=2.0)を得ておき、この触媒組成物を上記オートクレーブに投入し、30℃で2時間、重合反応させて、BR溶液を得た。このBR溶液を次の(2)変性BRの合成に用いた。なお、投入した1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
得られたBR溶液の一部200gについて、BRの各物性値を測定するため、取り出し、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加し、重合反応を呈しさせた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、BRを得た。このBRを、以下の方法にしたがって各種物性値を測定した。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、JIS K6300にしたがって、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(商品名;HLC−8120GPC、東ソー(株)製)を使用し、検知器として、示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム ;商品名「GMHHXL」、2本(東ソー(株)製)、
カラム温度 ;40℃
移動相 ;テトラヒドロフラン
流速 ;1.0ml/分
サンプル濃度 ;10mg/20ml
シス1,4−結合含有率および1,2−ビニル結合含有率は、1H−NMR分析および13C−NMR分析により測定を行った。NMR分析には、日本電子(株)製の商品名「EX−270」を使用した。具体的には、1H−NMR分析としては、5.30−5.50ppm(1,4−結合)、および4.80−5.01ppm(1,2−結合)におけるシグナル強度から、重合体中の1,4−結合と1,2−結合の比を算出した。さらに、13C−NMR分析としては、27.5ppm(シス1,4−結合)および32.8ppm(トランス−1,4−結合)におけるシグナル強度から、重合体中のシス1,4−結合とトランス−1,4−結合の比を算出した。これらの算出した値の比率を算出し、シス1,4−結合含有率(%)および1,2−ビニル結合含有率(%)とした。
得られたBRは、ムーニー粘度(100℃)が12、分子量分布が1.6、シス1,4−結合含有率が99.2%、1,2−ビニル結合含有率が0.21%であった。
(2)変性BRの合成
上記(1)で得られたBRの溶液に次の処理を行った。温度30℃に保持した重合体溶液に、1.71mmolの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間反応させて反応溶液を得た。続いてこの反応溶液に、1.71mmolの3−アミノプロピルトリエトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、次いで1.28mmolのテトライソプロピルチタネートを含有するトルエン溶液を添加し、30分間攪拌した。その後、縮合反応を停止させるため、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加して、この溶液を変性重合体溶液とした(収量は、2.5kgであった)。続いて、この変性重合体溶液に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lを添加し、110℃で2時間、脱溶媒とともに縮合反応させた。その後、110℃のロールで乾燥して、得られた乾燥物を変性BRとした。
得られた変性BRについて、以下の方法にしたがって各種物性値を測定した。なお、分子量分布については、(1)のBRと同様の条件で測定した。
ムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、JIS K6300にしたがって、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度125℃の条件で測定した。
コールドフロー値は、圧力3.51b/in2、温度50℃で重合体を1/4インチオリフィスに通して押し出すことにより測定した。定常状態にするため、10分間放置後、押出し速度を測定し、その測定値を毎分のミリグラム数(mg/分)で表示した。
経時安定性は、90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4、125℃)を測定し、次の式により算出した値である。なお、値が小さいほど経時安定性が良好である。
式:[90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4、125℃)]
−[合成直後に測定したムーニー粘度(ML1+4、125℃)]
得られた変性BRは、ムーニー粘度(ML1+4、125℃)が46、分子量分布が2.4、コールドフロー値が0.3、経時安定性が2であった。
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。
BR:日本ゼオン(株)製のBR1220(シス1,4−含有率96%)
変性BR:製造例1にて製造したもの
NR:RSS#3
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラック(登録商標)N220(N2SA:114m2/g)
シリカ:エボニック・デグザ(Evonik Degussa)社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:167m2/g、平均一次粒子径:15nm)
シランカップリング剤:エボニック・デグザ社製のSi75
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
実施例1〜3および比較例1〜6
表1の工程(I)に示す配合処方にしたがい、ゴム成分、シリカおよびその他の材料を入れ、1.7Lのバンバリーミキサーを用いて排出温度約150℃で5分間混練りすることによりマスターバッチを得た。
次に、得られたマスターバッチと、表1の工程(II)に示す配合処方にしたがい、その他の材料を添加し、排出温度約150℃で5分間混練りした。その後、工程(II)で得られた混練り物に対して、表2の工程(III)に示す配合処方にしたがい、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて約80℃の条件下で3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた各未加硫ゴム組成物を170℃で12分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、試験用の加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材と共に貼り合せて170℃で15分間加硫することにより、スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15、DS−2パターン)を製造した。
得られた試験用の加硫ゴム組成物とスタッドレスタイヤについて下記試験により評価を行った。それぞれの試験結果を表1に示す。
<硬度>
JIS K6253「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じ、タイプA硬さ計にて0℃における試験用加硫ゴム組成物の硬度を測定した。下記の式により比較例1を100とする指数で示した。指数が小さいほど、硬度が低く低温特性に優れることを示す。結果を表1に示す。なお、100以下を性能目標値とする。
(硬度指数)=(測定硬度)/(比較例1の硬度)×100
<ガラス転移温度(Tg)>
試験用加硫ゴム組成物を、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度−100〜100℃、動歪み0.5%の条件下で、tanδを測定し、得られたtanδ曲線のピーク値をTgとした。
<BR相へのシリカ分配率>
試験用加硫ゴム組成物から、ミクロトームを用いて超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。各相モルホロジーは、コントラストの比較により確認することが可能であった。その結果、実施例、比較例では、BRとNRとの二相は互いに非相溶であることが確認された。
シリカは粒状の形態として観察可能である。シリカ分散は、各相の単位面積当たりシリカ面積を1サンプルについて十ヵ所で測定した平均値とした。その値より、BRが含まれる相のシリカ偏在を求め、全ゴム成分100質量部に対するシリカの配合量(質量部)を用いて、下記式1のシリカ偏在率を求めた。
比較例1のシリカ偏在率を100として、下記式2により指数表示した。指数が大きいほどBR相にシリカが偏在していることを示す。なお、105以上を性能目標値とする。
(シリカの偏在率)=
(BRを含む相中のシリカ存在量)/(シリカ配合量(質量部))×100 (式1)
(シリカ分散指数)=
(シリカ偏在率)/(比較例1のシリカ偏在率)×100 (式2)
<氷上性能>
実験例・比較例の冬用空気入りタイヤを用いて、下記の条件において氷上で実車性能を評価した。住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースを試験場所とした。氷上気温は−1℃〜−6℃であった。実施例および比較例のタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。そして比較例1を基準として、下記式から算出した。なお、100以上を性能目標値とする。
(氷上性能指数)=(比較例1の制動停止距離)/(測定停止距離)×100
<耐摩耗性>
LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用い、温度10℃、荷重40N、速度20km/h、スリップアングル10°、試験距離1000mの条件にて、各試験用加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。耐摩耗性能指数は、基準比較例の容積損失量を100としたときの相対値である。当該数値が大きいほど耐摩耗性に優れていることを示す。なお、100以上を性能目標値とする。
<低燃費性能>
シート状の加硫ゴム試験片を粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み1%の条件下で各配合のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が小さいほど転がり抵抗性が優れることを示す。なお、100以下を性能目標値とする。
(低燃費性能指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
表1の結果より、所定の変性BRとシリカとのマスターバッチを用いたゴム組成物では、シリカの分散性に優れ、氷上性能、低燃費性能および耐摩耗性能をバランス良く向上できることがわかる。