JP2016042399A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

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Tetsuya Aisaka
哲彌 逢坂
杉山 敦史
Atsushi Sugiyama
敦史 杉山
琢磨 蜂巣
Takuma Hachisu
琢磨 蜂巣
坂脇 彰
Akira Sakawaki
彰 坂脇
明 山根
Akira Yamane
明 山根
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Abstract

【解決手段】非磁性材料からなる基板と、該基板上に形成された磁性材料層とを備える磁気記録媒体であって、上記磁性材料層が、上記基板上に直接又は下地層を介して形成された平均粒子径が3〜20nmの規則化結晶磁性ナノ粒子と、該規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、該規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層とを含む磁気記録媒体。【効果】ナノ粒子の規則化相転移を目的とした高温アニール過程におけるナノ粒子の凝集と焼結が抑制され、基板上に、個々の粒子が独立して均一に配列した規則化結晶磁性ナノ粒子を含み、また、熱安定性にも優れた磁性材料層が形成された磁気記録媒体を提供することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、高密度磁気記録システムの実現を可能とする磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
磁気記録による情報ストレージ分野は、近年の高度情報化社会を支える基盤技術である。磁気記録密度の向上は、大容量の情報処理や社会に散在する知の財産の利用を可能とするだけでなく、記録デバイスの小型化及び軽量化によるユビキタスコンピューティング、更には、省電力、省材料の点から低環境負荷を促すことになる。現行のハードディスクドライブ(HDD)の磁気記録媒体は、スパッタリング法により作製された磁性薄膜が用いられている。更なる記録媒体の高記録密度化のためには、薄膜を構成する磁性粒子の微細化により実現される記録ビット面積の縮小化、及び記録ビットの経時に対する記録安定性が求められる。
体積に比例する粒子内の磁化方向を保つKuV(Ku:一軸結晶磁気異方性エネルギー、V:磁性粒子体積)は、熱エネルギーkBT(kB:ボルツマン定数、T:使用温度(単位:K))に比べて数十倍であることが必要であるが、磁性粒子の微細化に伴い、十分な値が得られないため、記録情報の熱安定性がボトルネックになっている(熱擾乱)。熱擾乱を低減させる解決策の一つとして記録ビットの安定性に優れた高い結晶磁気異方性エネルギー(Ku)を備えた材料の磁気記録媒体への適用が求められている。
上記課題を解決するために、本発明者らは、特開2009−035769号公報(特許文献1)において、均一な形状、粒径及び磁気特性を有するFePtナノ粒子の作製方法及び配列方法を提案している。しかしながら、ナノ粒子の特性を最大に発揮させた磁気記録媒体を実現するためには、均一な形状、粒径及び磁気特性を有するナノ粒子の作製と共に、磁性ナノ粒子を、基板上に安定な状態で、効率よく、均一に配列する技術の確立が不可欠である。また、磁性ナノ粒子を用いた磁気記録媒体の開発には、膜構成など記録層の構造と、成膜技術の確立が必須である。
更に、FePtナノ粒子等のナノ粒子を磁気記録媒体の磁性層として適用する場合、FePtナノ粒子等のナノ粒子のL10規則化相転移を目的とした高温アニールが必要であるが、高温アニール過程において、ナノ粒子が凝集と焼結を引き起こして、得られる磁性ナノ粒子配列が不均一化することを抑制する必要がある。
特開2009−035769号公報 特開2004−14013号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、基板上に、個々の粒子が独立して均一に配列した規則化結晶磁性ナノ粒子を含み、また、熱安定性にも優れた磁性材料層が形成された磁気記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、磁気記録媒体の基板上に形成する磁性材料として規則化結晶磁性ナノ粒子を用いる際に、規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層を形成することにより、高温アニール過程におけるナノ粒子の凝集と焼結が抑制され、個々の粒子が独立して均一に配列した規則化結晶磁性ナノ粒子を含む磁性材料層となり、また、熱安定性にも優れた磁性材料層が形成された磁気記録媒体となることを見出した。
そして、本発明者らは、更に、基板上に、規則化結晶磁性ナノ粒子が、個々の粒子が独立して均一に配列した磁気記録媒体が、基板上に分散して形成されたナノ粒子を、急速加熱法(RTA:Rapid Thermal Anneal)により加熱してナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させること、特に、基板上に分散して形成されたナノ粒子の上に、ナノ粒子表面を被覆する無機材料からなる保護層を形成し、この状態で、ナノ粒子を保護層と共に加熱、好ましくは急速加熱法(RTA)により加熱してナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させることにより、良好に製造できることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は下記の磁気記録媒体及びその製造方法を提供する。
請求項1:
非磁性材料からなる基板と、該基板上に形成された磁性材料層とを備える磁気記録媒体であって、
上記磁性材料層が、上記基板上に直接又は下地層を介して形成された平均粒子径が3〜20nmの規則化結晶磁性ナノ粒子と、該規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、該規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層とを含むことを特徴とする磁気記録媒体。
請求項2:
上記保護層が、上記規則化結晶磁性ナノ粒子の基板から離間する側の表面を被覆していることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
請求項3:
上記規則化結晶磁性ナノ粒子が、L10−FePt磁性ナノ粒子、L10−CoPt磁性ナノ粒子又はL11−CoPt磁性ナノ粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記録媒体。
請求項4:
上記無機材料が、単体金属、合金、金属酸化物、金属窒化物及び炭素材料から選ばれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
請求項5:
上記磁性材料層が、上記保護層上に形成された規則化結晶磁性ナノ粒子と、該規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、該規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
請求項6:
基板上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
上記基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、及び
上記ナノ粒子を急速加熱法により加熱して、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる工程
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
請求項7:
請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁気記録媒体を製造する方法であって、
上記基板上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
上記基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、
上記基板上に配列されたナノ粒子の上に、該ナノ粒子表面を被覆する上記無機材料からなる保護層を形成する工程、及び
上記ナノ粒子及び上記無機材料からなる保護層を加熱して、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる工程
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
請求項8:
請求項5記載の磁気記録媒体を製造する方法であって、
上記基板上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
上記基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、
上記基板上に配列されたナノ粒子の上に、該ナノ粒子表面を被覆する上記無機材料からなる保護層を形成する工程、
上記保護層上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
上記保護層上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、
上記保護層上に配列されたナノ粒子の上に、該ナノ粒子表面を被覆する上記無機材料からなる保護層を更に形成する工程、及び
上記ナノ粒子及び上記無機材料からなる保護層を加熱して、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる工程
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
請求項9:
上記保護層をスパッタリングにより形成することを特徴とする請求項7又は8記載の磁気記録媒体の製造方法。
請求項10:
上記加熱を急速加熱法により実施することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
本発明によれば、ナノ粒子の規則化相転移を目的とした高温アニール過程におけるナノ粒子の凝集と焼結が抑制され、基板上に、個々の粒子が独立して均一に配列した規則化結晶磁性ナノ粒子を含み、また、熱安定性にも優れた磁性材料層が形成された磁気記録媒体を提供することができる。
本発明の磁気記録媒体の一例を示す部分断面模式図である。 本発明の磁気記録媒体の他の例を示す部分断面模式図である。 実施例1のサンプル番号1〜4のXRDパターンを示す図である。 図3のXRDパターンのFePt(111)面由来の回折ピークによるL10−FePt磁性ナノ粒子の規則化度を示す図である。 実施例1のサンプル番号0及び4〜7のXRDパターンを示す図である。 図5のXRDパターンの部分拡大図である。 図6のXRDパターンのFePt(111)面の回折ピーク値を示す図である。 実施例2で測定した磁気記録媒体の磁化曲線を示す図である。
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性材料からなる基板と、基板上に形成された磁性材料層とを備える。この磁性材料層は、平均粒子径が3〜20nmの規則化結晶磁性ナノ粒子と、規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層とを含む。
具体的には、例えば、図1に示されるようなものが挙げられる。図1は、本発明の磁気記録媒体の一例を示す断面模式図であり、この磁気記録媒体mは、基板1上に、規則化結晶磁性ナノ粒子21と、規則化結晶磁性ナノ粒子21上に形成された保護層22とからなる磁性材料層2を備える。
本発明の磁気記録媒体は、L10規則化相転移、L11規則化相転移などの規則化相転移(結晶相転移)を目的とした高温アニール前のナノ粒子の段階から、ナノ粒子が無機材料からなる保護層によって被覆され、この保護層によって、高温アニールにおけるナノ粒子の凝集と焼結が抑制されていることから、高温アニール後に得られた規則化結晶磁性ナノ粒子は、基板上に高分散が維持された状態で存在する。その結果、基板上に、個々の規則化結晶磁性ナノ粒子が独立して均一に配列した規則化結晶磁性ナノ粒子を備える、高密度磁気記録を可能とする磁気記録媒体が提供される。
基板の材料としては、非磁性の材料が用いられ、ハードディスクドライブ(HDD)の基板として用いられる従来公知の基板を用いることができ、例えば、Al基板、Si基板、ガラス基板などが挙げられる。ガラス基板の場合は、そのままで用いても、表面にSi層(例えば、層厚10〜100nm、好ましくは20〜50nm)を被覆したものを用いてもよい。
本発明の規則化結晶磁性ナノ粒子を与えるナノ粒子としては、強磁性材料であれば特に制限はなく、例えば、FePt磁性ナノ粒子、CoPt磁性ナノ粒子などが好適に使用できる。FePt磁性ナノ粒子、CoPt磁性ナノ粒子等の磁性ナノ粒子に高温アニールを施し、規則化相転移させることにより、L10−FePt磁性ナノ粒子、L10−CoPt磁性ナノ粒子等のL10−磁性ナノ粒子、L11−CoPt磁性ナノ粒子等のL11−磁性ナノ粒子などの規則化結晶磁性ナノ粒子となる。規則化結晶磁性ナノ粒子を与えるナノ粒子の平均粒子径は、いずれも3〜20nmであり、4〜10nm、特に5〜7nmであることが好ましい。なお、この平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)像等の電子顕微鏡像から算出することができる。
このような規則化結晶磁性ナノ粒子を与えるナノ粒子は、特に限定されないが、例えば、特開2009−035769号公報(特許文献1)に記載されたものを用いることができる。
具体的には、FePt磁性ナノ粒子の場合、例えば、Pt化合物と還元剤と第1の粒子分散剤とを含む溶媒溶液から還元反応により金属Pt核粒子を生成させる工程(工程a)、金属Pt核粒子を生成させた後の溶媒溶液に、Fe化合物及び第2の粒子分散剤を添加、好ましくはFe化合物を添加してFe化合物を溶解させた後に第2の粒子分散剤を添加して、金属Pt核粒子上に金属Feを析出させる(工程b)、金属Feが析出して生成したFeとPtとを含むナノ粒子を、反応液中で185〜320℃、好ましくは225〜275℃、特に好ましくは245〜255℃の温度で熟成する(工程c)により得ることができる。
工程a〜cについて更に詳しく説明すると、工程aは、Pt化合物と還元剤と第1の粒子分散剤とを含む溶媒溶液から還元反応により金属Pt核粒子を生成させる工程である。Pt化合物としては、例えばPtアセチルアセトナート、Ptエトキシド(Pt(OEt)2)などを用いることができる。また、還元剤としては、1−オクタデセン等の炭素数16〜18の不飽和炭化水素(直鎖状のものが好ましく、また片末端に二重結合を有するものが好ましい)、1,2−ヘキサデカンジオール等の炭素数16〜18の飽和炭化水素ジオール(飽和炭化水素基が直鎖状のものが好ましく、また1,2−位に各々ヒドロキシル基を有するものが好ましい)などを用いることができる。
一方、第1の粒子分散剤は、生成した金属Ptの凝集を抑制する作用を有するものが好ましく、例えば、オレイン酸等の炭素数3〜18の直鎖不飽和脂肪酸、N−2−ビニルピロリドンなどを用いることができる。
Pt化合物、還元剤及び第1の粒子分散剤は、溶媒に溶解させた溶液として用いられる。この溶媒としては、ベンジルエーテル、オクチルエーテル等のエーテル類、テトラエチレングリコール等のグリコール類、ノナデカン等の炭素数18〜20の飽和炭化水素などの有機溶媒を用いることが好ましい。
なお、溶媒溶液に溶解させるPt化合物の濃度はPt基準で0.45〜0.65mmol/L、特に0.50〜0.55mmol/Lとすることが好ましい。また、溶媒溶液に溶解させる還元剤の濃度は1.2〜1.8mmol/L、特に1.5〜1.6mmol/Lとすることが好ましい。一方、溶媒溶液に溶解させる第1の粒子分散剤の濃度は0.90〜1.5mmol/L、特に1.0〜1.2mmol/Lとすることが好ましい。
このPt化合物、還元剤及び第1の粒子分散剤を溶解させた溶媒溶液を、例えば60〜275℃、特に80〜100℃にして、必要に応じて攪拌しながら加熱することにより、Pt化合物(Ptイオン)が還元剤により還元されて、金属Pt核粒子が生成する。この反応時間は、通常5〜10分間とすることが好ましい。なお、この工程で、金属Pt核粒子が生成するが、この段階でPt化合物(Ptイオン)の全てが金属Pt核粒子として生成する必要はなく、一部は残っていてもよい。残留したPt化合物(Ptイオン)は、後の工程において更に金属Ptとして析出させることができる。
工程bは、金属Pt核粒子を生成させた後の溶媒溶液に、Fe化合物及び第2の粒子分散剤を添加、好ましくはFe化合物を添加してFe化合物を溶解させた後に第2の粒子分散剤を添加して、金属Pt核粒子上に金属Feを析出させる工程である。Fe化合物としては、例えば鉄カルボニル、鉄アセチルアセトナート、鉄エトキシドなどを用いることができる。
一方、第2の粒子分散剤は、生成した金属Feの凝集を抑制する作用を有するものが好ましく、例えば、オレイルアミン等の炭素数16〜18の直鎖不飽和脂肪族アミンなどを用いることができる。
溶媒溶液に添加するFe化合物の濃度はFe基準で0.95〜1.15mmol/L、特に0.99〜1.09mmol/Lとすることが好ましい。一方、溶媒溶液に添加する第2の粒子分散剤の濃度は0.90〜1.5mmol/L、特に1.0〜1.2mmol/Lとすることが好ましい。
このFe化合物及び第2の粒子分散剤を溶解させた溶媒溶液を、例えば100〜140℃、特に115〜125℃で必要に応じて攪拌することにより、金属Pt核粒子上に金属Feが析出する。この反応時間は、通常5〜15分間とすることが好ましい。なお、この工程で、金属Feが析出するが、この段階でFe化合物の全てが金属Feとして析出する必要はなく、一部は残っていてもよい。残留したFe化合物は、後の工程において更に金属Feとして析出させることができる。
工程cは、金属Feが析出して生成したFeとPtとを含むナノ粒子を、反応液中で185〜320℃、好ましくは225〜275℃、特に好ましくは245〜255℃の温度で熟成する工程である。この工程により、Pt原子とFe原子とが相互拡散して合金化され、PtとFeとの合金であるFePtナノ粒子が生成する。この熟成時間は、短すぎると十分な拡散がなされないおそれがあり、また、長すぎるとFePtナノ粒子の凝集を引き起こすおそれがあるため、30〜300分間、特に110〜130分間とすることが好ましい。
なお、上記工程a〜工程cは、酸化成分の生成を防ぐためにいずれもアルゴン等の不活性ガス若しくは窒素ガス雰囲気又はこれらのガスに対して数パーセントの水素を含んだ還元雰囲気で実施することが好ましい。
熟成後の反応液は、必要に応じて溶媒交換をして、磁性ナノ粒子が分散した分散液とすることができるが、ろ過等の常法に従い、生成したFePtナノ粒子を一旦分離し、再び分散媒を加えて分散液とすることも可能である。特に、遠心分離によりFePtナノ粒子を溶液から分離する際、例えば、溶媒の作用によるFePtナノ粒子の凝集・再分散を利用して、微小な粒子を除去することが可能であり、これにより、粒子径分布がより揃ったFePtナノ粒子とすることが可能である。
FePtナノ粒子中のFeとPtとの比率は、Fe:Pt=50:50〜60:40(原子比)であることが好ましい。この比率は、面心直方(L10)構造のFeとPtの合金の比率に近似するものであり、このようなFePtナノ粒子が、特に磁気異方性が高く、強い磁性を有するFePt磁性ナノ粒子を与えるものであることから好適である。
磁性ナノ粒子は、保磁力が237kA/m(3kOe)以上、好ましくは711kA/m(9kOe)以上、より好ましくは1,185kA/m(15kOe)以上、角型比が0.5以上、特に1に近いものが好適である。
本発明の磁気記録媒体の磁性材料層は、基板上に直接又は下地層を介して配列された規則化結晶磁性ナノ粒子を含むが、規則化結晶磁性ナノ粒子及び規則化結晶磁性ナノ粒子を与えるナノ粒子は、基板上に直接形成されていても、基板上に下地層を介して形成されていてもよい。この下地層としては、CoFe等の軟磁性裏打ち層など磁気記録媒体の磁性材料の下地層として用いられる従来公知の下地層が適用できる。
一方、規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆する無機材料からなる保護層としては、高温アニール処理において、相転移前のナノ粒子及び相転移後に得られる規則化結晶磁性ナノ粒子の焼結及び凝集を防ぐことができる程度の融点(例えば、500℃以上、好ましくは後述する加熱工程において適用される加熱温度(加熱保持温度)以上の温度)の無機材料であることが必要である。このような無機材料としては、Al、Si、Ru等の単体金属、AlTi、CrTi等の合金、SiO、AlO、RuO等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物等の金属化合物、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラフェンなどの炭素材料などが挙げられ、非磁性材料であることが好ましい。
この保護層は、基板上に形成された規則化結晶磁性ナノ粒子及び規則化結晶磁性ナノ粒子を与えるナノ粒子の、少なくとも基板から離間する側の表面を被覆していることが好ましく、該表面の一部又は全部を被覆していることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体の磁性材料層は、更に、保護層上に形成された規則化結晶磁性ナノ粒子と、この規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層(他の保護層)とを含んでいてもよい。具体的には、例えば、図2に示されるようなものが挙げられる。図2は、本発明の磁気記録媒体の他の例を示す断面模式図であり、この磁気記録媒体mは、基板1上に、第1の規則化結晶磁性ナノ粒子21aと、第1の規則化結晶磁性ナノ粒子21a上に形成された第1の保護層22aと、第1の保護層22a上に形成された第2の規則化結晶磁性ナノ粒子21bと、第2の規則化結晶磁性ナノ粒子21b上に形成された第2の保護層22bとからなる磁性材料層2を備える。
第2の規則化結晶磁性ナノ粒子21bと、第2の保護層22bとは、各々1層ずつのものに限定されず、各々2層以上交互に形成されていてもよい。
保護層の厚さは、いずれの場合も、1.0〜10nm、特に1.5〜5.0nmであることが好ましい。
なお、本発明の磁気記録媒体の最表面には、磁気記録媒体の磁性材料の表面保護のために用いられる従来公知の表面保護膜、例えば、SiO2をスピンコート(SOG)法により塗布した表面保護膜、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、カーボンスパッタによる炭素系の表面保護膜等を形成してもよい。
次に、本発明の磁気記録媒体の製造方法を説明する。
まず、相転移前のナノ粒子(磁性ナノ粒子)を含む分散液を調製し、この分散液を基板上に塗布して、ナノ粒子を基板上に配列する(塗布工程)。塗布方法として、具体的には、基板上にナノ粒子を含む分散液を滴下する方法、特に、分散液を滴下してスピンコート法により基板表面に塗布する方法が好適である。この塗布工程は、ナノ粒子が、基板上に分散した状態、例えば、個々のナノ粒子が独立して均一に配列した状態になるように塗布することが好ましく、ナノ粒子が、基板表面上に1〜3粒分程度、特に1粒分の厚さで層状に配列された状態がより好ましい。
この分散液は、ナノ粒子の濃度は1.0〜25g/Lが適しており、特に5.0〜20g/Lが好適である。分散液の分散媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。分散液には、ナノ粒子の製造時に用いた分散剤を、分散媒10mLに対して、例えば0.005〜0.020mL含んでいてもよい。
次に、基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる(揮発工程)。この揮発工程は、分散媒を揮発させることができるように、温度と時間を調整して実施すればよく、自然乾燥でもよい。具体的には、例えば、20〜25℃の温度で、2〜30時間とすればよい。
次に、分散媒を揮発させた後の、基板上に配列されたナノ粒子は、後述する加熱工程において急速加熱法(RTA:Rapid Thermal Anneal)を適用する場合は、必ずしも必要ではないが、基板上に配列されたナノ粒子の上には、ナノ粒子表面を被覆するように無機材料からなる保護層を形成することが好ましい(被覆工程)。この被覆工程では、スパッタリング、真空蒸着、イオンビーム蒸着等の物理気相成長法による保護層の形成が好適であるが、種々の無機材料を適用できる点から、スパッタリングにより形成することが好ましい。スパッタリングは、保護層として用いる材料に応じて、ターゲット、不活性ガス、反応性ガス等の雰囲気ガスなどを選定して、従来公知の方法で、所定の厚さに形成すればよい。
保護層上に、更に、規則化結晶磁性ナノ粒子と、この規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層(他の保護層)とを形成する場合は、上記塗布工程、揮発工程及び被覆工程を同様に繰り返せばよい。
次に、ナノ粒子、又は磁性材料層に含まれるナノ粒子及び保護層を加熱する(加熱工程)。この加熱工程により、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる。この加熱は、保護層を形成した場合には、電気炉加熱等の従来公知の加熱方法が適用できる。この場合の加熱温度(昇温後の温度)は600〜1,000℃、特に700〜800℃が好ましく、加熱保持時間(昇温後の保持時間)は0秒〜180分、特に30秒〜30分が好ましい。(なお、加熱保持時間が0秒とは、昇温後に、加熱を即時停止することを意味する。)また、保護層を形成しない場合及び保護層を形成する場合のいずれにおいても、急速加熱法(RTA)による加熱が好適である。急速加熱法(RTA)の条件として具体的には、昇温速度を100℃/min以上、好ましくは1,500℃/minとして、600〜800℃、特に700〜800℃で、0秒〜60分間、特に5秒〜5分間保持する急速加熱が好適である。急速加熱法(RTA)による加熱は、昇温と保持を1回ずつ実施しても、各々2回以上繰り返して実施してもよい。加熱工程の雰囲気は、Ar等の不活性ガス雰囲気や、水素ガスとAr等の不活性ガスとを含む還元雰囲気が好適である。
本発明は、次世代の高密度磁気記録システムとして有望視されている、例えば1Tbit/inch2以上の記録密度を有する高密度磁気記録媒体及びその製造方法として有効である。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
鉄ペンタカルボニル、白金アセチルアセトナートを金属前駆体に用い、ベンジルエーテルを合成溶媒、FePt磁性ナノ粒子の分散剤として、オレイン酸及びオレイルアミンを添加し、アルゴン雰囲気下、245℃で混合溶液を2時間保持し、その後、室温に下がるまで合成溶液を放置した。次に、粒径のふるい分け、溶媒、余剰前駆体、酸化鉄などの副生成物の除去を目的として、エタノールを加えて3,000rpmで遠心分離を行い、得られたFePt磁性ナノ粒子は、トルエン中に回収した.回収時に添加する分散剤量は、トルエン10mLに対して、それぞれ0.005〜0.020mLの間で調整した。また、トルエン溶媒に対する粒子の分散濃度については20g/Lのものを調整した。
FePt磁性ナノ粒子がトルエン中に20g/Lの濃度で分散した分散液を、Si(100)基板上に、ガラスピペットで滴下して基板表面の全面に塗布し、室温で自然乾燥させることで、基板上にFePt磁性ナノ粒子を配列し、FePt磁性ナノ粒子の層を形成した。
次に、空冷卓上型ランプ加熱装置(ULVAC社製、MILA3000)により、アルゴン・水素雰囲気(10vol%H2/Ar)で、表1に示される条件にて、急速加熱法(RTA:Rapid Thermal Anneal)により熱処理を施した。また、比較として、熱処理をしていないサンプルも準備した。
Figure 2016042399
得られたサンプルについて、X線回折(XRD)測定を実施した。サンプル番号1〜4のXRDパターンを、JCPDS文献値(L10−FePt:43−1459)と共に、図3に示す。サンプル番号1〜4のいずれも、L10相由来の回折ピークを検出した。FePt(111)面由来の回折ピークに着目すると、サンプル番号1〜3では、シャープなピーク形状になっているが、サンプル番号4では、ブロードな形状を維持していた。ピーク幅は結晶子サイズに依存し、ピーク幅がブロードになると結晶子サイズが小さくなるため、結晶子サイズを粒子の直径と考えると、L10相への相転移における、急速加熱法(RTA)の、粒子の焼結、凝集の抑制に対する有効性が確認された。また、サンプル番号1〜4について、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、粒子の状態を観察したところ、サンプル番号4では焼結、凝集がほとんど起こっていないことが確認された。
また、各熱処理条件における、FePt(111)面由来の回折ピークによる規則化度を算出した。結果を図4に示す。この結果から、サンプル番号4が、より良好な規則化度となったことがわかった。
次に、熱処理をしていないサンプル番号0及びサンプル番号4〜7のXRDパターンを、JCPDS文献値(L10−FePt:43−1459)と共に、図5、6に示す。また、得られたXRDパターンから、FePt(111)面の回折ピーク値(ピークトップの2θ値)を図7に示す。なお、図7中、破線はJCPDS文献値(L10−FePt:43−1459)でのFePt(111)面の回折ピーク値(2θ=41.0°)である。
その結果、600℃以上の温度で、熱処理により、FePt(111)面の高角度側へのシフトが確認され、L10規則化相転移が起きていることが確認された。特に、保持温度700℃以上であれば,FePt(111)面の高角度側へのシフト量が大きいため、高い割合でL10相転移が起きていることがわかった。
[実施例2]
まず、洗浄済みの2.5インチディスク型ガラス基板上に、スパッタリング装置を用いてシリコン(Si)を50〜100nm成膜した。次に、実施例1と同様の方法で得た、FePt磁性ナノ粒子が分散した分散液を、ガラス基板のシリコン(Si)膜上に、ガラスピペットで滴下した後、スピンコータを用いて基板表面の全面に塗布し、室温で自然乾燥させることで、基板上にFePt磁性ナノ粒子を配列し、FePt磁性ナノ粒子の層を形成した。
次に、FePt磁性ナノ粒子を形成した基板をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製、C−3010)のDC成膜チャンバー内に入れ、圧力を5×10-5Paにした後、アルゴンガスにより0.8Paとし、保護層としてアルミニウムチタン(AlTi)をスパッタリングにより厚さ1.5nmに成膜した。次に、基板を加熱チャンバーに移動させ、到達真空度5.6Paの減圧下にて、アルゴン・水素雰囲気(10vol%H2/Ar)で、1,500W(到達温度800℃相当)、35秒間の熱処理を1回又は5回行なった。更に、基板を300℃まで冷却したのち、CVD法によりDLC膜を表面保護膜として成膜して、磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体の磁気特性を、Kerr効果測定により評価した。結果を図8に示す。バルク状(粉末状)で10kOeの保磁力であったFePt磁性ナノ粒子は、保護層を形成して熱処理したことにより、焼結、凝集が抑制され、その結果、現行の磁気ヘッドで書き込み可能な磁化曲線(3,5〜4.3kOeの保磁力)を示すことが確認された。
次に、記録・再生試験のため、表面に潤滑剤を塗布成膜した後、磁気ヘッドとの信頼性評価を実施した。記録・再生試験を実施する半径R=23.5〜24.5mm領域において、浮上高=5nmにおいても良好な信頼性を有する磁気記録媒体であることが確認された。
更に、回転数5,400rpm、周波数95.1kFCI、対象半径23.8mm、ヘッド浮上高2nmの条件でTMRヘッドによる記録・再生試験を実施した。ヘッドが飛行した軌道付近に円周傷などは確認されなかったことから、得られた塗布成膜によるディスク型ガラス基板サンプルにおいて、2nmの浮上による磁気ヘッド飛行が達成できたことが確認された。
1 基板
2 磁性材料層
21,21a,21b 磁性ナノ粒子
22,22a,22b 保護層
m 磁気記録媒体

Claims (10)

  1. 非磁性材料からなる基板と、該基板上に形成された磁性材料層とを備える磁気記録媒体であって、
    上記磁性材料層が、上記基板上に直接又は下地層を介して形成された平均粒子径が3〜20nmの規則化結晶磁性ナノ粒子と、該規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、該規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層とを含むことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 上記保護層が、上記規則化結晶磁性ナノ粒子の基板から離間する側の表面を被覆していることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 上記規則化結晶磁性ナノ粒子が、L10−FePt磁性ナノ粒子、L10−CoPt磁性ナノ粒子又はL11−CoPt磁性ナノ粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気記録媒体。
  4. 上記無機材料が、単体金属、合金、金属酸化物、金属窒化物及び炭素材料から選ばれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
  5. 上記磁性材料層が、上記保護層上に形成された規則化結晶磁性ナノ粒子と、該規則化結晶磁性ナノ粒子表面を被覆して、該規則化結晶磁性ナノ粒子の分散状態を保持する無機材料からなる保護層を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁気記録媒体。
  6. 基板上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
    上記基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、及び
    上記ナノ粒子を急速加熱法により加熱して、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる工程
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁気記録媒体を製造する方法であって、
    上記基板上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
    上記基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、
    上記基板上に配列されたナノ粒子の上に、該ナノ粒子表面を被覆する上記無機材料からなる保護層を形成する工程、及び
    上記ナノ粒子及び上記無機材料からなる保護層を加熱して、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる工程
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  8. 請求項5記載の磁気記録媒体を製造する方法であって、
    上記基板上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
    上記基板上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、
    上記基板上に配列されたナノ粒子の上に、該ナノ粒子表面を被覆する上記無機材料からなる保護層を形成する工程、
    上記保護層上に平均粒子径が3〜20nmのナノ粒子を含む分散液を塗布する工程、
    上記保護層上に塗布された分散液中に含まれる分散媒を揮発させる工程、
    上記保護層上に配列されたナノ粒子の上に、該ナノ粒子表面を被覆する上記無機材料からなる保護層を更に形成する工程、及び
    上記ナノ粒子及び上記無機材料からなる保護層を加熱して、ナノ粒子を規則化結晶磁性ナノ粒子に相転移させる工程
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  9. 上記保護層をスパッタリングにより形成することを特徴とする請求項7又は8記載の磁気記録媒体の製造方法。
  10. 上記加熱を急速加熱法により実施することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
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