<実施の形態1>
<配電系統の構成>
図1は、本発明に係る実施の形態1の蓄電池共用システム1006aにより共用利用される蓄電池が接続される配電系統を示すブロック図であり、実線は電力の流れを、破線は蓄電池共用システム1006aからのデータの流れを示している。
電力系統1001には、需要家1002、太陽光発電(PV:Photo voltaic power generation)設備1003および蓄電池1004が接続され、商用電力(系統電力)を提供する電力会社等との間で電力の需要と供給(需給)を行う。ここで、需要家1002は、電力系統1001に接続されて電力を消費する電力ユーザである。
図1においては、需要家1002、太陽光発電設備1003(以後、PV1003と記載)および蓄電池1004は、それぞれ複数接続され、エネルギーマネジメントシステム1005(以後、EMS1005と記載)を保有する需要家1002を、需要家1002aおよび1002bとし、それぞれが保有するEMS1005を、EMS1005aおよび1005bとする。また、需要家1002dのようにEMSを保有していない場合もある。蓄電池1004は需要家1002が保有していてもよく、その場合は、PCS1007を介して、需要家1002と蓄電池1004が接続される。
また、EMS1005を保有するPV1003をPV1003cとし、保有するEMS1005を、EMS1005cとする。また、PV1003aのようにEMSを保有していない場合もある。
PV1003は、太陽光エネルギーを利用して発電を行う装置であり、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning Subsystem)1007(以後、PCS1007と記載)を介することでPV1003で発電された直流電力が交流電力に変換され、PV1003cのようにPCS1007cを介して電力系統1001に接続される場合もあり、PV1003aのようにPCS1007aを介して需要家1002aに接続される場合もある。
なお、PV1003が電力系統1001に接続される場合は、PV1003が発電した電力は系統へ売電されることとなり、PV1003が需要家1002に接続される場合は、PV1003が発電した電力は、接続される需要家1002で消費されるか、需要家1002で消費しきれない場合は、需要家が接続する電力系統1001に売電される。
EMS1005は、需要家1002の消費電力量、太陽光発電設備発電量、売電量、買電量等を管理するシステムであり、HEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)、MEMS(Mansion Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)、CEMS(Community Energy Management System)等を含んでいる。
EMS1005が管理する需要家1002が、PV1003、蓄電池1004および発電機器の何れかを保有する場合には、保有しているPV1003、蓄電池1004および発電機器の発電および蓄電電力量実績の管理や、充電、放電、発電等の制御も行う。
蓄電池1004は、PCS1007を介して電力系統1001に接続され、電力系統1001から電力を買って蓄電したり、蓄電していた電力を放電して電力系統1001に売電したりする。蓄電池1004に接続されたPCS1007は、売電や買電をするために、充電量や放電量を指示すると共に、蓄電量(SOC:State of Charge)を管理しコントロールする制御部を有するが、図示は省略している。
電力系統1001に接続する蓄電池は複数存在しても良く、図1では、蓄電池1004eおよび1004fが、それぞれPCS1007eおよびPCS1007fを介して電力系統1001に接続されている。
なお、1つの蓄電池1004には複数のPCS1007が接続されている場合もある。これは、大容量のPCS1007を導入するにはコストがかかることと、電力変換のロス特性等を考慮し、容量の小さい複数のPCS1007を蓄電池1004に接続する場合があるためである。
蓄電池共用システム1006aは、複数のEMS1005、複数の蓄電池1004および蓄電池系統運用者等(図示されず)との通信を行い、蓄電池1004を共用利用するために、各EMS1005から蓄電池1004の利用リクエストを受け付け、電力ロスの小さいスケジュールを作成して蓄電池1004へ送信する機能を有している。
<蓄電池共用システムの全体構成>
図2は、本発明に係る実施の形態1の蓄電池共用システム1006aの全体構成を示すブロック図である。
図2に示すように、蓄電池共用システム1006aは、蓄電池1004の利用契約を受け付ける契約受付部10100、契約受付部10100で受け付けた契約内容を保持する契約情報記憶部10101、蓄電池1004の利用予定を受け付ける蓄電池利用予定受付部10102、蓄電池利用予定受付部10102で受け付けた蓄電池1004の利用予定を記憶する蓄電池利用予定記憶部10103を備えている。
また、需要家1002、PV1003および蓄電池1004等(これらを電力機器と総称)の配電網上の位置情報を少なくとも含む配電網情報を記憶する配電網情報記憶部10104、充電ロス、放電ロス、送電ロス、変圧器による変圧の際の変圧ロス等の電力ロス情報を記憶するロス情報記憶部10105、蓄電池1004の充電、放電の指示値および時間等の蓄電池スケジュールを作成する蓄電池スケジュール作成部10107を備えている。
また、蓄電池スケジュール作成部10107で作成した蓄電池スケジュールを記憶する蓄電池スケジュール記憶部10108、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールと、実績管理部10110から取得する蓄電池1004の実績値に基づいて蓄電池1004への制御指令を送る蓄電池制御指令部10109を備えている。
また、蓄電池1004の蓄電量と、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールから得られる蓄電量情報(蓄電量と所有者を紐付けした情報)を作成して蓄電量記憶部10111に与える実績管理部10110と、実績管理部10110から与えられる蓄電量情報を記憶する蓄電量記憶部10111を備えている。
また、契約情報記憶部10101に記憶された契約情報と、蓄電量記憶部10111に記憶された蓄電量情報と、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールに基づいて、契約した制御主体に対して、蓄電池の利用料、電力ロス最小化のためにかかった費用等の料金を計算し、各制御主体に向けて精算情報を送信する料金精算部10112と、蓄電池共用システム1006aの管理する蓄電池1004の情報を記憶する蓄電池情報記憶部10115を備えている。
<蓄電池共用システムの機能>
図2に示した蓄電池共用システム1006aは、管理下にある蓄電池1004を利用したい制御主体(EMS1005、系統運用者、他の蓄電池共用システム、CEMS等)と契約を行い、契約を締結した制御主体からの蓄電池利用予定を受け付け、電力ロスの小さい最適な蓄電池スケジュールを作成する。そして、作成した蓄電池スケジュールに基づいて蓄電池1004に制御指令を行い、蓄電池1004の蓄電量を管理すると共に、蓄電池1004の蓄電量に対して使用する権利を有する者(所有者)を管理する。また、契約した制御主体に対して、蓄電池の利用料、電力ロス最小化のためにかかった費用等の料金を計算し、精算する。
<契約時の動作>
まず、契約時の動作について説明する。蓄電池1004を共用利用したい制御主体(EMS1005、系統運用者、他の蓄電池共用システム、CEMS等)は、利用する前に、蓄電池1004を管理している蓄電池共用システム1006aと、予め利用契約を結んでおく。
蓄電池情報記憶部10115には、蓄電池共用システム1006aが管理する蓄電池1004の情報が記憶されている。蓄電池1004の情報とは、例えば、蓄電池1004のID番号、蓄電容量、配電網に対する蓄電池の位置、蓄電池1004に接続されるPCS1007の個数、最大充電速度、最小充電速度、最大放電速度、最小放電速度等である。
契約受付部10100は、蓄電池1004を利用したい制御主体から、蓄電池の利用契約を受け付け、その契約内容を契約情報として契約情報記憶部10101に記憶する。
契約受付部10100は、蓄電池情報記憶部10115から、蓄電池共用システム1006aの管理下にある蓄電池1004の情報を取り出し、契約可否や契約料を判断する構成を採っても良い。
契約情報記憶部10101に記憶される契約情報とは、蓄電池の契約利用容量、蓄電池の利用容量に応じた利用料金プラン、蓄電ポリシー、蓄電ポリシーへの対応が困難な場合の対応方法等である。
蓄電ポリシーとしては、契約利用容量を超えた場合への対応方法(契約利用容量を超えた場合も蓄電や放電を行い、後で超過料金の精算を行う、契約利用容量を超えた場合は蓄電、放電を停止する等)、利用蓄電池の配電網上の位置的制限(需要家から配電網を辿った場合に、変圧器を介した位置の蓄電池には蓄電しない等)、利用予定の実現が困難な場合の対応方法(利用蓄電池の位置的制限を超えても良い、蓄電池を利用しない等)、優先的に利用する蓄電池の情報とその優先度および優先度に対する料金、などが挙げられる。
蓄電ポリシーへの対応が困難な場合の対応方法とは、蓄電池利用予定受付部10102で受け付けた需要家1002の蓄電池利用予定や蓄電池スケジュール作成部10107で作成するスケジュールが、上記蓄電ポリシーを満たせない場合の対応方法であり、EMS1005への確認や理由の通知および利用予定変更のためのメッセージの送信や違約金を支払う等が挙げられる。
<スケジュール作成動作>
次に、蓄電池共用システム1006aにおけるスケジュール作成動作について説明する。蓄電池1004を共用利用したい制御主体(EMS1005、系統運用者、他の蓄電池共用システム、CEMS等)は、蓄電池を利用する前に、蓄電池利用予定を蓄電池共用システム1006aに送信する。
蓄電池共用システム1006aの蓄電池利用予定受付部10102は、蓄電池1004を共用利用したい制御主体からの蓄電池利用予定を受け付け、蓄電池利用予定情報として蓄電池利用予定記憶部10103に記憶する。このとき、蓄電池利用予定受付部10102は、契約情報記憶部10101の記憶内容を参照し、契約情報と蓄電池利用予定との差異を確認し、契約外の需要家からの予定ではないか、契約利用量を逸脱した利用予定ではないか等の確認を行う。そして、蓄電池利用予定受付部10102は、蓄電池1004から送信されてきた利用予定の受付可否、および契約情報と利用予定の差異の詳細等の受付結果を、蓄電池利用予定を送信してきた制御主体に送信する。
ここで、蓄電池1004の利用予定を受け付ける時刻は、実際に利用する時間より予め定めた時間(例えば1時間)前に受け付けるようにしても良いが、1日1回、定刻に1日以上(例えば24時間、36時間、48時間)の範囲の予定を受け付けても良い。
この場合、先に受け付けた時間分の利用予定が終了しないうちに、次の時間分の利用予定を受け付けることになるが、この場合は、後に受け付けた利用予定を優先させる。このとき、利用予定を上書きしてしまう方法と、利用予定の変更前、変更後をどちらも保存しておく方法がある。変更前と変更後の両方を保存しておく方法では、変更前と変更後の差がどの程度違うかという統計を取ることで、頻繁に予定を変更するユーザなのかそうでないのかということを知ることができ、蓄電池スケジュール作成部10107で、ユーザの予定変更を想定してスケジュールの割り当ての方法を変えることも可能となる。
例えば、毎日0時に36時間分の利用予定を受け付ける場合、利用予定が12時間分重複することになるが、例えば、23時付近のスケジュールを作るときには、次の日の0時以降の予定が来ているため、先を見越したスケジュールを作ることができる。
なお、上記では24時間周期で利用予定を受け付ける例を示したが、もっと短い周期で受け付けても良い。例えば、電気自動車等を含む充放電スケジュール作成システム等では、到着や出発が遅れる可能性がある電気自動車等の運用に不確実な部分がある電力消費/発電媒体が存在することを前提としており、1時間周期でスケジュールを見直したり、立て直すというようなこともしているので、このようなシステムに対応する場合には、利用予定の受け付け周期を短くしても良い。
<蓄電池利用予定情報の例>
蓄電池利用予定記憶部10103に記憶される蓄電池利用予定情報としては、例えば、以下の(A)〜(C)の情報が挙げられる。
(A)蓄電池の指定の有無(蓄電池を指定する場合は蓄電池のID番号等を含む)、制御開始時刻、制御終了時刻、充電/放電の類別、充電電力量/放電電力量の情報。
(B)蓄電池の指定の有無(蓄電池を指定する場合は蓄電池のID番号等を含む)、制御開始時刻、制御終了時刻、充電/放電の類別、充電電力/放電電力(充電速度/放電速度)の情報。
(C)蓄電池の指定の有無(蓄電池を指定する場合は蓄電池のID番号を含む)、制御開始時刻、制御終了時刻、充電/放電の類別、充電電力/放電電力(充電速度/放電速度)、制御開始時刻の変更可能幅、制御終了時刻の変更可能幅、可能な分割数の情報である。
上述した情報(A)の場合は、制御開始時刻から制御終了時刻までの間に、指定の電力量を充電または放電すれば良いので、制御開始時刻から制御終了時刻までの間であれば、いつ充電または放電を行っても良いという利点がある。これは電力量(Wh)が、電力(W)×時間(h)で定義され、一定時間で指定の電力量を充電または放電すれば良いからである。また、充電速度、放電速度も一定である必要はない。
また、情報(B)の場合は、制御開始時刻から制御終了時刻までの間の電力(W)を指定するので、制御開始時刻から制御終了時刻の間、指定の電力で充電または放電を行うこととなる。
また、情報(C)の場合は、制御開始時刻が例えば13:00の場合、制御開始時刻の変更可能幅が1時間であれば、12:00から制御を開始することができる。制御終了時刻が例えば14:00の場合、制御終了時刻の変更可能幅が2時間であれば、16:00までに制御を終了すればよい。また、可能な分割数が例えば2つの場合に、変更前の制御開始時刻が13:00、制御終了時刻が14:00であったとすると、制御開始時刻の変更可能幅が1時間、制御終了時刻の変更可能幅が2時間の場合には、12:00〜12:30、15:50〜16:00と言うように、合計の制御時間が制御時刻の変更前の1時間と同じであれば、2回に分けて制御を行っても良いことを表している。
蓄電池スケジュール作成部10107は、契約情報記憶部10101に記憶された契約情報、蓄電池情報記憶部10115に記憶された蓄電池情報、蓄電池利用予定記憶部10103に記憶された蓄電池利用予定、配電網情報記憶部10104に記憶された配電網情報、ロス情報記憶部10105に記憶された電力ロス情報、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュール、蓄電量記憶部10111に記憶された蓄電量に基づいて蓄電池1004の利用スケジュールを作成し、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶する。当該スケジュールの作成方法の詳細については後述する。
<蓄電池スケジュールの例>
蓄電池スケジュール記憶部10108には、蓄電池スケジュールが、それを利用するEMSと組み合わせて記憶される。
蓄電池スケジュールとしては、例えば、以下の(A)、(B)の情報が挙げられる。
(A)需要家の管理番号、蓄電池のID番号、制御開始時刻、制御終了時刻、充電/放電の類別、充電電力/放電電力の情報。
(B)需要家の管理番号、蓄電池のID番号、制御変更時刻、充電/放電の類別、充電電力/放電電力の情報。
なお、上記(B)の情報で、充電電力/放電電力を0とすることで停止する。
<配電網情報の例>
配電網情報記憶部10104に記憶される配電網情報や、電力系統における需要家1002、PV1003および蓄電池1004等の接続情報は、系統運用者から入手することができる。
配電網情報記憶部10104に記憶される配電網情報の例を、図3および図4を用いて説明する。
図3は、配電網の一例を示すブロック図である。図3においては、変電所100に接続される6.6kVの送電線には、高圧需要家107および6.6kVの電圧を100Vに変圧する変圧器105および106が接続されている。そして、変圧器106に接続される100Vの送電線には、低圧需要家110、111、112および113と蓄電池114が接続されている。そして、低圧需要家112は、太陽光発電設備115(PV115)を有し、低圧需要家113は蓄電池116を有している。
なお、送電線は分岐ノードを介して分岐し、変電所100に直結される送電線は、分岐ノード102によって2つに分岐され、分岐された送電線の一方は分岐ノード103に接続され、他方は分岐ノード101に接続されている。
分岐ノード103は、送電線を2つに分岐するノードであり、分岐された送電線の一方は変圧器106に接続され、他方は分岐ノード104に接続されている。
また、分岐ノード101を介して変圧器105が接続され、分岐ノード104を介して高圧需要家107が接続されている。
また、変圧器106には分岐ノード108が接続されている。分岐ノード108は、送電線を3つに分岐するノードであり、分岐された3つの送電線には、それぞれ低圧需要家110、111および分岐ノード109が接続されている。
分岐ノード109は、送電線を3つに分岐するノードであり、分岐された3つの送電線には、それぞれ低圧需要家112、113および蓄電池114が接続されている。
図4は、図3に示す配電網を木構造で表した図であり、図3に示した各構成をノードとして表している。
すなわち、変電所100、変圧器105および106は、それぞれ変圧器ノード100、105および106として表され、高圧需要家107、低圧需要家110、111、112および113は、それぞれ需要家ノード107、110、111、112および113として表され、蓄電池114および116は、それぞれ蓄電池ノード114および116として表され、PV115はPVノード115として表されている。
各ノードはID、種別、容量等の情報を有し、例えば、変圧器ノードは変圧前後の電圧値、太陽光発電設備ノード、蓄電池ノードはPCSの種類や定格出力等の情報を有している。
また、ノード間のブランチは送電線を表し、距離と電圧の情報を有している。例えば、分岐ノード102と分岐ノード103の間のブランチは、電圧6.6kVで距離0.5kmであるという情報を有している。
この木構造を用いることで、配電網の経路情報を入手することができる。なお、電力系統は開閉器により配電経路の切り替えが行われるため、図4の木構造に、ノードとして開閉器を含め、電力系統の切り替えが行われたときに、配電網情報を容易に変更できるようにしても良い。
なお、上記では配電網情報を木構造で示したが、グラフを用いて表すこともでき、また、テーブル形式で表しても良い。
図5には、需要家、太陽光発電設備および蓄電池の情報を、1対1の総当たりテーブルで表した例を示しており、例えば、高圧需要家107からPV115までの間の6.6kVの送電線の距離や、変圧器の定格などが示されている。
なお、テーブルの内部には需要家間の経路(電圧と送電距離、変圧器の数と種類、PCSの個数と種類等)の情報を持たせても良い。
<電力ロス情報の例>
ロス情報記憶部10105には、蓄電池への充電時の充電ロス、放電時の放電ロスや、配電網を送電する際の送電ロス、変圧器による変圧の際の変圧ロス等の電力ロス情報が記憶されている。
例えば、充電時の充電ロス、放電時の放電ロスなどの電力ロス情報は、例えば図6、図7および図8にそれぞれ示すように、PCSの定格出力、気温および充放電速度をパラメータとしたロス率のグラフで表される。
図6では、横軸にPCSの定格出力を、縦軸にロス率(%)を示しており、PCSの定格出力が小さいとロス率が大きく、PCSの定格出力が大きくなるとロス率が小さくなり、一定の値に近づくことが示されている。
図7では、横軸に気温を、縦軸にロス率(%)を示しており、0°付近を最小値として気温が上がっても、気温が下がってもロス率が大きくなることが示されている。
図8では、横軸に充放電速度を、縦軸にロス率(%)を示しており、縦軸を中心として横軸の右側に充電速度を示し、左側に放電速度を示しており、充電も放電も速度が低いうちはロス率が大きく、速度が高くなるにつれてロス率が小さくなり、最大充電速度および最大放電速度でロス率が最も小さくなることが示されている。
なお、上記ではグラフでロス率を表したが、数式で記憶させても良く、テーブルで記憶させても良い。また、蓄電池の製造メーカー、製造年度、型番ごとに記憶させても良く、ロス率ではなく電力変換効率で記憶させても良い。また、複数のパラメータを持つ数式やテーブルとして記憶させても良い。また、複数の数式やパラメータの組み合わせからロス率や電力変換効率を計算して記憶させても良い。
また、送電ロスは、送電距離、送電電圧、気温等をパラメータとした送電時のロス率をグラフ、数式、テーブルで記憶させる。
また、変圧ロスとしては、柱上変圧器で変圧を行う際の変圧ロス率、配電用変電所での変圧ロス率等が含まれており、変圧(例えば、6.6kVから100Vに変圧)前後の電圧をパラメータとして、グラフ、数式、テーブルで記憶させる。また、気温をパラメータとするロス率を記憶させても良い。
<蓄電池スケジュールの作成方法>
次に、蓄電池スケジュール作成部10107における蓄電池スケジュールの作成方法について詳しく説明する。以下では、時刻t1〜時刻t2の間のスケジュールを作成する場合について説明する。
図9は蓄電池スケジュールの作成方法の概略を示すフローチャートであり、まず、蓄電池と蓄電池利用予定需要家の組み合わせを作成し、その組み合わせに対する優先度を作成する(ステップS1)。その後、優先度に基づいて、蓄電池に蓄電池利用予定の割当を行う(ステップS2)。
図10は、上述したステップS1の動作をさらに説明するフローチャートである。蓄電池スケジュール作成部10107は、まず、蓄電池利用予定記憶部10103から蓄電池利用予定情報を取得し、蓄電池の利用予定がある全ての需要家を抽出する(ステップS10)。なお、契約情報記憶部10101から契約情報を取得し、蓄電池の利用契約をしている全ての需要家を抽出することでも良い。
次に、契約情報記憶部10101から契約情報を取得し、当該契約情報の蓄電ポリシーに優先的に利用する蓄電池の情報とその優先度が含まれるか否かを判定する(ステップS11)。
ステップS11において優先的に利用する蓄電池の情報とその優先度が含まれると判定された場合は、契約需要家に対して優先的に利用する蓄電池の優先度に基づいて、利用蓄電池と優先度を決定する(ステップS12)。なお、ステップS11において優先的に利用する蓄電池の情報とその優先度がないと判定された場合はステップS13に進む。
蓄電池と蓄電池利用予定需要家の組み合わせおよびその優先度の例としては、需要家1002aが蓄電池1004aを最優先に利用する契約の場合は、「需要家1002a、蓄電池1004a、優先度1」とする。なお、以下においては、説明の便宜的上、需要家には「1002a」等の符号を付け、蓄電池には「1004a」等の符号を付けるが、これは必ずしも図面に表されるものではない。
ここで、1つの蓄電池1004aが複数の需要家と同じ優先度の契約を行っている場合には、優先度の中にさらに優先順位を設けても良い。例えば、需要家1002aと需要家1002dが、共に蓄電池1004aを最優先に利用する契約の場合、先に契約した需要家1002aの優先順位を高くすることで、「需要家1002a、蓄電池1004a、優先度1、優先順位1」、「需要家1002d、蓄電池1004a、優先度1、優先順位2」とする。また、ここでは優先度、順線順位は数値の小さい方を優先とするように定義しているが、数値の大きい方を優先するように定義したり、順序が明らかな指標であれば数値以外で表したりしてもよい。
また、需要家1002bが蓄電池1004aのみを利用する契約の場合は、「需要家1002b、蓄電池1004a、優先度2」とする。
また、需要家1002cが複数の蓄電池(蓄電池1004a、1004bおよび1004c)を利用する契約の場合、「需要家1002c、蓄電池1004a、優先度3」、「需要家1002c、蓄電池1004b、優先度3」、「需要家1002c、蓄電池1004c、優先度3」とする。
ここで、図10の説明に戻る。蓄電池スケジュール作成部10107は、契約情報記憶部10101から契約情報を取得し、契約情報記憶部10101に記憶されている契約情報の蓄電ポリシーに、利用蓄電池の配電網上の位置的制限が含まれているか否かを判定する(ステップS13)。
ステップS13において蓄電ポリシーに利用蓄電池の配電網上の位置的制限が含まれていると判定された場合は、契約情報と、配電網情報記憶部10104から取得する配電網情報に基づいて、蓄電池の位置的制限内に存在する蓄電池を網羅的に探索し、その個数によって優先度を決定する(ステップS14)。
例えば、蓄電池が1つの場合は優先度2、複数の場合は優先度3などとし、需要家1002bの蓄電池位置の制限内に蓄電池1004aのみが存在する場合は、「需要家1002b、蓄電池1004a、優先度2」とし、需要家1002cの蓄電池位置の制限内に複数の蓄電池(蓄電池1004a、1004b、1004c)が存在する場合は、「需要家1002c、蓄電池1004a、優先度3」、「需要家1002c、蓄電池1004b、優先度3」、「需要家1002c、蓄電池1004c、優先度3」とする。
なお、ステップS13において蓄電ポリシーに利用蓄電池の配電網上の位置的制限が含まれていないと判定された場合はステップS19に進む。
次に、蓄電池スケジュール作成部10107は、ステップS12で決定した優先度が存在するか否かを判断し(ステップS15)、ステップS12で決定した優先度が存在する場合は、ステップS12で決定した優先度と、ステップS14で決定した優先度とを比較し、優先度の高い方(数字の小さい方)を採用する(ステップS16)。
一方、ステップS12で決定した優先度が存在しない場合は、ステップS14で決定した優先度を採用する(ステップS18)。
ステップS19では、ステップS12で決定した優先度が存在するか否かを判断し、ステップS12で決定した優先度が存在する場合は、ステップS13で決定した優先度を採用する(ステップS20)。
一方、ステップS12で決定した優先度が存在しない場合は、蓄電池スケジュール作成部10107は、ロス情報記憶部10105から電力ロス情報を取得すると共に、契約情報記憶部10101から取得した契約情報、配電網情報記憶部10104から取得した配電網情報とに基づいて、蓄電池と蓄電池利用予定需要家の組み合わせを決定すると共に、その組み合わせでの送電ロスおよび充電ロスを計算して、優先度を決定する(ステップS17)。
より具体的には、配電網情報に基づいて、特定の需要家の配電網上の位置から網羅的な探索を行い、当該特定の需要家への送電ロスが、平均的な蓄電ロスよりも小さい領域内に存在する蓄電池を検出する。なお、平均的な蓄電ロスとは、一般的な蓄電ロスの値を用いれば良い。
以下、図4に示した配電網の木構造を用いて、需要家ノード112が利用する蓄電池を探索する例を説明する。
ノードAでの送電ロスをL(A)、ノードAとノードBの間のブランチ(A,B)を送電する際のロスをL(A,B)と表すと、L(A,B)は、ブランチ(A,B)が持つ送電電圧、距離および電圧と距離に応じた送電ロス(電力ロス情報に含まれる)に基づいて計算により求められる。
ノードAの送電ロスL(A)は、ノードAが分岐ノードの場合は非常に小さいが、ノードAが変圧器ノードの場合は、変圧器ノードの持つ変圧前後の電圧と、電力ロス情報に含まれる変圧前後の電圧に応じた電力ロスに基づいて計算する。一般的には、分岐ノードよりも変圧器ノードの方が送電ロスが大きい。
図4において、需要家ノード112から順に他のノードに対する送電ロスを計算しながら配電網を探索する場合、例えば、需要家ノード112から需要家ノード110までの送電ロスL(112,110)は、L(112,110)=L(112,109)+L(109)+L(109,108)+L(108)+L(108,110)で計算され、送電のみのロスであるため、あまり大きくはなく、平均的な蓄電ロスを超えることはない。
また、需要家ノード112から分岐ノード103までの送電ロスL(112,104)は、L(112,104)=L(112,109)+L(109)+L(109,108)+L(108)+L(108,106)+L(106)+L(106,103)で計算され、変圧器ノード106での送電ロスが大きいため、平均的な蓄電ロスを超えることとなる。
このようにして需要家ノード112から配電網を探索し、需要家ノード112への送電ロスが、平均的な蓄電ロスよりも小さい領域内に存在する蓄電池を検出すると、蓄電池ノード1014および蓄電池ノード1016が検出されることとなる。
このようにして検出された蓄電池ノードが複数である場合は、優先度を3とし、1つである場合は優先度を2とする。
一方、特定の需要家ノードへの送電ロスが、平均的な蓄電ロスよりも小さい領域内に存在する蓄電池ノードが1つも存在しない場合には、送電ロスの制限をゆるめて探索範囲を広げ、できるだけ送電ロスの小さい蓄電池ノードを検索する。この場合、できるだけ送電ロスの小さい蓄電池が1つの場合には優先度を4とする。また、送電ロスが僅差の蓄電池ノードが複数ある場合には、優先度を5とする。
このようにして、蓄電池と蓄電池利用予定需要家の組み合わせを決定すると共に、その組み合わせでの優先度を決定するが、スケジュール作成時に毎回実行せずとも、月に1度や配電網の変更時、管理蓄電池の情報や契約需要家の契約情報更新、変更時に実行しても良い。
以上説明したように、ステップS10〜S20を経ることで、蓄電池と蓄電池利用予定需要家の組み合わせに対する優先度を決定することができる。
次に、図9においてステップS2として示した、優先度に基づいて蓄電池に蓄電池利用予定の割当を行う動作を説明する。
図11は、上述したステップS2の動作をさらに説明するフローチャートである。図11に示すように、蓄電池スケジュール作成部10107は、蓄電池に利用予定の割当を行う前に、時刻t1の蓄電池の蓄電予定量を計算する(ステップS21)。
このために、蓄電池スケジュール作成部10107は、蓄電池情報記憶部10115から、蓄電池共用システム1006aの管理下にある蓄電池1004の蓄電池情報を取得する。このとき、管理下にある蓄電池が蓄電池1004a〜1004cの3つであるものとする。
そして、蓄電池スケジュール作成部10107は、蓄電量記憶部10111から蓄電池1004a〜1004cの蓄電量を取得すると共に、蓄電池スケジュール記憶部10108から蓄電池1004a〜1004cの蓄電池スケジュールを取得する。そして、取得した蓄電量および蓄電池スケジュールに基づいて、蓄電池1004a〜1004cの時刻t1での蓄電予定量を計算する。
次に、蓄電池スケジュール作成部10107は、蓄電池利用予定記憶部10103から、時刻t1〜時刻t2の間に蓄電池1004a〜1004cを利用する蓄電池利用予定と、その蓄電池利用予定を登録した需要家の情報を取得し、図10に示したステップS10〜S20を経て得られた「蓄電池と蓄電池利用予定需要家の組み合わせおよびその優先度」を需要家ごとから、利用予定ごとに変更する(ステップS22)。
例えば、需要家1002cが時刻t1〜時刻t2の間に2つの利用予定、利用予定b1と、利用予定b2を持っている場合、「需要家1002b、蓄電池1004a、優先度1」となっているのであれば、それを「需要家1002b、利用予定b1、蓄電池1004a、優先度1」と、「需要家1002b、利用予定b2、蓄電池1004a、優先度1」に変更する。
また、利用予定に蓄電池の指定情報が含まれていた場合には、蓄電池を指定の蓄電池に変更し、優先度を1に変更する。例えば、利用予定b1に蓄電池1004bを利用するという情報が含まれていた場合、「需要家1002b、利用予定b1、蓄電池1004a、優先度2」という予定を、「需要家1002b、利用予定b1、蓄電池1004b、優先度1」に変更する。
次に、蓄電池スケジュール作成部10107は、蓄電池ごとにスケジュールを並べ変え、蓄電池ごとにスケジュールの割り当てを行う(ステップS23)。このときは、優先度1、優先度2、優先度4の利用予定を割り振る。
ステップS23の処理をより具体的に説明すると、まず、蓄電池1004aに割り当てられた利用予定のうち、優先度1、優先度2および優先度4の利用予定を抽出する。
次に、抽出した利用予定について、制御開始時刻、制御終了時刻の時間変更が不可能な利用予定、電力を指定している利用予定について、時刻t1〜t2の間の各時刻t(刻みは30分単位、60分単位など任意)における充電利用予定、放電利用予定の予定電力を集計する。例えば、同一時刻に充電と放電の両方が予定されている場合について説明する。
ここで、放電電力>充電電力の場合、時刻tでの蓄電池1004aへの指令は放電指示となり、放電電力は放電電力から充電電力を差し引いた差分値となる。
一方、放電電力<充電電力の場合、時刻tでの蓄電池1004aへの指令は充電指示となり、充電電力は充電電力から放電電力を差し引いた差分値となる。
時刻t1〜t2の間、この割り当てを繰り返し行い、各時刻の蓄電池スケジュールを作成する。それぞれの利用予定を持つ需要家EMSへの指令は、放電希望の場合は買電、充電希望の場合は売電とする。発電設備のない需要家で充電希望の場合は、特に何も指示はしない。
次に、蓄電池スケジュール作成部10107は、抽出した利用予定について、制御開始時刻、制御終了時刻の時間変更が可能な利用予定および電力ではなく電力量を指定している利用予定について、蓄電池のスケジュールの各時刻tの充電電力および放電電力がなるべく小さくなるように、かつ、蓄電池の蓄電量が蓄電容量を超えないように割り当てる。
また、電力量を指定している利用予定については、できるだけ制御時間を分割せずに割り当てるが、蓄電池の制約を超えてしまう場合には、制御時間を分割しても良いし、充放電を行う蓄電池を複数に分けても良い。
例えば、10kWhの充電であれば、5kWhを蓄電池1004a、5kWhを蓄電池1002bに充電すると言った割り当ても可能である。それぞれの利用予定を持つ需要家EMSへの指令は、放電希望の場合は買電、充電希望の場合は売電とする。発電設備のない需要家で充電希望の場合は、特に何も指示はしない。
以上説明した優先度1、優先度2および優先度4の利用予定の割り振りを、蓄電池共用システム1006aの管理下にある全蓄電池、ここでは蓄電池1004a〜1004cに対して実施する。
次に、蓄電池スケジュール作成部10107は、優先度3、優先度5の利用予定を蓄電池に割り振る。
ステップS23で、優先度1、優先度2、優先度4の利用予定を蓄電池に割り振った後に、時刻t1〜t2の間の各時刻tでの指令値が、それぞれ蓄電池の最大蓄電量、最小蓄電量、最大充電速度および最大放電速度等の制限を超えていないか、また、蓄電池の蓄電量が蓄電容量を超えないかを確認し、何れかの制限(蓄電池制限)を超えている蓄電池を抽出する(ステップS24)。なお、制限(蓄電池制限)は蓄電池情報記憶部10115に記載されている。
そして、該当する蓄電池に対しては、優先度3、優先度5の利用予定を割り振り、優先度3、優先度5の利用予定を用いて、上記の蓄電池制限内に収まるように調整する(ステップS25)。
このとき、どのような割り当てであっても、蓄電池制限を超えてしまう蓄電池が存在する場合は、契約情報に基づいて、その蓄電池の利用予定を登録した需要家にEMSを通じて通知等を行うか、すでに割り当てられている優先度1、優先度2、優先度4の利用予定の割り当てを解除する(ステップS26)。このような制限(蓄電池制限)を超えたときの対応方法は 契約情報記憶部10101に記憶される蓄電ポリシーに含まれる契約利用容量を超えた場合への対応方法や、契約情報記憶部10101に記憶される蓄電ポリシーへの対応が困難な場合の対応方法を用いる。
割り当てを解除された優先度1、優先度2、優先度4の利用予定は、優先度1または2の利用予定の場合は優先度3に変更し、優先度4の利用予定の場合は優先度5に変更し、契約情報に基づいて、どの需要家のどの予定を変更したかの通知を行う。このような優先度の変更や通知の方法については 契約情報記憶部10101に記憶される蓄電ポリシーに含まれる契約利用容量を超えた場合への対応方法や、契約情報記憶部10101に記憶される蓄電ポリシーへの対応が困難な場合の対応方法を用いる。
なお、ステップS24の処理により蓄電池制限を超えなかった蓄電池、ステップS25の処理により蓄電池制限を超えることがなくなった蓄電池およびステップS26の処理により蓄電池制限を超えなかった蓄電池に対しては、優先度3と優先度5の利用予定を割り当てる。この場合、時刻t1〜t2の間の各時刻tでの充電電力、放電電力がなるべく小さくなるように最適の優先度を割り当てる(ステップS27)。
ステップS27の処理の後の蓄電池に対し、ステップS28において、時刻t1〜t2の間の各時刻tでの指令値が、それぞれ蓄電池の最大蓄電量、最小蓄電量、最大充電速度および最大放電速度等の制限を超えていないか、また、蓄電池の蓄電量が蓄電容量を超えないかを確認し、何れかの制限(蓄電池制限)を超えている蓄電池を抽出する。なお、制限(蓄電池制限)は蓄電池情報記憶部10115に記載されている。
そして、ステップS28で抽出された蓄電池に対し、蓄電池制限を超えてしまう蓄電池が存在する場合は、契約情報に基づいて、その蓄電池の利用予定を登録した需要家にEMSを通じて通知等を行うか、他の蓄電池共用システムの蓄電池を一時的に利用するよう、他の蓄電池共用システムの蓄電池利用予定受付部10102に、利用予定を登録する。なお、当該他の蓄電池共用システムへの利用料の支払いは蓄電池共用システム1006aが負担する。このような制限(蓄電池制限)を超えたときの対応方法は 契約情報記憶部10101に記憶される蓄電ポリシーに含まれる契約利用容量を超えた場合への対応方法や、契約情報記憶部10101に記憶される蓄電ポリシーへの対応が困難な場合の対応方法を用いる。
なお、以上説明した利用予定の割り当て処理については、上記に記載したものでなくともよく、組み合わせ最適化問題等を解いて、割り当てても良いし、決められたパターンに従って割り当てても良い。
<制御動作>
次に、蓄電池共用システム1006aによる蓄電池の制御動作について説明する。蓄電池の制御は蓄電池制御指令部10109が行い、蓄電池制御指令部10109は、蓄電池スケジュール記憶部10108から蓄電池スケジュールを取得すると共に、実績管理部10110から蓄電池1004の実績値を取得し、それらに基づいて、蓄電池1004への制御指令を作成して蓄電池1004に送る。
蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶される蓄電池スケジュールには、例えば、以下の(A)、(B)の情報を含んでいる。
(A)需要家の管理番号、蓄電池のID番号、制御開始時刻、制御終了時刻、充電/放電の類別、充電電力/放電電力の情報。
(B)需要家の管理番号、蓄電池のID番号、制御変更時刻、充電/放電の類別、充電電力/放電電力の情報。
上述した情報(A)の場合は、制御開始時刻に当該蓄電池に制御指令(充電/放電の類別、充電電力/放電電力)を送信し、制御終了時刻に停止指令を送信する。もしくは、制御終了時刻と、次のスケジュールの制御開始時刻が同じ場合には、次のスケジュールの制御指令(充電/放電の類別、充電電力/放電電力)を送信する。
また、情報(B)の場合は、制御変更時刻に当該蓄電池に制御の指令(充電/放電の類別、充電電力/放電電力)を送信する。
蓄電池の制御前に準備の時間が必要な場合は、蓄電池の利用に必要な準備時間を考慮し、制御開始時刻や制御変更時刻の前に、蓄電池に準備開始指令を送っても良い。
蓄電池スケジュールは、上記情報(A)および(B)のように、需要家別に分かれて記録されているが、蓄電池制御指令部10109では、蓄電池ごとにスケジュールを統合して指令する。
例えば、「需要家1002a、蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、充電電力1kW」、「需要家1002b、蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、充電電力2kW」のような蓄電池スケジュールの場合、蓄電池制御指令部10109は、この2つのスケジュールを統合し、蓄電池1004aに、時刻t1に充電電力3kWを充電するように指令する。
また、蓄電池1004が複数のPCS1007を持つ場合、それぞれのPCSの電力ロス特性を考慮し、各々のPCSに指示する充放電電力を最適制御して割り振っても良い。
蓄電池1004に接続されるPCS1007の情報は、蓄電池情報記憶部10115から取得し、電力ロス特性は、ロス情報記憶部10105から取得する。
例えば、蓄電池1004aに定格出力3kWのPCS1007aと定格出力3kWのPCS1007bが接続されている場合において、3kWの充電スケジュールを指令する場合を想定する。
両PCSの電力ロス特性が、定格出力に近いほど効率がいい場合には、蓄電池1004aに対して、PCS1007aおよびPCS1007bのどちらか一方を用いて3kWの充電を行う指令を出す。
また、PCSの電力ロス特性が、定格出力の50%に近いほど効率がいい場合には、蓄電池1004aに対して、PCS1007および1007bを用いて、それぞれ1.5kWの充電を行う指令を出す。
なお、蓄電池共用システム1006aからは、3kW充電という制御指令を蓄電池1004aの(PCSに含まれる)制御部に送信し、蓄電池1004aの制御部において、接続されるPCS1007aおよび1007bの電力ロス特性を考慮して割り振りを行う構成としても良い。
実績管理部10110は、蓄電池1004の蓄電量と、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールに基づいて、蓄電量情報(所有者と蓄電量とを紐付けした情報)を作成して蓄電量記憶部10111に送信し、記憶させる。
例えば、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールが、「需要家1002a、蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t3、充電電力1kW」と「需要家1002b、蓄電池1004a、制御開始時刻t2、制御終了時刻t4、充電電力2kW」であり、時刻t1〜t4の関係がt1<t2<t3<t4(t1が最も早い時刻でt4が最も遅い時刻)であるものとする。
また、実績管理部10110で管理する蓄電池1004aの蓄電量が、時刻t1で0kWh、時刻t2で2kWh、時刻t3で11kWh、時刻t4で15kWhの場合、時刻t1〜t2の間での蓄電量2kWhは、需要家1002aの所有量となり、時刻t2で蓄電量記憶部10111に記憶される蓄電量は、「蓄電池1004a、需要家1002a、2kWh」となる。
また、時刻t2〜t3の間での蓄電量9kWhは、需要家1002aと需要家1002bとで、所有量を指令値の比率すなわち1:2で分配し、需要家1002aの所有量3kWh、需要家1002bの所有量6kWhとなり、時刻t3での蓄電量記憶部10111に記憶される蓄電量は、「蓄電池1004a、需要家1002a、5kWh」、「蓄電池1004a、需要家1002b、6kWh」となる。
また、時刻t3〜t4の間での蓄電量4kWhは、需要家1002bの所有量となり、時刻t4時点で蓄電量記憶部10111に記憶される蓄電量は、「蓄電池1004a、需要家1002a、5kWh」、「蓄電池1004a、需要家1002b、10kWh」となる。
そして、蓄電量記憶部10111に記憶される蓄電量情報は、各蓄電池1004に蓄電される蓄電量と、その所有者とを紐付けした情報とを含んでおり、例えば、「蓄電池1004a、需要家1002a、蓄電量10kWh」、「蓄電池1004a、需要家1002b、蓄電量20kWh」、「蓄電池1004b、需要家1002a、蓄電量10kWh」等である。
また、蓄電量記憶部10111は、一定時間間隔での蓄電量情報の過去の履歴を保有していても良い。その一例を図12に示す。
図12においては、横軸に経過時間(時刻)を示し、縦軸に蓄電池(例えば1004a)の蓄電量を示し、需要家1002a、1002bおよび1002cのそれぞれが、各時刻で所有していた所有量をグラフとして示している。
<料金精算動作>
次に、蓄電池共用システム1006aにおける料金精算動作について説明する。料金の精算は料金精算部10112が行い、料金精算部10112は、契約情報記憶部10101から契約情報を取得し、蓄電量記憶部10111から蓄電量情報を取得し、蓄電池スケジュール記憶部10108から蓄電池スケジュールを取得し、契約した制御主体に対して、蓄電池の利用料と、電力ロス最小化のためにかかった費用等の料金を計算し、各制御主体に向けて精算情報を送信する。
蓄電池の利用料は、例えば、蓄電池の契約利用容量や、蓄電池の利用量に応じた利用料金プランに応じて、月額定額料を請求する。また、蓄電池共用システム1006aの管理下にある蓄電池に蓄電された蓄電量の合計の最大値に応じて請求しても良いし、蓄電量ではなく、充電量や放電量に対して請求しても良い。さらに、契約情報に含まれる蓄電ポリシーに対する違約金等も請求する。
電力ロス最小化のためにかかった費用とは、需要家が充電や放電を希望した場合であっても、蓄電池に充電または放電を行うより需要家同士で電力を送電し合った方がロスが小さいと蓄電池共用システム1006aが判断した場合には、蓄電量記憶部10111に記憶される蓄電池の蓄電量の所有者変更のみを行うが、実際には電力は電力系統を介して融通されるため、電力会社に対して売電や買電を行ったことになってしまう。
この場合、電力会社のメータが売電量、買電量をカウントするため、電力会社と蓄電池共用システム1006aとの間で金銭のやり取りが生じるが、それは需要家の希望ではなく、蓄電池共用システム1006aが電力ロスを最小化するために指示した結果である。そこで、この売電料金、買電料金を制御主体への精算情報に含める。
通常、各需要家は電気料金が最も得になるように自身の需要、発電、蓄電等を制御し、電力会社は電気料金を変動させることで、需給をコントロールしようとしている。しかし、電気料金制度を用いて、単に個々の需要家の電気料金が最適になるよう需給をコントロールすると、需要家ごとの個別最適制御になってしまうため、局所的(需要家ごと)には電気料金が最適になるが、地域としては広域的に電力ロスが増えてしまう可能性がある。
しかし、本発明の蓄電池共用システム1006aを用いると、地域連携制御を行うことができ、地域として広域的に電力ロスが小さくなる運用が可能となり、広域的に電力ロスを減らすことが可能となる。また、料金精算部10112で各需要家への料金精算を行うため、各需要家としても電気料金的に損をすることはない。
<効果>
以上説明した蓄電池共用システム1006aによれば、蓄電池利用予定受付部10102で、蓄電池1004を利用したい複数の制御主体からの利用予定を受け付け、蓄電池スケジュール作成部10107で、蓄電池利用予定記憶部10103に記憶された蓄電池利用予定、配電網情報記憶部10104に記憶された配電網情報、ロス情報記憶部10105に記憶された電力ロス情報を用いて、電力ロスが小さく、複数の制御主体からの蓄電池利用予定について整合性のとれた蓄電池スケジュールを作成することが可能となる。
このため、蓄電池共用システム1006aを導入することで、制御主体からの蓄電利用予定を妨げることなく地域連携制御が行われるため、複数の需要家で蓄電池を共用でき、需要家ごとに蓄電池を導入する場合に比べて省エネルギーを実現した蓄電池の運用が可能となる。
また、蓄電池1004の制御を直接、蓄電池共用システム1006aが行うことで、蓄電池1004の制御をきめ細かく行うことができる。
<従来技術との比較>
先に説明した従来技術(特開2008−29104号公報)における個別最適制御による蓄電池の共有と、実施の形態1の蓄電池共用システム1006aを用いた地域連携制御との効果の違いについて図13および図14を用いて説明する。
図13は特開2008−29104号公報に開示された個別最適制御を行う従来システム90の構成を示すブロック図である。
図13に示す従来システム90では、電力系統1001に接続される需要家1002aおよび1002bは、それぞれEMS1005aおよび1005bを有すると共に、PCS1007aおよび1007bを介して蓄電池1004を共有している。また、需要家1002aはPV1003cを有し、PV1003cで発電された電力はPCS1007cを介して需要家1002aに与えられる。
時間帯により、充電もしくは放電のどちらかのみを行う排他制御では、需要家が放電を希望する時間帯に蓄電池が充電時間帯となっている場合、需要家の放電利用希望が妨げられるという制約が生じてしまう。
上記の構成を採る従来システム90では、夜間に蓄電池に充電を行い、昼間に蓄電池から放電を行うと言った、時間帯による充電、放電の排他制御を行っているため、需要家ごとに充電と放電を同時に行うことはあり得ないが、以下の説明では時間帯による排他制御の制限は考慮しないものとする。
図14に示す蓄電池共用システム1006aを有する構成においては、電力系統1001に接続される需要家1002aおよび1002bは、電力系統1001に、PCS1007aおよび1007bを介して接続された蓄電池1004を共用利用する構成となっている。また、需要家1002aはPV1003cを有し、PV1003cで発電された電力はPCS1007cを介して需要家1002aに与えられる。なお、実線は電力の流れを、破線は蓄電池共用システム1006aからのデータの流れを示している。
ここでは、以下のような条件を用いて従来技術と本発明との比較を行う。
(A)需要家1002aに接続されるPV1003cが発電を行っており、電力余剰が生じているために、需要家1002aが保有するEMS1005aが蓄電池1004に充電することを希望している。
(B)需要家1002bは蓄電池1004に蓄電電力を保有しているため、需要家1002bの保有するEMS1005bが、需要家1002bの消費する電力を、蓄電池1004からの放電により賄うことを希望している。
(C)EMS1005aとEMS1005bの利用予定時刻は同じであり、利用開始時刻を時刻t1、利用終了時刻を時刻t2とする。
(D)EMS1005aの充電希望量と、EMS1005bの放電希望量は同じである。
図13の従来システム90では、EMS1005aおよびEMS1005bは、お互いの利用予定を知らず、蓄電池1004に対して個別に制御指令を出す。
PCS1007aはEMS1005aの指令に基づいて充電を行い、PCS1007bはEMS1005bの指令に基づいて放電を行う。PCS1007aの充電量とPCS1007bの放電量は同量のため、時刻t1と時刻t2では、理論上は、蓄電池1004の蓄電量は変化せず、蓄電量の所有者が変わるだけである。しかし、PCSを介して蓄電池に充電や放電を行うと、電力ロスを生じるため、物理的にはPCS1007aおよび1007bが充電や放電を行った分、電力が無駄になってしまう。
一方、図14に示す蓄電池共用システム1006aを有した構成では、まず、蓄電池共用システム1006aが、蓄電池利用予定受付部10102(図2)を介して、EMS1005aの充電利用予定、1005bの放電利用予定を受け付けるため、蓄電池スケジュール作成部10107(図2)で、EMS1005aとEMS1005bからの利用予定の調整を行うことが可能となる。また、配電網情報記憶部10104(図2)から、EMS1005aおよびEMS1005bをそれぞれ保有する需要家1002aおよび1002bと、電力系統1001との接続関係の情報を得ることが可能となる。さらに、ロス情報記憶部10105(図2)より、需要家1002aから需要家1002bへの送電ロスと、蓄電池1004への充電ロスおよび放電ロスの情報を得ることが可能となる。
次に、蓄電池スケジュール作成部10107では、EMS1005aの充電利用予定、1005bの放電利用予定から、蓄電ロスと送電ロスの各電力ロスを計算し、電力ロスの小さい方法を選択する。ここで、蓄電ロスは以下のように定義される。
蓄電ロス=EMS1005aの充電利用予定によるロス+EMS1005bの放電利用予定によるロス+需要家1002aから蓄電池1004への送電ロス+蓄電池1004から需要家1002bへの送電ロス。
また、送電ロスは以下のように定義される。
送電ロス=需要家1002aから需要家1002bへの送電ロス。
送電ロスの方が小さい場合には、蓄電池スケジュール作成部10107は、時刻t1から時刻t2の間、EMS1005aは売電、EMS1005bは買電、蓄電池1004は充電も放電もしないが、時刻t1からt2にかけて蓄電池1004の蓄電量の所有者を変更するというスケジュールを作成し、蓄電池スケジュール記憶部10108(図2)に記憶する。
時刻t1になると、需要家1002aが売電を行い需要家1002bは買電を行い、電力系統1001を介して電力が融通される。実績管理部10110(図2)では、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶されたスケジュールに応じて、蓄電池1004の蓄電量の所有者を変更し、蓄電量記憶部10111(図2)に記憶する。
料金清算の方法は、蓄電池1004に蓄電した電力量の所有者が需要家1002a、需要家1002bか蓄電池共用システム1006かによって異なる。
以下、蓄電池1004に蓄電した電力量の所有者が需要家1002a、需要家1002bであるとして、清算方法の例を説明する。蓄電池1004に蓄電した電力量の所有者が需要家1002a、需要家1002bである場合、需要家1002a、需要家1002bは蓄電池共用システム1006aに設備使用料を支払う。このとき、設備使用料は充電量や放電量に応じて支払ってもよいし、定額料金であってもよい。
料金精算時には、料金精算部10112(図2)により、需要家1002aには、蓄電池充電料(設備使用料)と実際に売電した料金の、差額を精算し、需要家1002bには、蓄電池放電料(設備使用料)と実際に買電した料金の、差額を精算する。
需要家1002a(EMS1005a)は、PV1003aで発電した余剰電力を蓄電池1004に充電することを希望しており、蓄電池1004には需要家1002aが所有する蓄電量が存在するため、需要家1002aに対しては契約情報記憶部10101(図2)の契約情報に基づき、充電量に応じた充電料(設備使用料)を請求する(契約容量による定額利用等の場合は請求しない)。
実際には、需要家1002aは売電を行っており、需要家の売電メータに売電量が加算されているため電力会社より売電料を受けることになるが、本来、需要家は売電ではなく蓄電池に対する充電を希望していたため、この売電料は蓄電池共用システム1006へと譲渡する。
需要家1002b(EMS1005b)は、蓄電池1004からの放電を希望しており蓄電池1004には需要家1002bが所有する蓄電量が減っているため、需要家1002bに対しては契約情報記憶部10101の契約情報に基づき、放電量に応じた放電料(設備使用料)を請求する(契約容量による定額利用等の場合は請求しない)。
実際には、需要家1002bは買電を行っており、需要家の買電メータに買電量が加算されているため、電気会社より買電料を請求されることになるが、本来、需要家は買電ではなく蓄電池からの放電を希望していたため、この買電料は蓄電池共用システム1006が需要家1002bへと支払う。
以上、蓄電池1004に蓄電した電力量の所有者が需要家1002a、需要家1002bであるとして、清算方法の例を説明したが、蓄電池1004に蓄電した電力量の所有者が蓄電池共用システム1006である場合には、蓄電池共用システム1006が、蓄電池1004に蓄電した電力量を需要家1002aや需要家1002bから買い取り、買い取り料を支払う。蓄電池1004から需要家1002aや需要家1002bが電力量を放電する場合、需要家1002aや需要家1002bが蓄電池共用システム1006から電力量を買い取ることになり、需要家1002aや需要家1002bが蓄電池共用システム1006に買い取り料を支払う。
以上説明したように、図13に示す従来システム90では、蓄電ロスが送電ロスよりも大きい場合でも、各EMSが個別最適制御を行うため、電力ロスの大きい蓄電池1004への充電および放電という方法を採るのに対し、本発明では、蓄電ロスが送電ロスより大きい場合には、蓄電池1004への充電および放電は行わず、需要家1002aおよび需要家1002bにおける電力の需給は、電力系統を介して融通され、蓄電量記憶部10111に記憶される蓄電池の蓄電量と所有者の電子データのみを変更するだけで済み、電力ロスの小さい方法で電力融通と蓄電池共用を実現することが可能となる。
なお、上記では、EMS1005aの充電希望量とEMS1005bの放電希望量が同量の場合で、利用予定時刻が同時刻の場合を想定したが、そうでない場合でも、その充放電量の差分のみ蓄電池1004を利用することで、同様の効果を奏することが可能である。
<経営事業上の効果>
蓄電池共用システム1006aの運用事業者は、この蓄電池共用システム1006を用いることで、従来にない金銭的な利益を出すことが可能となる。
その一例として、蓄電池共用システム1006を用いて、需要家1002と契約を結び、契約時の蓄電池1004の利用契約容量に応じて需要家1002に課金する場合を想定する。
図13に示した従来システム90では、蓄電池1004の蓄電容量が物理的に100kWhである場合、需要家1002aとは契約容量50kWh、需要家1002bとは契約容量50kWhで契約し、契約容量の合計が蓄電池の物理的な蓄電容量と等しくなることが必要であった。なぜならば、個別最適制御のため、需要家がそれぞれ自由に制御を行った場合でも、物理的に不可能な制御とならないようにする必要があるためである。
一方、図14に示す蓄電池共用システム1006aを用いると、蓄電池1004aの蓄電容量が物理的に100kWhである場合でも、需要家1002aとは契約容量60kWh、需要家1002bとは契約容量60kWhといったように、契約容量の合計が蓄電池の物理的な蓄電容量を超えて契約することが可能となる。
契約容量60kWhで需要家と契約しても、需要家が60kWhを全て一度に利用する頻度は低いので、需要家1002aと需要家1002bの蓄電量が合計で100kWh以下のときには問題なく運用できる。
蓄電池利用予定受付部10102を介して、需要家1002aと需要家1002bが共に充電量60kWhの蓄電利用予定を希望する場合には、蓄電池1004aに物理的には100kWh蓄電しておき、蓄電量記憶部10111に、需要家1002aが60kWh、需要家1002bが60kWhの所有量であることを記憶するだけで良い。または、このように臨時で必要になったときのみ、他の蓄電池共用システム1006bを利用し、臨時で他の蓄電池1004bに、残りの蓄電量20kWhを蓄電しても良い。蓄電池利用予定受付部10102を介して、需要家1002aと需要家1002bが共に放電量60kWhの蓄電利用予定を希望する場合には、蓄電池1004aの全量100kWhを放電し、足りない分は電力系統1001から電力を購入するという方法がある。または、このように臨時で必要になったときのみ、他の蓄電池共用システム1006bを利用し、臨時で他の蓄電池1004bから、足りない蓄電量20kWhを放電しても良い。
ただし、このような運営をする場合には、停電等の理由で電力系統1001から電力を購入できない場合には、必要量の蓄電量を需要家に供給できないリスクが発生するため、違約金や信頼低下等のリスク負うことを考慮して、需要家との契約容量の合計と同等な物理的な蓄電池の容量を確保できることが望ましい。
このように、蓄電池共用システム1006を用いると、常時物理的に契約容量の合計分の蓄電容量の蓄電池を準備しておく必要はないため、料金精算部10112での料金精算時に、大きな利益を得ることが可能となる。
また、他の例として、蓄電池共用システム1006aを用いて、発電業者から電力系統1001を介して電力を購入し、蓄電池1004に蓄電した量に応じて、需要家1002に課金する場合を想定する。
蓄電池共用システム1006aを用いると、蓄電池の余分な充電回数、放電回数を抑えることが可能であり、放電時、蓄電時、送電時の電力ロスを最小に抑えることが可能となる。すなわち、発電業者から電力系統1001を介して購入した電力と、実際に蓄電池に蓄電される電力量を比較した場合の蓄電効率(蓄電効率=蓄電量/買電量)を1に近くすることができる。1に近いほど、需要家1002から得られる蓄電池利用料と、発電業者から購入する電気料金との差が大きくなり、利益を出すことが可能となる。もしくは、電力ロスの小さい分、需要家に対して請求する蓄電量に対する料金を安くすることができ、市場競争力を得ることが可能となる。
<変形例1>
図15は、実施の形態1に係る変形例1の蓄電池共用システム1006bの構成を示すブロック図である。なお、なお、図15においては、図2を用いて説明した蓄電池共用システム1006aと同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図15に示す蓄電池共用システム1006bは、蓄電池共用システム1006aの構成に、発電/需要予測量記憶部10206をさらに備えている。
図15に示す蓄電池共用システム1006bは、時々刻々と変化する需要家の需要量の変化やPVの発電量の変化を考慮した蓄電理利用予定を受け付け、時々刻々と変化する需要家の需要量の変化やPVの発電量の変化を考慮した蓄電池の利用を可能とする。
発電/需要予測量記憶部10206は、蓄電池利用予定受付部10102を介して得られる、EMS1005a(図1)が管理する需要家1002a(図1)の需要予測量やPV1003a(図1)の発電予測量を記憶する。なお、EMS1005aは、図15におけるEMS1005の何れかであるものとする。
また、EMS1005が設置されていない需要家1002d(図1)や図示されない、PV1003d、蓄電池1004を共用利用しない需要家1002eやPV1003eが存在する場合でも、配電系統の発電予測量、需要予測量を得るため、系統運用者から配電系統の区間ごとの発電予測量および需要予測量を得て、記憶する。
蓄電池共用システム1006bの運用者が配電網に電力測定のためのセンサを設置したり、一般的な発電パターン、需要パターン等を取得したりして、配電系統の発電予測量および需要予測量を、天気予報や予測日射量、予測気温から推定して記憶しても良い。
この場合、需要家の保有する電気自動車(EV)を蓄電池として利用する場合には、充電の場合、需要家の需要予測電力として含める。また、放電の場合は発電予定電力として含めても良い。ただし、EVの放電は、PVのような変動が大きく予測が困難な自然エネルギーとは異なり、安定して放電可能なため、PVによる発電なのか、EVや蓄電池による放電なのかの種別分けをして、予測の確実性に反映しても良い。
また、EVによる充電、放電の時間や出力を需要家1002が変更可能であるときには、充電予定を変更可能な需要、放電予定を変更可能な発電とし、変更不可能な他の需要予測、PVによる発電予測とは分けて、記憶しても良い。
さらに、将来、電気温水器、自然冷媒ヒートポンプ給湯機、蓄熱式暖房器具等の機器がEMS1005で制御可能になった場合には、EVの充電と同じく、変更可能な需要として記憶しても良い。以下に、変更不可能な発電電力および需要電力の例、変更可能な発電電力および需要電力の例、変更可能な発電電力量および需要電力量の例を示す。
(a)変更不可能な発電電力:時刻tにおけるPV1003aの発電予測平均電力(xkW)、変動標準偏差(ykW)。
(b)変更不可能な需要電力:時刻tにおける需要家1002aの需要予測平均電力(xkW)、変動標準偏差(zkW)。
(c)変更可能な発電電力:需要家1002aの発電予測(需要家1002aに接続されるEVの放電)、時刻t1〜時刻t2における電力(xkW)、変更可能時刻t3〜t4。
(d)変更可能な需要電力:需要家1002aの需要予測(需要家1002aに接続されるEVの充電)、時刻t1〜時刻t2における電力(xkW)、変更可能時刻t3〜t4。
(e)変更可能な発電電力量:需要家1002aの発電予測(需要家1002aに接続されるEVの放電)、時刻t1〜時刻t2における電力量(xkWh)、変更可能時刻t3〜t4。
(f)変更可能な需要電力量:需要家1002aの需要予測(需要家1002aに接続されるEVの充電)、時刻t1〜時刻t2における電力量(xkWh)、変更可能時刻t3〜t4。
上記(c)、(d)に示す変動可能な電力の場合、変更前の合計時間Δt(Δt=時刻t2−時刻t1)が変わらなければ、時刻t3〜t4の間のいつでも変更可能なことを表している。
分割も可能であり、分割可能な回数を指定しても良い。例えば、(c)で変更可能な発電電力は13:00〜14:00の間では3kWである場合、変動可能時刻が12:00〜16:00の場合、12:30〜13:00の間では3kW、15:30〜16:00の間では3kWのように分割しても良い。
上記(e)、(f)の変動可能な電力量の場合、変更可能時刻t3〜t4の間で、合計で指定の電力量を発電し、利用することに変更可能であることを表している。
例えば、(e)で変更可能な発電電力は13:00〜14:00の間では3kWhである場合、変動可能時刻が12:00〜16:00の場合、12:00〜13:00の間では1.5kW、15:30〜16:00の間では3kWのように分割しても良い。
蓄電池利用予定受付部10102では、EMS1005が管理する需要家やPVの発電予測量、需要予測量を受け付け、発電/需要予測量記憶部10206に記憶させる。
また、需要家EMS1005aからの蓄電池利用予定としては、EMS1005aの管理する需要家1002aの消費電力量が任意の規定値を超えた場合は、蓄電池1004から放電する、または、EMS1005aの管理する需要家1002aでの需要と、EMS1005aの管理するPV1003aでの発電量とを比較し、PV1003aの発電量が余剰になった分を充電する、または配電区間の何れかのPVで発電余剰になった分を充電する等の利用予定が挙げられる。
また、蓄電池スケジュール作成部10107では、契約情報記憶部10101に記憶された契約情報、蓄電池利用予定記憶部10103に記憶された蓄電池利用予定、配電網情報記憶部10104に記憶された配電網情報、ロス情報記憶部10105に記憶された電力ロス情報、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールおよび蓄電量記憶部10111に記憶された蓄電量に加えて、発電/需要予測量記憶部10206から得られる発電予測量および需要予測量から、蓄電池1004の利用スケジュールを作成し、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶させる。
蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池1004の蓄電池スケジュールとしては、EMS1005aの管理する需要家1002aの消費電力量が任意の規定値を超えた場合には蓄電池1004から放電する、または、EMS1005aの管理する需要家1002aでの需要と、EMS1005aの管理するPV1003aでの発電量とを比較し、PV1003aの発電量が余剰になった分を充電する、または配電区間の何れかのPVで発電余剰になった分を充電する等のスケジュールが挙げられる。
蓄電池スケジュール作成部10107でのスケジュールを作成する際、EMS1005に対して、変更可能な発電電力、需要電力の時間を変更するようなスケジュールを作成し、変更可能な発電電力、需要電力の時間を変更する指令を出しても良い。
また、蓄電池スケジュール記憶部10108では、蓄電池スケジュール作成部10107で作成された蓄電池のスケジュールを記憶する。蓄電池のスケジュールとしては、例えば、「蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、放電、放電電力=需要家1002aの負荷が5kWを超えた場合」、「蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、充電、充電電力=(PV1003aの発電電力―需要家1002aの需要電力)」などが挙げられる。
実績管理部10110では、蓄電池1004aの蓄電量に加えて、EMS1005aからの需要家1002aの負荷実績量、PV1003aの発電実績量、系統運用者1000からの区間ごとの発電実績量および負荷実績量等を受け取り、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールと合わせて、蓄電池1004aの蓄電量とその所有者の関係を求め、蓄電量記憶部10111に蓄電量情報(蓄電量と所有者とを紐付けした情報)を記憶させる。
蓄電池制御指令部10109では、実績管理部10110からの、蓄電池1004aの蓄電量に加えて、EMS1005aからの需要家1002aの負荷実績量、PV1003aの発電実績量および系統運用者1000から区間ごとの発電実績量および負荷実績量等を受け取り、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールと合わせて、蓄電池1004aに制御指令を送る。
例えば、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールが「蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、放電、放電電力=需要家1002aの負荷が5kWを超えた場合」となっているのであれば、実績管理部10110から、需要家1002aの負荷実績を受け取り、需要家1002aの負荷が5kWを超えた場合に、「蓄電池1004a、充電、需要家1002aの負荷−5kW」を蓄電池1004aに指令する。
実績値を用いると、需要家1002aでの実際の電力の利用タイミングと蓄電池の制御タイミングがずれてしまうため、需要予測値を用いる、または需要予測値を需要実績値で補正した値を用いるまたはPID(Proportional-Integral-Derivative)制御を行う等の方法を行っても良い。
蓄電池制御指令部10109では、蓄電池1004aの制御部に対して蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールをそのまま送信し、蓄電池1004aの制御部が需要家1002aやPV1003aを管理するEMS1005aと通信を行っても良い。
例えば、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュールが「蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、充電、充電電力=(PV1003aの発電電力―需要家1002aの需要電力)」となっているのであれば、蓄電池制御指令部10109は、蓄電池1004aの制御部に対して、このスケジュールと、EMS1005aがPV1003a、需要家1002aを管理しているという情報を配信する。
蓄電池1004aの制御部は、時刻t1〜t2の間、EMS1005aからPV1003aの発電電力と需要家1002aの需要電力情報を受け取り、その差分を充電する。もしくは、EMS1005aがPV1003aの発電電力と需要家1002aの需要電力の差分を計算し、充電指令値を作成、蓄電池1004aの制御部へ充電指示と充電指示値を送っても良い。
<変形例1の効果>
以上説明した蓄電池共用システム1006bによれば、EMS1005は、蓄電池利用予定受付部10102に対して、EMS1005aの管理する需要家1002aの消費電力量が任意の規定値を超えた場合には、蓄電池1004aから放電する、またはEMS1005の管理する需要家1002aでの需要とEMS1005aの管理するPV1003aでの発電量とを比較し、PV1003aでの発電量が余剰になった分を充電する、または配電区間の何れかのPVで発電余剰になった分を充電する等の利用予定を送信することができる。
また、発電/需要予測量記憶部10206に記憶されたEMS1005aが管理する需要家1002aやPV1003aの発電予測量および需要予測量を利用して、蓄電池スケジュール作成部10107が蓄電池スケジュールを作成するため、蓄電池利用予定受付部10102で受け付けたEMS1005aが管理する需要家1002aやPV1003aの発電量および需要量を考慮した蓄電池スケジュールを作成することが可能となる。
さらに、実績管理部10110で、時々刻々と変化するEMS1005aが管理する需要家1002aやPV1003aの発電実績量および需要実績量を取得し、蓄電池制御指令部10109が需要家の需要量やPV発電量に合わせて蓄電池共用システム1006bが蓄電池1004aの制御を行うため、EMS1005の蓄電池利用希望に沿った蓄電池の利用を行うことが可能となる。また、時々刻々と変化する需要家の需要量やPV発電量に応じた蓄電池1004aの充電、放電の制御が可能となる。
<変形例2>
図16は、実施の形態1に係る変形例2の蓄電池共用システム1006cの構成を示すブロック図である。なお、なお、図16においては、図2を用いて説明した蓄電池共用システム1006aと同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図16に示す蓄電池共用システム1006cは、蓄電池共用システム1006aの構成に、蓄電量調整部10313をさらに備えている。
図2に示した蓄電池共用システム1006aを運用していると、電力ロスが最も小さくなり、かつ、需要家の利用予定を妨げることのないように電力の融通を行うため、需要家1002の所有する蓄電量が、需要家1002から配電網上で遠距離に蓄電されることがある。
需要家1002の所有する蓄電量が配電網上で遠距離に蓄電されていると、停電時等の非常時に蓄電された電力を利用できない可能性が高くなるため望ましくない。これに対し、図16に開示される蓄電池共用システム1006cは、配電網情報記憶部10104の配電網情報に基づいて、需要家1002が所有する蓄電量が、需要家1002から配電網上で遠距離に蓄電されることを防ぐことができる。
蓄電量調整部10313は、蓄電量記憶部10111に記憶された、蓄電池1004の蓄電量と所有者である需要家の組み合わせと、配電網情報記憶部10104に記憶された、配電網と需要家1002、蓄電池1004の配電網上の位置関係を取得し、定期的に、需要家1002の所有する蓄電量が存在する蓄電池1004と需要家1002の配電網上の距離を確認して、各需要家1002の蓄電量が存在する蓄電池1004と需要家1002の配電網上の距離の組み合わせがそれぞれ近くなるよう、最適計算を行う。この最適計算の結果を用いて、各蓄電池1004の蓄電量の所有者を、電子データ上で変更する。
例えば、蓄電池1004aが需要家1002a所有の蓄電量10kWhを保有し、蓄電池1004bが需要家1002b所有の蓄電量10kWhを保有している場合において、(蓄電池1004aと需要家1002aの配電網上の距離+蓄電池1004bと需要家1002bの配電網上の距離)>(蓄電池1004aと需要家1002bの配電網上の距離+蓄電池1004bと需要家1002bの配電網上の距離)の関係にある場合、蓄電池1004aが需要家1002b所有の蓄電量10kWhを保有し、蓄電池1004bが需要家1002a所有の蓄電量10kWhを保有する、というように、蓄電量記憶部10111に記憶された電子データを変更する。
また、契約情報記憶部10101に記憶された契約ポリシーに基づいて、蓄電量記憶部10111の電子データを変更しても良い。契約時の各需要家の蓄電ポリシーとして、契約需要家1002と需要家1002が所有する蓄電量を保有する蓄電池1004との、配電網上の距離に制限を設け、蓄電量調整部10313で、その制限距離に反していないか確認を行い、蓄電ポリシーを逸脱しないよう、電子データを変更する。
<変形例2の効果>
以上説明した蓄電池共用システム1006cによれば、蓄電量調整部10313が定期的に、需要家1002の蓄電量を保有する蓄電池1004と需要家1002との配電網上の距離を見直し、電子データ的に所有者を変更することで、電力ロスを生じることなく、配電網上で遠距離にある蓄電池1004に需要家1002が所有する蓄電量が存在することを防ぎ、停電時等の非常時にも需要家1002の所有する蓄電量を需要家1002が利用できる可能性を高くすることが可能となる。
<変形例3>
配電網上で遠距離にある蓄電池1004に需要家1002が所有する蓄電量が存在することを防ぐ構成としては、蓄電量調整部10313で電子データ的に所有者を変更するだけでなく、定期的に電力の偏りを調整する構成としても良い。
このためには、図16に示す契約情報記憶部10101において、契約時の各需要家の蓄電ポリシーとして、契約需要家1002と需要家1002が所有する蓄電量を保有する蓄電池1004との、配電網上の距離に制限を設ける。例えば、変圧器を介さない範囲の蓄電池を必ず利用する、または需要家1002から配電網上で、5km以内の距離の蓄電池に蓄電する、例えば図4に示したような木構造において、ノードが5個以内である距離の蓄電池に蓄電する等である。
また、一時的に上記制限を超える場所に蓄電量が存在することを許容する期間を設けても良い。当該期間を、例えば、1ヶ月間とした場合、1ヶ月間は需要家1002が保有する蓄電量が契約制限を超える範囲で蓄電されても良いとする。
そして、蓄電池スケジュール作成部10107において、契約情報記憶部10101に記憶された契約情報、蓄電池利用予定記憶部10103に記憶された蓄電池利用予定、配電網情報記憶部10104に記憶された配電網情報、ロス情報記憶部10105に記憶された電力ロス情報、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶された蓄電池スケジュール、蓄電量記憶部10111に記憶された蓄電量を用いて蓄電池1004の利用スケジュールを作成し、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶する際、契約情報の蓄電ポリシーの配電網上の制限距離を超えないスケジュールを作成する。
なお、契約情報の蓄電ポリシーの配電網上の距離制限に、さらに、その制限を超える場所に蓄電量が存在することを許容する期間が一時的に設けられている場合、その期間を超えている場合のみ、蓄電ポリシーの配電網上の距離内に蓄電量が移動するよう、蓄電池スケジュールの作成を行う。
例えば、需要家1002の蓄電量が許容期間を超えて、蓄電ポリシーの配電網上の距離制限より遠距離の蓄電池1004bに蓄電されている場合、蓄電池スケジュール作成部10107は、蓄電池1004bから蓄電ポリシーの配電網上の距離制限の範囲内の蓄電池1004aへ電力融通を行うスケジュールを作成する。
また、契約情報記憶部10101の蓄電ポリシーの配電網上の距離制限を用いて、蓄電量記憶部10111で、蓄電量の所有者を電子データ的に変更する構成を採っても良い。
<変形例3の効果>
以上説明した実施の形態1の変形例3によれば、蓄電量調整部10313による電子データ的な所有者の付け替えだけでは、配電網上で遠距離にある蓄電池1004に需要家1002が所有する蓄電量が存在することを防げない場合にも、蓄電池スケジュール作成部10107において、契約情報記憶部10101に記憶された契約情報の蓄電ポリシーの配電網上の距離を超えないスケジュールを作成することにより、配電網上で遠距離にある蓄電池1004に需要家1002が所有する蓄電量が存在することを防ぐことができる。
契約情報記憶部10101において、蓄電ポリシーの配電網上の距離制限を超える場所に蓄電量が存在することを許容する期間を一時的に設けることにより、常時ではなく、定期的に所有電力の移動を行うこととなり、蓄電池間の電力融通の頻度が低下し、蓄電池間の電力移動ロスを小さくすることが可能となる。
<実施の形態2>
<配電系統の構成>
図17は、本発明に係る実施の形態2の蓄電池共用システム1006dにより共用利用される蓄電池が接続される配電系統を示すブロック図であり、実線は電力の流れを、破線は蓄電池共用システム1006dからのデータの流れを示している。なお、図17においては、図1を用いて説明した電力系統と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図17に示すように、電力系統1001には、需要家1002a、1002b、1002c、1002dおよび1002fが接続されると共に、PV1003eが接続されている。需要家1002a〜1002dは、それぞれEMS1005a、1005b、1005cおよび1005dを保有し、PV1003eはEMS1005eを保有している。なお、需要家1002fはEMSを保有していない。
需要家1002aには、PCS1007aおよび1007a2が接続され、PCS1007aおよび1007a2には、それぞれPV1003aおよび蓄電池1004aが接続されている。
また、需要家1002bには、PCS1007bを介して蓄電池1004bが接続され、需要家1002cには、PCS1007cを介してPV1003cが接続されている。
図17に示す実施の形態2の蓄電池共用システム1006dにより共用利用される蓄電池は、需要家1002を介して電力系統に接続され、EMS1005の制御管理下に置かれている。この構成を採ることで、蓄電池1004は需要家1002が管理するため、特別に蓄電池の管理人を置く必要がない。また、容量の大きな蓄電池を電力系統1001に接続すると、電力会社との契約時に契約容量が大きくなり、基本使用料が高くなる可能性があるが、需要家1002の管理下に置くことにより、電力会社に支払う電気料金の基本使用料は需要家1002の基本使用料に含まれるため、蓄電池の運用料金を下げることが可能となる。なお、蓄電池1004は需要家1002の所有物であって、蓄電池共用システム1006dの運用者に貸し出しても良く、蓄電池1004は蓄電池共用システム1006dの所有物であって、需要家1002に貸し出しても良い。
蓄電池共用システム1006dの構成は、図2に示した蓄電池共用システム1006aと同じであり、契約受付部10100では、蓄電ポリシーとして、蓄電池1004の利用優先度を用いた契約を可能とし、契約情報記憶部10101に、蓄電ポリシーとしてEMS1005の優先度や優先度に応じた契約料金を記憶する。例えば、蓄電池1004aは、蓄電池1004aを管理下に置くEMS1005aの利用予定を最優先等の契約を結ぶことを可能とする。制御管理下にある蓄電池以外でも、優先度を高く設定することは可能である。
蓄電池スケジュール作成部10107では、契約情報記憶部10101の契約情報のうち、蓄電ポリシーのEMSの優先度を考慮した蓄電池スケジュールの作成を行い、蓄電池スケジュール記憶部10108に記憶する。
蓄電池スケジュール記憶部10108では、蓄電池スケジュール作成部10107で作成された蓄電池のスケジュールを記憶する。蓄電池のスケジュールとしては、例えば、「蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、放電、放電電力=需要家1002aの負荷が5kWを超えた場合」、「蓄電池1004a、制御開始時刻t1、制御終了時刻t2、充電、充電電力=PV1003aの発電電力―需要家1002aの需要電力」等である。
蓄電池制御指令部10109では、蓄電池1004aの蓄電池のスケジュールを、そのまま、蓄電池1004aを制御管理しているEMS1005aに配信する。
実績管理部10110では、蓄電池1004aを制御管理しているEMS1005aから、蓄電池1004aの蓄電量を受け取り、蓄電池スケジュール記憶部10108のスケジュールと合わせて、蓄電量情報(蓄電量と所有者とを紐付けした情報)を蓄電量記憶部10111に記憶する。
また、PV発電量や需要家の負荷に基づいた蓄電池スケジュールが存在する場合には、PV発電実績、需要家負荷実績などを、実績を制御管理している各EMSから受け取り、この実績値を必要とするEMSに配信する。PV発電量の実績値や需要家の消費した負荷の実績値は、蓄電池共用システム1006dを介さず、EMS1005同士が通信して情報交換しても良い。
例えば、蓄電池1004aと需要家1002aを管理下に置くEMS1005aと、需要家1002bとPV1003bを管理下に置き、さらに蓄電池1004aを利用予定のEMS1005bが存在する場合で、PV1003bの発電量と需要家1002bの負荷の余剰を蓄電する場合を想定する。
蓄電池制御指令部10109は、EMS1005aに、EMS1005bからの通信を受け付け、PV1003bの発電量から需要家1002bの負荷を差し引いたPVでの余剰を蓄電池1004aに充電するように蓄電池スケジュールを配信する。EMS1005bは、PV1003bの発電量から需要家1002bの負荷を差し引いたPVでの余剰を計算し、EMS1005aに、蓄電池1004aの指令(充電量)を送る。EMS1005aはEMS1005bから、蓄電池1004aの制御指令を受け取り、蓄電池1004aのPCS1007aを制御する。
なお、EMS1005aは複数のEMSからの蓄電池1004aに対する制御指令を受け付けても良い。制御指令は蓄電池共用システム1006dの蓄電池スケジュール作成部10107において、蓄電池の利用スケジュールに矛盾が生じないようにスケジュールが作成されている。矛盾が生じないとは、充電と放電を同時に行うようなスケジュールになっていないとか、PCS1007aの最大充電速度、最大放電速度を超えないとか、蓄電池1004aの最小蓄電量を超える放電や最大蓄電量を超える充電は発生しない等である。
このようにEMS同士が実績値について直接通信を行う場合、所有量と蓄電量が蓄電池共用システムでは正確に把握しきれないため、EMS1005aにおいて、蓄電量とその所有者情報の組を作成し、蓄電池共用システム1006dへ送信し、蓄電池共用システム1006dでは、実績管理部10110でその情報を受け取って、蓄電量記憶部10111に記憶することとなる。
料金精算部10112では、各EMSに対して、蓄電池使用量に基づいた使用量の精算を行う。蓄電池1004が需要家1002の所有物であって、蓄電池共用システム1006dの運用者に貸し出す場合には、蓄電池共用システム1006dは需要家1002に借り料を支払っても良い。また、蓄電池1004が蓄電池共用システム1006dの所有物であって、需要家1002に貸し出している場合、需要家1002に貸出料を請求しても良いし、需要家1002に管理料を支払っても良い。また、蓄電池1004が需要家1002の所有物であって、蓄電池共用システム1006dの運用者に貸し出す場合でも、蓄電池1004は蓄電池共用システム1006dの所有物であって、需要家1002に貸し出す場合でも、蓄電池1004aの利用スケジュール優先度に応じて、需要家1002のEMS1005aに料金を請求しても良い。例えば、蓄電池1004aをEMS1005aが管理しており、利用スケジュールを最優先にする場合には、蓄電池1004aを利用する他のEMS1005bやEMS1005cに比べて、基本料金を高く設定する等である。
<効果>
以上説明したように、蓄電池1004が需要家1002を介して電力系統に接続され、EMS1005の管理下に置かれる場合、蓄電池1004は需要家1002が管理するため、特別に蓄電池の管理人を置く必要がない。また、容量の大きな蓄電池を電力系統1001に接続すると、電力会社との契約時に契約容量が大きくなり、基本使用料が高くなる可能性があるが、需要家1002の管理下に置くことにより、電力会社に支払う電気料金の基本使用料は需要家1002の基本使用料に含まれるため、蓄電池の運用料金を下げることが可能となる。
なお、上述した実施の形態2では、蓄電池1004は需要家1002を介して電力系統に接続されEMS1005の管理下に置かれる場合のみ説明したが、EMS1005の制御管理下に置かれる蓄電池と、実施の形態1と同様に、電力系統に直接接続され蓄電池共用システムの制御管理下に置かれる蓄電池とが混在していても、蓄電池共用システムは有効に機能する。
<実施の形態3>
<配電系統の構成>
図18は、本発明に係る実施の形態3の蓄電池共用システム1006eにより共用利用される蓄電池が接続される配電系統を示すブロック図であり、実線は電力の流れを、破線は蓄電池共用システム1006eからのデータの流れを示している。なお、図18においては、図1を用いて説明した電力系統と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図18に示すように、電力系統1001には、電圧6.6kVを電圧200V(または100V)に変圧する変圧器3008aおよび3008bが接続され、変圧器3008aに接続された200Vの配電網には需要家1002a、1002bおよび1002cが接続され、変圧器3008bに接続された200Vの配電網には需要家1002d、1002eおよび1002fが接続されている。
そして、変圧器3008aに接続された200Vの配電網および変圧器3008bに接続された200Vの配電網の一方は、切り替え器3009aにより、蓄電池1004aに接続されるPCS1007aに接続される構成となっている。
切り替え器3009aは、蓄電池1004aの保有する制御部より、蓄電池1004aを何れの配電網に接続するかの指令を受け、蓄電池1004aの接続を切り替えることとなる。従って、蓄電池1004aは、接続先の配電網を切り替える機構を有していると言うことができる。
蓄電池共用システム1006eの構成は、図2に示した蓄電池共用システム1006aと同じであり、配電網情報記憶部10104では、蓄電池1004aが接続する切り替え器3009aが、どの配電網と接続することが可能かという情報を記憶する。
蓄電池スケジュール作成部10107では、配電網情報記憶部10104から、配電網情報として、蓄電池1004aの接続可能な配電網の情報を取得し、蓄電池1004aが接続する配電網を切り替え可能であることを考慮した蓄電池スケジュールを作成する。
例えば、需要家1002aで生じた余剰電力を需要家1002dに融通する場合において、送電ロスと蓄電ロスの差異、蓄電池を経由する場合の時間差を考慮してスケジュールを作成する。
例えば、電力系統を経由する送電ロスは以下のように定義される。
電力系統を経由する送電ロス=変圧器3008aを経由する電力ロス+変圧器3008aを経由する電力ロス。
また、蓄電ロスは以下のように定義される。
蓄電ロス=蓄電池1004へ充電するロス+蓄電池1004から放電するロス。
そして、送電ロス≦蓄電ロスの場合は電力系統を経由して電力融通を行う。一方、送電ロス>蓄電ロスの場合、電力融通の時間差が許容されない利用予定の場合は、電力系統を経由するが、時間差が許容される場合には、蓄電池を経由する蓄電池スケジュールを作成する。
蓄電池を経由する蓄電池スケジュールの例としては、「制御開始時時刻、制御終了時刻、充放電量」、「時刻と接続配電網切り替え指令」等が挙げられ。
蓄電池制御指令部10109では、蓄電池1004aに対し、実施の形態1と同様に蓄電池スケジュールを指令すると共に、蓄電池1004aを、いつ、どの配電網に接続するかの情報も送信する。
<効果>
以上説明したように、蓄電池1004aが接続する配電網を切り替え可能な構成を採ることで、変圧器を経由せずとも需要家間での電力融通が可能となり、電力系統を経由する送電ロス(変圧器3008aと変圧器3008bを経由して電力融通する場合の送電ロス)と、蓄電池を経由する場合の電力ロス(蓄電池1004に一旦充電し、接続配電網を切り替えて放電する場合の電力ロス)を比較することで、それぞれの場合で計算される電力ロスと需要家からの蓄電池利用予定に応じて、電力ロスを小さくでき、かつ、需要家からの利用予定を満たすことができる蓄電池スケジュールを作成することができる。
<実施の形態4>
<配電系統の構成>
図19は、本発明に係る実施の形態4の蓄電池共用システム1006f、1006gおよび1006hにより共用利用される蓄電池が接続される配電系統を示すブロック図であり、実線は電力の流れを、破線は蓄電池共用システム1006f〜1006hからのデータの流れを示している。なお、図19においては、図1を用いて説明した電力系統と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
実施の形態4に係る蓄電池共用システムは、複数の蓄電池共用システム1006が、配電網を階層的に管理する構成を採り、例えば、配電網の変圧器ごとに管理する範囲を区切って階層化する。
図19に示すように、電力系統1001には、電圧6.6kVを電圧200Vに変圧する変圧器3008aおよび3008bが接続され、変圧器3008aに接続された200Vの配電網には需要家1002b、1002cおよび1002dが接続され、変圧器3008bに接続された200Vの配電網には需要家1002e、1002fおよび1002gが接続されている。また、6.6kVの配電網には需要家1002aが接続されている。
このような構成において、蓄電池共用システム1006gと、蓄電池共用システム1006hは、200Vの配電網の範囲(それぞれ一点鎖線で囲まれる範囲)で電力融通を管理し、蓄電池共用システム1006fは6.6kVの配電網の範囲(一点鎖線で囲まれる範囲)で電力融通を管理する。
すなわち、蓄電池共用システム1006gおよび1006hは、それぞれ、自分の管理下にある需要家や蓄電池の電力融通の管理を行うが、蓄電池共用システム1006gおよび1006hは、それぞれ、自分の管理下にある需要家や蓄電池だけで、電力融通が不可能な場合に、蓄電池共用システム1006fに対して電力の融通を要求する。
蓄電池共用システム1006fは、蓄電池利用予定受付部10102経由で、蓄電池共用システム1006gおよび1006hからの電力融通のリクエスト予定(開始時刻、終了時刻、余剰電力量/不足電力量、余剰電力/不足電力等)を受け取る。
このため、蓄電池共用システム1006f〜1006hは、図2に示した蓄電池共用システム1006aの構成に加えて階層情報記憶部(図示せず)を有している。
階層情報記憶部は、蓄電池共用システムの管理する範囲を配電網と関連付けて管理し、蓄電池共用システム間の階層関係を記憶する。
例えば、蓄電池共用システム1006fの下位階層として、蓄電池共用システム1006gおよび1006hが位置付けられるという蓄電池階層情報を有している。
蓄電池共用システム1006gおよび1006hは、自身の管理範囲内で電力が融通不可能である場合に、階層情報記憶部に記憶された蓄電池階層情報を用いて、電力融通の要求および融通量を上位の蓄電池共用システム1006fに送信する。逆に、蓄電池共用システム1006fは、自身の管理範囲内で電力が融通不可能である場合に、階層情報記憶部に記憶された蓄電池階層情報を用いて、電力融通の要求および融通量を下位の蓄電池共用システム1006gおよび1006hに送信する。
なお、図19では、蓄電池共用システムの階層が2段である場合を示したが、さらに多くの階層を有していても良い。
<効果>
以上説明したように、配電系統における電力融通を複数の蓄電池共用システムで階層的に管理するように構成することで、各蓄電池共用システムが管理する配電網の範囲が限定され、配電網変更時における配電網情報記憶部10104の管理コストを抑えることができる。
また、例えば、蓄電ロスが送電ロスよりも小さな範囲を第1層とし、送電ロスが蓄電ロスよりも大きくなる範囲を第2層以上とするように管理する範囲を定めることにより、ロス情報記憶部10105を削減することが可能となる。また、蓄電池スケジュール作成部10107での電力ロスの計算が簡略化され、計算コストが抑えられるという効果がある。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。