JP6544496B1 - スタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、温度に関わらず、氷上性能及び耐摩耗性をバランス良く改善できるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたスタッドレスタイヤを提供する。本発明は、イソプレン系ゴムと変性共役ジエン系重合体とを含有するゴム成分、水溶性微粒子、シリカ、及び液体可塑剤を含み、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物に関する。

Description

本発明は、スタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物及びこれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
氷雪路面走行用としてスパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーンの装着がされてきたが、粉塵問題等の環境問題が発生するため、これに代わるものとしてスタッドレスタイヤが提案されている。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べて路面凹凸が大きい雪氷上路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされており、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合したゴム組成物、軟化効果を高めるために軟化剤を多量に配合したゴム組成物、等が開発されている(特許文献1等参照)。
例えば、スタッドレスタイヤの氷上性能を向上させる手段として、ブタジエンゴムの増量が考えられるが、増量し過ぎると、ゴム中のモビリティが高くなり、種々の薬品のブルーミングが発生するため、ブタジエンゴムの増量には限度がある。また、ブタジエンゴムを増量した場合、それに伴って天然ゴム比率が下がるため、ゴムの強度が不足し、耐摩耗性が悪化するという問題もある。
他の手法として、酸化亜鉛ウィスカ等のフィラーを添加する方法(特許文献2参照)や短繊維を添加する方法(特許文献3参照)なども提案されているが、耐摩耗性の低下が懸念され、未だ改善の余地を残している。このように、薬品のブルーミングを抑制しつつ、広い温度域で氷上性能及び耐摩耗性を両立することや、これに加えて、良好な低燃費性能も同時に得ることに関し、更なる改善が望まれている。
特開2009−091482号公報 特開2005−53977号公報 特開2002−249619号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、温度に関わらず、氷上性能及び耐摩耗性をバランス良く改善できるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、イソプレン系ゴムと変性共役ジエン系重合体とを含有するゴム成分、水溶性微粒子、シリカ、及び液体可塑剤を含み、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物に関する。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20質量%以上、変性共役ジエン系重合体の含有量が20質量%以上であり、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率が50質量%以上であることが好ましい。
ゴム成分100質量部に対する水溶性微粒子の含有量は、25質量部以上であることが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
前記スタッドレスタイヤは、下記走行条件後、トレッドの路面接地面に平均径0.1〜100μmの空隙が存在することが好ましい。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
前記スタッドレスタイヤは、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに比して、走行前のパターンノイズに対する下記走行条件後のパターンノイズの低減率が2〜10%向上することが好ましい。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
本発明は、イソプレン系ゴムと変性共役ジエン系重合体とを含有するゴム成分、水溶性微粒子、シリカ、及び液体可塑剤を含み、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物であるので、温度に関わらず、氷上性能及び耐摩耗性をバランス良く改善できる。
本発明のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物は、イソプレン系ゴムと変性共役ジエン系重合体とを含有するゴム成分、シリカ、水溶性微粒子、及び液体可塑剤を含み、かつ所定以上のシリカ量、該液体可塑剤量を有している。前記ゴム組成物は、低温(気温−10〜−6℃)、高温(気温0〜−5℃)のいずれにおいても、氷上性能及び耐摩耗性がバランス良く改善される。
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
スタッドレスタイヤには、気温に依存しない氷上グリップ性能が求められるが、該性能を得るには、発泡ゴムなどの柔軟性の高いゴムを用いる必要がある。しかし、単にゴム中に空隙を作り柔軟性を高めただけでは、ブロック剛性が保てず操縦安定性が低下するほか、耐摩耗性の低下がみられるほか、接触面積が少なくなるため、水膜の少ない低温時の氷上グリップ性能を担保することが困難となる。したがって、それらの性能を両立させるためには、ゴムの内部は低温でしなやかにし、トレッド表面に空隙を作る必要がある。しかし、単に低温特性を高めた部材に空隙を作ったトレッドを張り付けただけでは、界面で剥離する危険性があるので、その剥離を回避する有効な方法は、トレッド内部及び表面の配合を同一とすることと考えられる。
そこで、トレッド内部及び表面の配合を、共に、水溶性微粒子を配合し、液体可塑剤量を増量し、変性共役ジエン系重合体を用いることにより、シリカの分散性を向上させることで、一定の剛性を持たせつつ、低温(気温−10〜−6℃)でも柔軟性が保持されて氷上性能が向上し、高温(気温0〜−5℃)の水膜存在下では水溶性微粒子が溶解することにより生じる穴により除水効果を発揮するため、気温の変化によらないロバスト性能向上を図ることが可能となる。これにより、高温・低温ともに氷上グリップ性能向上、耐摩耗性能向上を達成でき、低温氷上性能(気温−10〜−6℃での氷上性能)、高温氷上性能(気温0〜−5℃での氷上性能)及び耐摩耗性の性能バランスが相乗的に改善されるものと推察される。
加えて、前記ゴム組成物は、低燃費性能も優れており、低温氷上性能、高温氷上性能、耐摩耗性、及び低燃費性能の性能バランスも相乗的に改善されるという効果も得ることができる。
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴムと変性共役ジエン系重合体とを含有するゴム成分を含む。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、耐摩耗性や、低温氷上性能、高温氷上性能及び耐摩耗性の性能バランスの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
変性共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体の主鎖及び/又は末端を変性させて得られるものであれば特に限定されないが、例えば、下記するものなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を好適に用いることができる。すなわち、上記変性共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種の共役ジエン化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。中でも、上記変性共役ジエン系重合体は、変性ブタジエンゴムであることが特に好ましい形態である。
上記変性共役ジエン系重合体のシス含量(シス−1,4−結合量)としては、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上である。これにより、より良好な低温氷上性能、高温氷上性能が得られる。
なお、本明細書において、シス含量(シス−1,4−結合量)は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
ここで、上記変性共役ジエン系重合体としては、シス含量が80質量%以上(より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上)である変性共役ジエン系重合体を少なくとも1種類と、シス含量が50質量%以下(より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下)である変性共役ジエン系重合体を少なくとも1種類とを併用することもできる。このように、高シス含量の変性共役ジエン系重合体と低シス含量の変性共役ジエン系重合体を併用する形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記変性共役ジエン系重合体としては、活性末端を有する共役ジエン系重合体を用い、この共役ジエン系重合体の活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う変性工程(A)と、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる縮合工程(B)とを備え、前記共役ジエン系重合体として、下記(a)〜(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物の存在下で重合した共役ジエン系重合体を用いる製造方法により得られるものであることが好ましい。
(a)成分:ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、及び、一般式(1);AlRで表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。Rは、R及びRと同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
すなわち、活性末端を有する共役ジエン系重合体(共役ジエン系重合体(I))の活性末端に、アルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行い、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含有される元素のうちの少なくとも1種の元素を含む縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物のアルコキシシラン化合物残基を縮合反応させることによって、変性共役ジエン系重合体(変性共役ジエン系重合体(I))を製造することができる。
上記変性共役ジエン系重合体としてこのような製造方法により製造されたものを用いることで、低温氷上性能、高温氷上性能、耐摩耗性、低燃費性能により優れたものとすることができる。
上記変性工程(A)は、活性末端を有する共役ジエン系重合体(共役ジエン系重合体(I))を用い、この共役ジエン系重合体の活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う工程である。
上記共役ジエン系重合体(I)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を好適に用いることができる。すなわち、上記変性共役ジエン系重合体(I)を構成する共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種の共役ジエン化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
このような共役ジエン系重合体(I)を製造する際には、溶媒を用いて重合を行ってもよいし、無溶媒下で重合を行ってもよい。重合に用いる溶媒(重合溶媒)としては、不活性な有機溶媒を用いることができるが、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数6〜20の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
上記共役ジエン系重合体(I)を製造する際の重合反応温度は、−30〜200℃であることが好ましく、0〜150℃であることがより好ましい。重合反応の形式としては特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。なお、重合溶媒を用いる場合は、この溶媒中のモノマー濃度が5〜50質量%であることが好ましく、7〜35質量%であることがより好ましい。また、共役ジエン系重合体製造の効率性の観点、及び、活性末端を有する共役ジエン系重合体を失活させない観点から、重合系内に、酸素、水又は炭酸ガス等の失活作用のある化合物を極力混入させないようにすることが好ましい。
また、上記共役ジエン系重合体(I)としては、下記(a)〜(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物(以下、「触媒」とも称する。)の存在下で重合した共役ジエン系重合体が用いられる。
(a)成分:ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、及び、一般式(1);AlRで表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。Rは、R及びRと同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
このような触媒を用いると、シス含量が94質量%以上である共役ジエン系重合体を得ることができ、また、上記触媒は、極低温で重合反応を行う必要がなく、操作が簡便であることから、工業的な生産を行う上で有用である。
上記(a)成分は、ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物である。ランタノイドの中でも、ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウムが好ましく、ネオジムが特に好ましい。なお、上記ランタノイドとしては、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記ランタノイド含有化合物の具体例としては、ランタノイドのカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩、亜リン酸塩等が挙げられる。このうち、カルボン酸塩、またはリン酸塩が好ましく、カルボン酸塩がより好ましい。
上記ランタノイドのカルボン酸塩の具体例としては、一般式(2);(R−COO)Mで表されるカルボン酸の塩を挙げることができる(ただし、一般式(2)中、Mは、ランタノイドを表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)。なお、上記一般式(2)中、Rは、飽和又は不飽和のアルキル基であることが好ましく、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であることが好ましい。また、カルボキシル基は、一級、二級又は三級の炭素原子に結合している。具体的には、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、商品名「バーサチック酸」(シェル化学社製、カルボキシル基が三級炭素原子に結合しているカルボン酸)等の塩が挙げられる。これらのうち、バーサチック酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸の塩が好ましい。
上記ランタノイドのアルコキサイドの具体例としては、一般式(3);(RO)Mで表されるものを挙げることができる(ただし、一般式(3)中、Mは、ランタノイドを表す。)。なお、上記一般式(3)中、「RO」で表されるアルコキシ基の具体例としては、2−エチル−ヘキシルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基等が挙げられる。これらのうち、2−エチル−ヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基が好ましい。
上記ランタノイドのβ−ジケトン錯体の具体例としては、アセチルアセトン錯体、ベンゾイルアセトン錯体、プロピオニトリルアセトン錯体、バレリルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらのうち、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
上記ランタノイドのリン酸塩又は亜リン酸塩の具体例としては、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸等の塩が挙げられる。これらのうち、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸の塩が好ましい。
上記ランタノイド含有化合物としては、これらのなかでも、ネオジムのリン酸塩、又は、ネオジムのカルボン酸塩が特に好ましく、ネオジムのバーサチック酸塩、又は、ネオジムの2−エチルヘキサン酸塩が最も好ましい。
上記ランタノイド含有化合物を溶剤に可溶化させるため、若しくは、長期間安定に貯蔵するために、ランタノイド含有化合物とルイス塩基とを混合すること、又は、ランタノイド含有化合物とルイス塩基とを反応させて反応生成物とすることも好ましい。ルイス塩基の量は、ランタノイド1モルに対して、0〜30モルとすることが好ましく、1〜10モルとすることがより好ましい。ルイス塩基の具体例としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、一価又は二価のアルコール等が挙げられる。これまで述べてきた(a)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(b)成分は、アルミノオキサン、及び、一般式(1);AlRで表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。Rは、R及びRと同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
上記アルミノオキサン(以下、「アルモキサン」とも称する。)は、その構造が、下記一般式(4)又は(5)で表される化合物である。なお、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、及びJ.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で開示されている、アルモキサンの会合体であってもよい。
Figure 0006544496
Figure 0006544496
上記一般式(4)及び(5)中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。pは、2以上の整数である。
上記Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
また、上記pは、4〜100の整数であることが好ましい。
上記アルモキサンの具体例としては、メチルアルモキサン(以下、「MAO」とも称する。)、エチルアルモキサン、n−プロピルアルモキサン、n−ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサン等が挙げられる。これらの中でも、MAOが好ましい。上記アルモキサンは、公知の方法によって製造することができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウム、又は、ジアルキルアルミニウムモノクロライドを加え、更に水、水蒸気、水蒸気含有窒素ガス、又は、硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩等の、結晶水を有する塩を加えて反応させることにより製造することができる。なお、上記アルモキサンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム、エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられる。これらの中でも、水素化ジイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウムが好ましく、水素化ジイソブチルアルミニウムが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(c)成分は、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物である。このようなヨウ素含有化合物を用いることで、シス含量が94質量%以上の共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。上記ヨウ素含有化合物としては、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有している限り特に制限されないが、例えば、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カドミウム、ヨウ化水銀、ヨウ化マンガン、ヨウ化レニウム、ヨウ化銅、ヨウ化銀、ヨウ化金等が挙げられる。
なかでも、上記ヨウ素含有化合物としては、一般式(6):R SiI4−q(一般式(6)中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を表す。また、qは0〜3の整数である。)で表されるヨウ化ケイ素化合物、一般式(7):R 4−r(一般式(7)中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、rは1〜3の整数である。)で表されるヨウ化炭化水素化合物又はヨウ素が好ましい。このようなヨウ化ケイ素化合物、ヨウ化炭化水素化合物、ヨウ素は有機溶剤への溶解性が良好であるため、操作が簡便になり、工業的な生産を行う上で有用である。すなわち、上記(c)成分が、ヨウ化ケイ素化合物、ヨウ化炭化水素化合物、及び、ヨウ素からなる群より選択される少なくとも1種のヨウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ヨウ化ケイ素化合物(上記一般式(6)で示される化合物)の具体例としては、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード等が挙げられる。なかでも、トリメチルシリルアイオダイドが好ましい。
また、上記ヨウ化炭化水素化合物(上記一般式(7)で示される化合物)の具体例としては、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ベンジリデンアイオダイド等が挙げられる。なかでも、メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタンが好ましい。
上記ヨウ素含有化合物としては、これらのなかでも、ヨウ素、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード、メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタンが特に好ましく、トリメチルシリルアイオダイドが最も好ましい。上記ヨウ素含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記各成分((a)〜(c)成分)の配合割合は、必要に応じて適宜設定すればよい。(a)成分の配合量は、例えば、100gの共役ジエン系化合物に対して、0.00001〜1.0ミリモルであることが好ましく、0.0001〜0.5ミリモルであることがより好ましい。0.00001ミリモル未満とした場合には、重合活性が低下してしまうおそれがある。1.0ミリモルを超えて使用した場合には、触媒濃度が高くなり、脱灰工程が必要となることがある。
上記(b)成分がアルモキサンである場合、アルモキサンの配合量としては、(a)成分と、アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)とのモル比で表すことができ、「(a)成分」:「アルモキサンに含まれるアルミニウム(Al)」(モル比)が1:1〜1:500であることが好ましく、1:3〜1:250であることがより好ましく、1:5〜1:200であることが更に好ましい。アルモキサンの配合量が上記範囲外であると、触媒活性が低下したり、又は、触媒残渣を除去する工程が必要となったりする場合がある。
また、上記(b)成分が有機アルミニウム化合物である場合、有機アルミニウム化合物の配合量としては、(a)成分と、有機アルミニウム化合物とのモル比で表すことができ、「(a)成分」:「有機アルミニウム化合物」(モル比)が1:1〜1:700であることが好ましく、1:3〜1:500であることがより好ましい。有機アルミニウム化合物の配合量が上記範囲外であると、触媒活性が低下したり、又は、触媒残渣を除去する工程が必要となったりする場合がある。
上記(c)成分の配合量としては、(c)成分に含有されるヨウ素原子と、(a)成分とのモル比で表すことができ、((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)(モル比)が0.5〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましく、1.2〜2.0であることが更に好ましい。((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)のモル比が0.5未満である場合には、重合触媒活性が低下するおそれがある。((c)成分に含有されるヨウ素原子)/((a)成分)のモル比が3.0を超える場合には、触媒毒となってしまうおそれがある。
上述した触媒には、(a)〜(c)成分以外に、必要に応じて、共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、(a)成分1モルに対して、1000モル以下含有させることが好ましく、3〜1000モル含有させることがより好ましく、5〜300モル含有させることが更に好ましい。触媒に共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有させると、触媒活性が一段と向上するために好ましい。このとき、用いられる共役ジエン系化合物としては、後述する重合用のモノマーと同じく、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、非共役ジエン系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ビニルヘキサジエン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
上記(a)〜(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物は、例えば、溶媒に溶解した(a)〜(c)成分、更に必要に応じて添加される共役ジエン系化合物及び非共役ジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を反応させることにより、調製することができる。なお、調製の際の各成分の添加順序は任意であってよい。ただし、各成分を予め混合、反応させるとともに、熟成させておくことが、重合活性の向上及び重合開始誘導期間の短縮の観点から好ましい。熟成温度は0〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましい。0℃未満であると、熟成が不十分となる傾向にある。一方、100℃を超えると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが生じ易くなる傾向にある。なお、熟成時間は特に制限されない。また、重合反応槽に添加する前に、各成分どうしをライン中で接触させてもよいが、その場合の熟成時間は0.5分以上あれば充分である。なお、調製した触媒は、数日間は安定である。
上記変性共役ジエン系重合体(I)を製造する際に用いる共役ジエン系重合体(I)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、すなわち、分子量分布(Mw/Mn)が、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が3.5を超えるものであると、破壊特性、低発熱性を始めとするゴム物性が低下する傾向にある。一方、分子量分布の下限は、特に限定されない。
なお、本明細書において、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量と数平均分子量との割合(重量平均分子量/数平均分子量)により算出される値を意味する。
ここで、共役ジエン系重合体の重量平均分子量は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
また、共役ジエン系重合体の数平均分子量は、GPC法で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。
なお、上記共役ジエン系重合体(I)の、ビニル含量、シス含量は、重合温度をコントロールすることによって、容易に調整することができる。また、上記Mw/Mnは上記(a)〜(c)成分のモル比をコントロールすることによって、容易に調整することができる。
また、上記共役ジエン系重合体(I)の100℃におけるムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、5〜50の範囲であることが好ましく、10〜40であることがより好ましい。5未満では、加硫後の機械特性、耐摩耗性などが低下することがある、一方、50を超えると、変性反応を行った後の変性共役ジエン系重合体の混練り時の加工性が低下することがある。このムーニー粘度は、上記(a)〜(c)成分のモル比をコントロールすることにより容易に調整することができる。
なお、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
更に、上記共役ジエン系重合体(I)の1,2−ビニル結合の含量(1,2−ビニル結合量、ビニル含量)は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。0.5質量%を超えるものであると、破壊特性などのゴム物性が低下する傾向にある。また、上記共役ジエン系重合体(I)の1,2−ビニル結合量としては、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において、1,2−ビニル結合量は、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出した値である。
上記変性工程(A)に用いるアルコキシシラン化合物(以下、「変性剤」とも称する。)としては、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するものである。アルコキシシリル基以外の反応基としては、特にその種類は限定されないが、例えば、(f);エポキシ基、(g);イソシアネート基、(h);カルボニル基、及び(i);シアノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。すなわち、上記アルコキシシラン化合物が、(f);エポキシ基、(g);イソシアネート基、(h);カルボニル基、及び(i);シアノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。なお、上記アルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよいし、該アルコキシシラン化合物と該部分縮合物の混合物であってもよい。
ここで、「部分縮合物」とは、アルコキシシラン化合物のSiOR(ORは、アルコキシ基を表す。)の一部(すなわち、全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。なお、上記変性反応に用いる共役ジエン系重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
上記アルコキシシラン化合物の具体例としては、(f);エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エポキシ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランが好適なものとして挙げられるが、これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランがより好ましい。
また、(g);イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
また、(h);カルボニル基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「カルボニル基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
更に、(i);シアノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「シアノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3−シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
上記変性剤としては、これらのなかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
これら変性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述のアルコキシシラン化合物の部分縮合物を用いることもできる。
上記変性工程(A)の変性反応では、上記アルコキシシラン化合物の使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01〜200モルであることが好ましく、0.1〜150モルであることがより好ましい。0.01モル未満では、変性反応の進行が充分とはならず、充填剤の分散性が充分に改良されないおそれがある。一方、200モルを超えて使用しても、変性反応は飽和している場合があり、その場合には使用した分のコストが余計にかかってしまう。なお、上記変性剤の添加方法は特に制限されないが、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられ、なかでも、一括して添加する方法が好ましい。
上記変性反応は、溶液中で行うことが好ましく、この溶液としては、重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液をそのまま使用することができる。また、変性反応の形式については特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などの前に行うことが好ましい。
上記変性反応の温度は、共役ジエン系重合体を重合する際の重合温度と同様とすることができる。具体的には20〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。温度が20℃より低くなると重合体の粘度が上昇する傾向があり、100℃を超えると、重合活性末端が失活するおそれがある。
また、上記変性反応における反応時間は、5分〜5時間であることが好ましく、15分〜1時間であることがより好ましい。なお、縮合工程(B)において、重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後、所望により、公知の老化防止剤や反応停止剤を添加してもよい。
上記変性工程(A)においては、上記変性剤の他に、縮合工程(B)において、活性末端に導入された変性剤であるアルコキシシラン化合物残基と縮合反応し、消費されるものを更に添加することが好ましい。具体的には、官能基導入剤を添加することが好ましい。この官能基導入剤により、変性共役ジエン系重合体の耐摩耗性を向上させることができる。
上記官能基導入剤は、活性末端との直接反応を実質的に起こさず、反応系に未反応物として残存するものであれば特に制限されないが、例えば、上記変性剤として用いるアルコキシシラン化合物とは異なるアルコキシシラン化合物、即ち、(j);アミノ基、(k);イミノ基、及び(l);メルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するアルコキシシラン化合物であることが好ましい。なお、この官能基導入剤として用いられるアルコキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよいし、官能基導入剤として用いるアルコキシシラン化合物の部分縮合物でないものと該部分縮合物との混合物であってもよい。
上記官能基導入剤の具体例としては、(j);アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「アミノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シランや、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、及び、これらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物又はエチルジメトキシシリル化合物などが挙げられるが、なかでも、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが特に好ましい。
また、(k);イミノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イミノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、また、1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−〔10−(トリエトキシシリル)デシル〕−4−オキサゾリン、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが好適なものとして挙げられるが、これらの中でも、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾールがより好ましい。
また、(l);メルカプト基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「メルカプト基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−メルカプトプロピル(モノエトキシ)ジメチルシラン、メルカプトフェニルトリメトキシシラン、メルカプトフェニルトリエトキシシランなどが挙げられるが、なかでも、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
上記官能基導入剤としては、これらのなかでも、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが特に好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。
これらの官能基導入剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を用いる場合、その使用量は、上記(a)成分1モルに対して、0.01〜200モルが好ましく、0.1〜150モルがより好ましい。0.01モル未満では、縮合反応の進行が充分とはならず、充填剤の分散性が充分に改良されない場合がある。一方、200モルを超えて使用しても、縮合反応は飽和している場合があり、その場合には使用した分のコストが余計にかかってしまう。
上記官能基導入剤の添加時期としては、上記変性工程(A)において上記共役ジエン系重合体(I)の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後であって、上記縮合工程(B)における縮合反応が開始される前が好ましい。縮合反応開始後に添加した場合、官能基導入剤が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。官能基導入剤の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分〜5時間後であることが好ましく、変性反応開始15分〜1時間後であることがより好ましい。
なお、上記官能基導入剤として、上記官能基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合、活性末端を有する共役ジエン系重合体(I)と、反応系に加えられた実質上化学量論的量の変性剤とが変性反応を起こし、実質的に活性末端の全てにアルコキシシリル基が導入され、更に上記官能基導入剤を添加することにより、この共役ジエン系重合体の活性末端の当量より多くのアルコキシシラン化合物残基が導入されることになる。
アルコキシシリル基同士の縮合反応は、遊離のアルコキシシラン化合物と共役ジエン系重合体末端のアルコキシシリル基の間で起こること、また場合によっては共役ジエン系重合体末端のアルコキシシリル基同士で起こることが、反応効率の観点から好ましく、遊離のアルコキシシラン化合物同士の反応は好ましくない。したがって、官能基導入剤としてアルコキシシラン化合物を新たに加える場合には、そのアルコキシシリル基の加水分解性が、共役ジエン系重合体末端に導入したアルコキシシリル基の加水分解性に比べて低いことが好ましい。
例えば、共役ジエン系重合体(I)の活性末端との反応に用いられるアルコキシシラン化合物には加水分解性の高いトリメトキシシリル基を含有する化合物を用い、官能基導入剤として新たに添加するアルコキシシラン化合物には、該トリメトキシシリル基含有化合物より加水分解性が低いアルコキシシリル基(例えば、トリエトキシシリル基)を含有するものを用いる組み合わせが好ましい。逆に、例えば、共役ジエン系重合体(I)の活性末端との反応に用いられるアルコキシシラン化合物としてトリエトキシシリル基を含有する化合物を用い、官能基導入剤として新たに添加するアルコキシシラン化合物がトリメトキシシリル基を含有する化合物であると、反応効率が低下してしまうおそれがある。
上記縮合工程(B)は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる工程である。
上記縮合触媒は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するものであれば、特に制限されないが、例えば、チタン(Ti)(第4族)、スズ(Sn)(第14族)、ジルコニウム(Zr)(第4族)、ビスマス(Bi)(第15族)及びアルミニウム(Al)(第13族)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものであることが好ましい。
上記縮合触媒の具体例としては、スズ(Sn)を含む縮合触媒として、例えば、ビス(n−オクタノエート)スズ、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ラウレート)スズ、ビス(ナフトエネート)スズ、ビス(ステアレート)スズ、ビス(オレエート)スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジn−オクタノエート、ジブチルスズジ2−エチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジブチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジn−オクチルスズジアセテート、ジn−オクチルスズジn−オクタノエート、ジn−オクチルスズジ2−エチルヘキサノエート、ジn−オクチルスズジラウレート、ジn−オクチルスズマレート、ジn−オクチルスズビス(ベンジルマレート)、ジn−オクチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)等が挙げられる。
ジルコニウム(Zr)を含む縮合触媒として、例えば、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラi−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラsec−ブトキシジルコニウム、テトラtert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシルオキシド)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等が挙げられる。
ビスマス(Bi)を含む縮合触媒として、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス等が挙げられる。
アルミニウム(Al)を含む縮合触媒として、例えば、トリエトキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリi−プロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリtert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシルオキシド)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等が挙げられる。
チタン(Ti)を含む縮合触媒として、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラn−プロポキシチタニウム、テトラi−プロポキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラsec−ブトキシチタニウム、テトラtert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシルオキシド)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシルオキシド)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等が挙げられる。
これらの中でも、上記縮合触媒としては、チタン(Ti)を含む縮合触媒がより好ましい。チタン(Ti)を含む縮合触媒の中でも、チタン(Ti)のアルコキシド、カルボン酸塩又はアセチルアセトナート錯塩であることが更に好ましい。特に好ましくは、テトラi−プロポキシチタニウム(テトライソプロピルチタネート)である。チタン(Ti)を含む縮合触媒を用いることにより、変性剤として用いる上記アルコキシシラン化合物の残基、及び官能基導入剤として用いる上記アルコキシシラン化合物の残基の縮合反応をより効果的に促進させることができる。このように、上記縮合触媒が、チタン(Ti)を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記縮合触媒の使用量としては、縮合触媒として用いることができる上記種々の化合物のモル数が、反応系内に存在するアルコキシシリル基総量1モルに対して、0.1〜10モルとなることが好ましく、0.3〜5モルが特に好ましい。0.1モル未満では、縮合反応が充分に進行しないおそれがある。一方、10モルを超えて使用しても、縮合触媒としての効果は飽和している場合があり、その場合には使用した分のコストが余計にかかってしまう。
上記縮合触媒は、上記変性反応前に添加することもできるが、変性反応後、かつ縮合反応開始前に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端にアルコキシシリル基が導入されない場合がある。また、縮合反応開始後に添加した場合、縮合触媒が均一に分散せず触媒性能が低下する場合がある。上記縮合触媒の添加時期としては、具体的には、変性反応開始5分〜5時間後であることが好ましく、変性反応開始15分〜1時間後であることがより好ましい。
上記縮合工程(B)の縮合反応は、水溶液中で行うことが好ましく、縮合反応時の温度は85〜180℃であることが好ましく、100〜170℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。縮合反応時の温度が85℃未満であると、縮合反応の進行が充分とはならず、縮合反応を完結させることができない場合があり、その場合、得られる変性共役ジエン系重合体(I)に経時変化が発生し、品質上問題となるおそれがある。一方、180℃を超えると、ポリマーの老化反応が進行し、物性を低下させるおそれがある。
上記縮合反応が行われる水溶液のpHは9〜14であることが好ましく、10〜12であることがより好ましい。水溶液のpHをこのような範囲とすることにより、縮合反応が促進され、変性共役ジエン系重合体(I)の経時安定性を改善することができる。pHが9未満であると、縮合反応の進行が充分とはならず、縮合反応を完結させることができない場合があり、その場合、得られる変性共役ジエン系重合体(I)に経時変化が発生し、品質上問題となるおそれがある。一方、縮合反応が行われる水溶液のpHが14を超えると、単離後の変性共役ジエン系重合体中に多量のアルカリ由来成分が残留し、その除去が困難となるおそれがある。
上記縮合反応の反応時間は、5分〜10時間であることが好ましく、15分〜5時間程度であることがより好ましい。5分未満では、縮合反応が完結しないおそれがある。一方、10時間を超えても縮合反応が飽和しているおそれがある。また、縮合反応時の反応系内の圧力は、0.01〜20MPaであることが好ましく、0.05〜10MPaであることがより好ましい。
縮合反応の形式については特に制限されず、バッチ式反応器を用いて行ってもよいし、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と同時に脱溶媒を行ってもよい。
上述のように縮合反応を行った後、従来公知の後処理を行い、目的の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
上記変性共役ジエン系重合体(I)のムーニー粘度(ML1+4(125℃))は、10〜150であることが好ましく、20〜100であることがより好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(125℃))が10未満であると、破壊特性を始めとするゴム物性が低下するおそれがある。一方、ムーニー粘度(ML1+4(125℃))が150を超えるものであると、作業性が悪くなり、配合剤とともに混練りすることが困難になるおそれがある。
なお、ムーニー粘度(ML1+4、125℃)は後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
また、上記変性共役ジエン系重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。分子量分布が3.5を超えるものであると、破壊特性、低発熱性などのゴム物性が低下する傾向がある。
ここで、変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
また、変性共役ジエン系重合体の数平均分子量(Mn)は、GPC法で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。
また、上記変性共役ジエン系重合体(I)のコールドフロー値(mg/分)は、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。コールドフロー値が1.0を超えるものであると、貯蔵時におけるポリマーの形状安定性が悪化するおそれがある。
なお、本明細書において、コールドフロー値(mg/分)は、後述する測定方法により算出される値である。
更に、上記変性共役ジエン系重合体(I)の経時安定性の評価値は、0〜5であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。この評価値が5を超えるものであると、貯蔵時にポリマーが経時変化するおそれがある。
なお、本明細書において、経時安定性は、後述する測定方法により算出される値である。
また、上記変性共役ジエン系重合体(I)のガラス転移温度は、−40℃以下であることが好ましい。より好ましくは−43℃以下であり、更に好ましくは−46℃以下であり、特に好ましくは−50℃以下である。ガラス転移温度が−40℃を超えると、スタッドレスタイヤに必要な低温特性を充分確保できないおそれがある。他方、該ガラス転移温度の下限は特に制限されない。
ここで、変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の測定方法により測定することができる。
また、上記変性共役ジエン系重合体としては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有する共役ジエン系重合体(変性共役ジエン系重合体(II))を使用することもできる。例えば、共役ジエン系重合体の少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性共役ジエン系重合体(末端に上記官能基を有する末端変性共役ジエン系重合体)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性共役ジエン系重合体や、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性共役ジエン系重合体(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性共役ジエン系重合体)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性共役ジエン系重合体等が挙げられる。
上記共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を好適に用いることができる。すなわち、上記変性共役ジエン系重合体(II)を構成する共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種の共役ジエン化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
上記変性共役ジエン系重合体(II)として、下記式で表される化合物(変性剤)により変性された共役ジエン系重合体等を好適に使用できる。
Figure 0006544496
(式中、R11、R12及びR13は、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R14及びR15は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R14及びR15は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性共役ジエン系重合体としては、なかでも、溶液重合のブタジエンゴム(BR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたBR等が好適に用いられる。
11、R12及びR13としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R14及びR15としてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。また、R14及びR15が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4〜8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
上記変性剤の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記変性共役ジエン系重合体(II)としては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性共役ジエン系重合体も好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
ビス−(1−メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4−モルホリンカルボニルクロリド、1−ピロリジンカルボニルクロリド、N,N−ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N−ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3−ビス−(グリシジルオキシプロピル)−テトラメチルジシロキサン、(3−グリシジルオキシプロピル)−ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
(トリメチルシリル)[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN−置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−ビス−(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドン等のN−置換ピロリドンN−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン等のN−置換ピペリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム等のN−置換ラクタム類;の他、
N,N−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)−アニリン、4,4−メチレン−ビス−(N,N−グリシジルアニリン)、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン類、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルマレイミド、N,N−ジエチル尿素、1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、4−N,N−ジメチルアミノアセトフェン、4−N,N−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性BRが好ましい。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
上記変性共役ジエン系重合体(II)の1,2−ビニル結合の含量(1,2−ビニル結合量、ビニル含量)は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。35質量%を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。また、上記1,2−ビニル結合量の下限は特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。1質量%未満であると、耐熱性、耐劣化性が低下するおそれがある。
上記変性共役ジエン系重合体(II)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上が好ましく、40万以上がより好ましい。10万未満であると、充分な破壊強度、耐屈曲疲労性が得られないおそれがある。また、200万以下が好ましく、80万以下がより好ましい。200万を超えると、加工性が低下して分散不良を引き起こし、充分な破壊強度が得られないおそれがある。
上記変性共役ジエン系重合体としてはまた、スズ変性共役ジエン系重合体(変性共役ジエン系重合体(III))を使用することもできる。
上記共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン及びミルセンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位を有する重合体を好適に用いることができる。すなわち、上記変性共役ジエン系重合体(III)を構成する共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種の共役ジエン化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記変性共役ジエン系重合体(III)としては特に限定されないが、リチウム開始剤により重合され、スズ原子の含有量が50〜3000ppm、ビニル含量が5〜50質量%、分子量分布が2以下のスズ変性ブタジエンゴム(BR)が好ましい。
上記スズ変性BRは、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該スズ変性BR分子の末端はスズ−炭素結合で結合されていることが好ましい。
上記リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウムなどのリチウム系化合物が挙げられる。
また、上記スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライドなどが挙げられる。
上記スズ変性BRのスズ原子の含有量は、50ppm以上であることが好ましい。50ppm未満では、tanδが増大する傾向がある。また、3000ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。3000ppmを超えると、混練り物の加工性が悪化する傾向がある。
上記変性共役ジエン系重合体(III)の分子量分布(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましい。Mw/Mnが2を超えると、tanδが増大する傾向がある。分子量分布の下限は特に限定されないが、1以上であることが好ましい。
上記変性共役ジエン系重合体(III)のビニル含量は5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満では、スズ変性BRの製造が困難である。また、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。50質量%を超えると、シリカの分散性が悪く、低燃費性、破断抗力、破断伸びが低下する傾向がある。
ゴム成分100質量%中の変性共役ジエン系重合体の含有量は、低温・高温氷上性能や、低温氷上性能、高温氷上性能及び耐摩耗性の性能バランスの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及び変性共役ジエン系重合体の合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。上記合計含有量が多いほど低温特性に優れており、必要な低温・高温氷上性能を発揮できる傾向がある。
前記ゴム組成物は、前記効果を阻害しない範囲で他のゴム成分を配合してもよい。他のゴム成分としては、上記変性共役ジエン系重合体に含まれない非変性のブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
中でも特に、非変性のBRを配合することができる。すなわち、ゴム成分として、イソプレン系ゴム及び変性共役ジエン系重合体と共に、非変性BRを配合する形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記非変性BRとしては変性されていないBRであれば特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。該非変性BRとしては、市販品として宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記非変性BRのシス含量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、より良好な低温氷上性能、高温氷上性能が得られる。
(水溶性微粒子)
水溶性微粒子は、水への溶解性を有する微粒子であれば特に限定されることなく、使用可能である。例えば、常温(20℃)の水への溶解度が1g/100g水以上の材料を使用できる。
水溶性微粒子は、高温氷上性能及び耐摩耗性の性能バランスの観点から、中央値粒度(メジアン径、D50)が1μm〜1mmであることが好ましい。より好ましくは2μm〜800μm、更に好ましくは2μm〜500μmである。
本明細書において、中央値粒度は、レーザー回折法にて測定できる。
水溶性微粒子の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、より更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上である。下限以上にすることで、良好な高温氷上性能が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。上限以下にすることで、良好な耐摩耗性等のゴム物性が得られる傾向がある。
水溶性微粒子としては、例えば、水溶性無機塩、水溶性有機物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性無機塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム等の金属硫酸塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩化物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;等が挙げられる。
水溶性有機物としては、リグニン誘導体、糖類等が挙げられる。
リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、等が好適である。リグニン誘導体は、サルファイトパルプ法、クラフトパルプ法のいずれにより得られたものでもよい。
リグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルコールアミン塩等が挙げられる。なかでも、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、バリウム塩等)が好ましい。
リグニン誘導体は、スルホン化度がスルホン化度1.5〜8.0/OCHであることが好ましい。この場合、リグニン誘導体は、リグニン及び/又はその分解物の少なくとも一部がスルホ基(スルホン基)で置換されているリグニンスルホン酸及び/又はリグニンスルホン酸塩を含むものであり、リグニンスルホン酸のスルホ基は、電離していない状態でもよいし、スルホ基の水素が金属イオン等のイオンに置換されていてもよい。該スルホン化度は、より好ましくは3.0〜6.0/OCHである。上記範囲内にすることで、良好な氷上性能が得られ、これと耐摩耗性の性能バランスが改善される傾向がある。
なお、リグニン誘導体粒子(該粒子を構成するリグニン誘導体)のスルホン化度は、スルホ基の導入率であり、下記式で求められる。
スルホン化度(/OCH)=
リグニン誘導体中のスルホン基中のS(モル)/リグニン誘導体中のメトキシル基(モル)
糖類は、構成する炭素数に特に制限はなく、単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては、アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオースなどの四炭糖;キシロース、リボースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコースなどの六炭糖;セドヘプツロースなどの七炭糖などが挙げられる。少糖としては、スクロース、ラクトースなどの二糖;ラフィノース、メレジトースなどの三糖;アカルボース、スタキオースなどの四糖;キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖、等が挙げられる。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカン等が挙げられる。
(シリカ)
シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは55質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、操縦安定性が得られる傾向がある。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは170質量部以下、特に好ましくは100質量部以下、最も好ましくは80質量部以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは140m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、破壊強度が得られる傾向がある。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは500m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
前記ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率は、低温・高温氷上性能及び耐摩耗性の性能バランスの観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、良好な破壊強度等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。12質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られる傾向がある。
(カーボンブラック)
前記ゴム組成物は、前記性能バランスの観点から、充填剤としてカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、低温・高温氷上性能(氷上グリップ性能)等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物の良好な加工性が得られる傾向がある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、低温・高温氷上グリップ性能が得られる傾向がある。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001によって求められる。
(液体可塑剤)
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えている。これにより、優れた耐摩耗性、低温・高温氷上性能、低燃費性能が得られる。該含有量は、33質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、耐摩耗性等の点から、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、55質量部以下が更に好ましい。
液体可塑剤としては、25℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイルが好ましい。
液状樹脂としては、25℃で液状のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液状の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
前記ゴム組成物は、レジン(固体レジン:常温(25℃)で固体状態のレジン)を含んでもよい。
レジン(固体レジン)としては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、ロジン樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン樹脂が好ましい。
上記芳香族ビニル重合体とは、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体、α−メチルスチレンの単独重合体、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
上記クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
上記インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα−ピネン及びβ−ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β−ピネンを主成分とするβ−ピネン樹脂と、α−ピネンを主成分とするα−ピネン樹脂とに分類される。
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
上記アクリル系樹脂としては、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などを使用できる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4414370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5010166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
前記ゴム組成物において、レジン(固体レジン)及び液体可塑剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、低温氷上性能、高温氷上性能及び耐摩耗性の性能バランスの観点から、33質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、耐摩耗性等の点から、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、55質量部以下が更に好ましい。
(他の材料)
前記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好なタイヤの外観が得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。なお、ワックスの含有量は、耐オゾン性、コストの点から、適宜設定すれば良い。
前記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な前記性能バランスを付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な前記性能バランスが得られる傾向がある。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記性能バランスの観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
前記ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
前記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分、好ましくは1分〜30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
上記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。上記ゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッド(単層トレッド、多層トレッドのキャップトレッド)として用いられる。
(スタッドレスタイヤ)
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド(キャップトレッドなど)の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、スタッドレスタイヤが得られる。本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車用スタッドレスタイヤとして好適に使用できる。
上記スタッドレスタイヤは、下記走行条件後、トレッドの路面接地面に平均径0.1〜100μmの空隙が存在することが好ましい。本発明のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤをこのようなものとすることで、操縦安定性を維持しながら、氷上性能を向上でき、ノイズを低減することができる。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
上記空隙は、平均径が0.1〜100μmであることが好ましいが、操縦安定性、氷上性能、ノイズ低減性の観点から、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。また、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、空隙の平均径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察にて測定できる。具体的には、走査型電子顕微鏡で写真撮影し、空隙の形状が球形の場合は球の直径、針状又は棒状の場合は短径、不定形の場合は中心部からの平均径を径とし、100個の空隙の径の平均値を平均径とする。
上記スタッドレスタイヤは、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに比して、走行前のパターンノイズに対する下記走行条件後のパターンノイズの低減率が2〜10%向上することが好ましい。すなわち、下記走行条件後のパターンノイズが走行前のパターンノイズに比べてどれだけ低減したかを表すパターンノイズの低減率が、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤにおけるパターンノイズの低減率と比較して2〜10%向上することが好ましい。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
なお、本明細書において、パターンノイズは、スタッドレスタイヤを車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して(リム:7.5J×17、内圧:220kPa)、ロードノイズ計測路(氷上路面)を時速60km/hで走行したときの運転席窓側耳位置における車内音を測定し、500Hz付近の空洞共鳴音の狭帯域ピーク値の音圧レベルを測定することで測定できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
<合成例1(共役ジエン系重合体の合成)>
あらかじめ、0.18ミリモルのバーサチック酸ネオジムを含有するシクロヘキサン溶液、3.6ミリモルのメチルアルモキサンを含有するトルエン溶液、6.7ミリモルの水素化ジイソブチルアルミニウムを含有するトルエン溶液、及び、0.36ミリモルのトリメチルシリルアイオダイドを含有するトルエン溶液と1,3−ブタジエン0.90ミリモルを30℃で60分間反応熟成させて得られる触媒組成物(ヨウ素原子/ランタノイド含有化合物(モル比)=2.0)を得た。続いて、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを窒素置換された5Lオートクレーブに投入した。そして、上記触媒組成物を上記オートクレーブに投入し、30℃で2時間、重合反応させて、重合体溶液を得た。なお、投入した1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
ここで、共役ジエン系重合体(以下、「重合体」とも称する。)、すなわち、変性前のものの各種物性値を測定するため、上記重合体溶液から200gの重合体溶液を抜き取り、この重合体溶液に2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを1.5g含むメタノール溶液を添加し、重合反応を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、得られた乾燥物を重合体とした。
重合体について、以下に示す測定方法によって各種物性値を測定したところ、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が12であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であり、シス−1,4−結合量が99.2質量%であり、1,2−ビニル結合量が0.21質量%であった。
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
JIS K 6300に準じて、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
[分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(商品名;HLC−8120GPC、東ソー社製)を使用し、検知器として、示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム ;商品名「GMHHXL」、(東ソー社製)2本、
カラム温度 ;40℃、
移動相 ;テトラヒドロフラン、流速 ;1.0ml/分、
サンプル濃度;10mg/20ml
[シス−1,4−結合量、1,2−ビニル結合量]
シス−1,4−結合の含量、及び1,2−ビニル結合の含量は、H−NMR分析及び13C−NMR分析により測定を行った。NMR分析には、日本電子社製の商品名「EX−270」を使用した。具体的には、H−NMR分析としては、5.30〜5.50ppm(1,4−結合)、及び4.80−5.01ppm(1,2−結合)におけるシグナル強度から、重合体中の1,4−結合と1,2−結合の比を算出した。更に、13C−NMR分析としては、27.5ppm(シス−1,4−結合)、及び32.8ppm(トランス−1,4−結合)におけるシグナル強度から、重合体中のシス−1,4−結合とトランス−1,4−結合の比を算出した。これらの算出した値の比率を算出し、シス−1,4−結合量(質量%)及び1,2−ビニル結合量(質量%)とした。
<製造例1(変性共役ジエン系重合体の合成)>
変性共役ジエン系重合体(以下、「変性重合体」とも称する。)を得るために、合成例1の共役ジエン系重合体の重合体溶液に次の処理を行った。温度30℃に保持した重合体溶液に、1.71ミリモルの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間反応させて反応溶液を得た。それから、この反応溶液に1.71ミリモルの3−アミノプロピルトリエトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。続いて、この反応溶液に1.28ミリモルのテトライソプロピルチタネートを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。その後、重合反応を停止させるため、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを1.5g含むメタノール溶液を添加して、この溶液を変性重合体溶液とした。収量は2.5kgであった。続いて、この変性重合体溶液に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lを添加し、110℃で2時間、脱溶媒とともに縮合反応させた。その後、110℃のロールで乾燥して、得られた乾燥物を変性重合体とした。
変性重合体については、以下に示す測定方法によって各種物性値を測定したところ(ただし、分子量分布(Mw/Mn)の測定は、上記重合体と同様の条件で行った。)、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が46であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.4であり、コールドフロー値が0.3mg/分であり、経時安定性が2であり、ガラス転移温度が−106℃であった。
[ムーニー粘度(ML1+4,125℃)]
JIS K 6300に準じて、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度125℃の条件で測定した。
[コールドフロー値]
圧力3.5lb/in、温度50℃で重合体を1/4インチオリフィスに通して押し出すことにより測定した。定常状態にするため、10分間放置後、押し出し速度を測定し、その測定値を毎分のミリグラム数(mg/分)で表示した。
[経時安定性]
90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4,125℃)を測定し、下記式により算出した値である。なお、値が小さいほど経時安定性が良好である。
式:[90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4,125℃)]−[合成直後に測定したムーニー粘度(ML1+4,125℃)]
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度は、JIS K 7121に準じて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、ガラス転移開始温度として求めた。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム(NR):RSS#3
変性共役ジエン系重合体:製造例1で合成した変性共役ジエン系重合体
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のBR150B(シス95質量%以上)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のシーストN220
シリカ:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(NSA172m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266
水溶性微粒子(1):馬居化成工業(株)製のMN−00(硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径)75μm)
水溶性微粒子(2):馬居化成工業(株)のUSN−00(超微細硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径)3μm)
水溶性微粒子(3):東京化成工業(株)製のリグニンスルホン酸ナトリウム(中央値粒度(メジアン径)100μm)
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
オイル:出光興産(株)製のPS−32(ミネラルオイル)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
〔水溶性微粒子の中央値粒度(メジアン径)の測定〕
(株)島津製作所製SALD−2000J型を用い、レーザー回折法(測定操作は下記のとおり)により測定した。
<測定操作>
水溶性微粒子を、分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジー2−エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間撹拌して試験液を得た。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定した。(屈折率:1.70−0.20i)
<実施例及び比較例>
表1及び表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、天然ゴムとシリカ、変性共役ジエン系重合体又はブタジエンゴムとシリカを添加し、それぞれ150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物(マスターバッチ)を得た。次に、得られたマスターバッチに、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を添加し、150℃の条件下で2分間混練りし、混練り物を得た。更に、硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
得られた加硫ゴム組成物、試験用スタッドレスタイヤについて、室温暗所で三ヶ月保管した後、下記の評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
<耐摩耗性>
加硫ゴム組成物について、(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/分、付加荷重3.0kg、落砂量15g/分でスリップ率20%の条件下にて、摩耗量を測定し、該摩耗量の逆数を算出した。比較例1の摩耗量の逆数を100とし、他の配合の摩耗量の逆数を指数で表した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
<低温氷上グリップ性能>
各試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は−10〜−6℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、低温氷上性能に優れることを示す。
(低温氷上グリップ性能)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
<高温氷上グリップ性能>
各試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は0〜−5℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、高温氷上性能に優れることを示す。
(高温氷上グリップ性能)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
<転がり抵抗(低燃費性能)>
転がり抵抗試験機を用い、試験用スタッドレスタイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100としたときの指数で表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
<氷上性能>
各試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は0〜−5℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例11をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを示す。
(氷上性能)=(比較例11の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
<パターンノイズ低減性>
下記走行条件後のパターンノイズが走行前のパターンノイズに比べてどれだけ低減したかを算出した。そして、算出値(パターンノイズの低減率)を比較例11をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほどパターンノイズ低減性に優れることを示す。
(パターンノイズ低減性)=(各配合におけるパターンノイズの低減率)/(比較例11におけるパターンノイズの低減率)×100
(走行条件)
各試験用スタッドレスタイヤを車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して(リム:7.5J×17、内圧:220kPa)、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。試験場所は、岡山テストコース(ドライ路面)。
なお、パターンノイズは、時速60km/hで走行したときの運転席窓側耳位置における車内音を測定し、500Hz付近の空洞共鳴音の狭帯域ピーク値の音圧レベルを測定することで測定した。
<操縦安定性>
路面温度が25℃のドライアスファルト路面のテストコースにて、各試験用スタッドレスタイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着して実車走行した。その際、テストドライバーが比較例11の結果を100として、微小操舵角変更時のハンドル応答性、急なレーンチェンジの応答性を総合的に評価した。なお、数値が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
Figure 0006544496
表1より、イソプレン系ゴム、変性共役ジエン系重合体、シリカ、水溶性微粒子を含み、かつ多量の液体可塑剤を含む実施例では、低温氷上グリップ性能、高温氷上グリップ性能及び耐摩耗性の性能バランス、更に低燃費性能も加えた性能バランスが優れていた。
特に、比較例7(変性共役ジエン系重合体無、水溶性微粒子無、オイル少量)、比較例2(オイル多量)、比較例3(水溶性微粒子有)、比較例6(変性共役ジエン系重合体有)、及び実施例1(変性共役ジエン系重合体有、水溶性微粒子有、オイル多量)から、液体可塑剤量30質量部超、変性共役ジエン系重合体添加、水溶性微粒子添加を組み合わせることで、低温氷上性能、高温氷上性能及び耐摩耗性の性能バランスや、更に低燃費性能も加えた性能バランスが相乗的に改善されるという効果を奏することが明らかとなった。
Figure 0006544496

Claims (6)

  1. イソプレン系ゴムと変性共役ジエン系重合体とを含有するゴム成分、水溶性微粒子、シリカ、及び液体可塑剤を含み、
    ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が30質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  2. ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20質量%以上、変性共役ジエン系重合体の含有量が20質量%以上であり、
    シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率が50質量%以上である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  3. ゴム成分100質量部に対する水溶性微粒子の含有量が25質量部以上である請求項1又は2記載のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
  5. 前記スタッドレスタイヤは、下記走行条件後、トレッドの路面接地面に平均径0.1〜100μmの空隙が存在する請求項4に記載のスタッドレスタイヤ。
    (走行条件)
    車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
  6. 前記スタッドレスタイヤは、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに比して、走行前のパターンノイズに対する下記走行条件後のパターンノイズの低減率が2〜10%向上する請求項4又は5記載のスタッドレスタイヤ。
    (走行条件)
    車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
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