以下、本発明の第一の一実施例について、図面を用いて説明する。なお、本明細書で述べる乾燥運転とは、衣類から水分を蒸発させ、蒸発した水分を機外へ排出することを言い、乾燥した衣類に水分を吹きかけて、しわを伸ばしながら水分を蒸発させて仕上げる運転も含めて述べる。
まず、洗濯乾燥機の構成について、図1〜図7を参照して説明する。
図1はドラム式洗濯乾燥機の外観図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図、図3は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図、図4は内部の構造を示す側面図、図5は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した平面図である。なお、図2乃至図5では、空気の循環構造を中心に描いてある。このため、洗濯水の散水に使用する水の循環構造については、図2乃至図5では描かれていない。洗濯水の散水に使用する水の循環構造については、図15乃至図19を用いて後述する。
1は、ドラム式洗濯乾燥機の筐体(外枠)である。筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,前面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材(図示せず),前補強材(図示せず)、後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1を含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
9は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドアで、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン9dを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
6は、筐体1の上部中央に設けた操作パネルで、電源スイッチ39,操作スイッチ12,13,表示器14を備える。操作パネル6は、筐体1下部に設けた制御装置38に電気的に接続している。
3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽(回転ドラム)であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類等を出し入れするための開口部3aを設けてある。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ3cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ3bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時に洗濯兼脱水槽3を回転すると、衣類等はリフタ3bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。洗濯兼脱水槽3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
洗濯、脱水及び乾燥の対象物は衣類に限られる訳ではない。以下の説明では、洗濯、脱水及び乾燥の対象物を衣類或いは衣類等と呼んで説明する。
2は、円筒状の外槽であり、洗濯兼脱水槽3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3と結合している。前面の開口部には外槽カバー2dを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類等を出し入れするための開口部2cを有している。開口部2cと前補強材37に設けた開口部は、ゴム製のベローズ10で接続しており、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。外槽2の最下部には、排水口21が設けてあり、排水ホース26が接続している。排水ホース26の途中には排水弁125(図15参照)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。外槽2は水受け槽を構成する。
外槽2は、下側をベース1hに固定されたサスペンション5(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽2の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽2の前後方向へ倒れを防ぐ。
19は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器で、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材に固定されている。
洗剤容器19の後ろ側には、給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサ(図示せず)など給水に関連する部品を設けてある。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aが設けてある。洗剤容器19は、外槽2に接続されており、給水電磁弁16を開く、あるいは風呂水給水ポンプ17を運転することで、外槽2に洗濯水を供給する。
29は筐体1の背面内側に縦方向に設置した乾燥ダクトで、ダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管B29aで接続される。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)を内蔵しており、給水電磁弁16から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト29の壁面を伝わって流下し、吸気口2aから外槽2に入り排水口21から排出される。
乾燥ダクト29の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト27に接続している。フィルタダクト27の前面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ8を挿入してある。乾燥ダクト29からフィルタダクト27へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタ8aに流入し、糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、乾燥フィルタ8を引き出してメッシュ式のフィルタ8aを取り出して行う。また、フィルタダクト27の乾燥フィルタ8挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は吸気ダクト33が接続しており、吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
送風ユニット28は、駆動用のモータ28a,ファン羽根車(図示せず)、ファンケース28bで構成されている。ファンケース28bにはヒータ31が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続する。送風ユニット28は送風装置を構成し、ヒータ31は加熱装置を構成する。
温風ダクト30は、図13に示すように、ゴム製の蛇腹管30a,蛇腹管継ぎ手30bを介して、外槽カバー2dに設けた温風吹き出し口32に接続している。本実施例では、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口32までの距離を極力短くするようにしてある。
排水口21、送風ユニット28の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
この図1から図5に示した構成の洗濯乾燥機は、乾燥時に、高速の風を衣類等に直接当て、風の力で衣類等に発生するしわを伸ばすことが可能な構成としてある。このためには、高速の風を発生する送風ユニット28とこの風を直接衣類等に当てる温風吹き出し口32が必要となる。送風ユニット28に必要な性能に関しては、後述する。温風吹き出し口32の詳細を図6,図7を用いて説明する。図6は温風吹き出し口32設置部の外槽カバー2dの正面図、図7は図6の二点鎖線A−Aで切断して示した温風吹き出し口32の断面図である。
温風吹き出し口32は、図6に示すように、外槽カバー2dの前側から開口部2cに沿って設けてあり、内部に流路32b、32cが形成されている。温風吹き出し口32の入口には蛇腹管継ぎ手30bが取り付けてあり、流路32cの出口にはノズル32dが形成されている。洗濯兼脱水槽3と外槽カバー2dとのすき間に衣類が入り込まないよう、外槽カバー2dの開口部2cの内径と洗濯兼脱水槽3の開口部3aの内径は、ほぼ同一に設定されている。このため、温風吹き出し口32の出口部32aを開口部2cの内周面より内側に飛び出すように形成し、ノズル32dが洗濯兼脱水槽3内に向かって開口するようにしてある。このようにすることで、ノズル32dから出た温風は直接洗濯兼脱水槽3内の衣類に当たる。
ここで、出口部32aの飛び出し量が多すぎると、洗濯や乾燥時に衣類の動きを阻害するため、図6及び図7に示すようにノズルを扁平のスリット形状として飛び出し量を小さくし、かつ開口部2cと出口部32aの表面形状がスムーズ変化するようにしてある。また、流路32bと流路32cは無駄な突起や、急激な流れ方向の変化が無いようにし、かつノズル32dに向かい流路面積が徐々に小さくなるようにしてある。こうすることで、高速の風が流路32b,32cを流れるときに発生する圧力損失や流体音を小さくすることが出来る。
乾燥運転時の風の流れは次のようになる。送風ユニット28を運転し、ヒータ31に通電すると、ノズル32dから洗濯兼脱水槽3内に高速の温風が吹き込み(矢印41:図2,図4,図5)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れる(矢印42:図2〜図5)。乾燥ダクト29の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温多湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト27へ入る(矢印43:図2〜図5)。フィルタダクト27に設けたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれる(矢印44:図2)。そして、ヒータ31で再度加熱され、洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環する。この間、洗濯兼脱水槽3を低速で正逆回転させ、衣類をノズル32dの近くまで持ち上げ、高速の温風が衣類に直接当たるようにする。
このように高速の温風を衣類に吹き付けることで、衣類のしわを除去する乾燥が可能となる。但し、この図1〜図7に示した構成の場合には、洗濯直後で湿った衣類を乾燥させた場合に効果があり、洗濯してある程度時間が経過した衣類を乾燥させる際や、乾燥した衣類についたしわ伸ばしの際には、しわの除去が不完全である。
本実施例においては、この図1から図7に示した構成のドラム式洗濯乾燥機に、さらに改良した構成を追加している。
以下、追加した構成について、図8から図14を参照して説明する。この図8から図14において、図1から図7に示した部分と同一部分には同一符号を付す。
図1から図7で説明したように、乾燥運転時に、送風ユニット28を運転して、洗濯兼脱水槽3内に高速の温風を吹き込ませる。この乾燥運転時において、所定のモード(スチームアイロンコース)を設定する操作があると、乾燥運転開始時の所定期間、霧状(ミスト状)の水分を高速の温風に混ぜて供給できる構成としている。洗濯兼脱水槽3内に高速の温風を吹き込ませる構成の詳細については、既に図1から図7で説明した構成と同一である。
図8は、本実施の形態のドラム式洗濯乾燥機の内部を上面から示した図である。即ち、図1に示したドラム式洗濯乾燥機の筐体1を外して、上面から見た図である。
この図1に示すように、乾燥運転時に使用する送風ユニット28が配置してあり、その送風ユニット28からの送風を洗濯兼脱水槽3内に送り込む温風ダクト30の屈曲部70に、給水ユニット50からの水を、切替弁51及びミスト継ぎ手53を介して供給する構成としてある。送風ユニット28内(又はその近傍)には、ヒータ(図示せず)が配置してあり、送風ユニット28で発生した風を高温に暖めることができる構成としてある。切替弁51は、給水先を冷却水供給パイプ52とミスト継ぎ手53との間で切替える弁である。切替弁51をパイプ53側としたとき、給水ユニット50からの水が、温風ダクト30を構成する屈曲部70に供給される。切替弁51を冷却水供給パイプ52としたときには、乾燥運転時に必要な冷却水として供給される。
図9から図12は、温風ダクト30の屈曲部70の構成を示した図である。既に図6に示したように、送風ユニット28で発生した高圧かつ高温の風は、温風ダクト30に導かれて、図6及び図7に示すように、ゴム製の蛇腹管30a及び蛇腹管継ぎ手30bを介して、洗濯兼脱水槽3内に供給される。
ここで、図9及び図10に示すように、蛇腹管30aの先端に、温風ダクト30の屈曲部70を取り付け、送風ユニット28側から水平方向に温風ダクト30を送られてきた温風Wを、下側に屈曲させて、下方の蛇腹管30a及び蛇腹管継ぎ手30bに送る構成とする。従って屈曲部70の屈曲内壁71には、送風ユニット28からの温風Wが当たる。屈曲部70は、例えば合成樹脂で成形させた部品とする。
そして、その屈曲部70を構成する部品に、ミストノズル54を取り付け、ミスト継ぎ手53を介して給水ユニット50からの水を、屈曲部70内に供給する。ミストノズル54は給水ユニット50からの水をヒータの下流側であり、且つノズル32dの上流側に供給する。
図11に屈曲部70の断面を示す。図11に示すように、ミストノズル54は、先端部54aが屈曲部70を構成するパイプの屈曲内壁71の近傍の中央付近まで伸びており、その先端部54aから温風ダクト30内に給水する。図12は図11の変形例を示す図であり、図12に示すように、ミストノズル54の側面部54bから温風ダクト30内に給水するようにしてもよい。或いは、ミストノズル54の先端部54a及び側面部54bから温風ダクト30内に給水するようにしてもよい。
屈曲部70を構成するパイプには、既に説明したように、高圧かつ高温の風が送風ユニット28から供給されている。従って、ミストノズル54の先端部54aからパイプ内に供給された水は、温風ダクト30及び温風吹き出し口32の流路32b、32cの壁面に沿って流下し、ノズル32dから高速の風とともに洗濯兼脱水槽3内に供給される。この時、ノズル32d周辺の洗濯兼脱水槽3内の空気とは大きな速度差があるので、この速度差により水は強力に攪拌され、微粒化されて拡散し、霧(ミスト)状となって、高速の風とともに外槽2及び洗濯兼脱水槽3内に供給される。
なお、送風ユニット28から屈曲部70、蛇腹管30a、蛇腹管継ぎ手30bを介して洗濯兼脱水槽3に送られる風としては、温風吹き出し口32のノズル32dにおいて、例えば、風速が50m/s以上の高速の風とする。
図13は、給水ユニット50の構成例を示した図である。
給水ユニット50は、給水電磁弁62を備えており、給水電磁弁62により、水道栓から供給される水の供給の制御が行われる。給水電磁弁62で供給が制御される水は、第1の切替弁65や第2の切替弁51などでの切替え処理で、洗濯乾燥機として必要な各部に供給される。
具体的には、風呂水給水ポンプ64で得た水と水道栓からの水とが、第1の切替弁65で選択されて、洗剤トレイ66から洗濯兼脱水槽3側に供給され、洗濯運転時の洗濯水として使用される。
また、第2の切替弁51は、乾燥運転時に、乾燥ダクト側への冷却水の供給と、ミスト継ぎ手53を介して霧(ミスト)用の水の供給との切り替えを行う。
図14は、給水構成の系統の例を示した図である。
水道栓61からの水が、給水電磁弁62及び冷却継ぎ手63を介して、各部に供給される。
乾燥運転時には、第2の切替弁51を介して乾燥ダクト67に冷却水が供給されると共に、所定のモード(スチームアイロンコース)を設定した際に、冷却継ぎ手63、ミスト継ぎ手53及びミストノズル54を介して温風ダクト30内に水が供給される。温風ダクト30内に供給された水は、温風吹き出し口32のノズル32dを吹き出す高速の風で霧(ミスト)状になる。この霧状になった水分を含む高速の風は、洗濯兼脱水槽3に供給される。
なお、第2の切替弁51については、オン・オフの指示で水の流れが切り替わる弁であり、オンのとき乾燥ダクト67側に供給され、オフのときミスト継ぎ手53側に供給される構成としてある。
次に、洗剤溶かし及び洗濯水の循環構造について、図15乃至図22を用いて説明する。図15は、本発明の一実施例に係るドラム式洗濯乾燥機について、洗濯水の循環構造を示す側面図である。図16は、図15に示すドラム式洗濯乾燥機の概略構造を、上カバーを外して示す上面図である。図17は、図15における外槽と洗濯兼脱水槽のA−A断面図である。図18は、図15に示すドラム式洗濯乾燥機の外槽及び洗濯兼脱水槽の底部を示す縦断面図である。図19は、循環ポンプ及びフィルタとその配管系を示す斜視図である。図20は、循環ポンプ及びフィルタケースの配管接続部を示す斜視図である。図21は、循環ポンプのケーシング内部形状を示す斜視図である。図22は、循環ポンプのランナーを示す斜視図である。
まず、洗濯水の循環構造について、説明する。本実施例のドラム式洗濯乾燥機は、図15及び図19に示すように、循環ポンプ124を備えている。循環ポンプ124は、外槽2内に溜まった水を、ホース122を通じて吸い込み、循環ホース127を通じて外槽2の上部に送出する。循環ポンプ124とホース122との間にはフィルタケース123が設けられており、循環する洗濯水から糸屑等を捕集する。すなわち、ホース122はフィルタケース123に連通され、フィルタケース123の出口は循環ポンプ124に連通されている。なお、ホース122は蛇腹管で構成されている。
ここで、図15、図20乃至図22を用いて、洗濯水の循環構造について詳述する。洗濯工程において、洗濯水の循環構造を用いて洗濯水を循環させ、衣類等に向けて散水することにより、洗浄効果及びすすぎ効果を高める。
フィルタケース123の底部奥側には、入水口123a、出水口123b、循環ポンプ124の吸入口143が設けてある。外槽2の排水口21と入水口123aとはホース122で、排水弁125と出水口123bとはホース149で繋がっている。また、排水弁125には排水ホース26が接続しており、機外へ洗濯水を排水する。なお、図4では、排水口21に排水ホース26を直接接続した簡略化した構成を示している。
循環ポンプ124は、ケーシング142、ランナー150、循環ポンプモータ147で構成されている。ケーシング142はフィルタケース123と一体で形成されており、ケーシング142の側壁142aの中央部に吸入口143がある。ケーシング内周面には吐出ポートA144aと吐出ポートB145aが隔壁146a,146bを挟んで開口しており、それぞれ吐出口A144と吐出口B145が接続している。隔壁146a,146bの奥側はケーシング側壁142aに接している。また、隔壁146a,146bの吐出ポート側壁面はほぼ垂直になっている。
循環ポンプモータ147の軸にはランナー150が取り付けられている。ランナー150には十字型の羽根150a,150bが形成されている。ランナー正面から見てランナー150が左回転(以後、正回転という)すると、吸入口143から流入した水は、ランナー150の遠心力によるポンプ作用でケーシング142の内周壁に向かい押し出されケーシング142内を右回転しながら流れるが、ケーシングと羽根との径方向すき間が狭くなる隔壁146aにぶつかり、流れ方向を変え、吐出ポートA144aから流れ出る。ランナー150が左回転(以後、逆回転という)すると、水は隔壁146bにぶつかり、吐出ポートB145aから流れ出る。このように、ポンプの回転方向を変えることで、特別な流路の切り換え機構を用いずに、ポンプの吐出方向を変えることが出来る。
ケーシング142の外周部には複数個の突起部142bがあり、突起部142bを循環ポンプベース148のリング状のすき間148bに差し込み、ケーシング142を回転させ、突起部142bを循環ポンプベース148に設けたロック部148aで押さえることで、ケーシング142を固定する。
吐出口A144は、蛇腹管C141を介して外槽カバー2dの前側外周壁に取り付けた循環ホース127に連通している。循環ホース127は、外槽カバー2d上側に設けたノズル127a(図16参照)に接続している。ノズル127aは、薄膜状に水を水平方向に広げる形状(例えばスリット状)になっており、洗濯水を前側から洗濯兼脱水槽3内に向かって散水する。
吐出口B145は、蛇腹管D140を介して外槽2底部の窪み部24に設けた流入口118に連通している。
排水弁125を閉じた状態で循環ポンプ124を正回転すると、外槽2内の洗濯水は排水口21からホース122を通り、フィルタケース123に収められたフィルタ123cで異物を除去され、循環ポンプ124に入り、吐出口A144からはき出され、循環ホース127を通りノズル127aから洗濯兼脱水槽3内に散水される。
循環ポンプ124を逆回転すると、外槽2内の洗濯水は排水口21からホース122を通りフィルタ123cで異物を除去され、循環ポンプ124に入り、吐出口B145からはき出され、流入口118から外槽2内に戻るように循環する(17中の太い矢印で示す流れ)。
排水弁125を開くと、外槽2内の洗濯水は、フィルタ123cを通り吐出口B145から排水弁125を経て、排水ホース26から機外へ排水される。
次に、洗剤溶かしについて説明する。
洗剤溶かしに関連して、図18に示すように、外槽2の周壁の最も低くなる部位には、凹状の窪み部24が軸方向に設けてある。窪み部24の底面は、前側から後側に下がる傾斜面になっており、窪み部24の後ろ側最下部に排水口21が設けてある。排水口21には排水ホース122を接続する。窪み部24の前側には底部循環水の流入口118が設けてある。また、窪み部24の上部には、窪み部24の幅の略半分を覆うように外槽2外周壁の内周面から連続する隔壁2bを有している。隔壁2bは洗濯兼脱水槽3の脱水時の回転方向に対して対向する方向に設ける。排水口21及び流入口118は、窪み部24の幅方向の中心から洗濯兼脱水槽3の回転方向にずれた位置に設置してある。このため、排水口21と流入口118の上部には隔壁2bがある。
本実施例では、循環ポンプモータ147に通電し、循環ポンプ124を逆回転させ洗剤溶かしを実行する。洗剤トレイ7に投入された洗剤は、給水電磁弁16又は風呂水給水ポンプ17から給水される水により流されて、図17に示す蛇腹管120及び蛇腹管120と外槽2との接続流路部25を通り、窪み部24に流下する。循環ポンプモータ147に通電すると、外槽2の底部及び窪み部24に溜まっている水と洗剤は、排水口21からホース122、フィルタ123cを通り、吸入口143からケーシング142内に入る。そして、吐出口B145からはき出され、蛇腹管D40を通り流入口118から窪み部24に戻るように循環する。洗剤は、ランナー150の羽根150a,150bで攪拌され溶解していき、高洗剤濃度の洗い水が生成される。洗剤溶かしの時間は1分間から2分間である。
流入口118から窪み部24へ流れ出る時の流れ方向は上向きであるが、隔壁2bに当たり、流れ方向を排水口21側に変える(図5中の太い矢印)。このため、洗剤溶かし初期段階で未溶解の洗剤が多く含まれる水が循環しているときでも、未溶解の洗剤が洗濯槽3内に直接流入することを防ぐことができる。しかし、隔壁2bに当たった水の一部が外槽カバー2d側に流れることがある。外槽カバー2d側で流れの滞留部分があると、この部分に未溶解洗剤が堆積する恐れがある。そこで、窪み部24へ戻った水を確実に排水口21側へ向かうようにする整流部材を設けてもよい。
フィルタ23cは格子状のフィルタであり、通過する未溶解の粉末洗剤が堆積することはない。
洗剤溶かし中(循環ポンプ124が逆回転中)、隔壁146bの作用で吐出ポートA144a部の圧力は吐出ポートB145aの圧力より大幅に低くなっているため、水や未溶解の洗剤がノズル127aから洗濯兼脱水槽3内に出ることはない。しかし、蛇腹管C141や循環ホース127の途中まで未溶解の洗剤が入り込むことがある。そこで、洗剤溶かし中に循環ポンプ124を一時停止するようにする。循環ポンプ124が停止すると、蛇腹管C141や循環ホース127内に浸入した未溶解洗剤はケーシング142内に戻る。そして、循環ポンプ124を再度運転することで未溶解洗剤を無くすことができる。循環ポンプ124の一時停止は、洗剤溶かし中に3回から4回実施する。また、循環ポンプ124の停止時間は、1秒間あれば十分である。
次に、本実施例の洗濯工程について、図23、図24及び図25を用いて、詳細に説明する。図23は、洗濯工程の動作の流れを示す工程図である。図24及び図25は、洗い工程において実行する、洗い水を散布する散布工程と、霧化(ミスト化)した水分を含む温風(以下、温風ミストという)を洗濯兼脱水槽3内に吹き入れるミスト工程とを示す工程図である。なお、図25は図24に続いて実行される。
循環ポンプ124と、循環ホース127及び散水ノズル127aを含む配管系は、高濃度洗剤溶液(高洗剤濃度の洗い水)を洗濯兼脱水槽3内に供給する高濃度洗剤溶液供給装置を構成する。高濃度洗剤溶液供給装置は洗濯兼脱水槽3内の衣類等に向けて高洗剤濃度の洗い水を散布する装置であるので、洗い水散布装置或いは単に散水装置と呼んでもよい。
使用者が洗濯及び乾燥のコースの選択と設定を行うことにより、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程及び乾燥工程の中から選択された工程が実行される。図23では、洗い工程、すすぎ工程及び脱水工程が選択された場合について説明する。なお、洗剤溶かし動作、散布動作、ミスト動作及び洗い動作等の「動作」は「工程」としてもよいが、洗い工程における「工程」との混同(特に洗い工程と洗い動作との混同)を避けるため、「動作」と記載している。
洗い工程では、洗剤溶かし動作と、散布動作と、ミスト吹き入れ動作(ミストと表記)と、洗い動作とを実行する。以下、ミスト吹き入れ動作をミスト動作という。洗剤溶かし動作では、洗剤を規定の濃度よりも高濃度の状態で水に溶かした洗い水(以下、高濃度洗剤溶液という)を生成する。散布動作では、高濃度洗剤溶液を衣類等に散布する。ミスト吹き入れ動作では、温風ミストを洗濯兼脱水槽3内に吹き入れる。洗い動作(洗浄動作)では、衣類等に機械力を付与して洗浄する。洗い工程が終了するとすすぎ工程に進む。
なお、本実施例では、ドラム式洗濯乾燥機について説明しているが、洗濯兼脱水槽の回転軸が鉛直方向に設けられる縦型洗濯乾燥機であってもよい。ドラム式洗濯乾燥機では、洗い動作において、洗濯兼脱水槽3を回転させることにより衣類等に機械力を付与する。縦型洗濯乾燥機では、洗濯兼脱水槽内に設けたパルセータにより水流を発生させて衣類等に機械力を付与する、或いは洗濯兼脱水槽内に設けた回転盤を回転させて衣類等に直接機械力を付与するなどの方法がある。
すすぎ工程では、まず、外槽2内から洗い水を排水し、脱水を行う。その後、外槽2内にすすぎ水を溜め、或いはすすぎ水を注水しながらすすぎ動作を実行する。すすぎ水を溜めると共に、すすぎ水を注水しながらすすぎ動作を実行してもよい。なお、洗い水の排水と脱水とは、洗い工程に含めてもよい。すすぎ工程では、すすぎ動作の後、排水と脱水とを行う。排水と脱水の後、設定された回数だけすすぎ動作を繰り返す。すすぎ動作の後に次のすすぎ動作を実行する場合は、すすぎ動作と次のすすぎ動作との間に、排水と脱水とを行う。最後のすすぎ動作が終了すると脱水工程に進む。
すすぎ工程におけるすすぎ動作は、ドラム式洗濯乾燥機では、洗濯兼脱水槽3を回転させることにより衣類等に機械力を付与しながら実行される。縦型洗濯乾燥機では、洗濯兼脱水槽内に設けたパルセータにより水流を発生させて衣類等に機械力を付与しながら、或いは洗濯兼脱水槽内に設けた回転盤を回転させて衣類等に直接機械力を付与しながら実行するなどの方法がある。
脱水工程では、すすぎ水の排水を行い、脱水動作を実行する。脱水動作は、ドラム式洗濯乾燥機も縦型洗濯乾燥機も両方とも洗濯兼脱水槽を高速回転させて実行される。なお、すすぎ水の排水はすすぎ工程で実施してもよい。
次に、洗い工程における散布動作とミスト吹き入れ動作とについて、詳細に説明する。
上述した洗剤溶かし動作が終了すると、図24に動作記号<A>で示される散布動作が実行される。この散布動作では、循環ポンプ124がオンされ、循環ポンプ124が2800rpmで運転される。散布動作は、高濃度洗剤溶液を散水ノズル127aから衣類等に散水する工程であり、25秒間継続される。なお、本動作においては、ドラム回転、給水弁による給水(給水弁)、送風ファンユニット28のモータ28aの回転(送風ファン回転)及び温風用ヒータ31はいずれも停止している。
動作記号<A>で示される散布動作の後、動作記号<B>で示されるミスト動作(ミストA動作)を3分間実行する。本ミスト動作では、ドラムを一方向(CW方向)に回転させながら、水道栓61からの水を給水電磁弁62、冷却継ぎ手63、第2の切替弁51を介してミスト継ぎ手53に流し、温風ダクト30内に供給する。この経路による給水について、給水弁の欄に「冷却水弁」と表記する。本動作では、冷却水弁は連続してオンされる。また、本動作では、送風ファン回転及び温風用ヒータ31はオンされており、温風ダクト30内に供給された水は、温められた温風で霧化され、洗濯兼脱水槽3内に吹き入れられる。なお、本動作では、循環ポンプ124はオフになっており、洗い水の散布は停止している。
本動作では、衣類等の量に応じて、ドラム回転、送風ファン回転を、変えている。ドラム回転は衣類等の量が多いほど回転数(回転速度)を高めると共に、運転時間を長く設定している。本実施例では、衣類等の量を3段階に分け、衣類等の量が多い場合は回転数(回転速度)を40rpmとし、30秒間オン、5秒間オフして運転している。衣類等の量が中間(中くらい)の場合は回転数(回転速度)を35rpmとし、10秒間オン、15秒間オフして運転している。衣類等の量が少ない場合は回転数(回転速度)を30rpmとし、5秒間オン、15秒間オフして運転している。送風ファン回転は、衣類等の量が多い場合に少ない場合と比較して、ファンの回転数(回転速度)を高く設定している。本実施例では、衣類等の量が多い場合と中間(中くらい)の場合にファンの回転数(回転速度)を7000rpmで運転し、衣類等の量が少ない場合にファンの回転数(回転速度)を5800rpmで運転している。
図26に送風ファン回転数と吹き出し口の風量との特性を示す。図27に送風ファン回転数と吹き出し口の風速との特性を示す。ファンの回転数(回転速度)が5800rpmの場合、吹き出し口の風量は約0.58m3/minであり、吹き出し口の風速は約37m/sである。また、ファンの回転数(回転速度)が7000rpmの場合、吹き出し口の風量は約0.73m3/minであり、吹き出し口の風速は約44m/sである。ミスト工程における風量及び風速は乾燥工程における温風の風量及び風速に対して小さく設定される。このように、ファンの回転数(回転速度)を低く抑えることにより、高濃度洗剤溶液により発生した泡が乾燥ダクト29内へ侵入すること、或いは乾燥ダクト29内に侵入した泡が乾燥ダクト29内を上昇するのを抑制することができる。また、衣類等の量が少ない場合に多い場合と比較して、ファンの回転数(回転速度)を低く抑えることにより、泡の侵入抑制或いは泡の上昇抑制効果を高めることができる。
ミスト動作では、水を霧化して衣類等に作用させるので、少量の水を用いて衣類等をまんべんなく湿らせることができる。このため、高濃度洗剤溶液を必要以上に薄めることなく、衣類等に浸透させることができる。またミストを温風と共に衣類等に作用させるので、温風により衣類等の温度を高めることができ、洗剤の持つ酵素の効果(酵素パワー)を高めることができる。従って、温風ミストにより、高濃度洗剤溶液による洗浄効果を高めることができる。また、給水して衣類等をまんべんなく湿らせる動作と衣類等の温度を高める動作とを温風ミストにより並行して同時に実行できるので、洗い工程或いは洗濯工程に要する時間を短縮することができる。
ミストA動作の後、動作記号<C>で示される散布動作(散布A動作)を10秒間実行する。ミストA動作と同様に、冷却水弁を連続オンして給水を行いつつ、循環ポンプ124がオンされ、循環ポンプ124が2800rpmで運転される。
散布A動作の後、動作記号<D>で示されるミスト動作(ミストB動作)を3分間実行する。本動作では、衣類等の量が少ない場合に、冷却水弁による給水を、3秒間オンし、40秒間オフする運転を繰り返す。すなわち、冷却水弁による給水は間欠的に行われる。これにより、冷却水弁における給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。その他の運転はミストA動作と同じである。
ミストB動作の後、動作記号<E>で示される散布動作(散布B動作)を10秒間実行する。本動作では、衣類等の量が少ない場合に、冷却水弁による給水を、行わない(オフする)。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。その他の運転は散布A動作と同じである。
散布B動作の後、動作記号<F>で示されるミスト動作(ミストC動作)を3分間実行する。本動作では、ミストB動作に対し、衣類等の量が中間の場合に冷却水弁による給水を3秒間オンし、40秒間オフする運転を繰り返し、衣類等の量が少ない場合には冷却水弁による給水を行わない(オフする)点が異なる。その他の運転はミストB動作と同じである。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。
ミストC動作の後、図25に示すように、動作記号<G>で示される散布動作(散布C動作)を10秒間実行する。本動作では、散布B動作に対し、衣類等の量が中間の場合に、冷却水弁による給水を行わない(オフする)点が異なる。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。その他の運転は散布B動作と同じである。
散布C動作の後、動作記号<H>で示されるミスト動作(ミストD動作)を1分間実行する。本動作では、ミストC動作に対し、衣類等の量が中間の場合に、冷却水弁による給水を行わない(オフする)点が異なる。その他の運転はミストC動作と同じである。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。
ミストD動作の後、動作記号<I>で示される散布動作(散布D動作)を10秒間実行する。本動作は散布C動作と同じ運転を行う。
散布D動作の後、動作記号<J>で示されるミスト動作(ミストE動作)を6分間実行する。本動作の内容は、ミストC動作の内容と同じ運転を行う。
ミストE動作の後、動作記号<K>で示される散布動作(散布E動作)を10秒間実行する。本動作では、散布D動作に対し、衣類等の量が多いに、冷却水弁による給水を行わない(オフする)点が異なる。すなわち、本動作では、衣類等の量にかかわらず、冷却水弁による給水は行わない。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。その他の運転は散布D動作と同じである。
散布E動作の後、動作記号<L>で示されるミスト動作(ミストF動作)を6分間実行する。本動作では、ミストE動作に対し、衣類等の量が多い場合に、冷却水弁における給水を3秒間オンし、40秒間オフする運転を繰り返す。その他の運転はミストE動作と同じである。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。
ミストF動作の後、動作記号<M>で示される散布動作(散布F動作)を10秒間実行する。本動作は散布K動作と同じ運転を行う。
散布F動作の後、動作記号<N>で示されるミスト動作(ミストG動作)を6分間実行する。本動作はミストF動作と同じ運転を行う。
上述したように、散布動作(散布工程:第1の工程)及びミスト動作(ミスト工程:第2の工程)では、冷却水弁による給水が行われるため、この給水により高濃度洗剤溶液における洗剤濃度が低下することになる。このため、繰り返される散布動作及びミスト動作の途中から、冷却水弁による給水を間欠的に行ったり、冷却水弁による給水を行わないようにする。また、衣類等の量が少ないほど、散布動作及びミスト動作での給水量を少なくすることができるため、冷却水弁による給水を間欠的に行ったり、冷却水弁による給水を行わないようにするタイミングを、衣類等の量が多い場合と比べて早めるようにする。これにより、冷却水弁による給水量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。
ミスト動作においては、洗濯兼脱水槽3を回転させながら、温風ミストを洗濯兼脱水槽3内に吹き入れている。これにより、衣類等にまんべんなく温風ミストを作用させることができる。この場合の洗濯兼脱水槽3の回転速度は30〜40rpmであり、洗い工程で採用される回転速度と同等である。この回転速度は、洗い工程においては、たたき洗いの効果を得ることができる回転速度である。すなわち、衣類等が洗濯兼脱水槽3の内壁に張り付くのを防ぐことができる。このため、温風ミストを衣類等にまんべんなく作用させることができる。
上述した実施例では、散布動作とミスト動作とをそれぞれ間欠的に実施し、散布動作とミスト動作とが交互に実施されるようにした。これに対して、散布動作とミスト動作とが少なくともある時刻に重複して同時に実施されるようにしてもよい。もちろん、散布動作とミスト動作とを完全に重複させて実施してもよい。
温風用ヒータ(加熱装置)31としては、PTCヒータを用いることができる。PTCヒータを用いることにより、風量を多くすることができ、衣類等に作用する熱量を高めることができる。PTCヒータの他に、空気の加熱装置としてヒートポンプを採用してもよい。また、本実施例では、乾燥工程で使用するヒータ31をミスト動作に利用しているが、乾燥工程で使用するヒータ(熱源)とは別の熱源を備えてもよい。なお、乾燥工程に使用しない熱源を備えることは、乾燥機能を持たない洗濯機でもミスト動作が可能になることを意味する。
本実施例では、温風ミストを洗濯兼脱水槽3内に吹き入れるために、乾燥ダクト29を利用している。乾燥ダクト29は吸気口2aから上方に向かって延設され、その下流側にヒータ31が設けられている。ドラム式洗濯乾燥機を背面側から見た場合、図3に示すように、吸気口2aは洗濯兼脱水槽3の回転中心に対して外槽2の左下側に位置している。また、乾燥ダクト29は洗濯兼脱水槽3の回転中心に対して外槽2の左側に位置している。この場合、洗濯兼脱水槽3が時計方向(右回り)に回転すると、洗濯兼脱水槽3の回転に伴って移動する泡は、吸気口2aから上方に向かって延設された乾燥ダクト29の延設方向に沿って移動することになるため、乾燥ダクト29に侵入し易い。一方、洗濯兼脱水槽3が反時計方向(左回り)に回転すると、洗濯兼脱水槽3の回転に伴って移動する泡は、乾燥ダクト29の延設方向とは反対方向に向かって移動することになるため、乾燥ダクト29に侵入し難い。乾燥ダクト29の下流側にはヒータ31が設けられているため、泡がヒータ31に到達し難い構造にすることが望まれる。本実施例では、洗濯兼脱水槽3は、回転中心に対して吸気口2a及び乾燥ダクト29が配設された側の部位が、乾燥ダクト29の延設方向(下方に配置された吸気口2aから上方に向かう方向)とは反対方向に向かって回転するようにしている。
すなわち、吸気口2a洗濯兼脱水槽3の回転中心に対して左右方向の一方の側で且つ前記回転中心よりも下方に位置するように外槽2に配設された吸気口2aと、前記温風と前記温風に合流した水道水とを前記洗濯兼脱水槽内に供給する散水ノズル127aと、前記回転中心に対して左右方向における前記一方の側に配設され、吸気口2aと散水ノズル127aとを連通するように吸気口2aから上方に向かって延設された乾燥ダクト29とを備え、ミスト動作(ミスト工程:第2の工程)では、洗濯兼脱水槽3は、前記回転中心に対して左右方向における前記一方の側では乾燥ダクト29の延設方向とは反対方向(上方から下方)に向かって回転するように、一方向に回転駆動される。
図24及び図25において、ミスト動作時のドラム回転は時計方向(CW)の一方向に回転させている。なお、図24及び図25のドラム回転の方向はドラム式洗濯乾燥機を正面側から見た場合であり、図24及び図25に示す時計方向(CW:右回り)はドラム式洗濯乾燥機を背面側から見た場合の反時計方向(左回り)に一致する。
次に、本発明の別の一実施例について、図面を用いて説明する。なお、洗濯乾燥機の構成(図1乃至図22)、および洗濯工程の動作の流れ(図23)は前述した第一の一実施例と同様であるので説明を省略する。なお、ここでは、室温、水温が約20℃の場合について述べる。
図28、図29は、洗い工程において実行する、洗い水を散布する散布工程と、霧化(ミスト化)した水分を含む温風ミストを洗濯兼脱水槽3内に吹き入れるミスト化工程とを示す工程図である。図29は図28に続いて実行される。本実施例の特徴は、ミストの温度を第一の実施例より高くして、効率よく衣類の温度を上昇させ、洗浄力を高めたことにある。
図23において、洗剤溶かし工程が終了すると、図28に動作記号<A>で示される散布動作は第一の実施例と同様である。
動作記号<A>で示される散布動作の後、動作記号<B>で示される予熱動作を3分間実行する。本予熱動作では、ドラムを一方向(CW方向)に回転させながら、送風ファン回転及び温風ヒータ31はオンされており、温風が温風吹き出し口32から洗濯兼脱水槽3内に吹き込まれる。これにより、洗濯兼脱水槽3内の衣類等の温度が上昇すると共に、温風ヒータ31から温風吹き出し口32に至る温風流路の壁面の温度も上昇していく。予熱動作時間を3分間としたのは、3分間で前記温風流路の壁面の温度が約60℃と十分高温に達するからである。なお、本動作では、循環ポンプ124はオフになっており、洗い水の散布は停止している。
本動作では、衣類等の量に応じて、ドラム回転、送風ファン回転を、変えている。ドラム回転は衣類等の量が多いほど回転数(回転速度)を高めると共に、運転時間を長く設定している。本実施例では、衣類等の量を3段階に分け、衣類等の量が多い場合は回転数(回転速度)を40rpmとし、30秒間オン、5秒間オフして運転している。衣類等の量が中間(中くらい)の場合は回転数(回転速度)を35rpmとし、10秒間オン、15秒間オフして運転している。衣類等の量が少ない場合は回転数(回転速度)を30rpmとし、5秒間オン、15秒間オフして運転している。送風ファン回転は、衣類等の量が多い場合に少ない場合と比較して、ファンの回転数(回転速度)を高く設定している。本実施例では、衣類等の量が多い場合と中間(中くらい)の場合にファンの回転数(回転速度)を7000rpmで運転し、衣類等の量が少ない場合にファンの回転数(回転速度)を5800rpmで運転している。
予熱動作の後、動作記号<C>で示される散布動作(散布動作A)を10秒間実行する。循環ポンプ124がオンされ、循環ポンプ124が2800rpmで運転される。本動作は、散布動作で衣類等に浸透した後、衣類等から流れ出て外槽2の窪み部24に溜まった高濃度洗剤液を再度衣類等に含浸させるために行う。
散布A動作の後、動作記号<D>で示されるミスト動作(ミストA動作)を3分間実行する。本動作では、冷却水弁による給水を、1.5秒間オンし、40秒間オフする運転を繰り返す。すなわち、冷却水弁による給水は間欠的に行われる。この時、予熱動作で温風流路の壁面が60℃程度になっており、壁面を流下する水が温められ、35℃から40℃のミストとなって衣類に吹き付けられる。ミストを間欠的に供給するのは、ミストの温度を35から40℃に保つためである。また、温風は60℃から70℃でノズル32dから吹き出すが、衣類に当たるときの温度は40℃から50℃となる。本ミスト動作では、第1の実施例よりもさらに少量の水を霧化して衣類等を満遍なく湿らせることができるため、高濃度洗剤溶液の濃度の低下を最小限に抑えて衣類に浸透させることができる。さらに、35℃から40℃に温められたミストは、40℃から50℃の温風と共に衣類等に作用するので、衣類等の温度上昇を早めることができ、洗剤に含まれる酵素(約30℃から40℃で活性化する)の効果を高めることができる。なお、 本動作では、衣類等の量に応じて、ドラム回転、送風ファン回転を変えているが、予熱動作と同様なので詳細の説明は省略する。
ミストA動作の後、動作記号<E>で示される散布動作(散布B動作)を10秒間実行するが、動作は散布A動作と同様である。
散布B動作の後、動作記号<F>で示されるミスト動作(ミストB動作)を1分間実行する。本動作では、ミストA動作に対し、衣類等の量が少ない場合に冷却水による給水を行わない(冷却水弁をオフする)点が異なる。その他の運転は、ミストA動作と同じである。これにより、含水量が少ない少量の衣類等の場合でも、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。
ミストB動作の後、図29に示すように、動作記号<G>で示される散布動作(散布C動作)を10秒間実行するが、動作は散布A動作と同様である。
散布C動作の後、動作記号<H>で示されるミスト動作(ミストC動作)を3分間実行する。本動作では、冷却水弁は連続してオンされる。散布動作で衣類等に浸透した高濃度洗剤溶液は、必ずしも均一に浸透しておらず、その後のミストA動作やミストB動作で浸透具合のばらつきは改善されるが、特に衣類等の量が多い場合は十分でない場合がある。高濃度洗剤溶液の浸透具合が不均一だと、洗浄性能にむらが生じるため、ミストを連続して衣類等に散布し、高濃度洗剤溶液を衣類等に均一に浸透させるようにした。予熱動作、ミストA動作、ミストB動作で温風ヒータ31から温風吹き出し口32に至る温風流路の壁面の温度や外槽カバー2dの温度が上昇しており、ミストが連続で散布されても、ミストの温度は約30℃となり、洗剤に含まれる酵素の働きを阻害することはない。なお、衣類等の量が少ない場合は、冷却水による給水を行わない(冷却水弁をオフする)。これは、衣類等の量が少ない場合は、散布動作で衣類等に高濃度洗剤溶液が略均一に散布されており、高濃度洗剤溶液の濃度が薄まるのを防ぐためである。
ミストC動作の後、動作記号<I>で示される散布動作(散布D動作)を10秒間実行するが、動作は散布A動作と同様である。
散布D動作の後、動作記号<J>で示されるミスト動作(ミストD動作)を6分間実行する。本動作では、衣類等の量が多い場合に冷却水による給水を1.5秒間オンし、40秒間オフする運転を繰り返し、衣類等の量が中間あるいは少ない場合には冷却水弁による給水を行わない(冷却水弁をオフする)。これにより、ミストの供給量を抑制し、高濃度洗剤溶液が薄まるのを防ぐことができる。その他の運転は、ミストA動作と同じである。
ミストD動作の後、動作記号<K>で示される散布動作(散布E動作)を10秒間実行するが、動作は散布A動作と同じである。
散布E動作の後、動作記号<L>で示されるミスト動作(ミストE動作)を6分間実行するが、動作はミストD動作と同様である。
ミストE動作の後、動作記号<M>で示される散布動作(散布F動作)を10秒間実行する。本動作は、散布A動作と同じ運転を行う。
散布F動作の後、動作記号<N>で示されるミスト動作(ミストF動作)を6分間実行する。本動作は、ミストD動作と同じ運転を行う。
ミストF動作の後、洗い動作(洗浄動作)を実行する。本動作は、洗い動作の水位まで給水を行った後、衣類等に機械力を付与して洗浄し、洗い工程を終了し、その後、すすぎ工程、脱水工程を実行する。
なお、本実施の形態例では、冷却水弁の給水流量は毎分約0.3リットルのものを使用している。図28、図29で示した温風ミストシャワー工程では、運転時間約30分の間に、合計約1.1リットルの30℃から40℃に温められたミストを供給している。これにより、ミスト動作F終了時の衣類等の温度は35℃から40℃と、洗剤に含まれる酵素が最も活性化する温度となっている。また、洗浄動作時の洗い水の水温は約30℃と、洗剤の界面活性剤や酵素が十分に働く温度となっている。
以上述べたように、予熱動作により衣類等だけでなく、温風が流れる流路の壁面及び流路を構成する部材の温度を上昇させた後で、ミスト動作で冷却水による給水が間欠的に行われるため、温められたミストと温風で衣類等を効率よく温めることができ、洗剤に含まれる酵素のパワーを早い段階から作用させることができる。また、ミストの供給量を必要最小限に抑えているため、高濃度洗剤溶液の濃度の低下を抑えつつ、衣類等へ高濃度洗剤溶液を均一に浸透させることができる。
従来、洗い水の温度を上昇させる洗浄方法は、外槽底部にヒータを設け、これで外槽に溜めた洗い水全体を温めながら行う温水洗浄が一般的であった。これに比べ、本実施の形態例では、洗剤溶かしでの水量とミストで供給する水量の合計であり、略衣類等が含水できる水量である。このため、洗い水全体を温める洗浄方法に比べ、消費電力量が少なく、短時間に洗浄力を高めることができる効果がある。また、従来の温水洗浄は水温が徐々に上昇していくのに対し、本実施の形態例では、最初から温められたミストと温風を衣類等に作用させるため、洗剤に含まれる酵素の働きを早い時期から発揮することができ、洗浄力向上に有効である。
なお、冬場のように、予め決められた外気温や水温より低い場合は、予熱動作やミストA、ミストB、ミストE、ミストF動作などの時間を延長することで、衣類等の温度を30℃から40℃まで温めるようにしてもよい。この時、ミストの供給量を増やしすぎると衣類等の温度が上がりにくくなるため、たとえば、ミストE動作での冷却水による給水を1.5秒間オンし、80秒間オフするようにして、ミスト供給量を増やさないようにしてもよい。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。