JP2016044254A - ブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物 - Google Patents
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例えば、特許文献1では、より強靭性を向上させるために、アイオノマ樹脂と無水マレイン酸変性芳香族ビニル系共重合体との配合が提案されている。
また、特許文献2では、成形体に透明性を発現させるために、炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩と多官能グリシジル基含有スチレン系ポリマーとを配合することが提案されている。
一方、熱可塑性ポリエステルエラストマは、溶融粘度が低いためブロー成形用には不適であったが、ポリエポキシ化合物やポリイソシアネート化合物などで増粘する方法が採用されるようになり、ブロー成形品にも熱可塑性ポリエステルエラストマの特徴を生かして採用されている(特許文献3、4など)。
即ち本発明は、以下の通りである。
[2] 前記熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が、テレフタル酸、1,4−ブタンジオール及びポリオキシテトラメチレングリコールを主たる成分とする共重合体であって、該ポリオキシテトラメチレングリコールの数平均分子量が500〜4000であり、その共重合量が熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)を構成する全グリコール成分に対して5〜20mol%である[1]に記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
[3] 前記グリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)が、グリシジル基含有スチレンアクリル系ポリマーであり、重量平均分子量(Mw)が1000以上、エポキシ価が0.5meq/g以上である[1]又は[2]に記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
[4] 前記炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)の有機カルボン酸が、炭素数3〜20の脂肪族カルボン酸である[1]〜[3]のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
[5] 前記無機結晶核剤(D)が、タルクである[1]〜[4]のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
[6] 前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物の230℃、2.16kg荷重のメルトフローレートが、0.1〜3.0g/10minである[1]〜[5]のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
[7] 前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物の120℃デマッチャ破断回数が、300万回以上である[1]〜[6]のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
[8] 熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)に、増粘剤としてグリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)を配合し、かつ結晶核剤及び反応触媒として炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)を配合することを特徴とするブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物の製造方法。
本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族のグリコールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマである。
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。
本発明に用いるグリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)は、グリシジル基含有不飽和単量体とビニル芳香族系単量体をモノマー成分として含む共重合体であり、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)との相溶性が良いものが好ましい。グリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は1000以上、エポキシ価は0.5meq/g以上のものが好ましく、重量平均分子量(Mw)は1000〜50000、エポキシ価は0.5〜3meq/gのものがより好ましい。
グリシジル基含有不飽和単量体としては、不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルなどであり、不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばアクリル酸グルシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどを挙げることができるが、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
不飽和グリシジルエーテルとしては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテルなどが挙げられるが、メタクリルグリシジルエーテルが好ましい。
ビニル芳香族系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられるが、スチレンが好ましい。
このとき、重量平均分子量(Mw)は、5000以上であることがより好ましく、8000以上であることがさらに好ましく、9000以上であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000未満だと、1分子あたりのグリシジル基が少なくなり、増粘効果が低くなるおそれがある。重量平均分子量(Mw)は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)との相溶性の理由より50000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましく、15000以下であることがさらに好ましい。またエポキシ価は0.6meq/g以上であることがより好ましく1meq/g以上であることがさらに好ましい。エポキシ価が0.5meq/g未満だと増粘効果が低くなるおそれがある。エポキシ価は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)との過剰反応によるゲル化物発生抑制の理由より、3meq/g以下であることが好ましい。
このようなエポキシ価を満たすためには、グリシジル基含有不飽和単量体とビニル芳香族系単量体との共重合の割合は、グリシジル基含有不飽和単量体の共重合量が、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜20質量%である。グリシジル基含有不飽和単量体の共重合量が1質量%未満では増粘効果が少なく、十分な屈曲疲労性が得られない傾向があり、30質量%を超えると樹脂組成物としての安定性が損なわれる恐れがある。
本発明に用いる炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)とは、炭素数3〜40の脂肪族、脂環族または芳香族のカルボン酸のアルカリ金属塩である。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムが好ましく、特に好ましくはナトリウムである。
脂肪族カルボン酸とは、直鎖または分岐した脂肪族基にカルボキシル基が付いた化合物であり、結合の一部に、不飽和基、脂環族基、芳香族基あるいは水酸基、リン酸エステル基などのその他の置換基を有していても良い。脂肪族カルボン酸としては、直鎖の飽和脂肪族基にカルボキシル基が付いた化合物であることがより好ましい。
これらの中でも、炭素数が14未満の脂肪族カルボン酸金属塩は、少量の配合で結晶化速度を向上させることができる点で好ましい。
本発明に用いる無機結晶核剤(D)は、溶融加工時に未溶融であり、冷却過程において結晶の核となり得るものであれば、特に限定されないが、中でもタルク、炭酸カルシウムが特に好ましい。結晶核剤(D)の粒子径は0.1〜10μm好ましく、0.5〜6μmが更に好ましい。粒子径が10μmを超える場合は、異物として作用し屈曲疲労性を低下させるおそれがある。結晶核剤(D)の配合量(含有量)は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)100質量部に対して0〜3.0質量部である。3.0質量部を超えると屈曲疲労性を低下させるため好ましくない。
本発明において、無機結晶核剤(D)は任意成分であるが、無機結晶核剤(D)を配合することにより、溶融粘度を損なうことなく外観を向上できると言う利点がある。無機結晶核剤(D)を配合する場合、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)100質量部に対して、0.2〜2.0質量部であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に用いられる芳香族アミン系酸化防止剤の具体例としては、フェニルナフチルアミン、4,4’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、および4−イソプロポキシジフェニルアミンなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)、グリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)、炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)及び無機結晶核剤(D)の合計(ただし、(D)成分は、0でも良い)で、80質量%以上を占めることが好ましい。(A)、(B)、(C)、(D)の合計で、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
また、本発明のポリエステルエラストマ樹脂組成物は、下記実施例の項に記載の屈曲疲労性試験において、120℃デマッチャ破断回数が、300万回以上であるという特徴を有する。
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、窒素中にて250℃で2分間溶融した後降温速度20℃/分で50℃まで降温した際に得られた降温結晶化の発熱ピーク温度を降温結晶化温度(TC2)とした。また、上記の測定試料において、50℃から250℃まで20℃/分で昇温し、得られたサーモグラム曲線から融解による、吸熱ピークを融点とした。
充分乾燥したポリエステル樹脂0.02gをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒10mlに溶解し、ウベローゼ粘度計にて30℃で測定した。
酸価:
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解し、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
表面硬度:
JIS K7215(−1986)に準じて測定した。試験片は、シリンダー温度240℃、金型温度50℃にて作製した射出成形品(長さ100mm、幅100mm、厚み2mm)を3枚重ねたものを使用し、測定圧5000g、タイプDの圧子を用いたデュロメーターにより測定し、測定開始5秒後の値をD硬度とした。
[熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)]
A1:
特開平9−59491号公報に記載の方法により、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)が100/90/10モル%の熱可塑性ポリエステルエラストマ(A1)を製造した。
このポリエステルエラストマ(A1)の融点は205℃、還元粘度は2.15dl/g、酸価は35eq/t、D硬度は40であった。
A2:
特開平9−59491号公報に記載の方法により、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1500)が100/88/12モル%の熱可塑性ポリエステルエラストマ(A2)を製造した。
このポリエステルエラストマ(A2)の融点は197℃、還元粘度は1.86dl/g、酸価は38eq/t、D硬度は46であった。
A3:
特開平9−59491号公報に記載の方法により、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)が100/75/25モル%の熱可塑性ポリエステルエラストマ(A3)を製造した。
このポリエステルエラストマ(A3)の融点は170℃、還元粘度は2.20dl/g、酸価は31eq/t、D硬度は31であった。
B1:
グリシジル基含有スチレンアクリル系ポリマー ARUFON UG−4070(東亜合成(株)社製、Mw:9700、エポキシ価1.4meq/g)
B2:
グリシジル基含有スチレンアクリル系ポリマー ARUFON UG−4050(東亜合成(株)社製、Mw:8500、エポキシ価0.67meq/g)
[その他の増粘剤]
B3:
N置換トリイソシアヌレート TEPIC−S(日産化学社製)
B4:
カルボジイミド化合物 カルボジライトLA−1(日清紡社製)
C1:
ステアリン酸ナトリウム(日本油脂(株)社製、融点230℃)
C2:
カプリル酸ナトリウム(日東化成工業(株)社製 CapNa、融点220℃)
[無機結晶核剤(D)]
D1:
タルク(林化成社製 KCM7500、粒径5.8μm)
離型剤:
リコワックスE(クラリアント社製)
芳香族アミン系酸化防止剤:
ノンフレックスDCD(大内新興化学社製)
フェノール系酸化防止剤:
Irganox1010(BASF社製)
フェノール系酸化防止剤:
Irganox1098(BASF社製)
二軸スクリュー式押出機を用い、上記熱可塑性ポリエステルエラストマ100質量部に対して、各種添加剤を表1に記載の比率(質量比率)で、240℃で溶融混練した後、ペレット化した。このポリエステルエラストマ樹脂組成物のペレットを用いて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
JIS K7210記載の試験法(A法)に準拠し、測定温度230℃、荷重2160gでのメルトフローレート(MFR:g/10min)を測定した。測定には水分率0.1質量%以下の組成物を用いた。
デマッチャ屈曲き裂試験機BE−102(テスター産業株式会社製)を用い、以下の所定の試験片について、120℃の雰囲気下で、チャック間を75mmと19mmにする繰り返し屈曲を300回/分の速度で実施し、破断に至るまでの回数にて耐屈曲疲労性を評価した。試験片は、シリンダー温度240℃、金型温度50℃にて作製した射出成形品(幅20mm、長さ100mm、厚さ3.6mm、ヒンジ部R2.4)を用いた。
耐屈曲疲労性の評価については、以下の基準で示した。
破断までの屈曲回数500万回以上の場合は「◎」
破断までの屈曲回数500万回未満300万回以上の場合は「○」
破断までの屈曲回数300万回未満100万回以上の場合は「△」
破断までの屈曲回数100万回未満の場合は「×」
ダイレクトブロー成型機(単軸押出し機:L/D=25、フルフライトスクリュー、スクリュー径65mm)のシリンダ温度を180〜230℃に設定し、ダイレクトブロー成型ボトルを製造した。シリンダ先端には、パリソン形成用ダイリップを取り付け、金型内でブローエアーを封入し、ボトルを成形した。このときの、パリソン保持状態、製品寸法から評価した。
○:ドローダウン非常に小さく、形状保持している
△:ドローダウン大きく、形状崩れ気味だがなんとかブローできる
×:ドローダウン大きく、形状が崩れブローできない
上記のブロー成形機による得られたボトル成形品のゲル化物の有無を目視にて観察した。
○:ゲル化物が全く認められない。
△:ゲル化物が微かに認められる。
×:ゲル化物が顕著に認められる。
上記のブロー成形機による得られたボトル成形品の内面平滑性を目視にて評価した。
○:内面が平滑であり、荒れが認められない。
△:やや内面に荒れが認められる。
×:内面の荒れが顕著に認められる。
Claims (8)
- 芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族のグリコールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)100質量部に対して、グリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)0.5〜5質量部、炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)0.1〜5質量部、及び(D)無機結晶核剤0〜3質量部を含有してなり、降温結晶化温度(TC2)が170℃以上かつD硬度35以上であることを特徴とするブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 前記熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)が、テレフタル酸、1,4−ブタンジオール及びポリオキシテトラメチレングリコールを主たる成分とする共重合体であって、該ポリオキシテトラメチレングリコールの数平均分子量が500〜4000であり、その共重合量が熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)を構成する全グリコール成分に対して5〜20mol%である請求項1に記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 前記グリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)が、グリシジル基含有スチレンアクリル系ポリマーであり、重量平均分子量(Mw)が1000以上、エポキシ価が0.5meq/g以上である請求項1又は2に記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 前記炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)の有機カルボン酸が、炭素数3〜20の脂肪族カルボン酸である請求項1〜3のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 前記無機結晶核剤(D)が、タルクである請求項1〜4のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物の230℃、2.16kg荷重のメルトフローレートが、0.1〜3.0g/10minである請求項1〜5のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマ樹脂組成物の120℃デマッチャ破断回数が、300万回以上である請求項1〜6のいずれかに記載のブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物。
- 熱可塑性ポリエステルエラストマ(A)に、増粘剤としてグリシジル基含有スチレン系ポリマー(B)を配合し、かつ結晶核剤及び反応触媒として炭素数3〜40の有機カルボン酸アルカリ金属塩(C)を配合することを特徴とするブロー成形用ポリエステルエラストマ樹脂組成物の製造方法。
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